(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明によれば、永久磁石ユニットにおける絶縁層を、内部の渦電流を低減させるための最適な位置に配置することができる。少なくとも1つの絶縁層と該少なくとも1つの絶縁層を介して互いに隣接して配置された複数の永久磁石片とを含む永久磁石ユニットにおいて、少なくとも1つの絶縁層は、複数の永久磁石片が少なくとも1つの絶縁層を介することなく一体に形成された永久磁石を想定して定められた位置に配置され、より具体的には、そのように想定された永久磁石の磁界の変化に伴って該永久磁石の内部に流れる渦電流の大きさに基づいて定められた位置に配置されている。
【0024】
例えば、第1の実施形態として回転機のロータ内に組み込んで用いられる直方体形状の永久磁石を考えると、N−1個(Nは1以上の整数)の絶縁層とN個の永久磁石片とを含む永久磁石において、次のN番目の絶縁層を配置する位置は、該永久磁石の磁界の変化に伴って永久磁石の内部を流れる渦電流の大きさに基づいて定められた位置とすることができる。こうして定められた位置にN番目の絶縁層を配置することによって、N個の絶縁層と、該N個の絶縁層の各々によって互いに絶縁されたN+1個の永久磁石片とを含む、直方体形状の永久磁石ユニットが得られる。
【0025】
一実施形態において、回転機のロータ内に組み込んで用いられ、回転機の磁界を横切って移動する方向に延びる長さ方向(x方向)寸法と、長さ方向に垂直かつ回転機の軸方向に並行な高さ方向(z方向)寸法と、長さ方向及び高さ方向に垂直な厚さ方向(y方向)寸法とを有する直方体形状の永久磁石に、N番目の絶縁層を、例えば長さ方向に垂直な断面に配置する場合には、長さ方向位置xにおける断面について、その永久磁石の磁界の変化に伴って内部に流れる該断面に垂直な長さ方向の渦電流の大きさJe(x)を計算し、Je(x)が最大値の95%の値から最大値までの範囲となる位置にN番目の絶縁層が配置される。すなわち、Je(x)が最大値となる長さ方向の位置を中心として、その中心位置の長さ方向一方側における、Je(x)の最大値の95%の値に対応する位置と、中心位置から長さ方向他方側における、Je(x)の最大値の95%の値に対応する位置との間のいずれかの位置に、N番目の絶縁層を配置することができる。なお、この実施形態における永久磁石は、磁石粒子の磁化容易軸が厚さ方向(Z方向)に配向されており、したがって永久磁石の磁化方向Cは厚さ方向である。
【0026】
図1(a)は、Nが1のときの永久磁石ユニットであり、2つの永久磁石片10a、10bが1つの絶縁層12を介して隣接するように配置された直方体形状の永久磁石ユニット1を示す。永久磁石ユニット1は、
図2に示されるIPM(磁石埋め込み型)モータ5のスロット54cに挿入することができる。永久磁石ユニット1がIPMモータ5に組み込まれたときの永久磁石ユニット1の移動方向が、
図1に矢印Aで示されている。永久磁石ユニット1は、IPMモータ5に組み込まれたときに永久磁石ユニット1が移動する方向Aに延びる長さ方向(X方向)寸法Lと、永久磁石ユニット1が組み込まれたときにIPMモータの回転軸54bに並行となる高さ方向(Y方向)寸法Hと、長さ方向及び高さ方向に垂直な厚さ方向(Z方向)寸法tとを有する。
【0027】
図1(a)に示される永久磁石ユニット1の絶縁層12は、永久磁石ユニット1の移動方向前方部分に配置されている。絶縁層12は、該絶縁層12を介して隣接する2つの永久磁石片10a、10bが、該絶縁層12を介することなく一体に形成された永久磁石1’の内部に流れる渦電流Jeの大きさに基づいて定められた位置に配置されている。
【0028】
具体的には、永久磁石ユニット1の絶縁層12は、永久磁石ユニット1において、永久磁石ユニット1がIPMモータ5に組み込まれたときの移動方向Aに垂直な断面(すなわち、永久磁石ユニット1の長さ方向に垂直な断面)に配置されている。この絶縁層12は、永久磁石1’が磁界内を
図1(a)に示されるA方向に移動するときに、永久磁石1’の長さ方向前端から後端までの各位置において、長さ方向に垂直な断面における長さ方向に並行な方向の渦電流の大きさJe(x)を計算し、Je(x)の最も大きな位置に配置されている。その結果、長さL11、高さH、厚さtの永久磁石片10aと、絶縁層12と、長さがL11より長いL12、高さH、厚さtの永久磁石片10bとが、この順で長さ方向に隣接するように配置された永久磁石ユニット1が得られる。
【0029】
このように、永久磁石1’の内部に生じる渦電流の大きさが最も大きい位置に、永久磁石1’の長さ方向に対して垂直な面に延びるように絶縁層12を配置し、その絶縁層12に隣接して異なる大きさの永久磁石片10a、10bを配置することにより、永久磁石1’と同じ全体形状を有するように形成された永久磁石ユニット1は、従来技術に基づいて絶縁層が配置された永久磁石と比べて、渦電流損失をより低減させることができる。
【0030】
永久磁石ユニット1を構成する永久磁石片10a、10bは、限定されるものではないが、希土類永久磁石片であることが好ましく、Nd−Fe−B系磁石又はSm−Co系磁石であることがより好ましく、Nd−Fe−B系磁石であることが最も好ましい。Nd−Fe−B系磁石の場合には、典型的には、Nd−Fe−B系磁石材料は、希土類磁石(Nd、Pr、Dy、Tb)を27〜40wt%、Bを0.8〜2wt%、Fe(電解鉄)を60〜73wt%の割合で含む。この磁石材料には、磁気特性向上を目的として、Co、Cu、Al、Si、Ga、Nb、V、Mo、Zr、Ta、Ti、W、Ag、Bi、Zn、Mg等の他元素を少量含んでも良い。
【0031】
永久磁石ユニット1に含まれる絶縁層12は、絶縁層12を介して隣接する永久磁石片10aと永久磁石片10bとの間を効果的に絶縁することができる層であれば良く、絶縁物質を含む層又は空気層とすることが好ましい。絶縁物質として、例えば、エポキシ接着剤、プラスチック、熱収縮性の膜、セラミクスなどを用いることができる。セラミクスを材料とする絶縁層としては、イットリウムを含む希土類元素のフッ化物を含む層を用いることが好ましい。
【0032】
図2は、
図1(a)に示される永久磁石1が埋め込まれるIPMモータの一例を示す。IPMモータ5は、
図2に示されるように、非可動部であるステータ52と、可動部であるロータ54とを備える。ステータ52は、周方向に間隔をもって配設された複数のティース52aを備えており、このティース52aに界磁コイル53が巻かれる。界磁コイル53に通電されると、ロータ54を回転させるための回転磁界が発生する。ロータ54は、その周面がエアギャップ55を介してステータ52と対向するように、該ステータ52内に回転自在に配置される。エアギャップ55は、ステータ52の各ティース52aの端面とロータ54の周面との間に形成されることになる。ロータ54は、ロータコア54aと、該ロータコア54aと連結したシャフト54bと、ロータコア54aの内部においてシャフト54bの外側に配置された複数の永久磁石ユニット1とを有する。複数の永久磁石ユニット1の各々は、ロータコア54aに形成された複数の磁石挿入用スロット54cの各々の内部に、永久磁石ユニット1の高さ方向が
図2の紙面に垂直な方向に向けられた状態で挿入される。
【0033】
ここで、
図1(a)の永久磁石ユニット1を例として、本発明による絶縁層の配置位置を定める方法を説明する。絶縁層12が配置される位置は、絶縁層12を介して隣接する永久磁石片10a、10bが絶縁層12を介することなく一体に形成された永久磁石1’を想定して定められる。永久磁石ユニット1においては、永久磁石10a及び10bが絶縁層12を介することなく一体に形成された永久磁石1’が磁界内をA方向に移動するときに、永久磁石1’の長さ方向前端から後端までの各位置で、長さ方向に垂直な断面における長さ方向に並行な方向の渦電流の大きさJe(x)を計算し、渦電流の大きさJe(x)の最も大きな長さ方向位置に、絶縁層12が配置されている。Je(x)は、このネオジム永久磁石1’が、例えば
