(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態に係る燃料電池システムを示すブロック図、
図2(A)は本発明の一実施の形態に係る放熱器及びラジエータを面方向から視た正面図、
図2(B)はその放熱器及びラジエータの側面図、
図3(A)及び
図3(B)は本発明の他の実施の形態に係る放熱器を示す斜視図である。
【0018】
図1に示す燃料電池システム1は、燃料電池10と、装置筐体11と、燃料タンク12と、燃料ポンプ14と、ブロワ16と、凝縮器18と、気液分離器19と、水タンク20と、水ポンプ22と、外部燃料タンク24と、外部燃料ポンプ26と、水循環配管27と、ラジエータ28と、ラジエータ冷却ファン30と、燃料循環配管32と、プレフィルタ33と、循環ポンプ34と、イオン交換器36と、放熱器38と、液体濃度センサ40と、を備えている。上記の燃料電池システム1の構成のうち、燃料電池10と、燃料タンク12と、燃料ポンプ14と、ブロワ16と、凝縮器18と、気液分離器19と、水タンク20と、水ポンプ22と、水循環配管27と、ラジエータ28と、ラジエータ冷却ファン30と、燃料循環配管32と、プレフィルタ33と、循環ポンプ34と、イオン交換器36と、放熱器38と、液体濃度センサ40とは、装置筐体11に収容され、外部燃料タンク24と、外部燃料ポンプ26とは、装置筐体11外に設置されている。
【0019】
燃料電池10は、液体燃料を消費して発電する、ダイレクトメタノール型の燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)である。燃料電池10は、発電セル101が積層された発電装置を備えており、家庭・産業用の電源等として用いられ、外部負荷(不図示)に対して電力を供給する。この燃料電池10は、積層された複数の発電セル101と、複数の発電セル101をその積層方向に挟む一対の集電体102と、発電セル101及び一対の集電体102を発電セル101の積層方向に挟む一対のエンドプレート103とを備えている。
【0020】
燃料電池10は、燃料供給口10Aと、空気供給口10Bと、燃料排出口10Cと、空気排出口10Dとを備えている。燃料供給口10Aは、燃料ポンプ14を介して燃料タンク12に連通されている。また、空気供給口10Bは、ブロワ16を介してシステム外部に連通されている。また、燃料排出口10Cは、燃料タンク12に連通されている。さらに、空気排出口10Dは、凝縮器18及び気液分離器19を介して水タンク20に連通されている。
【0021】
燃料タンク12には、数重量%に希釈化されたメタノール水溶液(MeOH)が貯蔵されている。システムが起動されると、燃料ポンプ14により、メタノール水溶液が、燃料タンク12から燃料供給口10Aを通してアノード(燃料極)に供給され、ブロワ16により、外部の空気が空気供給口10Bを通してカソード(空気極)に供給される。
【0022】
アノードでは、下記(1)式で示すように、触媒による酸化反応により二酸化炭素、水素イオン、及び電子が生成される。アノードで生成された電子が外部の回路を通ることで、ユーザ側の電子機器等の外部負荷に電力が供給される。一方、アノードで生成された水素イオンは、高分子電解質膜を通過してカソードに移動する。カソードでは、下記(2)式に示すように、触媒による酸素の還元反応により水が生成される。
CH
3OH+H
2O→CO
2+6H
++6e
− … (1)
3/2O
2+6H
++6e
−→3H
2O … (2)
【0023】
燃料電池10のアノードで生じた生成物(二酸化炭素等)及び未反応のメタノールは、燃料排出口10Cから排出されて燃料タンク12に戻される。燃料タンク12に戻されたメタノールは、燃料タンク12に留まり、一方、燃料タンク12に戻された二酸化炭素は、システム外部に放出される。燃料電池10のカソードで生じた生成物に含まれる水蒸気は、空気排出口10Dから排出され、凝縮器18において概ね液化される。凝縮器18から排出された水は、水タンク20に送られ、一方、凝縮器18で液化されなかったガス成分(水蒸気等)は気液分離器19からシステム外部に放出される。
【0024】
凝縮器18は、熱交換器であり、ラジエータ28から水循環配管27を介して冷却水が供給されている。冷却水は、水循環配管27を介して凝縮器18とラジエータ28との間を循環しており、凝縮器18において、空気排出口10Dから排出された水蒸気と熱交換して、燃料電池から発生する熱を除去している。これによって、空気排出口10Dから排出された水蒸気が液化される。
