(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
近位ばねセクション(12.1.1)は、ケース(2)に固定され、遠位ばね端部(12.1.3)は、弾性要素(12.1)の自由端として構成されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の薬物送達デバイス(1)。
弾性要素(12.1)は、プランジャ(10)が動いている間、近位プランジャセクション(10.1)が遠位ばねセクション(12.1.2)に当接するまで、第1の構成のままであることを特徴とする、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
弾性要素(12.1)は、近位プランジャセクション(10.1)が遠位ばねセクション(12.1.2)に当接したとき、第2の構成に向かって径方向外方に屈曲することを特徴とする、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善された薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の薬物送達デバイスによって実現される。
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、従属請求項に与えられる。
【0009】
本発明によれば、薬物送達デバイス、たとえば手動注射デバイスまたは自己注射器は:
− ケース内に配置され、ケース内で近位位置から遠位位置へ摺動可能なプランジャと、
− 弾性要素を含む可聴インジケータとを含み、ここで、弾性要素は、プランジャが近位位置にあるとき第1の構成にあり、弾性要素は、プランジャが近位位置から遠位位置に向かって動いている間、第2の構成に向かって径方向外方に撓み、弾性要素は、プランジャが遠位位置に向かって動くときまたは遠位位置に到達したとき第2の構成から第1の構成に向かって動き、それによって可聴の触覚信号を生成する。
【0010】
提供される薬物送達デバイスは、薬剤の全用量が使われたことを患者または使用者に示すために使用することができる可聴インジケータによって改善される。それによって、弾性要素が撓むために雑音が生成される。
【0011】
別の例示的な実施形態では、弾性要素は、最初に第2の構成にすることができる。
【0012】
例示的な実施形態では、弾性要素は、遠位ばねセクションに連結された近位ばねセクションを含む板ばねとして構成される。
【0013】
弾性要素はS字状とすることができ、それにより薬物送達の終了まで弾性要素が弛緩状態のままであることが可能になる。これにより、収納および薬物送達中に弾性要素の機械的応力をより小さくすることが有効になる。
【0014】
近位ばねセクションは、たとえばスナップ連結によってケースに固定することができ、遠位ばね端部は、弾性要素の自由端として構成される。
【0015】
さらに、遠位ばねセクションは、近位ばねセクションに対してプランジャに向かって径方向内方に屈曲することができる。遠位ばねセクションは、近位プランジャの円周を増大させるための傾斜セクションになることができる。
【0016】
例示的な実施形態では、弾性要素の遠位ばね端部は、遠位ばねセクションに対して径方向外方に屈曲したフックを含むことができる。フックは、可聴の触覚信号を生成するためにプランジャに衝突するように適用された止め部(stop area)を構成する。
【0017】
さらに例示的な実施形態では、弾性要素は、遠位プランジャセクションから径方向に隔置される。
【0018】
弾性要素は、認識可能な可聴信号を生成するために、単一の金属要素を含むことができる。
【0019】
さらに、弾性要素は、薬剤送達中、近位プランジャセクションが遠位ばねセクションに当接するまで、第1の構成のままである。
【0020】
近位プランジャセクションが遠位ばねセクションに当接し、それによって遠位ばね端部に到達したとき、弾性要素は、径方向内方に弛緩することが可能になる。その結果、遠位ばね端部は近位プランジャセクションの外周に当たり、それによって可聴信号を生成する。
【0021】
例示的な実施形態では、薬物送達デバイスは、自己注射器として構成され、自己注射器は、薬剤容器を保持するように適用されたケースと、ケースに嵌め込み式に連結されたニードルシュラウドと、ニードルシュラウドをケースに対して遠位に付勢するシュラウドばねと、薬剤容器から薬剤を送達するためにプランジャを近位位置から遠位位置に向かって付勢する駆動ばねとを含む。
【0022】
さらに例示的な実施形態では、ケースは、ケースに対する薬剤容器の軸方向位置を支持するシリンジサポートを含み、シリンジサポートは、少なくとも2つの支持アームを含む。特に、支持アームは、異なる長さを有するように構成され、一方の支持アームは、他方の支持アームより長い。
【0023】
弾性要素は、支持アームの1つから遠位に延びるように、シリンジサポートに連結することができる。
【0024】
本発明のさらなる適用可能範囲は、以下に記載する詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正は、この詳細な説明から当業者には明らかになるため、本発明の例示的な実施形態を示す詳細な説明および特有の例は、例示のみを目的として記載されていることを理解されたい。
【0025】
