(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した陶器製の洗面器では、ヒートショックによる割れ対策や焼成時の切れ対策として洗面ボウル部内の角部の曲率半径を大きくすることが行われているが、曲率半径を大きくした分、外側部の内側面が内側に張り出すこととなり、洗面ボウル部の容積が小さくなるという問題があった。
また、近年では洗面器のデザインとしてシャープ感が要求されるケースが多くなっているが、上方から見た平面視で洗面ボウル部の角部の曲率半径を大きくすることで、とくに外側部部分のシャープ感がなくなり、洗面器全体の外観が低下していた。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、焼成時の切れやヒートショックによる陶器の割れを防止できるうえ、洗面ボウル部の容量を大きくすることができ、外観をシャープなデザインにすることができる洗面器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る洗面器は、支持部材に周縁部を載置した状態で設置される洗面器であって、洗面ボウル部と、前記洗面ボウル部の外周部に連設されるとともに、下端部で前記支持部材に載置される外側部と、を備え、前記洗面ボウル部の下面側において、前記外側部の外周面と前記洗面ボウル部との連結部の少なくとも一部に凹部が形成され、前記凹部は、前記外側部における前記支持部材に載置される載置部と、前記洗面ボウル部の外側面と、の境界部に形成され、
前記凹部と前記洗面ボウル部の外側面とが滑らかに接続され
、前記凹部は、凹溝であり、前記凹溝は、前記洗面ボウル部の手前から両側方にわたって延在する第1凹溝と、前記洗面ボウル部における前記外側部より奥側に位置する奥部の載置部と前記洗面ボウル部の外側面との境界部に形成された第2凹溝と、を有し、前記第2凹溝の溝幅と溝深さは、前記第1凹溝の溝幅と溝深さより大きいことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る洗面器によれば、前記外側部の外周面と前記洗面ボウル部との連結部の少なくとも一部に形成される凹部によって応力が分散されるので、応力集中を小さく抑えることができる。そのため、焼成時の切れやヒートショックによる陶器の割れを防止することができる。
また、本発明では、従来のように洗面ボウル部内の角部の曲率半径を大きくする必要がなくなり、洗面ボウル部の容積を大きくすることが可能となる。そして、洗面ボウル部内の角部の曲率半径が小さな形状となるので、外観をシャープなデザインにすることができる。
【0009】
また、本発明に係る洗面器は、
前記凹部は、前記載置部が少なくとも前記洗面ボウル部の外周部に連設される水栓取付部に設けられ
ていることが好ましい。
【0010】
この場合には、水栓取付部の載置部と洗面ボウル部との境界部に凹部が形成されているので、洗面器のうち形状が複雑で、かつ応力集中に伴う割れが生じやすい水栓取付部において効果的に応力を分散させることができる。
【0011】
また、本発明に係る洗面器は、前記凹部は、少なくとも前記洗面ボウル部、及び前記洗面ボウル部の外周部に連設する部分に湾曲面が形成されていることが好ましい。
【0012】
この場合には、凹部の湾曲面を介して洗面ボウル部、及び洗面ボウル部の外周部に連設し、凹部に角部が形成されないので、洗面ボウル部との境界部における応力集中をより効果的に抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係る洗面器は、前記洗面ボウル部における隣り合う内側面同士を連接する角部の曲率半径が30mm以上35mm以下に設定されていることが好ましい。
この場合には、凹部を設けることに加え、洗面ボウル部内の角部の曲率半径を30mm以上35mm以下に大きくすることで、より確実に応力を分散させることができるため、焼成時の切れやヒートショックによる陶器の割れを防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る洗面器は、前記凹部は、凹溝であり、前記凹溝は、溝の延在方向から見た断面視で全体が湾曲してい
てもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の洗面器によれば、焼成時の切れやヒートショックによる陶器の割れを防止できるうえ、洗面ボウル部の容量を大きくすることができ、外観をシャープなデザインにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態による洗面器について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1〜
図3に示すように、本実施形態による洗面器10は、周縁部がカウンターなどからなる支持部材20に載置された状態で支持されて構成されている。
