特許第6899391号(P6899391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899391
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ガンマのモジュレータとしての化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20210628BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20210628BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20210628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   C07D487/04 147
   C07D487/04CSP
   A61K31/4985
   A61K31/5025
   A61P19/02
   A61P17/06
   A61P37/02
   A61P13/12
   A61P17/00
   A61P11/06
   A61P11/02
   A61P25/00
   A61P3/10
   A61P1/00
   A61P37/06
   A61P19/00
   A61P1/04
   A61P27/02
   A61P37/08
   A61P43/00 111
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-537810(P2018-537810)
(86)(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公表番号】特表2019-507120(P2019-507120A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】US2017013841
(87)【国際公開番号】WO2017127375
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】62/280,746
(32)【優先日】2016年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】コリン デルフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】チェンゲリー ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ ロバート オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ターナー マイケル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウー リフェン
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−523329(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/160654(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/035032(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/017335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩。
【化1】
(式中、はNであり、かつYはCであるか、又はXはCであり、かつYはNであり、
−R1、R1で置換された2−ピリジニル、3−ピリジニル、2−ピリミジニル及びフェニルから選択され、
1は−S(O)n7から選択され、R7はC1-3アルキルであり、nは2であり、
2は、シクロプロピル、−CF3及び−CNから独立して選択される1つ又は2つの基で置換されてもよいC1-6アルキルであり、
3は、
【化2】
から選択され、
4及びR5は独立してC1-3アルキル、シクロプロピル及びメトキシから選択され、
6はH及び−NH2から選択される
【請求項2】
XはNであり、かつYはCである、請求項1記載の式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩。
【請求項3】
3は、
【化3】
である、請求項1又は2記載の式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩。
【請求項4】
XはNであり、かつYはCであり、
−R1、R1で置換された2−ピリジニル又は3−ピリジニルであり、
1は−S(O)n7から選択され、R7はC1-3アルキルであり、nは2であり、
2はシクロプロピルで置換されてもよいC1-5アルキルであり、
3は、
【化4】
であり、
4及びR5は独立してC1-3アルキル、シクロプロピル及びメトキシから選択され、
6はHである、請求項1〜3のいずれか1項記載の式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩。
【請求項5】
下記化合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩。
【化5】
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩を含み、医薬的に許容される賦形剤又は担体を含んでいてもよい、医薬組成物。
【請求項7】
自己免疫疾患又はアレルギー性疾患を治療するための医薬組成物であって、
請求項1〜のいずれか1項に記載の式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項8】
前記自己免疫疾患又はアレルギー性疾患は、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、強皮症、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性湿疹、多発性硬化症、若年性関節リウマチ、若年性突発性関節炎、I型糖尿病、炎症性腸疾患、移植片対宿主病、乾癬性関節症、反応性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎及びブドウ膜炎から選択される、請求項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RORγの活性を変調する新規化合物、及び薬物としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
