(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、上述したAPMやAGTにおいても同様に高速走行への要求が高まっている。
【0006】
そこで本発明では、走行時に軌道によって案内される新交通システムにおいて、曲線部での乗客の乗り心地を向上しつつ、曲線部を高速走行可能な台車、及びこの台車を備えた車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様の台車は、軌道の走行路面上を走行する走行輪と、車体の下方に設けられて前記走行輪が取り付けられた車軸と、前記車軸を支持する台車本体と、前記軌道によって案内されることが可能であり、前記台車本体に鉛直方向に沿う旋回軸線回りに旋回可能に設けられた案内装置と、前記案内装置が前記軌道の曲線部に沿うように旋回した際、該案内装置の旋回に対応して前記走行輪を操舵する操舵装置と、前記案内装置に接続されて、前記案内装置の旋回に応じて、前記車体における前記曲線部の内側に対して、該車体の外側が上方に向かう傾斜力を発生させる傾斜装置と、
前記車体を下方から支持する枕ばねとをさらに備え、前記傾斜装置は、前記枕ばねを下方から支持する枕ばね受と、上部が前記車軸及び前記枕ばね受のうちの一方に走行方向に沿う回転軸線回りに回転可能に接続され、下部が前記車軸及び前記枕ばね受のうちの他方に走行方向に沿う回転軸線回りに回転可能に接続され、前記台車幅方向に離れて一対設けられ、かつ、上部から下部に向かって前記台車幅方向に互いに離れるように傾斜して配置されたリンク部材と、前記案内装置と前記車体とを接続し、前記案内装置と前記車体との接続部分で前記案内装置の旋回力を前記台車幅方向へ向かう力として該車体に伝達することで、前記傾斜力を発生可能な傾斜誘導部材と、を有する。
【0008】
本態様では、案内装置が軌道の曲線部に沿って旋回して走行輪を操舵する。これによって台車が曲線部を走行可能となっている。そして、この案内装置の旋回動作に伴って車体を曲線部の内側に対して外側を上方に持ち上げることで、案内装置に接続された傾斜装置という機械的な構成によって車体を曲線部の内側に向かって、台車幅方向に傾斜させることができる。よって、車両が曲線部を走行する際の遠心力を、車体の傾斜によって打ち消すことが可能となる。
また、曲線部を走行する際に傾斜誘導部材によって案内装置の旋回力の一部が車体に伝達されて車体が曲線部の外側に向かって押されるか、若しくは引っ張られる。この際、枕ばねを通じて枕ばね受も車体と同じように曲線部の外側に向かって台車幅方向に移動しようとする。すると、枕ばね受に接続された一対のリンク部材の下部も、枕ばね受の移動に伴って曲線部の外側に向かって台車幅方向に移動しようとする。一対のリンク部材は下部に向かって前記台車幅方向に互いに離れるように傾斜しているため、曲線部の内側に位置するリンク部材の下部が曲線部の外側に向って移動する際、この下部は下方に移動する。一方で曲線部の外側に位置するリンク部材の下部が曲線部の外側に向って移動する際、この下部は上方に移動する。この結果、枕ばね受における曲線部の外側の部分が、内側の部分に比べて上方に持ち上げられ、車体も、曲線部の内側に対して外側を上方に持ち上げるようにして傾斜させることができる。このように、傾斜誘導部材が車体を押し引きする動作を車体傾斜の動作のきっかけとすることができ、案内装置の旋回動作に応じて、リンク部材という簡易な構造で車体を傾斜させることが可能となる。
また車両が軌道の曲線部を走行している状態から、軌道の直線部を走行している状態となる場合、案内装置が直線部に沿って元に戻るように旋回する。この際、傾斜誘導部材が車体と案内装置とを接続していることで傾斜誘導部材が案内装置に引っ張られるか、若しくは押されて、傾斜した車体を傾斜していない元の状態に戻すように車体に力を作用させることができる。よって曲線部を通過した後に速やかに車体の傾斜を終了することができ、さらなる乗り心地の向上につながる。
【0009】
また、上記態様の台車は、前記車体を下方から支持する枕ばねをさらに備え、前記傾斜装置は、前記枕ばねを下方から支持する枕ばね受と、上部が前記車軸及び前記枕ばね受のうちの一方に走行方向に沿う回転軸線回りに回転可能に接続され、下部が前記車軸及び前記枕ばね受のうちの他方に走行方向に沿う回転軸線回りに回転可能に接続され、前記台車幅方向に離れて一対設けられ、かつ、上部から下部に向かって前記台車幅方向に互いに離れるように傾斜して配置されたリンク部材と、前記案内装置と前記車体とを接続し、前記案内装置と前記車体との接続部分で前記案内装置の旋回力を前記台車幅方向へ向かう力として該車体に伝達することで、前記傾斜力を発生可能な傾斜誘導部材と、を有していてもよい。
