特許第6899372号(P6899372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899372
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】多層膜の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/02 20060101AFI20210628BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20210628BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210628BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20210628BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20210628BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   B32B37/02
   B32B7/12
   B05D7/24 301P
   B05D7/24 301T
   B05D3/06 Z
   B05D1/28
   B05D3/12 E
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-506116(P2018-506116)
(86)(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公表番号】特表2018-530452(P2018-530452A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016068571
(87)【国際公開番号】WO2017021461
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年7月10日
(31)【優先権主張番号】102015112909.4
(32)【優先日】2015年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507370644
【氏名又は名称】レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロイター ウヴェ
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0145936(US,A1)
【文献】 特表2007−520023(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104582964(CN,A)
【文献】 特表2015−531697(JP,A)
【文献】 特開2010−066568(JP,A)
【文献】 特開2014−050965(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02163394(EP,A1)
【文献】 特開2010−231038(JP,A)
【文献】 特表2005−501761(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0167035(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1571730(CN,A)
【文献】 特開2014−124941(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/207165(WO,A1)
【文献】 特開2009−010372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B44C 1/16−1/175
B41F 16/00
B42D 15/00−15/08
B42D 25/00
C09J 1/00−201/10
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)基体キャリア層と少なくとも1つの層を備える基体転写層とを有する基体を提供する工程と、
b)前記基体転写層の少なくとも第1領域にUV硬化接着剤を塗布し、前記基体転写層の少なくとも第2領域には、前記UV硬化接着剤を塗布しない工程と、
c)スタンプ箔キャリア層およびスタンプ箔転写層を有するスタンプ箔の、前記スタンプ箔転写層が前記基体転写層の少なくとも前記第1領域上に塗布された前記接着剤と接触するように当該スタンプ箔を塗布する工程と、
d)前記UV硬化接着剤にUV照射を行う工程と、
e)前記スタンプ箔キャリア層を除去する工程と、
を備え、
前記スタンプ箔キャリア層を除去したとき、前記スタンプ箔転写層は、前記基体上の前記接着剤が塗布された箇所のみに残存し、
前記基体と前記スタンプ箔とは、前記スタンプ箔キャリア層と前記スタンプ箔転写層との剥離力が、前記基体キャリア層と前記基体転写層との剥離力よりも小さくなるように形成され
前記接着剤は、インクジェット印刷で塗布し、
前記接着剤は、単位面積当たり、少なくとも0.5g/m〜20g/mの重量で、0.5μm〜20μmの厚さで塗布し、及び/又は、
前記接着剤の液滴は、6kHz〜110kHzの周波数でインクジェットプリンタヘッドから提供し、及び/又は、
前記接着剤の液滴の体積は、2plから50plであり、その許容範囲は±6%以下であり、及び/又は、
前記接着剤の液滴は、5m/sから10m/sの飛散速度かつ±15%以下の許容範囲で、前記インクジェットプリンタヘッドから提供され、及び/又は、
前記接着剤は、40℃から45℃の温度範囲、かつ5mPa・sから20mPa・sの粘度で前記基体転写層上に塗布することを特徴とする、多層膜の製造方法。
【請求項2】
前記基体と前記スタンプ箔とは、前記スタンプ箔キャリア層と前記スタンプ箔転写層との剥離力が、前記基体キャリア層と前記基体転写層との剥離力より少なくとも15%低いことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記接着剤は、
2−フェノキシエチルアクリレート: 10%〜60%
4−(1−オキソ−2−プロペニル)モルフォリン:5%〜40%
エクソ−1,7,7−トリメチルビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−イルアクリレート: 10%〜40
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド:
5%〜35%
ジプロピレングリコールジアクリレート:1%〜20%
ウレタンアクリレートオリゴマー: 1%〜20%
の体積%の組成成分であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤の密度は、1g/ml〜1.5g/mlであり、及び/又は、
前記接着剤は、光学的に識別可能な形態で塗布することを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤は、前記基体転写層によって形成された光学的に識別可能な情報に関して、
予め相対的に位置決めされた箇所に塗布することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記接着剤は、前記スタンプ箔の形成前に予備硬化し、前記接着剤の予備硬化は、前記接着剤を塗布した後、0.02秒から0.025秒行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤の予備硬化はUV光によって行い、そのエネルギーは、380nm〜420nmの波長域の光の少なくとも90%であり、及び/又は、