なお、本実施形態においては、使用者が洗面器10の前に位置した際に使用者に近い側を手前側とし、反対側の遠い側を奥側とする。また、洗面器10の手前側と奥側との間に連なる部分を側方とする。また、洗面器10を手前側から見たときの左右方向を幅方向X1といい、手前側と奥側の方向を前後方向X2という。
【0019】
洗面器10は、洗面ボウル部11と、洗面ボウル部11の手前側及び両側方側に連設された外側部12と、洗面ボウル部11の奥側、即ち、鏡やキャビネットなどが配される壁13側に設けられて支持部材20との固定部15が形成された奥部14と、を有している。洗面器10は陶器製であり、洗面ボウル部11、外側部12、奥部14は一体に形成されている。
【0020】
洗面ボウル部11は、平面視で略四角形状に形成されている。また、
図4に示すように、底面部11a及び周縁部11bが連続して形成され、洗面ボウル部11の内側面11cが連続した凹形状に形成されている。周縁部11bは四方に急勾配に立ち上がるように形成され、周縁部11bの頂部11dが略一定高さに、かつ、環状に連続形成されている。底面部11aには、排水口11eが形成され、周縁部11bから排水口11eまでが下り勾配に形成されている。洗面ボウル部11の内側面11cの奥側で幅方向X1の中央部には、オーバーフロー穴11gが形成されている。
【0021】
また、
図5に示すように、洗面ボウル部11の底面部11aの排水口11eには排水路11hが形成され、この排水路11hにはオーバーフロー穴11gから延びるオーバーフロー流路11iが接続されている。
なお、洗面器10は、洗面ボウル部11、外側部12、及び奥部14の陶器製の表面が釉薬で被覆されている。さらに本実施形態では、洗面ボウル部11における排水口11e、オーバーフロー穴11g、排水路11h、及びオーバーフロー流路11iのそれぞれの内面全面にも釉薬で被覆されている。なお、排水路11h内であって、オーバーフロー穴11gの上方部分も釉薬により被覆されている。
この場合の釉薬の被覆方法としては、例えば排水口11eを閉塞して、オーバーフロー穴11gから排水路11hに釉薬を満水にさせて、オーバーフロー流路11iの流路内面の全面にわたって被覆することができる。
【0022】
外側部12は、
図2、
図3、及び
図6に示すように、洗面ボウル部11の手前側及び両側方側に連続して設けられており、洗面器10の縁部を構成している。外側部12の頂部12dは、洗面ボウル部11の周縁部11bの頂部11dと同じ位置として構成されているとともに、外側部12の内側面12eは、洗面ボウル部11の周縁部11b(内側面11c)と同じ位置として構成されている。外側部12の外周面12cは、洗面器10を支持部材20に設置したときに略鉛直面となるように形成されている。外側部12の内側面12eと外周面12cとの間には、中空部12fが形成されている。なお、外側部12の外周面12cは鉛直方向に形成されていても、鉛直方向に対して正負何れかに勾配を有していてもよい。そして、外側部12における中空部12fを画成する内側面12eと外周面12cとは、それぞれ上方に向かうに従い近接するとともに頂部12dで当接され、外側部12の全体が連続して形成されている。
ここで、洗面ボウル部11の周縁であって、洗面ボウル部11の頂部11d(12d)、周縁部11bの上部、および外側部12の外周面12cの上部で構成される箇所がリム30に相当する。
【0023】
図4、
図5、及び
図7に示すように、外側部12の下端には、洗面ボウル部11の外側面11fと連結一体化された連結部12aが形成されている。連結部12aには、支持部材20に載置される載置部12bが形成されている。載置部12bは、連結部12aから若干下方に突出した平坦面として形成されている。載置部12bは、支持部材20に直接当接して載置されてもよく、パッキンやコーキング剤等を介して載置されてもよい。なお、支持部材20の上面における載置部12bに対向する位置に凹部を形成し、該凹部に載置部12bを嵌合するようにして載置してもよい。
【0024】
図6及び
図7に示すように、外側部12は、載置部12bが支持部材20に載置された状態で、支持部材20上に配置された洗面ボウル部11の外側面11fを外部から視認不能に覆うように形成されている。そして、外側部12には、外周面12cと載置部12bの周縁との接続部において、載置部12b側が外周面12cよりも洗面ボウル部11の外側面11f側に向けて凹んだ形状の段部12Aが形成されている。段部12Aは、
図8〜
図10に示すように、洗面器10が支持部材20に載置された状態で支持部材20側を向く段下面12gと、載置部12bの外端から上方に向けて延びて段下面12gの内端に連設する段側面12hと、を有している。なお、段下面12gは、水平面であってもよいし、段部12Aの洗面ボウル部11の外側面11f側に向けて下り勾配となる傾斜面となっていてもよい。
【0025】
