特許第6899300号(P6899300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6899300ケーブル拘束装置およびケーブル拘束方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899300
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ケーブル拘束装置およびケーブル拘束方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/10 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   H02G9/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-188536(P2017-188536)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-68502(P2019-68502A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 正剛
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 友之
(72)【発明者】
【氏名】石川 利明
(72)【発明者】
【氏名】八木 亜喜子
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−206995(JP,A)
【文献】 実開昭54−040497(JP,U)
【文献】 実開昭54−134293(JP,U)
【文献】 特開2014−039402(JP,A)
【文献】 実開平02−103733(JP,U)
【文献】 実開昭55−082022(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波乗り現象によって移動しようとするケーブルをマンホール内で拘束するためのケーブル拘束装置であって、
前記ケーブルをクランプするクランプ部を有するクリートと、
前記クリートを支持するフレームと、
管路口の両側に配されて任意の方向に延びる形態をなし、前記管路口から離れた位置で前記マンホールの内壁に固定された一対の鋼材と、
前記フレームに固定された少なくとも一対のフレーム固定部と、
前記一対の鋼材にそれぞれ固定された少なくとも一対の鋼材固定部と、
前記一対のフレーム固定部と前記一対の鋼材固定部とを連結する連結部材であって、前記一対のフレーム固定部と前記一対の鋼材固定部との間隔を調整可能な連結部材と、を備えたケーブル拘束装置。
【請求項2】
前記鋼材は溝形鋼材であって、前記マンホールの内壁に固定される固定壁と、前記鋼材固定部が取り付け固定される取付壁と、前記固定壁と前記取付壁を連結する連結壁とを備えて構成されている請求項1に記載のケーブル拘束装置。
【請求項3】
前記連結部材は、前記鋼材固定部と前記フレーム固定部に引っ掛けられる一対のフック部と、前記一対のフック部のねじ軸に同時に螺合可能な調整部とを備えて構成されたターンバックルである請求項1または請求項2に記載のケーブル拘束装置。
【請求項4】
前記クリートは、吊下部材によって吊り下げられている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のケーブル拘束装置。
【請求項5】
波乗り現象によって移動しようとするケーブルをマンホール内で拘束するためのケーブル拘束方法であって、
管路口の両側に配されて任意の方向に延びる形態をなす一対の鋼材を、前記管路口から離れた位置で前記マンホールの内壁に固定する鋼材固定工程と、
前記ケーブルをクリートのクランプ部によってクランプするクランプ工程と、
前記クランプ工程の後に、前記クリートと一体に設けられたフレームを連結部材によって前記マンホールの内壁に連結するとともに、前記ケーブルの入線角度に応じて前記クリートを前記鋼材に固定するクリート固定工程と、を備えたケーブル拘束方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、車道の下に埋設された管路の内部に布設されたケーブルが波乗り現象によって移動するのを拘束するためのケーブル拘束装置およびケーブル拘束方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、車5が走行する車道の下には管路1が埋設されており、この管路1は隣り合う一対のマンホール2、3をつないでいる。管路1の内部にはケーブル4が布設されており、車5が車道を走行すると、車5の重量によって管路1が鉛直方向に撓み、この撓みが復元する際にケーブル4が車5の進行方向(図示矢線方向)に移動しようとする現象が知られている。この現象を波乗り現象という。
【0003】