前記接着剤の前記予備硬化に対しては、グロスで2W/cmから5W/cmであり、正味で0.7W/cmから2W/cmの照射を行い、8mJ/cmから112mJ/cmのエネルギーを取り込み、及び/又は、
前記接着剤の前記予備硬化に対する照射時間は、0.02秒から0.056秒であり、及び/又は、
前記接着剤の前記予備硬化における粘度は、50mPa・sから200mPa・sの範囲であることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記スタンプ箔の前記基体への転写は、前記接着剤の予備硬化後、0.2秒から1.7秒の範囲で行い、及び/又は、
前記接着剤の硬化は、前記スタンプ箔転写層の前記基体への転写後、0.2秒から1.7秒の範囲で行い、及び/又は、
前記接着剤の前記硬化は、380nm〜420nmの波長域の光の少なくとも90%のエネルギーのUV光によって行い、及び/又は、
前記接着剤の前記硬化に対しては、グロスで12W/cmから20W/cmであり、正味で4.8W/cmから8W/cmである照射を行い、200mJ/cmから900mJ/cmのエネルギーを取り込み、及び/又は、
前記接着剤の前記硬化に対する照射時間は、0.04秒から0.112秒であり、及び/又は、
前記スタンプ箔キャリア層の分離は、前記接着剤の硬化後、0.2秒から1.7秒の間で行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記基体キャリア層および/または前記スタンプ箔キャリア層は、厚さ3μmから100μmの、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリイミド、ABS、PET、PC、PP、PE、PVC、PSからなり、及び/又は、
前記基体および/または前記スタンプ箔を用いる場合、その転写層は、アクリレートコポリマーであり、厚さが0.01μmから2μmであり、前記基体キャリア層および/または前記スタンプ箔キャリア層の表面上に配設された分離層を有し、及び/又は、
前記基体および/または前記スタンプ箔を用いる場合、その転写層は、ニトロセルロース、ポリアクリレートあるいはポリウレタンからなるワニス層を有し、当該ワニス層の厚さは、0.1μmから5μmであり、前記ワニス層は、少なくとも1種の着色あるいは無色の色素、薄膜層システム、コレステリック液晶、染料、金属性ナノ粒子、非金属性ナノ粒子を含み、及び/又は、
前記基体転写層および/または前記スタンプ箔転写層は、ポリアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタン、およびそのコポリマーからなる複製層を有し、当該複製層によって、前記転写層中の表面レリーフが光学的な変調要素を構成し、及び/又は、
前記基体転写層および/または前記スタンプ箔転写層は、アルミニウム、クロム、銀、金、銅からなる金属層を有することができ、その厚さは10nmから200nmであり、前記基体キャリア層および/または前記スタンプ箔キャリア層から離隔して対向するワニス層の表面上に形成されており、及び/又は、
前記基体転写層および/または前記スタンプ箔転写層は、ポリアクリレートおよび/またはビニルアセテートからなるプライマー層を有し、当該プライマー層の厚さは、0.1μmから1.5μmであり、前記基体キャリア層および/または前記スタンプ箔キャリア層から離隔して対向する前記ワニス層の表面に形成されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法に用いる多層膜の製造装置であって、
スタンプ箔キャリア層およびスタンプ箔転写層を有するスタンプ箔を提供するための供給ロールと、
基体キャリア層および基体転写層を有し、前記基体転写層の少なくとも一部にラジカル硬化型の接着剤を塗布するための印刷装置と、
前記基体上に、前記スタンプ箔をプレスするためのローラー配設部と、
前記多層膜の搬送方向において、前記ローラー配設部の下流側に配置され、UV照射により前記接着剤を硬化させるUV光源と、
前記スタンプ箔キャリア層を除去するために、前記多層膜の搬送方向において、前記UV光源の下流側に配置された除去ユニットと、
を備え、
前記基体と前記スタンプ箔とは、前記スタンプ箔キャリア層と前記スタンプ箔転写層との剥離力が、前記基体キャリア層と前記基体転写層との剥離力よりも小さいことを特徴とする、多層膜の製造装置。
【請求項11】
前記印刷装置は、インクジェットプリンタヘッドとして形成し、及び/又は、
前記基体の光学的特徴を検知するための、第1画像取得装置を、前記基体の搬送方向において、前記印刷装置の上流側に配設し、前記印刷装置を制御するための制御ユニットを介して前記印刷装置に接続したことを特徴とする、請求項10に記載の製造装置。
【請求項12】
前記ローラー配設部は、圧力ローラーおよび対向圧力ローラーを有し、前記対向圧力ローラーを前記圧力ローラーに対して相対的に調整して、前記ローラー配設部のクリアランスを設定したことを特徴とする、請求項10または11に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層膜の製造方法および製造装置に関し、さらには当該製造方法および製造装置で製造した多層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
多層膜は、いわゆるドライニス塗りや塗装工程において種々の用途を有しており、特に、物体の装飾やセキュリティ要素の製造などにおいて、様々な用途を有している。多層膜は、通常、キャリア層および転写層を備えた複数の転写膜の形態で使用される。転写層は、物体に転写されて、当該物体を装飾する役割を有し、キャリア層は除去されて、廃棄される。
【0003】
光学的デザインを考慮して一部に金属膜を含む多層膜は、装飾的な用途に加えて、電気的な性質なども有するようになる。このような一部に金属膜が形成された多層膜は、種々の方法によって製造することができる。
【0004】
1つの方法としては、転写膜を水溶性のワニス、特に多孔質であって色素含有量が高いワニスで印刷し、その後、金属膜を表面全体に蒸着させた後、水溶性ワニスを水洗することによって、転写膜上の水溶性ワニスが印刷されていない部分に金属を残存させる。
【0005】
あるいは、転写膜上に金属膜を蒸着し、次いで、エッチング浴中で抵抗として作用するワニスを印刷する。金属膜は、エッチング浴中で化学的に除去され、金属膜はワニスが形成された部分において、転写膜上に残存する。
【0006】
部分的な金属皮膜の形成は、UV照射とフォトレジストとを用いて行うこともできる。この場合、フォトレジストは、金属層の表面全体に形成され、マスクを介して照射される。このマスクは分離して存在させることもできるし、転写膜の層構造の一部とすることもできる。使用するフォトレジスト(ポジティブ型のレジストあるいはネガティブ型のレジスト)に依存して、レジストの照射領域あるいは非照射領域が除去され、残存した領域はエッチングに対するレジストとして機能する。
【0007】
これらの方法は種々の制限を受ける。原理的に、これらの方法は、オフライン、すなわち蒸着および金属層の除去は、それぞれ別の装置および異なる工程で行う必要があり、統一的な1つのラインで行うことはできない。
【0008】
また、もし、染色され、装飾された層を用いる場合、さらなる装飾的な層を、金属被覆に対して正確な位置に配置する可能性がないような場合でも、装飾的構造中の金属層は予め位置を画定しておく必要がある。ここでは、“位置合わせ”すなわちインセットという文言を使用する。実際、上述した部分的な金属膜の形成方法では、水洗する際に、結局、金属膜は、その形成する領域を予め決める必要がある。また、ワニス層を伴うエッチング法でも、予め金属膜を形成する領域を画定せずに当該金属膜を形成することはできない。このため、金属膜を、他の装飾膜を形成する以前に形成することは不可能である。
