【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、本願の請求項1の方法、請求項40の装置および請求項47の多層膜によって達成することができる。
【0015】
多層膜の製造方法は、
a)キャリア層と、少なくとも1つの層を備える転写層と、を有する基体を提供する工程と、
b)前記基体の前記転写層の少なくとも1つの第1領域にUV硬化接着剤を塗布し、前記転写層の少なくとも1つの第2領域には、前記UV硬化接着剤を塗布しない工程と、
c)キャリア層および転写層を有するスタンプ箔の、当該転写層が前記基体の前記転写層の少なくとも第1領域上に塗布された接着剤と接触するように当該スタンプ箔を塗布する工程と、
d)UV照射により前記UV硬化性接着剤を硬化する工程と、
e)前記スタンプ箔の前記キャリア層を除去する工程と、
を備える。
【0016】
そのような方法を実施するために、多層膜の製造装置は、
スタンプ箔を提供するための供給ロールと、
基体の少なくとも一部にラジカル硬化型の接着剤を塗布するための印刷装置と、
前記基体上に、前記スタンプ箔をプレスするためのローラー配設部と、
UV照射により前記接着剤を硬化させるために、前記膜の搬送方向において、前記ローラー配設部の下流側に配置されたUV光源と、
前記スタンプ箔のキャリア層を除去するために、前記膜の搬送方向において、前記UV光源の下流側に配置された除去ユニットと、
を備える。
【0017】
これによって、キャリア層および転写層を有する多層膜が得られる。転写層は、少なくとも一部に接着層と、その他の層とを有する。その他の層は、接着層に対して相対的に決められた位置に形成されている。このような多層膜は、ホットスタンプ箔、コールドスタンプ箔、積層膜、インモールド装飾膜、深絞り膜などに使用することができる。
【0018】
換言すれば、上記方法は、スタンピング転写膜を用いて、所望の形状を有し、基板としての基体上に、デジタル的に予め決定された領域を形成するものである。スタンプ箔の転写層は、接着剤が塗布された基体上のみに残存する。
【0019】
スタンプ箔の転写層は、金属層を有する。金属層は、多層膜の層構造における所望の位置(層構造の垂直方向およびデザイン上の水平方向)に形成することができる。
【0020】
金属層は、その全ての領域が金属から形成されていてもよいし、一部に金属が形成されていない領域が存在してもよい。このような金属が形成されていない領域は、接着層の印刷の解像度に比較してできるだけ小さくする。特に、金属領域は、規則的なあるいは不規則的な、微細に分散したグリッド要素、例えばドットや線状とすることができる。これによって、金属領域の半透明化を実現することができる。
【0021】
スタンプ箔は、インラインで塗布することができ、したがって、1つの印刷ラインにおいて、他の装飾層に対して位置決めすることができる。多層膜を製造するために、機械的な技術としては、移動可能なモジュールを考えることができる。この移動可能なモジュールは、要求に応じて、マルチカラー印刷装置の所望の位置において使用することができる。マルチカラー印刷装置上の異なる位置で複数の移動可能なモジュールを同時に使用することもできるし、同じ位置で順次に用いることもできる。
【0022】
スタンプ箔の転写層、したがって金属膜は、装飾構造の所望の位置に配設することができる。多層膜上に、異なる色に染色した複数の金属領域を形成することができる。
【0023】
多層膜の製造中に、1以上の移動可能なモジュールを所望の基板に対してオフラインで使用することもできる。このことは、多層膜の製造以前に、多層膜に対してスタンプ箔を形成できることを意味するものである。例えば、多層膜の製造以前に、基体に対して、特徴やモチーフを付与することができる。これらの特徴やモチーフは、独自なものであってもよいし、個人の好みのものであってもよいし、規則的に形成することもできる。多層膜の製造において、基体およびスタンプ箔は、組み合わせることができる。このことは、構造やデザイン上有利であるとともに、顧客の希望にも容易に合わせることができる。顧客は、もはや、異なる用途毎に、特別かつ完全に製造された多層膜を用いる必要がなくなり、これによって、多量の多層膜をストックしておく必要もなくなる。顧客は、用途や要求などに応じて、多層膜を形成する以前に、膜や基体上に1以上のスタンプ箔を形成することができる。
【0024】
1以上の移動可能なモジュールは、例えば、スタンプステーション前後などの、多層膜の処理セクションにおいて柔軟に配設することができる。
【0025】
1以上の移動可能モジュールは、スタンプステーションにおいて統合して用いることができる。