図2に示される構造のIPMモータ5に挿入された場合に、永久磁石1’の内部に発生する渦電流の大きさとして、以下の式(1)を用いて計算される。
【数3】
但し、rは位置ベクトル(r=(x,y,z))、tは時間であり、xは、永久磁石1’の長さ方向位置であり、Jx(r,t)は、永久磁石1’の位置xにおける長さ方向の渦電流密度ベクトル成分であり、Sは、永久磁石1’の位置xにおける断面の面積であり、Tは、電気角一周期である。
【0034】
任意の断面ξにおける、断面ξに垂直な長さ方向の渦電流密度ベクトルのイメージが、
図3に示される。上記の式(1)を一般化すると、任意の断面ξに垂直な方向の渦電流の大きさJe(ξ)は、以下の式(2)のように表すことができる。
【数4】
但し、rは位置ベクトル(r=(x,y,z))、tは時間であり、J
S(r,t)は、任意の断面ξにおける断面に垂直な方向の渦電流密度ベクトル成分を表し、Sは、断面ξの断面積を表し、Tは、電気角一周期を表す。)
【0035】
なお、永久磁石ユニットの別の例である後述の永久磁石ユニット3及び4において絶縁層を配置する位置を定める場合には、永久磁石の高さ方向上端から下端までの各位置で、高さ方向に垂直な断面における高さ方向に並行な方向の渦電流の大きさJe(z)が用いられ、Je(z)の大きさは、以下の式(3)を用いて計算される。
【数5】
但し、rは位置ベクトル(r=(x,y,z))、tは時間であり、zは永久磁石の高さ方向位置であり、Jz(r,t)は、永久磁石の位置zにおける高さ方向の渦電流密度ベクトル成分であり、Sは、永久磁石の位置zにおける断面の面積であり、Tは、電気角一周期である。
【0036】
図1(a)の例においては、絶縁層12を介して隣接する2つの永久磁石10a、10bが絶縁層12を介することなく形成された永久磁石1’として、長さLが131mm、高さHが40mm、厚さtが14.2mmのネオジム永久磁石を用いた。式(1)における渦電流密度ベクトルのx方向成分Jx(r,t)は、この永久磁石1’を非特許文献1に記載のIPMモータベンチマークモデルの磁石として適用し、有限要素法を用いた電磁界数値解析を行って得られる渦電流密度ベクトルJe(r,t)のことである。
【0037】
本実施形態において電磁界数値解析に用いた条件は、以下のとおりである。
・要素数 :3,406,590
・辺数 :4,133,733
・未知数 :3,820,001
・節点数 :620,988
・計算方法 :A−φ法
・要素の種類:四面体辺要素
なお、上記条件のうち要素数が多いほど渦電流の大きさをより精度良く求めることができ、好ましくは、要素数は300万個以上である。
図4は、電磁界数値解析に用いた要素の形状を示す。
図4の左側は、解析モデルにおける二次元メッシュデータを示し、右側は、磁石及びその周辺部分を拡大した図を示す。
【0038】
こうして計算された、永久磁石1’内に流れる渦電流の大きさJe(x)が、
図5に示される。
図5は、移動方向前端から後端までの長さ(mm)を横軸とし、それぞれの長さ方向位置における渦電流の大きさJe(x)(A)を縦軸としてプロットしたものである。永久磁石1’の内部に流れる渦電流の大きさJe(x)は、
図5において点線とそれに続く実線とで示されている。永久磁石1’においては、渦電流の大きさJe(x)は、長さ方向前端から11mmの位置Daで最も大きくなっており、62mmの位置で次に大きくなっていることがわかる。したがって、永久磁石ユニット1において1つの絶縁層を配置する場合には、絶縁層12は、渦電流の大きさJe(x)が最大となる位置Daに配置されることになる。すなわち、永久磁石ユニット1は、高さ40mm、厚さ14.2mm、長さ11mmの永久磁石片10aと、高さ40mm、厚さ14.2mm、長さ120mmの永久磁石10bとが、絶縁層12を介して長さ方向に隣接することによって構成されている。
【0039】
なお、この例では、渦電流の大きさJe(x)が最大となる位置Daにのみ絶縁層が配置されているが、次に大きい62mmの位置(すなわち
図5に示されるDcの位置)にも2つめの絶縁層を配置して、2つの絶縁層と3つの永久磁石片が交互に隣接する永久磁石ユニットとすることもできる。
【0040】
また、本発明による永久磁石の他の例を、
図1(b)に示す。
図1(b)は、Nが3のときの永久磁石ユニットであり、4つの永久磁石片20a、20b、20c、20dが3つの絶縁層22a、22b、22cを介して隣接するように配置された直方体形状の永久磁石ユニット2を示す。永久磁石ユニット2がIPMモータ5に組み込まれたときの永久磁石ユニット1の移動方向が、
図1(b)に矢印Aで示されている。永久磁石ユニット2の全体形状は、永久磁石ユニット1と同じである。
【0041】
永久磁石ユニット2の絶縁層22aは、永久磁石ユニット1と同様の上述の方法及び条件で計算された結果に基づいて定められた位置に配置されている。また、絶縁層22b、22cは、絶縁層22aを有する永久磁石、すなわち永久磁石ユニット1と同じ構成の永久磁石2’の内部に流れる渦電流の大きさを計算し、その計算結果に基づいて定められた位置に配置されている。具体的には、絶縁層22b、22cは、永久磁石2’がIPMモータ5に組み込まれて磁界内をA方向に移動するときに、永久磁石2’の長さ方向における前端から後端までの各位置で、長さ方向に垂直な断面における長さ方向に並行な方向の渦電流の大きさとして計算されたJe(x)の最も大きな位置と、2番目に大きな位置との2箇所に配置される。
【0042】
例えば、長さLが131mm、高さHが40mm、厚さtが14.2mmのネオジム永久磁石を永久磁石2’として用いた場合において、式(1)によって計算された渦電流の大きさJe(x)は、
図5において一点鎖線とそれに続く実線とで示されている。永久磁石ユニット2における絶縁層22b、22a、22cは、
図5における渦電流の大きさDa、Db、Dcの位置に対応する位置に配置される。したがって、永久磁石ユニット2において、絶縁層22aは、長さ方向前端部から6mmの位置に配置されており、絶縁層22bは、長さ方向前端部から11mmの位置に配置されており、絶縁層23cは、長さ方向前端部から62mmの位置に配置されている。すなわち、永久磁石ユニット2は、高さ40mm、厚さ14.2mm、長さ6mmの永久磁石片20aと、高さ及び厚さが同じで長さ5mmの永久磁石片20bと、高さ及び厚さが同じで長さが51mmの永久磁石片20cと、高さ及び厚さが同じで長さが69mmの永久磁石片20dとが、それぞれ、絶縁層22a、22b、22cを介して隣接することによって構成されている。
【0043】
なお、この例においても、
図5においてDbの右側にある山の位置(約20mmの位置)にも4つ目の絶縁層を配置して、4つの絶縁層と5つの永久磁石片とが交互に隣接する永久磁石ユニットとすることもできる。
【0044】
別の実施形態において、回転機のロータ内に配置され、回転機の磁界を横切る移動する方向に延びる長さ方向(x方向)寸法と、長さ方向に垂直かつ回転機の軸方向に並行な高さ方向(z方向)寸法と、長さ方向及び高さ方向に垂直な厚さ方向(y方向)寸法とを有する永久磁石に、N番目の絶縁層を、高さ方向に垂直な断面に配置する場合には、その永久磁石の内部に流れる高さ方向の渦電流の大きさJe(z)を式(2)を用いて計算し、Je(z)が最大となる位置にN番目の絶縁層が配置される。
【0045】
