(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の座屈材が前記くの字状に座屈された後に、前記第1雌ネジ部材に前記第1雄ネジ部材を螺合することにより前記第1棒状部材の先端部と前記第2棒状部材の先端部とを結合させるとともに、前記第2雌ネジ部材から前記第2雄ネジ部材を取り外すことにより前記第3棒状部材を前記アンカー部材から取り外す請求項1に記載のアンカー部材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[構築用基礎材の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る構築用基礎材10の全体構成を示す側面図である。構築用基礎材10は、自然斜面、切土斜面の補強や既存擁壁などに用いられる棒状の構築用基礎材(アンカー部材)であり、構築用基礎材10の打設後に地中で拡大する拡大部(座屈部材30)を打設方向の先端部側に有する。なお、
図1(1)には、座屈部材30を拡大する前の状態を示し、
図1(2)には、座屈部材30を拡大した状態を示す。なお、
図1(1)(2)の左側には、打設方向の先端部側から見た場合の構築用基礎材10の側面を簡略化して示す。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態に係る構築用基礎材10が備える第1プレート60及び第2プレート70を示す平面図である。また、
図3は、本発明の実施の形態に係る構築用基礎材10が備える第3プレート80及び第4プレート90を示す平面図である。
【0013】
構築用基礎材10は、ロッド20と、座屈部材30と、鋼管40と、PC(Prestressed Concrete)鋼棒50とを備える。なお、PC鋼棒50は、打設後に地中で座屈部材30(拡大部)を拡大させた後に構築用基礎材10から取り外すことができる。
【0014】
ロッド20は、中空円筒状の棒状部材であり、打設方向の先端部の外周部に所定長さの雄ネジ部材21を有し、油圧ジャッキ1(
図1(2)に示す)の方向を固定するための拡大アダプタ22が打設方向の後端部(先端部とは反対側の端部)に設置される。また、ロッド20の壁部を径方向に貫通する貫通孔25(
図1(2)に示す)が外周の所定の位置に形成され、外部からロッド20内に供給される高圧空気やグラウト等を貫通孔25から座屈部材30の近傍へ供給する。雄ネジ部材21の長さは、座屈部材30が座屈した後に、ロッド20を回転して鋼管40の雌ネジ部材42とロッド20の雄ネジ部材21とを螺合することができる程度の長さである(
図1(2)参照)。また、雄ネジ部材21の長さは、座屈部材30が座屈した後に、ロッド20を回転して貫通孔25を第1座屈材31及び第2座屈材35に対して所定位置に移動するために必要となる程度の長さである(
図1(2)参照)。また、貫通孔25は、1または複数個設け、その配置は、高圧空気やグラウトの供給が効率的となるように軸方向に所定長さをオフセットし、かつ、軸方向に等間隔に配置されることが好ましい。
【0015】
座屈部材30は、ロッド20、鋼管40、PC鋼棒50と同軸上に配置される部材であり、複数の第1座屈材31及び第2座屈材35と、第1プレート60と、第2プレート70と、第3プレート80と、第4プレート90とを備える。
【0016】
第1座屈材31及び第2座屈材35は、丸断面や四角断面を有する棒状部材(例えば、鋼材)である。また、第1座屈材31及び第2座屈材35は、十分な剛性を確保することができれば、その材料及び形状は限定されない。また、第1座屈材31及び第2座屈材35には、軸方向に所定以上の圧縮荷重が負荷された場合に、略中央部からロッド20の外側に座屈するように所定位置に切欠き32乃至34が形成される。切欠き32は、第1座屈材31及び第2座屈材35の略中央部内側に形成され、切欠き33、34は、第1座屈材31及び第2座屈材35の両端部外側に形成される。このように、切欠き32乃至34を形成することによって、第1座屈材31及び第2座屈材35はその中央部から「く」の字状にロッド20の外側に座屈する。このように、第1座屈材31及び第2座屈材35が「く」の字状にロッド20の外側に座屈することにより、座屈部材30がロッド20の外側に拡大するため、座屈部材30は、拡大部(先端拡大部)として機能する。