【0026】
1以上の移動可能モジュールは、スタンプ箔を多層膜あるいは基体に塗布することもできるし、スタンプ箔を基板に塗布することもできる。スタンプ箔を基板に塗布する際は、多層膜の形成前後、あるいは基体の基板への形成前後に行うことができる。
【0027】
基体は、機能性の転写層としてのスタンプ箔が形成されない段階では、基板として適用できる。スタンプ箔は、基体の露出した転写層に対して塗布することができ、基体上に予め存在している層に対して補完的に形成することができる。
【0028】
また、スタンプ箔は、基体の露出した上面側、特に保護層を基板に形成した後の、当該保護層上に塗布することができ、基体上に予め存在している層に対して補完的に形成することができる。
【0029】
原理的に、複数のスタンプ箔を塗布することができる。これらのスタンプ箔は、それらのデザイン上、互いに異なるようにすることが好ましい。スタンプ箔は、基体や多層膜上に、インラインやオフラインで形成することができる。スタンプ箔は、基板への塗布前後に塗布することができる。
【0030】
基体は、表面全体が透明な層、あるいは一部が透明な層、半透明な層、不透明な層をモチーフあるいはパターン状に有することができる。スタンプ箔は、例えば、すでに存在している層に対して正確な位置合わせをし、あるいは正確な位置合わせをせずに、着色層あるいは金属層などの層を形成することができる。
【0031】
これらの層は、例えば、基体あるいは完成した多層膜上に形成された、コード、モチーフ、あるいはパターンなどの個人を示すものであってもよいし、単に多層膜の装飾の一部であってもよい。このことは、基体がモチーフやパターン形状の装飾的な基幹の構成要素であることを示している。また、基体は、装飾を有していなくてもよく、この場合は、スタンプ箔の層によって装飾が行われる。基体は、1以上の保護層を有し、これらの保護層上にスタンプ箔の層を塗布することができる。
【0032】
スタンプ箔の着色層あるいは金属層は、多層膜上において、例えば当該多層膜の有用な機能を示すものである。これは、基体が、電気的/電子的な機能の基幹機能を有することを示している。また、基体は機能を有していなくてもよい。この場合は、その機能は、スタンプ箔の層によって付与されることになる。このような機能の例としては、アンテナ、タッチ機能、加熱装置、ディスプレイ装置の構成要素、照明器具の構成要素、条導体などを挙げることができる。
【0033】
金属層を有するスタンプ箔を用いれば、表面全体が金属化された転写層を製造可能なあらゆる金属による部分的金属化が実現可能である。
【0034】
したがって、透明なワニス層の重なりが視認されることなく、金属化された部分を所望通りに染色することができる。また、ホログラフィック効果を付与することもできる。金属化された部分の表と裏を異なる色に染色することもできる。
【0035】
金属層あるいはその他の装飾層の色、見え方などはスタンプ箔を変えることで変更することができるので、本発明の方法は柔軟性に富んでいる。
【0036】
基体とスタンプ箔とは、スタンプ箔のキャリア層とスタンプ箔の転写層との剥離力が、基体のキャリア層と基体の転写層との剥離力よりも小さいことが好ましい。これは、スタンプ箔の転写層の非接着領域とともに、スタンプ箔のキャリア層が、基体の転写層にダメージを与えることなく剥離できることを意味する。
【0037】
スタンプ箔のキャリア層とスタンプ層の転写層との剥離力が、基体のキャリア層と基体の転写層との剥離力より少なくとも15%低いことが有利であり、30%低いことが好ましく有利である。この剥離力は、引張試験機(Zwick GmbH&Co.KG,Ulm社製のZwick Z005)によって決定することができる。スタンプ箔あるいは基体は、下側のホルダーに平坦に接着する。その後、剥離すべき層を、引張試験機によって垂直に剥離する。剥離力は、ロードセルによって決定する。
【0038】
好ましい態様において、接着層は、スクリーン印刷やフレキソグラフィによって塗布することができる。しかしながら、接着層は、インクジェット印刷によって塗布することが好ましい。
【0039】
スタンプ箔の転写層の転写領域の構造は、接着剤の塗布の際に、好ましくはインクジェット印刷を用いてデジタル的に形成することができる。その結果、個々の画像面には、個人的なもの、個人の好みのものを表すことができる。また、印刷工程中に、インラインで、金属領域の形状を所望の形状に変化させることができる。
【0040】