【0010】
この場合、曲線部を走行する際に傾斜誘導部材によって案内装置の旋回力の一部が車体に伝達されて車体が曲線部の外側に向かって押されるか、若しくは引っ張られる。この際、枕ばねを通じて枕ばね受も車体と同じように曲線部の外側に向かって台車幅方向に移動しようとする。すると、枕ばね受に接続された一対のリンク部材の下部も、枕ばね受の移動に伴って曲線部の外側に向かって台車幅方向に移動しようとする。一対のリンク部材は下部に向かって前記台車幅方向に互いに離れるように傾斜しているため、曲線部の内側に位置するリンク部材の下部が曲線部の外側に向って移動する際、この下部は下方に移動する。一方で曲線部の外側に位置するリンク部材の下部が曲線部の外側に向って移動する際、この下部は上方に移動する。この結果、枕ばね受における曲線部の外側の部分が、内側の部分に比べて上方に持ち上げられ、車体も、曲線部の内側に対して外側を上方に持ち上げるようにして傾斜させることができる。このように、傾斜誘導部材が車体を押し引きする動作を車体傾斜の動作のきっかけとすることができ、案内装置の旋回動作に応じて、リンク部材という簡易な構造で車体を傾斜させることが可能となる。
また車両が軌道の曲線部を走行している状態から、軌道の直線部を走行している状態となる場合、案内装置が直線部に沿って元に戻るように旋回する。この際、傾斜誘導部材が車体と案内装置とを接続していることで傾斜誘導部材が案内装置に引っ張られるか、若しくは押されて、傾斜した車体を傾斜していない元の状態に戻すように車体に力を作用させることができる。よって曲線部を通過した後に速やかに車体の傾斜を終了することができ、さらなる乗り心地の向上につながる。
【0011】
また上記態様では、前記傾斜誘導部材は、前記車体と前記案内装置とのうちの一方が接続されたロッド部と、前記ロッド部の延びる方向に相対移動可能に該ロッド部を支持し、前記車体と前記案内装置とのうちの他方が接続されたロッド支持部と、前記ロッド支持部に設けられて、前記案内装置が旋回した際に、前記一方と前記他方とが旋回前の相対位置に戻るように復元力を前記ロッド部に付与する弾性部材と、を有していてもよい。
【0012】
このように曲線部で弾性部材によって、曲線部に突入する前、若しくは曲線部を通過した後には、復元力によって案内装置が旋回する前の状態、即ち車体が傾斜しない状態に自動的に戻ろうとする。よって曲線部を通過後にも車体が傾斜した状態を維持してしまうことを回避できる。
また、案内枠の旋回力が大きくとも弾性部材の変形によって、車体が必要以上に大きく傾いてしまうことを回避できる。
また、直線部を走行する際の振動によって小刻みに案内装置が旋回してしまった場合に、復元力(弾性力)によって案内装置の旋回を回避することが可能となる。よって、弾性部材の弾性力を適切に設定することで、曲線部ではない位置で車体が不意に傾斜してしまうことを回避することが可能となる。
【0013】
また上記態様では、前記傾斜誘導部材は、前記車体に設けられて前記台車本体を前記車体に接続する懸架枠と、前記案内装置との間を接続していてもよい。
【0014】
このように元々設けられた懸架枠を用いて、車体に対して案内装置の旋回力を伝達し、車体を傾斜させることができるので、車体傾斜機能追加に伴う台車への部品追加を最小限に抑え、より簡易な構造で車体を傾斜させることが可能となる。
【0015】
本発明の他の態様の台車は、
軌道の走行路面上を走行する走行輪と、車体の下方に設けられて前記走行輪が取り付けられた車軸と、前記車軸を支持する台車本体と、前記軌道によって案内されることが可能であり、前記台車本体に鉛直方向に沿う旋回軸線回りに旋回可能に設けられた案内枠を有する案内装置と、前記案内装置が前記軌道の曲線部に沿うように旋回した際、該案内装置の旋回に対応して前記走行輪を操舵する操舵装置と、前記案内装置に接続されて、前記案内装置の旋回に応じて、前記車体における前記曲線部の内側に対して、該車体の外側が上方に向かう傾斜力を発生させる傾斜装置と、前記車体を下方から支持し、前記台車幅方向に一対が設けられた枕ばねとしての空気ばねと、前記空気ばね内の空気の給排気を行う高さ調整弁と、をさらに備え、前記傾斜装置は、前記案内装置に接続されるとともに、該案内装置の旋回に応じて前記曲線部の内側の内端部に対して前記外側の外端部が上方に持ち上がるリンク部材と、前記リンク部材の前記内端部と該内端部に対応する前記高さ調整弁とを接続し、前記リンク部材の前記外端部と該外端部に対応する前記高さ調整弁とを接続する一対の調整ロッドと、を有し、
