特許第6899347号(P6899347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899347
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20210628BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20210628BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20210628BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20210628BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 50/552 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20210628BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20210628BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M50/197
   H01M50/50
   H01G11/10
   H01G11/82
   H01M50/184 Z
   H01M50/186
   H01M50/552
   H01M50/548
   H01M50/505
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-42897(P2018-42897)
(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公開番号】特開2019-160481(P2019-160481A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【弁理士】
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】中條 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
(72)【発明者】
【氏名】山田 正博
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 伸烈
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−232374(JP,A)
【文献】 特開2007−026723(JP,A)
【文献】 特開2005−259379(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/062204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/197
H01M 50/50
H01G 11/10
H01G 11/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電モジュールと、前記蓄電モジュールを挟持する一対の導電板と、を備え、
前記蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極及び一対の終端電極が積層された電極積層体と、前記電極積層体を封止する封止体と、を有し、
前記終端電極は、前記電極積層体の積層端に配置され、電極板と、前記電極板における前記電極積層体の内側を向く面に設けられた活物質層と、を含み、
前記封止体は、前記終端電極の縁部に設けられた樹脂部を有し、
前記導電板は、前記電極積層体の積層方向において前記終端電極と対向すると共に、前記積層方向から見て前記樹脂部と重なるように配置されている、蓄電装置。
【請求項2】
前記導電板は、前記積層方向から見て前記終端電極の縁部の全周にわたって前記樹脂部と重なるように配置されている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記電極積層体の縁部の前記積層方向における長さは、前記電極積層体の中央部の前記積層方向における長さよりも短い、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記導電板は、前記樹脂部に接触している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電装置として、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を有する、いわゆるバイポーラ型の蓄電モジュールを備えるものが知られている(特許文献1参照)。かかる蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極を積層してなる電極積層体を備えている。電極積層体の周囲には、積層方向で隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられている。封止体によってバイポーラ電極間に形成された内部空間には電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した蓄電モジュールでは、使用条件等によりバイポーラ電極間の内部空間の内圧が上昇する場合がある。内圧が上昇した場合に、電極積層体の積層端に位置する電極(以下、終端電極と称す)が積層方向に沿って電極積層体の外側に大きく変形することが考えられる。
【0005】
終端電極に過大な変形が生じると、封止体にかかる応力が増し、封止体が破断したり、封止体と終端電極との間に隙間が生じたりするおそれがある。封止体の破断や封止体と終端電極との間の隙間の形成は、電極積層体の外部への電解液の漏出の原因となり得る。