RORγ(レチノイン酸受容体関連オーファン受容体ガンマ)(“RORγt”ともいう)は、ステロイドホルモン受容体スーパーファミリーに属する転写因子である(Jetten 2006. Adv Dev Biol. 16:313−355に概説される)。RORγはT細胞の分化及びTh17細胞と呼ばれるT細胞のサブセットからのインターロイキン17(IL−17)の分泌に必要な転写因子として同定された(Ivanov、Cell 2006、126、1121−1133)。慢性炎症性疾患の治療のためのRORγ標的治療の使用の理屈は、Th17細胞及びサイトカインIL−17が乾癬、強直性脊椎炎、関節リウマチ、多発性硬化症及びクローン病を含むいくつかの自己免疫疾患の発病の開始及び進行に寄与しているという明らかな証拠に基づく(Miossec, Nature Drug Discovery 2012, 11, 763−776に概説される。Khan et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 23 (2013), 532−536も参照)。乾癬におけるIL−17及びその受容体IL−17RAの中和抗体による臨床試験の結果(Leonardi 2012、New England Journal of Medicine、366、1190−1199;Papp 2012、New England Journal of Medicine 366、1181−1189)は、この疾患の発病におけるIL−17の役割を強調している。このようなものとして、RORγの抑制による活性Th17 T細胞からのIL−17分泌の減少が、同様の治療上の利益を与え得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、新規なクラスのヘテロ芳香族化合物及びこれらの製造方法及び使用方法を含み、前記化合物は式(I)の一般構造を有し、式中の置換基は本明細書に定義されるとおりである。
【化1】
【0004】
これらの化合物は、RORγに対し良好な抑制活性を示すという点で、自己免疫及びアレルギー性疾患の治療に有用である。
【0005】
更なる態様では、本発明の目的は、許容される薬物動態特性に調和する代謝安定特性を備える化合物を提供することである。当業者に知られているように、代謝安定性に乏しい化合物は望まれる治療レベルに速やかに到達できない。本発明の好ましい化合物は、適切な薬物に調和する代謝安定特性を有することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義及び使用される通例
ここで特に定義されない用語は、総合の開示及び全体としての文脈に照らして当業者に明らかである意味を有する。
【0007】
本明細書で使用される場合、特にことわらない限り、以下の定義が適用される。
接頭辞Cx-y(x及びyはそれぞれ自然数を表す)は、直接連なって特定及び言及される鎖若しくは環構造又は鎖及び環構造の組み合わせが全体として、最大y個の炭素原子及び最小x個の炭素原子からなってもよいことを示す。
【0008】
一般に、2以上のサブグループを含む基では、特に示されない限り、最後に挙げられたサブグループは基の結合位置である。例えば、置換基“アリール−C1-3−アルキル”は、C1-3アルキル基に結合しているアリール基を意味し、前記C1-3アルキル基は、前記置換基が結合しているコア又は基に結合していることを示している。しかしながら、結合が最初に挙げられたサブグループの直前に示される場合、その最初に挙げられたサブグループは基の結合位置であり、例えば、置換基“−S(O)n1-6アルキル”は、S(O)n基に結合しているC1-6アルキル基を意味し、前記S(O)n基が、前記置換基が結合しているコア又は基に結合していることを意味する。
【0009】
アルキルは一価の飽和炭化水素鎖を表し、直鎖(非分岐)及び分岐型の両方で存在することができる。アルキルが置換される場合、置換は互いに独立に、いずれの場合も一置換又は多置換によって、水素を有する全ての炭素原子で起こり得る。
【0010】
例えば、用語“C1-5アルキル”には、H3C−、H3C−CH2−、H3C−CH2−CH2−、H3C−CH(CH3)−、H3C−CH2−CH2−CH2−、H3C−CH2−CH(CH3)−、H3C−CH(CH3)−CH2−、H3C−C(CH32−、H3C−CH2−CH2−CH2−CH2−、H3C−CH2−CH2−CH(CH3)−、H3C−CH2−CH(CH3)−CH2−、H3C−CH(CH3)−CH2−CH2−、H3C−CH2−C(CH32−、H3C−C(CH32−CH2−、H3C−CH(CH3)−CH(CH3)−及びH3C−CH2−CH(CH2CH3)−が含まれる。
【0011】
アルキルの更なる例は、メチル(Me;−CH3)、エチル(Et;−CH2CH3)、1−プロピル(n−プロピル;n−Pr)、2−プロピル(i−Pr;イソプロピル;− CH(CH32)、1−ブチル(n−ブチル;n−Bu;−CH2CH2CH2CH3)、2−メチル−1−プロピル(iso−ブチル;イソブチル;−CH2CH(CH32)、2−ブチル(sec−ブチル;sec−Bu;−CH(CH3)CH2CH3)、2−メチル−2−プロピル(tert−ブチル;t−Bu;−C(CH33)、1−ペンチル(n−ペンチル;−CH2CH2CH2CH2CH3)、2−ペンチル(−CH(CH3)CH2CH2CH3)、3−ペンチル(−CH(CH2CH32)、3−メチル−1−ブチル(iso−ペンチル;−CH2CH2CH(CH32)、2−メチル−2−ブチル(−C(CH32CH2CH3)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH3)CH(CH32)、2,2−ジメチル−1−プロピル(neo−ペンチル;−CH2C(CH33)、2−メチル−1−ブチル(−CH2CH(CH3)CH2CH3)、1−ヘキシル(n−ヘキシル;−CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2−ヘキシル(−CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3−ヘキシル(−CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2−メチル−2−ペンチル(C(CH32CH2CH2CH3)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH3)CH2CH(CH32)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH3)(CH2CH32)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CH2CH3)CH(CH32)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CH32CH(CH32)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH3)C(CH33)、2,3−ジメチル−1−ブチル(−C(CH32CH(CH32)、2,2−ジメチル−1−ブチル(−CH2C(CH32CH2CH3)、3,3−ジメチル−1−ブチル(−CH2CH2C(CH33)、2−メチル−1−ペンチル(−CH2CH(CH3)CH2CH2CH3)、3−メチル−1−ペンチル(−CH2CH2CH(CH3)CH2CH3)、1−ヘプチル(n−ヘプチル)、2−メチル−1−ヘキシル、3−メチル−1−ヘキシル、2,2−ジメチル−1−ヘキシル、2,3−ジメチル−1−ペンチル、2,4−ジメチル−1−ペンチル、3,3−ジメチル−1−ペンチル、2,2,3−トリメチル−1−ブチル、3−エチル−1−ペンチル、1−オクチル(n−オクチル)、1−ノニル(n−ノニル)、1−デシル(n−デシル)等である。
