【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る高速炉の炉心は、
一端から他端に延びるように構成されるとともに前記一端側にエントランスノズルを有する複数の炉心構成要素と、
複数の挿入孔を有するとともに各挿入孔に各エントランスノズルを挿入した状態で前記複数の炉心構成要素を支持する支持構造物と
を備える高速炉の炉心であって、
前記複数の炉心構成要素のうちの少なくとも1つの第1炉心構成要素は、
前記エントランスノズルから前記他端側へ離れた位置に設けられる少なくとも1つの押し付け部材と、
前記少なくとも1つの押し付け部材を隣接する第2炉心構成要素に向かって押し付ける弾性力を前記少なくとも1つの押し付け部材に付与するように構成された少なくとも1つの第1弾性部材と、
前記少なくとも1つの押し付け部材の押し付けを解除する押し付け解除機構と
を備える。
【0008】
上記(1)の構成によると、第2炉心構成要素のエントランスノズルから他端側へ離れた位置に第1炉心構成要素の少なくとも1つの押し付け部材が押し付けられることにより、この押し付けによって生じるモーメントと同じ大きさのモーメントが、エントランスノズルが挿入される挿入孔の内壁から荷重(押し付け力)を受けることでエントランスノズル部分に発生し、内壁からエントランスノズルに加えられる押し付け力によって内壁とエントランスノズルとの間に摩擦力が生じる。この摩擦力によって、例えば地震のような上下方向の振動が発生したときに、第2炉心構成要素の跳び上がりが抑制される。しかしながら、炉心燃料の交換時にこの摩擦力が存在すると、炉心構成要素の引き抜き作業に支障が生じる。炉心燃料の交換時には、押し付け解除機構によって、少なくとも1つの押し付け部材の押し付けを解除してこの摩擦力をなくす又は低減できるので、炉心構成要素を容易に引き抜くことができる。
【0009】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記少なくとも1つの押し付け部材は、前記エントランスノズルから前記第1炉心構成要素の前記他端までの長さをLとしたとき、前記第1炉心構成要素の前記他端から0.5L以内の位置に設けられている。
【0010】
エントランスノズルから少なくとも1つの押し付け部材までの距離が長いほど、挿入孔の内壁からエントランスノズルの上部と下部とに生じる荷重(押し付け力)が大きくなり、エントランスノズルと挿入孔の内壁との間に生じる摩擦力も大きくなる。上記(2)の構成によると、エントランスノズルから少なくとも1つの押し付け部材までの距離が長いので、少なくとも1つの押し付け部材による押し付け力が小さくても上記摩擦力を大きくすることができ、第1炉心構成要素及び第2炉心構成要素の跳び上がりをより効果的に抑制することができる。
【0011】
(3)いくつかの実施形態では、上記(1)または(2)の構成において、
前記第2炉心構成要素は、該第2炉心構成要素に隣接する複数の前記第1炉心構成要素の前記押し付け部材から受ける押し付け力の合力がゼロよりも大きい。
【0012】
上記(3)の構成によると、複数の第1炉心構成要素の押し付け部材の数及び押し付け方向を調整することによって、第2炉心構成要素に与える押し付け力の方向及び大きさを調整することができる。尚、複数の押し付け部材から受ける押し付け力の合力がゼロになってしまうと、複数の押し付け部材が押し付けられている第2炉心構成要素について、エントランスノズルと挿入孔の内壁との間に摩擦力が生じなくなり、跳び上がりを抑制することができないので、複数の押し付け部材による押し付け力の方向及び大きさをあえて不均一にしている。
【0013】
(4)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(3)のいずれか1つの構成において、
前記第1炉心構成要素の各々は、前記第1炉心構成要素の軸方向における他の領域から径方向外側に突出して形成されたパッド部を有し、前記少なくとも1つの押し付け部材は前記パッド部に設けられている。
【0014】
上記(4)の構成によると、パッド部は第1炉心構成要素の軸方向における他の領域から径方向外側に突出しているので、押し付け部材及び第1弾性部材の設置スペースを確保しやすくなる。
【0015】
(5)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(4)のいずれか1つの構成において、
前記第1炉心構成要素は、炉心燃料を交換するための燃料交換機の操作端と係合可能に設けられた係合空間を含み、
前記押し付け解除機構の少なくとも一部が前記係合空間内に設けられ、
前記押し付け解除機構は、前記燃料交換機によって操作可能に構成されている。
【0016】
上記(5)の構成によると、炉心燃料の交換時に燃料交換機の操作端が係合空間内で押し付け解除機構を操作することで押し付け部材の押し付けを解除することができるので、炉心構成要素の引き抜きを容易に行うことができる。
【0017】
(6)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(5)のいずれか1つの構成において、
前記押し付け解除機構は、前記第1炉心構成要素の軸方向に対して斜めに延びるように前記押し付け部材に連結された可動部又は前記押し付け部材に形成された第1テーパ面に接触する第2テーパ面を含み、前記軸方向に沿ってスライド可能に設けられたスライド部材を含む。
【0018】
上記(6)の構成によると、第1炉心構成要素の軸方向に沿ってスライド部材をスライドさせると、第2テーパ面が第1テーパ面に接触しながらスライドする際に第1テーパ面が第2テーパ面から押圧されることにより可動部又は押し付け部材が移動して、押し付け部材の押し付けが解除される。したがって、第1炉心構成要素の軸方向に沿ってスライド部材をスライドさせるという容易な操作で、押し付け部材の押し付けを解除することができる。
【0019】
(7)いくつかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記第1テーパ面は、前記第2テーパ面に対して前記押し付け部材の押し付け方向における上流側に位置する。
【0020】
