特許第6899232号(P6899232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899232
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】電動過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20210628BHJP
   F02B 33/40 20060101ALI20210628BHJP
   F02B 39/10 20060101ALI20210628BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20210628BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   F02B39/00 G
   F02B33/40
   F02B39/00 J
   F02B39/10
   F04D29/42 M
   F04D29/70 N
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-42818(P2017-42818)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-145910(P2018-145910A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊
(72)【発明者】
【氏名】神坂 直志
【審査官】 池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0096647(KR,A)
【文献】 特表2015−537162(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0063449(US,A1)
【文献】 特開2011−099366(JP,A)
【文献】 特表2010−506091(JP,A)
【文献】 特開平05−195999(JP,A)
【文献】 特開2013−174216(JP,A)
【文献】 特開2008−045425(JP,A)
【文献】 特開2005−147029(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009024679(DE,A1)
【文献】 特開2016−180337(JP,A)
【文献】 特開2018−135885(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/158849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F02B 33/40
F02B 39/10
F04D 29/42
F04D 29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラに回転軸を介して駆動力を伝達するよう構成されたモータと、
前記コンプレッサインペラの背面と隙間を介して対向するとともに前記回転軸を囲繞する背面側ケーシングと、
前記回転軸を回転可能に支持するように前記背面側ケーシングと前記回転軸との間に設けられた軸受と、
を備え、
前記背面側ケーシングは、前記コンプレッサインペラの前記背面に向かって突出する少なくとも一つの突起部を含み、
前記すくなくとも一つの突起部は、前記隙間の流路抵抗を増大し、前記隙間を前記コンプレッサインペラの径方向における内側へ流れる漏れ流れの進行を抑制するとともに、
前記コンプレッサインペラの前記背面は、前記コンプレッサインペラの軸方向において前記コンプレッサインペラの入口側に凹むように湾曲した凹部を含み、
前記突起部の先端は、前記凹部の内側に位置し、
前記突起部は、前記コンプレッサインペラの周方向に沿って環状に構成され、
前記突起部は、前記軸方向に平行に形成された外周面と、前記外周面のうち前記軸方向における前記コンプレッサインペラの背面側の端から前記凹部の湾曲形状に沿って湾曲した凸曲面と、を含む、
電動過給機。
【請求項2】
コンプレッサインペラと、
前記コンプレッサインペラに回転軸を介して駆動力を伝達するよう構成されたモータと、
前記コンプレッサインペラの背面と隙間を介して対向するとともに前記回転軸を囲繞する背面側ケーシングと、
前記回転軸を回転可能に支持するように前記背面側ケーシングと前記回転軸との間に設けられた軸受と、
を備え、
前記背面側ケーシングは、前記コンプレッサインペラの前記背面に向かって突出する少なくとも一つの突起部を含み、
前記すくなくとも一つの突起部は、前記隙間の流路抵抗を増大し、前記隙間を前記コンプレッサインペラの径方向における内側へ流れる漏れ流れの進行を抑制するとともに、
前記少なくとも一つの突起部は、前記コンプレッサインペラの周方向に間隔をあけて設けられた複数の突起部を含み、
前記突起部は、内周端と外周端とを有し、前記コンプレッサインペラの周方向と交差する方向に沿って延在するようにリブ状に構成された、
