(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS K 5600−5−3に準じて0.7kgの鋼球を0.5mの高さから一方の主面に落下させたときの凹み量が0.5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の複合板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した一般施設のペーパーハニカム構造は、軽量で低コストにできるものの、フェノ一ル樹脂板に比べて、剛性が低く、枠材を組むのに時間がかかるという問題がある。
【0007】
また、公共施設のトイレ室では、不特定多数の人が使用するため、使用者の中には傘でパーテーションを刺したり、トイレブースを蹴ったりする等の破壊行為を行う者もいる。
しかしながら、上記したペーパーハニカム構造では、芯材のほとんどの部分が空洞であるので、厚み方向に傘が刺され、表面材が破壊されると、厚み方向の耐破壊強度が著しく低下し、場合によっては、傘が厚み方向に突き抜けてしまうという問題も生じ得る。そのため、公共施設では、実質的に上記したペーパーハニカム構造を採用できないという問題があった。
【0008】
そこで、全体の厚みが薄くても、一定以上の耐破壊強度を保持しつつ、同一厚みの樹脂板単体に比べて軽量な複合板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した問題に鑑み、耐破壊強度を確保しつつ、フェノ一ル樹脂の使用量を低減させて軽量化を図るべく、低発泡倍率の発泡スチレン樹脂を2枚のフェノ一ル樹脂板又はメラミン樹脂板で挟んだ複合板を試作した。
【0010】
具体的には、フェノ一ル樹脂板又はメラミン樹脂板の厚みを減らすと、重量が小さくなるものの耐破壊強度が低下する。そこで、上記した複合板の構造で、フェノ一ル樹脂板又はメラミン樹脂板の厚みを徐々に減らしていき、フェノ一ル樹脂板又はメラミン樹脂板単独の耐破壊強度と同程度の耐破壊強度を維持できる厚みを検討した。その結果、ある一定の厚み以下になると、急激に耐破壊強度が低下することがわかった。
本発明者は、この結果を受けてフェノ一ル樹脂板又はメラミン樹脂板の最適な値は概ね一定であり、当該最適値のもとに、合成樹脂発泡体の発泡倍率を大きくして低密度にしていくことで、軽量でかつ一定の耐破壊強度を保持した複合板が得られると予想した。
しかしながら、合成樹脂発泡体の発泡倍率を大きくし密度を小さくしていき検討したところ、ある密度以下となると、フェノ一ル樹脂板又はメラミン樹脂板が上記した最適値の厚みであっても、耐破壊強度が低下していた。
そこで、フェノール樹脂板又はメラミン樹脂板の厚みと発泡スチレン樹脂の発泡倍率(密度)の関係について再度精査した結果、ある一定のフェノ一ル樹脂板又はメラミン樹脂板の厚み以上であって、かつ、ある一定の合成樹脂発泡体の密度以上とすることで、複合板の厚みの薄板化に伴う耐破壊強度の低下を緩和できるという傾向を発見した。
【0011】
上記発見をもとに、鋭意検討した結果、導き出された請求項1に記載の発明は、2枚の樹脂板で合成樹脂発泡体を挟ん
で、前記合成樹脂発泡体の両面に前記2枚の樹脂板を接着した複合板であって、前記2枚の樹脂板の厚みは、それぞれ1.7mm以上6.0mm以下の範囲であり、前記合成樹脂発泡体の密度は、111kg/m
3以上334kg/m
3以下であり、前記複合板の全体の厚みが5mm以上50mm以下であることを特徴とする複合板である。
すなわち、本発明は、2枚の樹脂板で合成樹脂発泡体を挟んだ複合板であって、前記2枚の樹脂板の厚みは、それぞれ1.7mm以上6.0mm以下の範囲であり、前記合成樹脂発泡体の密度は、111kg/m3以上334kg/m3以下であり、前記複合板の全体の厚みが5mm以上50mm以下であることに関連する。
【0012】
ここでいう「密度」とは、JIS K 7222に準じた見掛け密度をいう。
【0013】
本発明の構成によれば、一定以上の耐破壊強度を保持しつつ、同一厚みの樹脂板単体に比べて軽量となる。
【0014】
上記した発明において、前記2枚の樹脂板の厚みは、それぞれ1.7mm以上3.0mm以下の範囲であることが好ましい。
【0015】
上記した発明において、前記複合板の全体の厚みが15mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記合成樹脂発泡体の主成分は、ポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の複合板である。
【0017】
ここでいう「主成分」とは、全成分の50%以上占める成分をいう。
【0018】
本発明の構成によれば、合成樹脂発泡体の主成分がポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂で形成されているので、合成樹脂発泡体を成形しやすい。
【0019】