図1(c)は、Nが1のときの永久磁石ユニットであり、2つの永久磁石片30a、30bが1つの絶縁層32を介して隣接するように配置された永久磁石ユニット3を示す。永久磁石ユニット3がIPMモータ5に組み込まれたときの永久磁石ユニット3の移動方向が矢印Aで示されており、永久磁石ユニット3の全体形状は、永久磁石ユニット1と同じである。
【0046】
永久磁石ユニット3の絶縁層32は、永久磁石ユニット3の高さ方向中央部に配置されている。絶縁層32は、該絶縁層32を介して隣接する2つの永久磁石30a及び30bが、該絶縁層32を介することなく一体に形成された永久磁石3’の内部に流れる渦電流の大きさJe(z)に基づいて定められた位置に配置されている。
【0047】
具体的には、永久磁石ユニット3の絶縁層32は、永久磁石ユニット3において、永久磁石ユニット3がIPMモータ5に組み込まれたときのIPMモータ5の軸54b方向(すなわち、永久磁石ユニット3の高さ方向)に垂直な断面に配置されている。この絶縁層32は、永久磁石3’が磁界内を
図1(c)に示されるA方向に移動するときに、永久磁石3’の高さ方向における上端から下端までの各位置で、高さ方向に垂直な断面における高さ方向に並行な方向の渦電流の大きさとして計算されたJe(z)の最も大きな位置に配置される。
【0048】
例えば、長さLが131mm、高さHが40mm、厚さtが14.2mmのネオジム永久磁石を永久磁石3’として用いた場合において、式(2)によって計算された渦電流の大きさJe(z)が、
図6において点線で示されている。渦電流の大きさJe(z)の計算方法及び条件は、渦電流の大きさJe(x)を計算した上述の場合と同じである。
図6は、永久磁石3’の高さ方向の上端から下端までの長さ(mm)を横軸とし、それぞれの高さ方向位置における渦電流の大きさJe(z)の大きさを縦軸としてプロットしたものである。永久磁石3’においては、渦電流の大きさJe(z)は、高さ方向上端から20mmの位置Daで最も大きくなっていることがわかる。したがって、永久磁石ユニット3においては、絶縁層32は、渦電流Je(z)が最大となる位置Daに配置されることになる。すなわち、永久磁石ユニット3は、高さ20mm、厚さ14.2mm、長さ131mmの永久磁石片30aと、高さ20mm、厚さ14.2mm、長さ131mmの永久磁石10bとが、絶縁層32を介して高さ方向に隣接することによって構成されている。
【0049】
図1(d)は、Nが3のときの永久磁石ユニットであり、4つの永久磁石片40a、40b、40c、40dが3つの絶縁層42a、42b、42cを介して隣接するように配置された永久磁石ユニット4を示す。永久磁石ユニット4がIPMモータ5に組み込まれたときの永久磁石ユニット4の移動方向が矢印Aで示されており、永久磁石ユニット4の全体形状は、永久磁石ユニット1と同じである。
【0050】
永久磁石ユニット4の絶縁層42aは、永久磁石ユニット3と同様の上述の方法及び条件で計算された結果に基づいて定められた位置に配置されている。また、絶縁層42b、42cは、絶縁層42aを有する永久磁石、すなわち永久磁石ユニット3と同じ構成の永久磁石4’の内部に流れる渦電流の大きさを計算し、その計算結果に基づいて定められた位置に配置されている。具体的には、絶縁層42b、42cは、永久磁石4’がIPMモータ5に組み込まれて磁界内をA方向に移動するときに、永久磁石4’の高さ方向における上端から下端までの各位置で、高さ方向に垂直な断面における高さ方向に並行な方向の渦電流の大きさとして計算されたJe(z)の最も大きな位置の2箇所に配置される。
【0051】
例えば、長さLが131mm、高さHが40mm、厚さtが14.2mmのネオジム永久磁石を永久磁石4’として用いた場合において、式(2)によって計算された渦電流の大きさJe(z)は、
図6において一点鎖線で示されている。永久磁石ユニット4における絶縁層42b、42a、42cの位置は、
図6における渦電流の大きさDb、Da、Dcの位置に対応している。永久磁石ユニット4において、絶縁層42b、42a、42cは、それぞれ、高さ方向上端から10mm、20mm、30mmの位置に配置されている。すなわち、永久磁石ユニット4は、高さ10mm、厚さ14.2mm、長さ131mmの永久磁石片40a、40b、40c、40dが、絶縁層42b、42a、42cを介して高さ方向に隣接することによって構成されている。
【0052】
上記の方法で絶縁層を配置する位置が定められ、絶縁層が配置された永久磁石ユニット1〜4と、絶縁層が配置されていない永久磁石とについて、渦電流の大きさの最大値、渦電流の大きさの最大値が発生した位置、渦電流損失及び渦電流損失の低下率をまとめると、以下の表1のとおりである。
【0054】
表1におけるそれぞれの永久磁石及び永久磁石ユニットについて、渦電流損失W
edは、以下の式(4)を用いて有限要素法により求めた。
【数6】
但し、Tは電気角一周期、Vmagは永久磁石又は永久磁石ユニットの体積、σは永久磁石片の導電率である。また、渦電流密度ベクトルJeは、永久磁石又は永久磁石ユニットを非特許文献1に記載のIPMモータベンチマークモデルの磁石として適用して、有限要素法を用いて電磁界数値解析を行ったときの、有限要素の各々の重心に流れる渦電流密度ベクトルである。ここで行った電磁界数値解析の条件は、永久磁石1’内に流れる渦電流の大きさを計算したときの条件と同じである。
【0055】
次に、本発明に係る絶縁層の配置位置規定方法によって絶縁層が配置された永久磁石ユニットについて、渦電流損失の低下の効果を確認するために、従来技術によって絶縁層が配置された永久磁石ユニットとの比較を行った。比較は、本発明による永久磁石ユニット1と、該永久磁石ユニット1で絶縁層を配置する位置を定めるために用いられた永久磁石1’において従来技術により定められる位置に絶縁層が配置された永久磁石ユニットとの間で行った。永久磁石1’は、長さLが131mm、高さHが40mm、厚さtが14.2mmのネオジム永久磁石である。従来技術により定められる絶縁層は、永久磁石ユニット1と同様に、移動方向に垂直な断面に配置される。従来技術による絶縁層の位置は、特許文献3及び特許文献4に記載された絶縁層の配置位置規定方法を用いて定めた。
【0056】
特許文献3に記載の方法は、永久磁石ユニットに含まれる永久磁石片の幅を、磁界内を横切るときの永久磁石ユニットの各位置における磁束密度の変化率に対応して定める方法である。磁束密度の変化率を求める式として、以下の2つの計算式(5)及び(6)を用いた。式(5)は、永久磁石ユニットの長さ方向の任意の位置(長さ方向に垂直な任意の断面)における磁束密度の平均値を求めるものであり、式(6)は、永久磁石ユニットの長さ方向の任意の位置における磁束密度の時間変化の平均値を求めるものである。
【数7】
【数8】
但し、rは位置ベクトル(r=(x,y,z))、tは時間、Tは電気角一周期、Sは長さ方向に垂直な断面の面積、B
y(r,t)は電動機の駆動時に永久磁石上においてその厚み方向(y方向)に発生する磁束密度成分である。
【0057】
式(5)及び式(6)で計算された値を、永久磁石ユニットの長さ方向を横軸としてプロットした図が、それぞれ
図7(a)及び
図7(b)に示される。これらの計算結果に基づいて、永久磁石ユニット1と同様に1つの絶縁層が配置される位置は、当該絶縁層を介して隣接する永久磁石片の磁束密度の変化率が等しくなる位置とした。その結果、式(5)で計算された場合には、移動方向前端から60mmの位置に絶縁層が配置され、式(6)で計算された場合には、移動方向前端から20mmの位置に絶縁層が配置される結果となった。こうして位置が定められた永久磁石を、それぞれ比較例1、比較例2とした。
【0058】
特許文献4に記載の方法は、永久磁石に含まれる永久磁石片の幅を、磁界内を横切るときに永久磁石片に発生する渦電流損失が概ね均一となるように定める方法である。渦電流損失Wlossは、磁束密度B(x)の2乗の変化率に比例するものとして、以下の式(7)によって求められる。