電動過給機。
【請求項3】
前記コンプレッサインペラの前記背面は凹部を含み、
前記突起部の先端は、前記凹部の内側に位置する、請求項に記載の電動過給機。
【請求項4】
リブ状の前記突起部は、当該突起部の前記外周端が当該突起部の前記内周端より前記コンプレッサインペラの回転方向における下流側に位置するように、前記コンプレッサインペラの径方向に対して傾斜した方向に延設された、請求項2又は3に記載の電動過給機。
【請求項5】
リブ状の前記突起部は、前記コンプレッサインペラの軸方向視において当該突起部の両端を結ぶ直線よりも当該突起部の中央部が前記コンプレッサインペラの回転方向における上流側に位置するように、湾曲している、請求項2乃至4の何れか1項に記載の電動過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジン装置において、エンジン燃費や効率の向上を図るため、エンジンから排出される排気ガスによって排気タービンを駆動させ、これにより吸気通路に配置されているコンプレッサを同軸駆動させて、エンジンに供給する吸気ガスを圧縮する「過給」が行われている。
【0003】
このターボチャージャによる過給では、ターボラグと呼ばれるエンジン低速回転時における応答遅れにより、エンジン低速回転時におけるトルクや出力が問題となる。このターボラグによる応答遅れを補完する技術として、排気ガスによって駆動するターボチャージャ及び電動機によって駆動する電動過給機を備える二段過給システムが公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015‐537162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動過給機では、ターボチャージャと異なりモータによってコンプレッサが駆動されるため、コンプレッサの後方(コンプレッサインペラに対して軸受側)にモータやインバータ基板等の機器が設置される。
【0006】
このため、コンプレッサインペラの背面とケーシングとの間を通った漏れ流れが軸受側に侵入すると、モータやインバータ基板等の機器に影響を与える恐れがある。
【0007】
特に、EGRを備えた二段過給システムにおいて低圧段の過給機より上流側に排気ガスの一部を再循環させる場合や、中間冷却機を使用する場合、及びブローバイガスをコンプレッサの入口に戻す場合等には、コンプレッサの入口から凝縮水を含む空気が吸い込まれるため、コンプレッサインペラの背面とケーシングとの間を通った漏れ流れが軸受側に侵入すると、モータやインバータ等の機器の動作に不具合が生じる恐れがある。
【0008】
また、特に、二段過給システムの高圧段に電動過給機を適用する場合には、高温高圧の空気がコンプレッサの入口から流入するため、コンプレッサインペラの背面とケーシングとの間を通った漏れ流れが軸受側に侵入すると、軸受やモータ等の機器に不具合が生じる恐れがある。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、コンプレッサインペラの背面とケーシングとの間を通った漏れ流れの軸受側への侵入を抑制可能な電動過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る電動過給機は、コンプレッサインペラと、前記コンプレッサインペラに回転軸を介して駆動力を伝達するよう構成されたモータと、前記コンプレッサインペラの背面と隙間を介して対向するとともに前記回転軸を囲繞する背面側ケーシングと、前記回転軸を回転可能に支持するように前記背面側ケーシングと前記回転軸との間に設けられた軸受と、を備え、前記背面側ケーシングは、前記コンプレッサインペラの前記背面に向かって突出する少なくとも一つの突起部を含む。
【0011】
上記(1)に記載の電動過給機によれば、背面と背面側ケーシングとの隙間(以下、「背面隙間」という)を径方向内側へ流れる漏れ流れの進行が突起部によって抑制されて背面隙間の流路抵抗が増大し、背面隙間における突起部近傍の圧力を増大させることができる。これにより、背面隙間における外周部と内周部との圧力差を低減し、背面隙間を径方向内側へ流れる漏れ流れを抑制することができる。したがって、上記漏れ流れの軸受側への侵入を抑制し、モータ等の電気機器への漏れ流れの流入を抑制することができる。よって、これらの電気機器の動作不良等の発生を抑制し、電動過給機を安定的に運転することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の電動過給機において、前記コンプレッサインペラの前記背面は凹部を含み、前記突起部の先端は、前記凹部の内側に配置される。
【0013】
上記(2)に記載の電動過給機によれば、背面隙間を径方向内側へ流れる漏れ流れの進行を凹部の内側の空間に侵入した突起部によって効果的に抑制することができる。これにより、軸受側への上記漏れ流れの侵入を効果的に抑制することができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の電動過給機において、前記突起部は、前記コンプレッサインペラの周方向に沿って環状に構成される。