本発明は、以下に記載する詳細な説明および添付の図面からより完全に理解されよう。詳細な説明および添付の図面は、例示のみを目的として記載されており、したがって本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
対応する部材は、すべての図において同じ参照記号で印付けられている。
【0028】
図1は、本発明による薬物送達デバイス1の例示的な実施形態の概略斜視部分断面図を示す。
【0029】
図示の例示的な実施形態では、薬物送達デバイス1は、自己注射デバイスとして構成される。
【0030】
薬物送達デバイス1は、前方ケース2.1および後方ケース2.2を有するケース2を含み、近位端から遠位端に向かって延びる長手方向軸Aを有する。ケース2は、シリンジなどの薬剤容器3を保持するように適用される。以下、薬剤容器を「シリンジ3」と呼ぶ。シリンジ3は、薬剤Mを収容する充填済みシリンジとすることができ、シリンジ3の遠位端には、針4が配置される。別の例示的な実施形態では、薬剤容器3は、薬剤Mを含み、取り外し可能な針に係合(たとえば、ねじ山、スナップ、摩擦などによる)するカートリッジとすることができる。図示の例示的な実施形態では、シリンジ3はケース2内に保持されており、近位端でシリンジサポート13によって支持されている。シリンジサポート13については、
図3でさらに説明する。
【0031】
薬物送達デバイス1は、針4に連結された保護ニードルシース5をさらに含む。たとえば、保護ニードルシース5は、針4に着脱可能に連結される。保護ニードルシース5は、ゴムのニードルシースまたは剛性のニードルシースとすることができ、剛性のニードルシースは、ゴムおよび全体的または部分的なプラスチックシェルから構成される。
【0032】
シリンジ3を近位方向Pに封止し、シリンジ3内に収容された薬剤Mを針4を通って変位させるために、ストッパ6が設けられ、シリンジ3内に配置される。
【0033】
ケース2にはニードルシュラウド7が嵌め込み式に連結され、ニードルシュラウド7は、針4が覆われるケース2に対する第1の伸長位置と、針4が露出されるケース2に対する後退位置との間を可動である。さらに、ケース2に対してニードルシュラウド7を遠位に付勢するように、シュラウドばね8が配置される。
【0034】
図示の例示的な実施形態では、ケース2内に駆動ばね9が配置される。プランジャ10が、駆動ばね9の力をストッパ6へ送る働きをする。プランジャ10は中空であり、近位プランジャセクション10.1および遠位プランジャセクション10.2を含み、近位プランジャセクション10.1の直径は、遠位プランジャセクション10.2の直径より大きい。
図1に示すように、駆動ばね9はプランジャ10内に配置され、ケース2に対してプランジャ10を遠位に付勢する。図示されていない別の例示的な実施形態では、プランジャ10を中実とすることができ、駆動ばね9は、プランジャ10の近位端に係合することができる。
【0035】
プランジャ10は、薬剤Mをシリンジ3から針4を通って患者の体内へ駆動するために、ケース2に対して近位位置(
図1に示すように)から遠位位置(
図5に示すように)に向かって可動である。
【0036】
さらに、ニードルシュラウド7がケース2に対して後退する前にプランジャ10が解放されることを防止することができる。プランジャ10は、ニードルシュラウド7が十分に後退した後に解放されるように構成することができる。これは、プランジャ解放機構によって実現される。プランジャ解放機構について、これ以上詳細には説明しない。
【0037】
ケース2の遠位端、特に前方ケース2.1の遠位端に、キャップ11を取り外し可能に配置することができる。キャップ11は、たとえばケース2からキャップ11を捩じり取ることおよび/または引き抜くことによってキャップ11の取り外しを容易にするため、また保護ニードルシース5、ケース2、および/またはニードルシュラウド7を係合するために、把持機能(詳細には図示せず)を含むことができる。把持機能は、突起、フック、狭いセクションなど含むことができる。
【0038】
キャップ11が定位置にある限り、ニードルシュラウド7がケース2に対して後退することが防止され、それによって、たとえば出荷または包装中などに落下した場合、薬物送達デバイス1の意図しない起動が回避される。これは、シュラウドロック機構によって実現される。シュラウドロック機構について、これ以上詳細には説明しない。
【0039】
薬物送達デバイス1は、薬剤Mの送達完了を示す使用者または患者のための可聴フィードバックをもたらす少なくとも1つの可聴インジケータ12をさらに含む。言い換えれば、可聴インジケータ12は、薬剤Mの全用量が使われたことを使用者または患者に示すために設けられる。
【0040】
例示的な実施形態によれば、薬物送達デバイス1は、後方ケース2.2内に配置された1つの可聴インジケータ12を含む。
【0041】
可聴インジケータ12は、弾性要素12.1および近位プランジャセクション10.1を含む。可聴インジケータ12については、以下の
図2〜5の説明内でより詳細に説明する。
【0042】
図2は、弾性要素12.1を概略斜視図で別個に示す。
【0043】
本実施形態によれば、弾性要素12.1は、遠位ばねセクション12.1.2に連結された近位ばねセクション12.1.1を含むS字状の板ばねとして構成される。
【0044】
