特許第6899290号(P6899290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899290
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】トルク検出器
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/14 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   G01L3/14 L
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-172851(P2017-172851)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2019-49429(P2019-49429A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185248
【氏名又は名称】小倉クラッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 隆史
(72)【発明者】
【氏名】松本 益幸
(72)【発明者】
【氏名】周東 信行
(72)【発明者】
【氏名】堀田 達也
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05400663(US,A)
【文献】 特開平06−194238(JP,A)
【文献】 特開平11−030555(JP,A)
【文献】 特開2005−090663(JP,A)
【文献】 特開2015−055560(JP,A)
【文献】 特開平08−029275(JP,A)
【文献】 特開2001−091380(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3051492(JP,U)
【文献】 特開2017−036814(JP,A)
【文献】 特開2014−035210(JP,A)
【文献】 特開2017−155759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00−3/26,
F16D 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転自在に支持する回転軸支持部を有する支持部材と、
前記支持部材と前記回転軸の軸線方向に隣り合う位置に配置され、前記回転軸を介して前記支持部材に回転自在に支持された回転部材と、
前記回転部材に予め定めたトルク検出方向とは反対方向へばね力を付与する負荷機構と、
前記トルク検出方向に回転する前記回転部材の回転角に応じた検出値を出力する検出手段とを備え、
前記負荷機構は、
前記支持部材の前記回転軸支持部と前記軸線方向において同一の位置に設けられたばね部材と、
前記回転部材に設けられ、前記回転部材が前記トルク検出方向へ回転することにより前記ばね部材を押して前記ばね力を受ける押圧部材とを有し
前記ばね部材は、圧縮コイルばねによって形成されているとともに、前記支持部材に形成された穴の中に収容され、
前記支持部材は、前記ばね部材の圧縮量を変える調整機構を備えていることを特徴とするトルク検出器。
【請求項2】
請求項1記載のトルク検出器において、
前記ばね部材は、前記支持部材を前記回転軸の回転方向において一定の間隔で複数に分割する位置にそれぞれ設けられていることを特徴とするトルク検出器。
【請求項3】
請求項2記載のトルク検出器において、
前記ばね部材が前記押圧部材を押す方向は、
前記ばね部材のばね力を前記回転部材の回転中心に向かう径方向の分力と、この径方向とは直交する接線方向の分力とに分けた場合、全ての前記ばね部材が前記押圧部材を押すことによって、前記径方向の分力が相殺され、接線方向の分力のみが前記押圧部材に作用する方向であることを特徴とするトルク検出器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載のトルク検出器において、
前記検出手段は、永久磁石と、この永久磁石の磁場を検出する磁気センサーとを有し、
前記支持部材における前記回転部材と近接する端部と、前記回転部材における前記支持部材と近接する端部とのうちいずれか一方の端部に前記永久磁石が設けられるとともに、他方の端部に前記磁気センサーが設けられていることを特徴とするトルク検出器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載のトルク検出器において、
前記支持部材における前記回転部材と近接する端部と、前記回転部材における前記支持部材と近接する端部とのうちいずれか一方の端部には、前記回転軸と同一軸線上に位置して前記回転軸の軸線方向に向けて開口する環状溝が形成されているとともに、他方の端部には、前記環状溝の中に挿入されて前記環状溝と協働してラビリンスシールを構成する環状の突条が形成されていることを特徴とするトルク検出器。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちいずれか一つに記載のトルク検出器において、