【0015】
上記(3)に記載の電動過給機によれば、背面隙間を径方向内側へ流れる漏れ流れの進行を環状の突起部によって周方向の全体に亘って効果的に抑制することができる。これにより、軸受側への上記漏れ流れの侵入を効果的に抑制することができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の電動過給機において、前記少なくとも一つの突起部は、前記コンプレッサインペラの周方向に間隔をあけて設けられた複数の突起部を含む。
【0017】
上記(4)に記載の電動過給機によれば、複数の突起部を設けたことによって背面隙間の流路抵抗が増大し、背面隙間における突起部近傍の圧力を増大させることができる。これにより、背面隙間における外周部と内周部との圧力差を低減し、背面隙間を径方向内側へ流れる漏れ流れを抑制することができる。したがって、漏れ流れの軸受側への侵入を抑制することができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の電動過給機において、前記突起部は、前記コンプレッサインペラの周方向と交差する方向に沿って延在するようにリブ状に構成される。
【0019】
上記(5)に記載の電動過給機によれば、リブ状の複数の突起部が背面隙間における漏れ流れの旋回を抑制する旋回防止リブとして機能して背面隙間の流路抵抗を増大し、背面隙間における突起部近傍の圧力を効果的に増大させることができる。これにより、背面隙間における外周部と内周部との圧力差を低減し、背面隙間を径方向内側へ流れる漏れ流れを効果的に抑制することができる。したがって、漏れ流れの軸受側への侵入を効果的に抑制することができる。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の電動過給機において、リブ状の前記突起部は、当該突起部の外周端が当該突起部の内周端より前記コンプレッサインペラの回転方向における下流側に位置するように、前記コンプレッサインペラの径方向に対して傾斜した方向に延設される。
【0021】
コンプレッサインペラの回転中には、背面隙間における漏れ流れは、コンプレッサインペラの回転方向の成分を有する方向へ流れる。このため、上記(6)に記載の方向にリブ状の突起部を延設することにより、漏れ流れが径方向外側からリブ状の突起部間に流入しにくくなる。これにより、漏れ流れの軸受側への侵入を抑制することができる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)に記載の電動過給機において、リブ状の前記突起部は、前記コンプレッサインペラの軸方向視において当該突起部の両端を結ぶ直線よりも当該突起部の中央部が前記コンプレッサインペラの回転方向における上流側に位置するように、湾曲している。
【0023】
上述のように、コンプレッサインペラの回転中には、背面隙間における漏れ流れは、コンプレッサインペラの回転方向成分を有する方向へ流れる。このため、上記のように湾曲したリブ状の突起部を設けることにより、漏れ流れが径方向外側からリブ状の突起部間に流入しにくくなる。これにより、漏れ流れの軸受側への侵入を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、コンプレッサインペラの背面とケーシングとの間を通った漏れ流れの軸受側への侵入を抑制可能な電動過給機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る電動過給機2の概略的な断面構成を示す模式図である。
図2】一実施形態に係るコンプレッサインペラ4の背面16近傍の概略的な断面構成を示す模式図である。
図3】コンプレッサインペラ4の背面16と背面側ケーシング14との隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れfに対して突起部20Aが及ぼす影響を説明するための模式図である。
図4】一実施形態に係るコンプレッサインペラ4の背面16近傍の概略的な断面構成を示す模式図である。
図5】軸方向視における突起部20Bの概略的な配置を示す模式図である。
図6】コンプレッサインペラ4の背面16と背面側ケーシング14との隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れfに対して突起部20Bが及ぼす影響を説明するための模式図である。
図7】電動過給機2を二段過給システムの低圧段過給機として用いた場合におけるエンジン装置110の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0027】
図1は、一実施形態に係る電動過給機2の概略的な断面構成を示す模式図である。
図1に示す例示的な形態では、電動過給機2は、コンプレッサインペラ4、回転軸6、インペラケーシング8、シールユニット9、軸受10A,10B、モータ12、背面側ケーシング14(静止部材)を備える。