【0009】
正確な位置合わせは、2以上の要素および/または層の互いの位置を正確に決定することを意味する。正確な位置合わせは、予め決められた許容範囲において変動するが、当該許容範囲は極めて小さい。また、要素および/または層の正確な位置合わせは、偽造に対する保護性を増大させる観点からも重要な特徴である。位置の正確な特定は、特に光学的に検知し得る登録マークによって行うことができる。この登録マークは、特に分離した要素、領域、層を代表するものである。“完全な登録”とは、許容範囲がゼロに近いか、実質的にゼロである場合に使用する文言である。
【0010】
エッチング法による装飾領域の、経済的に価値のあるような部分的な金属被覆は、全ての金属に対して行うことができない。例えば、クロムは、そのような方法に適していない。
【0011】
例えば、緑色の部分的に金属化された領域を実現する上では、部分的な金属化と、この金属部分を覆うような半透明層あるいは透明着色層の形成とを組み合わせることが望ましいが、上述した方法の場合、位置公差の設定、加工技術における条件の付与、または透明インクの色の重ね合わせ抜きでは実現することは難しい。
【0012】
例えば、ホログラフィック要素を含む装飾層と部分的に金属化した部分との組み合わせは、上述した方法では技術的に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、改良した多層膜を簡易かつ改良的に形成することが可能な方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、本願の請求項1の方法、請求項40の装置および請求項47の多層膜によって達成することができる。
【0015】
多層膜の製造方法は、
a)キャリア層と、少なくとも1つの層を備える転写層と、を有する基体を提供する工程と、
b)前記基体の前記転写層の少なくとも1つの第1領域にUV硬化接着剤を塗布し、前記転写層の少なくとも1つの第2領域には、前記UV硬化接着剤を塗布しない工程と、
c)キャリア層および転写層を有するスタンプ箔の、当該転写層が前記基体の前記転写層の少なくとも第1領域上に塗布された接着剤と接触するように当該スタンプ箔を塗布する工程と、
d)UV照射により前記UV硬化性接着剤を硬化する工程と、
e)前記スタンプ箔の前記キャリア層を除去する工程と、
を備える。
【0016】
そのような方法を実施するために、多層膜の製造装置は、
スタンプ箔を提供するための供給ロールと、
基体の少なくとも一部にラジカル硬化型の接着剤を塗布するための印刷装置と、
前記基体上に、前記スタンプ箔をプレスするためのローラー配設部と、
UV照射により前記接着剤を硬化させるために、前記膜の搬送方向において、前記ローラー配設部の下流側に配置されたUV光源と、
前記スタンプ箔のキャリア層を除去するために、前記膜の搬送方向において、前記UV光源の下流側に配置された除去ユニットと、
を備える。
【0017】
これによって、キャリア層および転写層を有する多層膜が得られる。転写層は、少なくとも一部に接着層と、その他の層とを有する。その他の層は、接着層に対して相対的に決められた位置に形成されている。このような多層膜は、ホットスタンプ箔、コールドスタンプ箔、積層膜、インモールド装飾膜、深絞り膜などに使用することができる。
【0018】
換言すれば、上記方法は、スタンピング転写膜を用いて、所望の形状を有し、基板としての基体上に、デジタル的に予め決定された領域を形成するものである。スタンプ箔の転写層は、接着剤が塗布された基体上のみに残存する。
【0019】
スタンプ箔の転写層は、金属層を有する。金属層は、多層膜の層構造における所望の位置(層構造の垂直方向およびデザイン上の水平方向)に形成することができる。
【0020】
金属層は、その全ての領域が金属から形成されていてもよいし、一部に金属が形成されていない領域が存在してもよい。このような金属が形成されていない領域は、接着層の印刷の解像度に比較してできるだけ小さくする。特に、金属領域は、規則的なあるいは不規則的な、微細に分散したグリッド要素、例えばドットや線状とすることができる。これによって、金属領域の半透明化を実現することができる。
【0021】
スタンプ箔は、インラインで塗布することができ、したがって、1つの印刷ラインにおいて、他の装飾層に対して位置決めすることができる。多層膜を製造するために、機械的な技術としては、移動可能なモジュールを考えることができる。この移動可能なモジュールは、要求に応じて、マルチカラー印刷装置の所望の位置において使用することができる。マルチカラー印刷装置上の異なる位置で複数の移動可能なモジュールを同時に使用することもできるし、同じ位置で順次に用いることもできる。
【0022】
スタンプ箔の転写層、したがって金属膜は、装飾構造の所望の位置に配設することができる。多層膜上に、異なる色に染色した複数の金属領域を形成することができる。
【0023】
多層膜の製造中に、1以上の移動可能なモジュールを所望の基板に対してオフラインで使用することもできる。このことは、多層膜の製造以前に、多層膜に対してスタンプ箔を形成できることを意味するものである。例えば、多層膜の製造以前に、基体に対して、特徴やモチーフを付与することができる。これらの特徴やモチーフは、独自なものであってもよいし、個人の好みのものであってもよいし、規則的に形成することもできる。多層膜の製造において、基体およびスタンプ箔は、組み合わせることができる。このことは、構造やデザイン上有利であるとともに、顧客の希望にも容易に合わせることができる。顧客は、もはや、異なる用途毎に、特別かつ完全に製造された多層膜を用いる必要がなくなり、これによって、多量の多層膜をストックしておく必要もなくなる。顧客は、用途や要求などに応じて、多層膜を形成する以前に、膜や基体上に1以上のスタンプ箔を形成することができる。
【0024】
1以上の移動可能なモジュールは、例えば、スタンプステーション前後などの、多層膜の処理セクションにおいて柔軟に配設することができる。
【0025】
1以上の移動可能モジュールは、スタンプステーションにおいて統合して用いることができる。
【0026】
1以上の移動可能モジュールは、スタンプ箔を多層膜あるいは基体に塗布することもできるし、スタンプ箔を基板に塗布することもできる。スタンプ箔を基板に塗布する際は、多層膜の形成前後、あるいは基体の基板への形成前後に行うことができる。
【0027】
基体は、機能性の転写層としてのスタンプ箔が形成されない段階では、基板として適用できる。スタンプ箔は、基体の露出した転写層に対して塗布することができ、基体上に予め存在している層に対して補完的に形成することができる。
【0028】
また、スタンプ箔は、基体の露出した上面側、特に保護層を基板に形成した後の、当該保護層上に塗布することができ、基体上に予め存在している層に対して補完的に形成することができる。
【0029】
原理的に、複数のスタンプ箔を塗布することができる。これらのスタンプ箔は、それらのデザイン上、互いに異なるようにすることが好ましい。スタンプ箔は、基体や多層膜上に、インラインやオフラインで形成することができる。スタンプ箔は、基板への塗布前後に塗布することができる。
【0030】
基体は、表面全体が透明な層、あるいは一部が透明な層、半透明な層、不透明な層をモチーフあるいはパターン状に有することができる。スタンプ箔は、例えば、すでに存在している層に対して正確な位置合わせをし、あるいは正確な位置合わせをせずに、着色層あるいは金属層などの層を形成することができる。
【0031】
これらの層は、例えば、基体あるいは完成した多層膜上に形成された、コード、モチーフ、あるいはパターンなどの個人を示すものであってもよいし、単に多層膜の装飾の一部であってもよい。このことは、基体がモチーフやパターン形状の装飾的な基幹の構成要素であることを示している。また、基体は、装飾を有していなくてもよく、この場合は、スタンプ箔の層によって装飾が行われる。基体は、1以上の保護層を有し、これらの保護層上にスタンプ箔の層を塗布することができる。
