(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪第1実施形態≫
以下では、「冷凍サイクル装置」の一例として、空気調和機100(
図1参照)について説明する。
【0011】
<空気調和機の構成>
図1は、第1実施形態に係る空気調和機100の冷媒回路Qを含む構成図である。
なお、
図1の実線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
また、
図1の破線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。
空気調和機100は、冷房運転や暖房運転等の空調を行う機器である。
図1に示すように、空気調和機100は、圧縮機20と、放熱器1と、室外熱交換器2と、室外ファン3と、室外膨張弁4と、を備えている。さらに、空気調和機100は、室内膨張弁5と、室内熱交換器6と、室内ファン7と、四方弁8と、制御部9と、を備えている。
【0012】
図1に示す例では、圧縮機20、放熱器1、室外熱交換器2、室外ファン3、室外膨張弁4、四方弁8、及び制御部9が、室外機Uoに設けられている。一方、室内膨張弁5、室内熱交換器6、及び室内ファン7は、室内機Uiに設けられている。
【0013】
圧縮機20は、低段側圧縮部LP及び高段側圧縮部HPを有し、低段側圧縮部LP及び高段側圧縮部HPにおいて二段階で順次に冷媒を圧縮する二段圧縮機である。そして、低段側圧縮部LPで圧縮された中間圧の冷媒が、次に説明する放熱器1で放熱し、放熱後の冷媒が高段側圧縮部HPでさらに圧縮されるようになっている。
【0014】
圧縮機20の種類として、例えば、密閉容器21(
図2参照)の中に低段側圧縮部LP及び高段側圧縮部HPが設けられたロータリ圧縮機を用いることができるが、これに限定されるものではない。その他、圧縮機20の種類として、レシプロ圧縮機やスクロール圧縮機等が用いられてもよい。なお、圧縮機20の構成の具体例については後記する。
【0015】
図1に示す放熱器1は、低段側圧縮部LPで圧縮された冷媒を放熱させる熱交換器であり、接続管k2,k3に設けられている。すなわち、低段側圧縮部LPで圧縮された冷媒が、接続管k2を介して放熱器1に導かれ、さらに、放熱器1で放熱した冷媒が、接続管k3を介して高段側圧縮部HPの吸入側に導かれるようになっている。なお、放熱器1は、室外熱交換器2と一体であってもよいし、また、室外熱交換器2とは別体であってもよい。
【0016】
接続管k2,k3は、前記したように、低段側圧縮部LPで圧縮された冷媒を高段側圧縮部HPの吸入側に導く配管である。
室外熱交換器2は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室外ファン3から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。
室外ファン3は、室外熱交換器2に外気を送り込むファンであり、室外熱交換器2の付近に設置されている。
【0017】
室外膨張弁4は、「凝縮器」(室外熱交換器2及び室内熱交換器6の一方)で凝縮した冷媒を減圧する弁である。そして、室外膨張弁4で減圧された冷媒が、「蒸発器」(室外熱交換器2及び室内熱交換器6の他方)に向かうようになっている。なお、室内膨張弁5も室外膨張弁4と同様の機能を有している。
【0018】
室内熱交換器6は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室内ファン7から送り込まれる室内空気(空調対象空間の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。
室内ファン7は、室内熱交換器6に室内空気を送り込むファンであり、室内熱交換器6の付近に設置されている。
【0019】
四方弁8は、空気調和機100の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。例えば、冷房運転時(
図1の実線矢印を参照)には、圧縮機20、室外熱交換器2(凝縮器)、室外膨張弁4(膨張弁)、室内膨張弁5(膨張弁)、及び室内熱交換器6(蒸発器)が順次に接続されてなる冷媒回路Qにおいて、冷凍サイクルで冷媒が循環する。