【0006】
本発明の一側面は、上記課題の解決のためになされたものであり、内圧の上昇時においても終端電極の過大な変形を抑制できる蓄電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電装置は、蓄電モジュールと、蓄電モジュールを挟持する一対の導電板と、を備え、蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極及び一対の終端電極が積層された電極積層体と、電極積層体を封止する封止体と、を有し、終端電極は、電極積層体の積層端に配置され、電極板と、電極板における電極積層体の内側を向く面に設けられた活物質層と、を含み、封止体は、終端電極の縁部に設けられた樹脂部を有し、導電板は、電極積層体の積層方向において終端電極と対向すると共に、積層方向から見て樹脂部と重なるように配置されている。
【0008】
この蓄電装置では、導電板が樹脂部と重なるように配置されている。したがって、蓄電モジュールの内圧が上昇した場合であっても、終端電極の過大な変形を導電板によって抑制できる。
【0009】
導電板は、積層方向から見て終端電極の縁部の全周にわたって樹脂部と重なるように配置されていてもよい。この場合、終端電極の過大な変形を導電板によって更に抑制することができる。
【0010】
電極積層体の縁部の積層方向における長さは、電極積層体の中央部の積層方向における長さよりも短くてもよい。この場合、終端電極の電極板における電極積層体の外側を向く面に樹脂部が設けられていたとしても、導電板を終端電極に接触させることができる。
【0011】
導電板は、樹脂部に接触していてもよい。この場合、終端電極の過大な変形を導電板によって更に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、内圧の上昇時においても終端電極の過大な変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図2】蓄電モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。
図3】参考例に係る蓄電装置における蓄電モジュールの内圧上昇時の負極終端電極の様子を示す要部拡大断面図である。
図4】参考例に係る蓄電装置における蓄電モジュールの内圧上昇時の正極終端電極の様子を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
[蓄電装置の構成]
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。同図に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、複数の蓄電モジュール4を積層してなる蓄電モジュール積層体2と、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えて構成されている。
【0016】
蓄電モジュール積層体2は、例えば、複数(本実施形態では3体)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4枚)の導電板5とによって構成されている。蓄電モジュール4は、例えば後述するバイポーラ電極14を備えたバイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状である。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0017】
蓄電モジュール積層体2において、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。各蓄電モジュール4は、一対の導電板5によって挟持されていると言える。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0018】
各導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。各流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ直交する方向に互いに平行に延在している。これらの流路5aに冷媒を流通させることで、導電板5は、蓄電モジュール4,4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。積層方向から見た導電板5の面積は、例えば、蓄電モジュール4の面積よりも小さい。
【0019】
拘束部材3は、蓄電モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8,8と、エンドプレート8,8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(蓄電モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられており、エンドプレート8と導電板5との間が電気的に絶縁されている。
【0020】
エンドプレート8の縁部には、蓄電モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8,8によって挟持されて蓄電モジュール積層体2としてユニット化されると共に、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0021】
[蓄電モジュールの構成]
次に、蓄電モジュール4の構成について説明する。図2は、蓄電モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。同図に示すように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを有している。
