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特許6899387臨床発見ホイール、臨床概念を探すためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899387
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】臨床発見ホイール、臨床概念を探すためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 15/00 20180101AFI20210628BHJP
【FI】
   G16H15/00
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-526914(P2018-526914)
(86)(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公表番号】特表2019-502985(P2019-502985A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】IB2016057019
(87)【国際公開番号】WO2017093846
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年11月11日
(31)【優先権主張番号】62/260,687
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェイラ ルーカス デ メロ
(72)【発明者】
【氏名】テオドロ ダグラス エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】チーアン ユエチェン
【審査官】 山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0058769(US,A1)
【文献】 特表2013−536503(JP,A)
【文献】 特表2013−537326(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/038063(WO,A1)
【文献】 特開2015−179319(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0161863(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0222873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 − 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフィカルユーザインタフェースにおけるホイール構造を用いて臨床情報を閲覧するための方法を実行するための電子装置により読み取り可能及び実行可能な命令を保存する持続性記憶媒体であって、前記方法は、
臨床概念を医療レポートのテキスト部分に関連付けることにより医療レポートに注記付けするステップと、
臨床概念カテゴリを表す弧部分を含むルート概念環又は弧を構築し、表示装置に表示するステップと、
前記表示された概念環又は弧に対して動作するユーザ入力装置を介して、臨床概念カテゴリを表す弧部分のユーザ選択を受信し、ユーザ選択された臨床概念カテゴリが識別されるようにするステップと、
前記ユーザ選択された臨床概念カテゴリを拡張し、前記ルート概念環又は弧を少なくとも部分的に囲む、子概念環又は弧を構築及び表示するステップであって、前記子概念環又は弧は、前記ユーザ選択された臨床概念カテゴリの臨床概念を表す弧部分を含む、ステップと、
前記表示された子概念環又は弧に対して動作するユーザ入力装置を介して、臨床概念を表す弧部分のユーザ選択を受信し、ユーザ選択された臨床概念が識別されるようにするステップと、
前記ユーザ選択された臨床概念により注記付けされた医療レポートを表す弧部分又はブロックを有するタイムラインを構築し、前記子概念環又は弧に隣接して表示するステップと、
を有する、持続性記憶媒体。
【請求項2】
前記ユーザ選択された臨床概念により注記付けされた医療レポートを表す弧部分又はブロックは、前記ユーザ選択された臨床概念により注記付けされた医療レポートのテキスト部分の少なくとも一部を表示する、請求項1に記載の持続性記憶媒体。
【請求項3】
前記タイムラインは、前記子概念環又は弧を少なくとも部分的に囲むタイムライン環又は弧として表示される、請求項1に記載の持続性記憶媒体。
【請求項4】
前記方法は更に、
前記タイムラインに対して操作するユーザ入力装置を介して、医療レポートを表す弧部分又はブロックのユーザ選択を受信し、それによりユーザ選択された医療レポートが特定されるステップと、