【0025】
ラジエータ28は、比較的高温に上昇した冷却水を冷却するために設けられている。このラジエータ28は、矩形状の外形を有し、水循環配管27に設けられている。ラジエータ28は、装置筐体11の排気孔111に面して配されている。
【0026】
水タンク20は、水を収容しており、水ポンプ22を介して燃料タンク12に連通されている。また、外部燃料タンク24は、高濃度のメタノール水溶液を収容しており、外部燃料ポンプ26を介して燃料タンク12に連通している。外部燃料タンク24に貯蔵された高濃度のメタノール水溶液が、外部燃料ポンプ26により燃料タンク12に供給されると共に、水タンク20に貯蔵された水が、水ポンプ22により燃料タンク12に供給されることにより、数重量%の濃度に希釈化されたメタノール水溶液が、燃料タンク12に収容される。
【0027】
ラジエータ冷却ファン30は、ラジエータ30と装置筐体11の排気孔111との間に、ラジエータ28のコア面及び排気孔111に面して配されている。このラジエータ冷却ファン30は、排気孔111を通して装置筐体11の内側から外側へ送風することにより、ラジエータ28を冷却する。
【0028】
燃料循環配管32は、燃料タンク12に貯蔵された液体燃料を循環させるための配管であり、その両端が燃料タンク12に連通している。この燃料循環配管32としては、液体燃料(本実施形態では、メタノール水溶液)に対して耐腐食性を有し、可撓性に富んだ材料により構成されていることが好ましく、具体的には、シリコンチューブを用いることが好ましい。なお、燃料循環配管32を構成する材料は、特に上述に限定されず、後述する放熱器38に含まれる放熱配管382を構成する材料と同じ材料を用いてもよい。この場合、燃料循環配管32は、後述する放熱器38と同様の作用効果を奏することができ、イオン系不純物の除去性能の低下を抑制することができる。
【0029】
この燃料循環配管32には、その上流側から下流側に向けて、プレフィルタ33、循環ポンプ34、液体濃度センサ40、放熱器38、及びイオン交換器36がこの順で設けられている。なお、「上流側」や「下流側」とは、流体の流れ方向を基準とし、ここでは、燃料循環配管32を流れる液体燃料の流れ方向を基準とする。
【0030】
イオン交換器36は、液体燃料に含まれるイオン系不純物を除去するために設けられている。このイオン系不純物としては、燃料電池10における発電反応により生成され、燃料電池システム1の系内に混入したアルミニウムイオン(Al
3+)、ニッケルイオン(Ni
2+)、鉄イオン(Fe
2+)、クロムイオン(Cr
3+)等の酸性のイオン系不純物(陽イオン不純物)や、外部燃料タンク24から送られる高濃度のメタノール水溶液に混入、又は、ブロワ16を通じて外部から燃料電池システム1の系内に混入した塩素イオン(Cl
−)といったハロゲン化物イオン等の塩基性のイオン系不純物(陰イオン不純物)が挙げられる。
【0031】
このようなイオン交換器36は、粒状とされたイオン交換樹脂361と、イオン交換樹脂361を収容する容器362と、を有している。容器362は筒形状とされ、その両端が燃料循環配管32に接続されている。
【0032】
イオン交換樹脂361は、陽イオン交換樹脂及び/又は陰イオン交換樹脂を含んでいる。陽イオン交換樹脂は、陽イオン不純物に対して交換反応性を有する樹脂組成物であり、例えば、スチレン系の樹脂母体(例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体)に、イオン交換基として、スルホ基やカルボキシル基を含むものを用いる。陰イオン交換樹脂は、陰イオン不純物に対して交換反応性を有する樹脂組成物であり、例えば、スチレン系の樹脂母体(例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体)に、イオン交換基として、アンモニウム基やアミノ基を含むものを用いる。
【0033】