前記回転部材は、電磁パウダブレーキのフィールドコアであり、
前記回転軸には、前記電磁パウダブレーキのロータが固定されていることを特徴とするトルク検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転トルクを検出するトルク検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のトルク検出器としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示されたトルク検出器は、電磁パウダブレーキのフィールドコアに接続されて制動時の反力を受けるばね部材と、このばね部材の変形量を検出する磁気センサーなどを備えている。
【0003】
特許文献1に示す電磁パウダブレーキは、回転軸に軸受によって回転自在に支持された環状のフィールドコアと、このフィールドコアの外周部内に設けられた電磁コイルと、フィールドコアの内周部の環状空間内に収容されて回転軸と一体に回転するロータなどを備えている。
回転軸は、電磁パウダブレーキの両端部から突出し、支持台の一端側の側壁部と他端側の側壁部とにそれぞれ軸受によって回転自在に支持されている。電磁パウダブレーキは、この支持台の上に設置されている。
【0004】
ばね部材は、板ばねによって構成されており、電磁パウダブレーキと、支持台の一方の側壁部との間で上下方向に延びる状態で設置されている。ばね部材の下端部は支持台に固定され、上端部は、フィールドコアの上端部に設けられたローラと接触している。このため、電磁パウダブレーキが制動状態になり、フィールドコアにロータから回転トルクが伝達されることによって、ばね部材の上端部がローラによって押されてばね部材が撓む。
特許文献1に示すトルク検出器は、電磁パウダブレーキの制動時に撓むばね部材の変位量を磁気センサーによって検出し、この変位量に基づいて回転軸のトルクを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4529114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているトルク検出器においては、制動時にフィールドコアの回転を規制するばね部材が電磁パウダブレーキと支持台の一方の側壁部との間に配置されているから、回転軸の軸線方向に大型化する。また、このトルク検出器では、ばね部材が支持台からフィールドコアの上端部まで延びているために、フィールドコアの径方向に小型化するにも限界がある。
このため、特許文献1に示す従来のトルク検出器は、大型になり、重量が重くなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、小型で軽量なトルク検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係るトルク検出器は、回転軸を回転自在に支持する回転軸支持部を有する支持部材と、前記支持部材と前記回転軸の軸線方向に隣り合う位置に配置され、前記回転軸を介して前記支持部材に回転自在に支持された回転部材と、前記回転部材に予め定めたトルク検出方向とは反対方向へばね力を付与する負荷機構と、前記トルク検出方向に回転する前記回転部材の回転角に応じた検出値を出力する検出手段とを備え、前記負荷機構は、前記支持部材の前記回転軸支持部と前記軸線方向において同一の位置に設けられたばね部材と、前記回転部材に設けられ、前記回転部材が前記トルク検出方向へ回転することにより前記ばね部材を押して前記ばね力を受ける押圧部材とを有しているものである。
【0009】
本発明は、前記トルク検出器において、前記ばね部材は、前記支持部材を前記回転軸の回転方向において一定の間隔で複数に分割する位置にそれぞれ設けられていてもよい。
【0010】
本発明は、前記トルク検出器において、前記ばね部材が前記押圧部材を押す方向は、前記ばね部材のばね力を前記回転部材の回転中心に向かう径方向の分力と、この径方向とは直交する接線方向の分力とに分けた場合、全ての前記ばね部材が前記押圧部材を押すことによって、前記径方向の分力が相殺され、接線方向の分力のみが前記押圧部材に作用する方向であってもよい。
【0011】
本発明は、前記トルク検出器において、前記ばね部材は、圧縮コイルばねによって形成されているとともに、前記支持部材に形成された穴の中に収容され、前記支持部材は、前記ばね部材の圧縮量を変える調整機構を備えていてもよい。
【0012】
本発明は、前記トルク検出器において、前記検出手段は、永久磁石と、この永久磁石の磁場を検出する磁気センサーとを有し、前記支持部材における前記回転部材と近接する端部と、前記回転部材における前記支持部材と近接する端部とのうちいずれか一方の端部に前記永久磁石が設けられるとともに、他方の端部に前記磁気センサーが設けられていてもよい。