段部12Aの段側面12hと支持部材20との境界部分には、止水を目的としたシリコン等のコーキング材が塗布されたコーキング処理部23が設けられている。そして、段側面12hと支持部材20との境界部分、及び段側面12hは、外側部12の外周面12cよりも奥まった位置であり、かつ通常、洗面器を使用する使用者の視線よりも下に位置するので、隠れた目立ちにくい部位となっている。つまり、上記の境界部分に設けられるコーキング処理部23も使用者から見えにくい箇所となっている。
【0026】
段部12Aの凹みの寸法(段下面12gの奥行と段側面12hの高さ)は、支持部材20との間で例えば指やヘラ等が進入可能な大きさで、指等で塗布したコーキング材を仕上げるコーキング作業が可能な大きさに設定されている。段下面12gの奥行は例えば10mm、段側面12hの高さは15mm(最低で13mm)に設定することができる。
【0027】
本実施形態では、載置部12bが外側部12に沿って洗面ボウル部11の手前側及び両側方側に連続して幅細に形成されている。ここで、載置部12bの幅は例えば15mm以下に設定されている。
【0028】
図2〜
図5に示すように、奥部14は、洗面ボウル部11の周縁部11bの頂部11dから連設するように一体に形成され、頂部11dの高さで奥側、即ち壁13側に延びる上面部14aと、上面部14aの奥側端部から下方に延びる背面部14bと、背面部14bの下端から略水平方向に延びる連結部14dと、を有している。
【0029】
図1、
図2に示すように、奥部14の上面部14aには、幅方向の略中間部分に各種の水栓や排水弁操作部などが配置される水栓設置部14cが設けられている。水栓設置部14cは後述する両側方側の固定部15,15間に設けられている。
【0030】
背面部14bは、
図4、
図5及び
図11に示すように、洗面ボウル部11の両側方側にそれぞれ形成されている。各背面部14bの下端には、洗面ボウル部11の外側面11fと連結一体化された連結部14dが連設されている。
【0031】
連結部14dは、略水平方向に延出した板状に形成されている。連結部14dには、支持部材20に載置される載置部14eと、載置部14eより上方に位置しボルト等の固定具(図示省略)が装着される固定部15と、が形成されている。載置部14e及び固定部15は洗面ボウル部11の外側面11fよりも奥側に設けられている。載置部14eは、外側部12の載置部12bと面一になるように形成されている。また、奥部14の両側方側の端面14fは、外側部12の外周面12cと面一に形成されている。
【0032】
固定部15は、載置部14eを支持部材20に載置させた状態で支持部材20の上面と若干離間した位置に平板状に形成されており、この平面の略中心に長孔15bが形成されている。
【0033】
また、
図4及び
図5に示すように、本実施形態の洗面器10の下面側には、洗面ボウル部11の外周部に連設される周縁部と、洗面ボウル部11との境界部に凹溝16A、16B(凹部)が形成されている。
第1凹溝16Aは、外側部12の載置部12bと、洗面ボウル部11の外側面11fと、の境界部に形成され、洗面ボウル部11の手前から幅方向X1の両側方にわたって下面視でコの字状に連続して延在している。第2凹溝16Bは、奥部14の幅方向X1の両側に位置する載置部14eと、洗面ボウル部11の外側面11fのうち奥側部分と、の境界部に形成されている。なお、第1凹溝16Aは、外側部12の連結部12aと同じ位置として構成されている。ここで、洗面器10において、奥部14は水栓取付部をなしており、水栓取付部の裏面14Aは、載置部14e、水栓設置部14cの裏面14g、及び連結部14dにより構成されている。
奥部14の載置部14e、水栓設置部14c、連結部14dが水栓取付部14Aを構成している。
【0034】
第1凹溝16A及び第2凹溝16Bは、
図12に示すように、溝の延在方向から見た断面視で全体が湾曲しており、さらに洗面ボウル部11、及び載置部12b、14eに湾曲面16aを介して連設されている(
図11参照)。
そして、本実施形態では、第2凹溝16Bの溝幅及び溝深さが第1凹溝16Aよりも大きくなるように設定されている。
【0035】
図7に示すように、支持部材20には、洗面器10を設置するための取付開口部21が形成されている。取付開口部21は、所定位置に装着された洗面器10により上方から覆われる大きさの形状を有している。取付開口部21は、水栓設置部14cに配置される水栓の配管などが挿通される奥側開口部21aと、奥側開口部21aよりも幅広に形成されて洗面ボウル部11が配置される手前側開口部21bと、を有している。
【0036】
支持部材20の上面における手前側開口部21bの手前側及び両側方側の周縁には、洗面器10の外側部12の下端に設けられた載置部12bを載置する設置面22aが設けられている。設置面22aは平坦に連続して設けられている。
さらに、支持部材20における洗面器10の固定部15に対向する位置には、取付面22bが形成されている。取付面22bは、取付開口部21の両側方側から互いの方向に向かって突出する略平坦面に形成されている。換言すれば、取付面22bは、手前側開口部21bの両側方側の端部よりも内側に突出するように形成されている。