【0032】
スタンプ箔の着色層あるいは金属層は、多層膜上において、例えば当該多層膜の有用な機能を示すものである。これは、基体が、電気的/電子的な機能の基幹機能を有することを示している。また、基体は機能を有していなくてもよい。この場合は、その機能は、スタンプ箔の層によって付与されることになる。このような機能の例としては、アンテナ、タッチ機能、加熱装置、ディスプレイ装置の構成要素、照明器具の構成要素、条導体などを挙げることができる。
【0033】
金属層を有するスタンプ箔を用いれば、表面全体が金属化された転写層を製造可能なあらゆる金属による部分的金属化が実現可能である。
【0034】
したがって、透明なワニス層の重なりが視認されることなく、金属化された部分を所望通りに染色することができる。また、ホログラフィック効果を付与することもできる。金属化された部分の表と裏を異なる色に染色することもできる。
【0035】
金属層あるいはその他の装飾層の色、見え方などはスタンプ箔を変えることで変更することができるので、本発明の方法は柔軟性に富んでいる。
【0036】
基体とスタンプ箔とは、スタンプ箔のキャリア層とスタンプ箔の転写層との剥離力が、基体のキャリア層と基体の転写層との剥離力よりも小さいことが好ましい。これは、スタンプ箔の転写層の非接着領域とともに、スタンプ箔のキャリア層が、基体の転写層にダメージを与えることなく剥離できることを意味する。
【0037】
スタンプ箔のキャリア層とスタンプ層の転写層との剥離力が、基体のキャリア層と基体の転写層との剥離力より少なくとも15%低いことが有利であり、30%低いことが好ましく有利である。この剥離力は、引張試験機(Zwick GmbH&Co.KG,Ulm社製のZwick Z005)によって決定することができる。スタンプ箔あるいは基体は、下側のホルダーに平坦に接着する。その後、剥離すべき層を、引張試験機によって垂直に剥離する。剥離力は、ロードセルによって決定する。
【0038】
好ましい態様において、接着層は、スクリーン印刷やフレキソグラフィによって塗布することができる。しかしながら、接着層は、インクジェット印刷によって塗布することが好ましい。
【0039】
スタンプ箔の転写層の転写領域の構造は、接着剤の塗布の際に、好ましくはインクジェット印刷を用いてデジタル的に形成することができる。その結果、個々の画像面には、個人的なもの、個人の好みのものを表すことができる。また、印刷工程中に、インラインで、金属領域の形状を所望の形状に変化させることができる。
【0040】
接着剤の塗布に対しては、1インチ当たり300〜1200のノズルヘッドを有するものを用いることが好ましい。これによって、接着剤の高解像度塗布が可能となり、微細な膜構造の転写が可能となる。プリントヘッドが高解像度になると、転写層に対する1インチ当たりの接着剤の液滴の解像度も向上させることができる。
【0041】
接着剤の塗布に際して、インクジェットプリントヘッドのノズル径は、15μm〜25μmであり、その誤差が±5μm以下であって、ノズルスペースが50μm〜150μmであり、その誤差が±5μm以下であることが好ましい。小さいノズルスペース、特に印刷方向に垂直な方向の小さいノズルスペースは、転写層上の接着剤の液滴を互いに十分に近接させることができ、場合によってはオーバーラップさせることができるようになる。したがって、塗布面全体に良好な接着効果を得ることができる。
【0042】
接着層は、単位面積当たり、少なくとも0.5g/m〜20g/mの重量で、0.5μm〜20μmの厚さ、好ましくは1μm〜15μmの厚さを有することが好ましい。塗布する接着剤の量および厚さは、使用する基体に依存して変化させることができ、特に、基体の吸収力に依存させることができる。
【0043】
接着剤の液滴は、6kHz〜110kHzの周波数でインクジェットプリンタヘッドから提供する。膜の通常の搬送速度は10m/分〜30m/分なので、これによって、膜の搬送方向において、360dpi〜1200dpiの解像度で液滴を塗布することができる。
【0044】
±6%以下の許容差で、2plから50plの体積を有する接着剤の液滴は、好ましくはインクジェットプリントヘッドから供給する。上述したような解像度及び搬送速度で、必要量の接着剤を均一に転写層に塗布することができる。
【0045】
±15%以下の許容差かつ5m/sから10m/sの飛翔速度でインクジェットプリンタから接着剤が供給されることが好ましい。これによって、特に、プリンタヘッドから転写層へのドラフト中に、接着剤が偏向するのを最小化することができる。その結果、接着剤を転写層の所望の領域に塗布することができる。
【0046】
接着剤は、40℃〜45℃の温度範囲および/または5mPa・s〜20mPa・sの粘度、好ましくは7mPa・sから15mPa・sの粘度で転写層上に塗布する。プリンタヘッドの温度調節は、接着剤の粘度を所望の値にする。接着剤のサイズおよび形状は粘度に依存し、上述した値に設定することによって、接着剤を最適な状態で塗布することができるようになる。
【0047】
接着剤が、プリンタヘッドから吐き出され、周囲の空気あるいは転写層に接触するや否や、接着剤は冷却され、その粘度が増大するようになる。これは、転写した接着剤液滴の流れ、拡散を防止するものである。
【0048】
接着剤の塗布の間における、インクジェットプリンタヘッドと、基体との間隔が1mm以内であることが好ましい。これによって、接着剤のドラフトの影響を低減することができる。
【0049】
接着剤の塗布の間におけるインクジェットのプリンタヘッドと基体との相対速度は、10m/分〜30m/分であることが好ましい。
【0050】
上記相対速度、特に上述したパラメータとの組み合わせにおいて、転写層上に塗布した接着層の解像度を所望のものとすることができる。
【0051】
ここで用いる接着剤は、以下の組成を有することが好ましい(ここで%は、体積%を示すものである)。
2−フェノキシエチルアクリレート: 10%〜60%、好ましくは25%〜50%
4−(1−オキソ−2−プロペニル)モルフォリン:
5%〜40%、好ましくは10%〜25%
エクソ−1,7,7−トリメチルビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−イルアクリレート: 10%〜40%、好ましくは20%〜25%
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド:
5%〜35%、好ましくは10%〜25%
ジプロピレングリコールジアクリレート:1%〜20%、好ましくは3%〜10%
ウレタンアクリレートオリゴマー: 1%〜20%、好ましくは1%〜10%
【0052】
このような組成は、所望の特性を保障するものであり、特に、良好な塗布性を可能とする急速な硬化速度と粘度を実現するとともに、同時に安定かつ狙い通りの箇所に塗布することができるようになる。
【0053】
使用する接着剤の密度は、1g/ml〜1.5g/mlであり、好ましくは1.0g/ml〜1.1g/mlである。
【0054】
接着剤は、光学的に認識可能な形態で塗布することが有利であり、特に個別化された特徴を有する形態で塗布することが有利である。
【0055】
これによって、任意のデザインを施すことが可能になり、例えば、シリアル番号や、保護すべき物体の情報、保持者の情報などをセキュリティ要素として付与することができる。
【0056】
接着剤は、基体の転写層によって形成された光学的に識別可能な情報に関して、予め相対的に位置決めされた箇所に塗布することが有利である。
【0057】
スタンプ箔の転写層の転写領域によって形成されたデザインは、基体の転写層のすでに存在するデザインに対して相対的に形成されるものである。基体のデザインは、接着剤の塗布位置を正確に制御するものであり、特定のマークが基体上に形成されている。
