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特許6899319モータ駆動制御装置及びモータの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899319
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置及びモータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20210628BHJP
【FI】
   H02P29/024
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-243655(P2017-243655)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-110718(P2019-110718A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−063571(JP,A)
【文献】 特開2002−136147(JP,A)
【文献】 特開2010−142061(JP,A)
【文献】 特開平06−280587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を有し、モータの3相のコイルに駆動電流を流すモータ駆動部と、
前記複数のスイッチング素子を動作させる駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力することにより、前記3相のコイルの通電パターンを順次切り替える制御回路部と、
前記駆動電流の大きさに対応する電圧値を検出する電流検出回路とを備え、
前記制御回路部は、
前記通電パターンの切り替えが行われる度に、前記電圧値に基づいて、前記駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する電圧比較部と、
複数の通電パターンについての前記電圧比較部の比較結果に基づいて、前記モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する断線判定部とを有し、
前記制御回路部は、前記3相のコイルの通電パターンを所定の順序でひととおり切り替える1巡の切替制御を繰り返して行い、
前記断線判定部は、前記1巡の切替制御が行われる度に、前記1巡の切替制御が行われる間の前記電圧比較部の比較結果に基づいて、前記モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定し、
前記断線判定部は、前記1巡の切替制御が行われる度に、
前記1巡の切替制御が行われる間の前記電圧比較部の比較結果に基づく評価値と、それまでの評価値に基づいて算出された判定値とに基づいて、新たな判定値を算出し、
前記新たな判定値と所定の異常判定閾値とを比較した結果に基づいて、前記異常状態であるか否かを判定する、モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記電圧比較部は、前記通電パターンの切替えが行われる度に、前記駆動電流の大きさが前記所定の電流閾値よりも大きいか否かを示す2値の値を生成するとともに、前記1巡の切替制御が行われる度に、前記1巡の切替制御が行われる間に生成した2値の値が前記通電パターンの切り替え順に対応する所定の順番で各桁に並んでなる比較結果情報を生成し、
前記断線判定部は、前記比較結果情報が所定の異常値情報に一致するか否かに基づいて、前記モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する、請求項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御回路部は、前記通電パターンの切替えが行われる度に、前記通電パターンが切り替えられたタイミングから所定時間だけ遅延したタイミングを示す比較開始タイミング信号を生成する遅延回路をさらに備え、
前記電圧比較部は、前記比較開始タイミング信号に基づいて、前記通電パターンが切り替えられたタイミングから所定時間だけ遅延したタイミングにおける前記電圧値に基づいて、前記駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する、請求項1または2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、前記断線判定部による判定結果に基づいて、前記モータの駆動を停止させる制御を行う駆動停止部をさらに有する、請求項1からのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記断線判定部は、前記電圧比較部の比較結果によって断線状態である1相を特定可能であり、
前記駆動停止部は、前記断線判定部により断線状態である1相が特定されたとき、前記断線状態である1相の特定結果に基づいて、前記モータの駆動を停止させる制御を行うか否かを切り替える、請求項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記制御回路部は、前記3相のコイルにそれぞれ対応して設けられ、前記モータの回転位置に応じて信号を出力する3つの位置検出センサを用いて前記駆動制御信号を出力するように構成されており、
前記断線判定部は、前記電圧比較部の比較結果によって断線状態である1相を特定可能であり、
前記制御回路部は、前記断線判定部により断線状態である1相が特定された後で前記モータの起動を開始するとき、前記断線状態である1相とは異なる相に前記モータのロータをロックした後に起動を開始する制御を行う、請求項1からのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項7】
前記モータ駆動制御装置は、前記モータのいずれかの2相に通電可能な補助通電回路をさらに備え、
前記断線判定部は、前記電圧比較部の比較結果によって断線状態である1相を特定可能であり、
前記制御回路部は、前記断線判定部により断線状態である1相が特定された場合、前記補助通電回路を用いて、特定された断線状態である1相を除く所定の2相を通電することにより前記モータを起動する、請求項1からのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項8】
複数のスイッチング素子を有し、モータの3相のコイルに駆動電流を流すモータ駆動部と、
前記複数のスイッチング素子を動作させる駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力することにより、前記3相のコイルの通電パターンを順次切り替える制御回路部と、
前記駆動電流の大きさに対応する電圧値を検出する電流検出回路とを備えるモータ駆動制御装置を用いて前記モータの駆動を制御するモータの制御方法であって、
前記通電パターンの切り替えが行われる度に、前記電圧値に基づいて、前記駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する電圧比較ステップと、
複数の通電パターンについての前記電圧比較ステップの比較結果に基づいて、前記モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する断線判定ステップとを有し、
前記制御回路部は、前記3相のコイルの通電パターンを所定の順序でひととおり切り替える1巡の切替制御を繰り返して行い、
前記断線判定ステップは、前記1巡の切替制御が行われる度に、前記1巡の切替制御が行われる間の前記電圧比較部の比較結果に基づいて、前記モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定し、
前記断線判定ステップは、前記1巡の切替制御が行われる度に、
前記1巡の切替制御が行われる間の前記電圧比較部の比較結果に基づく評価値と、それまでの評価値に基づいて算出された判定値とに基づいて、新たな判定値を算出し、
前記新たな判定値と所定の異常判定閾値とを比較した結果に基づいて、前記異常状態であるか否かを判定する
モータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ駆動制御装置及びモータの制御方法に関し、特に、3相のコイルの通電パターンを順次切り替えるモータ駆動制御装置及びモータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3相モータの各相コイルの断線、短絡等のコイル異常をモータ運転中に監視する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、多相電気モータのコイル異常検出装置において、電気モータを回転駆動する通電中に、どこかの相にパルス出力があるか否かを、電気モータの各相コイルの通電端子のパルス出力を検出する通電検出手段により検出し、通電中コイルの断線又は短絡を判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−8992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1に記載されているような構成では、各相について、電流を検出するための電圧変換回路やフィルタなどの構成を用いる必要がある。そのため、モータ駆動制御装置の構成が複雑になり、モータ駆動制御装置の製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、簡素な回路構成でコイルの断線を検出できるモータ駆動制御装置及びモータの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ駆動制御装置は、複数のスイッチング素子を有し、モータの3相のコイルに駆動電流を流すモータ駆動部と、複数のスイッチング素子を動作させる駆動制御信号をモータ駆動部に出力することにより、3相のコイルの通電パターンを順次切り替える制御回路部と、駆動電流の大きさに対応する電圧値を検出する電流検出回路とを備え、制御回路部は、通電パターンの切り替えが行われる度に、電圧値に基づいて、駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する電圧比較部と、複数の通電パターンについての電圧比較部の比較結果に基づいて、モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する断線判定部とを有する。
【0008】
好ましくは、制御回路部は、3相のコイルの通電パターンを所定の順序でひととおり切り替える1巡の切替制御を繰り返して行い、断線判定部は、1巡の切替制御が行われる度に、1巡の切替制御が行われる間の電圧比較部の比較結果に基づいて、モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する。
【0009】
好ましくは、電圧比較部は、通電パターンの切替えが行われる度に、駆動電流の大きさが所定の電流閾値よりも大きいか否かを示す2値の値を生成するとともに、1巡の切替制御が行われる度に、1巡の切替制御が行われる間に生成した2値の値が通電パターンの切り替え順に対応する所定の順番で各桁に並んでなる比較結果情報を生成し、断線判定部は、比較結果情報が所定の異常値情報に一致するか否かに基づいて、モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する。
【0010】
好ましくは、断線判定部は、1巡の切替制御が行われる度に、1巡の切替制御が行われる間の電圧比較部の比較結果に基づく評価値と、それまでの評価値に基づいて算出された判定値とに基づいて、新たな判定値を算出し、新たな判定値と所定の異常判定閾値とを比較した結果に基づいて、異常状態であるか否かを判定する。
【0011】
好ましくは、制御回路部は、通電パターンの切替えが行われる度に、通電パターンが切り替えられたタイミングから所定時間だけ遅延したタイミングを示す比較開始タイミング信号を生成する遅延回路をさらに備え、電圧比較部は、比較開始タイミング信号に基づいて、通電パターンが切り替えられたタイミングから所定時間だけ遅延したタイミングにおける電圧値に基づいて、駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する。
【0012】
好ましくは、制御回路部は、断線判定部による判定結果に基づいて、モータの駆動を停止させる制御を行う駆動停止部をさらに有する。
【0013】
好ましくは、断線判定部は、電圧比較部の比較結果によって断線状態である1相を特定可能であり、駆動停止部は、断線判定部により断線状態である1相が特定されたとき、断線状態である1相の特定結果に基づいて、モータの駆動を停止させる制御を行うか否かを切り替える。
【0014】
好ましくは、制御回路部は、3相のコイルにそれぞれ対応して設けられ、モータの回転位置に応じて信号を出力する3つの位置検出センサを用いて駆動制御信号を出力するように構成されており、断線判定部は、電圧比較部の比較結果によって断線状態である1相を特定可能であり、制御回路部は、断線判定部により断線状態である1相が特定された後でモータの起動を開始するとき、断線状態である1相とは異なる相にモータのロータをロックした後に起動を開始する制御を行う。
【0015】
好ましくは、モータ駆動制御装置は、モータのいずれかの2相に通電可能な補助通電回路をさらに備え、断線判定部は、電圧比較部の比較結果によって断線状態である1相を特定可能であり、制御回路部は、断線判定部により断線状態である1相が特定された場合、補助通電回路を用いて、特定された断線状態である1相を除く所定の2相を通電することによりモータを起動する。
【0016】
この発明の他の局面に従うと、モータの制御方法は、複数のスイッチング素子を有し、モータの3相のコイルに駆動電流を流すモータ駆動部と、複数のスイッチング素子を動作させる駆動制御信号をモータ駆動部に出力することにより、3相のコイルの通電パターンを順次切り替える制御回路部と、駆動電流の大きさに対応する電圧値を検出する電流検出回路とを備えるモータ駆動制御装置を用いてモータの駆動を制御するモータの制御方法であって、通電パターンの切り替えが行われる度に、電圧値に基づいて、駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する電圧比較ステップと、複数の通電パターンについての電圧比較ステップの比較結果に基づいて、モータのいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する断線判定ステップとを有する。
【発明の効果】
【0017】
これらの発明に従うと、簡素な回路構成でコイルの断線を検出できるモータ駆動制御装置及びモータの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成を示す図である。
図2】制御回路部の構成を示すブロック図である。
図3】異常状態の一例について説明する図である。
図4】コイルが断線する相と電流が流れなくなる通電パターンとの関係を示す表である。
図5】比較結果情報について説明する図である。
図6】1相のコイルが断線した場合の比較結果情報について説明する図である。
図7】制御回路部の動作を示すフローチャートである。
図8】通電切替回数管理処理を示すフローチャートである。
図9】電流検出処理を示すフローチャートである。
図10】異常検出処理の一例を示すフローチャートである。
図11】本実施の形態の一変形例に係るモータ駆動制御装置の回路構成を示す図である。
図12】本実施の形態の一変形例に係る異常検出処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0020】
[実施の形態]
【0021】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成を示す図である。
【0022】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、モータ20に駆動電流を流し、モータ20を駆動させるように構成されている。本実施の形態において、モータ20は、例えば、U相、V相、W相のコイルLu,Lv,Lwを有する3相のブラシレスモータである。
【0023】