上記した発明は、前記合成樹脂発泡体の90%以上の成分がポリスチレン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂であることがより好ましい。
【0020】
請求項3に記載の発明は、前記合成樹脂発泡体は、発泡倍率が3倍以上9倍以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合板である。
【0021】
本発明の構成によれば、合成樹脂発泡体の密度を上記した密度範囲に設定しやすい。
【0022】
請求項4に記載の発明は、前記2枚の樹脂板のうち、少なくとも一方の樹脂板は、熱硬化性樹脂板であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の複合板である。
【0023】
本発明の構成によれば、樹脂板を成形しやすい。
【0024】
請求項4に記載の複合板において、前前記一方の樹脂板は
、メラミン樹脂
板又はフェノール樹脂
板であることが好ましい(請求項5)。
上記の複合板において、前記一方の樹脂板は、メラミン樹脂板、メラミン樹脂シート、フェノール樹脂板、及びフェノール樹脂シートから選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0025】
本発明は、前記2枚の樹脂板は、いずれもメラミン樹脂シート及びフェノール樹脂シートを含んだ積層板であり、前記合成樹脂発泡体を基準として、前記2枚の樹脂板の外側面は、ともにメラミン樹脂シートで形成されていること
に関連する。
【0026】
この構成によれば、2枚の樹脂板の外側面がメラミン樹脂シートで形成されているため、耐水性に優れた複合板となる。
【0027】
請求項
6に記載の発明は、JIS K 5600−5−3に準じて0.7kgの鋼球を0.5mの高さから一方の主面に落下させたときの凹み量が0.5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれかに記載の複合板である。
【0028】
本発明の構成によれば、厚み方向に傘等を刺しても、凹みができにくい。
【0029】
上記の発明は、前記2枚の樹脂板のうち、少なくとも一方の樹脂板は、厚み方向におけるJIS A 5905に準ずる引抜強度が900N以上であ
ってもよい。
【0030】
この構成によれば、一般的なネジの破断強度(約857N)よりも大きいため、一般的なネジ等を前記一方の樹脂板側から取り付けてもネジ等が抜けにくい。
【0031】
本発明は、2枚の樹脂板で合成樹脂発泡体を挟んで、前記合成樹脂発泡体の両面に前記2枚の樹脂板を接着した複合板であって、前記2枚の樹脂板の厚みは、それぞれ1.7mm以上6.0mm以下の範囲であり、前記合成樹脂発泡体の密度は、111kg/m
3以上334kg/m
3以下であり、前記複合板の全体の厚みが5mm以上50mm以下であり、前記合成樹脂発泡体の主成分は、ポリスチレン系樹脂であり、前記2枚の樹脂板は、いずれもメラミン樹脂シート及びフェノール樹脂シートを含んだ積層板であり、前記合成樹脂発泡体を基準として、前記2枚の樹脂板の外側面は、ともにメラミン樹脂シートで形成されてい
る複合板
に関連する。
また、本発明は、2枚の樹脂板で合成樹脂発泡体を挟んだ複合板であって、前記2枚の樹脂板の厚みは、それぞれ1.7mm以上6.0mm以下の範囲であり、前記合成樹脂発泡体の密度は、111kg/m
3以上334kg/m
3以下であり、前記複合板の全体の厚みが5mm以上50mm以下であり、前記合成樹脂発泡体の主成分は、ポリスチレン系樹脂であり、前記2枚の樹脂板は、いずれもメラミン樹脂シート及びフェノール樹脂シートを含んだ積層板であり、前記合成樹脂発泡体を基準として、前記2枚の樹脂板の外側面は、ともにメラミン樹脂シートで形成されていることに関連する。
【0032】
この構成によれば、一定以上の耐破壊強度を保持しつつ、同一厚みの樹脂板単体に比べて軽量となる。
【0033】
本発明は、構造物に対して締結要素によって直接的又は間接的に取り付けられる複合板であって、前記構造物に取り付けた状態において、前記締結要素が前記合成樹脂発泡体の側面から前記合成樹脂発泡体の内部に挿入されていること
に関連する。
また、本発明は、構造物に対して締結要素によって直接的又は間接的に取り付けられる複合板であって、前記構造物に取り付けた状態において、前記合成樹脂発泡体に対して、前記2枚の樹脂板の重なり方向に対して交差する方向に前記締結要素が挿入されていることに関連する。
【0034】
ここでいう「構造体」とは、建物等の固定構造物だけではなく、動産の構造物も含む。
ここでいう「間接的に取り付けられる」とは、他の部材を介して取り付けられることをいう。
ここでいう「締結要素」とは、ネジ、釘、鋲等の上位概念である。
【0035】
この構成によれば、構造物に取り付けた状態において、合成樹脂発泡体に前記締結要素が挿入されているため、締結要素を取り付けやすい。
【0036】
上記した発明において、前記締結要素は、小口面又は小端面に挿入されていることがより好ましい。
【0037】