【数9】
【0059】
式(7)で計算された値を、永久磁石ユニットの長さ方向を横軸としてプロットした図が、
図8に示される。この計算結果に基づいて、永久磁石ユニット1と同様に1つの絶縁層を配置する位置は、当該絶縁層を介して隣接する永久磁石片に発生する渦電流損失、すなわち磁束密度の2乗の変化率が等しくなる位置とした。その結果、式(7)で計算された場合には、移動方向前端から55mmの位置に絶縁層が配置されることとなった。こうして位置が定められた永久磁石を比較例3とした。
【0060】
なお、比較例1〜比較例3について、それぞれの特許文献には、具体的な絶縁層の配置位置が記載されていない。したがって、比較例1〜比較例3における絶縁層の配置位置は、
図7(a)、
図7(b)及び
図8において、曲線を二つに分割したときに分割されたそれぞれの曲線の下側領域の面積(当該曲線と縦軸及び横軸とで囲まれる面積)が等しくなる分割位置とした。
【0061】
以上をまとめると、表2のとおりである。表2から、本発明に係る永久磁石ユニット及び絶縁層の配置位置規定方法を用いると、従来技術と比較して、永久磁石ユニット全体の渦電流損失を大きく低下させるように絶縁層配置位置を定めることができることがわかる。
【0063】
第2の実施形態として、回転機のシャフト表面に配置して用いることができる円筒形状の永久磁石を考えると、絶縁層を介することなく一体に成形された永久磁石に、例えば中心軸に平行な平面上に位置する断面に配置される最初の2つの絶縁層の位置は、該永久磁石の磁界の変化に伴って該永久磁石の内部を流れる渦電流の大きさに基づいて定められた位置とすることができる。また、中心軸に平行な平面上に位置する断面に配置されたM個(Mは2以上)の絶縁層とそのM個の絶縁層を介して互いに隣接して配置されたM個の永久磁石片とを含む円筒形状の永久磁石ユニットにおいて、次に配置される(M+1)番目の絶縁層の位置もまた、該永久磁石ユニットの磁界の変化に伴って該永久磁石ユニットの内部を流れる渦電流の大きさに基づいて定められた位置とすることができる。こうして定められた位置に絶縁層を配置することによって、M個の絶縁層と、該M個の絶縁層の各々によって互いに絶縁されたM個の永久磁石片とを含む、円筒形状の永久磁石ユニットが得られる。
【0064】
一実施形態において、回転機のシャフト表面に配置して用いられ、周方向(θ方向)と、径方向(R方向)と、回転機の中心軸に平行な高さ方向(z方向)とを有する円筒形状の永久磁石に、最初の2つの絶縁層を、例えば中心軸を通り該中心軸に平行な平面上に位置する断面に配置する場合には、機械角θ=0°からθ=360°までの各断面について、その永久磁石の磁界の変化に伴って内部に流れる該断面に垂直な周方向の渦電流の大きさJe(θ)を計算し、Je(θ)が最大値となる周方向位置、又は最大値の近傍、例えば最大値の95%の値から最大値までの範囲となる周方向位置に、最初の2つの絶縁層が配置される。
【0065】
図9(a)は、2つの絶縁層が配置された永久磁石ユニットであり、2つの永久磁石片60a、60bが2つの絶縁層62a、62bを介して隣接するように配置された円筒形状の永久磁石ユニット6を示す。永久磁石ユニット6は、
図10に示されるSPM(表面磁石型)モータ8のシャフト85の表面に配置することができる。永久磁石ユニット6は、SPMモータ8に組み込まれたときには、中心軸6cの周りにおいて
図9の矢印Aの方向に回転する。
【0066】
図9(a)に示される永久磁石ユニット6の絶縁層62a、62bは、永久磁石ユニット6の中心軸6cを通り中心軸6cに平行な平面上に配置されている。絶縁層62a、62bは、2つの永久磁石片60a、60bが絶縁層62a、62bを介することなく一体に成形された永久磁石6’の内部に流れる渦電流Jeの大きさに基づいて定められた位置に、配置されている。
【0067】
具体的には、永久磁石ユニット6の絶縁層62a、62bは、永久磁石ユニット6が
図10に示されるようにSPMモータ8に組み込まれたときの機械角θ=68°及び248°の位置における断面に配置されている。絶縁層62a、62bは、絶縁層のない永久磁石6’を
図10に示されるSPMモータに組み込んでA方向に回転させたときに、永久磁石6’の中心軸を通り中心軸に平行な平面上に位置する各断面において、その断面に垂直な周方向の渦電流の大きさJe(θ)を計算し、Je(θ)の最も大きかった位置の2箇所に配置されている。
【0068】
また、
図9(b)は、4つの絶縁層が配置された永久磁石ユニットであり、4つの永久磁石片70a、70b、70c、70dが4つの絶縁層72a、72b、72c、72dを介して隣接するように配置された円筒形状の永久磁石ユニット7を示す。永久磁石ユニット7は、
図10に示されるSPMモータ8のシャフト84の表面に配置することができる。永久磁石ユニット7は、SPMモータ8に組み込まれたときには、中心軸7cの周りにおいて
図9の矢印Aの方向に回転する。
【0069】
図9(b)に示される永久磁石ユニット7の絶縁層72a、72b、72c、72dは、永久磁石ユニット7の中心軸7cを通り中心軸7cに平行な平面上に配置されている。絶縁層72c、72dは、2つの絶縁層72a、72bを有する永久磁石、すなわち永久磁石ユニット6と同じ構成の永久磁石7’の内部に流れる渦電流Jeの大きさに基づいて定められた位置に、配置されている。
【0070】
具体的には、永久磁石ユニット7の絶縁層72c、72dは、永久磁石ユニット7が
図10に示されるようにSPMモータ8に組み込まれたときの機械角θ=92°及び272°の位置における断面に配置されている。絶縁層72c、72dは、2つの絶縁層72a、72bを有する永久磁石7’を
図10に示されるSPMモータに組み込んでA方向に移動させたときに、永久磁石7’の中心軸を通り中心軸に平行な平面上に位置する各断面において、その断面に垂直な周方向の渦電流の大きさJe(θ)を計算し、Je(θ)の最も大きかった位置の2箇所に配置されている。
【0071】
以上のように、絶縁層のない永久磁石6’の内部に生じる渦電流の大きさが最も大きい位置に絶縁層を配置することにより、永久磁石ユニット6は、絶縁層のない永久磁石と比べて、渦電流損失をより低減させることができる。同様に、2つの絶縁層を有する永久磁石7’の内部に生じる渦電流の大きさが最も大きい位置に絶縁層を配置することにより、永久磁石ユニット7は、絶縁層のない永久磁石だけでなく、2つの絶縁層を有する永久磁石ユニット6と比べても、渦電流損失をより低減させることができる。
【0072】
図10は、
図9(a)及び
図9(b)に示される永久磁石ユニットの絶縁層の位置を定めるために用いた2極6スロットのSPMモータ8を示す。SPMモータ8は、非可動部であるステータ82と、可動部であるロータ84とを備える。ロータ84は、円筒形状の永久磁石6’又は永久磁石7’とシャフト85とを有し、永久磁石6’又は永久磁石7’は、シャフト85の外表面に内表面が接するように配置される。ステータ82は、周方向に間隔をもって配設された複数のティース82aを備えており、このティース82aに界磁コイル83が巻かれている。界磁コイル83に通電されると、ロータ84を回転させるための回転磁界が発生する。永久磁石6’又は永久磁石7’は、外周面がエアギャップ86を介してティース82aの端面82bと対向する。
【0073】
SPMモータ8の仕様及びパラメータは、表3に示されるとおりであり、絶縁層の位置を決定するための渦電流の大きさJe(θ)は、以下の式(8)を用いて計算される。Je(θ)は、永久磁石6’又は永久磁石7’が
図10に示されるSPMモータ8に用いられた場合に、永久磁石6’又は永久磁石7’の内部に発生する周方向の渦電流の大きさである。