【0013】
本発明は、前記トルク検出器において、前記支持部材における前記回転部材と近接する端部と、前記回転部材における前記支持部材と近接する端部とのうちいずれか一方の端部には、前記回転軸と同一軸線上に位置して前記回転軸の軸線方向に向けて開口する環状溝が形成されているとともに、他方の端部には、前記環状溝の中に挿入されて前記環状溝と協働してラビリンスシールを構成する環状の突条が形成されていてもよい。
【0014】
本発明は、前記トルク検出器において、前記回転部材は、電磁パウダブレーキのフィールドコアであり、前記回転軸には、前記電磁パウダブレーキのロータが固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持部材の回転軸支持部と軸線方向の同一位置に負荷機構のばね部材が設けられているから、回転軸支持部とばね部材とが回転軸の軸線方向に並ぶ場合と較べて軸線方向に小型化することができる。また、回転軸支持部の径方向の外側であって回転軸支持部の近傍にばね部材を配置できるから、この径方向についても小型化することができる。
したがって、本発明によれば、小型で軽量なトルク検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】トルクセンサー付電磁パウダブレーキの側面図である。
図2】制御系の構成を示すブロック図である。
図3】トルクセンサー付電磁パウダブレーキの背面図である。
図4図3におけるIV-IV線断面図である。
図5】ブレーキ部のセンサー部側端面の一部を示す背面図である。
図6】センサー部のブレーキ部側端面を示す正面図である。
図7図3におけるセンサー部のVII-VII線断面図である。
図8図6におけるセンサー部のVIII-VIII線断面図である。
図9】ストッパーピンが通された状態の第1のばね受け部材を軸線方向から見た正面図である。
図10】第1のばね受け部材の斜視図である。
図11】固定ベースの背面図である。
図12】ばね力が作用する方向を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るトルク検出器の一実施の形態を図1図12を参照して詳細に説明する。この実施の形態においては、本発明に係るトルク検出器をトルクセンサー付電磁パウダブレーキに組み込む場合の一例を説明する。
【0018】
<トルクセンサー付電磁パウダブレーキの概略の説明>
図1に示すトルクセンサー付電磁パウダブレーキ1は、図1において左右方向に延びる回転軸2と、この回転軸2の一端部に設けられた相対的に大きいブレーキ部3と、このブレーキ部3と隣り合うセンサー部4などを備えている。このトルクセンサー付き電磁パウダブレーキ1は、センサー部4を取付フランジ5に固定した状態で使用される。この固定は、3本の固定用ボルト6を使用して行われる。これらの固定用ボルト6は、図1中には1本しか描かれていないが、それぞれ取付フランジ5を貫通し、センサー部4の主構成部材である固定ベース11に螺着されている。
【0019】
固定ベース11は、詳細は後述するが、円筒状に形成されており、回転軸2を第1および第2の軸受12,13によって回転自在に支持する回転軸支持部14を有している。
回転軸2は、固定ベース11からブレーキ部3とは反対方向に突出している。この回転軸2の突出部分には、図示していない被制動部材が取付けられている。回転軸2は、この被制動部材と一体に回転する。被制動部材と上述した取付フランジ5は、図示していない装置の一部である。この実施の形態による回転軸2は、図3中に矢印Rで示すように、一方向(図3においては時計方向)のみに回転する。以下においては、この回転軸2の回転方向を「トルク検出方向」という。
【0020】
ブレーキ部3は、電磁パウダブレーキによって構成されており、図2に示すように、電源線15を介して後述する制御装置16に接続されている。一方、センサー部4は、リード線17によってセンサーアンプ18に接続され、このセンサーアンプ18を介して制御装置16に接続されている。センサーアンプ18と制御装置16とは、電源線19と信号線20とによって接続されている。センサー部4は、詳細は後述するが、電磁パウダブレーキのブレーキトルクを検出し、検出信号としてセンサーアンプ18に送出する。センサーアンプ18は、この検出信号を増幅して制御装置16に送る。制御装置16は、センサー部4によって検出されたブレーキトルクが目標値と一致するように、ブレーキ部3に供給する電力を制御する。
【0021】
<ブレーキ部の詳細な説明>