上記した発明において、前記締結要素は、前記2つの樹脂板の間を通るように合成樹脂発泡体に挿入されていることがより好ましい。
【0038】
本発明は、2つの空間に区切るように縦姿勢で設置される複合板であって、設置した状態において、前記2枚の樹脂板が前記2つの空間に露出していること
に関連する。
【0039】
この構成によれば、2枚の樹脂板がそれぞれ最表面に設けられ、区切られた2つの空間に2枚の樹脂板がそれぞれ露出しているので、傷等がつきにくい。
【0040】
本発明は、2つの機器間を電気的に接続する導体を通過させて設置される複合板であって、前記合成樹脂発泡体に形成され、前記2枚の樹脂板の間で延びる第2穴部を有し、設置した状態において、前記第2穴部に前記導体の少なくとも一部が通過していること
に関連する。
また、本発明は、2つの機器間を電気的に接続する導体を通過させて設置される複合板であって、設置した状態において、前記2枚の樹脂板の間に前記導体の少なくとも一部が通過していることに関連する。
【0041】
これらの構成によれば、2枚の樹脂板の間に導体の少なくとも一部を通過させることができるため、導体の設置が容易である。
【0042】
本発明は、前記2枚の樹脂板のうち一方の樹脂板を貫通し、前記第2穴部と連通した第1穴部を有し、設置した状態において、前記導体は、前記第1穴部及び前記第2穴部を通過していること
に関連する。
また、本発明は、2つの機器間を電気的に接続する導体を通過させて設置される複合板であって、設置した状態において、前記導体は、前記合成樹脂発泡体の側面から前記合成樹脂発泡体の内部に向かって通過していることに関連する。
【0043】
この構成によれば、前記合成樹脂発泡体の側面から合成樹脂発泡体の内部に向かって延びているため、導体を通過させやすい。
【0044】
本発明は、光線によって一方向の通信又は双方向の通信が可能な光線通信機器間に設置される複合板であって、前記合成樹脂発泡体は、前記光線が通過可能な空間を備えていること
に関連する。
【0045】
この構成によれば、光線通信機器間の光線による通信が合成樹脂発泡体の存在によって阻害されることを防止できる。
【0046】
上記した発明は、設置した状態において、前記導体は、前記合成樹脂発泡体の四方の側面から少なくとも1箇所から通過していてもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明の複合板によれば、比較的薄い厚みであっても、一定以上の耐破壊強度を保持しつつ、同一厚みの樹脂板単体に比べて軽量となる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において特に断りのない限り、物性は、標準状態(1気圧、23℃)での特性を示す。
【0050】
本発明の第1実施形態の複合板1は、2枚の樹脂板2,3によって合成樹脂発泡体5を挟んだ板状体であり、
図1のように、トイレ室に使用されるものである。
具体的には、複合板1は、
図1、
図2に示されるようにトイレ室の空間120を仕切るトイレブース100a,100b,100cの一部として使用されるものである。すなわち、複合板1は、トイレブース100の一部を構成し、トイレ室の空間120の一部を複数の分割空間121a,121b,121c,121dに区切るものである。本実施形態のトイレ室は、
図1に示されるように、所定の方向に並設された3つのトイレブース100a〜100cを備えている。
【0051】
トイレブース100は、
図1,
図2から読み取れるように、トイレユニット101を囲むように形成されるものであり、主要構成部材として、建築物の壁部102a,102bと、仕切り板部103a,103b,103c(構造物)と、ドア板部105a,105b,105cと、ドア受板部106a〜106dを備えている。
本実施形態の複合板1は、各板部103a〜103c,105a〜105c,106a〜106dを構成しており、分割空間121a,121b,121c,121dを区切るように縦姿勢で設置されるものである。
【0052】
仕切り板部103a〜103cは、
図2に示されるように、縦姿勢で配され、平面視したときに、壁部102aに対して直交する板状部である。
仕切り板部103a〜103cは、空間120をトイレブース100a〜100cの並設方向に隣接する分割空間121a,121b,121c,121dに仕切るパーテーションである。
仕切り板部103a〜103cには、
図4,
図5から読み取れるように、それぞれトイレユニット101側の面の中間部にトイレユニット101(機器)と連動するスイッチ装置110(機器)が設けられており、スイッチ装置110とトイレユニット101を繋ぐ配線部材116(導体)を通過可能な配線穴117が形成されている。
【0053】
配線穴117は、
図5に示されるように、仕切り板部103a〜103cの厚み方向に深さをもった第1穴部118と、樹脂板2,3の広がり方向(幅方向及び長さ方向)に延びた第2穴部119を備えている。
第1穴部118は、樹脂板3を貫通し、さらに合成樹脂発泡体5の中間部まで至った穴である。