【0020】
一方、暖房運転時(
図1の破線矢印を参照)には、圧縮機20、室内熱交換器6(凝縮器)、室内膨張弁5(膨張弁)、室外膨張弁4(膨張弁)、及び室外熱交換器2(蒸発器)が順次に接続されてなる冷媒回路Qにおいて、冷凍サイクルで冷媒が循環する。このように、圧縮機20、「凝縮器」、「膨張弁」、及び「蒸発器」を順次に介して、冷媒回路Qにおいて冷媒が循環するようになっている。
【0021】
制御部9は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。制御部9は、圧縮機20、室外ファン3、室外膨張弁4等の機器を制御する。
なお、
図1では図示を省略しているが、室内機Uiには、室内膨張弁5や室内ファン7を制御する別の制御部が設けられ、室外機Uoの制御部9と互いに通信するようになっている。
【0022】
<圧縮機の構成>
図2は、空気調和機100が備える圧縮機20の断面図である。
図2に示す圧縮機20は、前記したように、ガス状の冷媒を二段階で圧縮するロータリ式の二段圧縮機である。
図2に示すように、圧縮機20は、密閉容器21と、電動機22と、クランク軸23と、低段側圧縮部LPと、高段側圧縮部HPと、フレーム241,243と、ミドルプレート242と、下カバー244と、を備えている。
【0023】
密閉容器21は、電動機22や低段側圧縮部LP、高段側圧縮部HP等を略密閉状態で収容する殻状の容器であり、その外形は円筒状を呈している。
図2に示すように、密閉容器21には、冷凍機油M(潤滑油)が貯留されている。
電動機22は、クランク軸23を回転させる駆動源であり、密閉容器21の内部に設置されている。
図2に示すように、電動機22は、固定子22aと、回転子22bと、コイル22cと、を備えている。
【0024】
クランク軸23は、電動機22の駆動に伴って回転子22bと一体で回転する軸である。クランク軸23は、上下方向に延びており、フレーム241,243によって回転自在に軸支されている。
【0025】
図2に示すように、クランク軸23は、主軸23aと、偏心部23b,23bと、を備えている。主軸23aは、電動機22の回転子22bに同軸で固定されている。偏心部23b,23bは、主軸23aに対して偏心しながら回転する軸であり、それぞれ、クランク軸23の所定箇所に設けられている。
【0026】
フレーム241は、クランク軸23を軸支するものであり、密閉容器21の内周壁に固定されている。
図2に示すように、フレーム241の下側には、シリンダ26、ミドルプレート242、別のシリンダ28、フレーム243、及び下カバー244が、下方に向かって順次に積層されている。
【0027】
低段側圧縮部LPは、吸入管k1を介して吸入されるガス状の冷媒を圧縮するものであり、電動機22の下側に配置されている。
図2に示すように、低段側圧縮部LPは、ローラ25及びシリンダ26を備えている。
【0028】
ローラ25は、その内周面がクランク軸23の偏心部23bに固定される環状部材である。シリンダ26は、ローラ25やフレーム241、ミドルプレート242とともに低段側圧縮室R1を形成する環状部材である。この低段側圧縮室R1には、吸入管k1を介して、ガス状の冷媒が導かれる。
【0029】
そして、電動機22の駆動に伴ってシリンダ26内でローラ25が公転することで、シリンダ26とローラ25との間の低段側圧縮室R1において、ガス状の冷媒が圧縮される。このようにして中間圧に圧縮された冷媒は、吐出弁v1を介して、密閉容器21の内部に吐出(放出)される。したがって、密閉容器21の内部には、中間圧の冷媒が充満している。
【0030】
低段側圧縮部LPで中間圧に圧縮された冷媒は、接続管k2を介して放熱器1(
図1参照)に導かれる。そして、放熱器1で放熱した中間圧の冷媒が、接続管k3を介して、高段側圧縮部HPの吸入側に導かれるようになっている。
【0031】
図2に示す高段側圧縮部HPは、中間圧の冷媒を圧縮して、高圧の冷媒にするものである。高段側圧縮部HPは、ローラ27やシリンダ28を備え、低段側圧縮部LPの下側に設けられている。なお、高段側圧縮部HPの構成は、低段側圧縮部LPと同様であるから、その説明を省略する。高段側圧縮部HPで圧縮された高圧の冷媒は、吐出弁v2、吐出管k4、及び四方弁8(