前記ユーザ選択された医療レポートをポップアップウィンドウに表示するステップと、
を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の持続性記憶媒体。
【請求項5】
前記医療レポートは、放射線レポートを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の持続性記憶媒体。
【請求項6】
前記注記付けするステップは、自然言語処理及び正規表現の1つ以上を用いて、前記医療レポートのテキスト部分を注記付けし、医療オントロジーにおいて定義された臨床概念に、テキスト部分を関連付けるステップを有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の持続性記憶媒体。
【請求項7】
前記子概念環又は弧を構築及び表示するステップは、
前記ユーザ選択された臨床概念カテゴリを拡張する前記子概念環又は弧を構築及び表示した後に、前記表示された子概念環又は弧に対して操作するユーザ入力装置を介して、前記子概念環又は弧の弧部分のユーザ選択を受信し、それにより、更なる拡張のための中間臨床概念が特定されるステップと、
前記ユーザ選択された中間臨床概念を拡張し、以前に表示された子概念環又は弧を少なくとも部分的に囲み、前記ユーザ選択された中間臨床概念のサブ概念である臨床概念を表す弧部分を含む、子概念環又は弧を構築及び表示するステップと、
を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の持続性記憶媒体。
【請求項8】
前記子概念環又は弧を構築及び表示するステップは、
スクロールアイコンにおいて終了する端を持つ弧として前記子概念環又は弧を表示するステップと、
前記ユーザ入力装置を介した前記スクロールアイコンのユーザ起動に応答して、前記子概念弧をスクロールし、前記ユーザ選択された臨床概念カテゴリの少なくとも1つの更なる臨床概念を表す少なくとも1つの更なる弧部分を表示するステップと、
を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の持続性記憶媒体。
【請求項9】
ルート領域及び外向きに拡張した領域を含む医療情報を表示するための電子装置であって、前記電子装置は、
表示装置と、
ユーザ入力装置と、
電子プロセッサと、
を有し、前記電子プロセッサは、
臨床概念カテゴリを表すアイコンを含むルート領域を構築し、前記表示装置に表示し、
前記ルート領域を少なくとも部分的に囲み、前記ルート領域から前記ユーザ入力装置を介して選択されたユーザ選択された臨床概念カテゴリの臨床概念を表すアイコンを含む、第1の外向きに拡張した領域を構築し、前記表示装置に表示し、
前記第1の外向きに拡張した領域から前記ユーザ入力装置を介して選択されたユーザ選択された臨床概念の臨床概念又は医療レポートを表すアイコンを含む第2の外向きに拡張した領域を構築し、前記表示装置に表示する
ようプログラムされ、
前記第2の外向きに拡張した領域は、医療レポートを表すアイコンの直線状の垂直なタイムラインである、電子装置。
【請求項10】
ルート領域及び外向きに拡張した領域を含む医療情報を表示するための電子装置であって、前記電子装置は、
表示装置と、
ユーザ入力装置と、
電子プロセッサと、
を有し、前記電子プロセッサは、
臨床概念カテゴリを表すアイコンを含むルート領域を構築し、前記表示装置に表示し、
前記ルート領域を少なくとも部分的に囲み、前記ルート領域から前記ユーザ入力装置を介して選択されたユーザ選択された臨床概念カテゴリの臨床概念を表すアイコンを含む、第1の外向きに拡張した領域を構築し、前記表示装置に表示し、
前記第1の外向きに拡張した領域から前記ユーザ入力装置を介して選択されたユーザ選択された臨床概念の臨床概念又は医療レポートを表すアイコンを含む第2の外向きに拡張した領域を構築し、前記表示装置に表示する
ようプログラムされ、
前記第2の外向きに拡張した領域は、医療レポートを表すアイコンの湾曲したタイムラインであり、前記湾曲したタイムラインは、前記第2の外向きに拡張した領域を少なくとも部分的に囲む、電子装置。
【請求項11】
前記第2の外向きに拡張した領域は、前記ユーザ選択された臨床概念により注記付けされた医療レポートのテキスト部分を前記アイコンに表示することにより医療レポートを表すアイコンを含む、請求項9又は10に記載の電子装置。
【請求項12】
前記第1の外向きに拡張した領域は、環又は弧領域である、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項13】
前記医療レポートは、自由形式のレポートを含み、
前記電子プロセッサは更に、自然言語処理及び正規表現の1つ以上を用いて、医療オントロジーの臨床概念により前記医療レポートを注記付けするようプログラムされた、