前記リンク部材は、前記案内枠に固定された支持部と、前記支持部に交差するように配置されて前記台車幅方向に延びるリンク本体と、前記リンク本体と前記支持部とを接続する接続ロッドとを有し、前記リンク本体は、前記台車幅方向に延びる本体部と、前記本体部の前記台車幅方向の中央の位置から上方に延びる突出部とを有して、走行方向から見て逆T字状をなし、前記支持部は、前記案内枠から前記鉛直方向に沿って上方に延びており、前記本体部の前記台車幅方向の中央の位置よりも該台車幅方向にずれた位置に配置されており、前記接続ロッドは幅方向に延び、前記支持部の上端と前記突出部の上端とを接続しており、前記案内枠の旋回によって前記リンク部材が動作し、前記調整ロッドが持ち上がることで前記高さ調整弁によって前記空気ばねへ給気され、前記調整ロッドが下がることで前記高さ調整弁によって前記空気ばねから排気される。
【0016】
このように、案内装置の旋回に応じてリンク部材を台車幅方向に傾けることで、高さ調整弁によって空気ばねの高さ調整を行うことができる。よって、案内装置に接続されたリンク部材という機械的な構成によって車体を傾斜させることができる。よって、曲線部を走行する際の遠心力を車体の傾斜によって打ち消すことが可能となる。
【0017】
さらに上記態様では、前記車軸は、前記走行輪を取り付けて該走行輪とともに該走行輪の操舵軸線となる前記鉛直方向に沿う中心軸線回りに回転する取付軸を有し、前記操舵装置は、前記取付軸から走行方向に延び、該走行輪の操舵に伴って前記取付軸における中心軸線回りに回転可能な一対のステアリングアームと、前記一対のステアリングアームの各々と前記案内装置の接続部とを接続し、前記案内装置及び前記ステアリングアームに対して前記鉛直方向に沿う中心軸線回りに回転可能なステアリングロッドと、を有し、前記旋回軸線と前記接続部との走行方向における距離は、前記ステアリングアームの長さ寸法よりも長くてもよい。
【0018】
このような構成により、旋回軸線と接続部との距離が、ステアリングアームの長さ寸法と同程度となっている場合に比べ、より大きく走行輪を操舵することができる。即ち、案内装置の旋回に応じて、ステアリングロッドをより大きく曲線部の内側に移動させることができ、大きく走行輪を操舵することができる。この結果、曲線部の接線方向に向かう位置よりも大きく走行輪を操舵させ、走行輪にスリップアングルが付き、走行路面と走行輪との間にコーナーリングフォースを生じさせることができる。この結果、車体傾斜による高速走行によって、軌道から案内装置が受ける反力を低減できる。よって案内装置の耐久性を大きくする必要が無くなり、案内装置の大型化等を避けることができる。
【0019】
また、本発明の第二の態様の車両は、上記態様の台車と、前記台車によって下方から支持される車体と、を備えている。
【0020】
このように車両が上記態様の台車を備えることで、案内装置の旋回動作に伴って車体を曲線部の内側に対して外側を上方に持ち上げ、車体を曲線部の内側に向かって、案内装置に接続された傾斜装置という機械的な構成によって傾斜させることができる。よって、曲線部を走行する際の遠心力を車体の傾斜によって打ち消すことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
上記の台車、及び車両によれば、走行時に軌道によって案内される軌道系交通システムにおいて、曲線部での乗客の乗り心地を向上しつつ、曲線部を高速走行可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る車両1について図面を参照して説明する。
図1から
図3に示すように、本実施形態に係る車両1は、軌道100に設けられた案内レール120によって案内されながら軌道100上を走行する新交通システムの車両である。
本実施形態では、一例として車両1は、軌道100の幅方向外側となる両側に軌道100が延びる方向に沿って延びる案内レール120が設けられた側方案内軌条式(サイドガイド方式)の新交通システムの車両となっている。
【0024】
また、車両1は、軌道100の走行路面102上を走行する台車2と、台車2に支持された車体3とを備えている。