ブレーキ部3は、図3および図4に示すように、円柱状を呈するフィールドコア21と、このフィールドコア21の内部に収容された電磁コイル22およびロータ23などを有している。この実施の形態によるフィールドコア21は、後述する複数の部材を組み合わせて形成されている。フィールドコア21におけるセンサー部4に近接する一端は、円環状の可動ベース24によって形成されており、他端は、円環状の円板25によって形成されている。これらの可動ベース24と円板25は、非磁性材によって形成されている。
【0022】
可動ベース24の内周部には第3の軸受26が嵌合し、円板25の内周部には第4の軸受27が嵌合している。可動ベース24と円板25は、これらの第3および第4の軸受26,27によって回転軸2に回転自在に支持されている。第3の軸受26と第2の軸受13との間には、可動ベース24と固定ベース11との間隔を規定するカラー28が介装されている。
【0023】
可動ベース24には、後述する負荷機構31の一部を構成する複数のストッパーピン32が立設されている。これらのストッパーピン32は、丸棒状に形成されており、可動ベース24のピン孔33に圧入されて回転軸2の軸線Cと平行に可動ベース24からセンサー部4側に突出している。ピン孔33およびストッパーピン32は、図5に示すように、可動ベース24を周方向に3等分する位置にそれぞれ設けられている。負荷機構31は、詳細は後述するが、電磁パウダブレーキが制動状態になったときに可動ベース24が固定ベース11に対してトルク検出方向へブレーキトルクに応じた回転角だけ回転するように、可動ベース24にトルク検出方向とは反対方向へばね力を付与する。
【0024】
可動ベース24におけるセンサー部4と対向する端面には、図5に示すように、環状溝34と凹部35とが形成されている。環状溝34は、センサー部4に向けて開口する形状で、後述するセンサー部4の外周縁部と対向する位置に形成されている。この環状溝34は、可動ベース24と同一軸線上に位置付けられている。
凹部35は、環状溝34より径方向の内側に形成されている。この凹部35の開口形状は、扇状である。凹部35の底には、永久磁石36が固定されている。この永久磁石36は、後述する検出手段37の一部を構成するものである。
【0025】
円板25と可動ベース24との間には、図4に示すように、第1のリング41と第2のリング42とが回転軸2の軸線方向に並ぶ状態で介装されている。第1および第2のリング41,42は、それぞれ磁性材によって形成されている。第1のリング41は、可動ベース24を貫通する複数の取付用ボルト43によって可動ベース24に取付けられている。第2のリング42は、円板25を貫通する複数の取付用ボルト44によって円板25に取付けられている。
【0026】
また、第1のリング41と第2のリング42とは、上述した取付用ボルト43,44より径方向の外側に位置する締結用ボルト45によって互いに締結されている。第1のリング41と第2のリング42とにおける径方向の中央部であって、互いに対向する端部には、それぞれ環状溝46,47が形成されている。これらの環状溝46,47の中には、環状に形成された電磁コイル22が挿入されている。制御装置16からブレーキ部3に延びる電源線15は、この電磁コイル22に接続されている。
【0027】
第1のリング41と第2のリング42の内周部どうしの間には、非磁性材からなる第3のリング48が介装されている。
第1〜第3のリング41,42,48の中空部内には、ロータ23と、このロータ23の両側に位置する第1および第2の支持板51,52とが収容されているとともに、磁性粉体53が封入されている。
【0028】
ロータ23は、磁性材によって円板状に形成されて軸心部に回転軸2が貫通しており、この回転軸2に固定されている。ロータ23の外周部には、第1〜第3のリング41,42,48の内周面と対向するトルク伝達部23aが設けられている。
第1および第2の支持板51,52は、それぞれ非磁性材によって円環板状に形成されている。第1および第2の支持板51,52は、内周部に上述した第3および第4の軸受26,27が嵌合し、これらの軸受を介して回転軸2に回転自在に支持されている。
【0029】
このため、フィールドコア21は、第3および第4の軸受26,27によって回転軸2に回転自在に支持されているとともに、回転軸2とセンサー部4側の第1および第2の軸受12,13とを介してセンサー部4の固定ベース11に回転自在に支持されることになる。この実施の形態においては、フィールドコア21が本発明でいう「回転部材」に相当し、固定ベース11が本発明でいう「支持部材」に相当する。
【0030】
第1および第2の支持板51,52の内周部における第3および第4の軸受26,27よりロータ23側には、回転軸2との間をシールするシール部材54がそれぞれ設けられている。
第1の支持板51の外周部は、可動ベース24と第1のリング41とに挟まれて保持されている。第2の支持板52の外周部は、円板25と第2のリング42とに挟まれて保持されている。
【0031】