図1参照)を順次に介して、凝縮器(室外熱交換器2又は室内熱交換器6:
図1参照)に導かれる。
【0032】
図2に示す返油管k5(
図1では図示を省略)は、圧縮機20から吐出された冷媒に混在する冷凍機油を圧縮機20に戻すための管であり、密閉容器21の所定箇所(
図2の例では、電動機22の下側付近)に差し込まれている。そして、返油管k5の下流端である返油口mを介して、密閉容器21の内部に冷凍機油が戻されるようになっている。
【0033】
<冷媒について>
冷媒回路Qを循環する冷媒には、トリフルオロヨードメタン(CF
3I)が含まれている。このような冷媒として、トリフルオロヨードメタンを単体で用いてもよいし、また、トリフルオロヨードメタンと他の冷媒とを含む混合冷媒を用いてもよい。他の冷媒としては、CO
2、炭化水素、エーテル、フルオロエーテル、フルオロアルケン、HFC、HFO、HClFO、及びHBrFO等が例示される。
【0034】
なお、「HFC」は、ハイドロフルオロカーボンを示す。「HFO」は、炭素原子、フッ素原子、及び水素原子からなるハイドロフルオロオレフィンであり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する。「HClFO」は、炭素、塩素、フッ素、及び水素原子からなり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する。「HBrFO」は、炭素、臭素、フッ素、及び水素原子からなり、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する。
【0035】
HFCとしては、ジフルオロメタン(HFC32)、ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、トリフルオロエタン(HFC143a)、ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)が例示される。
【0036】
前記したフルオロアルケンとしては、フルオロエテン、フルオロプロペン、フルオロブテン、クロロフルオロエテン、クロロフルオロプロペン、及びクロロフルオロブテンが例示される。フルオロプロペンとしては、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1243zf)、 1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、及びHFO1225が例示される。
【0037】
前記したフルオロブテンとしては、C
4H
4F
4、C
4H
3F
5(HFO1345)、及びC
4H
2F
6(HFO1336)が例示される。クロロフルオロエテンとしては、C
2F
3Cl(CTFE)が例示される。クロロフルオロプロペンとしては、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO1233xf)、及び1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HCFO1233zd)が例示される。
【0038】
GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)、蒸気圧、及び難燃化パラメータを調整するため、冷媒として、トリフルオロヨードメタン、ジフルオロメタン(HFC32)、ペンタフルオロエタン(HFC125)、及びヘキサフルオロプロペン(FO1216)のうち1種以上を用いることが好ましい。
【0039】
また、機器の能力に合う蒸気圧を得るために、冷媒にHFO1234yf、HFO1234ze、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、HFO1123等を含め、能力に関係する蒸気圧や効率に影響する温度勾配度合いを混合濃度により調整することが好ましい。
【0040】
混合冷媒中のトリフルオロヨードメタンの配合量は、質量ベースで、10%以上100%以下、好ましくは20%以上80%以下、より好ましくは30%以上50%以下である。
【0041】