【0058】
接着剤を塗布するに際して、光学的に認識可能な情報の位置は、カメラ、特にラインスキャンカメラによって検知し、接着剤の塗布位置は、検知した位置情報に基づいて制御する。
【0059】
これによって、基体のデザインに僅かなずれが生じた場合においても、塗布位置を正確に特定することができる。
【0060】
スタンプ箔を形成する前に、接着剤は予備的に硬化させておくことが好ましい。
【0061】
接着剤の予備的な硬化は、塗布性能を改善させる効果がある。これによって、スタンプ箔の転写層を基体上にローラーによってプレスする以前に、接着剤の粘度を増大させることができ、塗布した接着剤の流動や液滴同士の過度の切迫を防止することができる。その結果、スタンプ箔の転写層の基体への塗布を、そのエッジ部分を画定した状態で行うことができ、転写層の高い表面特性を実現することができる。接着剤の液滴の僅かな切迫は、液滴同士を近接させ、さらにはそれらを結合させるためには好ましい。これは、例えば、モチーフの表面およびエッジ部分において、個々の液滴が光学的に認識することができないような場合には有利である。液滴を切迫させるに際しては、所望の解像度が低減しすぎないような程度で行うことが必要である。
【0062】
接着剤の予備硬化は、接着剤を塗布した後、0.02秒から0.025秒行うことが好ましい。予備硬化の結果として、接着剤の塗布後直ちに接着剤は、基体の転写層に固定され、その結果、接着剤の液滴の流動や拡散を防止することができ、高解像度の塗布を可能とすることができる。
【0063】
予備硬化はUV光によって行うことができ、そのエネルギーは、380nm〜420nmの波長域の光の少なくとも90%である。この波長域は、上述した接着剤組成に対してラジカル硬化を実際に開始するものである。
【0064】
接着剤の予備硬化に対しては、グロスで2W/cmから5W/cmであり、正味で0.7W/cmから2W/cmである照射を行い、8mJ/cmから112mJ/cmのエネルギーが取り込まれることが好ましい。これによって、接着剤は、所望の値まで粘度が増大するとともに完全に硬化することはない。結果として、接着剤は、スタンプ箔の転写層を基体に転写するに必要な特性を有することになる。
【0065】
接着剤の予備硬化に対する照射時間は、0.02秒から0.056秒である。基体が上述したような速度で搬送され、上述した条件での照射がなされることにより、予備硬化に必要なエネルギーの入力が確保されるようになる。
【0066】
接着剤の予備硬化における粘度は、50mPa・sから200mPa・sの範囲であることが好ましい。このような粘度の増大は、転写層を基体に転写する際に、接着剤の液滴が切迫しないことを保障するものである。その結果、スタンプ箔の転写層は、接着剤の塗布解像度で、基体に実質的に転写されることになる。
【0067】
スタンプ箔の転写層を基体の一部の領域に転写するに際しては、一対の圧力ローラー間で行うことが好ましい。基体の幅方向に全体に亘って線型に圧力が負荷されるので、均一かつ高品質な転写層の形成が可能となる。
【0068】
スタンプ箔の基体への転写は、10Nから80Nの均一な圧力下で行うことが好ましい。この圧力は、基板の性質や、基体あるいはスタンプ箔のダメージや変形を考慮したものである。
【0069】
スタンプ箔の基体への転写は、接着剤の予備硬化後、0.2秒から1.7秒の範囲で行うことが好ましい。この時間は、接着剤の過度な硬化を抑制した状態で、予備硬化反応を促進させることができ、密着性を損なうことがない。
【0070】
接着剤の硬化は、スタンプ箔の転写層の基体への転写後、0.2秒から1.7秒の範囲で行うことが好ましい。通常の搬送速度では、ローラー配設部と硬化ステーションとの空間距離は十分な距離が確保されることになる。
【0071】
硬化はUV光によって行うことができ、そのエネルギーは、380nm〜420nmの波長域の光の少なくとも90%である。この波長域は、上述した接着剤組成に対してラジカル硬化を実際に開始するものである。
【0072】
接着剤の硬化に対しては、グロスで12W/cmから20W/cmであり、正味で4.8W/cmから8W/cmであり、200mJ/cmから900mJ/cm、好ましくは200mJ/cmから400mJ/cmのエネルギーが取り込まれることが好ましい。これによって、接着剤は、十分に硬化し、結果として、硬化後にスタンプ箔のキャリア層を分離する際に、転写層にダメージを与えることがない。
【0073】
接着剤の硬化に対する照射時間は、0.04秒から0.112秒である。通常の速度で搬送され、上述した条件での照射がなされることにより、硬化に必要なエネルギーの入力が確保されるようになる。
【0074】
キャリア層の分離は、接着剤の硬化後、0.2秒から1.7秒の範囲で行うことが好ましい。通常の搬送速度の場合、硬化ステーションと分離ステーションとの空間距離は十分に確保されることになる。
【0075】
基体および/またはスタンプ箔は、厚さ3μmから100μm、好ましくは厚さ7μmから23μmの、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリイミド、ABS、PET、PC、PP、PE、PVC、PSからなるキャリア層を有することが好ましい。キャリア層は、膜の製造、保存および加工の間、転写層を保護し、安定化させる。接着剤の予備硬化あるいは硬化の際には、UV光の照射は、キャリア層側から行う。したがって、キャリア層は、照射光の波長域において透明な材料から選択する。
【0076】
基体および/またはスタンプ箔を用いる場合、そのキャリア層は、アクリレートコポリマー、特には水性のポリウレタンコポリマー、好ましくはワックスフリーおよび/またはシリコーンフリーの分離層を有することが好ましい。この分離層の厚さは、0.01μmから2μm、好ましくは、0.1μmから0.5μmであり、キャリア層の表面上に配設する。分離層は、転写層の基板への転写後において、キャリア層の転写層からの分離を容易にするとともに、ダメージを与えることなく分離することを可能とする。
【0077】
基体および/またはスタンプ箔を用いる場合、その転写層は、ニトロセルロース、ポリアクリレートあるいはポリウレタンからなるワニス層を有することが好ましい。このワニス層の厚さは、0.1μmから5μm、好ましくは1μmから2μmである。このワニス層は、透明、あるいは染色により半透明、不透明とすることができる。
【0078】
ワニス層は、少なくとも1種の着色あるいは無色の色素、薄膜層システム、コレステリック液晶、染料、金属性ナノ粒子、非金属性ナノ粒子を含むことが好ましい。
【0079】
基体および/またはスタンプ箔の転写層は、ポリアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタン、およびそのコポリマーからなる複製層を有することが好ましく、これによって、転写層中の表面レリーフが光学的な変調要素、特にはホログラム、キネグラム(登録商標)、トラストシール(登録商標)、好ましくは線型あるいは交差した正弦波調の回折格子、線型あるいは交差した単一あるいは多段の矩形状の回折格子、ゼロオーダーの回折構造、非対称のレリーフ構造、ブレーズド回折格子、等方性あるいは異方性のマット構造、光回折ナノ構造、光反射ナノ構造、光集光ナノ構造、二元系あるいは連続したフレネルレンズ、二元系あるいは連続したフレネル自由曲面、マイクロレンズ構造またはそれらの組み合わせなどを考えることができる。
【0080】
これによって、模倣及び操作が難しい種々の魅力的な光学的な効果を得ることができる。
【0081】
また、基体および/またはスタンプ箔の転写層は、アルミニウム、クロム、銀、金、銅からなる金属層を有することができ、その厚さは10nmから200nm、好ましくは10nm〜50nmとすることができる。