図11には、円筒形状の永久磁石の任意の断面における渦電流密度ベクトルのイメージを示す。なお、この実施形態における永久磁石は、パラレル配向磁石であり、磁化方向Cの初期機械角は、θ=60°としている。また、
図10に示されるステータ82とロータ84との位置関係が、電流進角0°の位置である。
【0074】
【表3】
【数10】
ただし、rは位置ベクトル(r=(θ、R、z))、tは時間であり、θは永久磁石6’又は永久磁石7’の周方向位置であり、J
θ(r,t)は、永久磁石6’又は永久磁石7’の周方向位置θにおける、中心軸を通り中心軸に平行な平面上に位置する断面に垂直な方向の渦電流密度ベクトル成分であり、Sは、永久磁石6’又は永久磁石7’の周方向位置θにおける断面の面積であり、Tは電気角一周期である。
【0075】
図9(a)及び
図9(b)の例において、式(8)の渦電流密度ベクトルの周方向成分J
θ(r,t)は、永久磁石6’又は永久磁石7’を非特許文献2及び非特許文献3に記載の解析モデルの磁石として適用し、有限要素法を用いた電磁界数値解析を行って得ることができる。
【0076】
本実施形態において電磁界数値解析に用いた条件は、以下のとおりである。
・要素数 :1,202,244
・辺数 :2,502,931
・未知数 :2,398,363
・節点数 :634,580
・計算方法 :A−φ法
・要素の種類:五面体辺要素
なお、上記条件のうち、要素数が多いほど渦電流の大きさをより精度良く求めることができる。
図12は、電磁界数値解析に用いた解析モデルにおける二次元メッシュデータを示す。
【0077】
こうして計算された、永久磁石6’内に流れる渦電流の大きさJe(θ)が
図13(a)に示され、永久磁石7’内に流れる渦電流の大きさJe(θ)が
図13(b)に示される。これらの図は、機械角0°から360°までの角度を横軸とし、それぞれの機械角に対応する永久磁石の周方向位置における断面の渦電流の大きさJe(θ)を縦軸としてプロットしたものである。絶縁層のない永久磁石6’においては、
図13(a)に示されるように、渦電流の大きさJe(θ)は、機械角68°の位置と248°の位置で最も大きくなった。したがって、永久磁石ユニット6においては、
図9(a)に示されるように絶縁層62a及び62bが配置される。また、
図9(a)に示される位置に2つの絶縁層が配置された永久磁石7’においては、
図13(b)に示されるように、渦電流の大きさJe(θ)は、機械角92°の位置と272°の位置で最も大きくなった。したがって、永久磁石ユニット7においては、
図9(b)に示されるように絶縁層72a、72b、72c及び72dが配置される。
【0078】
上記のように絶縁層を配置する位置が定められ、絶縁層が配置された永久磁石ユニット6及び永久磁石ユニット7と、絶縁層が配置されていない永久磁石とについて、渦電流の大きさの最大値が発生した周方向位置(機械角)、渦電流損失及び渦電流損失の低下率をまとめると、以下の表4のとおりである。また、永久磁石ユニット6及び永久磁石ユニット7について、渦電流の大きさが最大値となる周方向位置に絶縁層を配置した場合とそれ以外の位置に絶縁層を配置した場合との効果を確認するため、絶縁層の周方向位置による渦電流損失及び渦電流損失の低下率をまとめると、以下の表5のとおりである。なお、渦電流損失は、永久磁石1〜4の場合と同様に、式(4)を用いて有限要素法により求めた。
【0081】
表4及び表5の結果から、本発明に係る永久磁石ユニット及び絶縁層の配置位置規定方法を用いると、永久磁石ユニット全体の渦電流損失を低下させるように絶縁層配置位置を定めることができることがわかる。また、渦電流の大きさが最大となる位置に絶縁層を配置することにより、渦電流損失の低減効果をより大きくすることができる。
【0082】
なお、円筒形状の永久磁石に関する上記の実施形態においては、中心軸に平行な平面上に絶縁層を配置する場合について説明したが、絶縁層を配置する位置は、これに限定されるものではない。絶縁層は、例えば中心軸に垂直な平面上に配置することもでき、あるいは中心軸と所定の角度で交わる平面上に配置することもできる。こうした平面上に絶縁層を配置する場合でも、本発明に係る配置位置規定方法に基づいて、永久磁石ユニット全体の渦電流損失を低下させるように絶縁層配置位置を定めることができる。また、円筒形状の永久磁石に関する上記の実施形態においては、2極のパラレル配向円筒形状永久磁石について説明したが、極数や配向方向は、これに限定されるものではない。例えば4極や8極の極異方性円筒形状永久磁石を用いる場合でも、本発明に係る配置位置規定方法に基づいて、永久磁石ユニット全体の渦電流損失を低下させるように絶縁層配置位置を定めることができる。
【0083】
以下に、本発明による永久磁石ユニットの製造方法を説明する。製造方法においては、最初に、絶縁層を配置する位置を検討する対象となっている永久磁石ユニットと同じ形状の永久磁石を想定して、上述の方法により、該永久磁石の磁界の変化に伴って該永久磁石の内部に流れる渦電流の大きさを計算し、それらに基づいて、絶縁層を配置すべき位置を定めることができる。さらに2つ目の絶縁層を配置する場合には、1つの絶縁層を備える永久磁石ユニットを想定して、上述の方法により、該永久磁石ユニットの内部に流れる渦電流の大きさに基づいて、2つ目の絶縁層を配置すべき位置を定めることができる。以下同様に、N個目の絶縁層を配置する場合には、N−1個の絶縁層を有する永久磁石ユニットを想定して、N個目の絶縁層を配置すべき位置を定めることができる。
【0084】
絶縁層を配置すべき位置を定めた後、最終製品である永久磁石ユニットと同じ形状の永久磁石を作成し、その永久磁石を定められた絶縁層の位置において切断して、分割することによって、永久磁石ユニットに含まれる個々の永久磁石片を作成することができる。得られた永久磁石片を、各々の切断面を対向させて、それらの切断面の間に、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂といった絶縁性接着材料を配置して固定すれば、絶縁性接着材料を絶縁層とする永久磁石ユニットが得られる。また、得られた永久磁石片を、各々の切断面を対向させて回転機の可動部材に設けられたスロットに挿入し、スロットに絶縁性接着材料を流し込むことによって、絶縁性接着材料を絶縁層とする永久磁石ユニットを得ることもできる。さらに、回転機の可動部材に設けられたスロットを、得られた永久磁石片を組み合わせたときの永久磁石ユニットを隙間なく挿入することができる形状に成形しておき、そのスロットに、永久磁石片を組み合わせて挿入することによって、永久磁石ユニットを形成することもできる。この場合には、隣接する永久磁石片の間隙に存在する空気が絶縁層として機能する。あるいは、例えばセラミクスなどを材料とするシート状絶縁層を、永久磁石片とは別に作成し、永久磁石片とシート状絶縁層とを、永久磁石片の切断面が対向するように絶縁性接着材料で接着することによって、永久磁石ユニットを製造することもできる。
【0085】