請求項乃至12のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項14】
前記ルート領域は、正方形の領域を有する、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療情報を閲覧及び表示するための改善されたシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の臨床ドメインにおいて、自由形式の医療レポートが作成されている。特に、放射線検査は、放射線医により準備された自由形式のレポートに要約される。放射線検査は指示され、通常は「検査の理由」が該指示に含まれる。しかしながら、実際には、放射線医は、検査の理由に言及されたもの以外の臨床的な状態を言及し得る。同様に、自由形式の放射線レポートは、臨床所見、症状、診断、手順又は解剖学的な構造といった、種々の臨床概念のカテゴリに関する内容を含み得る。斯くして、これらの自由形式の医療レポートは、患者、特に複数の慢性の又は急性の病気を持つ患者を評価する医療関係者にとって、重要な情報源である。しかしながら、これらのレポートの自由形式の性質は、有用な情報を抽出することを困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この問題に対処するひとつの方法は、自由形式のテキスト入力フィールドを持たない構造化されたレポート形式を用いることであり得る。しかしながら、斯かる構造化されたレポートは、放射線医又はその他の医療専門家を大きく制約し、ことによると、予め選択された構造化されたレポート形式に「当てはまらない」重要な所見を入力することが不可能になることに帰着するか、又は記入者の意図する意味を完全に捕捉しない態様で斯かる所見を入力することを必要としてしまうことになる。斯かる制約は特に、記入者が、元の検査の理由の範囲から大きく逸脱した主題に関する所見を特定する状況において生じる可能性が高い。
【0004】
これに加えて、電子医療記録(EMR)及び放射線情報システム(RIS)のような健康管理情報システムの採用は、放射線医及び委託医師が、大量の患者データにアクセスすることを可能としてきた。不運にも、これらのデータは、異なる健康管理データベースに広がっている。それ故、関連する患者データにアクセスするため、放射線医及び委託医師は、単に患者の情報を学習するためだけでも、異なる健康管理システムの種々の部分を閲覧するのに、かなりの時間を費やす必要がある。当該非生産的なタスクは、作業フローを混乱させ、当該健康管理の体系において保存された患者データの完全な利用を制限する。
【0005】
以下は、以上に言及された問題及びその他の問題を克服する、新規で改善されたシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様においては、グラフィカルユーザインタフェースにおけるホイール構造を用いて臨床情報を閲覧するための方法を実行するための電子装置により読み取り可能及び実行可能な命令を保存する持続性記憶媒体が提示される。前記方法は、臨床概念を医療レポートのテキスト部分に関連付けることにより医療レポートに注記付けするステップと、臨床概念カテゴリを表す弧部分を含むルート概念環又は弧を構築し、表示装置上に表示するステップと、前記表示された概念環又は弧に対して動作するユーザ入力装置を介して、臨床概念カテゴリを表す弧部分のユーザ選択を受信し、ユーザ選択された臨床概念カテゴリが識別されるようにするステップと、前記ユーザ選択された臨床概念カテゴリを拡張し、前記ルート概念環又は弧を少なくとも部分的に囲む、子概念環又は弧を構築及び表示するステップであって、前記子概念環又は弧は、前記ユーザ選択された臨床概念カテゴリの臨床概念を表す弧部分を含む、ステップと、前記表示された子概念環又は弧に対して動作するユーザ入力装置を介して、臨床概念を表す弧部分のユーザ選択を受信し、ユーザ選択された臨床概念が識別されるようにするステップと、前記ユーザ選択された臨床概念により注記付けされた医療レポートを表す弧部分又はブロックを有するタイムラインを構築し、前記子概念環又は弧に隣接して表示するステップと、を有する。
【0007】
他の態様においては、ルート領域及び外向きに拡張した領域を含む医療情報を表示するための電子装置であって、前記電子装置は、表示装置と、ユーザ入力装置と、電子プロセッサと、を有し、前記電子プロセッサは、臨床概念カテゴリを表すアイコンを含むルート領域を構築し、前記表示装置に表示し、前記ルート領域を少なくとも部分的に囲み、前記ルート領域から前記ユーザ入力装置を介して選択されたユーザ選択された臨床概念カテゴリの臨床概念を表すアイコンを含む、第1の外向きに拡張した領域を構築し、前記表示装置に表示し、前記第1の外向きに拡張した領域から前記ユーザ入力装置を介して選択されたユーザ選択された臨床概念の臨床概念又は医療レポートを表すアイコンを含む第2の外向きに拡張した領域を構築し、前記表示装置に表示するようプログラムされた、電子装置が提示される。