【0082】
金属層に代えて、またはこれに加えてHRI(高屈折率)材料からなる層を設けることもできる。高屈折率材料としては、ZnS,TiOxあるいはこれらのナノ粒子を付加したワニスなどを挙げることができる。
【0083】
ワニス層および金属層は、転写層を基体に転写した後に、当該転写層に対して装飾性を付与することができる。異なるワニスおよび金属を組み合わせることによって、魅力的なデザインを実現することができる。
【0084】
基体および/またはスタンプ箔の転写層は、ポリアクリレートおよび/またはビニルアセテートからなるプライマー層を有することが好ましい。その厚さは、0.1μmから1.5μmであり、好ましくは0.5μmから0.8μmである。プライマー層は、接着剤の物理的および化学的特性を最適にすることができ、その結果、基板と転写層との接着性を基板とは独立に最適化することができる。また、プライマー層は、塗布した接着剤の流動や拡散、切迫などを防止した状態で、当該接着剤を所望の解像度で転写層上に残存させることができる。
【0085】
プライマー層は、マイクロポーラスな構造であり、表面粗さが100nmから180nm、特には120nmから160nmである。接着剤は、部分的にプライマー層を貫通し、その高解像度性を保持する。
【0086】
プライマー層の着色率は1.5cm/gから120cm/gであることが好ましく、特には10cm/gから20cm/gであることが好ましい。
【0087】
計算のために、プライマー層の組成は以下のようにした(データはグラムである)。
4900 有機溶媒エチルアルコール
150 有機溶媒トルエン
2400 有機溶媒アセトン
600 有機溶媒ガソリン 80/110
150 水
120 バインダーI:エチルメタクリレートポリマー
250 バインダーII:ビニルアセテートホモポリマー
500 バインダーIII:ビニルアセテートビニルラウレートコポリマー、固形分50±1%
400 バインダーIV:イソブチルメタクリレート
20 色素多機能酸化シリコン、平均粒径3μm
5 フィラー微粒子化アミドワックス、粒子径3μmから8μm
【0088】
この接着剤の着色率は、以下のようなものである。
【0089】
ここで、
mp=20gの多機能シリカ
f=OAV/d=300/0.4g/cm=750cm/gの多機能酸化シリコン(OAV(oil absorption value)は、油分吸収値)
=120gのバインダーI+250gのバインダーII+(0.5×500g)のバインダーIII+400gのバインダーIV=1020g
=0g
【0090】
このように、プライマー層の組成を考慮すると、着色率のずれを簡単な方法で知ることができる。
【0091】
プライマー層は、38mN/mから46mN/m、好ましくは41mN/mから43mN/mの表面張力を有することが好ましい。このような表面張力によれば、接着剤の液滴が上述した接着剤システムから得ることができ、接着剤の流動を防止した状態で画定した形態で接着を行うことができる。
【0092】
基体およびスタンプ箔の全ての層に、番号や連続番号を付けることができ、これによって、種々のデザインが可能となる。これらの層は、部分的に存在してもよいし、これらの層自体あるいは他の層と組み合わせてモチーフやデザインを構成してもよい。
【0093】
本発明の装置は、多層膜の基体を提供するための供給ロールを有している。ラジカル性硬化接着剤を基体の少なくとも一部に塗布する印刷装置は、基体の搬送方向における供給ロールの下流側に配設するのが好ましい。
【0094】
本発明の装置は、基体を案内するための手段を有している。この案内手段は、基体が印刷装置および/またはローラーに向けて搬送するように構成されている。案内手段は、供給ロールの次段階あるいは供給ロールに代えて配設する。
【0095】
基体の光学的特徴を検知するための第1画像取得装置を、基体の搬送方向における印刷装置の上流側に配設することが好ましい。この第1画像取得装置は、印刷装置を制御するための制御ユニットを介して印刷装置に接続される。これによって、既に説明したように、接着剤の塗布を正確に行うことができるようになるので、基体のデザイン的特徴に関連して、スタンプ箔の転写層の転写を正確に行うことができるようになる。
【0096】
ローラー配設部としては、一対のローラーを有しており、これらは適切な圧力を負荷できるように、最適なクリアランスを有している。
【0097】
クリアランスは、塗布した接着剤の切迫度合および液滴のサイズを考慮して制御する。
【0098】
多層膜の光学的特徴を検知するための第2画像取得装置を、基体の搬送方向における除去装置の下流側に配設ことが好ましい。この第2画像取得装置は、クリアランスを制御するための制御ユニットを介してローラー配設部に接続される。
【0099】
第2画像取得装置は、ラインスキャンカメラであることが好ましい。この装置は、品質制御のために用いるものである。この第2画像取得装置によって、接着剤の液滴が切迫しすぎていないか、小さすぎないか、あるいはクリアランスが適当に調節されているかを検知し、接着剤の所望の解像度を得るようにしている。
【0100】
本発明の装置は、少なくとも1つの印刷ユニットを有する印刷ラインに統合したモジュールとして構成することが好ましい。
【0101】
これによって、スタンプ箔の転写層の転写前後における印刷工程において、基体をインラインで装飾することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1図1は、多層膜の一例を示す断面図である。
図2図2は、多層膜の基体を装飾するためのスタンプ箔の断面図である。
図3図3は、図1に示す多層膜を製造する方法の一例を示す工程図の断面図である。
図4図4は、図1に示す多層膜を製造する装置の一例を示す概略図である。
図5図5は、スタンプローラーのクリアランスと、接着剤の液滴との依存性を示す概略図である。
図6図6は、図4に示す装置を印刷ライン中に組み込んだ際の概略図である。
図7図7は、多層膜を基板上に形成する際の、図4に示す装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
次に、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0104】
図1は、物体の装飾、セキュリティ要素への応用などに使用することができる多層膜1を示す。
【0105】
多層膜1は、キャリア層11、分離層12、多層構造とすることが可能な保護ワニス層13、多層構造とすることが可能な装飾層14、ワニス層15、さらに多層構造とすることが可能であり、多層膜を基板上に形成する際に接着剤として機能するプライマー層16を有している。
【0106】
キャリア層11は、好ましくは、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリイミド、ABS、PET、PC、PP、PE、PVC、PSからなり、その厚さは3μmから100μmである。キャリア層11は、膜の製造、保管、加工中に、多層膜1の各層を保護し、安定化する。
【0107】
分離層12は、好ましくはアクリレートコポリマー、特には水性のポリウレタンから形成されていることが好ましく、さらには、ワックスフリー、シリコーンフリーであることが好ましい。その厚さは、0.01μmから2μmであり、好ましくは0.1μmから0.5μmであり、キャリア層11の表面上に形成する。
【0108】
分離層12は、多層膜の基板への転写後において、多層膜1の各層からキャリア層11の分離を容易にするとともに、ダメージを与えることなく分離することを可能とする。
【0109】
保護ワニス層13は、好ましくはニトロセルロース、ポリアクリレート、ポリウレタンコポリマーから構成し、その厚さは0.1μmから5μm、好ましくは1μmから2μmであり、分離層12の、キャリア層11から離隔した表面上に配設される。