波乗り現象によってケーブル4が移動することを防止する対策としては、ケーブル4が引き込まれる側のマンホール3においてケーブル4を拘束するものとして例えば特開2014−39402号公報(下記特許文献1)に記載のケーブル拘束方法が知られている。この方法では、フレームを備えているクリートによりケーブルをクランプした後に、ケーブルに作用する引込力に対抗してフレームをマンホールの内壁に支持させることによりケーブルを拘束している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−39402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケーブル4が引き込まれる側のマンホール3でケーブル4を拘束しても、管路1内で蛇行しているケーブル4が相手側のマンホール2に伸び出してくることがある。ところが、上記のケーブル拘束方法はケーブル4に引込力が作用することを前提としたものであって、ケーブル4が引き込まれる側のマンホール3に適用することはできたとしても、ケーブル4が引き出される側のマンホール2に適用することはできない。
【0006】
仮に、上記のケーブル拘束方法をケーブル4が引き出される側のマンホール2に適用しようとすると、マンホール2の内壁にフレーム固定用のアンカー穴を削孔することになるが、管路口6の近傍にアンカー穴を削孔すると、管路口6が破損するおそれがある。また、管路口6の配置によってはアンカー穴の削孔位置が制限される場合もあるため、フレームの取付位置が制限される結果、ケーブルの入線角度に合わせた自由な取付が困難になる。
【0007】
本明細書によって開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、波乗り現象によってケーブルが管路口から伸び出すことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示されるケーブル拘束装置は、波乗り現象によって移動しようとするケーブルをマンホール内で拘束するためのケーブル拘束装置であって、前記ケーブルをクランプするクランプ部を有するクリートと、前記クリートを支持するフレームと、管路口の両側に配されて任意の方向に延びる形態をなし、前記管路口から離れた位置で前記マンホールの内壁に固定された一対の鋼材と、前記フレームに固定された少なくとも一対のフレーム固定部と、前記一対の鋼材にそれぞれ固定された少なくとも一対の鋼材固定部と、前記一対のフレーム固定部と前記一対の鋼材固定部とを連結する連結部材であって、前記一対のフレーム固定部と前記一対の鋼材固定部との間隔を調整可能な連結部材と、を備えた。
【0009】
このような構成によると、ケーブル拘束装置の取付作業に先立って、一対の鋼材をマンホールの内壁に固定し、一対のフレーム固定部をフレームに固定し、一対の鋼材固定部を一対の鋼材にそれぞれ固定しておく。この後、クランプ部によってケーブルをクランプし、一対の鋼材固定部と一対のフレーム固定部とを連結部材によって連結することでケーブル拘束装置をマンホールの内壁に取り付け固定することができる。このように、本明細書によって開示されるケーブル拘束装置はケーブルに作用する引込力に対抗してフレームをマンホールの内壁に支持させる構成ではないため、ケーブルが引き込まれる側と引き出される側との双方に適用することができる。
【0010】
上記構成では鋼材固定部をマンホールの内壁に直接固定するのではなく、マンホールの内壁における管路口から離れた位置で鋼材を固定するようにしたから、管路口が破損することを回避できる。また、鋼材に鋼材固定部を固定するようにしたから、鋼材固定部の取付位置が制限されることはなく、ケーブルの入線角度に合わせた最適な姿勢でクリートを一対の鋼材に取り付けることが可能になり、現場調査が不要になる。さらに、連結部材によって一対のフレーム固定部と一対の鋼材固定部との間隔を調整できるようにしたから、前記した最適な姿勢を維持したままクリートを一対の鋼材に固定することができる。この結果、波乗り現象によってケーブルが管路口から伸び出すことを抑制できる。
【0011】
本明細書によって開示されるケーブル拘束装置は、以下の構成としてもよい。
前記鋼材は溝形鋼材であって、前記マンホールの内壁に固定される固定壁と、前記鋼材固定部が取り付け固定される取付壁と、前記固定壁と前記取付壁を連結する連結壁とを備えて構成されているものとしてもよい。
このようにすると、汎用品の溝形鋼材を用いてクリートを強固に固定することができる。
【0012】
前記連結部材は、前記鋼材固定部と前記フレーム固定部に引っ掛けられる一対のフック部と、前記一対のフック部のねじ軸に同時に螺合可能な調整部とを備えて構成されたターンバックルであるものとしてもよい。
このようにすると、調整部を一対のねじ軸に同時に螺合させることにより鋼材固定部とフレーム固定部との間隔を調整することができる。
【0013】
前記クリートは、吊下部材によって吊り下げられている構成としてもよい。
このような構成によると、吊下部材によってクリートを支持することができるため、クリートの自重によってケーブルに負荷がかかることを回避できる。
【0014】