接着剤の塗布に対しては、1インチ当たり300〜1200のノズルヘッドを有するものを用いることが好ましい。これによって、接着剤の高解像度塗布が可能となり、微細な膜構造の転写が可能となる。プリントヘッドが高解像度になると、転写層に対する1インチ当たりの接着剤の液滴の解像度も向上させることができる。
【0041】
接着剤の塗布に際して、インクジェットプリントヘッドのノズル径は、15μm〜25μmであり、その誤差が±5μm以下であって、ノズルスペースが50μm〜150μmであり、その誤差が±5μm以下であることが好ましい。小さいノズルスペース、特に印刷方向に垂直な方向の小さいノズルスペースは、転写層上の接着剤の液滴を互いに十分に近接させることができ、場合によってはオーバーラップさせることができるようになる。したがって、塗布面全体に良好な接着効果を得ることができる。
【0042】
接着層は、単位面積当たり、少なくとも0.5g/m
2〜20g/m
2の重量で、0.5μm〜20μmの厚さ、好ましくは1μm〜15μmの厚さを有することが好ましい。塗布する接着剤の量および厚さは、使用する基体に依存して変化させることができ、特に、基体の吸収力に依存させることができる。
【0043】
接着剤の液滴は、6kHz〜110kHzの周波数でインクジェットプリンタヘッドから提供する。膜の通常の搬送速度は10m/分〜30m/分なので、これによって、膜の搬送方向において、360dpi〜1200dpiの解像度で液滴を塗布することができる。
【0044】
±6%以下の許容差で、2plから50plの体積を有する接着剤の液滴は、好ましくはインクジェットプリントヘッドから供給する。上述したような解像度及び搬送速度で、必要量の接着剤を均一に転写層に塗布することができる。
【0045】
±15%以下の許容差かつ5m/sから10m/sの飛翔速度でインクジェットプリンタから接着剤が供給されることが好ましい。これによって、特に、プリンタヘッドから転写層へのドラフト中に、接着剤が偏向するのを最小化することができる。その結果、接着剤を転写層の所望の領域に塗布することができる。
【0046】
接着剤は、40℃〜45℃の温度範囲および/または5mPa・s〜20mPa・sの粘度、好ましくは7mPa・sから15mPa・sの粘度で転写層上に塗布する。プリンタヘッドの温度調節は、接着剤の粘度を所望の値にする。接着剤のサイズおよび形状は粘度に依存し、上述した値に設定することによって、接着剤を最適な状態で塗布することができるようになる。
【0047】
接着剤が、プリンタヘッドから吐き出され、周囲の空気あるいは転写層に接触するや否や、接着剤は冷却され、その粘度が増大するようになる。これは、転写した接着剤液滴の流れ、拡散を防止するものである。
【0048】
接着剤の塗布の間における、インクジェットプリンタヘッドと、基体との間隔が1mm以内であることが好ましい。これによって、接着剤のドラフトの影響を低減することができる。
【0049】
接着剤の塗布の間におけるインクジェットのプリンタヘッドと基体との相対速度は、10m/分〜30m/分であることが好ましい。
【0050】
上記相対速度、特に上述したパラメータとの組み合わせにおいて、転写層上に塗布した接着層の解像度を所望のものとすることができる。
【0051】
ここで用いる接着剤は、以下の組成を有することが好ましい(ここで%は、体積%を示すものである)。
2−フェノキシエチルアクリレート: 10%〜60%、好ましくは25%〜50%
4−(1−オキソ−2−プロペニル)モルフォリン:
5%〜40%、好ましくは10%〜25%
エクソ−1,7,7−トリメチルビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−イルアクリレート: 10%〜40%、好ましくは20%〜25%
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド:
5%〜35%、好ましくは10%〜25%
ジプロピレングリコールジアクリレート:1%〜20%、好ましくは3%〜10%
ウレタンアクリレートオリゴマー: 1%〜20%、好ましくは1%〜10%
【0052】
このような組成は、所望の特性を保障するものであり、特に、良好な塗布性を可能とする急速な硬化速度と粘度を実現するとともに、同時に安定かつ狙い通りの箇所に塗布することができるようになる。
【0053】
使用する接着剤の密度は、1g/ml〜1.5g/mlであり、好ましくは1.0g/ml〜1.1g/mlである。
【0054】
接着剤は、光学的に認識可能な形態で塗布することが有利であり、特に個別化された特徴を有する形態で塗布することが有利である。
【0055】