モータ駆動制御装置1は、モータ20のロータの回転に対応する信号に基づいて、モータ20の各相のコイルLu,Lv,Lwに駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。
【0024】
本実施の形態において、モータ20には、各相のコイルLu,Lv,Lwに対応して、モータ20の回転位置に応じて信号を出力する3つのホール素子(位置検出センサの一例)25u,25v,25wが配置されている。3つのホール素子25u,25v,25wは、例えば、互いに略等間隔(隣り合うものと120度の間隔で)でモータ20の回転子の回りに配置されている。ホール素子25u,25v,25wは、それぞれ、ロータの磁極を検出し、出力信号Hu,Hv,Hw(以下、ホール信号Hu,Hv,Hwということがある。)を出力する。ホール信号Hu,Hv,Hwは、モータ20のロータの回転位置に対応する信号である。ホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて、ロータの回転位置を推定することができる。
【0025】
モータ駆動制御装置1は、複数のスイッチング素子Q1−Q6を有し、モータ20の3相のコイルLu,Lv,Lwに駆動電流を流すモータ駆動部2と、複数のスイッチング素子Q1−Q6を動作させる駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力することにより、3相のコイルLu,Lv,Lwの通電パターンを順次切り替える制御回路部4と、駆動電流の大きさに対応する電圧値を検出する電流検出回路6とを備えている。なお、図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0026】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、その全部がパッケージ化された集積回路装置(IC)である。なお、モータ駆動制御装置1の一部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0027】
モータ駆動部2は、モータ20の3相のコイルに選択的に通電する。モータ駆動部2は、インバータ回路2aと、プリドライブ回路2bとを有している。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力される出力信号R1から出力信号R6に基づいてモータ20のコイルLu,Lv,Lwを選択的に通電し、モータ20を回転させる。
【0028】
本実施の形態において、インバータ回路2aは、モータ20のコイルLu,Lv,Lwのそれぞれに駆動電流を供給するための6個のスイッチング素子Q1−Q6を備えている。スイッチング素子Q1,Q3,Q5は、電源Vccの正極側に配置されたPチャンネルのMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field Effect Transistor)からなるハイサイドスイッチング素子であり、電源Vccの電源電圧が印加される。スイッチング素子Q2,Q4,Q6は、電源Vccの負極側に配置されたNチャンネルのMOSFETからなるローサイドスイッチング素子である。スイッチング素子Q1,Q2の組み合わせ、スイッチング素子Q3,Q4の組み合わせ、及びスイッチング素子Q5,Q6の組み合わせのそれぞれにおいて、2つのスイッチング素子が直列に接続されている。そして、これらの3組の直列回路が並列に接続されて、ブリッジ回路が構成されている。スイッチング素子Q1,Q2の接続点がU相のコイルLuに接続され、スイッチング素子Q3,Q4の接続点がV相のコイルLvに接続され、スイッチング素子Q5,Q6の接続点がW相のコイルLwに接続されている。
【0029】
プリドライブ回路2bは、制御回路部4による制御に基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。プリドライブ回路2bは、インバータ回路2aの6個のスイッチング素子Q1−Q6のそれぞれのゲート端子に接続される複数の出力端子を備えている。プリドライブ回路2bは、制御回路部4から出力された駆動制御信号Sdに応じて、各出力端子から出力信号R1−R6を出力して、スイッチング素子Q1−Q6のオン、オフ動作を制御する。これらの出力信号R1−R6が出力されることで、それぞれの出力信号R1−R6に対応するスイッチング素子Q1−Q6がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相に電力が供給される。
【0030】
本実施の形態において、制御回路部4には、ホール素子25u,25v,25wから出力されるホール信号Hu,Hv,Hwと回転速度指令信号Scとが入力される。
【0031】
ホール信号Hu,Hv,Hwは、モータ20から制御回路部4に入力される。制御回路部4は、3つのホール素子25u,25v,25wを用いて駆動制御信号Sdを出力する。すなわち、制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ20のロータの実際の回転数に関する実回転数情報を得て、モータ20の駆動を制御する。また、制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwを用いてモータ20のロータの回転位置を検出し、モータ20の駆動を制御する。
【0032】
なお、制御回路部4には、このようなホール信号Hu,Hv,Hwに加えて、モータ20の回転状態に関する他の情報が入力されるように構成されていてもよい。例えば、モータ20の回転子の回転に対応するFG信号として、回転子の側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)が入力されるようにしてもよい。また、モータ20の各相(U相、V相、W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路の検出結果に基づいてモータ20の回転状態が検知されるように構成されていてもよい。エンコーダやレゾルバなどを設け、それによりモータ20の回転速度等の情報が検出されるようにしてもよい。
【0033】
回転速度指令信号Scは、例えば、制御回路部4の外部から入力される。回転速度指令信号Scは、モータ20の回転速度に関する信号である。例えば、回転速度指令信号Scは、モータ20の目標回転速度に対応するPWM(パルス幅変調)信号である。換言すると、回転速度指令信号Scは、モータ20の回転速度の目標値に対応する情報である。なお、回転速度指令信号Scとして、クロック信号が入力されてもよい。
【0034】
制御回路部4は、例えば、マイクロコンピュータやデジタル回路等で構成されている。制御回路部4は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力し、モータ20の回転制御を行う。制御回路部4は、6つのスイッチング素子Q1−Q6を動作させる駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力することにより、3相のコイルLu,Lv,Lwの通電パターンを順次切り替える。すなわち、制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwと回転速度指令信号Scとに基づいて、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路2bに出力する。制御回路部4は、駆動制御信号Sdを出力することでモータ20の回転制御を行い、モータ20を回転速度指令信号Scに対応する回転数で回転させる。
【0035】
モータ20は3相のコイルLu,Lv,Lwを有しているので、6つの通電パターンがある。すなわち、(1)ハイサイドU相及びローサイドV相の組合せの第1通電パターン、(2)ハイサイドU相及びローサイドW相の組合せの第2通電パターン、(3)ハイサイドV相及びローサイドW相の組合せの第3通電パターン、(4)ハイサイドV相及びローサイドU相の組合せの第4通電パターン、(5)ハイサイドW相及びローサイドU相の組合せの第5通電パターン、及び(6)ハイサイドW相及びローサイドV相の組合せの第6通電パターンがある。
【0036】