【0028】
以下では、コンプレッサインペラ4の軸方向を単に「軸方向」といい、コンプレッサインペラ4の径方向を単に「径方向」といい、コンプレッサインペラ4の周方向を単に「周方向ということとする。
【0029】
インペラケーシング8は、コンプレッサインペラ4を囲繞するよう形成されており、コンプレッサインペラ4の入口に吸入空気を導くとともに、コンプレッサインペラ4によって圧縮された空気を吐出するように構成されている。
【0030】
シールユニット9は、スリーブ22及び少なくとも一つのピストンリング24(図示する形態では二つのピストンリング24)を含む。スリーブ86は、回転軸6に嵌合した状態で一端側がコンプレッサインペラ4の背面16に当接するように設けられる。スリーブ22は、軸方向においてコンプレッサインペラ4と軸受10Aとの間に位置し、径方向において背面側ケーシング14と回転軸6との間に位置する。ピストンリング24は、スリーブ22の外周面に設けられた環状溝に嵌合するとともに背面側ケーシング14に当接し、コンプレッサインペラ4の背面16と背面側ケーシング14との隙間を径方向内側へ流れる後述の漏れ流れ(コンプレッサインペラ4の出口を通って背面16と背面側ケーシング14との隙間に回り込んだ漏れ流れ)の軸受10A側への流入を抑制する。
【0031】
軸受10A,10Bの各々は、回転軸6を回転可能に支持するように例えば転がり軸受として構成されており、不図示の内輪と外輪の間に保持された転動体の周囲に潤滑材としてグリースが封入されたグリース潤滑方式の軸受として構成されている。軸受10Aは、軸方向においてシールユニット9とモータ12との間に位置し、径方向において背面側ケーシング14と回転軸6との間に位置する。軸受10Bは、軸方向においてモータ12を挟んで軸受10Aと反対側に位置し、径方向において背面側ケーシング14と回転軸6との間に位置する。
【0032】
モータ12は、コンプレッサインペラ4に回転軸6を介して駆動力を伝達するよう構成されている。モータ12は、軸方向において軸受10Aと軸受10Bとの間に位置する。
【0033】
背面側ケーシング14は、コンプレッサインペラ4の背面16と隙間を介して対向するとともに、シールユニット9、軸受10A,10B及びモータ12を囲繞するよう構成されている。また、背面側ケーシング14は、軸受10Bを挟んでモータ12と反対側に、インバータ(不図示)を収容するためのインバータ収容部18を含む。
【0034】
図2は、一実施形態に係るコンプレッサインペラ4の背面16近傍の概略的な断面構成を示す模式図である。
図2に示すように、背面側ケーシング14は、コンプレッサインペラ4の背面16に向かって突出する突起部20(20A)を含む。
【0035】
かかる構成によれば、図3に示すように、背面16と背面側ケーシング14との隙間g(以下、「背面隙間g」という)を径方向内側へ流れる漏れ流れfの進行が突起部20Aによって抑制されて背面隙間gの流路抵抗が増大し、背面隙間gにおける突起部20A近傍の圧力を増大させることができる。これにより、背面隙間gにおける外周部と内周部との圧力差を低減し、背面隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れfを抑制することができる。したがって、漏れ流れfの軸受10A側(シールユニット9側)への侵入を抑制し、モータ12(図1参照)やインバータ(不図示)等の電気機器への漏れ流れfの流入を抑制することができる。よって、これらの電気機器の動作不良等の発生を抑制し、電動過給機2を安定的に運転することができる。
【0036】
一実施形態では、図2に示すように、コンプレッサインペラ4の背面16は、軸方向においてコンプレッサインペラ4の入口側に凹むように滑らかに湾曲した凹部26を含み、突起部20Aの先端28は、凹部26の内側に位置している。
【0037】
かかる構成によれば、図3に示すように、背面隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れfの進行を凹部26の内側の空間に侵入した突起部20Aによって効果的に抑制することができる。これにより、漏れ流れfの軸受10A側への侵入を効果的に抑制することができる。
【0038】
一実施形態では、突起部20Aは周方向に沿って環状に構成されている。図2に示す例示的形態では、突起部20Aの外周面30は軸方向に平行に形成されており、突起部20Aは、外周面30のうち軸方向における背面16側の端32から凹部26の湾曲形状に沿って滑らかに湾曲した凸曲面34を含む。
【0039】
かかる構成によれば、背面隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れfの進行を環状の突起部20Aによって周方向の全体に亘って効果的に抑制することができる。また、軸方向に平行な外周面30によって漏れ流れfの進行を抑制しつつ、背面16の湾曲した凹部26と突起部20Aの湾曲した凸曲面34との隙間を小さくすることができる。これにより、漏れ流れfの軸受10A側への侵入を効果的に抑制することができる。