【0022】
電極積層体11は、セパレータ13を介して複数のバイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19が積層されることによって構成されている。本実施形態では、電極積層体11の積層方向Dと蓄電モジュール積層体2の積層方向とが一致している。電極積層体11は、積層方向Dに延びる側面11aを有している。バイポーラ電極14は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを含んでいる。正極16は、正極活物質が塗工されてなる正極活物質層である。負極17は、負極活物質が塗工されてなる負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0023】
負極終端電極18は、電極積層体11の一方の積層端に配置されている。負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを含んでいる。負極終端電極18における電極板15の一方面15aは、電極積層体11の外側を向く面(外面)であり、他方面15bは、電極積層体11の内側を向く面(内面)である。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介してバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0024】
正極終端電極19は、電極積層体11の他方の積層端に配置されている。正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを含んでいる。正極終端電極19における電極板15の一方面15aは、電極積層体11の内側を向く面(内面)であり、他方面15bは、電極積層体11の外側を向く面(外面)である。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介してバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0025】
電極板15は、例えばニッケルからなる金属箔、或いはニッケルメッキ鋼板からなり、矩形状である。電極板15の縁部15cは、一方面15a及び他方面15bのいずれにも、正極活物質及び負極活物質が設けられていない領域(未塗工領域)となっている。電極板15の縁部15cに囲まれた中央部15dは、一方面15a及び他方面15bの少なくとも一方に、正極活物質又は負極活物質の少なくとも一方が設けられた領域(塗工領域)となっている。中央部15dは、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19の電極部を構成している。
【0026】
正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。したがって、バイポーラ電極14の中央部15dの大きさは、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域の大きさとなっている。
【0027】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0028】
封止体12は、電極積層体11において積層方向Dで隣り合うバイポーラ電極14,14間と、積層方向Dで隣り合う負極終端電極18及びバイポーラ電極14間と、積層方向Dで隣り合う正極終端電極19及びバイポーラ電極14間とを封止している。封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形の筒状に形成されている。封止体12は、積層方向Dに延びる電極積層体11の側面11aにおいて電極板15の縁部15cを保持すると共に、側面11aを取り囲むように構成されている。
【0029】
封止体12は、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19の各電極板15の縁部15cに設けられた第一樹脂部21と、第一樹脂部21の全体を外側から包囲するように設けられた第二樹脂部22とによって構成されている。第一樹脂部21は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、電極板15の一方面15a側の縁部15c(未塗工領域)において、電極板15の全ての辺にわたって連続的に設けられている。第一樹脂部21は、例えば超音波又は熱を用いた溶着により、縁部15cに対して強固に結合している。第一樹脂部21は、電極積層体11を封止するほか、積層方向Dに隣り合う各電極板15,15間のスペーサとして機能する。
【0030】
第一樹脂部21は、積層方向Dから見て、電極板15の縁部15cに重なった第一部分21aと、電極板15の縁よりも外側に張り出した第二部分21bとを有している。第二部分21bの積層方向Dにおける長さは、第一部分21aの積層方向Dにおける長さよりも長い。このため、第一樹脂部21は、第一部分21aと第二部分21bとの間に段差面21cを有している。段差面21cは、電極板15の端面(つまり側面11aの一部)の全体を覆っている。第一樹脂部21は、積層方向Dに直交する方向において、正極16及び負極17から離間して設けられている。
【0031】
第一樹脂部21と電極板15との結合にあたって、電極板15における第一樹脂部21との結合面は、複数の微細突起が設けられた粗化メッキ面となっている。本実施形態では、正極16が設けられている電極板15の一方面15aの全面が粗化メッキ面となっている。微細突起は、例えば電極板15に対する電解メッキによって形成された突起状の析出金属(付与物を含む)である。粗化メッキ面においては、第一樹脂部21を構成する樹脂材料が微細突起間の隙間に入り込むことでアンカー効果が生じ、電極板15と第一樹脂部21との間の結合強度及び液密性の向上が図られる。