このように構成されたブレーキ部3においては、電磁コイル22が通電されていない状態では回転軸2と一体に回転するロータ23からフィールドコア21に回転が伝達されることはなく、非制動状態となる。電磁コイル22が通電されて励磁すると、磁束Φ(図4参照)がフィールドコア21の第1および第2のリング41,42とロータ23とを通るようになって磁性粉体53が第1〜第3のリング41,42,48とロータ23との間に集まり、この磁性粉体53を介してロータ23の回転がフィールドコア21に伝達されるようになる。このとき、フィールドコア21は、後述する負荷機構31によって許容される回転角だけセンサー部4に対して変位する。フィールドコア21の回転が負荷機構31により規制されることによって、ロータ23にブレーキトルクが付与され、ロータ23と回転軸2および被制動部材とが制動される。
【0032】
<センサー部の詳細な説明>
センサー部4は、上述したブレーキ部3の可動ベース24と協働して本発明でいうトルク検出器61を構成するもので、円筒状に形成された固定ベース11と、この固定ベース11に設けられた負荷機構31および検出手段37などを備えている。
固定ベース11は、上述したように3本の固定用ボルト6によって取付フランジ5に固定されており、第1および第2の軸受12,13によって回転軸2を回転自在に支持している。
【0033】
固定用ボルト6は、固定ベース11に設けられたねじ孔62(図3参照)に螺着されている。ねじ孔62は、固定ベース11を周方向に3等分する位置にそれぞれ設けられている。
固定ベース11の軸心部であって可動ベース24とは反対側の端部には、円筒状のボス63が突設されている。このボス63は、図1に示すように、取付フランジ5の貫通穴5aに嵌合している。
【0034】
<負荷機構の構成>
固定ベース11における回転軸支持部14より径方向の外側であって、回転軸2の回転方向に3等分される位置には、図3に示すように、負荷機構31がそれぞれ設けられている。すなわち、この実施の形態によるセンサー部4は、3組の負荷機構31を備えている。これらの負荷機構31の構成部品は、図7に示すように、固定ベース11を軸線方向(図7においては左右方向)に貫通する3つのピン挿入穴64と、固定ベース11を軸線方向とは直交する方向(図7においては上下方向)に貫通するばね挿入穴65とに収容されている。ピン挿入穴64とばね挿入穴65とは、固定ベース11内で交差し、互いに連通している。
【0035】
ピン挿入穴64の穴径は、ストッパーピン32の外径より大きい。このピン挿入穴64は、3本あるストッパーピン32と対応する位置にそれぞれ形成されており、固定ベース11と可動ベース24とが組み合わせられた状態でストッパーピン32が挿入される。ストッパーピン32は、可動ベース24が固定ベース11に対して変位することにより、ピン挿入穴64の穴壁面に当接するまでピン挿入穴64の中で移動可能である。
【0036】
ストッパーピン32の先端部には、第1のばね受け部材66が装着されている。この第1のばね受け部材66は、図9および図10に示すように、ストッパーピン32の長手方向とは直交する方向に延びる円柱状に形成されている。
この第1のばね受け部材66の軸線方向の中央部には、第1のばね受け部材66を径方向に貫通する貫通孔67が穿設されている。この貫通孔67には、ストッパーピン32が回転自在に嵌合する。また、第1のばね受け部材66の軸線方向の一端部には、円形の凹部からなるばね座68が形成されている。
【0037】
ばね挿入穴65は、図11に示すように、それぞれ一端側に位置する大径穴65aと、他端側に位置するねじ孔65bと、これらの大径穴65aとねじ孔65bとの間に位置する小径穴65cとによって構成されており、大径穴65aがピン挿入穴64と交差するように形成されている。ねじ孔65bは、大径穴65aよりトルク検出方向(図11においては時計方向)の先方に位置している。
【0038】
また、ばね挿入穴65は、固定ベース11の軸線方向から見て内周縁11aと外周縁11bとの間で固定ベース11の軸線とは直交する方向(図11の紙面に沿う方向)に延びている。ばね挿入穴65の延びる方向は、図11に示すように、固定ベース11の軸線方向から見て、3つのばね挿入穴65の中心線L1〜L3によって正三角形が形成されるような方向である。
【0039】
大径穴65aの穴径は、第1のばね受け部材66の外径より大きい。第1のばね受け部材66は、ばね座68がねじ孔65bと対向する状態でストッパーピン32に装着され、大径穴65aの中に収容されている。
ねじ孔65bには、図7に示すように、ばね力調整用のボルト69が螺合している。
小径穴65cには、円板状に形成された第2のばね受け部材70が移動自在に嵌合している。この第2のばね受け部材70と上述した第1のばね受け部材66のばね座68との間には、負荷機構31の一部を構成するばね部材71が挿入されている。このばね部材71は、圧縮コイルばねからなり、第1および第2のばね受け部材66,70をこれら両部材の間隔が拡がる方向に付勢している。ばね部材71の外径は、第1のばね受け部材66のばね座68の穴径および第2のばね受け部材70の外径より小さい。