【0017】
図2に示すように、第1プレート60及び第2プレート70は、複数の第1座屈材31を同一半径上に所定間隔に設置するための一対のプレートである。また、第1プレート60及び第2プレート70は、略同一形状であり、円板状に形成される。
【0018】
図2(1)に示すように、第1プレート60には、その中央部に鋼管40(ロッド20)が挿通する貫通孔60aを有する。また、第1プレート60には、第1座屈材31の一端部が嵌る貫通孔60bが同一半径上に所定間隔を空けて複数形成される。また、
図2(2)に示すように、第2プレート70には、その中央部にロッド20が挿通する貫通孔70aを有する。また、第2プレート70には、第1座屈材31の他端部が嵌る貫通孔70bが同一半径上に所定間隔を空けて複数形成される。なお、第1プレート60及び第2プレート70と第1座屈材31とは溶接等によって固定される。
【0019】
図3に示すように、第3プレート80及び第4プレート90は、複数の第2座屈材35を同一半径上に所定間隔に設置するための一対のプレートである。また、第3プレート80及び第4プレート90は、略同一形状であり、円板状に形成される。また、第3プレート80及び第4プレート90は、第1プレート60及び第2プレート70の間に配置される。
【0020】
図3(1)に示すように、第3プレート80には、その中央部に鋼管40(ロッド20)が挿通する貫通孔80aを有する。また、第3プレート80には、第2座屈材35の一端部が嵌る貫通孔80bが同一半径上に所定間隔を空けて複数形成される。また、
図3(2)に示すように、第4プレート90には、その中央部にロッド20が挿通する貫通孔90aを有する。また、第4プレート90には、第2座屈材35の他端部が嵌る貫通孔90bが同一半径上に所定間隔を空けて複数形成される。なお、第3プレート80及び第4プレート90と第2座屈材35とは溶接等によって固定される。
【0021】
また、
図3(1)に示すように、第3プレート80には、外周面に開口する溝80cが貫通孔80bの間に形成される。また、
図3(2)に示すように、第4プレート90には、外周面に開口する溝90cが貫通孔90bの間に形成される。また、溝80c、90cには、第1座屈材31が挿通して配置される。これにより、第1座屈材31及び第2座屈材35は交互に等間隔に配置される。また、溝80c、90cが第3プレート80及び第4プレート90の外周面に開口して形成されることによって、ロッド20の外側への第1座屈材31の座屈が第3プレート80及び第4プレート90によって妨げられないようになっている。
【0022】
このように、複数の第2座屈材35が設置される第3プレート80及び第4プレート90は、複数の第1座屈材31が設置される第1プレート60及び第2プレート70の間に配置されるため、第2座屈材35は、その軸方向の長さが第1座屈材31と比較して短く形成される。例えば、第2座屈材35は、鋼管40の移動に伴って第1プレート60が第2プレート70に所定距離近づいた後、第3プレート80が第1プレート60に押圧されて第4プレート90に近づき始めるような長さとすることができる。第2座屈材35をその長さとした場合には、第2座屈材35が第3プレート80と第4プレート90の間で圧縮されて座屈し始めた時点では、既に第1座屈材31は座屈しているため、座屈のために必要な荷重は低下することになる。したがって、第1座屈材31及び第2座屈材35を座屈させる荷重は、第1座屈材31及び第2座屈材35を同時に座屈させる場合と比較して小さくなる。
【0023】
なお、