第2穴部119は、第1穴部118の深さ方向端部と連通し、樹脂板2,3の間で延びる穴である。すなわち、第2穴部119は、合成樹脂発泡体5のみに形成された穴であり、その端部が仕切り板部103a〜103cの端部で外部と連通している。
【0054】
ドア受板部106a〜106dは、
図2に示されるように、縦姿勢で配され、平面視したときに、仕切り板部103a〜103cに対して直交する板状部である。ドア受板部106a〜106dは、その中間部が仕切り板部103a,103b,103cの先端部と接続され、閉塞時にドア板部105a,105b,105cを受ける受板部である。
ドア受板部106a〜106dの一方の端部には、ドア板部105a,105b,105cを受ける受け金具112が設けられており、他方の端部には、締結要素125が挿入可能な取付穴113が形成されている。
受け金具112は、ドア受板部106a〜106dの端部の一部から張り出した張出片である。
取付穴113は、締結要素125を取り付けるための締結穴であり、仕切り板部103a〜103cの合成樹脂発泡体5の側面(主面以外の面)から合成樹脂発泡体5の内部に向かって延びた有底穴又は貫通孔である。すなわち、取付穴113は、樹脂板2,3の間で厚み方向(樹脂板2,3の重なり方向)に対して交差する方向に延びた穴であり、合成樹脂発泡体5のみに形成されている。
【0055】
ドア板部105a,105b,105cは、
図2に示されるように、トイレブース100a,100b,100c内の空間を開閉するドアであり、端面にヒンジ111が設けられ、ヒンジ111を介して仕切り板部103a,103b,103cと開閉可能に接続されている。言い換えると、ドア板部105a,105b,105cは、仕切り板部103a,103b,103cに対して回動自在に取り付けられている。
【0056】
トイレユニット101,101,101は、主要構成部材として、トイレ本体115と、スイッチ装置110と、配線部材116から構成されており、スイッチ装置110を操作することによって、トイレ本体115が連動するものである。
【0057】
配線部材116は、トイレ本体115とスイッチ装置110を電気的に接続する接続部材である。配線部材116は、導体であって、線状に延びる線状体である。
【0058】
続いて、トイレブース100の各部材の位置関係について説明する。
【0059】
各仕切り板部103a,103b,103c及び壁部102bは、
図2に示されるように、トイレユニット101を挟むように対向している。仕切り板部103a,103b,103cの一方の主面(トイレユニット101側の面)には、スイッチ装置110がそれぞれ取り付けられている。
仕切り板部103a,103b,103cの合成樹脂発泡体5に形成された配線穴117には、スイッチ装置110とトイレ本体115を繋ぐように配線部材116が這っており、配線部材116は、仕切り板部103a,103b,103cの端面から壁部102aに跨って延びている。
別の観点からみると、配線部材116の一方の端部は、仕切り板部103a,103b,103cの端面から第2穴部119を通過し、第1穴部118を通過してスイッチ装置110と接続されている。
【0060】
ドア板部105a,105b,105cの端面には、
図3のように、締結要素126によってヒンジ111の一方の端部が取り付けられており、ドア受板部106a〜106dの端面には、締結要素125によってヒンジ111の他方の端部が取り付けられている。すなわち、板部105a,106a(105b,106b,105c,106c)の合成樹脂発泡体5の側面は、外部に露出しており、締結要素125,126は、板部105a,106a(105b,106b,105c,106c)の合成樹脂発泡体5の側面から合成樹脂発泡体5の内部に挿入されている。
【0061】
続いて、複合板1の各構成部材について詳細に説明する。
【0062】
複合板1は、上記したように、2枚の樹脂板2,3によって合成樹脂発泡体5を挟んだものであり、合成樹脂発泡体5の両面に樹脂板2,3を有している。
本実施形態の複合板1は、断面形状が3層構造となっており、樹脂板2,3と合成樹脂発泡体5が異なる色をしている。
複合板1は、面状に広がりをもった板状体であり、2つの主面と、2つの主面を繋ぐ側面で外郭が構成されている。
【0063】
(樹脂板2,3)
樹脂板2,3は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を主成分とするものであり、複数枚のシートに樹脂を含浸し、積層した積層板である。
本実施形態の樹脂板2,3は、
図6に示されるように、熱硬化性樹脂板であり、熱硬化性樹脂たるフェノール樹脂が含浸されたフェノール樹脂シート10と、熱硬化性樹脂たるメラミン樹脂が含浸されたメラミン樹脂シート11とが積層された積層構造をとっている。そして、本実施形態の樹脂板2,3は、合成樹脂発泡体5を基準として最も外側にメラミン樹脂シート11が配されたものである。すなわち、本実施形態の樹脂板2,3は、外側面は、ともにメラミン樹脂シート11で形成されている。