【0012】
更なる定義のないプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等は、対応する炭素原子数を有する飽和炭化水素基を意味し、全ての異性体が含まれる。
アルキルについての上記定義は、アルキルが例えばCx-yアルキルアミノ又はCx-yアルコキシのような別の(組み合わされた)基の一部である場合にも当てはまる。
【0013】
アルキルとは異なり、アルケニルは、単独で又は組み合わせて用いられる場合、少なくとも2つの炭素原子から構成され、少なくとも2つの隣接する炭素原子はC−C二重結合により結合され、炭素原子はC−C二重結合の一部でのみあることができる。少なくとも2つの炭素原子を有する前述の定義されたアルキルにおいて、隣接する炭素原子上の2つの水素原子が形式的に除去され、自由原子価が飽和されて第二の結合を形成して、対応するアルケニルが形成される。アルケニルは任意で、二重結合に関してcis若しくはtrans又はE若しくはZ配向で存在することができる。
【0014】
アルキルとは異なり、アルキニルは、単独で又は組み合わせて用いられる場合、少なくとも2つの炭素原子から構成され、少なくとも2つの隣接する炭素原子はC−C三重結合により結合されている。少なくとも2つの炭素原子を有する前述の定義されたアルキルにおいて、隣接する炭素原子上の2つの水素原子がそれぞれの場合に形式的に除去され、自由原子価が飽和されて2つの更なる結合を形成して、対応するアルキニルが形成される。
【0015】
ハロアルキル(ハロアルケニル、ハロアルキニル)は、単独で又は組み合わせて用いられる場合、炭化水素鎖の1以上の水素原子が互いに独立に、同一でも又は異なっていてもよいハロゲン原子により置換されることによって、前述の定義されたアルキルから誘導される。ハロアルキル(ハロアルケニル、ハロアルキニル)が更に置換される場合、置換は互いに独立に、それぞれの場合に一置換又は多置換によって、水素を有する全ての炭素原子で起こり得る。
【0016】
ハロアルキル(ハロアルケニル、ハロアルキニル)の例は、−CF3、−CHF2、−CH2F、−CF2CF3、−CHFCF3、−CH2CF3、−CF2CH3、−CHFCH3、−CF2CF2CF3、−CF2CH2CH3、−CF=CF2、−CCl=CH2、−CBr=CH2、−C≡C−CF3、−CHFCH2CH3、−CHFCH2CF3等である。
【0017】
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素原子に関する。
【0018】
用語“シクロアルキル”は、単独で又は組み合わせて用いられる場合、非芳香族3〜12員環(ただし好ましくは、3〜6員環)の単環式炭素環基又は非芳香族6〜10員環の縮合二環式、橋かけ二環式、プロペラン若しくはスピロ環式炭素環基を表す。C3-12シクロアルキルは飽和又は部分的に不飽和であることができ、安定な構造をとるように炭素環は環のいかなる原子により結合されることができる。3〜10員環の単環式炭素環の限定されない例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプタニル、シクロヘプテニル及びシクロヘキサノンである。6〜10員環の縮合二環式炭素環基の限定されない例には、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[3.3.0]オクタン、ビシクロ[4.3.0]ノナン及びビシクロ[4.4.0]デカニル(デカヒドロナフタレニル)である。6〜10員環の橋かけ二環式炭素環基の限定されない例には、ビシクロ[2.2.2]ヘプタニル、ビシクロ[2.2.2]オクタニル及びビシクロ[3.2.1]オクタニルである。6〜10員環のプロペラン炭素環基の限定されない例には、[1.1.1]プロペラン、[3.3.3]プロペラン及び[3.3.1]プロペランを含むがこれに限定されない。6〜10員環のスピロ環式炭素環基の限定されない例には、スピロ[3,3]ヘプタニル、スピロ[3,4]オクタニル及びスピロ[4,4]ヘプタニルを含むがこれに限定されない。
【0019】
用語“ヘテロ環”は、単独で又は組み合わせて用いられる場合、2〜10の炭素原子と、NH、NR’(R’はC1-6アルキルである)、酸素及び硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子環原子を含むヘテロ環系を表す。用語“ヘテロ環”は、安定な非芳香族4〜8員環の単環式ヘテロ環基又は安定な非芳香族6〜11員環の縮合二環式、橋かけ二環式又はスピロ環式のヘテロ環基を含む。ヘテロ環は完全飽和又は部分的に不飽和であることができる。ある実施形態においてヘテロ環はC3-6ヘテロ環、すなわち3〜6個の環炭素原子を含む。非芳香族単環式ヘテロ環基の限定されない例には、テトラヒドロフラニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−1.ラムダ6−チオモルホニル、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル及びアゼピニルが含まれる。非芳香族6〜11員環の縮合二環式基の限定されない例には、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロベンゾフラニル及びオクタヒドロベンゾチオフェニルが含まれる。非芳香族6〜11員環の橋かけ二環式基の限定されない例には、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル及び3−アザビシクロ[3.2.1]オクタニルが含まれる。非芳香族6〜11員環のスピロ環式ヘテロ環基の限定されない例には、7−アザ−スピロ[3,3]ヘプタニル、7−スピロ[3,4]オクタニル及び7−アザ−スピロ[3,4]オクタニルが含まれる。硫黄及び窒素は任意で全ての可能な酸化段階で存在することができる(例えば、硫黄:スルホキシド−SO−、スルホン−SO2−、窒素:N−オキサイド)。
【0020】
用語“アリール”は、単独で又は組み合わせて用いられる場合、6〜14個の炭素環原子を含む芳香族炭化水素環を表す(例えば、C6-14アリール、好ましくはC6-10アリール)。用語C6-14アリールは単環式環、縮合環及び少なくとも1つの環が芳香族である二環式環を含む。C6-14アリールの限定されない例には、フェニル、インダニル、インデニル、ベンゾシクロブタニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、ベンゾシクロヘプタニル及びベンゾシクロヘプテニルが含まれる。
【0021】