図1乃至
図3では、第1プレート60及び第2プレート70に5本の第1座屈材31が設置され、第3プレート80及び第4プレート90にも5本の第2座屈材35が設置される例を示すが、第1座屈材31及び第2座屈材35の設置数は、5本に限定されない。また、
図1乃至
図3では、2組の一対のプレート(第1プレート60及び第2プレート70、第3プレート80及び第4プレート90)を用いる例を示したが、1組の一対のプレートを用いて複数の座屈材を設置するようにしてもよい。
【0024】
また、第1プレート60は、鋼管40が挿通するリング状のリング部材44を介して固定部材43(例えば、ナット)に固定される。また、第2プレート70は、ロッド20が挿通するリング状のリング部材24を介して固定部材23(例えば、ナット)に固定される。なお、リング部材24、44の設置を省略するようにしてもよい。その場合には、第1プレート60は固定部材43に直接固定され、第2プレート70は固定部材23に直接固定される。
【0025】
固定部材43は、鋼管40の一端部(先端部の反対側の端部)の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部材であり、リング部材44を介して第1プレート60及び第3プレート80の先端部側への移動を規制する。また、固定部材23は、ロッド20の外周の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部材であり、リング部材24を介して第2プレート70及び第4プレート90の先端部の反対側(後端部側)への移動を規制する。
【0026】
このように、第1プレート60及び第3プレート80は、鋼管40の外周において鋼管40の後端部(または、その付近)に固定される。また、第2プレート70及び第4プレート90は、鋼管40の軸方向の長さと、第1座屈材31、第2座屈材35の座屈後における座屈部材30の軸方向の長さとにより特定される位置(ロッド20の外周における位置)に固定される。すなわち、第2プレート70及び第4プレート90は、鋼管40の軸方向の長さと、第1座屈材31、第2座屈材35の座屈後における座屈部材30の軸方向の長さとを合計した長さの位置(ロッド20の外周における先端部からの位置)(または、その付近)に固定される。
【0027】
鋼管40は、ロッド20が貫通することが可能な中空円筒状の棒状部材であり、ロッド20の外周の少なくとも一部を覆うように配置される。これにより、鋼管40は、ロッド20の外周を軸方向に移動可能となる。また、鋼管40は、打設方向の先端部に雌ネジ部材41、42が配置され、先端部の反対側の端部(またはその付近)に固定部材43が配置される。
【0028】
雌ネジ部材41は、PC鋼棒50の雄ネジ部材51に螺合する雌ネジ部材である。また、
図1(2)に示すように、雌ネジ部材42は、ロッド20の雄ネジ部材21に螺合する固定部材である。ここで、鋼管40の先端部(打設方向の先端部)に雌ネジ部材42が設けられ、雌ネジ部材42よりもさらに先端部側に雌ネジ部材41が設けられる。また、雌ネジ部材42の内径は、PC鋼棒50が摺動自在に挿通することが可能なサイズとする。このため、PC鋼棒50の雄ネジ部材51は、雌ネジ部材42を貫通して雌ネジ部材41に螺合することができる。また、PC鋼棒50の雄ネジ部材51を雌ネジ部材41から取り外した後にも、雌ネジ部材42の内部からPC鋼棒50の雄ネジ部材51を取り出すことができる。
【0029】
PC鋼棒50は、ロッド20及び鋼管40の内部を貫通することが可能な円筒状の棒状部材であり、先端部側に雄ネジ部材51を有する。雄ネジ部材51を鋼管40の雌ネジ部材41に螺合することにより、ロッド20の内部においてPC鋼棒50を軸方向に移動させて、鋼管40を軸方向に移動させることができる。
【0030】
具体的には、