なお、本実施形態では、一つの容器362に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合して充填しているが、これら陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを別々の容器に充填してもよい。また、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂の何れか一方のみを設けてもよい。
【0034】
放熱器38は、燃料循環配管32に設けられ、当該燃料循環配管32を通る液体燃料を放熱するために設けられている。この放熱器38は、燃料循環配管32において、イオン交換器36よりも上流側に位置すると共に、液体濃度センサ40よりも下流側に位置している。なお、本実施形態では、イオン交換器36と放熱器38との間に燃料循環配管32の一部が介しているが、特にこれに限定されず、イオ交換器36と放熱器38とが隣接していてもよい。
【0035】
この放熱器38は、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、燃料循環配管32に連通する放熱配管382を含んでいる。放熱配管382は、複数の直管部382aと、隣接する直管部382a同士を上流側から下流側へと連結する複数のU字状の屈曲部382bと、を含んでいる。これによって、放熱配管382がS字状を複数回に亘り形成されたサーペンタイン状になっている。
【0036】
それぞれの直管部382aは
図2(A)中+X方向又は
図2(A)中−X方向に延在しており、複数の直管部382aは
図2(A)中−Z方向又は
図2(A)中+Z方向に沿って並列されている。本実施形態では、サーペンタイン状とされた放熱配管382が、ラジエータ28のコア面(ラジエータ28に対してラジエータ冷却ファン30と対向する側と反対側のコア面)に対向している。
【0037】
放熱配管382をラジエータ28に対向させるに際しては、その高温側(放熱配管382の上流側)をラジエータ28の低温側(水循環配管27の下流側)と対向させると共に、その低温側(放熱配管382の下流側)をラジエータ28の高温側(水循環配管27の上流側)と対向させることが好ましい。これによって、放熱配管382とラジエータ28との温度差を大きくすることができ、放熱配管382を通る液体燃料を効率良く放熱することができる。
【0038】
なお、放熱配管382の形態は、特に上述に限定されない。例えば、上述では、S字状を複数回に亘り形成することでサーペンタイン状としていたが、放熱配管382を一つのS字状に形成してもよい。また、放熱配管382をコイル状に形成してもよい。このコイル状とは、
図3(A)に示すように、放熱配管382を螺旋状に等間隔で巻いたコイル状であってもよいし、
図3(B)に示すように、放熱配管382の曲率半径を徐々に小さくして同一平面上で巻いた平面コイル状であってもよい。
【0039】
このような放熱配管382としては、液体燃料(本実施形態では、メタノール水溶液)に対して耐腐食性を有する材料により構成されており、燃料循環配管32よりも高い放熱性を有していることが好ましい。例えば、放熱配管382を構成する材料の熱伝導率が、燃料循環配管32を構成する材料の熱伝導率に対して相対的に高いことが好ましい。また、放熱配管382の肉厚が、燃料循環配管32の肉厚に対して相対的に薄いことが好ましい。このような放熱配管382を構成する材料としては、燃料循環配管32を構成するフッ素樹脂に対して熱伝導率の高い材料が好ましく、具体的には、フッ素樹脂又はステンレス鋼を主成分とする材料を用いることが好ましい。
【0040】
液体濃度センサ40は、循環ポンプ34から送られる燃料タンク12内の液体燃料のメタノール濃度を測定する濃度センサである。このような濃度センサ40としては、公知の液体濃度センサを適宜用いることができる。本実施形態では、液体濃度センサ40は、燃料循環配管32において、放熱器38よりも上流側に位置すると共に、循環ポンプ34よりも下流側に位置している。
【0041】
次に、本実施形態の燃料電池システム1の作用について説明する。
【0042】
燃料電池システム1を起動させると、液体燃料が燃料電池10のアノードに供給され、空気が燃料電池10のカソードに供給され、上記(1)式及び(2)式に示す酸化還元反応により、燃料電池10が発電する。ここで、上記(1)式及び(2)式に示す化学反応は、発熱反応でもある。このため、燃料電池10のアノードから排出されるアノード生成物及び未反応のメタノールは、燃料電池10の運転温度(例えば、常温以上で80℃以下)まで熱せされて燃料タンク12に戻されることとなる。