また、本明細書によって開示されるケーブル拘束方法は、波乗り現象によって移動しようとするケーブルをマンホール内で拘束するためのケーブル拘束方法であって、管路口の両側に配されて任意の方向に延びる形態をなす一対の鋼材を、前記管路口から離れた位置で前記マンホールの内壁に固定する鋼材固定工程と、前記ケーブルをクリートのクランプ部によってクランプするクランプ工程と、前記クランプ工程の後に、前記クリートと一体に設けられたフレームを連結部材によって前記マンホールの内壁に連結するとともに、前記ケーブルの入線角度に応じて前記クリートを前記鋼材に固定するクリート固定工程と、を備えたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本明細書によって開示されるケーブル拘束装置によれば、波乗り現象によってケーブルが管路口から伸び出すことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ケーブル拘束装置を前方から見た正面図
図2】ケーブル拘束装置を上方から見た平面図
図3】ケーブル拘束装置を側方から見た側面図
図4】波乗り現象によってケーブルが移動する様子を示した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
実施形態を図1から図4の図面を参照しながら説明する。図1は、マンホール2の内壁7に開口して設けられた複数の管路口6を正面から見たものであり、複数の管路口6は、左右に2列、上下に3段に並んで設けられている。管路口6とは、図4に示すように、車5が走行する車道の下において隣り合う一対のマンホール2、3をつなぐ管路1の端部開口のことである。本実施形態の管路1の内部には電力用のケーブル4が布設されているが、ケーブル4の種類としては電力用ケーブルに限定されることなく、例えば通信用ケーブルであってもよい。また、複数の管路口6は、左右に2列、上下に3段に限定されず、これ以外にも左右に3列、上下に4段等、いずれの配置であってもよい。
【0018】
本実施形態ではケーブル4が引き出された側のマンホール2の内壁7にケーブル拘束装置10を設置した場合について説明するものの、ケーブル4が引き込まれる側のマンホール3の内部にもケーブル拘束装置10を設置することができる。図1に示すように、マンホール2の内壁7には、複数本の溝形鋼材20が平行に並んで固定されている。溝形鋼材20は上下方向に延びる形態をなし、管路口6の左右両側に1つずつ配設されており、左右に隣り合う一対の管路口6の間には、両管路口6に共通の溝形鋼材20として1つだけ設けられている。なお、溝形鋼材20は管路口6の配置に合わせて任意の方向に延びる形態で配設することができ、例えば左右方向に延びる形態で配設してもよい。また、溝形鋼材20は必ずしも平行に固定されている必要はなく、ハの字状に固定されているものとしてもよい。
【0019】
溝形鋼材20は、図2に示すように、上方から見て略門形とされ、マンホール2の内壁7に立てられたアンカーボルト8にナット9で締結された固定壁21と、鋼材固定部30が取り付け固定された取付壁22と、固定壁21と取付壁22を連結する連結壁23とを備えて構成されている。鋼材固定部30は、図3に示すように、円環状の取付部31と、ねじ軸32と、ナット33とから構成されている。鋼材固定部30は、溝形鋼材20の取付壁22に対してねじ軸32を通した後、ナット33をねじ軸32に締め込むことで取付壁22に固定されている。
【0020】
本実施形態では、1つのケーブル拘束装置10につき4つの鋼材固定部30が用いられている。図1に示すように、1つの溝形鋼材20に2つの鋼材固定部30が取り付けられている。これらの鋼材固定部30は管路口6に近い位置に配設されているものの、マンホール2の内壁7に直接固定されていないため、マンホール2の内壁7が破損することはない。溝形鋼材20を内壁7に固定するアンカーボルト8は、溝形鋼材20の上下両端部に対応する位置、すなわち管路口6から離れた位置で内壁7に立てられているため、アンカー孔を削孔する際に管路口6の周辺部が破損することはない。
【0021】
ケーブル拘束装置10は、図3に示すように、ケーブル4をクランプするクリート40と、そのクリート40を支持する一対のフレーム50とを備えて構成されている。フレーム50は、図2に示すように、上方から見て略L字状とされ、ケーブル4に沿って延びる縦フレーム51と、ケーブル4と直交する配置の横フレーム52とからなる。クリート40は、図3に示すように、ケーブル4をクランプする2つのクランプ部41を有しており、これらのクランプ部41は上下一対の縦フレーム51に架設されている。このようにしてクリート40のクランプ部41はフレーム50と一体に設けられている。
【0022】
クランプ部41は、図1および図2に示すように、左右に分離された第1金具42および第2金具43の間に円筒形状のスペーサ44が挟み込まれた構成とされている。第1金具42および第2金具43はアルミニウムなどの金属製であり、スペーサ44はゴムなどで成形されている。スペーサ44の内周形状は、3本のケーブル4を挿通させてクランプできるように形成されている。なお、図2から図4においては3本のケーブル4を簡略化して1本のケーブル4として描いている。
【0023】
第1金具42および第2金具43は、その上下両側において複数の締結ボルト45によって互いに結合されている。また、図3に示すように、第2金具43は、その上下両側において複数の固定ボルト46によって縦フレーム51に取り付け固定されている。
【0024】