図1(2)に示すように、構築用基礎材10のPC鋼棒50及び拡大アダプタ22に油圧ジャッキ1(引抜装置、先端拡大機)をセットする。そして、拡大アダプタ22(ロッド20)の移動を規制した状態で、油圧ジャッキ1に油圧をかけてPC鋼棒50を矢印2の方向に引っ張る。このように、PC鋼棒50を矢印2の方向に引っ張ることにより、PC鋼棒50に接続されている鋼管40を矢印3の方向に移動させることができる。このように、ロッド20の内部においてPC鋼棒50を先端部の反対側(
図1の右側)に移動させることにより、鋼管40を先端部の反対側(
図1の右側)に移動させることができる。この鋼管40の移動に応じて、鋼管40の固定部材43に固定されている第1プレート60及び第3プレート80が第2プレート70及び第4プレート90側に移動し、この移動により、第1プレート60及び第2プレート70間の5本の第1座屈材31と、第3プレート80及び第4プレート90間の5本の第2座屈材35とが圧縮されて「く」の字状に座屈される。
【0031】
また、
図1(2)に示すように、PC鋼棒50を先端部の反対側(
図1の右側)に移動させて5本の第1座屈材31及び5本の第2座屈材35を「く」の字状に座屈させた後に、ロッド20を回転させることにより、ロッド20の雄ネジ部材21を鋼管40の雌ネジ部材42に螺合させることができる。また、PC鋼棒50の雄ネジ部材51を鋼管40の雌ネジ部材41から取り外し、ロッド20からPC鋼棒50を取り外す。
【0032】
このように、座屈部材30は、第1プレート60及び第3プレート80(第1板状部材)と第2プレート70及び第4プレート90(第2板状部材)との間で圧縮されて座屈可能な第1座屈材31、第2座屈材35(複数の座屈材)を備える。また、ロッド20(第1棒状部材)は、打設方向の反対側への第2プレート70及び第4プレート90(第2板状部材)の移動を規制する中空の棒状部材である。また、ロッド20(第1棒状部材)は、外周に第2プレート70及び第4プレート90(第2板状部材)が固定される。例えば、ロッド20(第1棒状部材)は、第2プレート70及び第4プレート90(第2板状部材)を貫通して打設方向の先端部から軸方向の所定距離に位置する外周に第2プレート70及び第4プレート90(第2板状部材)が固定される。また、ロッド20(第1棒状部材)は、打設方向の先端部の外周に雄ネジ部材21(第1雄ネジ部材)を備える。また、鋼管40(第2棒状部材)は、第1プレート60及び第3プレート80(第1板状部材)の打設方向への移動を規制する中空の棒状部材である。また、鋼管40(第2棒状部材)は、ロッド20(第1棒状部材)(少なくともロッド20(第1棒状部材)の打設方向の先端部側の一部)が摺動自在に挿通する中空の棒状部材である。また、鋼管40(第2棒状部材)は、外周に第1プレート60及び第3プレート80(第1板状部材)が固定される。例えば、鋼管40(第2棒状部材)は、第1プレート60及び第3プレート80(第1板状部材)を貫通して打設方向の後端部から軸方向の所定距離に位置する外周に第1プレート60及び第3プレート80(第1板状部材)が固定される。また、鋼管40(第2棒状部材)は、雄ネジ部材21(第1雄ネジ部材)に螺合する雌ネジ部材42(第1雌ネジ部材)と、PC鋼棒50(第3棒状部材)の雄ネジ部材51(第2雄ネジ部材)に螺合する雌ネジ部材41(第2雌ネジ部材)とを打設方向の先端部に備える。また、雄ネジ部材51(第2雄ネジ部材)は、鋼管40(第2棒状部材)を打設方向の反対側へ移動させるためのPC鋼棒50(第3棒状部材)の打設方向の先端部の外周に備えられる。
【0033】
また、第1座屈材31、第2座屈材35(複数の座屈材)は、雌ネジ部材41(第2雌ネジ部材)に雄ネジ部材51(第2雄ネジ部材)が螺合されている状態で、ロッド20(第1棒状部材)及び鋼管40(第2棒状部材)を摺動自在に挿通するPC鋼棒50(第3棒状部材)を打設方向と反対側へ移動させて第1プレート60及び第3プレート80(第1板状部材)と第2プレート70及び第4プレート90(第2板状部材)との間隔を小さくすることによって、第1プレート60及び第3プレート80(第1板状部材)と第2プレート70及び第4プレート90(第2板状部材)との間で圧縮されて「く」の字状に座屈される。