モータ20を所定の方向に回転させるとき、制御回路部4は、6つの通電パターンの全てを所定の順序でひととおり切り替える1巡の切替制御を繰り返して行う。所定の順序は、例えば、第1通電パターン、第2通電パターン、第3通電パターン、第4通電パターン、第5通電パターン、及び第6通電パターンの順番である。
【0037】
モータ20を上記の所定の方向とは逆の方向に回転させるとき、制御回路部4は、6つの通電パターンの全てを、第1通電パターンから第6通電パターンまでを、所定の順序とは逆の順序で(第6通電パターンから第1通電パターンまで遡る順序で)ひととおり切り替える1巡の切替制御を繰り返して行う。
【0038】
電流検出回路6は、モータ20の駆動電流の大きさに対応する電圧値を検出する。本実施の形態では、電流検出回路6は、インバータ回路2aと接地電位(電源Vccの負極)との間に配置される電流検出抵抗を含んでおり、モータ20のコイル電流に対応する電圧値を検出する。すなわち、モータ20のコイルLu,Lv,Lwの各相に流れたコイル電流は、インバータ回路2aを通り、電流検出抵抗を通って、接地電位へ流れる。電流検出回路6は、電流検出抵抗の両端の電圧から、モータ20のコイル電流の大きさを電圧値として検出することができる。電流検出回路6は、検出結果である検出電圧信号(電圧値の一例)Vdを出力する。検出電圧信号Vdは、モータ20の駆動電流の大きさに対応する。検出電圧信号Vdは、制御回路部4に入力される。
【0039】
[制御回路部4の説明]
【0040】
本実施の形態において、制御回路部4は、モータ20のいずれか1相が断線状態(当該相のコイルなどが断線した状態をいう)であるか否かを判定する異常判定機能を有している。すなわち、制御回路部4は、通電パターンの切り替えが行われる度に、電流検出回路6で検出された電圧値に基づいて、モータ20の駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する電圧比較部として機能する。そして、複数の通電パターンについての駆動電流の大きさと所定の電流閾値との比較結果に基づいて、モータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する断線判定部として機能する。換言すると、制御回路部4は、通電パターンの切り替えが行われる度に、電流検出回路6で検出された電圧値に基づいて、駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する電圧比較ステップと、複数の通電パターンについての電圧比較ステップの比較結果に基づいて、モータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する断線判定ステップとを有するモータの制御方法を実行する。制御回路部4は、モータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かの判定結果に基づいて、モータ20の駆動を停止させる制御を行う駆動停止部として機能する。以上のように、制御回路部4は、3相のコイルLu,Lv,Lwの6つの通電パターンを所定の順序でひととおり切り替える1巡の切替制御を繰り返して行い、断線判定部は、1巡の切替制御が行われる度に、1巡の切替制御が行われる間の電圧比較部の比較結果に基づいて、モータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する。
【0041】
図2は、制御回路部4の構成を示すブロック図である。
【0042】
図2において、制御回路部4の構成、各回路間での信号や情報等の送受については、主に、異常判定機能に関する説明に係るものが示されている。ホール素子25u,25v,25wについては、1つのホール素子25として簡略化されて示されている。
【0043】
図2に示されるように、制御回路部4は、速度制御回路31と、通電切替回路32と、制御信号生成回路(駆動停止部の一例)35と、遅延回路36と、電圧比較回路(電圧比較部の一例)37と、断線判定回路(断線判定部の一例)38とを含む。
【0044】
速度制御回路31には、回転速度指令信号Scが入力される。速度制御回路31は、回転速度指令信号Scに基づいて、モータ20が回転速度指令信号Scに対応する回転数で回転するように回転速度信号S1を出力する。速度制御回路31は、制御回路部4に入力されたホール信号Hu,Hv,Hwに基づいて得られるモータ20のロータの実際の回転数に関する実回転数情報(図示せず)に基づいて、回転速度信号S1を出力する。
【0045】
通電切替回路32には、ホール信号Hu,Hv,Hwが入力される。通電切替回路32は、モータ20の回転位置に応じて通電パターンを切り替えるための通電切替指示信号S2を出力する。すなわち、通電切替回路32は、通電切替指示信号S2を出力することで通電パターンの切替制御を行う。通電切替指示信号S2は、例えば、ホール信号Hu,Hv,Hwの出力がハイとローとに互いに切り替わるタイミングが判別可能な信号であるが、これに限られるものではない。通電切替指示信号S2は、制御信号生成回路35と遅延回路36とに入力される。
【0046】
遅延回路36には、通電切替指示信号S2が入力される。遅延回路36は、例えば、コイル素子等を用いて構成することができる。遅延回路36は、通電パターンの切替えが行われる度に、通電パターンが切り替えられたタイミングから所定時間だけ遅延したタイミングを示す比較開始タイミング信号S3を生成する。具体的には、遅延回路36は、通電パターンの切替えが行われて通電切替指示信号S2が入力されたとき、その通電切替指示信号S2の入力タイミングよりも所定時間だけ遅延したタイミングを示す比較開始タイミング信号S3を生成する。比較開始タイミング信号S3は、電圧比較回路37に入力される。なお、所定時間は、制御回路部4から出力される駆動制御信号Sdの出力タイミングに対するモータ駆動部2のインバータ回路2aの動作の遅れを考慮して設定される。
【0047】
電圧比較回路37には、電流検出回路6で検出された電圧値が入力される。電圧比較回路37は、通電パターンの切り替えが行われる度に、電流検出回路6で検出された電圧値に基づいて、駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する。電圧比較回路37は、比較結果に基づいて生成される比較結果情報S4を出力する。
【0048】
具体的には、電圧比較回路37には、電流検出回路6の電流検出抵抗によって検出された検出電圧信号Vdが入力される。また、電圧比較回路37には、遅延回路36にて生成された比較開始タイミング信号S3が入力される。電圧比較回路37は、例えば、コンパレータ等を含み、モータ20の駆動電流の大きさに対応する検出電圧信号Vdに基づいて、駆動電流の大きさを所定の電流閾値と比較して、駆動電流の大きさが所定の閾値を下回る非通電状態であるか否かを判定できる。例えば、電圧比較回路37は、検出電圧信号Vdと、所定の電流閾値に対応する電圧とを比較することにより、非通電状態であるか否かを判定できる。判定は、比較開始タイミング信号S3に基づいて行われる。すなわち、電圧比較回路37は、比較開始タイミング信号S3に基づいて、通電パターンが切り替えられたタイミングから所定時間だけ遅延したタイミングにおける検出電圧信号Vdに基づいて、そのタイミングにおける駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較する。
【0049】
本実施の形態において、電圧比較回路37は、後述のように、通電切替回数管理処理と、電流検出処理とを行う。電圧比較回路37は、比較開始タイミング信号S3に基づいて、すなわち通電切替指示信号S2に基づいて、比較結果情報S4を生成する。電圧比較回路37は、通電パターンの切替えが行われる度に、駆動電流の大きさが所定の電流閾値よりも大きいか否かを示す2値の値を生成するとともに、1巡の切替制御が行われる度に、比較結果情報S4を生成する。比較結果情報S4は、後述するように、1巡の切替制御が行われる間に生成した2値の値が通電パターンの切り替え順に対応する所定の順番で各桁に並んでなる値である。換言すると、電圧比較回路37は、1巡の切替制御が行われる度に、1巡の切替制御が行われる間の検出電圧信号Vdに基づく駆動電流の大きさと所定の電流閾値との比較結果を、比較結果情報S4として生成する。比較結果情報S4には、複数の通電パターン分の、駆動電流の大きさと所定の電流閾値との比較結果が含まれるといえる。