GWPは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書(AR4)の値(100年値)が用いられる。また、AR4に記載されていない冷媒のGWPは、IPCC第5次評価報告書(AR5)の値を用いてもよいし、他の公知文献に記載された値を用いてもよいし、公知の方法を用いて算出または測定した値を用いてもよい。AR4によると、トリフルオロヨードメタンのGWPは、0.4であり、HFC32のGWPは675であり、HFC125のGWPは3,500である。
【0042】
冷媒のGWPは、750以下であり、好ましくは500以下であり、より好ましくは150以下であり、更に好ましくは100以下であり、特に好ましくは75以下である。
冷媒の25℃の蒸気圧は、好ましくは1.4MPaから1.8MPaの範囲である。また、以下の数式(1)で示される冷媒の難燃化パラメータは、好ましくは0.46以下である。なお、数式(1)において、F
mixは混合冷媒の難燃化パラメータ、Fiは各冷媒成分の難燃化パラメータ、xiは各冷媒成分のモル分率を示す。
【0043】
F
mix=Σ
iFi・xi ・・・(1)
【0044】
冷凍機油としては、40℃における動粘度が30〜100mm
2/sのポリオールエステル油又はポリビニルエーテル油が好ましい。動粘度は、ISO(International Organization for Standardization,国際標準化機構)3104、ASTM(American Society for Testing and Materials,米国材料試験協会)D445、D7042等の規格に基づいて測定される。冷媒と冷凍機油との低温側臨界溶解温度は、+10℃以下であることが好ましい。
【0045】
上記特性を有する冷凍機油としては、以下の化学式(1)、(2)で表されるポリオールエステル油、化学式(3)で表されるポリビニルエーテル油が例示される。化学式(1)、(2)中、R
1〜R
10は、炭素数4〜9のアルキル基を表し、それぞれ同一であっても異なってもよい。また、化学式(3)中、OR
11は、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基又はブチルオキシ基であり、nの範囲は、5〜15である。
【0049】
<冷媒の温度上昇の抑制>
図3は、空気調和機100の冷凍サイクルを示すモリエル線図である(適宜、
図1を参照)。
なお、
図3の横軸は、冷媒の比エンタルピであり、縦軸は、冷媒の圧力である。
図3に示す飽和液線wは、冷媒の液相のと気液二相との間の境界線である。また、飽和蒸気線gは、冷媒の気液二相と気相との間の境界線である。前記した飽和液線w及び飽和蒸気線gで囲まれる領域では、冷媒が気液二相の状態になっている。臨界点cは、飽和液線wと飽和蒸気線gとの間の境界点である。
【0050】
また、
図3では、二段圧縮が行われる本実施形態の冷凍サイクル(状態G1〜G6)を実線で示している。一方、単段圧縮が行われる比較例の冷凍サイクル(状態G1,G7,G5,G6)において、二段圧縮とは異なる部分を一点鎖線で示している。また、破線で示す等温線上(例えば、温度T1の等温線上)では、冷媒の温度が等しくなっている。なお、等温線で示す温度T1〜T4の大小関係は、T1<T2<T3<T4である。
【0051】
図1の吸入管k1を通流する冷媒(
図3に示す状態G1)は、低段側圧縮部LPで圧縮された後(状態G2)、接続管k2を介して放熱器1に導かれる。この放熱器1では、空気への放熱によって冷媒の温度が下がり、比エンタルピも小さくなるが、その一方で冷媒の圧力はほとんど変化しない(状態G3)。放熱器1で放熱した冷媒は、接続管k3を介して高段側圧縮部HPに導かれる。
【0052】
高段側圧縮部HPで圧縮されて高圧になった冷媒は(状態G4)、吐出管k4を介して四方弁8に導かれる。そして、冷媒回路Qを循環する過程で、冷媒の凝縮(状態G4→G5)、膨張(状態G5→G6)、及び蒸発(状態G6→G1)が順次に行われ、蒸発した冷媒が、四方弁8及び吸入管k1を順次に介して、低段側圧縮部LPの吸込側に導かれる。
【0053】