ここで、車両1は
図1の矢印Xに示す方向(
図1の紙面の右方)に走行する。以下では、車両1の走行方向に向かって前方、後方を前後とし、この走行方向前方に向かって左方、右方を台車幅方向(以下、単に幅方向とする)の左右とする。
【0025】
台車2は車体3の下方で、本実施形態では走行方向の前後に車両一両当たりで二つ設けられている。
【0026】
各々の台車2は、車体3の下方に設けられた車軸10と、車軸10に取り付けられた走行輪11と、車軸10を支持する台車本体12と、台車本体12に設けられた案内装置13と、案内装置13によって走行輪11を操舵可能とする操舵装置14と、案内装置13に接続されて車体3を幅方向に傾斜させる傾斜装置15とを備えている。
また台車2は、車体3との間に設けられた枕ばね16(例えば空気ばね)を、幅方向に離れた位置に一台車当たり二つ備えている。
【0027】
車軸10は、幅方向の端部に幅方向左右の両側に一対に設けられたキングピン21と、キングピン21に設けられた取付軸22とを有している。
【0028】
走行輪11は、取付軸22を介して車軸10に取り付けられたゴム製のタイヤであり、取付軸22とともにキングピン21回りに回転可能となっている。
【0029】
台車本体12は車軸10を回転可能に支持するとともに、車体3の台枠に固定されて下方に延びる懸架枠4に、牽引ロッド5を介して取り付けられている。
【0030】
案内装置13は、幅方向左右の両端に案内輪30を有する案内枠25と、案内枠25を鉛直方向に沿う旋回軸線O回りに旋回可能に台車本体12に取り付ける旋回軸受31とを有している。
案内枠25は、主に縦梁26と横梁27とを有している。横梁27は、走行輪11を前後から挟み込むように二つ設けられている。そして、各々の横梁27の幅方向左右の両端に一つずつ案内輪30が設けられている。これら案内輪30は、鉛直方向に沿って延びる軸線を中心として回転可能となっており、車両1の走行に伴って案内レール120に接触し、案内レール120の側面上を転動する。
【0031】
図4に示すように車両1が軌道100の曲線部101を走行する際には、曲線部101に沿って案内枠25が旋回軸線O回りに旋回する。即ち、車両1の前側の台車2Aでは、案内輪30が曲線部101の外側の案内レール120から反力を受けて、外側の案内輪30が内側の案内輪30に比べて前方に押し出されるようにして案内枠25が旋回する。一方で、車両1の後側の台車2Bでは、案内輪30が曲線部101の内側の案内レール120から反力を受けて、内側の案内輪30が外側の案内輪30に比べて前方に押し出されるようにして案内枠25が旋回する。
【0032】
以下、前側の台車2Aと後側の台車2Bとは、車体3の走行方向の中央位置を基準に反転させた状態で設けられているので、代表して前側の台車2Aについて主に説明する。
【0033】
台車2Aの操舵装置14は、車軸10よりも車両1の走行方向の前側に設けられている。操舵装置14は、各々の取付軸22から走行方向に延びる一対のステアリングアーム34と、ステアリングアーム34の各々と案内枠25とを、案内枠25の幅方向の略中央位置の接続部25aで接続する一対のステアリングロッド35とを備えている。
【0034】
台車2Aの操舵装置14における各々のステアリングアーム34は、鉛直方向に沿うキングピン21の中心軸線(操舵軸線)を回転中心として走行輪11と一体的に揺動回転する。ステアリングアーム34は、取付軸22に対して回転可能となるように取付軸22にピン接合されており、車両1が軌道100の直線部を走行している状態で、取付軸22から走行方向の前方に延びるように設けられている。
【0035】
ステアリングロッド35は、一端部でステアリングアーム34の前側の端部とピン接合されている。また、ステアリングロッド35は、車両1が軌道100の直線部を走行している状態で、ステアリングアーム34から幅方向に延びて設けられている。そしてステアリングロッド35の他端部は、案内枠25の接続部25aに鉛直方向に沿う中心軸線回りに回転可能にピン接合されている。本実施形態では、旋回軸線Oと接続部25aとの走行方向の距離dは、ステアリングアーム34の長さ寸法Lよりも長くなっている。ここで、旋回軸線Oと接続部25aとの走行方向の距離dとは、横梁27が延びる方向に沿う仮想線VL1と、旋回軸線Oを通り仮想線VL1に平行な仮想線VL2との間の距離を言う。
【0036】