【0050】
なお、駆動電流の大きさと比較される所定の電流閾値は、モータ20に電流がほとんど流れていない状態における駆動電流の大きさよりもわずかに大きい値に設定されていればよい。すなわち、モータ20にモータ20を回転させるための駆動電流が流れている場合には、通常は、駆動電流の大きさが所定の電流閾値を上回るようになっている。
【0051】
断線判定回路38は、1巡の切替制御が行われる度に、1巡の切替制御が行われる間の電圧比較回路37の比較結果に基づいて、モータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する。断線判定回路38には、電圧比較回路37から出力された比較結果情報S4が入力される。断線判定回路38は、この比較結果情報S4に基づいて、後述のようにして異常検出処理を行い、モータ20のいずれか1相が断線状態となっている異常状態であるか否かに対応する異常判定信号S5を出力する。
【0052】
制御信号生成回路35は、速度制御回路31から出力された回転速度信号S1と、通電切替回路32から出力された通電切替指示信号S2と、断線判定回路38から出力された異常判定信号S5とに基づいて、駆動制御信号Sdを出力する。すなわち、断線判定回路38からモータ20のいずれか1相が断線状態となっている異常状態であることに対応する異常判定信号S5が出力されていないとき、制御信号生成回路35は、速度制御回路31から出力された回転速度信号S1に応じて駆動制御信号Sdを生成し、モータ駆動部2に出力する。このとき、制御信号生成回路35は、通電切替回路32から出力された通電切替指示信号S2に応じて駆動信号の通電パターンを順次切り替えるための駆動制御信号Sdを生成する。
【0053】
本実施の形態において、駆動制御信号Sdは、PWM(パルス幅変調)信号である。駆動制御信号Sdのデューティ比を調整することにより、モータ20のトルクを調整することができる。
【0054】
本実施の形態において、制御信号生成回路35は、断線判定回路38による判定結果に基づいて、モータ20の駆動を停止させる制御を行う駆動停止部として機能する。すなわち、断線判定回路38から異常状態であることすなわちモータ20のいずれか1相が断線状態となっていることに対応する異常判定信号S5が出力されると、制御信号生成回路35は、異常判定信号S5に応じて駆動制御信号Sdを出力し、異常対応動作を行う。
【0055】
例えば、制御信号生成回路35は、駆動停止部として機能し、異常対応動作として、モータ20の駆動を停止させる。制御信号生成回路35は、例えば、駆動制御信号Sdを出力することで全てのスイッチング素子Q1−Q6をオフとして、モータ20の駆動を停止させることができる。
【0056】
以下に、異常判定機能について説明する。
【0057】
図3は、異常状態の一例について説明する図である。
【0058】
図3においては、上段から、ホール信号の波形、U相の巻線電圧の波形、V相の巻線電圧の波形、W相の巻線電圧の波形(モータ20側)、U相の巻線電圧の波形(モータ駆動部2側)、及び巻線電流の波形が示されている。巻線電流の波形は、駆動電流の波形すなわち電流検出回路6で検出される検出電圧信号Vdの波形に対応するものである。
【0059】
図3に示されるように、時刻t1までは、モータ20のすべてのコイルLu,Lv,Lwが正常であって、モータ20が正常に駆動されている。すなわち、モータ20の回転に伴って、複数の通電パターンが切り替えられながら、各相のコイルLu,Lv,Lwに電圧が印加される。このとき、巻線電流は、各通電パターンにおいて、略同様に流れている。
【0060】
時刻t1に、W相のコイルLwが断線すると、それ以降、断線したW相に電流が流れる通電パターンの間に、電流が流れなくなる。すなわち、W相がハイサイドとなる2つの通電パターン(第5通電パターン及び第6通電パターン)と、W相がローサイドとなる2つの通電パターン(第2通電パターン及び第3通電パターン)とにおいて、巻線電流が略ゼロになる。
【0061】
図4は、コイルが断線する相と電流が流れなくなる通電パターンとの関係を示す表である。
【0062】
図4において、U相のコイルLuが断線した場合(上段)、V相のコイルLvが断線した場合(中段)、W相のコイルLwが断線した場合(下段)のそれぞれについて、電流が正常に流れている通電パターンを太枠で囲むことにより示している。したがって、それ以外の通電パターンは、電流が流れなくなる通電パターンである。また、表中のばつ(×)印は、その相のコイルが断線していることを示す。
【0063】
図4に示されているように、U相のコイルLuが断線した場合には、U相のコイルLuに電流が流されない第3通電パターンと第6通電パターンとの2つの通電パターンにおいてモータ20の駆動電流が流れるが、それ以外の通電パターンにおいては駆動電流が流れない。
【0064】
V相のコイルLvが断線した場合には、V相のコイルLvに電流が流されない第2通電パターンと第5通電パターンとの2つの通電パターンにおいてモータ20の駆動電流が流れるが、それ以外の通電パターンにおいては駆動電流が流れない。
【0065】
W相のコイルLwが断線した場合には、W相のコイルLwに電流が流されない第1通電パターンと第4通電パターンとの2つの通電パターンにおいてモータ20の駆動電流が流れるが、それ以外の通電パターンにおいては駆動電流が流れない。
【0066】
図5は、比較結果情報S4について説明する図である。図6は、U相のコイルLuが断線した場合の比較結果情報S4について説明する図である。
【0067】
本実施の形態において、比較結果情報S4は、最初の第1通電パターンから最後の第6通電パターンまでの1巡の切替制御が行われる間に、各通電パターンについて生成された「0」又は「1」との2値の値(以下、比較判定値ということがある)を、通電パターンの切り替え順に対応する所定の順番で各桁に並べた値である。すなわち、比較結果情報S4は、2進数で6桁の値である。
【0068】
比較判定値は、検出電圧信号Vdに基づく駆動電流の大きさが所定の電流閾値よりも大きい場合、すなわちモータ20の駆動電流を検出した場合、「1」となる。他方、検出電圧信号Vdに基づく駆動電流の大きさが所定の電流閾値を下回った場合、すなわちモータ20の駆動電流が検出されない場合、「0」となる。
【0069】
図5に示されるように、第1通電パターンについて生成された比較判定値は、右から6桁目の位(桁)に充てられる。第2通電パターンについて生成された比較判定値は、右から5桁目の位(桁)に充てられる。第3通電パターンについて生成された比較判定値は、右から4桁目の位(桁)に充てられる。第4通電パターンについて生成された比較判定値は、右から3桁目の位(桁)に充てられる。第5通電パターンについて生成された比較判定値は、右から2桁目の位(桁)に充てられる。第6通電パターンについて生成された比較判定値は、右から1桁目の位(桁)に充てられる。換言すると、電圧比較回路37は、1巡の切替制御の最初の第1通電パターンから、通電パターンが切り替えられる度に、各通電パターンについて比較判定値を生成する。そして、その通電パターンに対応する桁の値を比較結果情報S4に加算する演算を行う。1巡の切替制御の最後の第6通電パターンについて比較判定値に基づいて比較結果情報S4の演算を行うと、比較結果情報S4の生成が完了する。
【0070】
図6において、U相のコイルLuが断線している場合の駆動電流の波形の一例及び通電相が示されている。図6に示されるように、U相のコイルLuが断線している場合、第3通電パターンと第6通電パターンとにおいて駆動電流が検出される。すなわち、比較結果情報S4は、2進数で表すと「001001」となる。
【0071】
図5に示されるように、比較結果情報S4は、16進数で表すことができる。U相のコイルLuが断線している場合、比較結果情報S4は、16進数で表すと「0x09」となる。
【0072】
同様に、V相のコイルLvが断線している場合、第2通電パターンと第5通電パターンとにおいて駆動電流が検出される。すなわち、比較結果情報S4は、2進数で表すと「010010」となり、16進数で表すと「0x12」となる。