【0032】
第二樹脂部22は、第一樹脂部21を外側から取り囲み、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第二樹脂部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、電極積層体11における積層方向Dの全長にわたって延在している。第二樹脂部22は、側面部分22aと、一対の張出部分22bと、を有している。側面部分22aは、電極積層体11の側面11aに沿って設けられ、積層方向Dに並ぶ複数の第一樹脂部21同士を互いに結合している。張出部分22bは、側面部分22aの積層方向Dの端部22cから、第一樹脂部21の第二部分21bの積層方向Dの端面上に張り出している。張出部分22bは、電極板15の全ての辺にわたって連続的に設けられている。第二樹脂部22は、例えば射出成型時の熱により、第一樹脂部21の外表面に溶着されている。
【0033】
第一樹脂部21を構成する樹脂、及び第二樹脂部22を構成する樹脂は、互いに相溶性を有する樹脂であり、例えば互いに同じ樹脂である。第一樹脂部21及び二次封止体を構成する樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0034】
電極板15,15間には、積層方向Dにおける第一樹脂部21,21の間隔によって規定される内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液Eが収容されている。電解液Eは、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。封止体12には、各内部空間Vに連通する複数の連通孔(不図示)が設けられている。この連通孔は、各内部空間Vに電解液Eを注入するための注液口として機能すると共に、電解液Eが注入された後は、圧力調整弁(不図示)の接続口として機能する。
【0035】
続いて、導電板5と蓄電モジュール4との位置関係について説明する。上述のように、蓄電モジュール4は、一対の導電板5によって挟持されている。一方の導電板5は、積層方向Dにおいて負極終端電極18の一方面15aと対向すると共に、積層方向Dから見て、負極終端電極18の縁部15cに設けられた第一樹脂部21(以下、負極終端電極18の第一樹脂部21)と重なるように配置されている。具体的には、一方の導電板5の外縁部が、積層方向Dから見て、負極終端電極18の第一樹脂部21における第一部分21aの内縁部と重なっている。一方の導電板5は、積層方向Dから見て、負極終端電極18の縁部15cの全周にわたって、負極終端電極18の第一樹脂部21と重なるように配置されている。
【0036】
他方の導電板5は、積層方向Dにおいて正極終端電極19の他方面15bと対向すると共に、積層方向Dから見て、正極終端電極19の縁部15cに設けられた第一樹脂部21(以下、正極終端電極19の第一樹脂部21)と重なるように配置されている。具体的には、他方の導電板5の外縁部が、積層方向Dから見て、正極終端電極19の第一樹脂部21における第一部分21aの内縁部と重なっている。一方の導電板5は、積層方向Dから見て、正極終端電極19の縁部15cの全周にわたって、正極終端電極19の第一樹脂部21と重なるように配置されている。
【0037】
蓄電モジュール4では、電極積層体11は、縁部11bよりも中央部11cにおいて積層方向Dに膨らんだ形状となっている。すなわち、電極積層体11の縁部11bの積層方向Dにおける長さL1は、電極積層体11の中央部11cの積層方向Dにおける長さL2よりも短い。これにより、負極終端電極18の一方面15a側の中央部15dは、蓄電モジュール4と積層方向Dにおいて隣り合う一方の導電板5と接触している。正極終端電極19の他方面15b側の中央部15dは、蓄電モジュール4と積層方向Dにおいて隣り合う他方の導電板5と接触している。
【0038】
電極積層体11の縁部11bは、各電極板15の縁部15cを含んでいる。電極積層体11の中央部11cは、各電極板15の中央部15dを含み、電極積層体11の電極部を構成している。長さL1が長さL2よりも短くなるような電極積層体11の形状は、第一樹脂部21、電極板15、正極16、負極17、及びセパレータ13の厚さ(積層方向Dにおける長さ)を調整することにより得られる。具体的には、第一樹脂部21の第二部分21bの厚さが、電極板15、正極16、負極17、及びセパレータ13の厚さの和よりも小さくなるように調整すればよい。
【0039】
負極終端電極18の縁部15cに対する中央部15dの膨らみ量(負極終端電極18の一方面15a側の縁部15cと一方面15a側の中央部15dとの積層方向Dにおける離間距離)は、負極終端電極18の第一樹脂部21における第一部分21aの厚さ(積層方向Dにおける長さ)以上であり、例えば、0.2mmである。これにより、第一部分21aに引っ掛かることなく、負極終端電極18の中央部15dを一方の導電板5と接触させることができる。このように、蓄電モジュール4の電極積層体11では、電極板15がわずかに変形した状態で積層されている。電極板15の変形量は、電極積層体11の中間層から積層端に向かうにつれて大きくなる。本実施形態では、一方の導電板5は、第一部分21aにも接触している。一対の導電板5は、第二樹脂部22には接触していない。
【0040】
正極終端電極19の縁部15cに対する中央部15dの膨らみ量(正極終端電極19の他方面15b側の縁部15cと他方面15b側の中央部15dとの積層方向Dにおける離間距離)は、例えば、負極終端電極18の縁部15cに対する中央部15dの膨らみ量と同等である。