【0008】
利点の1つは、医療情報を表示するための小型のディスプレイに存する。
【0009】
他の利点は、医療表示装置のプロセッサ及びメモリにおける低減された負荷に存する。
【0010】
他の利点は、医療表示における種々の閲覧選択肢の継続的な認知を促進することに存する。
【0011】
他の利点は、特定の患者に対して利用可能な情報のより完全な利用に存する。
【0012】
他の利点は、多様な自由形式のテキスト源から情報を効率良く抽出及び提示することに存する。
【0013】
他の利点は、画像検査の調査を行う前に患者の迅速な臨床的な概観を可能とすることに存する。
【0014】
他の利点は、本明細書を読み理解する当業者には明らかとなるであろう。特定の実施例は、これらの利点を含まないか又はこれらの利点のうちの1つ、2つ、それ以上若しくは全てを含み得ることは理解されるべきである。
【0015】
本発明は、種々の構成要素及び構成要素の配置、並びに種々のステップ及びステップの配置の形をとり得る。図面は単に好適な実施例を説明する目的のためのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】臨床概念を探すためのシステムを図式的に示す。
図2】臨床概念注記付け部を図式的に示す。
図3】臨床発見ホイールインタフェースの例を示す。
図4(A)】臨床発見ホイールインタフェースの他の例を示す。
図4(B)】臨床発見ホイールインタフェースの他の例を示す。
図5】CDWシステムを用いた医療レポート情報を閲覧する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
放射線の業務フローは通常、医師(通常は委託医師と呼ばれる)が、患者の臨床的な状態を調査するため撮像検査を指示することで開始する。当該指示においては、委託医師は、紙又は電子要求システムを用いて「検査の理由」及び撮像モダリティを述べる。撮像検査は、技術者により実行され、一連の画像に帰着する。撮像検査の後続する読み取りにおいては、放射線医が、該一連の画像における種々の画像を調査し、1つ以上の臨床的な所見(例えば、潜在的に悪性なものとして特徴付けられる、肺における肺結節や、肝臓における疑わしい腫瘍の特定等)を作成することを目的とする。放射線医はまた、放射線レポートを通して適切な処置の推奨を提供しても良いが、委託医師はより典型的には、放射線結果及びその他の利用可能な情報に基づいて処置を決定する。委託医師は次いで、放射線レポートを読み、例えば更なる検査や治療レジメンを指示する等の、適切な動作を行う。これらの工程の間、放射線医及び委託医師は、患者の臨床的な状態を理解するため、又はレポート情報の種々の詳細を理解するため、更なる患者情報を調べる必要があり得る。
【0018】
ここで説明される手法は、臨床概念を探すことを容易化する。一手法は、同心円のセットを構築及び表示し、これによりユーザが、処理された患者情報の発見を行うことを含む。当該コンテキストに影響を受けるツールは、ここでは臨床発見ホイール(CDW)と示され、データ駆動型の戦略を用いて、関連する患者情報を提示し、ユーザ入力に基づく漸進的な情報の呈示を提供する。CDWはまた、インタラクティブなタイムラインを生成する選択された臨床概念の長期的な表示を提供しても良く、このとき所与の臨床的な状態の進行が、時間に対して識別されることができる。更に、CDWは、外部の臨床知識源への能動的なリンクを提供しても良く、このときユーザは、放射線医によりレポートされた手順又は症状についての更なる詳細を学習することができる。典型的には、ユーザ入力が、小型のルート概念環又は弧から外側に向けてCDWを拡張させ、1つ以上の外側に拡張した環又は弧の形で情報を表示する。最も外側の環、弧又はタイムラインは、患者についての医療レポートを表す。
【0019】
更に詳細には、例えば正規表現及び/又は自然言語処理(NLP)を用いて、患者の医療レポートのテキストが解析され、医療的なオントロジー(ontology)からの臨床概念をテキスト部分に注記付けする。このことは、特定のテキスト部分に注記付けが為された、医療レポートの標準化されたラベル付けを提供する。CDWにおいては、医療レポートは、臨床概念により注記付けされた関連するテキスト部分をラベル付けされたアイコン(例えば環若しくは弧の弧部分、又は直線のタイムラインのブロック)により表される。
【0020】
提案されるシステムは、アクセス可能な態様で自由形式の医療レポートから患者についての情報を表すためのツールを提供する。臨床概念注記付け部が、正規表現、自然言語処理(NLP)又はその他の解析に基づいて、自由形式の医療レポートに注記付けする。該注記付けは、SNOMED(登録商標)(Systematized Nomenclature of Medicine)オントロジー又はRadLex放射線オントロジーのような、標準的な医療オントロジーで構築される。規則エンジンが、注記付けに基づき臨床概念をレポートにリンク付けする。