【0040】
次に、突起部20の他の構成例について、図4図6を用いて説明する。
図4は、一実施形態に係るコンプレッサインペラ4の背面16近傍の概略的な断面構成を示す模式図である。図5は、軸方向視における突起部20(20B)の概略的な配置を示す模式図である。
【0041】
一実施形態では、図4及び図5に示すように、背面側ケーシング14は、周方向に間隔をあけて設けられた複数の突起部20(20B)を含む。
【0042】
かかる構成によれば、複数の突起部20Bを設けたことによって背面隙間gの流路抵抗が増大し、背面隙間gにおける突起部20B近傍の圧力を増大させることができる。これにより、背面隙間gにおける外周部と内周部との圧力差を低減し、背面隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れf(図5及び図6参照)を抑制することができる。したがって、漏れ流れfの軸受10A側(シールユニット9側)への侵入を抑制し、モータ12やインバータ(不図示)等の電気機器への漏れ流れfの流入を抑制することができる。よって、これらの電気機器の動作不良等の発生を抑制し、電動過給機2を安定的に運転することができる。
【0043】
一実施形態では、図4に示すように、コンプレッサインペラ4の背面16は、軸方向においてコンプレッサインペラ4の入口側に凹むように滑らかに湾曲した凹部26を含み、突起部20Bの各々は、突起部20Aの先端28が凹部26の内側に位置するように構成されている。
【0044】
かかる構成によれば、図6に示すように、背面隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れfの進行を凹部26の内側に侵入した突起部20Bによって効果的に抑制することができる。これにより、漏れ流れfの軸受10A側への侵入を効果的に抑制することができる。
【0045】
一実施形態では、図5に示すように、突起部20Bの各々は、周方向(図5ではコンプレッサインペラ4の回転方向dcとして図示)に交差する方向に沿って延在するようにリブ状に構成されている。
【0046】
かかる構成によれば、リブ状の複数の突起部20Bが背面隙間gにおける漏れ流れfの旋回を抑制する旋回防止リブとして機能して背面隙間gの流路抵抗を増大し、背面隙間gにおける突起部20A近傍の圧力を効果的に増大させることができる。これにより、背面隙間gにおける外周部と内周部との圧力差を低減し、背面隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れfを効果的に抑制することができる。したがって、漏れ流れfの軸受10A側への侵入を効果的に抑制することができる。
【0047】
一実施形態では、図5に示すように、リブ状の突起部20Bの各々は、当該突起部20Bの外周端36が当該突起部20Bの内周端38よりコンプレッサインペラ4の回転方向dcにおける下流側に位置するように、径方向drに対して傾斜した方向に延設されている。
【0048】
コンプレッサインペラ4の回転中には、背面隙間gにおける漏れ流れfは、コンプレッサインペラ4の回転方向dcの成分を有する方向へ流れる。このため、上記の方向にリブ状の突起部20Bを延設することにより、漏れ流れfが径方向外側からリブ状の突起部20B間に流入しにくくなる。これにより、漏れ流れfの軸受10A側への侵入を抑制することができる。
【0049】
一実施形態では、図5に示すように、リブ状の突起部20Bの各々は、軸方向視において当該突起部20Bの両端(外周端36及び内周端38)を結ぶ直線よりも当該突起部20Bの中央部40がコンプレッサインペラ4の回転方向dcにおける上流側に位置するように湾曲している。
【0050】
上述のように、コンプレッサインペラ4の回転中には、背面隙間gにおける漏れ流れfは、コンプレッサインペラ4の回転方向dcの成分を有する方向へ流れる。このため、上記のように湾曲したリブ状の突起部20Bを設けることにより、漏れ流れfが径方向外側からリブ状の突起部20B間に流入しにくくなる。これにより、漏れ流れfの軸受10A側への侵入を抑制することができる。
【0051】
一実施形態では、図7に示すように、電動過給機2を二段過給システムの低圧段過給機として用いてもよい。図7は、電動過給機2を二段過給システムの低圧段過給機として用いた場合におけるエンジン装置110の概略構成を示す図である。
【0052】
図7に示すエンジン装置110は、図示したように、エンジン54、エンジン54に供給される吸気ガスが流れる吸気通路56、エンジン54から排出される排気ガスが流れる排気通路58、ターボチャージャ60、及び上述した電動過給機2等を備えている。
【0053】
ターボチャージャ60は、排気通路58に配置された排気タービン64、吸気通路56に配置されたコンプレッサ62、及びこれら排気タービン64とコンプレッサ62とを連結するタービン軸63を含む。ターボチャージャ60は、エンジン54から排出された排気ガスによって排気タービン64が駆動し、タービン軸63を介してコンプレッサ62が同軸駆動することで、吸気通路56を流れる吸気ガスを過給するように構成されている。
