【実施例】
【0015】
実施例に係る宅配ボックスにつき、
図1から
図12を参照して説明する。
【0016】
図1に示されるように、宅配ボックス1は、板金加工により箱状に形成されている。宅配ボックス1は、箱状の収容本体2と、収容本体2に図示しない固定手段により接続固定された箱状の延長部3とから構成されている。
【0017】
収容本体2は、側面のうち1面に開口4(
図4参照)を備えており、この開口4は内扉5により開閉可能となっている。延長部3は、側面のうち1面に開口6(
図5参照)を備えており、この開口6は外扉7により開閉可能となっている。また、外扉7の外方側には把手8が固定されている。
【0018】
宅配ボックス1は、建物の玄関近傍に設置され、建物を構成する躯体(図示せず)に図示しない固定手段により固定されており、
図2に示されるように、延長部3は外扉7が建物の外壁W1より屋外側に露出するように建物の外壁W1に埋め込まれて設置されている。また、
図3に示されるように、収容本体2は、建物の内壁W2に埋め込まれ、内扉5が建物の内壁W2より屋内側に露出するように設置されている。
【0019】
図1及び
図4に示されるように、収容本体2は直方体に形成されており、内扉5と直角に交わる側面2aに、開口部9が形成されている。一方、
図5に示されるように、延長部3は、外扉7で開閉される開口6と対向する面が開口して開口部10が形成されている。収容本体2と延長部3とは、図示しない固定手段により、これら収容本体2に形成された開口部9と、延長部3に形成された開口部10とが連通するように接続固定されている。
【0020】
収容本体2と延長部3とは、開口部9と開口部10とを介して内部が連通しており、連通した収容本体2と延長部3との内部(即ち宅配ボックス1の内部)が宅配物の収容空間として機能するようになっている。
【0021】
このように収容本体2と延長部3とが連通し、かつ収容本体2に設けられた内扉5が屋内側に、延長部3に設けられた外扉7が屋外側に、それぞれ露出することで、宅配ボックス1の内部の収容空間には屋外側と屋内側のいずれからもアクセスできるようになっている。
【0022】
図1及び
図4に示されるように、内扉5は、蝶番11,11により水平方向に回動可能に軸支されている。また、内扉5には外方側にハンドル13が露出するように空錠装置12(
図4参照)が固定されており、かつ施錠装置を構成する鍵穴14が外方側に露出している。
【0023】
空錠装置12は、ハンドル13の回転操作と内扉5の内方側に配置されたラッチ15とが図示しない連動手段にて連動するように構成されている。ラッチ15は、開口4の近傍に設けられたラッチ受け(図示せず)に対して係止可能となっており、ハンドル13を約90度回転させることで、ラッチ15をラッチ受けに対して係止状態と非係止状態とに切り換えられるようになっている。
【0024】
ハンドル13は、鍵穴14に挿入される鍵(図示せず)により回転可能な状態と回動規制状態とに切り替える、即ち解錠操作と施錠操作を行えるようになっている。
【0025】
図5に示されるように、延長部3の開口6の内側には、施錠機構16が取付けられている。続いて、施錠機構16について、
図6から
図10を用いて説明する。
【0026】
図6及び
図7(a)に示されるように、施錠機構16は、延長部3に固定される基部17と、基部17に対して取付けられた可動部材18と、操作部19とから主に構成されている。基部17は、図示しない固定手段により収容本体2に固定されており、外扉7の反対側に向けて開口する縦溝20を備えている。縦溝20には可動部材18が遊嵌している。
【0027】
可動部材18は、金属製の板体からなる可動片21と、可動片21の下端に固定された樹脂製の誘導片22とを備えている。可動片21は上下方向に直線状に延びて形成されており、上端に外扉7の反対側に向けて突出する延設部21aを備え、かつ上下方向の略中央に上下方向に延びる長孔23を備えている。誘導片22は、外扉7側には下端に下方に突出する湾曲面22aを備えており、外扉7の反対側には可動片21の外扉7の反対側の端縁21bと連なる平面部22bを備えている(
図7(c)参照)。
【0028】