これによって、任意のデザインを施すことが可能になり、例えば、シリアル番号や、保護すべき物体の情報、保持者の情報などをセキュリティ要素として付与することができる。
【0056】
接着剤は、基体の転写層によって形成された光学的に識別可能な情報に関して、予め相対的に位置決めされた箇所に塗布することが有利である。
【0057】
スタンプ箔の転写層の転写領域によって形成されたデザインは、基体の転写層のすでに存在するデザインに対して相対的に形成されるものである。基体のデザインは、接着剤の塗布位置を正確に制御するものであり、特定のマークが基体上に形成されている。
【0058】
接着剤を塗布するに際して、光学的に認識可能な情報の位置は、カメラ、特にラインスキャンカメラによって検知し、接着剤の塗布位置は、検知した位置情報に基づいて制御する。
【0059】
これによって、基体のデザインに僅かなずれが生じた場合においても、塗布位置を正確に特定することができる。
【0060】
スタンプ箔を形成する前に、接着剤は予備的に硬化させておくことが好ましい。
【0061】
接着剤の予備的な硬化は、塗布性能を改善させる効果がある。これによって、スタンプ箔の転写層を基体上にローラーによってプレスする以前に、接着剤の粘度を増大させることができ、塗布した接着剤の流動や液滴同士の過度の切迫を防止することができる。その結果、スタンプ箔の転写層の基体への塗布を、そのエッジ部分を画定した状態で行うことができ、転写層の高い表面特性を実現することができる。接着剤の液滴の僅かな切迫は、液滴同士を近接させ、さらにはそれらを結合させるためには好ましい。これは、例えば、モチーフの表面およびエッジ部分において、個々の液滴が光学的に認識することができないような場合には有利である。液滴を切迫させるに際しては、所望の解像度が低減しすぎないような程度で行うことが必要である。
【0062】
接着剤の予備硬化は、接着剤を塗布した後、0.02秒から0.025秒行うことが好ましい。予備硬化の結果として、接着剤の塗布後直ちに接着剤は、基体の転写層に固定され、その結果、接着剤の液滴の流動や拡散を防止することができ、高解像度の塗布を可能とすることができる。
【0063】
予備硬化はUV光によって行うことができ、そのエネルギーは、380nm〜420nmの波長域の光の少なくとも90%である。この波長域は、上述した接着剤組成に対してラジカル硬化を実際に開始するものである。
【0064】
接着剤の予備硬化に対しては、グロスで2W/cm
2から5W/cm
2であり、正味で0.7W/cm
2から2W/cm
2である照射を行い、8mJ/cm
2から112mJ/cm
2のエネルギーが取り込まれることが好ましい。これによって、接着剤は、所望の値まで粘度が増大するとともに完全に硬化することはない。結果として、接着剤は、スタンプ箔の転写層を基体に転写するに必要な特性を有することになる。
【0065】
接着剤の予備硬化に対する照射時間は、0.02秒から0.056秒である。基体が上述したような速度で搬送され、上述した条件での照射がなされることにより、予備硬化に必要なエネルギーの入力が確保されるようになる。
【0066】
接着剤の予備硬化における粘度は、50mPa・sから200mPa・sの範囲であることが好ましい。このような粘度の増大は、転写層を基体に転写する際に、接着剤の液滴が切迫しないことを保障するものである。その結果、スタンプ箔の転写層は、接着剤の塗布解像度で、基体に実質的に転写されることになる。
【0067】
スタンプ箔の転写層を基体の一部の領域に転写するに際しては、一対の圧力ローラー間で行うことが好ましい。基体の幅方向に全体に亘って線型に圧力が負荷されるので、均一かつ高品質な転写層の形成が可能となる。
【0068】
スタンプ箔の基体への転写は、10Nから80Nの均一な圧力下で行うことが好ましい。この圧力は、基板の性質や、基体あるいはスタンプ箔のダメージや変形を考慮したものである。
【0069】
スタンプ箔の基体への転写は、接着剤の予備硬化後、0.2秒から1.7秒の範囲で行うことが好ましい。この時間は、接着剤の過度な硬化を抑制した状態で、予備硬化反応を促進させることができ、密着性を損なうことがない。
【0070】
接着剤の硬化は、スタンプ箔の転写層の基体への転写後、0.2秒から1.7秒の範囲で行うことが好ましい。通常の搬送速度では、ローラー配設部と硬化ステーションとの空間距離は十分な距離が確保されることになる。
【0071】
硬化はUV光によって行うことができ、そのエネルギーは、380nm〜420nmの波長域の光の少なくとも90%である。この波長域は、上述した接着剤組成に対してラジカル硬化を実際に開始するものである。
【0072】