【0054】
図7に示すエンジン装置110では、電動過給機2は、吸気通路56におけるコンプレッサ62の上流側に配置されており、電動過給機2で圧縮された吸気ガスは、ターボチャージャ60のコンプレッサ62へと供給される。このように、エンジン装置110は、ターボチャージャ60を高圧段過給機、電動過給機2を低圧段過給機として配置した二段過給システムとして構成されている。
【0055】
吸気通路56には、電動過給機2を迂回するバイパス吸気通路66が接続している。このバイパス吸気通路66には、バイパスバルブ68が配置されている。そして、バイパスバルブ68の弁開度を調節することにより、電動過給機2に流入する吸気ガスの流量が制御される。
【0056】
また、吸気通路56におけるコンプレッサ62の下流側には、エンジン54に供給する吸気ガスを冷却する中間冷却器70が配置されている。
【0057】
また、エンジン装置110には、排気通路58における排気タービン64の下流側と吸気通路56における電動過給機2の上流側とを接続するEGR通路72が設けられている。EGR通路72には、EGRバルブ74が配置されている。そして、EGRバルブ74の弁開度を調節することにより、弁開度に応じた流量の排気ガスが吸気通路56に還流する。そして、この再循環した排気ガスを含む吸気ガスが、電動過給機2のコンプレッサインペラ4へと供給される。
【0058】
上記エンジン装置110では、エンジン低速回転時には、バイパスバルブ68は閉じられており、低圧段過給機としての電動過給機2によって昇圧された吸気ガスは、矢印cに示すように、高圧段過給機としてのターボチャージャ60のコンプレッサ62に供給されてさらに昇圧される。そのため、電動過給機2のブースト圧が電動過給機2におけるコンプレッサの外周部と内周部との間にかかり、上述した背面隙間gに吸入空気が侵入する。
【0059】
また、上記エンジン装置110では、エンジン高速回転時には、バイパスバルブ68は開かれており電動過給機2は停止している。この場合、矢印dに示すように、吸気ガスはバイパス吸気通路66を通ってコンプレッサ62に供給されるため、電動過給機2の背面隙間gへの吸入空気の侵入はほぼ無い。
【0060】
上記のように、上述した電動過給機2をエンジン装置110に適用すれば、背面隙間gを通った漏れ流れが軸受10A,10B側に侵入することを抑制することができるため、モータ12等の機器における不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0061】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0062】
例えば、図2図5では、コンプレッサインペラ4の背面16に凹部26が設けられた形態を例示したが、コンプレッサインペラ4の背面16には凹部26が設けられていなくてもよい。コンプレッサインペラ4の背面16には凹部26が設けられていない場合においても、コンプレッサインペラ4の背面16に向かって突出する少なくとも一つの突起部20を背面側ケーシング14が備えることにより、背面隙間gの流路抵抗が突起部20を設けたことによって増大し、背面隙間gにおける突起部20近傍の圧力を増大させることができる。これにより、背面隙間gにおける外周部と内周部との圧力差を低減し、背面隙間gを径方向内側へ流れる漏れ流れfを抑制することで、漏れ流れfの軸受10A側への侵入を抑制することができる。
【0063】
また、上述した実施形態では、背面側ケーシング14がシールユニット9、軸受10A,10B及びモータ12を囲繞する形態を例示したが、背面側ケーシング14の構成はこれに限らず、例えば背面側ケーシング14がシールユニット9のみを囲繞し、背面側ケーシング14とは別体のケーシングが軸受10A,10B及びモータ12を囲繞していてもよいし、背面側ケーシング14がシールユニット9及び軸受10Aのみを囲繞し、背面側ケーシング14とは別体のケーシングが軸受10B及びモータ12を囲繞していてもよい。
【符号の説明】
【0064】
2 過給機
4 コンプレッサインペラ
6 回転軸
8 インペラケーシング
9 シールユニット
10A,10B 軸受
12 モータ
14 背面側ケーシング
16 背面
18 インバータ収容部
20(20A,20B) 突起部
22 スリーブ
24 ピストンリング
26 凹部
28 先端
30 外周面
32 端
34 凸曲面
36 外周端
38 内周端
40 中央部
54 エンジン
56 吸気通路
58 排気通路
60 ターボチャージャ
62 コンプレッサ
63 タービン軸
64 排気タービン
66 バイパス吸気通路
68 バイパスバルブ
70 中間冷却器
72 通路
74 バルブ
110 エンジン装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7