本明細書で使用される、用語“ヘテロアリール”は、単独で又は組み合わせて用いられる場合、2〜10個の炭素原子とN、NH、NR’(R’はC1-6アルキルである)、O及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子環原子を含むヘテロ芳香族環系を表す。用語“ヘテロアリール”は芳香族系5〜6員環の単環式ヘテロアリール及び芳香族系7〜11員環のヘテロアリール二環式又は少なくとも一つの環が芳香族である縮合環を含む。5〜6員環の単環式ヘテロアリール環の限定されない例には、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ピラニル、チアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、テトラゾリル、トリアゾリル、チエニル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル及びプリニルが含まれる。7〜11員環のヘテロアリール二環式又は縮合環の限定されない例には、ベンズイミダゾリル、1,3−ジヒドロベンゾイミダゾール−2−オン、キノリニル、ジヒドロ−2H−キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、インダゾリル、チエノ[2,3−d]ピリミジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ピロロ[2,3−b]ピリジニル及びイミダゾ[4,5−d]ピリジニルが含まれる。硫黄及び窒素は任意で全ての可能な酸化段階で存在することができる(例えば、硫黄:スルホキシド−SO−、スルホン−SO2−、窒素:N−オキシド)。
【0022】
本発明の化合物は、当業者に理解されるように、化学的に安定であることが意図される化合物のみである。例えば、“ダングリング原子価(dangling valency)”又はカルバニオンを有する化合物は、本明細書に開示する本発明の方法により意図される化合物ではない。
【0023】
特に示されない限り、明細書及び添付の特許請求の範囲中では、ある化学式又は名称は、その互変異性体及び全ての立体異性体、光学異性体及び幾何異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体等)及びラセミ体のみならず別々のエナンチオマーの異なる比率の混合物、ジアステレオマーの混合物、又はそのような異性体及びエナンチオマーが存在する場合の上述した形態のいずれかの化合物、及びそれらの医薬的に許容される塩、並びにそれらの相当する非溶媒和形態だけでなく、例えば水、エタノール等の医薬的に許容される溶媒による溶媒和形態を含むものとする。
【0024】
本発明の化合物はまた、その同位元素標識形態を含む。本発明の組み合わせの活性薬剤の同位元素標識形態は、前記活性薬剤の1つ以上の原子が天然に通常見られる前記原子の原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する1個以上の原子によって置換されているという事実以外は、前記活性薬剤と同一である。容易に商業的に入手可能であり、また十分に確立された手順に従って本発明の組み合わせの活性薬剤に取り込むことができる同位元素の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素の同位体、例えば、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clを含む。1以上の上記の同位元素及び/又は他の原子の他の同位元素を含む本発明の組み合わせの活性薬剤、そのプロドラッグ、又はそれらの医薬的に許容できる塩は、本発明の範囲に含まれることが意図されている。
【0025】
“医薬的に許容される”という表現は、理にかなった医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を生じないでヒト及び動物の組織と接触して用いるのに適し、かつ妥当な利益/リスク比と釣り合うこれらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形を表すために使用される。医薬的に許容される塩は、医薬的に許容される無機及び有機の酸及び塩基から誘導されるものを含む。適切な酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、琥珀酸、トルエン−p−スルホン酸(toluene−p−sulfuric acid)、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−硫酸及びベンゼンスルホン酸を含む。シュウ酸のような他の酸は、それ自体医薬的に許容されていないが、化合物及びそれらの医薬的に許容されている酸付加塩を得るための中間体として有用な塩を調製するのに使用されることができる。更なる医薬的に許容される塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等のような金属からのカチオンで生成することができる(Pharmaceutical salts, Birge, S.M. et al., J. Pharm. Sci., (1997), 66, 1−19も参照)。
【0026】
本発明の医薬的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から通常の化学的方法によって合成することができる。一般的に、そのような塩は水中又はエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、若しくはアセトニトリル又はそれらの混合物のような有機希釈剤中でこれらの化合物の遊離酸型又は遊離塩基型を十分な量の適切な塩基又は酸と反応させることで調製することができる。
【0027】
本発明の目的で治療的に有効な量とは、病気の症状を予防することができるか、又はこれらの症状を軽減できるか、若しくは治療を受けた患者の生存期間を延長することができる物質の量を意味する。
【0028】
本発明の実施形態
本発明の一般的な実施形態は、式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩に関する。
【化2】
【0029】
式中、XはN及びYはCであるか、XはC及びYはNであり、
Wはピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル(pyrizinyl)及びフェニルから選択され、
1は−S(O)n7、−S(O)nNR89及び−S(O)(NH)R7から選択され、R7はC1-3アルキルであり、R8及びR9は各々−Hであり、nは1又は2であり、
2は、C3-6シクロアルキル、ハロゲン、−CF3及び−CNから独立して選択される1つ又は2つの基で置換されてもよいC1-6アルキルであり、
3は、
【化3】
から選択され、
4及びR5は独立してC1-3アルキル、シクロプロピル及びメトキシから選択され、
6はH、−NH2、C1-3アルキル、シクロプロピル及びメトキシから選択される。
【0030】
他の実施形態では、上記実施形態に従って記載される式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩が提供され、
XはN及びYはCであるか、XはC及びYはNであり、
Wは2−ピリジニル、3−ピリジニル、2−ピリミジニル及びフェニルから選択され、
1は−S(O)n7から選択され、R7はC1-3アルキルであり、nは2であり、