なお、樹脂板2,3は、単一の樹脂を主成分とした単一板であってもよい。
本実施形態の樹脂板2,3は、黒色であり、合成樹脂発泡体5とは異なる色をしている。
【0064】
樹脂板2,3の密度は、合成樹脂発泡体5の密度よりも大きく、1311g/m
3以上2334kg/m
3以下であることが好ましく、1483kg/m
3以上1720kg/m
3以下であることがより好ましい。
樹脂板2,3の厚さは、1.7mm以上6.0mm以下の範囲であり、1.8mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、十分な耐破壊強度を確保しつつ、重量も低減することができる。
【0065】
樹脂板2,3を構成する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などが採用できる。
樹脂板2,3を構成する熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)やポリプロピレン(PP)などが採用できる。
【0066】
(合成樹脂発泡体5)
合成樹脂発泡体5は、発泡樹脂組成物を発泡して形成された発泡樹脂体である。
合成樹脂発泡体5の密度は、良好な耐荷重及び耐破壊強度を得る観点から、111kg/m
3以上334kg/m
3以下であり、143kg/m
3以上200kg/m
3以下であることが好ましい。
合成樹脂発泡体5における発泡倍率は、良好な耐荷重及び耐破壊強度を得る観点から、3倍以上9倍以下であることが好ましく、5倍以上7倍以下であることがより好ましい。
この「発泡倍率」は、発泡前の発泡樹脂組成物の密度を発泡後の発泡樹脂組成物(合成樹脂発泡体5)の密度で除算して算出した値である。
【0067】
合成樹脂発泡体5のJIS A 9511に準じた圧縮弾性率は、良好な耐荷重及び耐破壊強度を得る観点から、58MPa以上であることが好ましく、58MPa以上148MPa以下であることがより好ましく、88MPa以上118MPa以下であることが特に好ましい。
【0068】
成形時の金型から取り出した表面状態はフィーダー痕や充填孔が付いているので、それを取り除くことを含め、合成樹脂発泡体5の少なくとも片表面、好ましくはその両表面を、金型から取り出した状態よりも粗くなるように、ベルトサンダー等によって研削し、粗面化されるとともに、厚みの偏差量が±0.3〜0.5mmになるように均一化されていることが好ましい。
合成樹脂発泡体5のJIS B 0601:2013に準ずる中心線平均粗さ(Ra)は、45μm以上60μm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、樹脂板2,3と合成樹脂発泡体5との間で高い接合強度を確保できる。
【0069】
合成樹脂発泡体5は、発泡樹脂組成物を発泡させたものであり、発泡樹脂組成物を主成分とするものである。本実施形態の合成樹脂発泡体5は、発泡樹脂組成物が全成分の90%以上を占めている。
【0070】
合成樹脂発泡体5の材料たる発泡樹脂組成物の発泡方法は、特に限定されない。
発泡樹脂組成物の発泡方法は、均質な合成樹脂発泡体5を得る観点からビーズ法を用いることが好ましい。
ビーズ法は、発泡剤を含浸させた発泡樹脂組成物たる発泡樹脂粒子を原料とし、この発泡樹脂粒子を金型のキャビティ内に充填する。そして、充填された発泡樹脂粒子を蒸気で二次発泡させつつ、予備発泡粒子同士を熱融着により一体化させることで合成樹脂発泡体5を得る手法である。
【0071】
発泡樹脂組成物は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
この熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、プロピレン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂などのポリオレフィン樹脂や、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などのポリビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)などのポリエステル樹脂、ナイロン、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱可塑性樹脂の単体及び共重合体、あるいは、これらの混合樹脂などが採用できる。これらのなかでも、樹脂自体の強度を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂又はポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレン系樹脂がより好ましい。
本実施形態の合成樹脂発泡体5は、ポリスチレン系樹脂を発泡樹脂組成物として発泡させたものであり、ポリスチレン系樹脂が全成分の90%以上を占めている。
【0072】