【0043】
ここで、一般に、濾過したい溶液の凍結開始温度よりも高い温度域においては、イオン交換樹脂は、温度が低くなると、これに応じて、イオン交換反応性が向上する傾向にあり、一方で、温度が高くなると、これに応じて、イオン交換反応性が低下する傾向にある。このため、燃料電池の運転温度近傍まで加熱された高温の液体燃料にイオン交換樹脂が曝されてしまうと、イオン交換樹脂のイオン交換反応性が低下して、当該イオン交換樹脂によるイオン系不純物の除去性能が低下するおそれがある。
【0044】
また、特に、イオン交換樹脂に陰イオン交換樹脂を用いた場合においては、以下の問題が生じ得る。すなわち、陰イオン交換樹脂の耐熱温度は、一般的に60℃程度であり、燃料電池システムの運転環境によっては、燃料電池の運転温度が陰イオン交換樹脂の耐熱温度よりも高くなる可能性がある。このため、燃料電池の運転温度近傍まで加熱された高温の液体燃料にイオン交換樹脂が曝されてしまうと、陰イオン交換樹脂が分解してしまい、陰イオン系不純物の除去性能が著しく低下するおそれがある。
【0045】
このように、燃料電池の運転温度近傍まで加熱された高温の液体燃料にイオン交換樹脂が曝されてしまうと種々の問題が生じてしまうおそれがある。
【0046】
これに対し、本実施形態では、液体燃料を通す燃料循環配管32に、イオン交換器36と放熱器38とを設け、イオン交換器36よりも上流側に放熱器38を配置し、この放熱器38を介して、液体燃料がイオン交換器36に供給されている。これによって、放熱器38を通過する前の温度に比べて低温の液体燃料がイオン交換器36に供給されることとなるため、イオン交換樹脂361が高温の液体燃料に曝され難くなる。この結果、イオン交換樹脂361によるイオン系不純物の除去性能の低下を抑制することができる。また、イオン交換樹脂に陰イオン交換樹脂を用いた場合においては、陰イオン交換樹脂が分解されてしまうのを抑制することもできる。
【0047】
また、本実施形態では、放熱器38の少なくとも一部(本実施形態では、サーペンタイン状とされた放熱配管382)を、ラジエータ28に対向させている。この場合、ラジエータ28に並設されるラジエータ冷却ファン30によって放熱器38廻りに対流が生じるため、放熱器38による液体燃料の放熱が促進される。これにより、イオン交換樹脂が高温の液体燃料に曝されてしまうのをより確実に抑制することができる。また、本実施形態の燃料電池システム1では、放熱器38をラジエータ28に対向させることにより、上記の通り、液体燃料の放熱が促進され、これにより、液体燃料から奪った熱を冷却することが可能となる。このため、放熱器38において液体燃料から奪った熱を冷却するための冷却手段を別途設ける必要がない。これにより、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。また、放熱器38専用の冷却手段を必要としないため、当該冷却手段に用いる冷却ファンを別途設ける必要がなくなり、燃料電池システム1における消費電力を抑えることができる。
【0048】
また、本実施形態では、放熱器38に含まれる放熱配管382の一部をコイル状又はS字状に形成していることで、放熱配管382の全長を長くすることができる。これにより、放熱配管382の総表面積が大きくなるので、放熱器38での液体燃料の放熱がさらに促進される。また、放熱配管382の一部をコイル状又はS字状に形成することで、放熱配管382をコンパクトに集合させることができるので、放熱器38の小型化を図ることもできる。
【0049】
また、本実施形態では、放熱配管382を構成する材料の熱伝導率が、燃料循環配管32を構成する材料の熱伝導率に対して相対的に高くなっている。この場合、液体燃料の熱が放熱配管382を伝って外部に放出され易くなるので、放熱器38による液体燃料の放熱をより一層促進することができる。
【0050】
また、本実施形態では、放熱配管382の肉厚が、燃料循環配管32の肉厚に対して相対的に薄くなっている。この場合、液体燃料の熱が放熱配管382を伝って外部に放出され易くなるので、放熱器38による液体燃料の放熱をより一層促進することができる。
【0051】
また、放熱配管382を構成する材料として、フッ素樹脂又はステンレス鋼を主成分とする材料を用いた場合、これらの材料が燃料循環配管32を構成する材料であるシリコン樹脂に比べて高い熱伝導率を有しているため、放熱器38による液体燃料の放熱をより一層促進することができる。