そして案内枠25が旋回軸線Oを中心として旋回すると、この旋回動作に伴ってステアリングロッド35の位置が変位し、ステアリングアーム34を介して取付軸22を、キングピン21を中心として回転させ、走行輪11を操舵するようになっている。
【0037】
傾斜装置15は、枕ばね16を下方から支持する枕ばね受41と、枕ばね受41と車軸10とを接続するリンク部材42と、懸架枠4と案内枠25とを接続する傾斜誘導部材43とを備えている。
【0038】
枕ばね受41は、車軸10を上方から覆うように設けられている。枕ばね受41は車体3の動作に伴って動作するようになっている。
【0039】
リンク部材42は、上部が車軸10に走行方向に沿う回転軸線回りに回転可能に接続され、下部が枕ばね受41に走行方向に沿う回転軸線回りに回転可能に接続されている。リンク部材42は幅方向に離れて一対設けられ、かつ、上部から下部に向かって幅方向に互いに離れるように傾斜して延びている。詳細な説明は省略するが、リンク部材42の上部は車軸10から上方に突出する受け部10aに接続されている。本実施形態では、走行方向に車軸10を挟んで二対のリンク部材42が設けられている。
【0040】
傾斜誘導部材43は、懸架枠4と案内枠25とを接続するロッド部44及びロッド支持部45と、ロッド部44に設けられた弾性部材46とを有している。
【0041】
ロッド部44は、前側の台車2Aでは、幅方向に延びるとともに、懸架枠4に設けられた受け部4aにロッド部44の一端が接続されている。ロッド部44は、懸架枠4に対して、鉛直方向に沿う軸線回りに回転可能に設けられている。
【0042】
ロッド支持部45は、ロッド部44の延びる方向に、ロッド部44と相対移動可能に設けられている。例えばロッド支持部45は筒状をなし、ロッド部44の他端を収容している。ロッド支持部45の一端は、車軸10よりも走行方向の後側の横梁27に接続されている。ロッド支持部45は、横梁27に対して、鉛直方向に沿う軸線回りに回転可能に設けられている。
前側の台車2Aでは、ロッド支持部45は、案内枠25の旋回に伴ってロッド部44とともに懸架枠4を曲線部101の外側に押す。後側の台車2Bでは、ロッド支持部45は、案内枠25の旋回に伴ってロッド部44とともに懸架枠4を曲線部101の外側に引っ張る。
【0043】
弾性部材46はコイルバネ等であって、ロッド支持部45内に設けられている。弾性部材46は、案内枠25が旋回した際に、懸架枠4に接続されたロッド支持部45の一端と横梁27に接続されたロッド部44の一端との相対位置が旋回前の位置に戻るように、ロッド部44に復元力を付与する。即ち、前側の台車2Aでは曲線部101の内側に向かって横梁27を押す復元力が作用し、後側の台車2Bでは曲線部101の内側に向かって横梁27を引っ張る復元力が作用する。これにより傾斜誘導部材43は復元ばねとして機能する。
【0044】
枕ばね16は、その上部が車体3の台枠に取り付けられ、下部が枕ばね受41に取り付けられている。この枕ばね16は、車体3に対する走行輪11の相対的な上下移動を緩和する。
【0045】
次に、
図4及び
図5を参照して、傾斜装置15によって車体3を傾斜させる様子について説明する。
図5は前側の台車2Aを走行方向前方から見た図であって、説明のため一部の構成部品が省略されている。
図4に示すように曲線部101で案内枠25が旋回すると、傾斜誘導部材43が懸架枠4を曲線部101の外側に押す。即ち、車両1が曲線部101を走行する際に傾斜誘導部材43によって案内枠25の旋回力の一部が懸架枠4を介して車体3に伝達される。この結果、懸架枠4を介して車体3が曲線部101の外側に向かって傾斜誘導部材43によって押されることになる。
【0046】
この際、枕ばね16を通じて枕ばね受41も車体3と同じように曲線部101の外側に向かって幅方向に移動しようとする。すると
図5に示すように、枕ばね受41に接続されたリンク部材42の下部も、枕ばね受41の移動に伴って曲線部101の外側に向かって幅方向に移動しようとする。
【0047】
一対のリンク部材42は下部に向かって幅方向に互いに離れるように傾斜して延びているため、曲線部101の内側(
図5の紙面に向かって左側)に位置するリンク部材42の下部が曲線部101の外側(
図5の紙面に向かって右側)に向って移動する際、この下部は下方に移動する。一方で曲線部101の外側(
図5の紙面に向かって右側)に位置するリンク部材42の下部が曲線部101の外側(
