特許第6899225号(P6899225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899225
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20210628BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20210628BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20210628BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20210628BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20210628BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210628BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20210628BHJP
   C03C 27/10 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08G18/10
   C08G18/64
   C08G18/67 010
   B32B17/10
   B32B27/30 A
   B32B27/16 101
   C03C27/10 D
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-14798(P2017-14798)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-123207(P2018-123207A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】592019589
【氏名又は名称】ダイセル・オルネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相模 貴雄
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/074504(WO,A1)
【文献】 特開平04−077514(JP,A)
【文献】 特開2015−214594(JP,A)
【文献】 特開2012−144634(JP,A)
【文献】 特開2016−196615(JP,A)
【文献】 特開2016−050251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
B32B 17/10
B32B 27/16
B32B 27/30
C03C 27/10
C08G 18/10
C08G 18/64
C08G 18/67
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと水酸基を有する(メタ)アクリレート(C)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(X)、
単官能(メタ)アクリレート(Y)、及び
光重合開始剤(Z)を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記のウレタンプレポリマーが、構成成分としてポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを含むウレタンプレポリマーであり、
前記のポリオール(A)が、重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオールを50重量%以上含むポリオールであり、
前記のポリイソシアネート(B)が、脂肪族ジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネートであり、
前記のポリイソシアネート(B)が、イソホロンジイソシアネートを含む、層間充填用である活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
さらに2官能以上の(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記の単官能(メタ)アクリレート(Y)がノルマルオクチルアクリレートを含む請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
ガラス及びプラスチックから選ばれる第一の透明基材と、ガラス及びプラスチックから選ばれる第二の透明基材との間に請求項1〜3の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコン、テレビ、携帯電話等のディスプレイ用透明基材の層間充填剤等として使用することができる活性エネルギー線硬化性組成物、及び該活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、カーナビ、テレビ、携帯電話等に用いられているディスプレイは、バックライトからの光で画像を映し出している。ディスプレイには、カラーフィルターを含め、ガラス板等のガラス基材やプラスチックフィルム等のプラスチック基材等の様々な透明基材が使用されており、これらの透明基材の光散乱や吸収の影響で、光源からディスプレイ外部へ出力される光量が減少する。この減少幅が大きくなれば、画面が暗くなり、視認性が低下することになる。視認性を上げるため、ディスプレイ表面層の反射防止性を高めたり、光源からの光量を強くしたりする等して対応している。
【0003】
その一環としてガラス基材やプラスチック基材等の透明基材間の空気層を樹脂層に変える方法がある。空気層を樹脂層に変更することで、空気とガラス基材やプラスチック基材との界面における光散乱を防止できるため、出力される光量の低下を防ぐことが可能になる。
【0004】
ガラス基材やプラスチック基材等の透明基材の層間に使用される樹脂に求められる性能としては、透明基材との密着性はもとより、高い耐変形性、高い柔軟性に加え、高い透明性、特に400nmにおける透過率が95%以上であることが求められる。また、高温下における耐性、具体的には95℃での形状変化がないことや色相変化がないことが必要である。このような性能の樹脂を目指して、オレフィン骨格を用いたウレタン(メタ)アクリレートや、これらを含む組成物が以下に示す先行文献に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許1041553号公報
【特許文献2】特許2582575号公報
【特許文献3】特開2002−069138号公報
【特許文献4】特開2002−309185号公報
【特許文献5】特開2003−155455号公報
【特許文献6】特開2010−144000号公報
【特許文献7】特開2010−254890号公報
【特許文献8】特開2010−254891号公報
【特許文献9】特開2010−265402号公報
【特許文献10】特開2011−116965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの先行文献では、水添ポリオレフィンポリオール等の水素化された材料を構成成分として含むウレタン(メタ)アクリレート、及びこれを含む組成物について報告されている。水素化された材料をウレタン(メタ)アクリレートの構成成分として用いることは、その硬化物の酸化による劣化を防ぐ観点からは非常に有効である。しかし、前記のウレタン(メタ)アクリレートは、疎水性が高くなることから組成物に含まれ得るその他の成分(例えば、2官能以上の(メタ)アクリレート)との相溶性が悪くなる傾向があった。したがって、前記のウレタン(メタ)アクリレートを用いる際は、組成物の粘度を調整することや、硬化物に目的とする特性(例えば、硬度、耐変形性、柔軟性)を付与することが困難であった。
【0007】
また、これらの先行文献に記載されているウレタン(メタ)アクリレートは粘度が高く、大スケールでは製造ができないという欠点があった。また、これらのウレタン(メタ)アクリレートやその組成物は低温下で白濁し、透明性が低下するといった欠点や、その硬化物の耐熱性が低いという欠点、つまり、硬化物が高温下で黄変したり、形状変化するといった欠点があった。そのため、ディスプレイ用基材の層間充填剤としては不十分であった。
【0008】
また、スマートフォンやタブレット用基材は薄膜化が求められており、層間充填剤としては硬化収縮性のさらなる低減が求められている。さらに、使用環境の汎用化に伴って、硬化物の耐熱性や、透明基材との密着性のさらなる向上が求められている。
【0009】
従って、本発明の目的は、組成物に含まれ得る成分との相溶性が高く、低粘度のウレタン(メタ)アクリレートを含み、その硬化物が良好な耐酸化性、透明性、及び耐熱性を示す活性エネルギー線硬化性組成物、及び該活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層を有する積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のウレタンプレポリマーと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性組成物が、ガラス基材やプラスチック基材等の透明基材の層間充填用硬化性組成物として有用であることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと水酸基を有する(メタ)アクリレート(C)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(X)、