2は、シクロプロピル、−CF3及び−CNから独立して選択される1つ又は2つの基で置換されてもよいC1-6アルキルであり、
3は、
【化4】
から選択され、
4及びR5は独立してC1-3アルキル、シクロプロピル及びメトキシから選択され、
6はH及び−NH2から選択される。
【0031】
他の実施形態では、上記いずれの実施形態に従って記載される式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩が提供され、
XはN及びYはCである。
【0032】
他の実施形態では、上記実施形態に従って記載される式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩が提供され、
XはC及びYはNである。
【0033】
他の実施形態では、上記いずれの実施形態に従って記載される式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩が提供され、
3は、
【化5】
である。
【0034】
他の実施形態では、上記いずれの実施形態に従って記載される式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩が提供され、
XはN及びYはCであり、
Wは2−ピリジニル又は3−ピリジニルであり、
1は−S(O)n7から選択され、R7はC1-3アルキルであり、nは2であり、
2はシクロプロピルで置換されてもよいC1-5アルキルであり、
3は、
【化6】
であり、
4及びR5は独立してC1-3アルキル、シクロプロピル及びメトキシから選択され、
6はHである。
【0035】
表1は、一般的な合成スキーム、実施例、及びその技術分野における既知の方法に記載された方法により作られる本発明の代表的な化合物を示す。

【0036】
ある実施形態では、本発明は、上記の表1で示された化合物1〜12からなる群から選択される化合物及び医薬的に許容されるその塩に関する。
【0037】
本発明は、更に無機又は有機の酸又は塩基との式(I)の化合物の医薬的に許容される塩に関する。
他の態様では、本発明は、薬物としての式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩に関する。
他の態様では、本発明は、患者を治療するための方法に使用するための式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩に関する。
他の態様では、本発明は、自己免疫疾患及びアレルギー性疾患の治療に使用するための式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩に関する。
他の態様では、本発明は、自己免疫疾患及びアレルギー性疾患の治療のための医薬組成物を調製するための、式(I)の化合物及び医薬的に許容されるその塩の使用に関する。
他の態様では、本発明は、患者に式(I)の化合物又は医薬的に許容されるその塩の一種を治療的に有効な量で投与することを含む、自己免疫疾患及びアレルギー性疾患の治療方法に関する。
他の態様では、本発明は、任意で通常の賦形剤及び/又は担体と組み合わせて含まれていてもよい、活性物質として式(I)の一種以上の化合物又は医薬的に許容されるその塩を含む医薬組成物に関する。
式(I)の化合物は下記に記載する一般的な合成方法を用いて作られることができ、それも本発明の一部を構成する。
【0038】
一般的な合成方法
本発明の化合物は、下記の合成方法及び合成実施例、当業者に知られている方法並びに化学文献で報告された方法により調製することができる。以下に記載する合成方法及び合成実施例において、置換基R1、R2、R3、X、Y及びWは式(I)の化合物の詳細な説明で先に定義した意味を有する。ここで記載する方法は例示を意図しており、またその主題の範囲、特許請求された化合物および実施例を制限することなく本発明の実施可能性のために意図したものである。出発化合物の調製が記載されていない場合、商業的に入手可能であり、また本明細書に記載した化合物又は方法と同じように調製することができるか、又は化学文献に記載されている。特に明記されていない限り、溶媒、温度、圧力及び他の反応条件は当業者により容易に選択されることができる。
【0039】
合成実施例
本発明の化合物の調製を実証する限定されない実施例を下記に提供する。最適な反応条件及び反応時間は用いる特定の反応物質に依存し変化し得る。特に明記されない限り、溶媒、温度、圧力及び他の反応条件は当業者により容易に選択されることができる。特定の手順が合成実施例部分で提供される。中間体及び生成物はシリカゲルクロマトグラフィー、再結晶及び/又は逆相HPLC(RP−HPLC)により精製することができる。分離されたエナンチオマーは、キラルHPLCを用いたラセミ生成物の分割により得ることができる。RP−HPLC精製方法は、0.1%ギ酸又は0.1%TFAを含む水中0〜100%までのアセトニトリルのいずれかを使用し、以下のカラムの一つを用いた。
a)Waters Sunfire OBD C18 5μM 30×150mmカラム
b)Waters XBridge OBD C18 5μM 30×150mmカラム
c)Waters OBD C8 5μM 19×150mmカラム
d)Waters Atlantis OBD C18 5μM 19×50mmカラム
e)Waters Atlantis T3 OBD 5μM 30×100mmカラム
f)Phenomenex Gemini Axia C18 5μM 30×100mmカラム
【0040】
UPLC/MS方法:
分析UPLC/MS分析方法A:
カラム:Waters CSH 2.1×50mm C18 1.7μmカラム
勾配:
【0041】
分析LC/MS分析方法B:
カラム:Waters BEH 2.1×50mm C18 1.7μmカラム
勾配:
【0042】
合成実施例で用いられた略号のリスト
【0043】
方法1:
中間体Aの合成
【化7】
【0044】
密閉管で、水(60mL)中のA−1(6g、23.73mmol)の水溶液に、A−2(4.04g、47.45mmol)及びK2CO3(6.55g;47.45mmol)を加えた。反応液を120℃で12時間撹拌する。反応の終点で、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機層をNa2SO4で乾燥し濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製しA−3を得る。
【0045】
アセトン(25mL)中のA−3(3g、11.67mmol)及びK2CO3(4.35g;31.5mmol)の溶液にクロロオキソ酢酸エチル(4.78g;35mmol)を0℃で滴下する。混合物を周囲温度で16時間撹拌する。反応の終点で、溶媒を減圧下で取り除き次の工程で直接用いられる粗A−4を得る。
【0046】
メタノール(25mL)中のA−4(3g、5.88mmol)の溶液に、メタノール中のナトリウムメトキシド(3.18g、17.64mmol)を加える。反応物を周囲温度で15時間撹拌し、1MのHClで反応混合物を酸性化する。混合物を酢酸エチルで抽出し食塩水で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し濃縮する。残渣をp−HPLCで精製しA−5を得る。
