(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内視鏡等の再使用が可能な医療機器は、患者間の感染症等を防止するため、使用後に滅菌処理を行う必要がある。代表的な滅菌処理としては、酸化エチレンガスによる滅菌処理及び低温過酸化水素ガスプラズマによる滅菌処理が挙げられる。
【0006】
ここで、酸化エチレンガスによる滅菌処理は、酸化エチレンガスの浸透性が高いため、内径が細い管腔(たとえば、1mm以下)に対しても十分な滅菌性を確保することができるという利点がある。しかしながら、滅菌に長時間(10時間以上)を要するという欠点がある。
【0007】
一方、低温過酸化水素ガスプラズマによる滅菌処理は、滅菌処理の所要時間が短時間(30〜70分程度)で済むという利点がある。しかしながら、過酸化水素ガスの浸透性が低いために、内径が細い管腔(たとえば、1mm以下)に対しては、十分な滅菌性を確保することができないという欠点がある。
【0008】
ここで、従来の涙道内視鏡において挿入部の外径を1mm程度とした場合に、挿入部内に確保できる注水チャンネルの内径は、0.2mm〜0.5mm程度である。従って、このような涙道内視鏡に対して十分な滅菌性を確保するためには、酸化エチレンガスによる滅菌処理を用いることになるため、滅菌に長時間を要するという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、十分な滅菌性を確保しつつ、滅菌処理の所要時間を短縮することが可能な涙道内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための主たる発明は、細長の挿入部、及び端面に前記挿入部の基端部が接続される把持部を有する涙道内視鏡であって、前記把持部の内部に形成される注水チャンネルと、前記把持部の端面において、前記挿入部の基端部と異なる位置に形成され、前記注水チャンネルと連通する注水口と、を有する涙道内視鏡である。本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な滅菌性を確保しつつ、滅菌処理の所要時間を短縮することが可能な涙道内視鏡を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
==涙道内視鏡システムの概要==
図1は、本実施形態に係る涙道内視鏡システム100の全体構成を示す概略図である。涙道内視鏡システム100は、涙道内視鏡200、イメージングシステム400及びモニタ500を含む。
【0014】
涙道内視鏡200は、涙道内を観察するための内視鏡である。イメージングシステム400は、映像処理装置を有し、涙道内視鏡200で得られた映像を処理してモニタ500に表示させる。また、イメージングシステム400は、光源装置を有し、涙道内視鏡200が涙道内を照明するための照明光を供給する。
【0015】
==涙道内視鏡==
図2は、本実施形態に係る涙道内視鏡200の全体構成を示す概略図である。
図3は、涙道内視鏡200の把持部204を説明する断面図である。
図4は、涙道内視鏡200の詳細を説明する断面図及び矢視図である。
図4において、(a)は、挿入部202及び把持部204(一部)の断面図であり、(b)は、(a)に示すA方向の矢視図であり、(c)は、(a)に示すB−B´の断面図である。
【0016】
図2等に示すように、涙道内視鏡200は、挿入部202、把持部204、ケーブル部208等を含む。
【0017】
挿入部202は、患者の涙点から涙道内に挿入される細長の部材である。挿入部202は、
図3及び
図4に示すように、その基端部に把持部204が接続される。挿入部202は、
図4に示すように、外装パイプ210を有する。外装パイプ210は、ステンレス鋼等の金属で構成される。外装パイプ210内には、イメージガイドファイバー212、対物レンズ214及び複数のライトガイドファイバー216が設けられる。また、外装パイプ210内は、充填材218により充填されている(
図4(a)、(b)参照)。
【0018】
イメージガイドファイバー212は、先端部側に設けられた対物レンズ214を介して得られた映像をイメージングシステム400に伝送する。イメージガイドファイバー212は、石英、多成分ガラス、プラスチック等で形成されている。ライトガイドファイバー216は、イメージングシステム400内の光源装置からの光を導通し、涙道内を照明する。ライトガイドファイバー216は、ガラス、プラスチック等で形成されている。イメージガイドファイバー212は「画像伝送手段」の一例であり、ライトガイドファイバー216は「照明手段」の一例である。
【0019】
なお、「画像伝送手段」としては、イメージガイドファイバー212の他、CMOS、CCD等の撮像素子を用いてもよい。この場合、挿入部202の先端部側に撮像素子を配置する。また、「照明手段」としては、LEDを用いてもよい。この場合、挿入部202の先端部側にLEDを配置する。
【0020】
把持部204は、涙道内視鏡200を使用する際に術者が把持する部分である。把持部204の一端面には、挿入部202の基端部が接続される(
図3及び
図4参照)。把持部204の内部には、注水チャンネル204bが形成されている。更に、把持部204の一端面において、挿入部202の基端部が接続される位置と異なる位置に、注水口204aが形成されている。注水口204aは、注水チャンネル204bと連通する。注水チャンネル204bは、内径が1mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0021】
把持部204の一端面の反対側の端面(他端面)には、注水口金220が設けられている(