【0037】
このような支持部材20を用いて洗面器10を設置するには、取付開口部21に対して上側から洗面器10を配置し、手前側開口部21bに洗面ボウル部11を対向配置(一部挿入)すると共に、奥側開口部21a上に奥部14の水栓設置部14cを配置する。洗面ボウル部11の手前側及び両側方側の外側部12の下端に設けられた載置部12bを、手前側開口部21bの周縁の設置面22aに載置する。また、洗面ボウル部11の奥側における幅方向両側に設けられた固定部15が、取付面22bに対向するように載置する。そして、図示しない固定具を用いて洗面器10と支持部材20とを強固に支持固定することで、洗面器10を支持部材20に支持することができる。さらにその後、段部12Aの内側における外側部12の段部12Aの段側面12hと支持部材20との境界部分にコーキング材を塗布し、その塗布したコーキング材に対して指やヘラを使用して均すようにして仕上げる。
【0038】
次に、本実施形態による洗面器10の作用について説明する。
本実施形態の洗面器10では、
図4、
図5及び
図7に示すように、洗面ボウル部11の外周部に連設される周縁部おける支持部材20との載置部12b、14eと、洗面ボウル部11との境界部に形成される凹溝16A、16Bによって応力が分散されるので、応力集中を小さく抑えることができる。そのため、焼成時の切れやヒートショックによる陶器の割れを防止することができる。とくに本実施形態では、水栓取付部14Aの載置部14eと洗面ボウル部11との境界部に第2凹溝16Bが形成されているので、洗面器10のうち形状が複雑で、かつ応力集中に伴う割れが生じやすい水栓取付部14Aにおいて効果的に応力を分散させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、上方から見た平面視で、従来のように洗面ボウル部11内の隣り合う内側面11c(外側部12の内側面12eに相当)同士を連接する角部11j(
図2及び
図3参照)の曲率半径を大きくする必要がなくなり、洗面ボウル部11の容積を大きくすることが可能となる。そして、洗面ボウル部内11の角部11jの曲率半径が小さな形状となるので、外観をシャープなデザインにすることができる。
【0040】
また、本実施形態では、凹溝16A、16Bの湾曲面16aを介して洗面ボウル部11、及び載置部12b、14eに連設し、凹溝16A、16Bに角部が形成されないので、洗面ボウル部11との境界部における応力集中をより効果的に抑えることができる。
【0041】
このように本実施形態の洗面器10によれば、焼成時の切れやヒートショックによる陶器の割れを防止できるうえ、洗面ボウル部11の容量を大きくすることができ、外観をシャープなデザインにすることができる。
【0042】
以上、本発明による洗面器の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0043】
例えば、本実施形態では洗面ボウル部11を平面視略四角形状の例について説明したが、特に限定されるものではなく、例えば平面視で円形、半円形状、多角形形状などであっても本発明を同様に適用可能である。
例えば
図13及び
図14に示す変形例による洗面器10Aは、平面視で円形をなし、略半円状の洗面ボウル部11Aと、洗面ボウル部11Aの奥側に水栓取付部14Aを有する奥部14が設けられている。この変形例による洗面器10Aは、壁に当接しないタイプであり、中空部12fを有する外側部12の外周面12cにおいて全周にわたって段部12Aが形成されている。また、本変形例の洗面器10Aの下面側には、洗面ボウル部11Aの外周部に連設される周縁部(外側部12の載置部12b)と、洗面ボウル部11との境界部に凹溝16A(凹部)が形成されている。
【0044】
また、本実施形態では、第1凹溝16Aが洗面ボウル部11の外側面11fにおいて連続して設けられているが、部分的に設けられていてもよい。
さらに、本実施形態では、第1凹溝16Aと第2凹溝16Bの両方を設ける構成としているが、いずれか一方であってもかまわない。
【0045】
また、本実施形態の洗面器10において、凹溝16A、16Bを設けることに加え、さらに
図2及び
図3に示すように洗面ボウル部11における隣り合う内側面11c(外側部12の内側面12e)同士を連接する角部11jの曲率半径が30mm以上35mm以下に大きくするようにしてもよい。この場合には、より確実に応力を分散させることができるため、焼成時の切れやヒートショックによる陶器の割れを防止することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、外側部12に設けられる段部12Aを省略することも可能である。
【0047】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。