遠位ばねセクション12.1.2は、近位ばねセクション12.1.1から傾斜しており、プランジャ10に対する傾斜セクションを表し、遠位ばね端部12.1.3を含む。遠位ばね端部12.1.3は、フックを含む。フックは、プランジャ10の外周に衝突するように適用された止め領域を構成する。
【0045】
さらに、弾性要素12.1は、単一の金属部材を含むことができる。たとえば、単一の金属部材は、遠位ばね端部12.1.3に連結される。
【0046】
図3は、薬物送達デバイス1の駆動サブアセンブリ1.1内に組み立てられた弾性要素12.1を示す。
【0047】
駆動サブアセンブリ1.1は、薬物送達デバイス1のサブアセンブリであり、薬物送達デバイス1は、サブアセンブリの製造およびシリンジ3との最終的な組み立ての時間および位置に関する柔軟性を可能にする前方サブアセンブリ(別個に図示せず)をさらに含む。
【0048】
後方ケース2.2は、製造公差のために生じるシリンジ3の可変の長さを補償するように適用されたシリンジサポート13を含む。
【0049】
シリンジサポート13は、互いに反対側に配置されて後方ケース2.2の近位端から遠位方向Dに突出する2つの支持アーム13.1、13.2を含む。本実施形態によれば、支持アーム13.1、13.2は、長手方向軸Aに関して異なる長さを有するように構成される。特に、弾性要素12.1を配置するための空間を生み出すために、第1の支持アーム13.1は第2のアーム13.2より短い。
【0050】
図示の実施形態では、弾性要素12.1は、第1の支持アーム13.1に連結される。特に、近位ばねセクション12.1.1は、第1の支持アーム13.1に連結される。たとえば、近位ばねセクション12.1.1は、第1の支持アーム13.1の内側に配置された案内凹部内に受け入れられ、スナップ連結によって固定される。
【0051】
図1に示す薬物送達デバイス1を参照すると、近位ばねセクション12.1.1は、長手方向軸Aに対して平行に通ることができる。近位ばねセクション12.1.1は、
図3に示すように組み立てられたとき、遠位プランジャセクション10.2の外周から径方向にさらに隔置される。
【0052】
遠位ばねセクション12.1.2は、第1の支持アーム13.1の自由遠位端から遠位に突出し、近位ばねセクション12.1.1に対してプランジャ10の外周に向かって屈曲する。組み立てられた状態で、遠位ばねセクション12.1.2は、遠位プランジャセクション10.2の外周から径方向に隔置されており、長手方向軸Aから径方向内方に傾斜している。
【0053】
近位ばねセクション12.1.1が第1の支持アーム13.1に固定されているため、遠位ばね端部12.1.3は、弾性要素12.1の自由端として構成される。遠位ばね端部12.1.3上に配置されたフックは、プランジャ10の外周から離れる方へ径方向外方に屈曲する。フックの自由端は、弾性要素12.1の組み立てられた状態で、長手方向軸Aに対して平行に通る。
【0054】
組み立て後、特に収納、輸送、および通常使用中、ケース2に対するシリンジ3の軸方向位置を支持するために、シリンジサポート13は、組み立てられた状態でシリンジ3の可変の長さに対応するように径方向内方に付勢される1つまたはそれ以上の支持梁(図示せず)を含むことができる。
【0055】
図4は、プランジャ10が近位位置から遠位位置に向かって動いている間の
図1に示す薬物送達デバイス1の一部の拡大図を示す。プランジャ10の遠位への動きが、プランジャ10内に示す矢印によって示されている。
【0056】
プランジャ10が近位位置にあるとき、弾性要素12.1は第1の構成にあり、これは特に、遠位ばねセクション12.1.2が弛緩状態にあることを意味する。
【0057】
プランジャ10が近位位置から遠位位置に向かって動いている間、近位プランジャセクション10.1が遠位ばねセクション12.1.2に到達したとき、遠位ばねセクション12.1.2は径方向外方に撓む。遠位ばねセクション12.1.2は、近位プランジャセクション10.1の直径が増大するために、径方向外方に撓む。弾性要素12.1の撓みは、径方向外方を指すさらなる矢印によって示されている。
【0058】
遠位ばねセクション12.1.2は、
図5に示すように、近位プランジャセクション10.1が遠位ばねセクション12.1.2を遠位方向Dに通過するまで撓む。
【0059】
図5は、薬物送達デバイス1の概略断面図を示し、プランジャ10は遠位位置にある。
【0060】
遠位ばね端部12.1.3がプランジャ10から離れる方へ径方向外方に屈曲するため、弾性要素12.1は、第2の構成に動くことが可能になる。第2の構成で、付勢された遠位ばねセクション12.1.2は径方向内方に弛緩するが、そのとき遠位ばね端部12.1.3は、依然として長手方向軸Aに対して近位プランジャセクション10.1と同じ平面にある。遠位ばね端部12.1.3は、近位プランジャセクション10.1の外周に当たり、それによって薬剤Mの全用量が使われたことを使用者に示すために可聴信号として雑音をもたらす。遠位ばね端部12.1.3の衝突は、径方向内方を指す矢印によって示されている。当たったときの雑音は、薬剤Mの全用量が使われたことを使用者に示す可聴インジケーション信号を生成する。
【0061】
可聴インジケータ12の適用は、自己注射デバイスに限定されるものではないことが、当業者には容易に理解される。代わりに、可聴インジケータ12は、手動式の薬物送達デバイス1でも同様に、プランジャ10が遠位位置に完全に動かされたことを示すために適用することができる。
【0062】