【0034】
また、第1座屈材31、第2座屈材35(複数の座屈材)が「く」の字状に座屈された後に、雌ネジ部材42(第1雌ネジ部材)に雄ネジ部材21(第1雄ネジ部材)を螺合することによりロッド20(第1棒状部材)の先端部と鋼管40(第2棒状部材)の先端部とを結合させるとともに、雌ネジ部材41(第2雌ネジ部材)から雄ネジ部材51(第2雄ネジ部材)を取り外すことによりPC鋼棒50(第3棒状部材)を構築用基礎材10から取り外すことができる。
【0035】
[構造物の施工方法]
次に、構築用基礎材にスペーサー及びパッカーを装着して行われる構造物の施工方法について説明する。なお、構築用基礎材を設置して行われる施工対象は、例えば、擁壁、地山、盛土等の構造物(例えば、土を使用した土構造物)である。
【0036】
図4乃至
図7は、スペーサー及びパッカーを装着した構築用基礎材100を用いて既設擁壁及び背面地盤の安定化を図る施工を行う施工方法の一例(例えば、擁壁補強)を示す図である。なお、構築用基礎材100の構成については、
図1乃至
図3に示す構築用基礎材10と略同様であるため、構築用基礎材100と共通する部分については、構築用基礎材10と共通の符号を付してこれらの説明を省略する。
【0037】
[PC鋼棒の取付工程]
図4(1)に示すように、構築用基礎材100のロッド20の外周(ロッド20の軸方向の中央付近)にスペーサー101を取り付ける。ここで、スペーサー101は、構築用基礎材100を設置穴に挿入する場合の位置決めに使用されるガイド部材である。例えば、スペーサー101は、柔らかいバネ板等により構成される。また、PC鋼棒50を回転させてPC鋼棒50の雄ネジ部材51を雌ネジ部41に螺合させ、構築用基礎材100にPC鋼棒50を接続させる。
【0038】
[パッカーの取付工程]
次に、
図4(2)(3)に示すように、構築用基礎材100のロッド20の外周(ロッド20の開口部付近)にパッカー102を取り付ける。なお、
図4(3)には、
図4(2)の点線内を拡大して示す。
【0039】
ここで、パッカー102は、グラウト、セメントミルク等を注入することにより、構築用基礎材100の設置穴の出口(設置穴のロッド20の外周の出口)を塞ぐためのものである。パッカー102として、例えば、布パッカーを用いることができる。また、パッカー102を取り付けて構築用基礎材100の設置穴の出口を塞ぐことにより、構築用基礎材100に加圧注入をすることができる。
【0040】
具体的には、
図4(3)に示すように、構築用基礎材100のロッド20の外周にパッカー102を取り付け、パッカー102の両端をブチルゴムテープ103で止め、結束バンド104でブチルゴムテープ103を縛る。また、パッカー102にグラウト、セメントミルク等を注入するためのパッカー注入管106をロッド20の外側に出す。また、構築用基礎材100のロッド20内にグラウト等を注入する際に、グラウトを確認するためのグラウト確認管107をロッド20内に設置してその一部をロッド20の外側に出す。なお、
図4(3)に示すパッカー102の取付方法は、一例であり、他の取付方法で、構築用基礎材100のロッド20の外周にパッカー102を取り付けるようにしてもよい。
【0041】
[構築用基礎材の設置工程]
最初に、構築用基礎材100を設置する設置場所(打設位置)に設置穴110を掘削する。ここで、
図5(1)に示すように、構築用基礎材100の座屈部材30(拡大部)を設計上決められた位置まで挿入するためには、設置穴110の径が座屈部材30(拡大部)の直径以上となるようにする必要がある。そして、
図5(1)に示すように、設置穴110内に構築用基礎材100を挿入する。
【0042】
[油圧ジャッキの取付工程、座屈部材の座屈工程(拡大工程)]
次に、