【0021】
斯くして生成された患者についてのリンク付けされた情報データベースは、インタラクティブな構造を用いて表示される。当該インタラクティブな構造においては、基本的な臨床概念カテゴリ(CCC)が、ホイール(例えばCDW)のハブ又はルートを形成する。限定するものではない例として、一例においては、CCCは、幾つかの広義のSNOMEDによるCTカテゴリに従う、「臨床的な所見」、「症状」、「診断」、「医療手順」及び「身体構造」を含む。CCCのユーザ選択に応じて、例えば選択されたカテゴリ下に入る臨床概念のような子カテゴリを表示することによってホイールが外側へと拡張する。1つ以上の斯かる拡張があっても良く、最終的な最も外側のレベルはレポートのタイムラインであり、ここでは選択されたカテゴリに関連する自由形式の医療レポートが時間順に列記され、各医療レポートは、選択されたカテゴリに関連する医療レポートからのテキスト断片を表示するテキストブロックにより表される。斯かるテキストブロックをクリックすることにより、自由形式の医療レポートの全体が、例えばポップアップウィンドウに表示されても良い。レポートのタイムラインの例は、小型化のためホイールの周囲を部分的に囲むよう環状に形成されても良い。
【0022】
ここで説明された手法はまた、電子医療記録(EMR)又は放射線情報システム(RIS)等のような健康管理システム(HIS)に保存された臨床概念を探すための可視化ツールを提供する。放射線医及び委託医師は、通常の業務フローを中断することなく、臨床概念をインタラクティブに探すことができる。有利にも、このことは、ユーザの必要性及び関心に依存して、種々のレベルの詳細度で臨床概念を探すことを可能とする。例えば、放射線医は最初に、転移した肉腫により影響を受けた領域を学習するたえ身体構造部分を探し、次いで肉腫が放射線レポートにおいてどのように記述されているかを調べるため胸部のような特定の身体的構造についての更なる情報を開き、最後に特定の放射線レポートを選択して更なる詳細を閲覧しても良い。CDWは、HISのなかの異なるシステムにおける患者情報を学習するために拡張される時間を最小化する。CDWはまた、該ツールにより組織化される臨床概念についての付加的な情報を提供する、RadLex又はSNOMED(登録商標)のような医療オントロジーを用いてテキスト部分に臨床概念を関連付けても良い。
【0023】
該CDWは、患者情報を探すためのインタラクティブな方法を提供する。自然言語処理(NLP)、正規表現、及び/又は機械ディープラーニングのようなテキスト注記付けツールを用いて、該CDWは、種々の健康管理保存部(例えばデータベース)に亘って広がる自由形式のテキストデータの小型で知的な表示を生成し、斯くして多様なデータ源を統合する単一のインタフェース点を提供する。放射線医は、自身の業務フローを中断することなく、最も重要な患者事象を閲覧することができる。該CDWはまた、発見工程の間の医療的な参照を容易化する外部の臨床知識源へのリンクを提供しても良い。
【0024】
図1は、臨床概念を探すためのシステムを図式的に示す。該図を参照すると、コンピュータ100は、ディスプレイ102及び例示的なキーボード104を含む。より一般的には、ユーザ入力装置104は、キーボード、マウス、トラックボール又はその他のポインティングデバイス、ディスプレイ102のタッチ画面表示要素等を含んでも良い。臨床知識110は、医療情報(例えばSNOMED(登録商標)又はRadLexのような医療オントロジー)を保存するデータベースを含む。医療知識110は更に、病状に対する一般的な処置情報、及び患者の履歴情報を含んでも良い。自由形式の放射線レポート(又はその他の医療レポート)120は、委託医師又はその他のユーザからの指示に従った、放射線医又はその他の医療専門家により生成される。臨床概念注記付け部130は、自然言語処理(NLP)、正規表現(Regax)解析、キーワード特定、抽出されたICD−9コード又はその他のレポートのテキストに出現する医療分類コード等を用いて、医療レポート120の自由形式のテキストの特定のテキスト部分を、臨床概念により注記付けし、ここで種々の斯かる概念に関連する標準的な用語を識別するために、例えば医療オントロジー(例えばSNOMED(登録商標)又はRadLex)が利用される。キーワード又は医療コードは、効率の良い意味的な解析ツールを提供するが、コンテキストの欠如のため、誤解の虞のある結果をもたらし得る。正規表現は、幾つかのコンテキストを提供し得る(例えば「腫瘍」及び「転移」を正に又は負にリンク付けるテキストの句を識別する)。