基部17の縦溝20内には円筒状のピン部24が固定され、このピン部24が可動片21に形成された長孔23内に遊嵌しており、ピン部24を介して可動部材18の荷重が基部17に支持されている。後に詳述するが、長孔23にピン部24が遊嵌しているため、可動部材18は基部17に対して揺動及び上下移動可能となっている。
【0029】
外扉7の内面には、収容空間側に突出する平行な2枚の板片26,26を有する受け部材25が固定されている。これら板片26,26の間には、前述した可動部材18における誘導片22が係止される円筒状のラッチ受け27が固定されている。また、板片26,26同士は少なくとも誘導片22が挿入可能な寸法で離間している。
【0030】
次に、外扉7を開ける際の施錠機構16の動作について
図7を用いて説明する。
図7(a)に示されるように、可動部材18は、外力の加わっていない自然状態において、誘導片22の平面部22b(
図7(c)参照)と可動片21の端縁21b(
図7(c)参照)とが鉛直方向に向くようにバランスするようになっている。そのため、外扉7が閉じられた状態では、ラッチ受け27が誘導片22より収容空間側で可動片21の端縁21bと誘導片22の平面部22bとに移動規制された状態となり、外力が加えられない状態(外扉7を開く方向にかかる力が可動片21を回転させる力を上回らない状態)で外扉7が開放されない状態となっている。
【0031】
外扉7の把手8を引いて開口6(
図5参照)を開ける動作を行う(開ける方向に外力を加える)と、ラッチ受け27が誘導片22に押圧される。このとき長孔23にピン部24が遊嵌しているため、可動部材18は基部17に対して揺動可能であるため、この押圧により、可動部材18は長孔23の上端部がピン部24に支持された状態で、ピン部24を回転軸として外扉7の反対側へ回動(図では時計回り)する(
図7(b)参照)。この可動部材18の回動により誘導片22が上方へ逃げ、ラッチ受け27の移動規制状態が解除され、外扉7を開けることができる(
図7(c)参照)。
【0032】
図8に示されるように、操作部19は、延長部3の内側面3aに固定部28を介して固定された軸部材29に軸支されており、上下方向に揺動可能となっている。操作部19は、金属製の板材を屈曲させて形成されており、操作部19の長手方向の一方(施錠機構16の基部17側)の先端部には規制片30と操作片31が設けられ、長手方向の他方の先端部には、操作片32が設けられている。
【0033】
規制片30と操作片31と操作片32とは操作部本体19aに対して垂直に延設されており、
図9に示されるように、規制片30は操作部本体19aが水平方向にあるときに、先端面30a(基部17側の面)が鉛直方向となるような平面に形成されている。
【0034】
また、
図8及び
図9に示されるように、施錠機構16の基部17には、外扉7の反対側に突出して保持片17a,17bが形成されており、操作部19の長手方向の一方の先端部の上端または下端が保持片17a,17bに当接することで、操作部19の長手方向の一方の先端部の上下方向への回動可能範囲を規定されている。
【0035】
外扉7の施錠を行う際には、
図8に示されるように、操作部19の長手方向の一方の先端部を下方へ(図では反時計回り)回動させる操作を行う。この回動操作により、保持片17aに操作部19の長手方向の一方の先端部の下端が当接または近接し、操作部本体19aが水平方向となった状態では、外扉7の反対側に向けて開口する縦溝20(
図6参照)の外側を塞ぐように規制片30が位置する。
【0036】
前述したように、可動部材18がピン部24を回転軸として外扉7の反対側へ回動(図では時計回り)する(
図7(b)参照)ことで、ラッチ受け27の移動規制状態が解除され、外扉7を開けることができるが、
図9に示されるように、操作部本体19aが水平方向となった状態では、可動部材18の延設部21aが縦溝20の外で規制片30の先端面30aに当接し、可動部材18の外扉7の反対側への回動が規制されるため、ラッチ受け27の移動規制状態を解除することができない。
【0037】
反対に、基部17に形成された上側の保持片17bに、操作部19の長手方向の一方の先端部の上端を当接または近接させると、規制片30が基部17の縦溝20より上方に位置し(
図7(b)参照)、ラッチ受け27の移動規制状態が解除される(解錠操作)。
【0038】
続いて、外扉7を閉める際の施錠機構16の動作について