図2および図3に示すように、横フレーム52には一対のフレーム固定部60が取り付け固定されている。フレーム固定部60は鋼材固定部30と同様の構成であって、円環状の取付部61と、ねじ軸62と、ナット63とから構成されている。フレーム固定部60は、横フレーム52に対してねじ軸62を通した後、ナット63をねじ軸62に締め込むことで横フレーム52に固定されている。
【0025】
鋼材固定部30とフレーム固定部60は、連結部材70により連結されている。連結部材70は、鋼材固定部30の取付部31とフレーム固定部60の取付部61とにそれぞれ引っ掛けられる一対のフック部71と、一対のフック部71のねじ軸に同時に螺合可能な調整部72とを備えて構成されており、一般にはターンバックルという称呼で呼ばれる場合がある。調整部72を回動させることで、一対のフック部71の調整部72からの突出量を調整可能とされている。具体的には、一方のフック部71の突出量が大きくなると、他方のフック部71の突出量も大きくなり、一方のフック部71の突出量が小さくなると、他方のフック部71の突出量も小さくなる。これにより、鋼材固定部30とフレーム固定部60の間隔は、連結部材70によって調整可能とされ、クリート40が一対の溝形鋼材20に移動不能に取り付け固定される。
【0026】
図2に示すように、上側のフレーム50の横フレーム52の中央部には、チェーン80によって吊り下げるためのチェーン用取付部81が取り付け固定されている。チェーン用取付部81は、一対のフレーム固定部60の間に位置している。チェーン用取付部81は、チェーン用連結部材82を介してチェーン80の下端に連結されている。チェーン80の上端は、マンホール2の図示しない天井壁に固定されている。チェーン用連結部材82は、連結部材70と同様の構成であって、チェーン用取付部81とチェーン80の下端との間隔を調整可能とされている。これにより、クリート40はチェーン80によって吊り下げられている。
【0027】
最上段、中段、および最下段に配された全てのケーブル拘束装置10について、クリート40がチェーン80によって吊り下げられている。このようにすれば、ケーブル拘束装置10の重量がケーブル4に乗らないようにすることができる。なお、左右に隣り合う一対のケーブル拘束装置10は、クリート40同士が干渉しないように、わずかに上下にずらした状態で配設されている。
【0028】
本実施形態のケーブル拘束装置10は以上のような構成であって、続いてそのケーブル拘束方法について説明する。
【0029】
まず、溝形鋼材20をマンホール2の内壁7に固定する作業を行う(鋼材固定工程)。内壁7には左右一対の管路口6が上下に並んで配されており、ケーブル拘束装置10が取り付けられる管路口6の左右両側に一対の溝形鋼材20を取り付ける。本実施形態では左側の管路口6の左側と、左右一対の管路口6の間と、右側の管路口6の右側との3箇所にそれぞれ溝形鋼材20を取り付ける。内壁7への取付位置は、最上段の管路口6から上方に離れた位置と、最下段の管路口6から下方に離れた位置との2箇所である。内壁7にアンカーボルト8を固定し、このアンカーボルト8に溝形鋼材20のボルト孔24を通してナット9を締め込むことで溝形鋼材20が内壁7に固定される。
【0030】
次に、管路口6からマンホール2内に引き出されたケーブル4をクリート40のクランプ部41によってクランプする作業を行う(クランプ工程)。クランプ作業は、スペーサ44の中にケーブル4を通し、締結ボルト45によって第1金具42と第2金具43とを締め付けることで行う。ケーブル4の入線角度は内壁7に対して90°であるとは限らず、ケーブル4が内壁7に対して傾いている場合には、このケーブル4をクランプしているケーブル拘束装置10も内壁7に対して傾くことになる。
【0031】
次に、ケーブル拘束装置10のクリート40をマンホール2の内壁7に固定する作業を行う(クリート固定工程)。クリート40を内壁7に固定する作業は、連結部材70の一対のフック部71を鋼材固定部30の取付部31とフレーム固定部60の取付部61との双方に軽く引っ掛けた状態としておき、調整部72を回動させてクリート40が内壁7に支持された状態とすることにより行う。連結部材70の全長は、調整部72の回動操作によって自在に調整することができるから、ケーブル4の入線角度に応じた最適な姿勢でクリート40を固定することができる。この結果、波乗り現象によって管路1からケーブル4が伸び出すことを抑制できる。
【0032】
本実施形態ではクリート40が複数のチェーン80によってマンホール2の天井壁から吊り下げられており、クリート40の自重によってケーブル4に負荷がかかることを回避している。具体的に説明すると、チェーン80の上端をマンホール2の天井壁に固定しておき、チェーン用取付部81とチェーン80の下端との双方にチェーン用連結部材82の各フック部83を引っ掛けておき、調整部84を回動させることによりチェーン80に作用する引張力が最適となるように調整する。
【0033】
本実施形態ではケーブル4が引き出される側のマンホール2内にケーブル拘束装置10を適用したものを例示しているものの、ケーブル4が引き込まれる側のマンホール3内にケーブル拘束装置10を適用してもよい。ケーブル4が引き込まれる側のマンホール3内にケーブル拘束装置10を適用した場合には、波乗り現象によってケーブル4が管路1に引き込まれることを抑制できる。