【0040】
このばね部材71のばね力は、第1のばね受け部材66を介してストッパーピン32および可動ベース24に伝達される。このため、ブレーキ部3の可動ベース24は、トルク検出方向とは反対方向にこのばね部材71によって押される。言い換えれば、可動ベース24がトルク検出方向へ回転することにより、ストッパーピン32が第1のばね受け部材66を介してばね部材71を押し、ばね力を受けることになる。ばね力は、ばね力調整用のボルト69を締め込んだり緩めたりすることにより増減可能である。この実施の形態においては、ばね力調整用のボルト69と、このボルト69が螺合するねじ孔65bとが本発明でいう「ばね部材の圧縮量を変える調整機構」に相当する。
【0041】
この実施の形態による負荷機構31は、ばね部材71と、このばね部材71と接する第1および第2のばね受け部材66,70と、第1のばね受け部材66を支持するストッパーピン32と、第2のばね受け部材70に接するばね力調整用のボルト69と、これらの部材を収容するピン挿入穴64およびばね挿入穴65を有する固定ベース11などによって構成されている。この実施の形態においては、ストッパーピン32が本発明でいう「押圧部材」に相当する。
この負荷機構31のばね部材71は、図3に示すように、固定ベース11を回転軸2の回転方向において3等分する位置であって、図4に示すように、固定ベース11の回転軸支持部14と軸線方向(図3においては左右方向)において同一の位置に配置されている。
【0042】
また、この実施の形態による負荷機構31は、ばね部材71のばね力でストッパーピン32が押されたときに、可動ベース24に回転モーメントのみが作用するように構成されている。ここで、ストッパーピン32がばね部材71によって押されたときに可動ベース24に作用する力を図12によって詳細に説明する。
ばね部材71がストッパーピン32を押すばね力は、図12中に符号F1で示すように、ばね挿入穴65の長手方向と平行に作用する。
【0043】
このばね力F1は、固定ベース11の径方向の分力F2と、この径方向とは直交する接線方向の分力F3とに分けることができる。各負荷機構31で生じる径方向の分力F2は、全ての負荷機構31においてばね部材71がストッパーピン32を押すことにより、互いに相殺される。
このため、各負荷機構31において、実質的に接線方向の分力F3のみがストッパーピン32に作用する。
【0044】
<検出手段の構成>
検出手段37は、図4に示すように、可動ベース24における固定ベース11と近接する端部に設けられた永久磁石36と、固定ベース11における可動ベース24と近接する端部に設けられた磁気センサー81とを備えている。
磁気センサー81は、永久磁石36の磁場を検出するものである。この実施の形態による磁気センサー81は、ホールICによって構成されており、トルク検出方向に回転する可動ベース24の回転角に応じた検出値を検出信号として出力する。検出信号は、リード線17を介して上述したセンサーアンプ18に送られる。
【0045】
この磁気センサー81は、図6に示すように、基板82に実装され、この基板82を介して固定ベース11の端部に取付けられている。基板82は、固定ベース11の端部に取付用ボルト83によって取付けられている。磁気センサー81は、図4に示すように、基板82を介して固定ベース11に取付けられた状態で可動ベース24の凹部35の中に臨んでいる。この凹部35は、可動ベース24が固定ベース11に対して変位したときに磁気センサー81や取付用ボルト83が可動ベース24に接触することがないように、可動ベース24の回転方向に幅広く形成されている。
【0046】
磁気センサー81のリード線17は、図8に示すように、固定ベース11の凹部84内を通されて固定ベース11の外周面から導出されている。凹部84内に位置するリード線17は、ケーブルクランプ85によって固定ベース11に固定されている。このため、リード線17は、可動ベース24に接触することがないように固定ベース11に保持されている。
【0047】
<ラビリンスシールの説明>
この実施の形態によるブレーキ部3とセンサー部4との境界部分には、ラビリンスシール86(図4参照)が設けられている。このラビリンスシール86は、可動ベース24の上述した環状溝34と、この環状溝34の中に挿入された固定ベース11側の突条87とによって構成されている。
突条87は、固定ベース11における可動ベース24と近接する端部であって固定ベース11の外周縁部に、可動ベース24に向けて突出する状態で固定ベース11の全周にわたって延びるように環状に形成されている。この突条87は、図6に示すように、固定ベース11と同一軸線上に設けられている。
この環状溝34と突条87とからなるラビリンスシール86は、固定ベース11の外周縁部と可動ベース24との接続部分から大気中の塵埃がトルク検出器61内に入ることを防ぐ。
【0048】
<トルク検出器の動作の説明>