【0052】
また、本実施形態では、液体濃度センサ40が設けられた燃料循環配管32に、放熱器38やイオン交換器36を設けている。すなわち、燃料電池システム1の濃度測定ラインにこれら放熱器38及びイオン交換器36を設けている。この場合、循環ポンプ34によって、液体濃度センサ40、放熱器38及びイオン交換器36に対して液体燃料を供給できるため、放熱器38及びイオン交換器36に対して液体燃料を供給するための供給設備を別途設ける必要がなくなる。これにより、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。
【0053】
因みに、仮にイオン交換器36を燃料タンク12と燃料供給口10Aとの間に設けると、イオン交換器36で生じた生成物が、燃料タンク12と燃料供給口10Aとの間の流路に直接供給される。この場合、イオン交換器36で生じた生成物が燃料電池10のアノードに比較的流れ込みやすくなる。仮に、イオン交換器36で生じた生成物が、燃料電池10での発電反応に寄与しない、又は、燃料電池10での発電反応を阻害するものである場合、燃料電池10のアノードに送られた上記生成物により、燃料電池10の発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0054】
これに対して、本実施形態では、両端が燃料タンク12に接続されている燃料循環配管32にイオン交換器36を設けている。この場合、イオン交換器36で生じた生成物が燃料タンク12に貯蔵される液体燃料中に十分に分散された後、燃料電池10の燃料供給口10Aに供給されるので、燃料電池10のアノードに当該生成物が多量に供給される可能性が低くなる。これにより、燃料電池10の発電効率の低下を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、液体燃料を燃料電池10に供給していない場合でも、燃料循環配管32において液体燃料を循環させることで、当該液体燃料に含まれるイオン系不純物を除去することができる。このため、燃料電池システム1の動作状態に関わらず、イオン交換器36を稼働させることができるため、イオン交換器36の積算稼働時間を長時間確保することができる。
【0056】
また、液体燃料が燃料タンク12に貯蔵された状態で液体燃料に混入したイオン系不純物を十分に除去することができるため、イオン系不純物が液体燃料に同伴して、燃料電池10のアノードに供給されるのを抑えることができる。
【0057】
本実施形態における「燃料電池システム1」が本発明における「燃料電池システム」の一例に相当し、本実施形態における「燃料電池10」が本発明における「燃料電池」の一例に相当し、本実施形態における「燃料循環配管32」が本発明における「第1の配管」の一例に相当し、本実施形態における「イオン交換器36」が本発明における「除去手段」の一例に相当し、本実施形態における「放熱器38」が本発明における「放熱手段」の一例に相当し、本実施形態における「水循環配管27」が本発明における「水循環配管」の一例に相当し、本実施形態における「ラジエータ28」が本発明における「冷却手段」の一例に相当し、本実施形態における「放熱配管382」が本発明における「第2の配管」の一例に相当し、本実施形態における「液体濃度センサ40」が本発明における「濃度センサ」の一例に相当し、本実施形態における「循環ポンプ34」が本発明における「液体燃料供給手段」の一例に相当する。
【0058】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態における放熱器による液体燃料の放熱性の向上効果を確認するためのものである。
【0060】
<実施例1>
実施例1では、上述したメタノールを含む液体燃料を用いる燃料電池システムにおいて、シリコンチューブの燃料循環配管に、放熱器とイオン交換器とを上流側から順に設けた。放熱部の放熱配管にはフッ素チューブ(ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene, PTFE))を用いた。放熱配管の外径は3.2mmとし、内径は2.8mmとし、長さは2mとした。このような放熱配管をラジエータに対向させて配置した。この実施例1において、燃料循環配管におよそ67℃の液体燃料を数百mL/minの流量で流した。また、ラジエータに対して数m/secの風速で風を供給した。この場合に、放熱器の入口近傍における燃料温度(以下、入口温度とも言う。)を測定し、放熱器の出口近傍における液体燃料の温度(以下、出口温度とも言う。)を測定した。そして、入口温度及び出口温度に基づいて放熱器における放熱量を算出した。実施例1における放熱器における放熱量の算出結果を