合成樹脂発泡体5の発泡樹脂組成物を構成するスチレン系樹脂は、主成分としてスチレン系単量体を重合した発泡性スチレン系樹脂ビーズであることが好ましい。
このスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体が挙げられる。
また、発泡樹脂組成物を構成するスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と共重合が可能な成分、例えば、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいは、アクリロトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体を1種または2種以上、添加し共重合してもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体を併用することもできる。
【0073】
これらスチレン系樹脂の内では、合成樹脂発泡体5の発泡樹脂組成物として、汎用性、コスト、及び物性の観点から、ポリスチレン樹脂が好ましい。
【0074】
発泡樹脂組成物たる発泡樹脂粒子の粒径は、0.2〜4.0mmが好ましく、0.5〜2.0mmがより好ましい。
【0075】
発泡樹脂粒子に含浸させる発泡剤としては、C3以上C5以下の炭化水素であるプロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタンなどの脂肪族炭化水素類を用いることが好ましい。また、C3以上C5以下の炭化水素の他に、ジフルオロエタン、トラフルオロエタンなどのオゾン破壊係数が0であるフッ化炭化水素類のような揮発性発泡剤も使用できる。
【0076】
続いて、複合板1の物性について説明する。なお、以下の値は、後述する実施例の結果及び経験則に基づいて検討した結果である。
【0077】
複合板1の全体の厚みは、5mm以上50mm以下であり、10mm以上30mm以下であることが好ましく、17.6mm以上20mm以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、樹脂板単体の代替部材やその他の用途として汎用性を確保できる。
複合板1は、JIS K 5600−5−3に準じて0.7kgの鋼球を0.5mの高さから一方の主面に落下させたときの凹み量が0.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、公共施設でも使用しても、十分な耐破壊性を確保できる。
【0078】
複合板1は、樹脂板2,3がともに等しい厚みをもち、合成樹脂発泡体5の厚みよりも薄いことが好ましい。
樹脂板2,3は、厚み方向のJIS A 5905に準ずる引抜強度が900N以上であることが好ましく、1200N以上であることがより好ましい。すなわち、複合板1の厚み方向の引抜強度が900N以上であることが好ましく、1200N以上であることがより好ましい。
この範囲であれば、樹脂板2,3の引抜強度が一般的なネジの破断強度(約857N)よりも大きいため、一般的なネジ等を取り付けても、ネジ等が抜けにくい。
また、複合板1は、樹脂板2,3及び合成樹脂発泡体5の積層方向(樹脂板2,3の重なり方向)において、JIS A 5905に準ずる引抜強度が900N以上であることが好ましく、1200N以上であることがより好ましい。すなわち、複合板1の厚み方向の引抜強度が900N以上であることが好ましく、1200N以上であることがより好ましい。
この範囲であれば、複合板1の引抜強度が一般的なネジの破断強度(約857N)よりも大きいため、一般的なネジ等を取り付けても、ネジ等が抜けにくい。
【0079】
複合板1の見掛け上の密度は、1511kg/m
3以上1734kg/m
3以下であることが好ましく、1543kg/m
3以上1600kg/m
3以下であることがより好ましい。
ここでいう「複合板1の見掛け上の密度」とは、複合板1の総体積に対する総重量をいう。
この範囲であれば、体積当たりの重量が小さいので、同じ大きさの単独の樹脂板を使用する場合に比べて、作業現場への運搬や非常時における安全性等を確保できる。
【0080】
本実施形態の複合板1によれば、樹脂板2,3の厚み及び合成樹脂発泡体5の密度が所定の範囲に収まっているので、5mm以上50mm以下という比較的薄い全厚であっても、高い耐破壊強度と軽量化の双方を達成することができる。すなわち、樹脂板単体で形成された板体よりも軽く、ペーパーハニカムを芯材とするパネルよりも高い耐破壊強度を備えることができるので、汎用性の高い複合板となる。
【0081】
本実施形態の複合板1によれば、樹脂板2,3の色と合成樹脂発泡体5の色が異なる色をしているので、合成樹脂発泡体5の部分を把握しやすく、合成樹脂発泡体5のみに対して締結要素125,126等を取り付けやすい。
また、本実施形態の複合板1によれば、端面が複数色となるので、単一色となる樹脂板のみで形成される場合に比べて意匠性が高い。
【0082】