【0073】
W相のコイルLwが断線している場合、第3通電パターンと第6通電パターンとにおいて駆動電流が検出される。すなわち、比較結果情報S4は、2進数で表すと「100100」となり、16進数で表すと「0x24」となる。
【0074】
なお、断線がない場合、いずれの通電パターンでも駆動電流が検出されるため、比較結果情報S4のそれぞれの位には、「1」が並ぶ。すなわち、比較結果情報S4は、2進数で表すと「111111」となり、16進数で表すと「0x3f」となる。
【0075】
図7は、制御回路部4の動作を示すフローチャートである。
【0076】
モータ駆動制御装置1が動作しているとき、制御回路部4は、以下の動作を行う。
【0077】
図7に示されるように、ステップS11において、制御回路部4は、ホール信号Hu,Hv,Hwのハイとローとが切り替わったか否かを判断する。ホール信号Hu,Hv,Hwのハイとローとが切り替わったと判断されると、ステップS12において、制御回路部4は、通電パターンを切り替える。これにより、通電パターンが次の通電パターンに切り替えられる。すなわち、制御信号生成回路35は、通電切替回路32から出力される通電切替指示信号S2に基づいて、ホール信号Hu,Hv,Hwのハイとローとが切り替わったタイミングに応じて通電パターンを切り替えるための駆動制御信号Sdを出力する。
【0078】
通電パターンの切り替えが行われると、その度に、少なくとも以下のステップS13からステップS15の処理が行われる。
【0079】
ステップS13において、電圧比較回路37は、通電切替回数管理処理を行う。
【0080】
ステップS14において、電圧比較回路37は、電流検出処理を行う。
【0081】
ステップS15において、電圧比較回路37は、通電切替回数管理で管理される通電回数値C1の値に基づいて、6回通電済みであるか否かを判断する。
【0082】
後述のように、通電回数値C1は1つの通電パターンでの通電が行われる度に加算されるカウンタである。通電回数値C1は、1巡の切替制御すなわち6回の通電パターンの切り替えが行われる度にゼロにリセットされる。電圧比較回路37は、通電回数値C1が0から5のうち所定の値になったとき(例えば、C1=5となったとき)、6回通電済みである(YES)と判断する。通電回数値C1が所定の値以外である場合には、ステップS11の処理に戻る。ここで、通電回数値C1のカウント初期値と所定の値とは、1巡の切替制御の最後の第6通電パターンが到来したときにステップS15でYESと判断されるように設定される。
【0083】
断線判定回路38は、ステップS15で6回通電済みであると判断すると(YES)、ステップS16及びステップS17の処理を行う。すなわち、断線判定回路38は、1巡の切替制御が行われる度に、異常状態であるか否かすなわちモータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する処理を行う。
【0084】
すなわち、ステップS16において、断線判定回路38は、異常検出処理を行う。
【0085】
ステップS17において、断線判定回路38は、異常状態であるか否かを判断する。異常状態であるか否かは、後述のようにして断線判定回路38で異常フラグが立てられたか否か(異常フラグが1であるか否か)によって判断される。
【0086】
ステップS17において異常状態でないと判断された場合には(NO)、ステップS11の処理に戻る。すなわち、断線判定回路38から異常状態であることに対応する異常判定信号S5が出力されなかったときには、引き続きモータ20が駆動される。
【0087】
ステップS17において異常状態であると判断された場合には(YES)、ステップS18に進む。ステップS18では、制御回路部4は、異常対応動作を行う。すなわち、断線判定回路38から異常状態であることに対応する異常判定信号S5が出力されると、制御信号生成回路35は、上述のように異常対応動作を行う。これにより、例えばモータ20の駆動が停止される。
【0088】
なお、異常対応動作によってモータ20の駆動が停止された後で、制御回路部4は、モータ20を再起動させる動作を行うようにしてもよい。
【0089】
図8は、通電切替回数管理処理を示すフローチャートである。
【0090】
図8に示されるように、ステップS31において、電圧比較回路37は、通電回数値C1に1を加算する。
【0091】
ステップS32において、電圧比較回路37は、通電回数値C1が5より大きいか否かを判断する。通電回数値C1が5より大きい場合には(YES)、ステップS33に進む。通電回数値C1が5より大きくない場合には(NO)、通電切替回数管理処理を終了する。
【0092】
ステップS33において、電圧比較回路37は、通電回数値C1をゼロにリセットし、通電切替回数管理処理が終了する。
【0093】
すなわち、本実施の形態において、通電回数値C1は、0,1,2,3,4,5のいずれかの値を取る。通電回数値C1は、通電パターンの切替制御が1回行われる度に1ずつインクリメントされ、6回の切替制御が行われる度に同一の値となる。1巡の切替制御が行われる度に、通電回数値C1のカウントが繰り返される。
【0094】
図9は、電流検出処理を示すフローチャートである。
【0095】
電流検出処理では、モータ20の駆動電流の大きさが所定の電流閾値を超えているか否かすなわちモータの20の駆動電流が流れているか否かの検出結果に従って、比較判定値を生成する。
【0096】
図9に示されるように、ステップS41において、電圧比較回路37は、比較開始タイミング信号S3が入力されるまで待機する。換言すると、電圧比較回路37は、通電パターンの切替えが行われてから、所定時間待機する。比較開始タイミング信号S3が入力されると、次の処理に進む。
【0097】
ステップS42において、電圧比較回路37は、所定の電流の大きさ以上の駆動電流が流れているか否かを検出する。すなわち、電圧比較回路37は、検出電圧信号Vdに基づいて、駆動電流の大きさが所定の電流閾値を超えているか否かを判断する。電流閾値を超えている場合には、駆動電流が流れている状態であることを検出する。駆動電流が流れている状態ではない場合には(NO)、ステップS43に進み、駆動電流が流れている状態である場合には(YES)、ステップS44に進む。
【0098】
ステップS43において、電圧比較回路37は、比較判定値を「0」に設定する。すなわち、比較結果情報S4の各桁のうち、通電パターンに対応する桁の値を「0」に設定する。
【0099】
他方、ステップS44において、電圧比較回路37は、比較判定値を「1」に設定する。すなわち、比較結果情報S4の各桁のうち、通電パターンに対応する桁の値を「1」に設定する。
【0100】
ステップS43又はステップS44の処理が行われると、電流検出処理が終了する。図7に示されるように、電圧比較回路37は、通電回数値C1の値に基づいて、6回通電が行われたか否か、すなわち1巡の切替制御が行われたか否かを判断できる(ステップS15)。1巡の切替制御が行われる度に(YES)、ステップS16の異常検出処理が行われる。
【0101】
図10は、異常検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0102】
異常検出処理では、1巡の切替制御が行われる間の各通電パターンの駆動電流の検出結果すなわち比較結果情報S4に基づいて、モータ20のいずれか1相が断線状態である異常状態であるか否かが判定される。断線判定回路38は、比較結果情報S4が所定の異常値情報に一致するか否かに基づいて、モータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する。
【0103】
本実施の形態では、比較結果情報S4に基づいて、1巡の切替制御が行われる間(6つの通電パターンがひととおり切り替えられる間)において、全ての通電パターンについて駆動電流が検出された場合以外の場合に、異常状態であると判定される。すなわち、断線判定回路38は、比較結果情報S4が16進数で「0x3f」以外の値(所定の異常値情報の一例)に一致するか否かに基づいて、モータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かを判定する。なお、異常状態であると判定する比較結果情報S4の値に関する条件はこれに限られるものではなく、例えば、比較結果情報S4が、「0x09」、「0x12」、「0x24」のいずれか(所定の異常値情報の一例)の場合にのみ異常状態であると判定されるようにしてもよい。