図5の紙面に向かって右側)に向って移動する際、この下部は上方に移動する。
【0048】
この結果、枕ばね受41における曲線部101の外側の部分が、内側の部分に比べて上方に持ち上げられることで、枕ばね16を通じて車体3における曲線部101の内側部分に対して外側部分を上方に持ち上げる。これにより曲線部101を走行する際には、車体3が曲線部101の内側に倒れるように幅方向に傾斜する。
【0049】
また走行方向後側の台車2Bでは、曲線部101で案内枠25が旋回すると、傾斜誘導部材43が懸架枠4を幅方向外側に引っ張り、この結果、枕ばね受41における曲線部101の外側の部分が、内側の部分に比べて上方に持ち上げられることで、枕ばね16を通じて車体3における曲線部101の内側の部分に対して外側の部分を上方に持ち上げる。即ち、曲線部101の内側に車体3が倒れるように幅方向に傾斜する。
【0050】
以上説明した本実施形態の車両1では、曲線部101を走行する際に、案内枠25が軌道100の曲線部101に沿って旋回して走行輪11が操舵される。この際、案内装置13の旋回動作に伴って車体3を曲線部101の内側に向かって倒すように、傾斜装置15という機械的な構成によって幅方向に傾斜させることができる。よって、曲線部101を走行する際の遠心力を、車体3の傾斜によって打ち消すことが可能となる。この結果、車両内の乗客が受ける左右加速度を抑制しつつ(乗り心地の悪化を抑制しつつ)、車両1が曲線部101を高速で走行可能となる。
【0051】
特に本実施形態では、傾斜誘導部材43が車体3を押す(又は引く)動作を車体傾斜の動作のきっかけとすることができ、案内枠25の旋回動作に応じて、簡易な構造で車体3を傾斜させることが可能となる。
【0052】
さらに車両1が軌道100の曲線部101を走行している状態から、軌道100の直線部を走行している状態となる場合、案内枠25が直線部に沿って元に戻るように旋回する。この際、傾斜誘導部材43が懸架枠4と案内枠25とを接続していることで、弾性部材46の復元力が車体3に作用し、傾斜した車体3を傾斜していない状態に戻すような力を車体3に与えることができる。
【0053】
よって車両1が曲線部101を通過した後に、速やかに車体3の傾斜を終了することができ、直線部でも車体3が傾斜したままの状態となってしまうことを回避でき、乗り心地の向上につながる。
【0054】
また、案内枠25の旋回力が大きくとも、弾性部材46の変形によって旋回力を吸収でき、車体3が必要以上に大きく傾くことを回避できる。
【0055】
また、直線部を走行する際の振動によって小刻みに案内枠25が旋回してしまった場合に、弾性部材46の復元力(弾性力)によって案内装置13の旋回を抑制することが可能となる。よって、弾性部材46の弾性力の大きさを適切に設定することで、曲線部101ではない位置で車体3が不意に傾斜してしまうことを回避できる。
【0056】
また傾斜誘導部材43のロッド支持部45は、車体3に元々設けられている懸架枠4に接続されている。よって、このように元々設けられた懸架枠4を用いて車体3に対して案内枠25の旋回力を伝達し、車体3を傾斜させることができるので、車体傾斜機能追加に伴う部品追加を最小限に抑え、より簡易な構造での車体3傾斜が可能となる。
【0057】
また本実施形態では、リンク部材42の下部が枕ばね受41に接続されている。よって、曲線部101の走行を終了した後には、幅方向の片側が上方に持ち上がった状態の枕ばね受41が、重力で元の状態、即ち枕ばね受41の幅方向両側が同じ高さ位置に配置された状態に戻ろうとする。よって、直線部を走行中に不意に車体3が傾斜してしまうことを回避でき、走行中の安定性を高めることができる。
【0058】
さらに本実施形態では、旋回軸線Oと接続部25aとの走行方向の距離dは、ステアリングアーム34の長さ寸法Lよりも長くなっている。よって、旋回軸線Oと接続部25aとの距離dが、ステアリングアーム34の長さ寸法Lと同程度となっている場合に比べ、より大きく走行輪11を操舵することができる。よって案内枠25の旋回に応じて、前側の台車2Aではステアリングロッド35をより大きく曲線部101の内側に移動させることができ、大きく走行輪11を曲線部101の内側に操舵することができる。また後側の台車2Bではステアリングロッド35をより大きく曲線部101の内側に移動させることができ、大きく走行輪11を曲線部101の外側に操舵することができる。
即ち、