単官能(メタ)アクリレート(Y)、及び
光重合開始剤(Z)を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、
前記のウレタンプレポリマーが、構成成分としてポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを含むウレタンプレポリマーであり、
前記のポリオール(A)が、重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオールを50重量%以上含むポリオールであり、
前記のポリイソシアネート(B)が、脂肪族ジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネートであることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【0012】
また、前記の活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに2官能以上の(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0013】
また、前記の活性エネルギー線硬化性組成物は、層間充填用であることが好ましい。
【0014】
なお、本発明では、ガラス及びプラスチックから選ばれる第一の透明基材と、ガラス及びプラスチックから選ばれる第二の透明基材との間に前記の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層を有する積層体についても説明する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物におけるウレタン(メタ)アクリレート(X)は、その製造の際に高粘度化することがなく、副生物の副生も少なく、組成物に含まれ得るその他の成分(例えば、2官能以上のアクリルモノマー等)と相溶性が高い。このため、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、低温下での白濁による樹脂の外観悪化がなく、その粘度調整も簡便に行うことができる。また、本発明の硬化物は、耐酸化性、透明性、及び耐熱性が良好である。さらに、前述した様に相溶性が高いことから、目的とする硬化物の特性(例えば、硬度、耐変形性、柔軟性等)を実現することが可能である。また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を層間充填剤として用いた場合、その硬化物と基材との密着保持性が良好である。
【0016】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物をパソコン、カーナビ、テレビ、携帯電話(スマートフォン等)、タブレット等に用いられているディスプレイの透明基材間に充填することで、空気と透明基材界面における光散乱を防止でき、さらに耐熱性試験中に色相変化や形状変化を起こしにくい積層体が得られる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の積層体の一態様を示す概略図である。
図2】本実施例で用いたガラス積層体の態様を示す概略図である。
図3】本実施例で用いたガラス積層体の態様を示す概略図である。図中の(A)はガラス積層体を上から見た図であり、(B)はガラス積層体を横から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと水酸基を有する(メタ)アクリレート(C)との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(X)、単官能(メタ)アクリレート(Y)、及び光重合開始剤(Z)を含む活性エネルギー線硬化性組成物であって、前記のウレタンプレポリマーが、構成成分としてポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを含むウレタンプレポリマーであり、前記のポリオール(A)が、重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオールを50重量%以上含むポリオールであり、前記のポリイソシアネート(B)が、脂肪族ジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネートであることを特徴とする。
【0019】
なお、前記のイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーを「ウレタンプレポリマー」と、前記のポリオール(A)を「(A)」と、前記のポリイソシアネート(B)を「(B)」と、前記の水酸基を有する(メタ)アクリレート(C)を「(メタ)アクリレート(C)」又は「(C)」と、後述の1つの水酸基を有するアルコール(D)を「アルコール(D)」又は「(D)」と、前記の単官能(メタ)アクリレート(Y)を「(メタ)アクリレート(Y)」又は「(Y)」と、後述の光重合開始剤(Z)を単に「(Z)」と称することがある。
【0020】
[ウレタン(メタ)アクリレート(X)]
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)は、ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリレート(C)との反応物であって、前記のウレタンプレポリマーが、構成成分としてポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを含み、前記のポリオール(A)が、重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオールを50重量%以上含むポリオールであり、前記のポリイソシアネート(B)が、脂肪族ジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネートであることを特徴とする。なお、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)は、ウレタンプレポリマーと、(メタ)アクリレート(C)及びアルコール(D)との反応物であってもよい。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、例えば、8000〜20000であることが好ましく、より好ましくは10000〜18000である。重量平均分子量が8000未満であると柔軟性が低下し、樹脂外観が悪化する傾向がある。一方、重量平均分子量が20000を超えると得られるウレタン(メタ)アクリレートの相溶性が悪化する傾向がある。なお、本発明における「重量平均分子量」は、GPCの測定によるポリスチレン換算の値である。
【0022】
[ポリオール(A)]
本発明におけるポリオール(A)は、重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオールを50重量%以上含むポリオールであれば特に限定されない。なお、ポリオールは目的に応じて2種以上を併用しても良い。
【0023】
水添ダイマージオールの重量平均分子量(Mw)は、200〜1000の範囲であれば特に限定されないが、好ましくは300〜800である。重量平均分子量が200未満であるとウレタン(メタ)アクリレートのTgが高くなり、柔軟性が低下し、樹脂外観が悪化し、副生成物も増大する傾向がある。一方、重量平均分子量が1000を超えると得られるウレタン(メタ)アクリレートの相溶性が悪化する傾向がある。
【0024】
水添ダイマージオールとは、ダイマー酸、水添ダイマー酸、及びその低級アルコールエステルの少なくとも1種を触媒存在下で還元して、ダイマー酸のカルボン酸あるいはカルボキシレート部分をアルコールとし、原料に炭素−炭素二重結合を有する場合にはその二重結合を水素化したジオールを主成分としたものである。例えば、水添ダイマージオールの主成分の構造は、以下の式(1)及び式(2)で表すことができる。
【0025】
【化1】
【0026】
式中、R1及びR2は何れもアルキル基であり、かつR1及びR2に含まれる各炭素数、a及びbの合計は30である。
【0027】
【化2】
【0028】
式中、R3及びR4は何れもアルキル基であり、かつR3及びR4に含まれる各炭素数、c及びdの合計は34である。
【0029】
重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオールとしては市販品を用いてもよく、例えば、クローダジャパン社製「プリポール2033」、「プリポール2030」等が挙げられる。
【0030】
本発明におけるポリオール(A)に含まれ得る、重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオール以外のポリオールとしては、例えば、重量平均分子量が1000を超える水添ダイマージオール、ポリオレフィンポリオール、水添ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、及びこれらの変性化合物等が挙げられる。
【0031】
重量平均分子量が1000を超える水添ダイマージオールとしては、前記の水添ダイマージオールのうち重量平均分子量が1000を超えるものが挙げられる。ポリオレフィンポリオールとしては、ポリオレフィン骨格を有するポリオールであれば特に限定されないが、例えば、ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられる。水添ポリオレフィンポリオールとしては、ポリオレフィン骨格を有するポリオールであって水素化されたものであれば特に限定されないが、例えば、水添ポリブタジエンポリオール及び水添ポリイソプレンポリオールが挙げられる。水添ポリブタジエンポリオールとは、ポリブタジエンポリオールを水素化することにより得られるポリオールである。また、水添ポリイソプレンポリオールとは、ポリイソプレンポリオールを水素化することにより得られるポリオールである。
