(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899420
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】o−フェニルフェノキシアルキルアクリレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/03 20060101AFI20210628BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20210628BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20210628BHJP
【FI】
C07C67/03
C07C69/54 Z
!C07B61/00 300
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-192519(P2019-192519)
(22)【出願日】2019年10月23日
(65)【公開番号】特開2020-66632(P2020-66632A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2019年10月23日
(31)【優先権主張番号】107137544
(32)【優先日】2018年10月24日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519380314
【氏名又は名称】中國石油化學工業開發股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】陳郁森
(72)【発明者】
【氏名】黄敏嘉
(72)【発明者】
【氏名】柳佑樵
(72)【発明者】
【氏名】張ツ維
【審査官】
早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103709033(CN,A)
【文献】
特表2016−501188(JP,A)
【文献】
特開平07−082217(JP,A)
【文献】
特開2006−218358(JP,A)
【文献】
特開2005−262059(JP,A)
【文献】
特開2005−112764(JP,A)
【文献】
プロセス化学 ―医薬品合成から製造まで,日本,丸善株式会社,2008年 7月30日,pp. 112-118
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C67/03
C07C69/54
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒と重合防止剤が存在し、かつ無溶媒の条件下で、
下記式(III)を有するアクリレート系化合物と下記式(I)を有するビフェニルアルコール類化合物とのエステル交換反応を進行させ、
【化1】
(式(I)中、nは、0〜8の整数を表す。)
【化2】
(式(III)中、Xは、C1−C4アルキル基を表し、Rは、水素又はメチル基を表す。)
下記式(II)を有するo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートを製造することを含み、
【化3】
(式(II)中、nは、0〜8の整数を表し、Rは、水素又はメチル基を表す)
前記触媒が、
下記式(IV)を有するスズ化合物又は
下記式(V)を有するチタン化合物であ
る、
【化4】
(式(IV)中、R1とR2は、同一であるか又は異なり、それぞれ、C1−C10アルキル基又は水素を表す。)
【化5】
(式(V)中、R3は、C1−C4アルキル基を表し、このC1−C4アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分枝鎖アルキル基であってもよい。)
o−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法。
【請求項2】
前記スズ化合物が、ジ(C1−C10アルキル)スズオキシドである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ジ(C1−C10アルキル)スズオキシドが、ジオクチルスズオキシド及びジブチルスズオキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ジ(C1−C10アルキル)スズオキシドの含有量は、0.5〜1.5重量%である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記チタン化合物が、チタン酸テトラブチル及びチタン酸テトライソプロピルからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記チタン化合物の含有量は、1.5〜3.5重量%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記重合防止剤が、酸素ガス、フェノチアジン、フェノール類化合物及びニトロキシルラジカル類化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記フェノール類化合物が、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2−t−ブチルハイドロキノン、2、5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−ヒドロキシアニソール又はハイドロキノンである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ニトロキシルラジカル類化合物が、ピペリジンアルコールニトロキシルラジカル又はピペリジンニトロキシルラジカル亜リン酸エステルである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記重合防止剤の含有量は、0.1〜1.5重量%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記重合防止剤が前記フェノール類化合物であり、前記フェノール類化合物の含有量は0.5〜1.5重量%である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