図4に示すように、旋回軸線Oと接続部25aとの走行方向の距離dが、ステアリングアーム34の長さ寸法Lよりも長くなっている場合の走行輪(破線で示す走行輪)の操舵角よりも、本実施形態の走行輪11(実線で示す走行輪)の操舵角を大きくすることができる。
【0059】
この結果、前側の台車2Aでは曲線部101の接線方向よりも曲線部101の内側に走行輪11を操舵させ、走行輪11にスリップアングルθが付き、後側の台車2Bでは曲線部101の接線方向よりも曲線部101の外側に走行輪11を操舵させ、走行輪11にスリップアングルθが付く。この結果、走行路面102と走行輪11との間にコーナーリングフォースを生じさせることができる。ここでスリップアングルθとは、キングピン21の中心軸線が存在する位置で曲線部101の接線方向に延びる仮想線VL3と、走行輪11のタイヤ幅方向の中心線VL4とがなす角を示す。
【0060】
ここで、前側の台車2Aでは曲線部101の外側の案内輪30が案内レール120に接触し、後側の台車2Bでは曲線部101の内側の案内輪30が案内レール120に接触する。この際各々の案内輪30には案内レール120から反力が作用する。特に車体傾斜しながらの高速走行時にはこの反力が大きくなるが、上記のコーナーリングフォースによって、案内輪30が受ける反力を低減できる。よって案内輪30や案内枠25の耐久性を増加させる必要が無くなり、例えば案内装置13の大型化等を避けることができる。
【0061】
ここで、本実施形態では、懸架枠4に傾斜誘導部材43のロッド支持部45が接続されていたが、別途車体3に受け部を設け、この受け部にロッド支持部45を接続してもよい。
【0062】
さらに傾斜誘導部材43に、油圧等を用いた倍力機構を設けてもよい。
【0063】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、
図6を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、リンク部材48の接続位置が第一実施形態と異なっている。
【0064】
即ち、各々のリンク部材48の上部は枕ばね受41に、走行方向に沿う回転軸線回りに回転可能に接続され、リンク部材48の下部が車軸10に、走行方向に沿う回転軸線回りに回転可能に接続されている。リンク部材48は第一実施形態と同様に幅方向に離れて一対設けられ、かつ、上部から下部に向かって幅方向に互いに離れるように傾斜して延びている。詳細な説明は省略するが、リンク部材48の下部は、例えば車軸10から走行方向に突出する受け部10bに接続されている。
【0065】
以上説明した本実施形態の車両1によれば、第一実施形態と同様に曲線部101を走行する際に、案内枠25が軌道100の曲線部101に沿って旋回して走行輪11が操舵される。この際、案内枠25の旋回動作に伴って車体3を曲線部101の内側に向かって倒すように、傾斜装置15という機械的な構成によって車体3を幅方向に傾斜させることができる。よって、曲線部101を走行する際の遠心力を車体3の傾斜によって打ち消すことが可能となる。
【0066】
さらに、リンク部材48の上部が枕ばね受41に固定されているため、第一実施形態の場合と比べて枕ばね受41をより小さい力で動作させることが可能となる。その一方で、直線部を走行中に小刻みな振動で枕ばね受41が揺動してしまう可能性があるため、傾斜誘導部材43の弾性部材46の弾性力を適切に設定することで、このような枕ばね受41の揺動を回避することが好ましい。
【0067】
[第三実施形態]
続いて、本発明の第三実施形態について、
図7から
図9を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し詳細な説明を省略する。本実施形態では枕ばね受41が設けられていない点で第一実施形態及び第二実施形態と大きく異なっている。
【0068】
本実施形態では、台車72は、枕ばねとしての空気ばね56と、空気ばね56内の空気の給排気を行う高さ調整弁51とを備えている。
【0069】
高さ調整弁51は、各々の空気ばね56に一つずつ設けられている。高さ調整弁51は、車体3の高さを一定に保つように、輸送量の変動による車体3の重量の変動に応じて、空気ばね56に空気を供給したり、空気ばね56から空気を排出したりする。
【0070】
また傾斜装置75は、本実施形態では車軸10よりも走行方向に車端部側に、即ち、操舵装置14と同じ側に設けられている。傾斜装置75は案内枠25に接続されたリンク部材61と、リンク部材61の幅方向左右の両端部の各々と、これら両端部にそれぞれ対応する高さ調整弁51とを接続する一対の調整ロッド62とを有している。