【0032】
重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオール以外のポリオールとしては市販品を用いてもよく、例えば、クローダジャパン社製「プリプラスト3197」、「プリプラスト3199」等、三菱ガス化学社製「トリメチロールプロパン(TMP)」、三洋化成社製「サンニックスHD−402(ペンタエリスリトールのポリプロピレングリコール変性物)」、「サンニックスHD−250(グリセリンのポリプロピレングリコール変性物)」、出光興産社製「エポール」、日本曹達社製「GI−2000」、「GI−3000」、「G−3000」等、長瀬産業社製「KRASOL HLBH P3000」、「KRASOL LBH−P2000」等が挙げられる。
【0033】
本発明のウレタンプレポリマーにおいて、構成成分としての重量平均分子量が200〜1000の水添ダイマージオールの含有量は、ポリオール(A)の全量に対して50重量%以上であれば特に限定されないが、相溶性の向上の観点からは、60重量%以上が好ましく、80重量%がより好ましく、95重量%がさらに好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
【0034】
[ポリイソシアネート(B)]
本発明のポリイソシアネート(B)としては、脂肪族ジイソシアネートを50重量%以上含むポリイソシアネートであれば特に限定されない。なお、ポリイソシアネートは目的に応じて2種以上を併用しても良い。
【0035】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、脂環式ジイソシアネート、直鎖状又は分岐鎖状脂肪族ジイソシアネート、芳香族のイソシアネート類を水添して得られる脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられる。前記脂環式ジイソシアネートとしては特に制限されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。前記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ジイソシアネート;2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の分岐鎖状脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。前記芳香族のイソシアネート類を水添して得られるジイソシアネート化合物としては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ジイソシアネートとしては市販品を用いてもよく、例えば、エボニック社製「VESTANAT IPDI(イソホロンジイソシアネート)」、「TMDI(2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート)」、東ソー社製「HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)」等が挙げられる。
【0037】
ポリイソシアネート(B)に含まれ得る、脂肪族ジイソシアネート以外のポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート基を2以上有する芳香族化合物(例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート、芳香族テトライソシアネート等)、イソシアネート基を3以上有する脂肪族化合物(例えば、脂肪族テトライソシアネート、脂肪族トリイソシアネート等)等が挙げられる。
【0038】
本発明のウレタンプレポリマーにおいて、構成成分としての脂肪族ジイソシアネートの含有量は、ポリイソシアネート(B)全量に対して50重量%以上であれば特に限定されないが、60重量%以上が好ましく、80重量%がより好ましく、95重量%がさらに好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
【0039】
[(メタ)アクリレート(C)]
本発明の(メタ)アクリレート(C)としては、水酸基を有する(メタ)アクリレートであれば特に制限されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシノルマルプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の1つの(メタ)アクリロイル基を有し、さらに水酸基を有する(メタ)アクリレート、及び、ペンタアリスリトールトリアクリレート等の2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、さらに水酸基を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。なお、(メタ)アクリレート(C)は目的に応じて2種以上を併用しても良い。
【0040】
(メタ)アクリレート(C)としては市販品を用いてもよく、例えば、日本触媒社製「HEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート)」等が挙げられる。
【0041】
[アルコール(D)]
本発明のアルコール(D)としては、1つの水酸基を有するアルコールであれば特に限定されないが、例えば、分子量は70から400の範囲にある、炭素数3以上の脂肪族又は脂環式の1級アルコールであることが好ましい。なお、アルコール(D)には(メタ)アクリレート(C)は含まれない。アルコールの炭素数が3未満あるいは分子量が70未満の場合、ウレタン(メタ)アクリレートの製造中に揮発する恐れがあるため好ましくない。また、分子量が400を超えると、イソシアネート基との反応性が低下し、反応時間が長くなる恐れがあるため好ましくない。また、芳香環を有するアルコールは、得られるウレタン(メタ)アクリレート(X)の色相が高くなることや、耐候性が劣る可能性があるため好ましくない。なお、上記のアルコールは目的に応じて2種以上を併用しても良い。
【0042】
アルコール(D)としては、例えば、1−ブタノール、1−ヘプタノール、1−ヘキサノール、ノルマルオクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、シクロヘキサンメタノール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコールやこれらの混合物があげられる。なかでも、2−エチルヘキシルアルコールが沸点、価格、入手容易性の観点から好ましい。
【0043】
[ウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造方法]
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とをウレタン化反応に付すことによりウレタンプレポリマーを形成させた後、該ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリレート(C)とを反応させて製造することができる。なお、ウレタンプレポリマーと、(メタ)アクリレート(C)とを反応させる際に、(メタ)アクリレート(C)と同時にアルコール(D)を使用しても良い。また、ウレタンプレポリマーを形成する際(つまり、ポリオール成分とイソシアネート成分とのウレタン化反応の際)に、単官能(メタ)アクリレート(Y)を相溶化剤として用いても良い。
【0044】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造方法では、例えば「(A)、(B)、及び(C)を一括混合して反応させる方法」や「(B)及び(C)を反応させた後、該ポリマーと(A)を反応させる方法」等の従来の方法に比べて、粘度増加防止、樹脂外観、副生物抑制、硬化物の透明性、耐熱性等が顕著に向上するという効果を奏する。
【0045】
具体的には、「(A)、(B)、及び(C)を一括混合して反応させる方法」により製造されたウレタン(メタ)アクリレートは高粘度となるため、攪拌が困難となる。また、ウレタン化反応が不均一に進行するため、部分的にゲル化する可能性が高いだけでなく、ポリオール(A)を骨格に含まないウレタン(メタ)アクリレート(副産物)が生成し、透過率の低下、柔軟性の低下を引き起こす。また、種々のウレタン(メタ)アクリレートが生成するため、活性エネルギー線硬化性組成物として使用する際、品質の管理が難しくなる。
【0046】
また、「(B)及び(C)を反応させた後、該ポリマーと(A)を反応させる方法」で反応させた場合、ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基全てが(メタ)アクリレート(C)の水酸基と反応したウレタン(メタ)アクリレート(副産物)が生成する。この副生物はポリオール(A)骨格を含んでいないことから、結晶性を示すことや、400nmでの透過率が低下するだけでなく、ゲル化する可能性が高い。
【0047】
本発明のウレタンプレポリマーの形成方法としては、次の方法1〜3が挙げられる。
[方法1]ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)を一括混合して反応させる方法。
[方法2]ポリイソシアネート(B)の中にポリオール(A)を滴下しながら反応させる方法。