前記アクリレート系化合物が、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルからなる群から選ばれる一種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記アクリレート系化合物及び前記式(I)を有するビフェニルアルコール類化合物のモル比は、2.5:1〜4:1である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記エステル交換反応の温度は、110〜120℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記エステル交換反応の時間は、4〜6時間である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
エステル交換反応の過程において、蒸留設備を使用して、前記アクリレート系化合物と副産物であるアルコールを含有する共沸混合物を留出することをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項17】
エステル交換反応が終了した後、減圧蒸留により、未反応のアクリレート系化合物を分離することをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、o−フェニルフェノキシアルキルアクリレートを製造する方法に関し、特に、無溶媒でo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族環を含むアクリレートは、良好な透明性及び高屈折率を有するので、主に光学材料分野、例えば、光学フィルム、光写真レンズ、光学レンズ及び光学樹脂などの製品に適用される。そのうち、特にo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートが、最もそれらの分野における高光沢性及び高透明性への要求を満たすことができる。近來、o−フェニルフェノキシアルキルアクリレートは、耐摩擦性光学材料、耐傷性耐摩耗性自己修復型輝度向上フィルム塗料、高屈折率輝度向上塗料及び光学レンズ等に広く適用されている。
【0003】
従来のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法は、エステル化合成法である。この製造方法は、高収率という特徴を有するが、有機溶媒を使用する必要があるため、さらに精製工程により溶媒を分離しなければならない。また、この精製工程は、高温で行う必要があるので、重合防止剤により抑制しても、重合現象の発生を回避することが困難である。反応条件が厳しい、反応時間が長い、工程が複雑であるなどの問題は実際的に存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の問題を鑑み、従来技術にある問題を解決するために、有機溶媒を添加せずにo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートを製造する方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、触媒と重合防止剤が存在し、かつ無溶媒の条件下で、アクリレート系化合物と下記式(I)を有するビフェニルアルコール類化合物とのエステル交換反応を進行させ、
【0006】
【化1】
【0007】
下記式(II)を有するo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートを製造することを含み、
【0008】
【化2】
【0009】
前記触媒がスズ化合物又はチタン化合物であり、
nは0〜8の整数を表し、Rは水素又はメチル基を表す、
o−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法は、アクリレート系化合物を反応溶媒とし、特定の触媒と重合防止剤との組み合わせを使用することにより、良好な透明性及び高屈折率を有するo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートを製造でき、高転化率及び高選択性という特徴がある。また、本発明の製造方法は、反応過程において他の有機溶媒をさらに添加する必要がないので、後処理の生産コストを効果的に低減させることができ、環境への被害を減少させ、工業上の応用価値を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、特定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書の開示内容により、本発明の利点および効果を容易に理解できる。本発明は、他の異なる実施方法により、実施又は適用することができる。本明細書の各項の詳細内容も、異なる観点と応用に基づいて、本発明の精神を違反しない限り、異なる変更および修飾を行うことができる。また、本文内の全ての範囲及び数値は、包含的、かつ組み合わせることが可能である。本文内に記載されている範囲内にあるいずれかの数値又は点、例えば、いずれかの整数は、最小値又は最大値として、サブ範囲を導出することができる。
【0012】
本発明によれば、触媒と重合防止剤が存在し、かつ無溶媒の条件下で、アクリレート系化合物と下記式(I)を有するビフェニルアルコール類化合物とのエステル交換反応を進行させ、
【0014】