【0104】
図10に示されるように、ステップS51において、断線判定回路38は、比較結果情報S4が異常値であるか否か、すなわち比較結果情報S4が16進数で「0x3f」以外の値であるか否かを判定する。異常値である場合(YES)、ステップS53に進み、異常値ではない場合(NO)、異常検出処理を終了する。
【0105】
ステップS53において、断線判定回路38は、異常フラグを「1」に設定する。その後、異常検出処理を終了する。
【0106】
このように異常フラグが1にセットされて異常検出処理が終了すると、断線判定回路38は、図7に示されるように、異常状態であると判定する(ステップS17においてYES)。これにより、異常対応動作が行われる(ステップS18)。
【0107】
以上説明したように、本実施の形態においては、複数の通電パターンについての電圧比較回路37の比較結果に基づいて、モータ20のいずれか1相が断線状態であるか否かが判定される。モータ20の駆動電流に対応する検出電圧信号Vdを用いてコイルの断線状態を検出することができるので、簡素な回路構成で、精度良く、いずれか1相のコイルが断線していることを判定することができる。所定の電流閾値を適切に設定することにより、迅速かつ的確に特定相で断線が発生したことを検出できる。
【0108】
また、各通電パターンについて電圧比較回路37が検出電圧信号Vdに基づいて、駆動電流の大きさと所定の電流閾値との比較を行うタイミングは、通電パターンの切替タイミングよりも所定時間遅延したタイミングである。一般的に、制御回路部4から出力される駆動制御信号Sdの出力タイミングに対して、モータ駆動部2のインバータ回路2aが有する複数のスイッチング素子Q1−Q6のオフタイミングは遅れる。そこで、その遅れを考慮して、通電パターンが切り替えられたタイミングから所定時間だけ遅延したタイミングにおいて駆動電流の大きさと所定の電流閾値とを比較するようにしているため、より適切なタイミングでの比較を行うことができる。
【0109】
例えば、装置内を換気する用途に用いられる複数台のファンモータのうち1台としてモータ20を用いる場合において、1つのモータ20の故障が発生すると、装置内外の圧力差によってそのモータ20が逆回転し、換気能力が落ちるという不具合が発生することがある。本実施の形態においては、モータ20で1相のコイルに断線が発生したことを確実に検知することができるので、可能な場合はモータ20を断線していないコイルを用いて駆動したり、上記のような不具合に対して速やかに対策を行ったりすることができる。
【0110】
[変形例の説明]
【0111】
なお、比較結果情報S4は、1巡の切替制御が行われる間の各通電パターンにおける駆動電流の流れの有無を示す情報である。そのため、断線判定回路38は、電圧比較回路37の比較結果すなわち比較結果情報S4によって、断線状態である1相を特定可能に構成されていてもよい。この場合、断線判定回路38から異常状態であることと、断線状態であると判定された相を示す異常判定信号S5を出力し、制御信号生成回路35は、断線状態であると判定された相に応じて、異常対応動作を行うようにしてもよい。
【0112】
例えば、制御回路部4は、断線判定回路38により断線状態である1相が特定された後でモータ20の起動を開始する場合において、断線状態である1相とは異なる相にモータ20のロータをロックし、その後に起動を開始する制御を行うようにすることができる。これにより、断線していない相を用いてモータ20のロータロック動作を確実に行うことができ、モータ20を確実に再起動させることができる。
【0113】
また、例えば、上述の実施の形態とは異なり、モータ駆動制御装置1がワンセンサ駆動を行う(1つの位置検出センサのみを備え、その位置検出センサを用いて制御回路部4が駆動制御信号Sdを出力する)場合を想定する。この場合において、唯一の位置検出センサが設けられている相との関係で、特定の相のコイルが断線すると、モータ20を再起動することができなくなる。例えば、位置検出センサとしてW相に対応するホール素子を設けた場合、V相が断線しても再起動を行うことができるが、W相又はU相が断線した場合は、再起動を行うことができない場合がある(逆転する場合がある)。このようなワンセンサ駆動を行うモータ駆動制御装置1においては、駆動停止部として機能する制御信号生成回路35が、断線判定回路38により断線状態である1相が特定されたとき、断線状態である1相の特定結果に基づいて、モータ20の駆動を停止させる制御を行うか否かを切り替えるようにしてもよい。すなわち、1相のコイルが断線した結果、モータ20を再起動できなくなっているときには、モータ20の駆動を停止させず、その他の場合には、モータ20の駆動を停止させるようにしてもよい。これにより、できるだけ、モータ20を回転可能な状態に維持することができる。
【0114】
また、例えば以下に示す変形例のように、モータ駆動制御装置が、モータ20のいずれかの2相に通電可能な補助通電回路を有している場合を想定する。
【0115】
図11は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成を示す図である。
【0116】
モータ駆動制御装置1aは、モータ駆動制御装置1の回路構成に加えて、補助通電回路40を備えている。この場合、制御回路部4は、断線判定回路38により断線状態である1相が特定されたとき、補助通電回路40を用いて、特定された断線状態である1相(本例では、U相)を除く所定の2相(本例では、V相、W相)を通電することにより、モータ20を起動するように制御を行うようにしてもよい。これにより、例えば上述のようにモータ駆動制御装置1がワンセンサ駆動を行う場合において、1相のコイルが断線した結果、モータ駆動部2が単独ではモータ20を起動することができなくなっても、補助通電回路40によりモータ20を起動させることができる。
【0117】
なお、さらにまた、例えば以下に示す変形例のように、1巡の切替制御が行われる間において、断線しているコイルの相に対応する通電パターンについてのみ駆動電流が検出されることが継続して発生した場合に、異常状態であると判定されるようにしてもよい。
【0118】
図12は、本実施の形態の一変形例に係る異常検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0119】
本変形例においては、断線判定回路38は、1巡の切替制御が行われる度に、1巡の切替制御が行われる間の電圧比較回路37の比較結果に基づく評価値と、それまでの評価値に基づいて算出された判定値とに基づいて、新たな判定値を算出し、新たな判定値と所定の異常判定閾値とを比較した結果に基づいて、モータ20の駆動が異常状態であるか否かを判定する。すなわち、本変形例においては、1巡の切替制御が行われる度に、比較結果情報S4に基づく評価値と、それまでの評価値に基づいて算出された判定値(以下、異常カウントG1,G2,G3ということがある)とに基づいて、新たな判定値(新たな異常カウントG1,G2,G3)が算出される。そして、新たな異常カウントG1,G2,G3と、所定の異常判別閾値とを比較した結果に基づいて、異常状態であるか否かが判定される。本実施の形態においては、異常カウントG1,G2,G3が所定の異常判別閾値を超えた場合に、異常状態であると判定される。
【0120】
図12に示されるように、ステップS61において、断線判定回路38は、比較結果情報S4がU相断線を示す異常値であるか否か、すなわち比較結果情報S4が16進数で「0x09」(所定の異常値情報の一例)であるか否かを判定する。
【0121】
比較結果情報S4がU相断線を示す異常値であると判断されなかった場合には(NO)、ステップS62に進む。ステップS62において、断線判定回路38は、U相に対応する異常カウントG1の値から、1(評価値の一例)を減算する。
【0122】