[方法3]ポリオール(A)の中にポリイソシアネート(B)を滴下しながら反応させる方法。
【0048】
[方法1]の場合、反応器にポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを仕込み、均一になるまで攪拌する。その後、攪拌をしながら必要に応じて昇温後、ウレタン化触媒を投入してウレタン化を開始する方法が望ましい。ウレタン化触媒を投入後に必要に応じて昇温しても良い。
【0049】
なお、[方法1]では(メタ)アクリレート(Y)を相溶化剤として用いても良い。この場合、ポリオール(A)を(メタ)アクリレート(Y)とともに反応器に仕込み、均一になるまで攪拌した後、ポリイソシアネート(B)を仕込んで均一にする。このことにより、反応液の粘度がさらに低く押さえられる。その後、攪拌をしながら必要に応じて昇温後、ウレタン化触媒を投入してウレタン化を開始する方法が望ましい。ウレタン化触媒を投入後に必要に応じて昇温しても良い。
【0050】
ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を均一に攪拌する前にウレタン化触媒を投入した場合、ウレタン化反応が不均一に進行することによって、得られるウレタンプレポリマーがゲル化するなどの問題が生じる傾向がある。さらに、未反応のポリイソシアネート(B)が系中に残存した状態で反応が終結する場合がある。この場合、後に反応させる(メタ)アクリレート(C)と、残存したポリイソシアネート(B)とが反応することにより得られる副生物により、400nmでの透過率が低下するため好ましくない。
【0051】
このような副生物の含有量は、目的とするウレタンプレポリマーに対して7重量%未満であることが好ましい。7重量%以上であると400nmでの透過率が顕著に低下する。
【0052】
[方法1]は、高粘度であるポリオール(A)をそのまま反応器に仕込める点、ワンポットでウレタンプレポリマーが製造できる点で工業的に優れている。また、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とが均一に混合された状態からウレタン化が開始されるため、化学量論通りの反応が進行する点で優れている。さらに、均一なウレタンプレポリマーが得られること(例えば、分子量分布が狭いウレタンプレポリマーが得られること)や、製造再現性が高いといった点で有効である。一方、後述の[方法2]、[方法3]の様に、ポリオール(A)やポリイソシアネート(B)の何れか一方を滴下してウレタン化する方法では、滴下時間によって系中の反応種の比率が異なるため、均一なウレタンプレポリマーが得られないこと、つまり、得られるウレタンプレポリマーの分子量分布が広範になる点で不利である。
【0053】
[方法2]の場合、反応器にポリイソシアネート(B)及びウレタン化触媒を仕込み、均一になるまで攪拌させ、必要に応じて昇温し、ポリオール(A)を滴下しながら反応させることを特徴とする。
【0054】
なお、[方法2]では(メタ)アクリレート(Y)を相溶化剤として用いても良い。具体的には、ポリイソシアネート(B)、ウレタン化触媒、及び(メタ)アクリレート(Y)を仕込み、均一になるまで攪拌させる。その後、必要に応じて昇温し、ポリオール(A)、又はポリオール(A)及び(メタ)アクリレート(Y)の均一混合液を滴下しながら反応させることを特徴とする。
【0055】
[方法3]の場合、反応器にポリオール(A)及びウレタン化触媒を仕込み、均一になるまで攪拌させ、必要に応じて昇温し、ポリイソシアネート(B)を滴下しながら反応させることを特徴とする。
【0056】
なお、[方法3]では(メタ)アクリレート(Y)を相溶化剤として用いても良い。具体的には、ポリオール(A)、ウレタン化触媒、及び(メタ)アクリレート(Y)を仕込み、均一になるまで攪拌させる。その後、必要に応じて昇温し、ポリイソシアネート(B)、又はポリイソシアネート(B)及び(メタ)アクリレート(Y)の均一混合液を滴下しながら反応させることを特徴とする。
【0057】
[方法3]の場合、大量のポリオール(A)の中にポリイソシアネート(B)を滴下しながら反応させるため、ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基がポリオール(A)の水酸基とウレタン化する。ポリオール(A)がジオールであり、ポリイソシアネート(B)がジイソシアネートである場合、模式的に書くとA−B−A型の両末端が水酸基のジオールが副生し、さらに、これに2モルのポリイソシアネート(B)(ジイソシアネート)が反応し、模式的に書くと、B−A−B−A−B型の両末端がイソシアネート基の化合物が副生し、さらに同様な反応が繰り返され、模式的に書くと以下の構造の化合物が大量に副生する場合がある。
B−[A−B]n−A−B (n=1以上の整数)
【0058】
このような副生物が大量に副生すると、(メタ)アクリレート(C)を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートはアクリル密度が低くなるため、硬化物は十分な架橋密度が得られず、硬度が低下することとなる。
【0059】
なお、[方法2]でも[方法3]で述べた副生物が生成することがあるものの、その量は少ない傾向がある。また、[方法2]の場合は、得られるウレタンプレポリマーの粘度が低い傾向がある。
【0060】
従って、目的とするウレタンプレポリマーを収率良く得るためには、[方法1]、[方法2]が好ましく用いられ、[方法1]が特に好ましく用いられる。
【0061】
なお、いずれの方法でも、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)との反応によりウレタンプレポリマーを形成する際、反応液中の全ての水酸基がウレタン化するまで反応を行うことが好ましい。
【0062】
反応の終点は、反応液中のイソシアネート基濃度を測定し、系内に仕込んだ水酸基の全てがウレタン化した時のイソシアネート基濃度以下となったことや、イソシアネート基濃度が変化しなくなったこと等により確認できる。
【0063】
上記観点から、ポリオール(A)の水酸基とポリイソシアネート(B)のイソシアネート基のモル比は特に限定されないが、例えば、水酸基1モルに対して、イソシアネート基を1.1〜2.0モル、好ましくは1.1〜1.4モル用いることができる。
【0064】
ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリレート(C)とを反応させて、目的とするウレタン(メタ)アクリレート(X)を製造する際、未反応のイソシアネート基が多量に残存すると、ゲル化が起こったり、塗膜の硬化不良となったりするなどの不具合が生じる可能性がある。これらの不具合を避けるため、前記反応において、(メタ)アクリレート(C)に加え、アルコール(D)を使用しても良い。
【0065】
また、これらの不具合を避けるため前記反応において、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のモル数に対して、(メタ)アクリレート(C)の水酸基のモル数が過剰となるように反応させ、かつ、反応液中の残存イソシアネート基濃度が0.05重量%以下に達するまで反応を継続する必要がある。なお、前記反応において、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のモル数1モルに対して、(メタ)アクリレート(C)の水酸基のモル数は、1.0〜1.1モル、好ましくは1.0〜1.05モルとすることができる。なお、アルコール(D)を使用する場合は、(メタ)アクリレート(C)とアルコール(D)との水酸基のモル数の合計量が、上記範囲に含まれることが好ましい。
【0066】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造方法においては、重合を防止する目的で、ジブチルヒドロキシトルエン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等の重合禁止剤存在下で行うことが好ましい。これらの重合禁止剤の添加量は、生成するウレタン(メタ)アクリレート(X)に対して、1〜10000ppm(重量基準)が好ましく、より好ましくは100〜1000ppm、さらに好ましくは400〜1000ppmである。重合禁止剤の添加量がウレタン(メタ)アクリレート(X)に対して1ppm未満であると十分な重合禁止効果が得られないことがあり、10000ppmを超えると生成物の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0067】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造方法においては、分子状酸素含有ガス雰囲気下で行うことが好ましい。酸素濃度は安全面を考慮して適宜選択される。
【0068】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造方法においては、十分な反応速度を得るために、触媒(ウレタン化触媒)を用いて行ってもよい。触媒としては、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ、塩化スズ等を用いることができるが、反応速度面からジブチルスズジラウレートが好ましい。これらの触媒の添加量は通常、生成するウレタン(メタ)アクリレート(X)に対して、1〜3000ppm(重量基準)、好ましくは50〜1000ppmである。触媒添加量が1ppmより少ない場合には十分な反応速度が得られないことがあり、3000ppmより多く加えると耐光性の低下等、生成物の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0069】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造は、公知の揮発性の有機溶剤の存在下で行うことができる。揮発性の有機溶剤はウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造後、減圧により留去することができる。また、活性エネルギー線硬化性組成物中に残った揮発性の有機溶剤を透明基材に塗布した後、減圧(乾燥)により除去することもできる。なお、揮発性の有機溶剤とは、沸点が200℃を超えない有機溶剤を意味する。