接着剤の硬化に対しては、グロスで12W/cm
2から20W/cm
2であり、正味で4.8W/cm
2から8W/cm
2であり、200mJ/cm
2から900mJ/cm
2、好ましくは200mJ/cm
2から400mJ/cm
2のエネルギーが取り込まれることが好ましい。これによって、接着剤は、十分に硬化し、結果として、硬化後にスタンプ箔のキャリア層を分離する際に、転写層にダメージを与えることがない。
【0073】
接着剤の硬化に対する照射時間は、0.04秒から0.112秒である。通常の速度で搬送され、上述した条件での照射がなされることにより、硬化に必要なエネルギーの入力が確保されるようになる。
【0074】
キャリア層の分離は、接着剤の硬化後、0.2秒から1.7秒の範囲で行うことが好ましい。通常の搬送速度の場合、硬化ステーションと分離ステーションとの空間距離は十分に確保されることになる。
【0075】
基体および/またはスタンプ箔は、厚さ3μmから100μm、好ましくは厚さ7μmから23μmの、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリイミド、ABS、PET、PC、PP、PE、PVC、PSからなるキャリア層を有することが好ましい。キャリア層は、膜の製造、保存および加工の間、転写層を保護し、安定化させる。接着剤の予備硬化あるいは硬化の際には、UV光の照射は、キャリア層側から行う。したがって、キャリア層は、照射光の波長域において透明な材料から選択する。
【0076】
基体および/またはスタンプ箔を用いる場合、そのキャリア層は、アクリレートコポリマー、特には水性のポリウレタンコポリマー、好ましくはワックスフリーおよび/またはシリコーンフリーの分離層を有することが好ましい。この分離層の厚さは、0.01μmから2μm、好ましくは、0.1μmから0.5μmであり、キャリア層の表面上に配設する。分離層は、転写層の基板への転写後において、キャリア層の転写層からの分離を容易にするとともに、ダメージを与えることなく分離することを可能とする。
【0077】
基体および/またはスタンプ箔を用いる場合、その転写層は、ニトロセルロース、ポリアクリレートあるいはポリウレタンからなるワニス層を有することが好ましい。このワニス層の厚さは、0.1μmから5μm、好ましくは1μmから2μmである。このワニス層は、透明、あるいは染色により半透明、不透明とすることができる。
【0078】
ワニス層は、少なくとも1種の着色あるいは無色の色素、薄膜層システム、コレステリック液晶、染料、金属性ナノ粒子、非金属性ナノ粒子を含むことが好ましい。
【0079】
基体および/またはスタンプ箔の転写層は、ポリアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタン、およびそのコポリマーからなる複製層を有することが好ましく、これによって、転写層中の表面レリーフが光学的な変調要素、特にはホログラム、キネグラム(登録商標)、トラストシール(登録商標)、好ましくは線型あるいは交差した正弦波調の回折格子、線型あるいは交差した単一あるいは多段の矩形状の回折格子、ゼロオーダーの回折構造、非対称のレリーフ構造、ブレーズド回折格子、等方性あるいは異方性のマット構造、光回折ナノ構造、光反射ナノ構造、光集光ナノ構造、二元系あるいは連続したフレネルレンズ、二元系あるいは連続したフレネル自由曲面、マイクロレンズ構造またはそれらの組み合わせなどを考えることができる。
【0080】
これによって、模倣及び操作が難しい種々の魅力的な光学的な効果を得ることができる。
【0081】
また、基体および/またはスタンプ箔の転写層は、アルミニウム、クロム、銀、金、銅からなる金属層を有することができ、その厚さは10nmから200nm、好ましくは10nm〜50nmとすることができる。
【0082】
金属層に代えて、またはこれに加えてHRI(高屈折率)材料からなる層を設けることもできる。高屈折率材料としては、ZnS,TiOxあるいはこれらのナノ粒子を付加したワニスなどを挙げることができる。
【0083】
ワニス層および金属層は、転写層を基体に転写した後に、当該転写層に対して装飾性を付与することができる。異なるワニスおよび金属を組み合わせることによって、魅力的なデザインを実現することができる。
【0084】
基体および/またはスタンプ箔の転写層は、ポリアクリレートおよび/またはビニルアセテートからなるプライマー層を有することが好ましい。その厚さは、0.1μmから1.5μmであり、好ましくは0.5μmから0.8μmである。プライマー層は、接着剤の物理的および化学的特性を最適にすることができ、その結果、基板と転写層との接着性を基板とは独立に最適化することができる。また、プライマー層は、塗布した接着剤の流動や拡散、切迫などを防止した状態で、当該接着剤を所望の解像度で転写層上に残存させることができる。