他方、比較結果情報S4がU相断線を示す異常値であると判断された場合には(YES)、ステップS63に進む。ステップS63において、断線判定回路38は、異常カウントG1の値に、3(評価値の一例)を加算する。すなわち、断線判定回路38は、U相のコイルLuが断線している場合に対応する比較結果情報S4が入力された場合には、異常カウントG1の値に3を加算する。
【0123】
次に、ステップS64において、断線判定回路38は、比較結果情報S4がV相断線を示す異常値であるか否か、すなわち比較結果情報S4が16進数で「0x12」(所定の異常値情報の一例)であるか否かを判定する。
【0124】
比較結果情報S4がV相断線を示す異常値であると判断されなかった場合には(NO)、ステップS65に進む。ステップS65において、断線判定回路38は、V相に対応する異常カウントG2の値から、1(評価値の一例)を減算する。
【0125】
他方、比較結果情報S4がV相断線を示す異常値であると判断された場合には(YES)、ステップS66に進む。ステップS66において、断線判定回路38は、異常カウントG2の値に、3(評価値の一例)を加算する。すなわち、断線判定回路38は、V相のコイルLvが断線している場合に対応する比較結果情報S4が入力された場合には、異常カウントG2の値に3を加算する。
【0126】
次に、ステップS67において、断線判定回路38は、比較結果情報S4がW相断線を示す異常値であるか否か、すなわち比較結果情報S4が16進数で「0x24」(所定の異常値情報の一例)であるか否かを判定する。
【0127】
比較結果情報S4がW相断線を示す異常値であると判断されなかった場合には(NO)、ステップS68に進む。ステップS68において、断線判定回路38は、W相に対応する異常カウントG3の値から、1(評価値の一例)を減算する。
【0128】
他方、比較結果情報S4がW相断線を示す異常値であると判断された場合には(YES)、ステップS69に進む。ステップS69において、断線判定回路38は、異常カウントG3の値に、3(評価値の一例)を加算する。すなわち、断線判定回路38は、W相のコイルLwが断線している場合に対応する比較結果情報S4が入力された場合には、異常カウントG3の値に3を加算する。
【0129】
本実施の形態において、一部の通電パターンについて過電流状態であると判断された場合に異常カウントG1,G2,G3に加算される評価値「3」は、そうでない場合に異常カウントG1,G2,G3から減算される評価値「1」よりも大きく重み付けされている。
【0130】
ステップS71において、断線判定回路38は、特定の1相のコイルの断線状態に対応する比較結果情報S4が入力されることが一定期間連続して発生したか否かを判断する。すなわち、断線判定回路38は、U相に対応する異常カウントG1の値が所定の異常判別閾値(例えば、100)より大きいか否かを判断する。また、断線判定回路38は、V相に対応する異常カウントG2の値が所定の異常判別閾値(例えば、100)より大きいか否かを判断する。また、断線判定回路38は、W相に対応する異常カウントG3の値が所定の異常判別閾値(例えば、100)より大きいか否かを判断する。
【0131】
異常カウントG1,G2,G3のいずれかが所定の異常判別閾値よりも大きいと判断された場合には(YES)、ステップS72に進む。
【0132】
ステップS72において、断線判定回路38は、異常フラグを1にセットする(異常フラグを立てる)。そして、ステップS73において、断線判定回路38は、異常カウントG1,G2,G3をゼロにリセットし、異常検出処理が終了する。このように異常フラグが1にセットされて異常検出処理が終了すると、断線判定回路38は、図7に示されるように、異常状態であると判定する(ステップS17においてYES)。これにより、異常対応動作が行われる(ステップS18)。
【0133】
他方、ステップS71において、異常カウントG1,G2,G3のいずれも所定の異常判別閾値よりも大きいと判断されなかった場合には(NO)、異常検出処理を終了する。そのため、断線判定回路38は、異常状態であるとの判定を行わない。
【0134】
なお、この場合、次の1巡の切替制御が行われたときには、このときの異常カウントG1,G2,G3に対して、比較結果情報S4すなわち電圧比較回路37の比較結果に応じて、所定値の加減算(3の加算又は1の減算)が行われる。
【0135】
このように、本変形例においても、上述の実施の形態と同様に、簡素な構成で的確にコイルの断線を検知することができる。また、本変形例においては、1巡の切替制御の間の比較結果に基づく1単位の判断を複数回行った結果に応じて異常状態であるか否かの判定を行うので、誤検知を確実に防止することができる。
【0136】
なお、図12に示される変形例の場合においても、異常カウントG1,G2,G3のうちいずれが所定の異常判別閾値より大きくなったかに基づいて、断線が発生した相を特定可能である。
【0137】
[その他]
【0138】
モータ駆動制御装置は、上述の実施の形態やその変形例に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0139】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、ブラシレスモータに限られず、他の種類のモータであってもよい。
【0140】
断線状態に関する判定を行うのに考慮する複数の通電パターンの数は、6つに限られない。例えば、上述の実施の形態において、断線判定部は、6つの通電パターンを切り替える1巡の切替制御が行われる度に、1巡の切替制御が行われる間のうち第1通電パターン、第2通電パターン、及び第3通電パターンの3つの通電パターンについての電圧比較結果に基づいて、異常状態であるか否かの判定が行われるようにしてもよい。
【0141】
モータの駆動電流と比較するための所定の電流閾値は、任意に設定することができる。
【0142】
制御回路部に入力される回転速度指令信号は、モータ駆動制御装置の内部で生成されたものであってもよい。
【0143】
ロータ位置検出方法、回転数検出方法は特に問わない。ホール素子とは異なる検出器を用いて、モータの位置検出信号が得られるようにしてもよい。例えば、ホールIC等を用いてもよい。また、例えば、ホール素子の数は、3個に限られない。1つのホール素子を用いて、いわゆるワンセンサ方式で駆動が行われてもよい。また、モータ駆動制御装置は、位置検出センサを用いずにモータを駆動する、いわゆるセンサレス駆動を行うものであってもよい。
【0144】
上述のフローチャートなどは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではなく、例えば、各ステップの順番が変更されたり各ステップ間に他の処理が挿入されたりしてもよいし、処理を並列化してもよい。
【0145】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウエア回路を用いて行われるようにしてもよい。例えば、制御部は、マイコンに限定されない。制御部の内部の構成は、少なくとも一部がソフトウエアで処理されるようにしてもよい。
【0146】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0147】
1,1a モータ駆動制御装置、2 モータ駆動部、2a インバータ回路、2b プリドライブ回路、4 制御回路部、6 電流検出回路、20 モータ、25(25u,25v,25w) ホール素子(位置検出センサの一例)、31 速度制御回路、32 通電切替回路、35 制御信号生成回路(駆動停止部の一例)、36 遅延回路、37 電圧比較回路(電圧比較部の一例)、38 断線判定回路(断線判定部の一例)、40 補助通電回路、Hu,Hv,Hw ホール信号、Lu,Lv,Lw コイル、Q1−Q6 スイッチング素子、Sc 回転速度指令信号、Sd 駆動制御信号、S1 回転速度信号、S2 通電切替指示信号、S3 比較開始タイミング信号、S4 比較結果情報、S5 異常判定信号、Vcc 電源、Vd 検出電圧信号(電圧値の一例)
図1
図2
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図4
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