【0070】
しかし、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造から活性エネルギー線硬化性組成物の配合まで、一切揮発性の有機溶剤を使用せずに活性エネルギー線硬化性組成物を調製することが、密閉状態での硬化系では好ましい。つまり、本願発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、揮発性の有機溶剤を含まないことが好ましい。ここで、「含まない」とは、活性エネルギー線硬化性組成物全体に占める割合が1重量%以下であることを意味するが、0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
【0071】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)の製造方法においては、反応は温度130℃以下で行うことが好ましく、特に40〜130℃であることがより好ましい。40℃より低いと実用上十分な反応速度が得られないことがあり、130℃より高いと熱によるラジカル重合によって二重結合部が架橋し、ゲル化物が生じることがある。
【0072】
本発明のウレタンプレポリマーを形成する際は、その反応液中のイソシアネート基濃度が、反応に供した水酸基の全てがウレタン化した場合に残存するイソシアネート基濃度以下となるまで反応させてウレタンプレポリマーを形成させることが好ましい。なお、残存イソシアネート基濃度はガスクロマトグラフィー、滴定法等で分析することができる。
【0073】
前記のウレタンプレポリマーから、ウレタン(メタ)アクリレート(X)を製造する際の反応液中のイソシアネート基濃度は、通常、残存イソシアネート基が0.1重量%以下になるまで行う。残存イソシアネート基濃度はガスクロマトグラフィー、滴定法等で分析する。
【0074】
なお、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の(メタ)アクリロイル基濃度の調整のため、末端(メタ)アクリロイル基の一部をアルコキシ基に変性してもよい。アルコキシ基に変性することにより、例えば、基材との濡れ性を調整することができる。
【0075】
前記の「(メタ)アクリロイル基濃度」は、下記式を適用して算出することができる。
【0076】
[(メタ)アクリロイル基濃度の計算式]
「(メタ)アクリロイル基濃度(mol/kg)」=「(メタ)アクリレート(C)の重量(g)」×「(メタ)アクリレート(C)分子中の(メタ)アクリロイル基数」÷「(メタ)アクリレート(C)の分子量」×1000÷「生成するウレタン(メタ)アクリレート(X)の重量(g)」
【0077】
なお、(メタ)アクリレート(C)の「(メタ)アクリロイル基数」は例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートなら(メタ)アクリロイル基数は「1」になり、ペンタエリスリトールトリアクリレートなら(メタ)アクリロイル基数は「3」となる。
【0078】
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の(メタ)アクリロイル基濃度は特に限定されないが、0.05〜0.80mol/kgであることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.70mol/kg、さらに好ましくは0.15〜0.60mol/kgである。
【0079】
(メタ)アクリロイル基濃度が0.05mol/kg未満になると、活性エネルギー線を照射しても硬化が不充分になる恐れがあるし、また凝集力低下によって、基材との初期密着性が低下するので好ましくない。また、(メタ)アクリロイル基濃度が0.80mol/kgを超えると、硬化物の耐熱性が低下するので好ましくない。この耐熱性の低下を具体的に述べると、硬化物を95℃、1000時間の条件で試験すると、塗膜硬度の上昇を引き起こし、基材との密着性が低下することと、硬化収縮を引き起こし、塗膜の形状が変化する不具合のことである。
【0080】
[単官能(メタ)アクリレート(Y)]
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、単官能(メタ)アクリレート(Y)を含有することにより、ウレタン(メタ)アクリレートを製造する上で粘度の調整及び硬化塗膜のTgの調整が的確に行われ、粘度増加防止、樹脂外観、副生物抑制、硬化物の透明性、耐熱性等が向上するという効果を奏する。なお、単官能(メタ)アクリレートとは、分子中にアクリロイル基を1つ有する(メタ)アクリレートを指す。
【0081】
なお、上述の通り、ウレタンプレポリマーを形成する際に、(メタ)アクリレート(Y)を相溶化剤として用いても良い。(メタ)アクリレート(Y)を相溶化剤として用いることで、原料(例えばポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)等)を相溶化することができる。また、ウレタンプレポリマーを形成させる際に、反応液の粘度が上昇する場合があるが、その際に粘度上昇を緩和する、いわゆる希釈剤としても作用する。さらに、ウレタンプレポリマーの形成の際に用いることで、改めて(メタ)アクリレート(Y)をウレタンプレポリマーに加えるとする作業を省くことができるため、作業効率が向上する。
【0082】
(メタ)アクリレート(Y)の使用量は、特に限定されないが、ウレタン(メタ)アクリレート(X)と(メタ)アクリレート(Y)との総量(100重量%)に対して、例えば、5〜60重量%であり、好ましくは10〜50重量%である。5重量%未満であれば得られるウレタン(メタ)アクリレートの粘度が高くなり、取り扱いが難しくなり、ゲル化を生じる場合がある。一方、60重量%を超えると塗布する際、粘度が低すぎて透明基材との濡れ性が悪化し、ウレタン(メタ)アクリレートの柔軟性、耐熱性を低下させる恐れがある。
【0083】
このような単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、ポリエーテル系アクリレート(PO変性品、EO変性品等)でない単官能(メタ)アクリレートであることが耐熱性の観点から好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクリヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレートが好ましく、n−オクチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、単官能(メタ)アクリレートは目的に応じて2種以上を併用しても良い。
【0084】
上記の単官能(メタ)アクリレートは、市販品を用いてもよく、例えば、製品名「β−CEA」(ダイセル・オルネクス社製、β−カルボキシエチルアクリレート)、製品名「IBOA」(ダイセル・オルネクス社製、イソボルニルアクリレート)、製品名「ODA−N」(ダイセル・オルネクス社製、オクチル/デシルアクリレート)、製品名「NOA」(大阪有機化学社製、ノルマルオクチルアクリレート)等が市場から入手可能である。
【0085】
[光重合開始剤(Z)]
本発明の光重合開始剤(Z)は、活性エネルギー線の種類や、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の種類によっても異なり、特に限定されないが、公知の光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を用いることができ、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフインオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、カンファーキノン等が挙げられる。なお、光重合開始剤は目的に応じて2種以上を併用しても良い。
【0086】
光重合開始剤の使用量は特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂分全量100重量部に対して1〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。光重合開始剤の使用量が1重量部よりも少ないと硬化不良を引き起こす恐れがあり、逆に光重合開始剤の使用量が多いと硬化後の塗膜から光重合開始剤由来の臭気が残存することがある。なお、「樹脂分」とは、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる硬化性樹脂を意味し、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(X)、単官能(メタ)アクリレート(Y)、及び2官能以上の(メタ)アクリレート等を指す。なお、光重合開始剤(Z)や溶剤は樹脂分には該当しない。