NLPは、テキストの文章を文法的に解析し、医療用語の相互関係についての豊富な情報を提供することにより、より完全なコンテキスト情報を提供する。斯かる手法により抽出された用語及び用語の組み合わせは、医療オントロジーと比較されて、テキスト部分により示唆される医療概念を特定する。臨床概念注記付け部130は、医療情報システムにおける臨床概念(例えばRISからの放射線レポート又はEMRからの患者履歴)を解析し注記付けしても良い。このことは、注記付けされた放射線レポート132(又はより一般的には、注記付けされた医療レポート、例えば放射線レポート、専門家検査レポート、組織病理学的検査レポート、又はその他の検査レポート等)をもたらす。幾つかの実施例においては、各臨床概念は、頻度や患者履歴に対する関連度に応じて重み付けされても良い。
【0025】
図2は、以上に議論された、自由形式テキストの放射線レポート120、臨床概念注記付け部130、臨床知識110、及び臨床的な注記付けされた放射線レポート132を示す。
【0026】
図1に戻ると、臨床概念規則エンジン134が、健康管理情報システムから臨床概念を探すことをガイドするための規則を生成する。これらの規則は、レポートレベル及び患者レベルという2つの異なるレベルにおける臨床概念を関連付ける。レポートレベルにおいては、注記付け部130により注記付けされた臨床概念は、臨床医療オントロジーからのカテゴリに従って分類される。例えば、臨床概念は、臨床的な所見、症状、診断、手順又は身体構造のような、SNOMED(登録商標)CT(Systematized Nomenclature of Medicine - Clinical Terms)に従って分類されても良い。これらのカテゴリは、臨床概念カテゴリ(CCC)と呼ばれる。
【0027】
患者レベルの規則は、所与の患者についての放射線レポート及びEMRデータからの臨床的に注記付けされた放射線レポート132の長期的な表示を考慮する。これらのコンテキストに影響を受ける規則は、異なる放射線レポートにおける臨床概念間をリンク付けし、斯くして所与の患者についての全ての放射線レポートにおける臨床概念の全ての参照の包括的な解析を提供する。臨床的な経験則に関連付けられたコンテキストに影響を受ける規則は、注記付け部130によりラベル付けされた疾患又は臨床的な所見に関連する処置の経過に亘って、患者について生成された医療レポートにおけるテキスト部分を識別することにより、患者の履歴に亘り疾患又は臨床的な所見がどのように進んでいるかを学習する機能を提供する。臨床概念規則エンジン134は、医療レポート120に含まれるテキスト情報を閲覧する際に、臨床発見ホイール(CDW)グラフィカルユーザインタフェース(GUI)により利用されるリンク情報を生成する。
【0028】
図3、4a及び4bを参照すると、CDW136は、ユーザインタラクションにより表示される又は隠される同心円の環又は弧に基づくインタラクティブなグラフィカルユーザインタフェースを提供する。患者健康情報から得られた臨床概念カテゴリ(CCC)を表す弧部分315の形をとるアイコンを含むルート概念環又は弧310(図示された例においては完全な環)から始めて、2つの以上に説明されたモジュールを用いて、ユーザは、ルート概念環310からCCC315を選択することができ、これに応じて、ルート概念円310の周りに(即ち部分的に囲むように)新たな環又は弧320が構築され表示される。ユーザ選択された臨床概念カテゴリのユーザ選択は、少なくとも1つのユーザ入力装置104を利用し、例えばCCC315の1つのクリック、ダブルクリック、又はマウス重ねにより選択されても良い。当該新たに生成された環又は弧320は、子概念環又は弧(CCR)320(例においては弧として表示される)と呼ばれ、ユーザ選択されたCCC315に関連する臨床概念を表す弧部分325を含む。種々のユーザ入力が種々の効果を持ち得、例えば一実施例においては、クリックとマウス重ねとの違いは、クリックが、後の命令が受信されるまで弧概念を表示する一方、マウスを重ねることが、マウスがCCCの上にあるときにのみ子概念を表示することであっても良い。更に、CCR320の例は、矢印アイコン327(即ちスクロールアイコン327)において終わる端部を含み、該アイコンを介して、ユーザはCCR320を回転させ、ユーザ選択されたCCCの下の更なる臨床概念を表示しても良い。
【0029】
CCR320は少なくとも部分的に、ルート概念環又は弧310を囲む。このことは、コンパクトな表示を提供する。他の同様なコンパクトな表示形態も考えられ、例えば、CCCが中央の正方形のルート領域においてアイコンとして表示され、CCCのユーザ選択により構築された子臨床概念が、CCCアイコンを含む中央の正方形のルート領域から外側に拡張し、少なくとも部分的に該中央の領域を囲む、追加された外側領域として表示される構成が考えられる。
【0030】