図3の各等温線に示すように、高段側圧縮部HPから吐出される冷媒(状態G4)の吐出温度T2は、単段圧縮である比較例での冷媒(状態G7)の吐出温度T4よりも低くなっている(T2<T4)。これは、低段側圧縮部LPで圧縮された中間圧の冷媒が放熱器1でいったん放熱した後、高段側圧縮部HPでさらに圧縮されるからである。これによって、高段側圧縮部HPの吐出側で冷媒の温度が高くなりすぎることを抑制できる。したがって、冷媒に含まれているトリフルオロヨードメタンが高温下で分解することを抑制できる。また、二段圧縮を行うことで、単段圧縮よりも圧縮機20のエネルギ効率が高くなるという利点もある。
【0054】
<効果>
第1実施形態によれば、冷媒回路Qを循環する冷媒には、トリフルオロヨードメタンが含まれている。これによって、冷媒のGWPが従来よりも大幅に低くなるため、環境保全に寄与できる。
【0055】
また、第1実施形態によれば、低段側圧縮部LPで圧縮された冷媒が、放熱器1で放熱した後、高段側圧縮部HPに導かれる。これによって、高段側圧縮部HPから吐出される冷媒の温度が高くなりすぎることを抑制できる。したがって、冷媒に含まれるトリフルオロヨードメタンの分解が抑制されるため、この分解に伴う酸性物質の生成が抑制される。このように第1実施形態によれば、冷媒回路Qを循環する冷媒の分解を抑制し、信頼性の高い空気調和機100を提供できる。
【0056】
≪第2実施形態≫
第2実施形態に係る空気調和機100A(
図4参照)は、第1実施形態で説明した構成(
図1参照)にオイルセパレータ11(
図4参照)、返油管k5、オイルクーラ12、及び返油量制御弁13が追加された構成になっている。なお、その他の構成(圧縮機20等)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0057】
図4は、第2実施形態に係る空気調和機100Aの冷媒回路QAを含む構成図である。
図4に示すように、空気調和機100Aは、第1実施形態で説明した構成に加えて、オイルセパレータ11と、返油管k5と、オイルクーラ12と、返油量制御弁13と、を備えている。
【0058】
オイルセパレータ11は、高段側圧縮部HPから吐出された冷媒に混在する冷凍機油を分離するための殻状の容器である。そして、冷凍機油が混在している高圧の冷媒が、高段側圧縮部HPから吐出管k4を介して、オイルセパレータ11に導かれるようになっている。オイルセパレータ11で分離された冷凍機油(若干の冷媒が混在することもある)は、返油管k5を介してオイルクーラ12に導かれ、残りの冷媒は四方弁8に導かれる。
【0059】
図4に示す返油管k5は、オイルセパレータ11で分離された冷凍機油を圧縮機20の返油口mに導く配管である。返油管k5は、その上流端がオイルセパレータ11に接続され、下流端が圧縮機20の返油口mに接続されている。なお、返油口mは、中間圧の冷媒が充満している密閉容器21(
図2参照)に設けられた開口部である。
【0060】
オイルクーラ12は、オイルセパレータ11で分離された冷凍機油を放熱させる熱交換器であり、返油管k5に設けられている。なお、オイルクーラ12は、室外熱交換器2と一体であってもよいし、また、室外熱交換器2とは別体であってもよい。
【0061】
返油量制御弁13は、オイルクーラ12で放熱した冷凍機油を減圧する弁であり、返油管k5においてオイルクーラ12の下流側に設けられている。そして、オイルクーラ12で放熱した冷凍機油が、返油量制御弁13で中間圧に減圧され、減圧後の冷凍機油が返油口mに戻されるようになっている。
【0062】
ちなみに、冷凍機油は減圧しても温度がほとんど下がらないが、その一方で、冷媒は減圧すると温度が下がる。したがって、返油量制御弁13の前後(上流側・下流側)の温度をそれぞれ測定し、その測定結果に基づいて、制御部9が返油量制御弁13の開度を調整するようにしてもよい。例えば、返油量制御弁13の上流側の温度よりも、下流側の温度のほうが所定値以上低い場合、制御部9が、返油量制御弁13の開度を小さくするようにしてもよい。これによって、返油管k5を介して、圧縮機20に過剰な量の冷媒が戻されることを抑制できる。
【0063】
<効果>
第2実施形態によれば、オイルセパレータ11で分離された冷凍機油がオイルクーラ12で放熱し、さらに、放熱後の冷凍機油が圧縮機20に戻される。このように比較的低温の冷凍機油が圧縮機20に戻されるため、密閉容器21(