図5(2)に示すように、構築用基礎材100のPC鋼棒50及び拡大アダプタ22に油圧ジャッキ111(例えば、センターホール型油圧ジャッキ)をセットする。そして、
図5(3)に示すように、拡大アダプタ22(ロッド20)の移動を規制した状態で、油圧ジャッキ111に油圧をかけてPC鋼棒50を矢印112の方向に引っ張る。このように、PC鋼棒50を矢印112の方向に引っ張ることにより、PC鋼棒50に接続されている鋼管40を矢印112の方向に移動させることができる。この鋼管40の移動に応じて、鋼管40の固定部材43に固定されている第1プレート60及び第3プレート80が第2プレート70及び第4プレート90側に移動し、この移動により、第1プレート60及び第2プレート70間の5本の第1座屈材31と、第3プレート80及び第4プレート90間の5本の第2座屈材35とが圧縮されて「く」の字状に座屈される。そして、5本の第1座屈材31及び5本の第2座屈材35を所定形状まで座屈させる。
【0043】
[ロッドのねじ込み工程、PC鋼棒の取外し工程]
次に、
図6(1)に示すように、工具(例えば、パイプレンチ)113を用いてロッド20を回転させて、ロッド20の雄ネジ部材21を鋼管40の雌ネジ部42に螺合させ、鋼管40を介してロッド20に座屈部材30を接続させる。次に、
図6(2)に示すように、工具(例えば、T型レンチ)114を用いてPC鋼棒50を回転させて構築用基礎材100からPC鋼棒50を取り外す。これらの各工程により、構築用基礎材100の設置が完了する(
図6(3)に示す)。続いて、グラウト注入工程を開始する。
【0044】
[エアーブロー及びグラウト注入準備工程]
グラウト注入工程では、最初に、エアーブロー及びグラウト注入準備を行う。具体的には、
図7(1)に示すように、グラウト注入アダプタ(雄側)121をロッド20の開口部側の端部に取り付け、注入アダプタ(雌側)122をホース(エアホース及びグラウトホース)123に取り付け、グラウト注入アダプタ(雄側)121に注入アダプタ(雌側)122を取り付ける。
【0045】
[エアーブロー吹き付け工程]
次に、
図7(2)の矢印124に示すように、エアコンプレッサーを用いて、構築用基礎材100のロッド20に取り付けたグラウト注入アダプタ121からエアーブローを吹き付ける。このエアーブローの吹き付けにより、
図7(2)に示す設置穴110内の各矢印のように、ロッド20の内部においてエアーがロッド20の開口部から構築用基礎材100の先端部に流れた後に、ロッド20の外側においてエアーが構築用基礎材100の先端部から設置穴110の開口部に流れ、設置穴110の外に排出される。また、
図7(2)に示す貫通孔25からエアーが吹き出すことにより、座屈部材30の付近にもエアーが吹き出される。
【0046】
[パッカーへのグラウト注入工程]
次に、
図7(3)に示すように、パッカー注入管106にグラウトを注入する。このグラウトの注入により、パッカー102が膨らみ、設置穴110の開口部付近の出口(ロッド20の開口部付近の外側)を塞ぐことができる。このように、パッカー102を膨らませ、設置穴110の開口部付近の出口(ロッド20の外側)を塞ぐことにより、構築用基礎材100への加圧注入を行うことができる。
【0047】
[構築用基礎材へのグラウト注入工程]
次に、
図7(4)に示すように、構築用基礎材100のロッド20に取り付けたグラウト注入アダプタ121からグラウトを注入する。このグラウトの注入により、
図7(4)に示す設置穴110内の各矢印のように、ロッド20の内部においてグラウトがロッド20の開口部から構築用基礎材100の先端部に供給された後に、ロッド20の外側においてグラウトが構築用基礎材100の先端部から設置穴110の開口部付近に流れる。また、
図7(4)に示す貫通孔25からグラウトが吹き出すことにより、座屈部材30の付近にグラウトが供給される。ただし、設置穴110の開口部付近の出口(ロッド20の外側)は、パッカー102により塞がれているため、グラウトは設置穴110の外に排出されない。