別の方法として、絶縁層を配置すべき位置を定めた後、最終製品である永久磁石ユニットと同じ形状の永久磁石において定められた位置に絶縁層が配置されたときに、該絶縁層に隣接することになる永久磁石片を、それぞれ別個に作成することもできる。得られた永久磁石片を、絶縁層の配置位置として定められた面が対向するように組み合わせて隣接させ、それらの面の間に、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂といった絶縁性接着材料を配置して固定すれば、絶縁性接着材料を絶縁層とする永久磁石ユニットが得られる。また、得られた永久磁石片を、同様に隣接させて回転機の可動部材に設けられたスロットに挿入し、スロットに絶縁性接着材料を流し込むことによって、絶縁性接着材料を絶縁層とする永久磁石ユニットを得ることもできる。さらに、回転機の可動部材に設けられたスロットを、得られた永久磁石片を組み合わせたときの永久磁石ユニットを隙間なく挿入することができる形状に成形しておき、そのスロットに、永久磁石片を組み合わせて挿入することによって、永久磁石ユニットを形成することもできる。この場合には、隣接する永久磁石片の間隙に存在する空気が絶縁層として機能する。あるいは、例えばセラミクスなどを材料とするシート状絶縁層を、永久磁石片とは別に作成し、永久磁石片とシート状絶縁層とを、絶縁層の配置位置として定められた面が対向するように絶縁性接着材料で接着することによって、永久磁石ユニットを製造することもできる。
【0086】
永久磁石を作成して分割する方法を用いる場合の当該永久磁石、又は、永久磁石片を別個に作成して組み合わせる場合のそれぞれの永久磁石片は、圧粉成形により成形された成形体や、磁石粉末とバインダーとが混合された混合物(スラリー又はコンパウンド)から成形された成形体を焼結し、この焼結体を着磁することによって作成することができる。最も好ましい方法として、磁石粉末とバインダーとが混合された混合物(スラリー又はコンパウンド)から成形された成形体を焼結して焼結体とする方法を、以下に説明する。
図14は、焼結体の製造工程を示す概略図である。
【0087】
先ず、所定分率のNd−Fe−B系合金からなる磁石材料のインゴットを鋳造法により製造する。代表的には、ネオジム磁石に使用されるNd−Fe−B系合金は、Ndが30wt%、電解鉄であることが好ましいFeが67wt%、Bが1.0wt%の割合で含まれる組成を有する。次いで、このインゴットを、スタンプミル又はクラッシャー等の公知の手段を使用して200μm程度の大きさに粗粉砕する。代替的には、インゴットを溶解し、ストリップキャスト法によりフレークを作成し、水素解砕法で粗粉化する。それによって、粗粉砕磁石材料粒子115が得られる(
図14(a)参照)。
【0088】
次いで、粗粉砕磁石材料粒子115を、ビーズミル116による湿式法又はジェットミルを用いた乾式法等によって微粉砕する。例えば、ビーズミル116による湿式法を用いた微粉砕では、溶媒中で粗粉砕磁石粒子115を所定範囲の粒径(例えば0.1μm〜5.0μm)に微粉砕し、溶媒中に磁石材料粒子を分散させる(
図14(b)参照)。その後、湿式粉砕後の溶媒に含まれる磁石粒子を真空乾燥などの手段によって乾燥させて、乾燥した磁石粒子を取り出す(図示せず)。ここで、粉砕に用いる溶媒の種類には特に制限はなく、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールなどのアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、ペンタン、ヘキサンなどの低級炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなど芳香族類、ケトン類、それらの混合物、液体アルゴン、液体窒素、液体ヘリウム等が使用できる。この場合において、溶媒中に酸素原子を含まない溶媒を用いることが好ましい。
【0089】
一方、ジェットミルによる乾式法を用いる微粉砕においては、粗粉砕した磁石材料粒子115を、(a)酸素含有量が実質的に0%の窒素ガス、Arガス、Heガスなどの不活性ガスからなる雰囲気中、又は(b)酸素含有量が0.0001〜0.5%の窒素ガス、Arガス、Heガスなどの不活性ガスからなる雰囲気中で、ジェットミルにより微粉砕し、例えば0.7μm〜5.0μmといった所定範囲の平均粒径を有する微粒子とする。ここで、酸素濃度が実質的に0%とは、酸素濃度が完全に0%である場合に限定されず、微粉の表面にごく僅かに酸化被膜を形成する程度の量の酸素を含有しても良いことを意味する。
【0090】
次に、ビーズミル116等で微粉砕された磁石材料粒子を所望形状に成形する。この磁石材料粒子の成形のために、上述のように微粉砕された磁石材料粒子115とバインダーとを混合した混合物を準備する。バインダーとしては、樹脂材料を用いることが好ましく、バインダーに樹脂を用いる場合には、構造中に酸素原子を含まず、かつ解重合性のあるポリマーを用いるのが好ましい。また、後述のように磁石粒子とバインダーとの混合物を、例えば台形形状のような所望形状に成形する際に生じた混合物の残余物を再利用できるようにするために、かつ、混合物を加熱して軟化した状態で磁場配向を行うことができるようにするために、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。具体的には、以下の一般式(1)に示されるモノマーから形成される1種又は2種以上の重合体又は共重合体からなるポリマーが好適に用いられる。
【化1】
(但し、R1及びR2は、水素原子、低級アルキル基、フェニル基又はビニル基を表す)
【0091】
上記条件に該当するポリマーとしては、例えばイソブチレンの重合体であるポリイソブチレン(PIB)、イソプレンの重合体であるポリイソプレン(イソプレンゴム、IR)、1,3−ブタジエンの重合体であるポリブタジエン(ブタジエンゴム、BR)、スチレンの重合体であるポリスチレン、スチレンとイソプレンの共重合体であるスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、イソブチレンとイソプレンの共重合体であるブチルゴム(IIR)、スチレンとブタジエンの共重合体であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレンとエチレン、ブタジエンの共重合体であるスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレンとエチレン、プロピレンの共重合体であるスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、エチレンとプロピレンの共重合体であるエチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン、プロピレンとともにジエンモノマーを共重合させたEPDM、2−メチル−1−ペンテンの重合体である2−メチル−1−ペンテン重合樹脂、2−メチル−1−ブテンの重合体である2−メチル−1−ブテン重合樹脂等がある。また、バインダーに用いる樹脂としては、酸素原子、窒素原子を含むモノマーの重合体又は共重合体(例えば、ポリブチルメタクリレートやポリメチルメタクリレート等)を少量含む構成としても良い。更に、上記一般式(1)に該当しないモノマーが一部共重合していても良い。
【0092】
なお、バインダーに用いる樹脂としては、磁場配向を適切に行う為に250℃以下で軟化する熱可塑性樹脂、より具体的にはガラス転移点又は流動開始温度が250℃以下の熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。
【0093】
熱可塑性樹脂中に磁石材料粒子を分散させるために、配向潤滑剤を適量添加する事が望ましい。配向潤滑剤としては、アルコール、カルボン酸、ケトン、エーテル、エステル、アミン、イミン、イミド、アミド、シアン、リン系官能基、スルホン酸、二重結合や三重結合などの不飽和結合を有する化合物、液状飽和炭化水素化合物のうち、少なくともひとつを添加することが望ましい。複数を混合して用いても良い。そして、後述するように、磁石材料粒子とバインダーとの混合物に対して磁場を印加して該磁石材料を磁場配向するにあたっては、混合物を加熱してバインダー成分が軟化した状態で磁場配向処理を行う。
【0094】