この実施の形態によるトルクセンサー付電磁パウダブレーキ1は、電磁コイル22が通電されていない状態では非制動状態になる。この非制動状態では、ロータ23に制動トルクが加えられることはなく、回転軸2とともに被制動部材が制動されることなく回転する。
電磁コイル22が通電されると、フィールドコア21とロータ23とに磁束Φが通り、磁性粉体53がフィールドコア21とロータ23との間に集まる。そして、ロータ23の回転が磁性粉体53を介してフィールドコア21に伝達されるようになる。
【0049】
フィールドコア21は、ストッパーピン32とばね部材71とを含む負荷機構31を介して固定ベース11に接続されている。このため、ロータ23からフィールドコア21に加えられた回転トルクは、負荷機構31を介して固定ベース11に伝達され、固定ベース11によって受けられる。フィールドコア21の回転が規制されることによって、ロータ23にブレーキトルクが加わり、回転軸2および被制動部材が制動される。
【0050】
この制動状態において、フィールドコア21は、ロータ23から加えられた回転トルクで回転軸2の回転方向、すなわちトルク検出方向に押される。このとき、フィールドコア21の可動ベース24は、負荷機構31のばね部材71が圧縮されることに起因して固定ベース11に対して僅かな回転角だけ回り、回転トルクがばね力で相殺されるようになったときに停止する。
【0051】
このように可動ベース24が固定ベース11に対して回ることにより、永久磁石36が磁気センサー81に対して変位し、磁気センサー81(検出手段37)が回転角に応じた検出値を出力する。この検出値は、センサーアンプ18で増幅され、検出信号として制御装置16に送られる。この検出信号を受けた制御装置16は、検出値に基づいてブレーキトルク(現在の回転軸2の回転トルク)を演算によって求め、このブレーキトルクが予め定めた目標値と一致するように、電磁コイル22に供給する電力を制御する。ブレーキトルクの目標値は、一定とすることができるし、人為的あるいは自動的に変更することも可能である。
【0052】
<実施の形態による効果の説明>
この実施の形態によるトルク検出器61は、固定ベース11の回転軸支持部14と軸線方向の同一位置に負荷機構31のばね部材71が設けられている。このため、回転軸支持部14とばね部材71とが回転軸2の軸線方向に並ぶ場合と較べると、軸線方向に小型化することができる。また、回転軸支持部14より固定ベース11の径方向の外側であって、回転軸支持部14の近傍にばね部材71を配置できるから、この径方向についても小型化することができる。
したがって、この実施の形態によれば、小型で軽量なトルク検出器を提供することができる。
また、このトルク検出器61は、センサー部4とブレーキ部3とが回転軸2を介して接続された構造であるために、支持台(図示せず)や支持用ブラケット(図示せず)などの部品を使うことなく一つの組立体として構成することができる。このため、製造コストを低く抑えることが可能である。
【0053】
この実施の形態によるばね部材71は、固定ベース11を回転軸2の回転方向において一定の間隔で複数(3箇所)に分割する位置にそれぞれ設けられている。
このため、可動ベース24の回転力が複数のばね部材71に均等に分散するから、小型、軽量であるにもかかわらず、大きなトルクを検出することが可能なトルク検出器を提供することができる。
この実施の形態においては、可動ベース24が大きく移動したときにストッパーピン32がピン挿入穴64の穴壁に当接し、それ以上の可動ベース24の移動を規制する。このため、このトルク検出器61は、過負荷耐久性が高く、堅牢なものとなる。
【0054】
この実施の形態によるばね部材71がストッパーピン32を押す方向は、ばね部材71のばね力F1を回転部材の回転中心に向かう径方向の分力F2と、この径方向とは直交する接線方向の分力F3とに分けた場合、全てのばね部材71がストッパーピン32を押すことによって、径方向の分力F2が相殺され、接線方向の分力F3のみがストッパーピン32に作用する方向である。
【0055】
このため、ばね部材71のばね力で可動ベース24が径方向に押されることがなく、可動ベース24が固定ベース11に対して回転するときの摩擦抵抗が回転角とは無関係に略一定になる。したがって、フィールドコア21を回転自在に支持する部分(第3および第4の軸受26,27)の耐久性が高くなるとともに、検出手段37によって可動ベース24の回転角を精度良く検出することが可能になる。
【0056】
この実施の形態によるばね部材71は、圧縮コイルばねによって形成されているとともに、固定ベース11に形成されたばね挿入穴65の中に収容されている。固定ベース11は、ばね部材71の圧縮量を変えるばね力調整用のボルト69を備えている。
この実施の形態によれば、ばね部材71を固定ベース11によって保持することができるから、専らばね部材71を保持するための部品が不要である。また、ばね力調整用のボルト69を締め込んだり緩めたりすることによって、ばね部材71のばね力を調整可能であるから、既製品の圧縮コイルばねを使用して所望のばね力を得ることができる。