下記式(II)を有するo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートを製造することを含み、
【0016】
前記触媒がスズ化合物又はチタン化合物であり、
nは0〜8の整数を表し、Rは水素又はメチル基を表す、
o−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法を提供する。
【0017】
一つの具体的な実施態様において、前記アクリレート系化合物は、式(III)の構造で示され、
【0019】
Rは、水素又はメチル基を表し、Xは、C1−C4アルキル基を示し、特に好ましくはC1−C2アルキル基である。
一つの具体的な実施態様において、前記アクリレート系化合物は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルからなる群から選ばれる一種である。
【0020】
一つの具体的な実施態様において、前記式(I)を有するビフェニルアルコール類化合物は、好ましくは2−(2−ビフェニリルオキシ)エタノールである。
式(I)を有するビフェニルアルコール類化合物は、分子構造におけるビフェニル基がより大きい立体障害を有するため、そのエステル交換反応の反応温度、共沸混合物の組成及び留出温度、触媒含有量並びに反応時間などのパラメーターが、一般のアクリレートと直鎖アルキル基アルコールとのエステル交換反応の条件とは異なる。
【0021】
まず、本発明の製造方法において、前記触媒は、均一系触媒であってもよく、不均一系触媒であってもよい。そのうち、均一系触媒であることが特に好ましい。
前記スズ化合物触媒は、有機スズ塩又は式(IV)の構造を有するスズ化合物を含む。
【0023】
式中、R
1とR
2は、C1−C10アルキル基又は水素であり、式(IV)の構造を有するスズ化合物触媒におけるR
1とR
2は、同一であるか又は異なり、かつ炭素数1、2、3、4、5、6、7、8、9ないし10のアルキル基をそれぞれ表す。
【0024】
一つの具体的な実施態様において、前記スズ化合物触媒は、均一系触媒であり、ジオクチルスズオキシド及びジブチルスズオキシドからなる群から単独に選ばれる少なくとも一種であるか、又は、モノブチルスズオキシド、ジブチルマレイン酸スズ及びオクタン酸第一スズ(stannous octoate)からなる群から選ばれる一種との組み合わせである。
【0025】
一つの具体的な実施態様において、前記スズ化合物触媒は、ジ(C1−C10アルキル)スズオキシドの均一系触媒であり、好ましくは、前記ジ(C1−C10アルキル)スズオキシドは、ジオクチルスズオキシド及びジブチルスズオキシドからなる群から選ばれる少なくとも一種である。本発明の製造方法において、前記ジ(C1−C10アルキル)スズオキシドの推奨含有量は0.5〜1.5重量%である。
【0026】
前記チタン化合物触媒は、チタン酸エステル触媒であり、当該チタン酸エステル触媒は、式(V)の構造で示される均一系触媒である。
【0028】
式中、R
3はC1−C4アルキル基であり、このC1−C4アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分枝鎖アルキル基であってもよい。
好ましくは、前記チタン酸エステルは、チタン酸テトラブチル又はチタン酸テトライソプロピルである。もう一つの具体的な実施態様において、前記チタン酸エステルの推奨含有量は1.5〜3.5重量%である。
【0029】
上記のスズ化合物又はチタン化合物を本発明の触媒として使用することにより、o−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの選択率及び転化率を効果的に向上させ、副反応を低減させることができる。IA族金属の化合物を使用する場合に比べて、IIA族金属の化合物を触媒とする反応工程により製造されたo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートは、より高光沢性及び高透明性を有する。一方、一つの具体的な実施態様において、スズ化合物を触媒として使用する場合、高転化率を維持するために、カルボキシル基部分又はハロゲンを有するスズ化合物を排除してもよい。また、転化率を向上させるために、前記スズ化合物触媒としては、モノアルキルスズオキシドに比べて、ジ(C1−C10アルキル)スズオキシドであることが好ましい。なお、二種類の化合物を触媒として使用する場合においても、IA族金属とIIA族金属とを有する化合物の使用はできるだけ回避する。
【0030】
前記重合防止剤を使用する目的は、アクリレート系化合物の重合を防止するためである。前記重合防止剤は、酸素ガス、フェノチアジン、フェノール類化合物及びニトロキシルラジカル類化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0031】
前記酸素ガス重合防止剤は、蒸汽として存在するので、反応溶液におけるアクリレート系化合物の重合を防止できるだけでなく、反応器上部に凝縮したアクリレート系化合物の重合をも効果的に防止できる。一つの具体的な実施態様において、酸素ガス重合防止剤としては、空気を使用し、特に好ましくは乾燥空気を使用する。
【0032】
一つの具体的な実施態様において、前記ニトロキシルラジカル類化合物は、ピペリジンアルコールニトロキシルラジカル化合物又はピペリジンニトロキシルラジカル亜リン酸エステル、あるいは上記の両者の複合物であり、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル又は亜リン酸トリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジンニトロキシルラジカル)である。
【0033】
一つの具体的な実施態様において、前記フェノール類化合物は、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2−t−ブチルハイドロキノン、2、5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−ヒドロキシアニソール又はハイドロキノンである。