本実施形態の複合板1によれば、樹脂板2,3の材料が合成樹脂発泡体5の材料よりも高価である場合において、樹脂板単独で板部103a〜103c,105a〜105c,106a〜106dを形成する場合に比べて樹脂板2,3の使用量を低減できるので、コストを低減することができる。
【0083】
続いて、本発明の第2実施形態の複合板150について説明する。なお、第1実施形態の複合板と同様の構成については同一の付番を付して説明を省略する。
【0084】
本発明の第2実施形態の複合板150は、
図7に示されるように樹脂板2,3と、合成樹脂発泡体5と、端面保護部材151a〜151dを備えている。
端面保護部材151a〜151dは、合成樹脂発泡体5の各端面を保護する板状又はシート状の部材である。
端面保護部材151a〜151dは、少なくとも合成樹脂発泡体5の樹脂板2,3からの露出部分を覆って固着されており、本実施形態では、樹脂板2,3の端面までも覆っている。すなわち、端面保護部材151a〜151dは、複合板150の端面を構成している。
端面保護部材151a〜151dは、合成樹脂発泡体5よりも剛性をもつ部材であり、フェノール樹脂板やメラミン樹脂板等の熱硬化性樹脂板によって構成されている。
【0085】
ドア板部105a,105b,105cを構成する複合板150の端面では、
図8に示されるように、締結要素125(126)が端面保護部材151b(151d)を通過し、合成樹脂発泡体5の側面から合成樹脂発泡体5の内部に挿入されている。
【0086】
第2実施形態の複合板150によれば、合成樹脂発泡体5の樹脂板2,3からの露出部分に端面保護部材151a〜151dが設けられているので、端面に打痕傷などの傷が付きにくい。
【0087】
第2実施形態の複合板150によれば、締結要素125(126)が合成樹脂発泡体5の端面に接着された端面保護部材151d(151b)を挿通されているため、締結要素125(126)が抜けにくい。
【0088】
続いて、本発明の第3実施形態の複合板200について説明する。なお、第1,2実施形態の複合板と同様の構成については同一の付番を付して説明を省略する。
【0089】
本発明の第3実施形態の複合板200は、第2実施形態の複合板150と合成樹脂発泡体5を複数備えている点が主に異なる。
すなわち、第3実施形態の複合板200は、
図9,
図10に示されるように、樹脂板2,3と、複数の合成樹脂発泡体5a〜5dと、端面保護部材151a〜151hを備えている。
【0090】
合成樹脂発泡体5(5a〜5d)は、縦横に碁盤状に並べられており、2枚の樹脂板2,3によって厚み方向に挟まれている。
隣接する合成樹脂発泡体5,5間には、
図11に示されるように、それぞれ隙間があり、樹脂板2,3と、隣接する合成樹脂発泡体5,5とによって囲まれた囲繞空間201が形成されている。囲繞空間201には、配線部材116が通過可能となっている。
【0091】
第3実施形態の複合板200によれば、配線部材116が通過可能な囲繞空間201を備えているため、合成樹脂発泡体5に配線穴117を設けなくても、配線部材116を設置することが可能である。
【0092】
上記した第3実施形態では、複合板200が4つの合成樹脂発泡体5を備える場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
複合板は、2つ又は3つの合成樹脂発泡体5を備えていてもよいし、5つ以上の合成樹脂発泡体5を備えていてもよい。
【0093】
上記した実施形態では、トイレユニット101とスイッチ装置110の連動を配線部材116によって行っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
赤外線や可視光線等の光線によってトイレユニット101とスイッチ装置110の連動を可能にしてもよい。
この場合、例えば、トイレユニット101とスイッチ装置110のそれぞれに光線通信機器たる赤外線送信機及び/又は赤外線受信機を設け、
図12に示されるように、複合板に赤外線送信機210と赤外線受信機211間を繋ぐように通信空間212を設ける。
こうすることによって、トイレユニット101とスイッチ装置110の間で一方向又は双方向の赤外線通信が可能となる。
なお、通信空間212は、樹脂板2,3の間に設けられた空間であって、合成樹脂発泡体5に形成された直線状の通信孔によって形成されている。
【0094】
上記した実施形態では、2枚の樹脂板2,3で合成樹脂発泡体5を直接挟んだ場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。樹脂板と合成樹脂発泡体の間に他の層が介在していてもよい。
【0095】
上記した実施形態では、樹脂板2,3がフェノール樹脂シート10とメラミン樹脂シート11との多層構造であったが、本発明はこれに限定されるものではない。
樹脂板2,3は、フェノール樹脂シート10のみが多層積層した構造であってもよいし、メラミン樹脂シート11が多層積層した構造であってもよい。また、他の樹脂シートが挿入されていてもよい。