このため、可動ベース24の回転をばね部材71で規制する構成を安価に実現できるから、さらに製造コストが低いトルク検出器を提供することができる。
【0057】
この実施の形態による検出手段37は、永久磁石36と、この永久磁石36の磁場を検出する磁気センサー81とを有している。この実施の形態においては、固定ベース11における可動ベース24と近接する端部に磁気センサー81が設けられ、可動ベース24における固定ベース11と近接する端部に永久磁石36が設けられている。
このため、固定ベース11に対する可動ベース24の回転を検出手段37によって直接検出することができるから、検出精度が高いトルク検出器を提供することができる。
【0058】
この実施の形態による可動ベース24における固定ベース11と近接する端部には、回転軸2と同一軸線上に位置して回転軸2の軸線方向に向けて開口する環状溝34が形成されている。また、固定ベース11における可動ベース24と近接する端部には、上述した環状溝34の中に挿入されてこの環状溝34と協働してラビリンスシール86を構成する環状の突条87が形成されている。
このラビリンスシール86より径方向の内側に検出手段37や負荷機構31が設けられているから、検出手段37や負荷機構31に大気中の塵埃が入り難くなる。このため、高い検出精度を長期にわたって維持することが可能なトルク検出器を提供することができる。
【0059】
この実施の形態による可動ベース24は、電磁パウダブレーキのフィールドコア21の一部である。また、回転軸2には、電磁パウダブレーキのロータ23が固定されている。
このため、この実施の形態によれば、電磁パウダーブレーキとトルク検出器61とをコンパクトに一体化できるから、被制動部材を有する装置の簡易化や小型化を図ることができる。
【0060】
この実施の形態による負荷機構31は、ばね部材71と接する第1および第2のばね受け部材66,70を有している。ばね部材71は、圧縮コイルばねであるから、圧縮、伸張することにより捻れる。このように捻れるときは、ばね部材71の両端が第1および第2のばね受け部材66,70に接触しながら滑るようになる。このため、ばね部材71が圧縮、伸張するときの捻れ動作が円滑に行われるから、ばね力が再現性よく発生する。すなわち、トルク検出器61の検出結果の信頼性が高くなる。また、ばね部材71と接触する部分の摩耗が抑えられるようになるから、耐久性が高くなる。
【0061】
上述した実施の形態においては、検出手段37の永久磁石36が可動ベース24(回転部材)に取付けられ、磁気センサー81が固定ベース11(支持部材)に取付けられている。しかし、本発明に係るトルク検出器は、永久磁石36が固定ベース11に取付けられ、磁気センサー81が可動ベース24に取付けられていてもよい。
【0062】
上述した実施の形態によるトルク検出器61は、3組の負荷機構31を備えている。しかし、本発明に係るトルク検出器61に用いる負荷機構31は、1組だけでもよいし、4組以上でもよい。
上述した実施の形態によるトルク検出器61のラビリンスシール86は、可動ベース24(回転部材)に形成された環状溝34と、固定ベース11(支持部材)に設けられた突条87とによって構成されている。しかし、本発明に係るトルク検出器においては、環状溝34が固定ベース11に設けられ、突条87が可動ベース24に設けられていてもよい。
【0063】
上述した実施の形態によるトルク検出器61は、負荷機構31のばね部材71として圧縮コイルばねを使用している。しかし、本発明に係るトルク検出器は、図示してはいないが、皿ばねやゴムなどの弾性体を負荷機構31のばね部材として構成することができる。
【0064】
上述した実施の形態によるトルク検出器61は、可動ベース24(回転部材)が電磁パウダブレーキのフィールドコア21によって構成されている。しかし、本発明に係るトルク検出器は、図示してはいないが、モータのステータを回転部材として構成したり、モータのステータに回転部材を取付けて構成することができる。この構成を採る場合は、トルク検出器によってモータの駆動トルクを検出することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…トルクセンサー付電磁パウダブレーキ、2…回転軸、11…固定ベース(支持部材)、14…回転軸支持部、21…フィールドコア、23…ロータ、24…可動ベース(回転部材)、31…負荷機構、32…ストッパーピン(押圧部材)、34…環状溝、36…永久磁石、37…検出手段、65…ばね挿入穴、65b…ねじ孔、69…ばね力調整用のボルト(調整機構)、71…ばね部材、81…磁気センサー、86…ラビリンスシール、87…突条、F1…ばね力、F2…径方向の分力、F3…接線方向の分力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図12