【0087】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、さらに必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、フィラー、染顔料、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤等が挙げられる。これらの添加物の配合量は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物の樹脂分全量100重量部に対して0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5重量部である。
【0088】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、2官能以上の(メタ)アクリレート等の組成物に含まれ得るその他の成分との相溶性が高いため、その粘度調整を簡便に行うことができる。また、その硬化物に目的とする特性(例えば、硬度、耐変形性、柔軟性)を容易に付与することができる。
【0089】
[2官能以上の(メタ)アクリレート]
2官能以上の(メタ)アクリレートとしては特に限定されないが、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びトリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の分子中に(メタ)アクリロイル基を2以上有する化合物が挙げられる。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、前記の2官能以上の(メタ)アクリレートを含んでいても良く、その含有量は特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性組成物全量(100重量%)に対して、0.1〜90重量%が好ましく、より好ましくは1〜80重量%、さらに好ましくは5〜60重量%である。また、ウレタン(メタ)アクリレート(X)(100重量部)に対する2官能以上の(メタ)アクリレートの含有量は、0.1〜400重量部が好ましく、より好ましくは1〜300重量部、さらに好ましくは3〜200重量部、最も好ましくは5〜150重量部である。
【0090】
<積層体>
本発明の積層体は、ガラス及びプラスチックから選ばれる第一の透明基材と、ガラス及びプラスチックから選ばれる第二の透明基材との間に前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層を有する積層体であれば良く、特に限定されない。好ましくは、第一の透明基材の上に前記活性エネルギー線硬化性組成物を塗布して樹脂層を形成し、前記樹脂層上に第二の透明基材を付着させ、この後、透明基材越しに、例えば、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより、極めて短時間で前記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて、硬化物層を形成させて積層体を得ることができる。図1に、前記積層体の一態様を示す。
【0091】
[透明基材]
透明基材としては、透明ガラス板等のガラス基材の他に透明プラスチックフィルム等のプラスチック基材を使用することが出来る。
【0092】
プラスチック基材としては、既存の透明素材を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が例示される。中でも、特に好ましくは、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が用いられる。
【0093】
[透明基材への塗布・注入・硬化方法]
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を透明基材(例えば、ガラス板等のガラス基材やプラスチックフィルム等のプラスチック基材等)に塗布する場合、塗布方法としては、特に限定されず、吹き付け法、エアレススプレー法、エアスプレー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア法等を用いることが可能である。中でも、ロールコート法が美観性、コスト、作業性等の観点から最も好ましく用いられる。なお、塗布は、プラスチックフィルム等の製造工程中で行う、いわゆるインラインコート法でもよいし、既に製造された透明基材に別工程で塗布を行う、いわゆるオフラインコート法でもよい。生産効率の観点から、オフラインコートが好ましい。また、注入する場合は気泡の発生を防ぐため、カートリッジの使用が好ましい。
【0094】
本発明の積層体における硬化物層の厚みは、30〜300μmが好ましく、より好ましくは50〜200μmである。層厚みが300μmを超える場合には、塗布する樹脂組成物の量が多量となるため、コストが高くなったり、膜厚の均一性が低下したりする場合がある。また、30μm未満である場合には、硬化性樹脂の柔軟特性を発揮できない。
【0095】
紫外線照射を行う時の光源としては、特に限定されないが、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源が用いられる。電子線照射の場合は、50〜1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜5Mradの照射量とすることが好ましい。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の促進を図ってもよい。
【0096】
<活性エネルギー線硬化性組成物の用途>
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、上述の通り層間充填剤(層間充填用硬化性組成物)として使用できるが、その他にも粘着剤用組成物やコーティング剤用組成物、特に光学部材又は光学フィルムに使用される粘着剤用組成物やコーティング剤用組成物として用いることができる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0098】
<物性の測定方法、試験方法、評価方法>
物性の測定方法、試験方法、評価方法を以下に示す。
[重量平均分子量の測定]
ウレタン(メタ)アクリレート等の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーション・ガスクロマトグラフィー)法により、下記の測定条件で、標準ポリスチレンを基準にして求めた。なお、表1におけるウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、有効数字2桁を記載した。
使用機器 : TOSO HLC-8220GPC
ポンプ : DP-8020
検出器 : RI-8020
カラムの種類: Super HZM-M, Super HZ4000, Super HZ3000, Super HZ2000
溶剤 : テトラヒドロフラン
相流量 : 1mL/分
カラム内圧力: 5.0MPa
カラム温度 : 40℃
試料注入量 : 10μL
試料濃度 : 0.2mg/mL
【0099】
[硬化前樹脂組成物の外観試験(樹脂外観)]
硬化前の樹脂組成物の外観を確認した。樹脂組成物を−30℃(マイナス30℃)で1時間保管し、結晶化等による白濁、着色の有無を目視により、以下の基準で評価した。
【0100】
具体的には、目視により白濁、着色のいずれも認定できない場合には、結果は良好(クリアー)であるとして、表2の「樹脂外観」の欄に「○」を記載した。一方、目視により白濁、着色のいずれかが認定された場合には、結果は不良(外観不良)であるとして、表2の「樹脂外観」の欄に「×」を記載した。
【0101】
[2官能モノマーとの相溶試験]
硬化前の樹脂組成物に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製、製品名 HDDA)を、樹脂組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート含有物と同重量比となるように加え、試験溶液を得た。また、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートをトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・オルネクス社製、製品名 IRR214K)に代えたこと以外は同様の操作を行い、試験溶液を得た。
【0102】
両方の試験溶液について、目視により白濁・分離を確認した。白濁及び分離のいずれも確認できない場合には、結果は良好(クリアー)であるとして、表2の「相溶性」の欄に「○」を記載した。一方あるいは両方のモノマー溶液に対して、目視により白濁、分離のいずれかが認定された場合には、結果は不良(外観不良)であるとして、表2の「相溶性」の欄に「×」を記載した。
【0103】
[硬化物の透明性の評価]
図2に示したように、マイクログラス(寸法:1.0×76×26mm)上に、シリコンラバーで方形の枠を作り(内寸:1.0×40×10mm)、その枠の中に活性エネルギー線硬化性組成物を1.0g滴下した。70℃で加温し、表面が平滑になったところで、下記条件で紫外線照射した。
【0104】
(紫外線照射条件)
照射強度 :120W/cm
照射距離 :10cm
コンベア速度:5m/分
照射回数 :2回
【0105】
分光光度計(製品名UV-VISIBLE SPECTROPHOTO METER、島津製作所社製)を用いて、マイクロガラスだけのものをリファレンスとして透過率を測定し、以下の基準で評価した。
【0106】