図2参照)に充満している中間圧のガス冷媒の温度が低下する。したがって、低段側圧縮部LPから吐出される冷媒の温度上昇を抑制し、ひいては、冷媒に含まれているトリフルオロヨードメタンの分解を抑制できる。
【0064】
また、冷凍機油が圧縮機20に戻されるため、圧縮機20で冷凍機油が不足することを抑制できる。したがって、圧縮機20が備える各部品の磨耗を抑制し、信頼性の高い空気調和機100Aを提供できる。
【0065】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、凝縮した冷媒の一部が、配管k6(
図5参照)を介して、高段側圧縮部HPの吸入側に戻される点が、第1実施形態とは異なっている。また、第3実施形態は、前記した配管k6の他に、減圧流量制御弁14(第1流量制御弁:
図5参照)、第1圧力センサ15、及び第1温度センサ16が設けられている点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他の構成(圧縮機20等)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0066】
図5は、第3実施形態に係る空気調和機100Bの冷媒回路QBを含む構成図である。
図5に示すように、空気調和機100Bは、第1実施形態で説明した構成に加えて、配管k6と、減圧流量制御弁14と、第1圧力センサ15と、第1温度センサ16と、を備えている。
【0067】
配管k6は、凝縮器(室外熱交換器2又は室内熱交換器6)で凝縮した冷媒の一部を分流させる配管である。配管k6の上流端は、室外熱交換器2と室内熱交換器6とを接続する配管k7において、室外膨張弁4と室内膨張弁5との間に接続されている。一方、配管k6の下流端は、低段側圧縮部LPから高段側圧縮部HPに冷媒を導く接続管k3に接続されている。
【0068】
なお、凝縮器で凝縮した冷媒の一部を分流させ、分流させた冷媒を高段側圧縮部HPの吸入側に導く「第1流路」は、配管k6と、接続管k3(配管k6との接続箇所よりも下流側)と、を含んで構成される。そして、次に説明する減圧流量制御弁14で減圧された中間圧の冷媒が、放熱器1で放熱した冷媒とともに、高段側圧縮部HPに吸入されるようになっている。
【0069】
減圧流量制御弁14は、配管k6(第1流路)を通流する冷媒を減圧する弁であり、配管k6に設けられている。
第1圧力センサ15は、高段側圧縮部HPに吸入される冷媒の圧力を検出するセンサである。また、第1温度センサ16は、高段側圧縮部HPに吸入される冷媒の温度を検出するセンサである。
図5に示す例では、接続管k3において、放熱器1の下流側の所定箇所に第1圧力センサ15及び第1温度センサ16が設けられている。
【0070】
そして、制御部9は、第1温度センサ16の検出値が、第1圧力センサ15の検出値に対応する冷媒ガス飽和温度よりも高くなるように、減圧流量制御弁14の開度を調整する。これによって、高段側圧縮部HPでの液圧縮を防止できる。
【0071】
<効果>
第3実施形態によれば、凝縮器で凝縮した比較的低温の冷媒が、放熱器1で放熱した冷媒とともに、高段側圧縮部HPに導かれる。これによって、高段側圧縮部HPから吐出される冷媒の温度上昇を抑制し、ひいては、冷媒に含まれているトリフルオロヨードメタンの分解を抑制できる。さらに、第1温度センサ16の検出値が冷媒ガス飽和温度よりも高くなるように、減圧流量制御弁14の開度が適宜に調整される。これによって、冷媒の液圧縮を防止できる。
【0072】
≪第4実施形態≫
第4実施形態は、凝縮した冷媒の一部が、配管k8等(
図6参照)を介して、低段側圧縮部LPの吸入側に戻される点が、第1実施形態とは異なっている。また、第4実施形態は、前記した配管k8の他に、減圧流量制御弁17(第2流量制御弁:
図6参照)、第2圧力センサ18、及び第2温度センサ19が設けられている点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他の構成(圧縮機20等)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0073】