図10を用いて説明する。尚、
図10では外扉7が開いた状態において、操作部本体19aが水平方向となるように操作された状態から外扉7を閉める操作を行う場合を例に説明する。
【0039】
図10(a)に示されるように、外扉7を閉める動作を行うと、ラッチ受け27が誘導片22に押圧され、誘導片22の湾曲面22aがラッチ受け27に乗り上げる。このとき誘導片22は、外扉7側に湾曲面22aを有していることから、ラッチ受け27に乗り上げ易くなっている。
【0040】
可動部材18の長孔23は、上下方向に形成されており、基部17に固定されたピン部24が長孔23内を下方へ移動できることから、誘導片22の湾曲面22aがラッチ受け27に乗り上げる際に、可動部材18が上方へ移動する(
図10(b)参照)。このように、可動部材18がラッチ受け27に押されて上方へ逃げることで、開口6(
図5参照)を閉じるまで外扉7を移動させることができる(
図10(c)参照)。尚、可動部材18は、可動片21の延設部21aが操作部19の規制片30の先端面30aに案内されることで確実に上方へ移動するようになっている。
【0041】
外扉7が開口6を閉じると、
図10(c)に示されるように、誘導片22がラッチ受け27を乗り越える。誘導片22がラッチ受け27を乗り越えると、可動部材18は長孔23の上端部がピン部24に当接して基部17に支持される所定位置に復帰する。また、これによりラッチ受け27が誘導片22より収容空間側で可動片21の端縁21b(
図10(a)参照)と誘導片22の平面部22b(
図10(a)参照)とに移動規制された状態となる。
【0042】
続いて、宅配ボックス1の実際の利用方法における一例を
図11と
図12を用いて説明する。
【0043】
宅配ボックス1を使用可能とするために、受取人は先ず基部17に形成された上側の保持片17bに操作部19の長手方向の一方の先端部の上端を当接または近接させ(
図6参照)、外扉7の施錠機構16を解錠状態に操作しておく(解錠操作)。
【0044】
続いて
図11に示されるように、宅配業者は外扉7を開け、荷物Bを宅配ボックス1の収容空間に収容する。荷物Bの収容が完了すると、操作部19の操作片31を手で下げて水平状態に操作する。このとき外扉7は依然として開いた状態であり、施錠機構16は後述する外扉7を閉める動作により施錠状態となるため、この段階では施錠待機状態となっている。この施錠待機状態で外扉7を閉じることで、
図9に示される状態となり、外扉7が施錠される。このように、施錠待機状態とした後に外扉7を閉じることが屋外側からの施錠機構16の施錠操作となる。
【0045】
受取人は、宅配業者によりポスト等に投函された不在票等を確認し、宅配ボックス1の収容空間に荷物Bが収容されていることを認知すると、内扉5の空錠装置12のハンドル13(
図1参照)を回して内扉5を開け、屋内側から荷物Bを取り出す。続いて、屋内側から手を挿入し、操作部19の操作片32を手で下ろすことで外扉7の施錠機構16を解錠状態に操作する(解錠操作)。施錠機構16の操作が完了すると、内扉5を閉め、空錠装置12のハンドル13を回して内扉5が開かない状態とし、更に鍵を用いて鍵穴14を回すことでハンドル13を回動規制状態にする(施錠操作)。
【0046】
上述したように、屋外側の開口6を開閉する外扉7の施錠機構16を収容空間の内側から解錠操作することができるため、受取人が屋外に出る必要がなく、荷物Bの取り出しと宅配ボックス1を利用可能とする準備とのいずれも屋内側から行うことができ、不在時における荷物Bの受け取りにかかる作業を簡便に行うことができる。
【0047】
また、施錠機構16は、外扉7の外側に露出しない位置に配置され、収容空間の内側からのみ施錠操作と解錠操作とが行えるようになっており、外部から解錠操作を行うことができないためセキュリティ性に優れる。
【0048】
また、施錠機構16は、外扉7を開けた状態で操作部19を操作して施錠待機状態に切り替えることができ、施錠待機状態において外扉7が閉められることで、施錠状態に切り換わるようになっている。これによれば、施錠機構16は外部から解錠操作を行えないようにしながら、外部から施錠操作は行うことができ、セキュリティ性に優れる。
【0049】