400nmにおける透過率が95%以上であった場合、透過率は良好であるとして、表2の「透明性」の欄に「○」を記載した。一方、400nmにおける透過率が95%未満の場合には、透過率は不良であるとして、表2の「透明性」の欄に「×」を記載した。
【0107】
[硬化物の耐熱性の評価]
図3に示したガラス積層体(試験片A)を以下の耐熱条件下で保管し、試験片AのAPHA(色相)及び形状の変化を観察した。なお、図3の(A)はガラス積層体を上から見た図であり、同図の(B)はガラス積層体を横から見た図である。
【0108】
(試験片Aの作成)
図3に示したガラス積層体(試験片A)を次のようにして作成した。まず、ガラス板(厚さ1mm、5cm四方)の中心に活性エネルギー線硬化性組成物0.5g(±0.01g)を正確に秤量してのせた。さらにその上から同形状のガラス板を被せ、樹脂層を円状(4cm径)に広げ、ガラス積層体を得た。その後、該ガラス積層体の片方のガラス面から高圧水銀灯(アイグラフィックス社製)を用いて、下記の条件で紫外線照射を行い、樹脂組成物硬化物層を有するガラス積層体(試験片A)を得た。
【0109】
(紫外線照射条件)
照射強度 :120W/cm
照射距離 :10cm
コンベア速度:5m/分
照射回数 :8回(両面各4回)
【0110】
(耐熱条件下での保管)
小型環境試験器(製品名SH-641、エスペック社製)を用い、温度95℃の条件で1000時間、試験板(ガラス積層体、硬化後)を保管した。
【0111】
(APHAの測定)
APHAの測定は、分光式色彩計(製品名Spectro Color Meter SE2000、日本電色工業社製)を用いて、耐熱条件下での保管前後のガラス積層体のAPHAを測定し、以下の基準で評価した。
【0112】
耐熱条件下での保管前後のAPHAの増加が15以上50未満の場合、色相の観点から耐熱性は良好であるとして、表2の「耐熱性」の「色相変化」の欄に「○」を記載した。一方、耐熱条件下での保管前後のAPHAの増加が50以上の場合、色相の観点から耐熱性は不良であるとして、表2の「耐熱性」の「色相変化」の欄に「×」を記載した。
【0113】
[硬化物の耐熱性の評価(形状変化)]
耐熱条件下での保管後の試験片Aの形状変化の有無を目視により測定し、以下の基準で評価した。
【0114】
具体的には、目視により形状変化(そり、シワの発生、柄図板のズレ等の何らかの形状変化)が認定できない場合には、結果は良好であるとして、表2の「耐熱性」の「形状変化」の欄に「○」を記載した。一方、目視により形状変化が認定された場合には、結果は不良であるとして、表2の「耐熱性」の「形状変化」の欄に「×」を記載した。
【0115】
[硬化物の耐熱性の評価(塗膜硬度の変化)]
ガラス(寸法:2×100×200mm)板上に、シリコンラバーで正方形の枠を作り(内寸:7×40×40mm)、その枠の中に予め加温しておいた活性エネルギー線硬化性組成物をなるべく気泡が発生しないようにゆっくりと投入した。なお、気泡が目立つ時は80℃のオーブンに入れることで、気泡を抜いた。その後、80℃で加温し、表面が平滑になったところで、下記の条件で紫外線照射を行い、さらに塗膜を裏返しにして、同様の条件で紫外線を照射し、試験片Bを得た。
【0116】
(紫外線照射条件)
照射強度 : 120W/cm
照射距離 : 10cm
コンベア速度: 3.5m/分
照射回数 : 5回
【0117】
自動定圧荷重器(GS−610、(株)テクロック社製)を用い、JIS K 6253に準拠し、試験片BのA硬度を測定した。なお、測定時の荷重は500g、荷重降下速度は9mm/sとした。その後、試験片Bを、温度95℃の条件で1000時間保管した。保管前後で硬度の数値が±20%未満であれば、表2の「耐熱性」の「硬度変化」の欄に「○」を記載した。一方、塗膜硬度の数値が±20%以上であれば、表2の「耐熱性」の「硬度変化」の欄に「×」を記載した。なお、前記の「硬度の数値」は、保管後の試験片Bの硬度を、保管前の試験片Bの硬度で除することにより算出した。
【0118】
<合成例>
ウレタン(メタ)アクリレート(X)の合成例、実施例について、以下に説明する。
【0119】
[イソシアネート基濃度の測定]
イソシアネート基濃度は、以下のように測定した。なお、測定は100mLのガラスフラスコでスターラーによる攪拌の下で行った。
【0120】
(ブランク値の測定)
15mLのTHFに、ジブチルアミンのTHF溶液(0.1N)15mLを加え、さらにブロモフェノールブルー(1%メタノール希釈液)を3滴加えて加えて青色に着色させた後、規定度が0.1NであるHCl水溶液で滴定した。変色がみられた時点のHCl水溶液の滴定量をVb(mL)とした。
【0121】
(実測イソシアネート基濃度の測定)
サンプルをWs(g)秤量し、15mLのTHFに溶解させ、ジブチルアミンのTHF溶液(0.1N)を15mL加えた。溶液化したことを確認した後、ブロモフェノールブルー(1%メタノール希釈液)を3滴加えて青色に着色させた後、規定度が0.1NであるHCl水溶液で滴定した。変色がみられた時点のHCl水溶液の滴定量をVs(mL)とした。
以下の計算式により、サンプル中のイソシアネート基濃度を算出した。
イソシアネート基濃度(重量%)=(Vb−Vs)×1.005×0.42÷Ws
【0122】
以下に合成例、比較合成例で用いた(A)〜(D)、(Y)、(Z)を説明する
【0123】
[ポリオール(A)]
「プリポール2033」(化合物名 水添ダイマージオール、水酸基価210mgKOH/g、重量平均分子量534);製品名「Pripol 2033−LQ−(GD)」(クローダジャパン社製)
「TMP」(化合物名 トリメチロールプロパン(TMP));製品名「TMP」(三菱ガス化学社製)
「プリプラスト3199」(化合物名 水添ポリオール(ポリエステルポリオール)、水酸基価55mgKOH/g、重量平均分子量1934.5);製品名「Priplast 3199−LQ−(GD)」(クローダジャパン社製)
「プリプラスト3197」(化合物名 水添ポリオール(ポリエステルポリオール)、水酸基価58mgKOH/g、重量平均分子量2040);製品名「Priplast 3197−LQ−(GD)」(クローダジャパン社製)
「PT−2001」(化合物名 ポリプロピレングリコール,水酸基価57.1mgKOH/g、重量平均分子量1964);製品名「サンニックスPT−2001」(三洋化成工業社製)
「P3000」(化合物名 水素化ポリブタジエングリコール,水酸基価0.56 Phth meq/g(無水フタル酸換算)、不揮発分99.98%、重量平均分子量3571);製品名「KRASOL HLBH P3000」(日本曹達社製)
「PP400」(化合物名 ポリプロピレングリコール,水酸基価277mgKOH/g、重量平均分子量404);製品名「サンニックスPP400」(三洋化成工業社製)
【0124】
[ポリイソシアネート(B)]
「IPDI」(化合物名 イソホロンジイソシアネート);製品名「VESTANAT IPDI」(エボニック社製)
「HDI」(化合物名 ヘキサメチレンジイソシアネート);製品名「HDI」(日本ポリウレタン社製)
「TMDI」(化合物名 2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート);製品名「TMDI」(エボニック社製)
【0125】
[(メタ)アクリレート(C)]
「HEA」(化合物名 2−ヒドロキシエチルアクリレート);製品名「β−HEA アクリル酸2−ヒドロキシエチル」(日本触媒社製)
【0126】
[アルコール(D)]
「2−EH」;2−エチルヘキシルアルコール(三協化学社製)
【0127】
[(メタ)アクリレート(Y)]
「NOA」(化合物名 ノルマルオクチルアクリレート);製品名「NOAA」(大阪有機化学社製)
「IBOA」(化合物名 イソボルニルアクリレート);製品名「IBOA」(ダイセル・オルネクス社製)
【0128】
[光重合開始剤(Z)]
Irg184(化合物名 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン);製品名「Irg184」(BASFジャパン(株)社製)
【0129】
以下に、合成例、比較合成例を記載するが、濃度表記の「ppm」、「重量%」、「重量%分」は、特別な記載がない限り、(理論的に)得られるウレタン(メタ)アクリレート含有物全体に対する濃度である。
【0130】
(合成例1)
温度計、攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、1.1gのTMP、800ppmのジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、128.6g(30重量%分)のNOAを充填した。内温を70℃にし、1時間攪拌して系内を均一化させた後、再び50℃に冷却し、95.9gのIPDIを投入した。系内を均一化させた後、100ppmのジブチルスズジラウレート(DBTDL)を加えた。次いで182gのプリポール2033を2時間かけて滴下し、ウレタンプレポリマーを作製した。この際、内温を70℃に設定し、1時間熟成させた。
【0131】
なお、反応が完結したことは、反応液中のイソシアネート基濃度が、反応に供した水酸基の全てがウレタン化した時の残存イソシアネート基濃度(以下、「理論終点イソシアネート基濃度」という)以下となったことで確認した。本例では、反応液中のイソシアネート基濃度が理論終点イソシアネート基濃度(1.73重量%)以下であることを確認した後、次の操作へ移行した。
【0132】
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基濃度を確認した後、10.9gの2−EH、及び100ppmのDBTDLを投入し、1時間熟成させた。その後、9.9gのHEAを投入し、3時間熟成させた。イソシアネート基濃度が0.05濃度%未満であることを確認してから、反応を終了させ、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(X−1)を得た。