図6は、第4実施形態に係る空気調和機100Cの冷媒回路QCを含む構成図である。
図6に示すように、空気調和機100Cは、第1実施形態で説明した構成に加えて、配管k8と、減圧流量制御弁17と、第2圧力センサ18と、第2温度センサ19と、を備えている。
【0074】
配管k8は、凝縮器(室外熱交換器2又は室内熱交換器6)で凝縮した冷媒の一部を分流させる配管である。配管k8の上流端は、室外熱交換器2と室内熱交換器6とを接続する配管k7において、室外膨張弁4と室内膨張弁5との間に接続されている。一方、配管k8の下流端は、四方弁8を介して低段側圧縮部LPに冷媒を導く吸入管k1に接続されている。
【0075】
なお、凝縮器で凝縮した冷媒の一部を分流させ、分流させた冷媒を低段側圧縮部LPの吸入側に導く「第2流路」は、配管k8と、吸入管k1(配管k8との接続箇所よりも下流側)と、を含んで構成される。そして、次に説明する減圧流量制御弁17で減圧された低圧の冷媒が、蒸発器(室内熱交換器6又は室外熱交換器2)で蒸発した冷媒とともに、低段側圧縮部LPに吸入されるようになっている。
【0076】
減圧流量制御弁17は、配管k8(第2流路)を通流する冷媒を減圧する弁であり、配管k8に設けられている。
第2圧力センサ18は、低段側圧縮部LPに吸入される冷媒の圧力を検出するセンサである。また、第2温度センサ19は、低段側圧縮部LPに吸入される冷媒の温度を検出するセンサである。
図6に示す例では、吸入管k1の所定箇所に第2圧力センサ18及び第2温度センサ19が設けられている。
【0077】
そして、制御部9は、第2温度センサ19の検出値が、第2圧力センサ18の検出値に対応する冷媒ガス飽和温度よりも高くなるように、減圧流量制御弁17の開度を調整する。これによって、圧縮機20における液圧縮を防止できる。
【0078】
<効果>
第4実施形態によれば、凝縮器で凝縮した比較的低温の冷媒が、蒸発器で蒸発した冷媒とともに、低段側圧縮部LPに導かれる。これによって、低段側圧縮部LPで圧縮された冷媒の温度上昇が抑制されるため、高段側圧縮部HPから吐出される冷媒の温度上昇も抑制される。したがって、冷媒に含まれているトリフルオロヨードメタンの分解を抑制できる。さらに、減圧流量制御弁17の開度が適宜に調整されることで、冷媒の液圧縮を防止できる。
【0079】
≪変形例≫
以上、本発明に係る空気調和機100等について各実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、圧縮機20がロータリ式の二段圧縮機である構成について説明したが、これに限らない。すなわち、圧縮機20が、レシプロ圧縮機やスクロール圧縮機等であっても、各実施形態を適用できる。
【0080】
また、各実施形態では、一つの密閉容器21(
図2参照)の中に低段側圧縮部LP及び高段側圧縮部HPが設けられる構成について説明したが、これに限らない。例えば、単段の圧縮機(図示せず)を2つ設け、低段側の圧縮機(低段側圧縮部)から吐出された冷媒が、配管(図示せず)を介して高段側の圧縮機(高段側圧縮部)の吸入側に導かれるようにしてもよい。
【0081】
また、第3実施形態(
図5参照)では、空気調和機100Bが第1圧力センサ15及び第1温度センサ16を備える構成について説明したが、これらを省略してもよい。このような構成において、減圧流量制御弁14の開度は、空気調和機100Bの運転状態に基づいて、適宜に調整される。また、第4実施形態(
図6参照)についても同様のことがいえる。すなわち、第2圧力センサ18及び第2温度センサ19が省略された構成で、空気調和機100Cの運転状態に応じて、減圧流量制御弁17の開度が適宜に調整されるようにしてもよい。
【0082】
また、各実施形態では、室外機Uo及び室内機Uiが1台ずつ設けられた空気調和機100等について説明したが、これに限らない。例えば、一系統の空気調和機において、複数台の室内機が設けられるマルチ型の空気調和機にも各実施形態を適用できる。また、空気調和機の他、冷凍機や冷蔵庫といった「冷凍サイクル装置」にも、各実施形態を適用できる。
【0083】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。