上記(7)の構成によると、第1テーパ面は、第2テーパ面によって、第2テーパ面よりも押し付け部材の押し付け方向における下流側へ移動することができないので、押し付け部材の移動が制限され、その結果、押し付け部材が第1炉心構成要素から抜け出してしまうことを防止できる。
【0021】
(8)いくつかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記押し付け部材には、前記第1テーパ面によって画定されるとともに、前記第2テーパ面を含む前記スライド部材の先端部が収容される収容空間が設けられている。
【0022】
上記(8)の構成によると、第1テーパ面が押し付け部材の内部に形成され、第2テーパ面を含むスライド部材の先端部が押し付け部材内の収容空間内に収容されていることにより、押し付け解除機構の構成がコンパクトになるので、押し付け解除機構が設けられる部分の炉心構成要素の外径が大きくなることを抑制できる。
【0023】
(9)いくつかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記第1テーパ面は、前記押し付け部材に対して押し付け方向における上流側において前記第1弾性部材を介して前記押し付け部材に連結される前記可動部に設けられ、
前記第2テーパ面は、前記第1テーパ面に対して前記押し付け方向における上流側に位置する。
【0024】
上記(9)の構成によると、第1テーパ面は押し付け部材とは別体の可動部に設けられているので、押し付け部材に第1テーパ面を設ける場合に比べて、押し付け解除機構の各構成要素の構成を簡単にすることができる。
【0025】
(10)いくつかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記第1炉心構成要素には、前記押し付け部材と、前記第1弾性部材と、前記可動部とが収容される凹部が設けられ、
前記凹部内に設けられ、前記押し付け部材に対して前記押し付け方向の上流側に向かう弾性力を作用させるように構成された第2弾性部材を備える。
【0026】
上記(10)の構成によると、押し付け部材の押し付けを解除した後、第2弾性部材の弾性力により、押し付け部材を第1炉心構成要素内に向かって退避させることができる。
【0027】
(11)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(5)のいずれか1つの構成において、
前記押し付け解除機構は、第1端部から第2端部に延びるように構成されるとともに前記第1端部と前記第2端部との間に設けられた回転軸を中心に回転可能に前記炉心構成要素内に設けられた回転棒部材を有し、該回転棒部材の回転によって前記押し付け部材が押し付け方向とは逆方向に移動させるように構成されている。
【0028】
上記(11)の構成によると、回転棒部材を回転させるという容易な操作で、押し付け部材の押し付けを解除することができる。
【0029】
(12)いくつかの実施形態では、上記(9)〜(11)のいずれか1つの構成において、
前記第1炉心構成要素には、前記押し付け部材と、前記第1弾性部材と、前記可動部とが収容される凹部が設けられ、
前記第1炉心構成要素のうち前記凹部の開口端の周縁部又は前記凹部の内壁面には、前記押し付け部材の前記凹部からの抜け出しを防止するための抜け止め部が設けられている。
【0030】
上記(12)の構成によると、押し付け部材の押し付けを解除した後、押し付け部材が凹部から抜け出してしまうことを防止できる。
【0031】
(13)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る高速炉の炉心は、
一端から他端に延びるように構成されるとともに前記一端側にエントランスノズルを有する複数の炉心構成要素と、
複数の挿入孔を有するとともに各挿入孔に各エントランスノズルを挿入した状態で前記複数の炉心構成要素を支持する支持構造物と
を備える高速炉の炉心であって、
前記複数の炉心構成要素のうちの少なくとも1つの第1炉心構成要素は、
前記エントランスノズルから前記他端側へ離れた位置に設けられる少なくとも1つの押し付け部材と、
前記少なくとも1つの押し付け部材を隣接する第2炉心構成要素に向かって押し付ける弾性力を前記少なくとも1つの押し付け部材に付与するように構成された少なくとも1つの第1弾性部材と
を備え、
前記第1炉心構成要素及び前記第2炉心構成要素はそれぞれ、前記第1炉心構成要素及び前記第2炉心構成要素の軸方向における他の領域から径方向外側に突出して形成されたパッド部を備え、
前記押し付け部材の各々は、
前記第1炉心構成要素の前記パッド部において前記第1炉心構成要素の径方向内側に向かって凹んだ凹部内に設けられ、前記第1弾性部材は、前記凹部内において、前記押し付け部材と前記凹部の奥壁面との間に設けられ、前記押し付け部材は、前記第1炉心構成要素に隣接する第2炉心構成要素から荷重を受けたとき
に前記押し付け部材の全体が前記凹部内に完全に引き込まれ得るような長さを有する。
【0032】
上記(13)の構成によると、第2炉心構成要素のエントランスノズルから他端側へ離れた位置に第1炉心構成要素の少なくとも1つの押し付け部材が押し付けられることにより、この押し付けによって生じるモーメントによって、内壁からエントランスノズルに加えられる押し付け力が発生し、内壁とエントランスノズルとの間に摩擦力も生じる。この摩擦力によって、例えば地震のような上下方向の振動が発生したときに、第2炉心構成要素の跳び上がりが抑制される。一方で、押し付け部材が第2炉心構成要素から荷重を受けた場合には、押し付け部材は第1炉心構成要素内へ向かって退避され、第1炉心構成要素のパッドと第2炉心構成要素のパッドとが接触して荷重を受けることができるので、過大な荷重によって押し付け部材及び第1弾性部材が損傷するおそれを抑制することができる。
【0033】
(14)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る高速炉は、
上記(1)〜(13)のいずれか1つの炉心と、
前記炉心を収容する高速炉容器と
を備える。
【0034】
上記(14)の構成によると、燃料交換時の炉心構成要素の引き抜き作業を阻害しないようにしながら炉心構成要素の跳び上がりを抑えることのできる高速炉を提供できる。