【0133】
なお、上記反応に用いたプリポール2033、TMP、IPDI、HEA、2−EHのモル比は、4.0:0.1:5.15:1.02:1.0であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.28mol/kgであった。
【0134】
(合成例2)
TMPと2−EHを使用せず、ポリイソシアネート(B)及び(メタ)アクリレート(C)のモル比を変更し、さらに(メタ)アクリレート(Y)として20重量%分のNOAを使用したこと以外は合成例1と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(X−2)を得た。なお、上記反応に用いたプリポール2033、IPDI、HEAのモル比は4.0:5.0:2.02であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.58mol/kgであった。
【0135】
(合成例3)
(メタ)アクリレート(Y)として20重量%分のIBOAを使用したこと以外は合成例2と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(X−3)を得た。また、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.58mol/kgであった。
【0136】
(合成例4)
ポリイソシアネート(B)としてHDIを使用し、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)のモル比を変更したこと以外は合成例2と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(X−4)を得た。なお、上記反応に用いたプリポール2033、HDI、HEAのモル比は、5.0:6.0:2.02であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.51mol/kgであった。
【0137】
(合成例5)
ポリイソシアネート(B)としてTMDIを使用し、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)のモル比を変更したこと以外は合成例2と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(X−5)を得た。なお、上記反応に用いたプリポール2033、TMDI、HEAのモル比は、5.0:6.0:2.02であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.48mol/kgであった。
【0138】
(比較合成例1)
プリポール2033の代わりに、ポリオール(A)としてプリプラスト3199を使用し、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)のモル比を変更し、さらに(メタ)アクリレート(Y)として30重量%分のNOAを使用したこと以外は合成例2と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(CX−1)を得た。なお、上記反応に用いたプリプラスト3199、IPDI、HEAのモル比は6.0:7.0:2.02であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.14mol/kgであった。
【0139】
(比較合成例2)
ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)のモル比を変更し、さらに(メタ)アクリレート(Y)として20重量%分のNOAを使用したこと以外は比較合成例1と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(CX−2)を得た。なお、上記反応に用いたプリプラスト3199、IPDI、HEAのモル比は3.0:4.0:2.02であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.27mol/kgであった。
【0140】
(比較合成例3)
ポリオール(A)としてプリプラスト3197を使用し、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)のモル比を変更し、さらに(メタ)アクリレート(Y)として20重量%分のNOAを使用したこと以外は比較合成例1と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(CX−3)を得た。なお、プリプラスト3197、IPDI、HEAのモル比は、3.0:4.0:2.02であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.29mol/kgであった。
【0141】
(比較合成例4)
ポリオール(A)としてPT−2001を使用し、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)のモル比を変更し、さらに(メタ)アクリレート(Y)として20重量%分のNOAを使用したこと以外は比較合成例1と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(CX−4)を得た。なお、サンニックスPT−2001、IPDI、HEAのモル比は4.0:5.0:2.02であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.22mol/kgであった。
【0142】
(比較合成例5)
ポリオール(A)としてTMP及びP3000、アルコール(D)として2−EHを使用し、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)及び(メタ)アクリレート(C)のモル比を変更し、さらに(メタ)アクリレート(Y)として20重量%分のNOAを使用したこと以外は比較合成例1と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(CX−5)を得た。なお、TMP、P3000、IPDI、HEA、2−EHのモル比は0.3:1.4:2.85:1.82:0.2であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.31mol/kgであった。
【0143】
(比較合成例6)
ポリオール(A)としてPP400を使用し、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)のモル比を変更し、さらに(メタ)アクリレート(Y)として20重量%分のNOAを使用したこと以外は比較合成例1と同様にして、ウレタン(メタ)アクリレート含有物(CX−6)を得た。なお、PP400、IPDI、HEAのモル比は4.0:5.0:2.02であった。なお、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度は0.23mol/kgであった。
【0144】
以上のウレタン(メタ)アクリレート含有物(X−1)〜(X−5)、(CX−1)〜(CX−6)の構成、及びウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度について、表1に記載する。なお、表中のウレタン(メタ)アクリレートの構成成分である、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、(メタ)アクリレート(C)、及びアルコール(D)はそれぞれのモル比を記載しており、(メタ)アクリレート(Y)はウレタン(メタ)アクリレート含有物全体に対する濃度(%)を示している。
【0145】
ウレタン(メタ)アクリレート含有物(X−1)〜(X−5)、(CX−1)〜(CX−6)に含まれる(A)〜(D)、(Y)とその含有量、ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基濃度、重量平均分子量を表1にまとめる。
【0146】
【表1】
【0147】
(活性エネルギー線硬化性組成物の調製)
100重量部のウレタン(メタ)アクリレート含有物(X−1)〜(X−5)、(CX−1)〜(CX−6)のそれぞれに、光重合開始剤として3重量部のIrg184を加えて活性エネルギー線硬化性組成物とした。
【0148】
<試験結果>
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について前記の各試験・評価を行い、その結果を表2に記載した。なお、表2では、活性エネルギー線硬化性組成物を、単に「硬化前組成物」と称する。
【0149】
【表2】
【0150】
実施例に示したように、本発明のウレタン(メタ)アクリレート(X)を含む活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化前の樹脂の外観が良好であると共に相溶性が良好であることが明らかになった。さらに、その硬化物は、長時間、高熱に付したとしても色相変化や形状変化、並びに塗膜硬度が変化しないとする性能を有することが明らかになった。
【符号の説明】
【0151】
1 活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層
2 透明基材
3 透明基材
4 シリコンラバー
11 樹脂
21 マイクログラス
31 樹脂
41 ガラス板
図1
図2
図3