【0041】
図3は、参考例に係る蓄電装置における蓄電モジュールの内圧上昇時の負極終端電極の様子を示す要部拡大断面図である。図4は、参考例に係る蓄電装置における蓄電モジュールの内圧上昇時の正極終端電極の様子を示す要部拡大断面図である。参考例に係る蓄電装置100では、実施形態に係る蓄電装置1とは異なり、一対の導電板105が、積層方向Dで対向する負極終端電極18及び正極終端電極19の縁部15cに設けられた第一樹脂部21(以下、一対の終端電極の第一樹脂部21)と、積層方向Dから見て重ならないように配置されている。一対の導電板105は、積層方向Dから見て、実施形態の導電板5よりも一回り小さく、積層方向Dに直交する方向において、第一樹脂部21から離間している。一対の導電板105は、積層方向Dから見て、例えば電極積層体11の中央部11cと同等の大きさである。一対の導電板105は、電極積層体11の中央部11cを挟持するように配置されている。一対の導電板105は、電極積層体11の中央部11cに接触している。
【0042】
蓄電装置100において、使用条件等により蓄電モジュール4の電極板15,15間の内部空間Vの内圧が上昇した場合、電極積層体11の中間層では、積層方向Dに隣り合う内部空間Vの内圧による荷重がキャンセルされる。また、内部空間V自体もわずかな空間であるため、バイポーラ電極14の変形は比較的生じ難い。
【0043】
一方、電極積層体11の積層端に位置する負極終端電極18及び正極終端電極19では、中間層とは異なり、内部空間Vの内圧による荷重はキャンセルされない。このため、図3及び図4に示すように、内圧が上昇した場合に、負極終端電極18及び正極終端電極19が積層方向Dに沿って電極積層体11の外側に過大に変形することが考えられる。負極終端電極18及び正極終端電極19に過大な変形が生じると、第一樹脂部21に過大な応力がかかり、第一樹脂部21が破断したり、第一樹脂部21と負極終端電極18及び正極終端電極19との間に隙間が生じたりするおそれがある。特に、第一樹脂部21は、第二樹脂部22の張出部分22bに覆われた部分と、張出部分22bに覆われていない部分との境界部で破断し易い。第一樹脂部21の破断や第一樹脂部21と負極終端電極18及び正極終端電極19との間の隙間の形成は、電極積層体11の外部への電解液Eの漏出の原因となり得る。
【0044】
これに対し、蓄電装置1では、一対の導電板5が、積層方向Dから見て、一対の終端電極の第一樹脂部21と重なるように配置されている。したがって、蓄電モジュール4の内圧が上昇した場合であっても、負極終端電極18及び正極終端電極19の過大な変形を導電板5によって抑制できる。これによって、第一樹脂部21の破断や第一樹脂部21と負極終端電極18及び正極終端電極19との間の隙間の形成を抑制でき、電極積層体11の外部への電解液Eの漏出を防止できる。
【0045】
一対の導電板5は、積層方向Dから見て負極終端電極18及び正極終端電極19の縁部15cの全周にわたって第一樹脂部21と重なるように配置されている。これにより、負極終端電極18及び正極終端電極19の過大な変形を一対の導電板5によって更に抑制することができる。
【0046】
電極積層体11の縁部11bの積層方向Dにおける長さL1は、電極積層体11の中央部11cの積層方向Dにおける長さL2よりも短い。これにより、第一樹脂部21が負極終端電極18の一方面15a側の縁部15cに設けられていても、一方の導電板5を負極終端電極18の一方面15a側の中央部15dに接触させることができる。本実施形態では、第一樹脂部21が正極終端電極19においても、一方面15aに設けられているが、仮に他方面15bに設けられていても、長さL1は長さL2よりも短いので、他方の導電板5を正極終端電極19に接触させ易い。
【0047】
一方の導電板5は、第一樹脂部21に接触している。このため、負極終端電極18の過大な変形を一方の導電板5によって更に抑制することができる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、実施形態に係る蓄電装置1は、複数の蓄電モジュール4と、複数の導電板5とを備えているが、蓄電装置1は、少なくとも一つの蓄電モジュール4と、一対の導電板5とを備えていればよい。
【0049】
一対の導電板5のいずれか一方が、積層方向Dにおいて対向する終端電極の第一樹脂部21と、積層方向Dから見て、重なるように配置されていればよい。すなわち、一対の導電板5の残りの一方が、積層方向Dにおいて対向する終端電極の第一樹脂部21と、積層方向Dから見て、重なっていなくてもよい。
【0050】
上記実施形態では、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19の全てに同じ形状の第一樹脂部21が設けられている。このため、一対の導電板5は、積層方向Dにおいて対向する終端電極の第一樹脂部21以外の第一樹脂部21とも、積層方向Dから見て重なっているが、重なっていなくてもよい。すなわち、バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19の全てに同じ形状の第一樹脂部21が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…蓄電装置、4…蓄電モジュール、5…導電板、11…電極積層体、11b…縁部、11c…中央部、12…封止体、13…セパレータ、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…一方面、15b…他方面、15c…縁部、16…正極、17…負極、18…負極終端電極、19…正極終端電極、21…第一樹脂部。
図1
図2
図3
図4