図2、
図3参照)。注水口金220は、生理食塩水等を充填したシリンジ等が接続される部分であり、注水チャンネル204b内に生理食塩水等を供給するために設けられている。注水チャンネル204b内に供給された生理食塩水等は、注水口204aから挿入部202の側面を伝って挿入部202の先端部へ流れることで、患者の涙道へ供給される。
【0022】
ケーブル部208は、把持部204の側面に連結されている(
図2参照)。ケーブル部208は、ケーブル分岐部226を介して2つに分岐している。分岐した一方の末端にはイメージガイドプラグ228が設けられ、他方の末端にはライトガイドプラグ230が設けられている。
【0023】
イメージガイドファイバー212は、挿入部202から把持部204及びケーブル分岐部226を通ってイメージガイドプラグ228まで延出している。イメージガイドプラグ228をイメージングシステム400のカメラ側ソケットに接続することにより、涙道内視鏡200はイメージガイドファイバー212で得られた映像をイメージングシステム400に伝送できる。
【0024】
ライトガイドファイバー216は、挿入部202から把持部204及びケーブル分岐部226を通ってライトガイドプラグ230まで延出している。ライトガイドプラグ230をイメージングシステム400の光源側ソケットに接続されることにより、涙道内視鏡200は涙道内を照明することができる。
【0025】
ここで、涙道内視鏡200は、上述した構成に加えて、シース部材206を更に備えてもよい。
図5を参照してシース部材206について説明する。
図5は、シース部材206が装着された涙道内視鏡200を説明する断面図及び矢視図である。
図5において、(a)は、挿入部202、把持部204(一部)、及びシース部材206の断面図であり、(b)は、(a)に示すA方向の矢視図であり、(c)は、(a)に示すB−B´の断面図である。
【0026】
シース部材206は、挿入部202の外径よりも大きい内径を有する中空の部材である。シース部材206は、挿入部202及び把持部204に対して脱着可能である。
図5に示すように、本実施形態に係るシース部材206は、チューブ222及び口金224を有する。チューブ222は、挿入部202の外径よりも大きい内径を有する管状の部材であり、挿入部202の先端部から基端部にかけての側面を覆う。口金224は、把持部204の一端面側に脱着可能なキャップ状の部材である。口金224は、基端部側及び先端部側のそれぞれに開口部を有し、基端部側の開口部の径は、先端部側の開口部の径よりも大きい。口金224は、口金224の先端部側の開口部の内周が、チューブ222の基端部側近傍の外周に接合するように設けられている。これによって、チューブ222の管路は、口金224の基端部側の開口部まで連通する。
【0027】
また、シース部材206は、把持部204に対して装着された状態において、挿入部202の側面及び把持部204の一端面を覆う(
図5参照)。このとき、シース部材206の内壁、挿入部202の側面、及び把持部204の一端面により、間隙206aが形成される。間隙206aは、把持部204の注水チャンネル204bと連通している。従って、注水チャンネル204b内に供給された生理食塩水等は、注水口204aから間隙206aを流れて、涙道内視鏡200の先端部側から患者の涙道へ供給される。
【0028】
シース部材206を把持部204に対して装着するには、先ず、挿入部202を口金224の基端部側の開口部からチューブ222内に挿入していく。そして、把持部204の一端面側を口金224の基端部側の開口部に挿入することによって、口金224の内壁に把持部204の側面が接触して、把持部204の一端面側が口金224と連結された状態になる。これによって、シース部材206が把持部204に対して装着される。この場合、チューブ222は挿入部202の基端部から先端部にかけての側面を覆い、口金224は把持部204の一端面を覆った状態となる。
【0029】
以上から明らかなように、本実施形態に係る涙道内視鏡200は、細長の挿入部202、及び端面に前記挿入部202の基端部が接続される把持部204を有する涙道内視鏡200であって、前記把持部204の内部に形成される注水チャンネル204bと、前記把持部204の端面において、前記挿入部202の基端部と異なる位置に形成され、前記注水チャンネル204bと連通する注水口204aと、を有する。
【0030】
このように、従来の涙道内視鏡のように挿入部内に注水チャンネルを設ける代わりに、把持部204に注水チャンネル204bを設けることにより、注水チャンネル204bの内径を、挿入部202の内部に注水チャンネル204bを設ける場合に比べて大きくすることができる。従って、例えば、低温過酸化水素ガスプラズマによる滅菌処理方法のように、浸透性が低いガスを用いる滅菌処理方法を適用することができる。これによって、十分な滅菌性を確保しつつ、滅菌処理の所要時間を短縮することが可能な涙道内視鏡200を提供することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る涙道内視鏡200は、挿入部202の外径よりも大きい内径を有し、挿入部202の側面及び把持部204の端面を覆うシース部材206を更に有する。このようなシース部材206を有することにより、シース部材206の内壁、挿入部202の側面及び把持部204の一端面は、間隙206aを形成する。従って、注水チャンネル204bから供給された生理食塩水等は、挿入部202とシース部材206の間隙206aを流れて、患者の涙道に涙道内視鏡200の先端部側から注水される。つまり、涙道への生理食塩水等の供給がより容易になる。
【0032】