図4に示す。また、実施例1における出口温度の測定結果を
図5に示す。なお、放熱量については、後述する参考例(放熱器がない形態)における放熱量との差を表した場合の値を示した。
【0061】
<実施例2>
実施例2では、放熱配管の長さを4mとしたこと以外は、実施例1に係る形態と同様にして燃料電池システムを準備した。この実施例2についても、実施例1と同様にして試験を行った。結果を
図4及び
図5に示す。
【0062】
<比較例1>
実施例3では、放熱配管に相当する部分に燃料循環配管としてシリコンチューブを用いたこと以外は、実施例1に係る形態と同様にして燃料電池システムを準備した。この比較例1についても、実施例1と同様にして試験を行った。結果を
図4及び
図5に示す。
【0063】
<比較例2>
実施例4では、放熱配管に相当する部分に燃料循環配管としてシリコンチューブを用い、放熱配管に相当する部分の燃料循環配管の長さを4mとしたこと以外は、実施例1に係る形態と同様にして燃料電池システムを準備した。この比較例2についても、実施例1と同様にして試験を行った。結果を
図4及び
図5に示す。
【0064】
<参考例>
参考例として、放熱配管の長さが0mであり、燃料循環配管としてのシリコンチューブのみを用いたこと以外は、実施例1に係る形態と同様とした燃料電池システムを準備した。なお、放熱配管の長さが0mであるとは、
図2(A)中の上流側の燃料循環配管32の端部と、
図2(A)中の下流側の燃料循環配管32の端部とを直接接続させて、放熱配管382が存在していないことを言う。この参考例についても、実施例1と同様にして試験を行った。結果を
図4及び
図5に示す。なお、参考例では、放熱器が存在しないため、入口温度及び出口温度として、イオン交換器の入口近傍における液体燃料の温度を測定した。
【0065】
<実施例、比較例の評価>
図4に示すように、実施例1では25W放熱しており、比較例1では12W放熱していた。この
図4に示す結果から、実施例1においては、比較例1と比較して、液体燃料が放熱されていることが確認できる。また、
図4に示すように、実施例2では50W放熱しており、比較例2では25W放熱していた。この
図4に示す結果から実施例2においては、比較例2と比較して、液体燃料が放熱されていることが確認できる。これらの結果から、配管長が同じである場合において、放熱器(放熱配管)を備える実施例1及び実施例2においては、放熱器を備えない比較例と比較して、液体燃料が放熱されていることが確認できる。
【0066】
特に、実施例1及び実施例2の結果から、放熱配管を長くすることで、放熱器における放熱量が大きくなることが確認できる。
【0067】
また、
図5に示すように、実施例1での出口温度がおよそ60℃であり、比較例1での出口温度がおよそ63℃であった。この
図5に示す結果から、実施例1においては、比較例1と比較して、出口温度が低下していることが確認できる。また、
図5に示すように、実施例2での出口温度がおよそ53℃であり、比較例2での出口温度がおよそ61℃であった。この
図5に示す結果から、実施例2においては、比較例2と比較して、出口温度が低下していることが確認できる。これらの結果から、配管長が同じである場合において、放熱器(放熱配管)を備える実施例1及び実施例2においては、放熱器を備えない比較例と比較して、出口温度が低下していることが確認できる。
【0068】
特に、実施例1及び実施例2の結果から、放熱配管を長くすることで、出口温度を大きく低下することが確認できる。さらに、実施例2においては、出口温度が60℃を下回っており、液体燃料の温度を陰イオン交換樹脂の耐熱温度を下回る温度まで低下させることができることが確認できる。
【0069】
以上のように、実施例1及び実施例2の結果から、放熱器を備えることで、液体燃料の放熱性の向上を適切に実現できるものであることが確認できる。