【0110】
装飾層14は、多層構造として構成される。装飾層14は、金属層、高屈折率層、ワニス層、複製層や、これらの組み合わせを含むことができる。
【0111】
ワニス層は、ニトロセルロースやポリアクリレート、ポリウレタンからなり、その厚さは0.1μmから5μm、好ましくは、1μmから2μmである。このワニス層は、透明、あるいは染色により半透明、不透明とすることができる。
【0112】
ワニス層は、少なくとも1種の着色あるいは無色の色素、薄膜層システム、コレステリック液晶、染料、金属性ナノ粒子、非金属性ナノ粒子を含むことが好ましい。
【0113】
本発明の複製層は、ポリアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタン、およびそのコポリマーからなり、これによって、光学的な変調要素、特にはホログラム、キネグラム(登録商標)、トラストシール(登録商標)、好ましくは線型あるいは交差した正弦波調の回折格子、線型あるいは交差した単一あるいは多段の矩形状の回折格子、ゼロオーダーの回折構造、非対称のレリーフ構造、ブレーズド回折格子、等方性あるいは異方性のマット構造、光回折ナノ構造、光反射ナノ構造、光集光ナノ構造、二元系あるいは連続したフレネルレンズ、二元系あるいは連続したフレネル自由曲面、マイクロレンズ構造またはそれらの組み合わせなどを導入することができる。
【0114】
これによって、特に模倣や誤魔化しが困難な種々の目に見える光学的効果を実現することができる。
【0115】
一般に、好ましくは、アルミニウム、及び/又はクロム、及び/又は銀、及び/又は金、及び/又は銅からなり、厚さ10nmから200nm、好ましくは10nmから50nmの金属層を形成することができる。また、金属層は、金属色素及び/又は、プリント法による例えば金属フレークなどの金属粒子を有するワニスを用いて、特に10nmから2000nmの厚さに形成することもできる。
【0116】
金属層の代わりに、あるいは金属層に加えて、HRI(高屈折率)の材料からなる層を形成することもできる。このようなHRI材としては、ZnS、TiOxなどの金属酸化物、あるいはこれらのナノ粒子を備えたワニスである。
【0117】
ワニス層及び金属層ともに、装飾層14に所望の装飾効果を生成する。特に、異なるワニスと金属とを組み合わせることにより、魅力的なデザインを実現することができる。
【0118】
ワニス層15は、選択的なものであり、構造的にはワニス層13に相当する。
【0119】
プライマー層16は、好ましくはポリアクリレートおよび/またはビニルアセテートコポリマーからなり、その厚さは0.1μmから1.5μm、好ましくは0.5μmから0.8μmである。しかしながら、一般には、熱溶融型の接着剤、コールドシール接着剤、反応性接着剤などを、用いる基板の種類に応じて選択する。
【0120】
多層膜1の製造に関しては、最初に、分離層12および保護ワニス層13がキャリア層11上に形成される。選択的には、装飾層14の他の1以上の層を形成することもできる。次いで、装飾層14の少なくとも1層、好ましくは一部金属化した層をコールドスタンプ箔2をスタンプして形成し、その後、装飾層の他の層を順次形成する。
【0121】
コールドスタンプ箔2の例は、図2に示されている。コールドスタンプ箔は、キャリア層21、分離層22、保護ワニス層23、金属層24、プライマー層25を有している。
【0122】
キャリア層21、分離層22、保護ワニス層23、プライマー層25は、多層膜1のキャリア層11、分離層12、保護ワニス層13、プライマー層16に相当するものである。しかしながら、分離層12の剥離力は、分離層22の剥離力よりも大きい。
【0123】
金属層24は、全面蒸着あるいはスパッタリングによって形成することができ、好ましくは、アルミニウム、クロム、銀、金、銅などから形成し、厚さは10nmから200nm、好ましくは10nmから50nmである。また、金属層は、金属色素、あるいは金属フレークなどの金属粒子を有するワニスを用いて、印刷法により形成することができる。ワニスの厚さは、10nmから2000nmである。
【0124】
図3に示す多層膜1の製造工程において、基体17は、少なくともキャリア層11、分離層12および保護ワニス層13を有している。装飾層14の1以上の層は、基体17に含まれている。
【0125】
接着層18は、基体17の、キャリア層11から離隔した側の表面上に部分的に形成されている。これによって、保護ワニス層23、金属層24、プライマー層25からなるスタンプ箔2の転写層26において、モチーフあるいはデザインを形成する。
【0126】
接着層の塗布は、図4に示す装置3により、インクジェットプリンタヘッド31の手段によって行う。
【0127】
インクジェットプリンタヘッド31は、好ましくはピエゾドロップオンデマンド型のプリンタヘッドとして形成することができる。プリンタヘッド31は、高品質な塗布を行うために、特別な物理的解像度、液滴サイズ、ノズルスペースを有する必要がある。
【0128】
ノズルは、複数の列状に配列し、そのピッチは、300npi(個/インチ)から1200npi(個/インチ)である。このような印刷方向と直交する方向にノズルを狭ピッチで配設することにより、接着剤の液滴は、印刷方向と直交する方向において互いに近接するか、あるいは接着剤の品質に応じて接触するようになる。npiは印刷した膜のdpi(ドット/インチ)に相当する。
【0129】
一定の塗布結果を得るためには、ノズル径が15μmから25μmであって、その許容範囲が±5μmである場合、好ましいノズルスペースは50μmから150μmである。
【0130】
グレースケールの技術を用いることにより、同一の液滴に対してグレーシェードを生成することができる。グレーシェードは、既に印刷された液滴に対して同一サイズの液滴を吹き付けることによって生成することができる。基体17上における接着剤の量は印刷中のグレーシェードに似た挙動を示す。
【0131】
接着剤の量は、基体17の表面における吸収性に依存して変化する。膜上の接着剤の量は、好ましくは1.2g/mから12.6g/mであり、これによって、基板4に対して完全な膜を形成することができる。塗布した接着剤の厚さは、1.205μmから12.655μmである。
【0132】
基体17を接着剤18に対して最適な濡れ性を有するようにするためには、その表面張力は38mN/mから46mN/mの範囲であることが必要であり、特に41mN/mから43mN/mの範囲において最適なインクトラップを保証する。
【0133】
印刷方向において高解像度で液滴を形成するには、インクジェットプリンタヘッド31のピエゾアクチュエーターを6kHzから110kHzで駆動させる必要があり、これによって、10m/分から30m/分の印刷基板の搬送速度(すなわち基体17の搬送速度)において、360dpiから1200dpiの解像度で印刷することができる。
【0134】
液滴を放出する際のインクジェットプリンタヘッド31のノズルチャンバ内の圧力は、好ましくは1barから1.5barであり、この範囲を超えてはならない。この範囲を超えると、ピエゾアクチュエーターに対してダメージを与えてしまう。残時間においては、ノズルの開口部における圧力を約−5mbarから−25mbarの負の圧力に設定して、インクの漏れを防止する。
【0135】
接着剤の液滴を微細に保持するために、基体17からインクジェットプリンタヘッド31までの距離は1mmを超えてはならない。
【0136】
液滴の体積は、2plから50plであり、その許容範囲は±6%以下である。この場合、基体17上において必要かつ均一な量の接着剤を塗布することができる。
【0137】
液滴の落下速度は、好ましくは5m/秒から10m/秒であり、許容範囲は±15%である。これによって、全ての接着剤の液滴を正確に順次に配設することができる。個々の液滴の落下速度の違いがあまりにも大きいと、乱れた印刷画像となってしまう。