磁石材料粒子に混合されるバインダーとして上記条件を満たすバインダーを用いることによって、焼結後の焼結体内に残存する炭素量及び酸素量を低減させることが可能となる。具体的には、焼結後に焼結体内に残存する炭素量を2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下とすることができる。また、焼結後に焼結体内に残存する酸素量を5000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下とすることができる。
【0095】
バインダーの添加量は、スラリー又は加熱溶融したコンパウンドを成形する場合に、成形の結果として得られる成形体の厚み精度が向上するように、磁石材料粒子間の空隙を適切に充填できる量とする。例えば、磁石材料粒子とバインダーの合計量に対するバインダーの比率が、1wt%〜40wt%、より好ましくは2wt%〜30wt%、更に好ましくは3wt%〜20wt%となるようにする。
【0096】
磁石材料粒子とバインダーとからなる混合物すなわちコンパウンド117は、グリーン成形体(以下、「グリーンシート」という)に一旦成形した後に、必要に応じて配向処理を行うための成形体形状とする。混合物を特にシート形状に成形する場合には、例えば磁石材料粒子とバインダーとの混合物であるコンパウンド117を加熱した後にシート形状に成形するホットメルト塗工によるか、又は、磁石材料粒子とバインダーと有機溶媒とを含むスラリーを基材上に塗工することによりシート状に成形するスラリー塗工等による成形を採用することができる。
【0097】
以下においては、特にホットメルト塗工を用いたグリーンシート成形について説明するが、本発明は、そのような特定の成形法に限定されるものではない。例えば、コンパウンド117を成形用型に入れ、室温〜300℃に加熱しながら0.1〜100MPaで加圧することによって成形してもよい。より具体的には、軟化する温度まで加熱したコンパウンド117を、射出圧を加えて金型に押込み充填して成形する方法を用いることができる。
【0098】
既に述べたように、ビーズミル116等で微粉砕された磁石材料粒子にバインダーを混合することにより、磁石材料粒子とバインダーとからなる粘土状の混合物すなわちコンパウンド117を作成する。ここで、バインダーとしては、上述したように樹脂、配向潤滑剤の混合物を用いることができる。例えば、樹脂としては、構造中に酸素原子を含まず、かつ解重合性のあるポリマーからなる熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、一方、配向潤滑剤としては、アルコール、カルボン酸、ケトン、エーテル、エステル、アミン、イミン、イミド、アミド、シアン、リン系官能基、スルホン酸、二重結合や三重結合などの不飽和結合を有する化合物のうち、少なくともひとつを添加することが好ましい。また、バインダーの添加量は、上述したように添加後のコンパウンド117における磁石材料粒子とバインダーの合計量に対するバインダーの比率が、1wt%〜40wt%、より好ましくは2wt%〜30wt%、さらに好ましくは3wt%〜20wt%となるようにする。
【0099】
ここで配向潤滑剤の添加量は磁石材料粒子の粒子径に応じて決定することが好ましく、磁石材料粒子の粒子径が小さい程、添加量を多くすることが推奨される。具体的な添加量としては、磁石材料粒子に対して0.1部〜10部、より好ましくは0.3部〜8部とする。添加量が少ない場合には分散効果が小さく、配向性が低下する恐れがある。また、添加量が多い場合は、磁石材料粒子を汚染する恐れがある。磁石材料粒子に添加された配向潤滑剤は、磁石材料粒子の表面に付着し、磁石材料粒子を分散させ粘土状混合物を与えるとともに、後述の磁場配向処理において、磁石材料粒子の回動を補助するように作用する。その結果、磁場を印加した際に配向が容易に行われ、磁石粒子の磁化容易軸方向をほぼ同一方向に揃えること、すなわち、配向度を高くすることが可能になる。特に、磁石材料粒子にバインダーを混合する場合には、粒子表面にバインダーが存在するようになるため、磁場配向処理時の摩擦力が高くなり、そのために粒子の配向性が低下する恐れがあり、配向潤滑剤を添加することの効果がより高まる。
【0100】
磁石材料粒子とバインダーとの混合は、窒素ガス、Arガス、Heガスなどの不活性ガスからなる雰囲気のもとで行うことが好ましい。磁石材料粒子とバインダーとの混合は、例えば磁石材料粒子とバインダーをそれぞれ攪拌機に投入し、攪拌機で攪拌することにより行う。この場合において、混練性を促進する為に加熱攪拌を行っても良い。さらに、磁石材料粒子とバインダーの混合も、窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気で行うことが望ましい。また、特に磁石粒子を湿式法で粉砕した場合においては、粉砕に用いた溶媒から磁石粒子を取り出すことなくバインダーを溶媒中に添加して混練し、その後に溶媒を揮発させ、コンパウンド117を得るようにしても良い。
【0101】
続いて、コンパウンド117をシート状に成形することにより、前述したグリーンシートを作成する。ホットメルト塗工を採用する場合には、コンパウンド117を加熱することにより該コンパウンド117を溶融し、流動性を有する状態にした後、支持基材118上に塗工する。その後、放熱によりコンパウンド117を凝固させて、支持基材118上に長尺シート状のグリーンシート119を形成する。この場合、コンパウンド117を加熱溶融する際の温度は、用いるバインダーの種類や量によって異なるが、通常は50〜300℃とする。但し、用いるバインダーの流動開始温度よりも高い温度とする必要がある。なお、スラリー塗工を用いる場合には、多量の溶媒中に磁石材料粒子とバインダー、及び、任意ではあるが、配向を助長する配向潤滑剤を分散させ、スラリーを支持基材118上に塗工する。その後、乾燥して溶媒を揮発させることにより、支持基材118上に長尺シート状のグリーンシート119を形成する。
【0102】
ここで、溶融したコンパウンド117の塗工方式は、スロットダイ方式又はカレンダーロール方式等の、層厚制御性に優れる方式を用いることが好ましい。特に、高い厚み精度を実現する為には、特に層厚制御性に優れた、すなわち、基材の表面に高精度の厚さの層を塗工できる方式であるダイ方式やコンマ塗工方式を用いることが望ましい。例えば、スロットダイ方式では、加熱して流動性を有する状態にしたコンパウンド117をギアポンプにより圧送してダイに注入し、ダイから吐出することにより塗工を行う。また、カレンダーロール方式では、加熱した2本のロールのニップ間隙に、コンパウンド117を制御した量で送り込み、ロールを回転させながら、支持基材118上に、ロールの熱で溶融したコンパウンド117を塗工する。支持基材118としては、例えばシリコーン処理ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。さらに、消泡剤を用いるか、加熱真空脱泡を行うことによって、塗工され展開されたコンパウンド117の層中に気泡が残らないよう、充分に脱泡処理することが好ましい。或いは、支持基材118上に塗工するのではなく、押出成型や射出成形によって溶融したコンパウンド117をシート状に成型しながら支持基材118上に押し出すことによって、支持基材118上にグリーンシート119を成形することもできる。
【0103】