【0047】
DCM(20mL)中のA−5(500mg、1.61mmol)の懸濁液に、塩化オキサリル(0.82mL、9.64mmol)、続いてDMF(0.15mL)を加える。反応混合物を周囲温度で一晩撹拌する。反応混合物に更に塩化オキサリル(0.408mL、4.82mmol)及びDMF(0.05mL)を加え、周囲温度で1時間撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、DCMで希釈し、飽和NaHCO3で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮することで次の工程で直接用いられる粗A−6を得る。
【0048】
DMF(6mL)中のA−6(530mg、1.61mmol)の撹拌懸濁液に、DIEA(0.7mL)、続いてAH(456mg、1.93mmol)を加える。反応混合物を周囲温度で1時間撹拌する。反応物は水で反応停止され、酢酸エチルで2度抽出する。有機層を合わせて食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製し中間体Aを得る(MS(ES+):m/z 493.2/495.2[M+H]+)。
【0049】
方法2:
中間体Bの合成
【化8】
【0050】
水(40mL)中のB−1(5g、24mmol)、K2CO3(99.5g、720mmol)及びA−2(6.1g、72mmol)の混合物を密閉管の中で120℃、18時間加熱する。反応混合物を酢酸エチルで2度抽出し、有機層を合わせて食塩水で洗浄し、ろ過し、濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製し中間体B−2を得る(MS(ES+):m/z 449.3[M+H]+)。
【0051】
アセトン(15mL)中の化合物B−2(900mg、4.23mmol)及びクロロオキソ酢酸エチル(1.73g、12.7mmol)の混合物を窒素雰囲気下、40時間還流するために加熱する。反応混合物を濃縮し、残渣をp−HPLCで精製し中間体B−3を得る。
工程3及び工程4は方法1の工程4及び工程5と同様である。
【0052】
表2は中間体B〜Fの調製に用いた合成方法及び各中間体について見出されたm/zをまとめたものである。
*:第一工程では、10当量のジイソプロピルアミンを用いる(K2CO3添加せず)。
【0053】
方法3:
中間体ABの合成
【化9】
【0054】
無水メタノール(15mL)中のAB−1(300mg、1.29mmol)の溶液にナトリウムメトキシド(208mmol、3.86mmol)を加える。混合物を周囲温度で1時間撹拌する。溶液をろ過し濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製し中間体ABを得る(MS(ES+):m/z 230.8[M+H]+
【0055】
方法4:
中間体ACの合成
【化10】
【0056】
ジオキサン(10mL)中のAC−1(320mg、2.07mmol)、2,4,6−トリメチル−1,3,5,2,4,6−トリオキサトリボリナン(520mg、4.14mmol)及びNa2CO3水溶液(2M、3.1mL、6.21mmol)の溶液にジクロロパラジウム 4−ジ−tert−ブチルホスファニル−N,N−ジメチルアニリン(73mg、0.10mmol)を加える。混合物をマイクロウェーブ反応器中で130℃、40分間加熱する。混合物をメタノール(5mL)で希釈し、ろ過し、濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製しAC−2を得る。
【0057】
−10℃のエタノール(10mL)中のAC−2(363mg、2.71mmol)の溶液にBr2(432mg、2.71mmol)を加える。混合物を周囲温度で18時間撹拌する。溶液を濃縮し残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製し中間体ACを得る(MS(ES+):m/z 214.3[M+H]+)。
【0058】
方法5:
A.中間体ADの合成
【化11】
【0059】
トルエン(200mL)及びTHF(50mL)中のAC(20g、93.86mmol)の溶液にアルゴン下でホウ酸トリイソプロピル(28.2mL、122.02mmol)を加え、得られる混合物を−74℃に冷却する。滴下漏斗を通してn−ブチルリチウム(2.7Mヘキサン液、56.7mL、150.18mmol)を1時間かけて加える。添加後、反応物を−74℃で5分間撹拌し1NのHCl水溶液(85mL、255.41mmol)で反応停止する。混合物を徐々に周囲温度に温めて層を分離する。撹拌水溶液に固体のNaHCO3(10g、119.03mmol)を加える。生成物はろ過により回収し付加中間体ADを与える(MS(ES+):m/z 178.3[M+H]+)。
【0060】
B.中間体AEの合成
中間体AEは中間体ADと同様の方法で合成する。
【化12】
【0061】
方法6:
中間体AFの合成
【化13】
【0062】
ジオキサン(8mL)中のAF−1(400mg、2.69mmol)、AF−2(451mg、2.69mmol)、Reider触媒(190mg、0.29mmol)及び2MのNa2CO3水溶液(4mL)の混合物にアルゴンを充填し80℃で5時間加熱する。反応混合物を水で反応停止し、酢酸エチルで2回抽出する。有機層を合わせて食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製し中間体AFを得る(MS(ES+):m/z 155.0[M+H]+)。
【0063】
方法7:
中間体AGの合成
【化14】
【0064】
CH3CN(50mL)中のAG−1(2g、13.41mmol)の懸濁液にAG−2(2.62g、14.75mmol)を加え、反応混合物を周囲温度で20分間撹拌し、ろ過して中間体AGを得る(MS(ES+):m/z 229.7[M+H]+)。
【0065】
方法8:
中間体AHの合成
【化15】
【0066】
NMP(60.0mL)中のAH−1(8.0g、43.96mmol)、K2CO3(7.88g、57.1mmol)及びナトリウムエタンチオラート(4.06g、48.3mmol)の混合物を窒素雰囲気下、周囲温度で18時間撹拌する。反応混合物を水に投入しろ過する。固体を水で洗浄し減圧下で乾燥してAH−2を得る。
【0067】
酢酸(2.63g、43.8mmol)中のAH−2(6.0g、36.6mmol)の懸濁液に水(20.0mL)中のKMnO4(5.78g、36.3mmol)の溶液を滴下する。反応混合物を周囲温度で15時間撹拌する。混合物を水で希釈し酢酸エチルで抽出する。有機層を乾燥(Na2SO4)し、デカンテーションし、濃縮する。得られる残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製しAH−3を得る。
【0068】