樹脂板2,3は、フェノール樹脂やメラミン樹脂が板材に含浸したフェノール樹脂板やメラミン樹脂板であってもよい。
【0096】
上記した実施形態では、仕切り板部103a〜103cの合成樹脂発泡体5には、配線部材116を通過させる配線穴117が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。配線穴117の一部又は全部は切り欠きであってもよい。また、設けなくてもよい。
【0097】
上記した実施形態では、ドア板部105a,105b,105cは、仕切り板部103a〜103cに対して締結要素125,126によってヒンジ111を介して間接的に取り付けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。板部に対して他の板部を締結要素によって直接的取り付けてもよい。
【0098】
上記した実施形態では、複合板1を縦姿勢で使用したが、本発明はこれに限定されるものではない。複合板1を縦姿勢以外の姿勢、例えば、横姿勢で使用してもよい。
【0099】
上記した実施形態では、樹脂板2,3は、同じ厚みであったが、本発明はこれに限定されるものではない。樹脂板2,3は、ともに所定の範囲に収まれば、異なる同じ厚みであってもよい。
【0100】
上記した実施形態では、複合板をトイレ室のトイレブースの壁面に採用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。複合板を他の用途に使用してもよい。例えば、
図13に示されるように、オフィス等の部屋間を仕切るパーテーションに使用してもよい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0102】
厚みが14mmであって、発泡倍率が5倍(密度:200kg/m
3相当)、7倍(密度:143kg/m
3相当)、及び発泡倍率が10倍(密度:100kg/m
3相当)の3種類のビーズ法ポリスチレン樹脂(EPS)を主成分とする合成樹脂発泡体5を表1に記載の厚みのメラミン樹脂板(密度:1480kg/m
3)又はフェノール板(密度:1400kg/m
3)で挟み接着することによって各実験例1〜27の複合板を形成した。すなわち、実験例1〜7,10〜16,19〜25では、樹脂板2,3としてメラミン樹脂板を用い、実験例8,9,17,18,26,27では、樹脂板2,3としてフェノール板を用いた。
【0103】
(試験条件)
各実験例1〜27において、JIS K 5600−5−3に準じて、デュポン衝撃試験機によって70×70mmの試験片に対して0.7kgの鋼球を0.5mの落下高さから2回落下させ、複合板の凹み量(凹みの深さ)を算出した。各実験例1〜27の評価を行う基準として、実験例28として厚みが16mmのフェノール板(密度:1400kg/m
3)を使用した。その結果をまとめたものを表1及び
図14に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
図14(a),
図14(b)に示される合成樹脂発泡体5の発泡倍率が5倍及び7倍の試験片では、
図14(c)に示される合成樹脂発泡体5の発泡倍率が10倍の試験片と異なる傾向で推移した。
すなわち、
図14(a)に示される発泡倍率が5倍の実験例1〜9では、樹脂板の厚みが1.6mm(実験例5)から1.8mm(実験例6)にかけて急激に凹み量が緩和され、実験例28のフェノール板単独の凹み量と同程度の凹み量となった。
同様に、
図14(b)に示される発泡倍率が7倍の実験例10〜18においても樹脂板の厚みが1.6mm(実験例14)から1.8mm(実験例15)にかけて急激に凹み量が緩和され、実験例28のフェノール板単独の凹み量と同程度の凹み量となった。
一方、
図14(c)に示される発泡倍率が10倍の実験例10〜18では、樹脂板の厚みが1.6mm(実験例23)から1.8mm(実験例24)にかけて凹み量の緩和が観測されず、樹脂板の厚みが2.0mm(実験例25)から2.5mm(実験例26)にかけて急激な凹み量の緩和が観測された。すなわち、発泡倍率が10倍以上の場合、樹脂板の厚みが1.8mmとしても急激な凹み量の緩和が生じないことが分かった。
【0106】
以上の結果から、発泡倍率が10倍未満であって樹脂板の厚みを1.6mm超過とすることで、全体の厚みが17.6mm以上20mm以下の薄い厚みの場合であっても、フェノール板単独と同程度の耐破壊強度を確保できることが分かった。
これは、樹脂板の厚みが厚いと、樹脂板自身の剛性が確保できるので、自己の反発力により凹みを解消できるが、樹脂板の厚みを2.0mm以下にすると、樹脂板自身の剛性が小さくなり、下地の合成樹脂発泡体5へ衝撃が伝達しやすくなる。そのため、樹脂板への衝撃は合成樹脂発泡体5で衝撃を受けることになるが、合成樹脂発泡体5の硬さが一定未満の場合では、衝撃を緩和できず、凹んだままとなってしまうので、凹み量が大きくなり、合成樹脂発泡体5の硬さが一定以上の場合では、合成樹脂発泡体5自身の弾性により適度に緩和しつつ、反発するので樹脂板での凹みが小さくなったものと考えられる。