【0071】
リンク部材61は、案内枠25の横梁27に固定された支持部64と、支持部64に交差するように配置されて幅方向に延びるリンク本体65と、リンク本体65と支持部64とを接続する接続ロッド66とを有している。
【0072】
リンク本体65は、幅方向に延びる本体部67と、本体部67の幅方向中央の位置から上方に延びる突出部68とを有して、走行方向から見て逆T字状をなしている。本体部67は台車本体12又は車軸10に対して、ピン69によって走行方向に延びる中心軸線回りに回転可能に設けられている。
【0073】
支持部64は、案内枠25の横梁27と一体に、横梁27から鉛直方向に沿って上方に延びている。支持部64はリンク本体65の本体部67の幅方向中央の位置よりも幅方向にずれた位置に配置されている。
【0074】
接続ロッド66は幅方向に延び、支持部64の上端とリンク本体65の突出部68の上端とを接続している。接続ロッド66は支持部64及び突出部68に対して走行方向に延びる中心軸線回りに回転可能に設けられている。
【0075】
各々の調整ロッド62は、鉛直方向に沿って延びている。調整ロッド62が持ち上がることで高さ調整弁51によって空気ばね56に給気され、調整ロッド62が下がることで高さ調整弁51によって空気ばね56から排気されるようになっている。
【0076】
次に、
図10を参照して、傾斜装置75によって車体3を傾斜させる様子について説明する。
図10は前側の台車72Aを走行方向前方から見た図である。説明のため一部の構成部品が省略されている。
曲線部101で案内枠25が旋回すると、支持部64が横梁27とともに曲線部101の内側(
図8の紙面に向かって下方)に移動する。すると、接続ロッド66がリンク本体65の突出部68を曲線部101の内側に押す。この結果、
図10に示すようにリンク本体65の本体部67が上記中心軸線を中心に回転し、本体部67における曲線部101の外側の端部(外端部)が、内側の端部(内端部)に比べて上方に持ち上げられる。
【0077】
すると、曲線部101の外側の調整ロッド62が上方に持ち上げられ、高さ調整弁51によって曲線部101の外側の空気ばね56に給気が行われる。高さ調整弁51は、調整ロッド62が持ち上がることで台車72に車体3が近づいたと判断し、空気ばね56に給気を行うようになっている。
また、曲線部101の内側の調整ロッド62が下方に下げられ、高さ調整弁51によって曲線部101の内側の空気ばね56から排気される。高さ調整弁51は、調整ロッド62が下がることで台車72から車体3が遠ざかったと判断し(即ち、車体3の重量が減少したと判断し)、空気ばね56から排気するようになっている。
このようにして車体3が幅方向に傾斜する。
【0078】
以上説明した本実施形態の車両1によれば、案内枠25の旋回に応じて、接続ロッド66を介してリンク部材61を幅方向に傾けることで、高さ調整弁51によって空気ばね56の高さ調整を行うことができる。即ち曲線部101の外側の空気ばね56を膨らませ、曲線部101の内側の空気ばね56を縮めることで、リンク部材61という機械的な構成によって車体3を幅方向に、曲線部101の内側に倒れるように傾斜させることができる。よって、曲線部101を走行する際の遠心力を車体3の傾斜によって打ち消すことが可能となり、車両1が曲線部101を高速で走行可能となる。
【0079】
また本実施形態の台車72は、第一実施形態及び第二実施形態の台車2と異なり、枕ばね受41を備えていない。よって部品点数を削減でき、台車72の全体をコンパクトにできる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0081】
例えば、上記の実施形態では案内輪30が案内レール120からの反力を受けて案内枠25が旋回するようになっている。しかし例えば、案内輪30が案内レール120に接触せずに走行し、曲線部101で曲線部101に沿って自動で案内枠25が旋回される自動操舵機構を有する台車に、傾斜装置15、75を設けてもよい。
【0082】
さらに、また上述の台車2、72はサイドガイド方式の台車であるとして説明したが、センターガイド方式の台車に上記の傾斜装置15、75を設けてもよい。傾斜装置15、75は幅方向に動作するだけでなく、鉛直方向に動作するものであってもよい。