メタノール(30mL)中のAH−3(3.3g、16.8mmol)及びPd/C(500mg、10%カーボン触媒)の溶液を水素雰囲気下(50psi)、周囲温度で8時間撹拌する。容器をN2で充填し、ろ過及びろ液の濃縮によりAH−4を得る。
【0069】
酢酸エチル(30mL)中のAH−4(2.5g、12.5mmol)の撹拌溶液に酢酸エチル中のHClの溶液(2N、20.0mL)を加える。溶液を周囲温度で5時間撹拌し、ろ過して中間体AHを得る(MS(ES+):m/z 201.2[M+H]+)。
【0070】
方法9
中間体AIの合成
【化16】
【0071】
ACN(1.0L)中のAI−1(82.0g、448mmol)の溶液にナトリウムt−ブトキシド(64.5g)を加える。混合物を0℃に冷却しナトリウムメタンチオレート(172.5g、20%水溶液)を滴下する。反応混合物を周囲温度で16時間撹拌する。水(800mL)を加え、混合物をDCMで抽出する。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製しAI−2を得る。
【0072】
酢酸(500mL)中のAI−2(51.5g、343mmol)の懸濁液に水(500.0mL)中のKMnO4(59.7g、36.6mmol)の溶液を5℃で滴下する。反応混合物を周囲温度で1時間撹拌する。混合物を酢酸エチルで抽出し、NaHCO3水溶液で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、濃縮する。得られる残渣を再結晶で精製しAI−3を得る。
【0073】
メタノール(200mL)中のAI−3(15.0g、82mmol)の溶液にRaNi(10.0g)、TEA(34.4mL)及びBoc2O(17.8g)を加える。混合物を周囲温度で水素雰囲気下(50psi)、12時間撹拌する。容器を窒素で充填し、ろ過し、ろ液を濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製しAI−4を得る。
【0074】
メタノール中の塩酸(500mL)中のAI−4(30.0g、105mmol)の溶液を周囲温度で12時間撹拌する。混合物を濃縮し、再結晶して中間体AIを得る(MS(ES+):m/z 187[M+H]+)。
【0075】
方法10:
中間体AJの合成
【化17】
【0076】
DMSO(100mL)中のAJ−1(10.0g、55mmol)、N,N−ジメチル−エタン−1,2−ジアミン(0.96g、11mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)(1.98g、5mmol)の混合物にAJ−2(8.27g、98mmol)を周囲温度で加える。混合物を30分間120℃まで加熱し、水で反応停止して酢酸エチルで抽出する。有機層を乾燥し、濃縮し、SiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製してAJ−3を得る。
【0077】
NH4OH(30mL)/EtOH(200mL)中のAJ−3(32.3g、165mmol)、Pd(3.50g、33mmol)の混合物を周囲温度で水素雰囲気下(15psi)、15時間撹拌する。混合物をろ過し、濃縮し、SiO2フラッシュクロマトグラフィーで精製してAJ−4を得る。
【0078】
エタノール(100mL)中のAJ−4(17.5g、87mmol)の撹拌溶液にエタノール中のHClの溶液(100mL)を加える。溶液を周囲温度で3時間撹拌し、濃縮し、再結晶して中間体AJを得る(MS(ES+):m/z 201[M+H]+)。
【0079】
方法11:
実施例4の合成
【化18】
【0080】
1,4−ジオキサン(2.7mL)及び水(0.31mL)中のA(127mg、0.26mmol)、中間体AD(69mg、0.39mmol)、K2PO4(109mg、0.52mmol)の混合物にアルゴンを充填し、Pd(dppf)Cl2(21mg、0.026mmol)を加える。混合物を窒素で脱ガスし、密閉して100℃で18時間加熱する。周囲温度まで冷却した後、混合物を水で希釈し酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機層を乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、濃縮する。得られる残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィー、続いて逆相HPLCで精製し実施例4を得る(MS(ES+):m/z 547.3[M+H]+)。
実施例3、7、8、9、10及び11は表2に列挙した適当な中間体を用いて同様に合成する。
【0081】
方法12:
実施例5の合成
【化19】
【0082】
バイアル中の混合溶媒(2mL、トルエン/DME/エタノール/水 10:6:3:1)中のAG(120mg、0.53mmol)、AK(223mg、0.88mmol)及び酢酸カリウム(129mg、1.32mmol)の混合物を窒素で脱ガスし、Pd(dppf)Cl2(43mg、0.053mmol)を加え、Arを充填し、密閉してマイクロウェーブ反応器中で90℃、1時間加熱して次工程で直接用いられる粗ALを得る。
【0083】
DMF(3mL)及び2NのNa2CO3水溶液(2.5mL)中のA(124mg、0.25mmol)及びReider触媒(36mg、0.05mmol)の混合物にALを加える。バイアルをArで充填し、110℃で30分間加熱する。反応混合物を水で反応停止し、酢酸エチルで2回抽出する。有機層を合わせて食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮する。残渣をまずSiO2フラッシュクロマトグラフィー、それからp−HPLCで精製して実施例5を得る(MS(ES+):m/z 562.5[M+H]+)。
実施例1、2及び6は表2に列挙した適当な中間体を用いて同様に合成する。
【0084】
方法13:
実施例12の合成
【化20】
【0085】
ジオキサン(2mL)及び水(0.2mL)中のB(59mg、0.13mmol)、AD(35mg、0.20mmol)及びK3PO4(55.4mg、0.26mmol)の混合物を窒素で脱ガスする。それからXPhos Pd G2(10.3mg、0.013mmol)を加え、混合物を窒素で脱ガスし、密閉し、マイクロウェーブ反応器中、100℃で30分間加熱する。反応混合物を水で反応停止し、酢酸エチルで2回抽出する。有機層を合わせて食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、濃縮する。残渣をSiO2フラッシュクロマトグラフィー、それから更に分取薄層クロマトグラフィーで精製し実施例12を得る(MS(ES+):m/z 547.5[M+H]+)。
【0086】
生物学的活性
本発明の化合物はRORγ(レチノイン酸受容体関連オーファン受容体ガンマ)のモジュレータとしての活性を有する。
【0087】
リポーター遺伝子アッセイ(RGA)