【0138】
液滴のサイズは、接着剤の粘度に依存する。接着剤を最適に印刷するには、粘度は5mPa・sから20mPa・sであることが好ましく、特には10mPa・sから15mPa・sである。
【0139】
接着剤の粘度を一定に保持するためには、インクジェットプリンタヘッド31すなわち接着剤供給システムを加熱しなければならない。上述した粘度を得るには、接着剤温度を40℃から45℃とする。
【0140】
接着剤の液滴の飛散および基体17への衝突によって、当該液滴は冷却されて、粘度は約20mPa・sから50mPa・sにまで増大する。このような粘度の増大は、基体17上での接着剤の流動および拡散を抑制するものである。
【0141】
スタンプ箔2は、供給ロール32から供給される。基体17およびスタンプ箔2は、偏向ローラー33を介して互いに平行に案内される。これによって、スタンプ箔および基体17の、キャリア層11,21から離隔した側の面同士が互いに対向するようになる。スタンプローラー34および対向する圧力ローラー35によって、スタンプ箔2は、基体17にプレスされる。
【0142】
スタンプローラー34は、平滑な面を有する固体のプラスチックあるいはゴムからなり、その硬さは、70°ショアAから90°ショアAである。
【0143】
対向圧力ローラー35は、60°ショアAから95°ショアAの範囲の硬さを有する材料、好ましくは80°ショアAから95°ショアAの範囲、および/または450HV(ビッカース硬さ)10から520HV 10、好ましくは465HV 10から500HV 10の範囲の硬さを有する材料から形成する。このような材料としては、プラスチック、シリコーン、アルミニウムや鋼などの金属を挙げることができる。スタンプローラー34および対向圧力ローラー35の半径は1cmから3cmである。
【0144】
スタンプローラー34によって線型的な圧力が基板に作用するが、その範囲は、基板の性質に依存して10Nから80Nの範囲とすることが好ましい。
【0145】
接触圧力を調整するために、スタンプローラー34および対向圧力ローラー35は、互いの方向に移動可能できるように構成されており、これによって、ローラー間のクリアランスを調整することができる。
【0146】
接着剤18は、UV光源36による照射によって十分に硬化させることができる。
【0147】
光源36は、LED UVランプとして形成することが好ましく、これによって、接着剤内部のラジカル鎖を十分に反応させることができる。
【0148】
UV光源36からの距離を1mmから2mmとすることによって、十分な硬化を行うことができるとともに、UV光源36とスタンプ箔2との接触を避けることができる。UV光源36の照射窓は、機械の長さ方向において20mmから40mmとする。
【0149】
UV光の強度は、12W/cmから20W/cmの範囲とすることが好ましく、これによって、10m/分から30m/分の搬送速度(あるいはより高い搬送速度)で、接着剤の硬化を十分に行うことができる。
【0150】
上述した要件を考慮することにより、この方法における接着剤は、約4.8W/cmから8.0W/cmの正味のUV照射強度で照射されることになる。これは、0.112秒(10m/分の搬送速度で、20mmの窓幅の場合)から0.040秒(30m/分の搬送速度で、20mmの窓幅)の照射時間で、約537mJ/cmから896mJ/cmの強度のエネルギーが照射されたことに相当する。なお、この範囲は、要求される硬化条件に依存して変化する。
【0151】
これらの値は、理論的に可能である。UV光源36の最大強度が20W/cmで、搬送速度が10m/分と低い場合、膜は十分に加熱されるようになるので、正味の照射強度は、搬送速度に依存して200mJ/cmから400mJ/cmの範囲に存在することになる。
【0152】
十分に硬化した後、スタンプ箔2は接着剤18に完全に接着し、接着剤18は基体17に完全に接着するようになる。次いで、スタンプ箔のキャリア層は、除去ローラー37によって除去され、スプール38に巻回されるようになる。スタンプ箔2の、金属層24を有する転写層26は、そのまま接着剤で被覆された基体17上に残存する。したがって、所望のデザインを得ることができる。
【0153】
装置3は、2以上のラインスキャンカメラ39a,39bを有している。カメラ39aは、装置の入り口側に設けられ、基体17の光学的特徴、例えば、デザイン的な要素やマークを検知するようにしている。このような検知によって、プリンタヘッド31を動作させ、当該特徴部分に対して接着剤のパターンを正確に形成する。
【0154】
カメラ39bは、装置3の出口側に位置し、スタンプ箔2の転写の品質を検知するものである。ローラー34,35間のクリアランス、したがって接触圧力は特に重要であり、図5に示すように、所定の直径の接着剤の液滴が堆積される(図5A)。もし、クリアランスが大きすぎると、接着剤の液滴は十分に切迫せず、液滴の大きさは小さくなりすぎる(図5B)。クリアランスが小さすぎると、接着剤の液滴は切迫しすぎて接着剤の液滴は大きくなりすぎてしまう(図5D)。クリアランスが適切であると、所望の大きさの液滴を得ることができる(図5C)。
【0155】
カメラ39bを使用することにより、接着剤の液滴の大きさを測定することができ、液滴の大きさが設定値と異なった場合は、ローラー34、35のクリアランスを調整して良好な転写品質が常に得られるようにする。
【0156】
図6に示すように、装置3は、印刷ライン4中に組み込むことができる。その結果、基体17へのスタンプ箔2の転写は、印刷工程においてインラインで行うことができる。基体17のキャリア層11は、第1プール41から供給され、その後、第1印刷ユニット42,43で、基体17に対してコーティングを施す。
【0157】
次いで、装置3において、スタンプ箔2の転写を行い、多層膜1の装飾層14を少なくとも部分的に形成する。装飾層14の残りの層は、下流側に配設された印刷ユニット44,45で基体17上に転写する。その結果、多層膜1が完成し、スプール46に対して巻回する。
【0158】
図7に示すように、装置3は、多層膜1を基板51に対して形成する直前あるいは直上に配設することができる。基体17は、好ましくはスプールから供給する。しかしながら、基体のキャリア層のみをスプールから供給することもできる。また、スプールと装置3との間に、さらに印刷ユニットを配設し、基体のキャリア層上に装飾層および/または保護層を形成することもできる。
【0159】
既に説明しているが、装置3内において、基体17上にスタンプ箔2を形成することができる。多層膜1を製造した後は、多層膜1はスタンプ装置5に搬送される。スタンプ装置5では、多層膜1を基板51の少なくとも一部に形成する。
【0160】
装置3およびスタンプ装置5間には、スタンプ箔2を転写するための追加の装置を配設することができる。これによって、顧客の個々の要求に応えることができるようになる。装置3、特に追加の装置3は、スタンプ装置5の下流側に配設する。
【符号の説明】
【0161】
1 多層膜
11 キャリア層
12 分離層
13 保護ワニス層
14 装飾層
15 ワニス層
16 プライマー層
17 基体
18 接着剤
2 コールドスタンプ箔
21 キャリア層
22 分離層
23 保護ワニス層
24 金属層
25 プライマー層
26 転写層
3 装置
31 インクジェットプリンタヘッド
32 供給ロール
33 偏向ローラー
34 スタンプローラー
35 対向圧力ローラー
36 UV光源
37 除去ローラー
38 スプール
39a,39b ラインスキャンカメラ
4 印刷ライン
41 第1スプール
42,43 第1印刷ユニット
44,45 下流側に配設した印刷ユニット
46 追加のスプール
5 スタンプ装置
51 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7