【0048】
[加圧注入工程]
次に、
図7(5)に示すように、グラウト確認管107を用いてグラウトのリターンを確認した後に、グラウト確認管107を閉塞する。そして、構築用基礎材100のロッド20に取り付けたグラウト注入アダプタ121からさらにグラウトを注入し、設置穴110内の圧力が所定圧力に達するまで加圧注入を行う。
【0049】
以上で示した各工程を順次行うことにより構築用基礎材100を用いた構造物の施工が行われる。なお、構造物(例えば、擁壁、地山、盛土)に応じて他の工程も行われるが、ここでの説明を省略する。例えば、既設擁壁及び背面地盤の安定化を図る施工を行う場合に、座屈部材30(先端拡大部)を有する構築用基礎材100を擁壁表面から挿入定着させることにより、既設擁壁を現状のまま補強することができる。
【0050】
このように、土中で先端部が拡大する先端拡大型の構築用基礎材100(補強材)の施工方法であって、座屈部材30(先端拡大部)の先端にネジ接合したPC鋼棒50を引っ張ることにより座屈部材30(先端拡大部)が座屈し、座屈部材30(先端拡大部)が所定の径まで拡大する拡大工程と、ロッド20に働く引張力を座屈部材30(先端拡大部)に伝達するため、拡大後の座屈部材30(先端拡大部)にロッド20をネジ結合する結合工程とを有する先端拡大型の構築用基礎材100(補強材)の施工方法を実現することができる。また、中空のロッド20を使用し、座屈部材30(先端拡大部)にグラウトを加圧注入する施工方法を実現することができる。
【0051】
このように、構築用基礎材100では、中空のロッド20内を摺動自在に挿通するPC鋼棒50を用いて座屈部材30の拡大をすることができる。このため、反力パイプ(または治具)を用いる必要がなく、設置穴とロッドとの間から反力パイプを抜き取る作業が不要となり、施工性を向上させることができる。また、座屈部材30(拡大部)の第1座屈材31及び第2座屈材35の「く」の字状の座屈後(拡大後)に、鋼管40を介して座屈部材30(拡大部)とロッド20とを結合(ロッド20の雄ネジ部材21と鋼管40の雌ネジ部材41とをネジ結合)することができる。すなわち、座屈後(拡大後)の座屈部材30(拡大部)の先端部とロッド20とを固定することができる。これにより、ロッド20に発生した引抜力に対して、座屈部材30(拡大部)には、引張力ではなく、圧縮力(ロッド20と接続されている先端部側(座屈部材30の先端部側)から押される力)が作用する。このため、座屈部材30(拡大部)の耐荷力を増大させることができる。
【0052】
また、反力パイプを用いる必要がないため、ロッド20の外周に反力パイプを取り付ける必要がない。このため、ロッド20の外周にスペーサー101、パッカー102を取り付けることが可能となる。このように、ガイド部材であるスペーサー101をロッド20の外周に取り付けることにより、ロッド20の外周のグラウトの被り厚さを確実に確保することができる。
【0053】
また、ロッド20の外周にパッカー102を取り付けることにより、設置穴110の開口部付近の出口(ロッド20の開口部付近の外側)を塞ぐことができるため、グラウトの散逸を防止することができる。例えば、擁壁裏面透水層でのグラウトの散逸を防止することができる。このように、ロッド20の外周にパッカー102を取り付けることにより、確実なグラウト注入が可能となる。
【0054】
また、ロッド20の外周にパッカー102を取り付けることにより、設置穴110の開口部付近の出口(ロッド20の開口部付近の外側)を塞ぐことができるため、構築用基礎材100へのグラウトの加圧注入が可能となる。このように、ロッド20の外周にパッカー102を取り付けることにより、構築用基礎材100のグラウト充填性を向上させることができる。
【0055】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。