ルシフェラーゼリポーターのRORγトランス作用を抑制する試験化合物の能力を定量するために、核受容体トランス作用アッセイが実施される。同様のアッセイがKhan et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 23(2013)、521−536に記載されている。この系は、2種のプラスミド(pGL4.3、luc2P/GAL4UAS/Hygro及びpBIND、Gal4DBD hRORC LBD1−3)で同時トランスフェクトされた一時的にトランスフェクトされたHEK293細胞を使用する。ポジティブコントロールは両方のプラスミドを用いて同時に一時的にトランスフェクトされ、ネガティブコントロールはpGL4.3プロモーター配列を含む。アッセイを384個のウェルプレート中で構成し、そこで一時的にトランスフェクトされた細胞及び種々の濃度の試験化合物を20〜24時間インキュベートする。翌日、アッセイプレートが取り出され周囲温度で20〜30分間平衡にする。Bright−GloTMルシフェラーゼアッセイ系がルシフェラーゼ生成の検出のために用いられる。Bright GLO検出試薬の添加後、プレートを周囲温度で20分間インキュベートする。プレートは発光シグナルを測定するためにエンビジョンプレートリーダーで読み取られる。RLUシグナルは対照ウェル及びブランクウェルに対してPOCに変換される。
【0088】
細胞播種培地:
RPMI 1640−インビトロゲン #11875135)、2.5%FBS−インビトロゲン #26140、1xペニシリン−ストレプトマイシン−ギブコ #15140
化合物希釈緩衝液:
1X HBSS−インビトロゲン #14025126
アッセイプレート:グライナー #781080−020
Bright Glo ルシフェラーゼアッセイ系:プロメガ #E2620
解凍溶液緩衝液がキットに提供され、100mLの溶解緩衝液を基質粉末に加える。
【0089】
表3は本発明の化合物が上記のアッセイで試験された場合に得られる結果を示しており、RORγのモジュレータとしてのそれらの活性を示している。
表3
【0090】
治療上の使用方法
それらの生物学的特性に基づき、本発明の式(I)の化合物、互変異性体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、これらの混合物及び上記の全ての形態の塩は、RORγに対して良好な変調効果を示すという点で自己免疫疾患及びアレルギー性疾患の治療に適している。
したがって本発明は、式(I)の化合物、その医薬的に許容されるその塩、全ての互変異性体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、それらの混合物に関するものであり、RORγモジュレータの活性が治療上有益である疾患及び/又は症状の治療(自己免疫疾患及びアレルギー性疾患の治療を含むが、これに限定されない)に有益である。
【0091】
本発明の化合物により治療できるそのような疾患は、例えば関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、全身性硬化症、脈管炎、強皮症、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性湿疹、多発性硬化症、若年性関節リウマチ、若年性突発性関節炎、I型糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、移植片対宿主病、乾癬性関節症、反応性関節炎、強直性脊椎炎、アテローム性動脈硬化、ブドウ膜炎及び非放射線写真脊椎関節症が含まれる。
上記の疾患及び症状の治療のために、治療的に効果的な服用量は、一般に本発明の化合物の投薬あたり体重あたり約0.01〜約10mgであり、好ましくは約0.1〜約5mgである。例えば、70kgのヒトへの投与では、用量の範囲は、本発明の化合物として用量あたり約0.7〜約750mgであり、好ましくは約7.0mg〜約350mgである。最適な服用量レベルおよびパターンを決定するために、ある程度の日常の用量最適化が必要とされ得る。活性成分は1日に1〜6回投与されることができる。
【0092】
一般的な投与及び医薬組成物
医薬品として用いられる場合、本発明の化合物は典型的には医薬組成物の形態で投与される。そのような組成物は医薬業界でよく知られた手順を用いて調製され、一般的に少なくとも一種の本発明の化合物及び少なくとも一種の医薬的に許容される担体を含む。本発明の化合物はまた、単独で投与されることもでき、又は本発明の化合物の安定性を高め、特定の実施形態においてそれらを含む医薬組成物の投与を促進し、増大された溶解若しくは分散、増大されたアンタゴニスト活性を与え、補助療法を与える等の補助剤と組み合わせて投与されることもできる。本発明の化合物は、それ自体で用いられることも、又は任意で他の薬理学的に活性な物質と組み合わせて、本発明の他の活性物質と併せて用いられることもできる。一般に、本発明の化合物は治療的又は薬学的に効果的な量で投与されるが、診断上又は他の目的のためにより少ない量で投与されることもできる。
【0093】
純粋な形態又は適切な医薬組成物の形態の本発明の化合物の投与は、いかなる容認された様式の医薬組成物の投与を用いても行うことができる。ゆえに、投与は、例えばタブレット、坐薬、錠剤、軟カプセル、硬ゼラチンカプセル、粉末、溶液、懸濁液又はエアロゾル等のような固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液状の投薬剤形、好ましくは正確な用量の簡単な投薬に適した単位剤形で、例えば、経口的に、口腔的(例えば舌下)に、経鼻的に、非経口的に、局所的に、経皮的に、経膣的に、または直腸的に行われることができる。医薬組成物は一般に通常の医薬担体又は賦形剤、及び活性薬剤としての本発明の化合物を含み、加えて、他の医療物質、医薬物質、担体、補助剤、希釈剤、ビヒクル又はそれらの組み合わせを含むことができる。種々の様式又は投与のための医薬組成物を製造する方法と同様に、そのような医薬的に許容された賦形剤、担体又は添加剤は当業者によく知られている。最新の技術は例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, A. Gennaro(編集), Lippincott Williams & Wilkins, 2000; Handbook of Pharmaceutical Additives, Michael & Irene Ash(編集)、Gower、 1995; Handbook of Pharmaceutical Excipients、 A. H. Kibbe(編集)、 American Pharmaceutical Ass’n、2000; H. C. Ansel and N. G. Popovish, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 5th ed., Lea and Febiger, 1990により明らかにされ、これらはいずれも最新の技術をよく記載するために参考として本明細書にそのまま組み込まれる。当業者が予想するように、特定の医薬製剤中で用いられる本発明の化合物の形態は、製剤が有効であるために要求される好適な物理的特性(例えば水溶性)を備えるように選択されるだろう(例えば塩)。
【0094】
本出願に引用される全ての特許及び非特許文献又は文献は、参考として本明細書にそのまま組み込まれる。