図14に示す実施形態では、スロットダイ120を用いてコンパウンド117の塗工を行うようにしている。このスロットダイ方式によるグリーンシート119の形成工程では、塗工後のグリーンシート119のシート厚みを実測し、その実測値に基づいたフィードバック制御により、スロットダイ120と支持基材118との間のニップ間隙を調節することが望ましい。この場合において、スロットダイ120に供給する流動性コンパウンド117の量の変動を極力低下させ、例えば±0.1%以下の変動に抑え、さらに塗工速度の変動も極力低下させ、例えば±0.1%以下の変動に抑えることが望ましい。このような制御によって、グリーンシート119の厚み精度を向上させることが可能である。なお、形成されるグリーンシート119の厚み精度は、例えば1mmといった設計値に対して、±10%以内、より好ましくは±3%以内、さらに好ましくは±1%以内とすることが好ましい。カレンダーロール方式では、カレンダー条件を同様に実測値に基づいてフィードバック制御することで、支持基材118に転写されるコンパウンド117の膜厚を制御することが可能である。
【0104】
グリーンシート119の厚みは、0.05mm〜20mmの範囲に設定することが望ましい。厚みを0.05mmより薄くすると、必要な磁石厚みを達成するために、多層積層しなければならなくなるので、生産性が低下することになる。
【0105】
次に、上述したホットメルト塗工によって支持基材118上に形成されたグリーンシート119から所望の磁石寸法(たとえば、
図1(a)の永久磁石ユニット1、又は永久磁石ユニット1に含まれる永久磁石片10a、10b)に対応する寸法に切り出された加工片を作成する。加工片の寸法は、後述する焼結工程における寸法の縮小を見込んで、焼結工程後に所定の磁石寸法が得られるように定める。加工片は、必要な方向に磁場が印加されることにより、加工片に含まれる磁石材料粒子の磁化容易軸が磁場の方向に配向される。具体的に述べると、加工片は、該加工片に対応する形状のキャビティを有する磁場印加用型内に収容され、加熱することにより加工片に含まれるバインダーを軟化させる。それによって、磁石材料粒子はバインダー内で回動できるようになり、その磁化容易軸を平行磁場に沿った方向に配向させることができる。
【0106】
加工片を加熱するための温度及び時間は、用いるバインダーの種類及び量によって異なるが、例えば40〜250℃で0.1〜60分とする。いずれにしても、加工片内のバインダーを軟化させるためには、加熱温度は、用いられるバインダーのガラス転移点又は流動開始温度以上の温度とする必要がある。加工片を加熱するための手段としては、例えばホットプレートによる加熱、又はシリコーンオイルのような熱媒体を熱源に用いる方式がある。磁場印加における磁場の強さは、5000[Oe]〜150000[Oe]、好ましくは、10000[Oe]〜120000[Oe]とすることができる。その結果、加工用片に含まれる磁石材料結晶の磁化容易軸が、平行磁場に沿った方向に平行に配向される。この磁場印加工程では、複数個の加工片に対して同時に磁場を印加する構成とすることもできる。このためには、複数個のキャビティを有する型を使用するか、或いは、複数個の型を並べて、同時に平行磁場を印加すれば良い。加工片に磁場を印加する工程は、加熱工程と同時に行っても良いし、加熱工程を行った後であって加工片のバインダーが凝固する前に行っても良い。
【0107】
次に、磁場印加工程により磁石材料粒子の磁化容易軸が平行配向された加工片を、磁場印加用型から取り出し、必要な形状の最終成形用型内に移して、焼結処理用加工片に成形する。磁石材料粒子の磁化容易軸が配向された配向後の焼結処理用加工片を、大気圧、或いは、大気圧より高い圧力又は低い圧力(例えば、1.0Pa又は1.0MPa)に調節した非酸化性雰囲気において、バインダー分解温度で数時間〜数十時間(例えば5時間)保持することにより仮焼処理を行う。この処理では、水素雰囲気又は水素と不活性ガスの混合ガス雰囲気を用いることが推奨される。水素雰囲気のもとで仮焼処理を行う場合には、仮焼中の水素の供給量は、例えば5L/minとする。仮焼処理を行うことによって、バインダーに含まれる有機化合物を、解重合反応、その他の反応によりモノマーに分解し、飛散させて除去することが可能となる。すなわち、焼結処理用加工片に残存する炭素の量を低減させる処理である脱カーボン処理が行われることとなる。また、仮焼処理は、焼結処理用加工片内に残存する炭素の量が2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下とする条件で行うことが望ましい。それによって、その後の焼結処理で焼結処理用加工片の全体を緻密に焼結させることが可能となり、残留磁束密度及び保磁力の低下を抑制することが可能になる。なお、上述した仮焼処理を行う際の加圧条件を大気圧より高い圧力とする場合には、圧力は15MPa以下とすることが望ましい。ここで、加圧条件は、大気圧より高い圧力、より具体的には0.2MPa以上とすれば、特に残存炭素量軽減の効果が期待できる。
【0108】
バインダー分解温度は、バインダー分解生成物および分解残渣の分析結果に基づき決定することができる。バインダーの種類により異なるが、200℃〜900℃、より好ましくは400℃〜600℃、例えば450℃とすれば良い。
【0109】
上述の仮焼処理においては、一般的な希土類磁石の焼結処理と比較して、昇温速度を小さくすることが好ましい。具体的には、昇温速度を2℃/min以下、例えば1.5℃/minとすることにより、好ましい結果を得ることができる。従って、仮焼処理を行う場合には、2℃/min以下の所定の昇温速度で昇温し、予め設定された設定温度(バインダー分解温度)に到達した後に、該設定温度で数時間〜数十時間保持することにより仮焼処理を行う。このように、仮焼処理において昇温速度を小さくすることによって、焼結処理用加工片内の炭素が急激に除去されることがなく、段階的に除去されるようになるので、十分なレベルまで残量炭素を減少させて、焼結後の焼結体の密度を上昇させることが可能となる。すなわち、残留炭素量を減少させることにより、永久磁石中の空隙を減少させることができる。上述のように、昇温速度を2℃/min以下程度とすれば、焼結後の焼結体の密度を98%以上(7.40g/cm
3以上)とすることができ、着磁後の磁石において高い磁石特性を達成することが期待できる。
【0110】
続いて、仮焼処理によって仮焼された焼結処理用加工片を焼結する焼結処理が行われる。焼結処理としては、真空中での無加圧焼結法を採用することもできるが、本実施形態では、焼結処理用加工片を配向方向(磁化容易軸と並行な方向)に対して垂直な方向に一軸加圧した状態で焼結する一軸加圧焼結法を採用することが好ましい。この方法では、必要な永久磁石又は永久磁石片の形状と同じ形状のキャビティを有する焼結用型内に焼結処理用加工片を装填し、型を閉じて、加圧しながら焼結を行う。この加圧焼結技術としては、例えば、ホットプレス焼結、熱間静水圧加圧(HIP)焼結、超高圧合成焼結、ガス加圧焼結、放電プラズマ(SPS)焼結等、公知の技術のいずれを採用しても良い。特に、一軸方向に加圧可能であるホットプレス焼結を用いることが好ましい。
【0111】
なお、ホットプレス焼結で焼結を行う場合には、加圧圧力を、例えば0.01MPa〜100MPaとし、数Pa以下の真空雰囲気で900℃〜1100℃まで5〜30℃/分の昇温速度で温度上昇させ、その後5分保持することが好ましい。次いで冷却し、再び300℃〜1000℃に昇温して2時間、その温度に保持する熱処理を行う。このような焼結処理の結果、焼結処理用加工片から、必要な形状の焼結体が製造される。このように、焼結処理用加工片を必要な方向に加圧した状態で焼結する一軸加圧焼結法によれば、焼結処理用加工片内の磁石材料粒子に与えられた磁化容易軸の配向が変化することを抑制することができる。
【0112】
この焼結体に対して、その中に含まれる磁石材料粒子の磁化容易軸すなわちC軸に沿って着磁が行われ、その結果、分割処理を行うための永久磁石、又は、永久磁石ユニットに含まれる永久磁石片を製造することができる。尚、焼結体の着磁には、例えば着磁コイル、着磁ヨーク、コンデンサー式着磁電源装置等の公知の手段のいずれを用いても良い。