例示的な実施形態では、薬物送達デバイス1内に挿入されたとき、弾性要素12.1は、たとえば約150mmの距離で測定すると、少なくとも100dB(A)の音量の可聴信号をもたらすことができる。試験設定において、吸音環境内でニードルシュラウド7を前方に向けて薬物送達デバイス1を台上に配置した。ニードルシュラウド7と台との間には、薬物送達デバイス1を台から音響的にデカップリングするために、エラストマ層を配置した。2つのマイクロフォン(たとえば、ROGA MI−17(IEPE))を、薬物送達デバイス1から横方向に互いに反対側に、それぞれ150mmの距離をあけて、台から170mm上に配置した。第1の試験は、使用者が右手で薬物送達デバイス1を掴んで薬物送達デバイス1を保持および操作して実行し、マイクロフォンの1つに向かって向けられた薬物送達デバイス1の一方の側を手の指で覆い、他方のマイクロフォンの方を指している反対側を手のひらで覆った。指側のマイクロフォンの可聴信号の音量は少なくとも100dB(A)であり、手のひら側のマイクロフォンの音量は100dB(A)未満であった。別の試験は、使用者が右手の指先だけで薬物送達デバイス1を保持および操作して実行し、手のひらを薬物送達デバイス1とマイクロフォンの1つとの間に配置したが、手のひらで薬物送達デバイス1には接触しなかった。両方のマイクロフォンによって得られた可聴信号の音量は少なくとも100dB(A)であり、手のひら側のマイクロフォンによって検出された音量は、他方のマイクロフォンによって検出された音量よりわずかに小さかった。
【0063】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0064】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0065】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0066】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0067】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0068】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0069】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン−4(Exendin−4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC−2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034.MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド(Exenatide)−XTENおよびグルカゴン−Xtenである。
【0070】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0071】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0072】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0073】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG−F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0074】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)
2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0075】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0076】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0077】
例示的な抗体は、アンチPCSK−9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL−6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL−4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0078】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0079】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1〜C6−アルキル基、場合により置換されたC2〜C6−アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10−アリル基、または場合により置換されたC6〜C10−ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0080】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0081】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。