更に、本実施形態に係る涙道内視鏡200において、注水チャンネル204bは、内径が1mm以上3mm以下であることが好ましい。注水チャンネル204bの内径を1mm以上とすることにより、低温過酸化水素ガスプラズマによる滅菌処理方法のように、従来の涙道内視鏡に対して適用できなかった滅菌処理方法を用いて注水チャンネル204b内を滅菌処理することができる。また、注水チャンネル204bの滅菌時間を短縮する観点からは内径が大きいほど好ましいが、内径が3mm程度であれば、上述の滅菌処理方法における滅菌時間が十分に短縮される。従って、注水チャンネル204bの内径が1mm以上3mm以下であることによって、涙道内視鏡200の小型化を妨げず、かつ、十分に滅菌時間を短縮することができる。
【0033】
<第2実施形態>
==涙道内視鏡==
図6は、シース部材306が装着された涙道内視鏡300を説明する断面図及び矢視図である。
図6において、(a)は、挿入部202、把持部204(一部)、及びシース部材306の断面図であり、(b)は、(a)に示すA方向の矢視図である。
図7は、本実施形態に係るシース部材306の先端部近傍の構成を説明する斜視図である。
【0034】
本実施形態に係る涙道内視鏡300は、シース部材306の構成が第1実施形態に係る涙道内視鏡200と異なっている。他の構成については涙道内視鏡200と共通であるため、以下ではそれらの説明は省略する。
【0035】
本実施形態に係るシース部材306は、挿入部202の側面及び把持部204の端面を覆う。また、シース部材306は、挿入部202の基端部側を覆う部分の外径より先端部側を覆う部分の外径が小さい。つまり、シース部材306は、基端部側から先端部側に向かって先細りの形状を有する。また、シース部材306は、挿入部202の先端部近傍で、シース部材306の内径と挿入部202の外径とがほぼ一致する。すなわち、シース部材306は、挿入部202の先端部近傍に、挿入部202との間の間隙306aを塞ぐように、挿入部202の側面と接触する領域を有する。更に、シース部材306は、その先端部側であって、当該接触する領域よりも挿入部202の基端部側の側面を覆う部分に開口部322aを有する。把持部204の注水チャンネル204b内に供給された生理食塩水等は、注水口204aから間隙306aを流れて挿入部202の先端部側へ向かい、開口部322aから患者の涙道へ供給される。なお、本実施形態のように、シース部材306の先端部側が塞がれている場合、生理食塩水等はシース部材306の先端部側から供給されることはない。
【0036】
図6に示すように、本実施形態に係るシース部材306は、チューブ322及び口金324を有する。チューブ322は、挿入部202の先端部側から基端部側を覆う管状の部材である。開口部322aは、チューブ322の先端部近傍に設けられている。口金324の構成は、第1実施形態に係る涙道内視鏡200の口金224と同様であるため、説明は省略する。
【0037】
シース部材306を把持部204に対して装着するには、先ず、挿入部202を口金324の基端部側の開口部からチューブ322内に挿入していく。そして、把持部204の一端面側を口金324の基端部側の開口部に挿入することによって、口金324の内壁に把持部204の側面が接触して、把持部204の一端面側が口金324と連結された状態になる。これによって、シース部材306が把持部204に対して装着される。この場合、チューブ322は挿入部202の基端部から先端部にかけての側面を覆い、口金324は把持部204の一端面を覆った状態となる。
【0038】
以上から明らかなように、本実施形態に係る涙道内視鏡300は、挿入部202の側面及び把持部204の端面を覆い、挿入部202の先端部側を覆う部分ほど外径が大きく、挿入部202との間の間隙306aを塞ぐように挿入部202の側面と接触する領域を有し、当該接触する領域よりも挿入部202の基端部側の側面を覆う部分に開口部322aを有するシース部材306を有する。このようなシース部材306は、挿入部202の先端部側を覆う部分ほど外径が小さい、つまり、先細りの形状を有するために、涙道内視鏡300を患者の涙道に挿入しやすくなる。更に、シース部材306の先端部側に形成された開口部322aから生理食塩水等を患者の涙道へ供給することができる。
【0039】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。例えば、上記構成を眼球用の硬性内視鏡に応用することも可能である。また、眼科用に限らず、一般的な硬性内視鏡にも応用することができるが、特に極細径の内視鏡に用いることが好ましい。また、シース部材206またはシース部材306は、ディスポーザブルであってもよいし、再利用可能としてもよい。再利用する場合には、涙道内視鏡200または涙道内視鏡300と同様の滅菌処理が可能となる。
【0040】
また、第2実施形態の構成において、挿入部202とシース部材306の先端部側に隙間を形成することにより、開口部322a及びシース部材306の先端部側の両方から生理食塩水等を供給することも可能である。或いは、第2実施形態のような先細り形状のシース部材において、挿入部とシース部材の先端部側に隙間を形成する一方、開口部322aに相当する構成を設けないことも可能である。この場合、第1実施形態と同様、シース部材306の先端部側から生理食塩水等を供給することが可能となる。また、先細り形状のシース部材を用いることで涙道への挿入がより容易となる。
【0041】
また、上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。それらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。