【0085】
プライマー層は、マイクロポーラスな構造であり、表面粗さが100nmから180nm、特には120nmから160nmである。接着剤は、部分的にプライマー層を貫通し、その高解像度性を保持する。
【0086】
プライマー層の着色率は1.5cm
3/gから120cm
3/gであることが好ましく、特には10cm
3/gから20cm
3/gであることが好ましい。
【0087】
計算のために、プライマー層の組成は以下のようにした(データはグラムである)。
4900 有機溶媒エチルアルコール
150 有機溶媒トルエン
2400 有機溶媒アセトン
600 有機溶媒ガソリン 80/110
150 水
120 バインダーI:エチルメタクリレートポリマー
250 バインダーII:ビニルアセテートホモポリマー
500 バインダーIII:ビニルアセテートビニルラウレートコポリマー、固形分50±1%
400 バインダーIV:イソブチルメタクリレート
20 色素多機能酸化シリコン、平均粒径3μm
5 フィラー微粒子化アミドワックス、粒子径3μmから8μm
【0088】
この接着剤の着色率は、以下のようなものである。
【0089】
ここで、
mp=20gの多機能シリカ
f=OAV/d=300/0.4g/cm
3=750cm
3/gの多機能酸化シリコン(OAV(oil absorption value)は、油分吸収値)
m
B=120gのバインダーI+250gのバインダーII+(0.5×500g)のバインダーIII+400gのバインダーIV=1020g
m
A=0g
【0090】
このように、プライマー層の組成を考慮すると、着色率のずれを簡単な方法で知ることができる。
【0091】
プライマー層は、38mN/mから46mN/m、好ましくは41mN/mから43mN/mの表面張力を有することが好ましい。このような表面張力によれば、接着剤の液滴が上述した接着剤システムから得ることができ、接着剤の流動を防止した状態で画定した形態で接着を行うことができる。
【0092】
基体およびスタンプ箔の全ての層に、番号や連続番号を付けることができ、これによって、種々のデザインが可能となる。これらの層は、部分的に存在してもよいし、これらの層自体あるいは他の層と組み合わせてモチーフやデザインを構成してもよい。
【0093】
本発明の装置は、多層膜の基体を提供するための供給ロールを有している。ラジカル性硬化接着剤を基体の少なくとも一部に塗布する印刷装置は、基体の搬送方向における供給ロールの下流側に配設するのが好ましい。
【0094】
本発明の装置は、基体を案内するための手段を有している。この案内手段は、基体が印刷装置および/またはローラーに向けて搬送するように構成されている。案内手段は、供給ロールの次段階あるいは供給ロールに代えて配設する。
【0095】
基体の光学的特徴を検知するための第1画像取得装置を、基体の搬送方向における印刷装置の上流側に配設することが好ましい。この第1画像取得装置は、印刷装置を制御するための制御ユニットを介して印刷装置に接続される。これによって、既に説明したように、接着剤の塗布を正確に行うことができるようになるので、基体のデザイン的特徴に関連して、スタンプ箔の転写層の転写を正確に行うことができるようになる。
【0096】
ローラー配設部としては、一対のローラーを有しており、これらは適切な圧力を負荷できるように、最適なクリアランスを有している。
【0097】
クリアランスは、塗布した接着剤の切迫度合および液滴のサイズを考慮して制御する。
【0098】
多層膜の光学的特徴を検知するための第2画像取得装置を、基体の搬送方向における除去装置の下流側に配設ことが好ましい。この第2画像取得装置は、クリアランスを制御するための制御ユニットを介してローラー配設部に接続される。
【0099】
第2画像取得装置は、ラインスキャンカメラであることが好ましい。この装置は、品質制御のために用いるものである。この第2画像取得装置によって、接着剤の液滴が切迫しすぎていないか、小さすぎないか、あるいはクリアランスが適当に調節されているかを検知し、接着剤の所望の解像度を得るようにしている。
【0100】
本発明の装置は、少なくとも1つの印刷ユニットを有する印刷ラインに統合したモジュールとして構成することが好ましい。
【0101】
これによって、スタンプ箔の転写層の転写前後における印刷工程において、基体をインラインで装飾することができる。