CCR320をクリックすることにより又はCCR320にマウスを重ねることにより、ユーザは、孫概念環(GCR)330と名付けられる新たな同心円の環若しくは弧又は直線の若しくは弧状のタイムライン330を生成しても良い。タイムラインの例330は、部分的にCCR320を囲み、ここでもまたコンパクトさを向上させる、弧状のタイムラインである。GCR330は、臨床(サブ)概念を表す、又は最も外側の層において、個々の医療レポート若しくはその他の少なくとも部分的にテキストベースの情報源を表す、アイコンを含む。環状のタイムライン330の各アイコン(例えばブロック又は弧部分)は、ユーザ選択された臨床概念により注記付けされた医療レポートのテキスト部分(の少なくとも一部)を含む。このことは、ユーザが、該医療レポートがユーザ選択された臨床概念に関連するとみなされた理由を即座に評価することを可能とする。コンテキストを提供するため(及び許容される空間があれば)、表示されるテキスト部分は任意に、該医療レポートの注記付けされたテキスト部分の前後に数語を含んでも良い。空間が限られている場合には、ここでもまた、タイムライン330のブロックをスクロールするためのスクロールアイコン340が提供されても良い。
【0031】
ユーザが医療レポートの全体を見たい場合には、このことは、該医療レポートを表すアイコンを選択することにより実行されても良く、このとき該選択が、該医療レポートの全体を含むポップアップウィンドウ350を表示する。代替としては、当該操作は、医療レポートがロードされる別個のプログラム(例えばテキストエディタ又はレポート閲覧プログラム)を開いても良い。提示される要約340は、子概念を含むレポートの一部を含んでも良い。
【0032】
図5を参照しながら、図1のCDWシステムを用いて医療レポート情報を閲覧する方法が説明される。動作400において、臨床概念を医療レポートのテキスト部分に関連付けることにより、注記付け部130によって医療レポート120が注記付けされる。動作402において、ルート概念環又は弧310が構築され、表示装置102に表示される。ルート概念環又は弧310は、臨床概念カテゴリ(CCC)を表す弧部分315を含む。次いで、表示されたルート概念環又は弧に対してユーザがユーザ入力装置104を操作することにより実行される動作404において、臨床概念カテゴリを表す弧部分のユーザ選択が受信される。該ユーザ操作は、ユーザ選択された臨床概念カテゴリを特定する。動作406において、子概念環又は弧320が構築及び表示され、ユーザ選択された臨床概念カテゴリを拡張し、少なくとも部分的にルート概念環又は弧を囲む。子概念環又は弧320は、ユーザ選択された臨床概念カテゴリの臨床概念を表す弧部分325を含む。
【0033】
動作404、406は任意に、1回以上繰り返されて「孫」、「ひ孫」等の臨床概念環又は弧を生成しても良く、それぞれが以前の環又は弧を囲み、それぞれが任意にスクロールアイコン327のような特徴を含んでも良いことは、理解されるであろう。このことは、ループ矢印408により図5において示されている。
【0034】
引き続き図5を参照すると、動作410において、表示された子(又は孫、ひ孫等)概念環又は弧に対して操作するユーザ入力装置104を介してユーザ入力が受信され、臨床概念を表す弧部分のユーザ選択が為される。このことは、関連する医療レポートが表示されるべき、ユーザ選択された臨床概念を特定する。動作412において、子概念環又は弧に隣接して(及び任意に少なくとも部分的に子概念環又は弧を囲んで)タイムライン330が構築され表示され、該子概念環又は弧から該タイムラインが拡張する。タイムライン330は、ユーザ選択された臨床概念により注記付けされた医療レポートを表す弧部分又はブロックを有する。
【0035】
CDW136のホイール型の要素は、医療表示装置に表示される、小型なデザインに帰着する。当該小型なデザインは、医療表示装置におけるプロセッサ及びメモリに対する、より少ない負荷に帰着し、斯くして、CDW136のコンパクトなデザインは、医療表示装置の技術的な機能を改善する。
【0036】
ここで開示された手法は、開示された手法を実行するための電子データ処理装置(例えばコンピュータ100)により読み取り可能であり実行可能である命令を保存する持続性記憶媒体により実施化されても良いことは、更に理解されるであろう。斯かる持続性記憶媒体は、ハードドライブ又はその他の磁気記憶媒体、光ディスク又はその他の光記憶媒体、RAIDディスクアレイのようなクラウドベースの記憶媒体、フラッシュメモリ又はその他の不揮発性電子記憶媒体等を有しても良い。
【0037】
勿論、以上の説明を読み理解する際に、他への変更及び変形が生じ得る。本発明は、添付される請求項又はそれと同等のものの範囲内となる限り、いずれの斯かる変更及び変形もを含むものとして解釈されることを意図している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5