また、宅配ボックス1は、収容本体2と延長部3とが接続された上面視において略L字形状を成しており、屋外側の開口4と屋内側の開口6とは、互いに対向しないように配設されている。そのため、外扉7を開けた際に内扉5にアクセスし難いためセキュリティ性に優れるとともに、仮に屋内側の開口4が開いていたとしても、屋外側の開口6から屋内側の開口4を通して屋内の様子が見えにくく、受取人のプライバシーを尊守することができる。
【0050】
また、外扉7を施錠する施錠機構16は、延長部3における収容本体2の屋内側の開口4側の内側面3a、即ち上面視略L字形状の宅配ボックス1の内側の屈曲部に配置されている。これによれば、施錠機構16が収容本体2の屋内側の開口4側から届きやすい場所に位置するため、操作部19の操作を行い易くなっている。更に、操作部19は、外扉7の反対側の先端部が開口4側に延びており、当該先端部に設けられた操作片32を開口4側から操作し易くなっている。
【0051】
また一方で、内扉5が開かないように保持する空錠装置12は、内扉5の収容空間側の面における延長部3の反対側に配置されている。これによれば、空錠装置12が収容本体2の屋外側の開口6側から届き難い場所に位置するため、セキュリティ性に優れる。
【0052】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0053】
外扉7を施錠する施錠機構16は、収容空間側から解錠操作できるものであればどのような構成であれ、上述した不在時における荷物Bの受け取りにかかる作業を簡便に行うことができる効果を奏するため、その構成については前記実施例のものに限らない。例えば、施錠機構は外扉7の屋外側にダイアル錠等を備えることで、外扉7の屋外側からも施錠操作及び解錠操作を行うことができるようにしてもよい。
【0054】
また、施錠機構を電子錠として自動的に施錠及び解錠が行われる構成であってもよい。例えば、収容空間の底板に重量センサを設けるとともに、基部17の縦溝20(
図6参照)の開口における外扉7の反対側近傍に進退駆動する規制片と、重量センサによる感知に基づき規制片の進退動作を制御する演算装置を備えてもよい。このような施錠機構にあっては、底板の上に荷物Bが載置されると重量センサが感知し、演算装置が規制片を進出させて可動部材18の外扉7の反対側への回動を規制するように動作させ、自動的に施錠待機状態とすることができる。一方で収容空間から荷物Bが取り出されると重量センサが感知し、演算装置が規制片を退避させ、自動的に外扉の解錠操作を行うことができる。尚、センサは重量センサに限らず、例えば近接センサのように収容空間内の物体(荷物B)を感知するものを用いてもよい。
【0055】
また、前記実施例においては、ハンドル13を解錠操作と施錠操作するための鍵穴14とハンドル13との連動機構について詳述していないが、鍵穴14と当該連動機構とを内扉5の屋内側に設けることにより、収容空間側つまり屋外側から確実に解錠操作を行えないようにすることができる。
【0056】
また、例えば空錠装置12のラッチ15が収容空間側に露出しない構造であれば、収容空間側からラッチ15を操作することができず、実質的に収容空間側から内扉5を開けることができないため、この場合、鍵穴14及び前記連動機構が省略されて構成されてもよい。
【0057】
また、宅配ボックス1は収容本体2と延長部3とを接続固定して構成されるものに限らず、例えば略L字形状に一体に形成されたものであってもよいし、略L字形状に限らず直方体形状であってもよい。
【0058】
また、宅配ボックス1に形成された開口4と開口6とは互いに対向しない位置かつ対向しない方向に設けられる構成に限らず、例えば内扉の施錠装置を確実に施錠することができれば、宅配ボックスを両端に開口を有する直管状に構成し、両端に有する開口が互いに平行に設けられて構成されていてもよい。
【0059】
また、宅配ボックス1は
図2及び
図3に示されるように、玄関に設けられる態様に限らず建物の外壁W1から露出するように屋外側の開口6が配置され、建物の内壁W2から露出するように屋内側の開口4が配置されていれば、建物におけるどのような位置に設置されてもよく、例えば勝手口等の近傍に設置されてもよい。
【0060】
また、内扉5及び外扉7は、蝶番による外開きに開閉できる扉に限らず、例えば引戸等であってもよい。