【0034】
以上のように本実施形態では、ケーブル拘束装置10の取付作業に先立って、一対の鋼材(溝形鋼材20)をマンホール2の内壁7に固定し、一対のフレーム固定部60をフレーム50に固定し、一対の鋼材固定部30を一対の鋼材にそれぞれ固定しておく。この後、クランプ部41によってケーブル4をクランプし、一対の鋼材固定部30と一対のフレーム固定部60とを連結部材70によって連結することでケーブル拘束装置10をマンホール2の内壁7に取り付け固定することができる。このように、本明細書によって開示されるケーブル拘束装置10はケーブルに作用する引込力に対抗してフレームをマンホールの内壁に支持させる構成ではないため、ケーブル4が引き込まれる側と引き出される側との双方に適用することができる。
【0035】
上記構成では鋼材固定部30をマンホール2の内壁7に直接固定するのではなく、マンホール2の内壁7における管路口6から離れた位置で鋼材を固定するようにしたから、管路口6が破損することを回避できる。また、鋼材に鋼材固定部30を固定するようにしたから、鋼材固定部30の取付位置が制限されることはなく、ケーブル4の入線角度に合わせた最適な姿勢でクリート40を一対の鋼材に取り付けることが可能になり、現場調査が不要になる。さらに、連結部材70によって一対のフレーム固定部60と一対の鋼材固定部30との間隔を調整できるようにしたから、前記した最適な姿勢を維持したままクリート40を一対の鋼材に固定することができる。
【0036】
鋼材は溝形鋼材20であって、マンホール2の内壁7に固定される固定壁21と、鋼材固定部30が取り付け固定される取付壁22と、固定壁21と取付壁22を連結する連結壁23とを備えて構成されているものとしてもよい。
このようにすると、汎用品の溝形鋼材20を用いてクリート40を強固に固定することができる。
【0037】
連結部材70は、鋼材固定部30とフレーム固定部60に引っ掛けられる一対のフック部71と、一対のフック部71のねじ軸に同時に螺合可能な調整部72とを備えて構成されたターンバックルであるものとしてもよい。
このようにすると、調整部72を一対のねじ軸に同時に螺合させることにより鋼材固定部30とフレーム固定部60との間隔を調整することができる。
【0038】
クリート40は、吊下部材(チェーン80)によって吊り下げられている構成としてもよい。
このような構成によると、吊下部材によってクリート40を支持することができるため、クリート40の自重によってケーブル4に負荷がかかることを回避できる。
【0039】
また、本明細書によって開示されるケーブル拘束方法は、波乗り現象によって移動しようとするケーブル4をマンホール2内で拘束するためのケーブル拘束方法であって、管路口6の両側に配されて任意の方向に延びる形態をなす一対の鋼材を、管路口6から離れた位置でマンホール2の内壁7に固定する鋼材固定工程と、ケーブル4をクリート40のクランプ部41によってクランプするクランプ工程と、クランプ工程の後に、クリート40と一体に設けられたフレーム50を連結部材70によってマンホール2の内壁7に連結するとともに、ケーブル4の入線角度に応じてクリート40を鋼材に固定するクリート固定工程と、を備えたものとしてもよい。
【0040】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態ではフレーム固定部60としてフレーム50とは別体で構成された別体部品を例示しているが、フレーム50に貫通孔を設けることでフレーム50そのものにフレーム固定部を設けてもよい。
【0041】
(2)上記実施形態では鋼材固定部30として溝形鋼材20とは別体で構成された別体部品を例示しているが、溝形鋼材20に貫通孔を設けることで溝形鋼材20そのものに鋼材固定部を設けてもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では鋼材として、溝の開口部が全幅に亘って設けられた形(日本語のカタカナ表記のコの字形)の溝形鋼材20を用いているものの、溝の開口部の両側がやや内向きに閉じられたC形のチャンネル材を用いてもよい。
【0043】
(4)上記実施形態では連結部材70としてターンバックルを例示しているものの、寸切りボルトとナットを用いることで溝形鋼材20とフレーム50を連結してもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では吊下部材としてチェーン80を例示しているが、金属製のワイヤーを用いてクリート40を吊り下げてもよい。また、上記実施形態ではフレーム50を介してクリート40を吊り下げているものの、チェーン80によってクリート40を直接吊り下げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
2…マンホール
4…ケーブル
6…管路口
7…内壁
10…ケーブル拘束装置
20…溝形鋼材
21…固定壁
22…取付壁
23…連結壁
30…鋼材固定部
40…クリート
41…クランプ部
50…フレーム
60…フレーム固定部
70…連結部材
71…フック部
72…調整部
80…チェーン(吊下部材)
図1
図2
図3
図4