【0034】
本発明によれば、前記重合防止剤の含有量は0.1〜1.5重量%であり、一つの具体的な実施態様において、前記重合防止剤はフェノール類化合物であり、また、前記フェノール類化合物の推奨含有量は0.5〜1.5重量%である。
【0035】
本発明のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法は、アクリレート系化合物及びビフェニルアルコール類化合物を採用してエステル交換反応を進行させる。その反応式は、下記の通りである。
【0037】
式中、n、X及びRは前記内容で開示した定義と同様である。
本発明のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法は、反応系に有機溶媒を添加する必要のないo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法であり、その特徴は、前記アクリレート系化合物の用量がその反応量を超えるため、前記アクリレート系化合物を反応溶媒とすることにより、他の有機溶媒をさらに添加する必要がなく、操作が簡単で、反応コストが低く、環境を汚染しにくく、溶媒排除による重合現象を低減することである。
【0038】
一つの具体的な実施態様において、前記アクリレート系化合物及び前記ビフェニルアルコール類化合物のモル比は2.5:1〜4:1であり、そのうち、前記アクリレート系化合物及び前記ビフェニルアルコール類化合物のモル比は2.5:1〜3.5:1であることが特に好ましい。前記アクリレート系化合物及び前記ビフェニルアルコール類化合物のモル比が2.5:1より低くなると、エステル交換反応は遅くなり、また、前記アクリレート系化合物及び前記ビフェニルアルコール類化合物のモル比が4:1を超えると、収率が悪くなり、反応後処理工程は複雑になるという問題が存在する。
【0039】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記の製造方法は、反応蒸留設備を有するバッチ反応器を使用する。また、本発明のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法は、エステル交換反応の過程において、蒸留設備を使用して、前記アクリレート系化合物と副産物であるアルコールとを含有する共沸混合物を留出することをさらに含む。この方法を採用することにより、反応過程中に生成した副産物であるアルコールと前記アクリレート系化合物とを特定の組成比率を有する共沸混合物に形成し、当該共沸混合物を反応系から留出させ、ルシャトリエの原理に基づき、エステル交換反応の進行に寄与する。
【0040】
本発明によれば、具体的な製造方法は、触媒、重合防止剤、アクリレート系化合物及びビフェニルアルコール類化合物の添加が終了した後、反応温度まで昇温させ、反応系をある時間全還流させ、さらに一定の還流比に調整し、蒸留塔の塔頂温度を60〜80℃の範囲に維持させ、副産物であるアルコールとアクリレート系化合物とからなる共沸混合物を共沸蒸留により除去することを含む。
【0041】
留出した共沸混合物の量を制御してエステル交換反応の転化率及び選択率に影響を及ぼさないために、前記蒸留設備としては、トレイ数が5〜10であり、エステル交換反応の温度が110〜120℃の範囲になるように制御したものを採用することが好ましい。前記エステル交換反応の温度は、120℃より高いと、好ましくない。これは、着色、重合などの副反応の発生を回避するためである。
【0042】
一つの具体的な実施態様において、前記蒸留設備の還流比は、好ましくは1.2〜2である。
一つの具体的な実施態様において、エステル交換反応の時間は、4〜6時間である。
【0043】
一つの具体的な実施態様において、通常、エステル交換反応は、常圧で、空気又は不活性ガス雰囲気で行われる。そのうち、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルガンガス又はヘリウムガスなどのガスを使用することを含む。
【0044】
一つの具体的な実施態様において、エステル交換反応は、撹拌し続ける状態で発生する。
本発明のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法は、エステル交換反応が終了した後、減圧蒸留により、未反応のアクリレート系化合物を分離することをさらに含む。
【0045】
一つの具体的な実施態様において、減圧蒸留処理された後のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレート製品は、さらにろ過で製品をより一層精製することができる。
上記の本発明の製造方法により得られるo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートは、良好な透明性及び高屈折率を有し、光学材料分野などの製品の適用に有利である。
【0046】
実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
【0047】
[実施例1]
アクリル酸エチル(1800g、17.98モル)、2−(2−ビフェニリルオキシ)エタノール(OPPEO)(1100g、5.13モル)、重合防止剤としての1重量%の6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール及び触媒としての1.4重量%のジオクチルスズオキシドを丸底フラスコ内へ仕込み、約110〜120℃まで昇温するとともに、上方の蒸留設備の塔頂温度を78℃に制御し、アクリル酸エチルと副産物であるエタノールとを共沸混合物に形成して留出させ、フラスコ内の反応物にエステル交換反応を進行させ、反応時間は約4時間であった。反応完成後、減圧蒸留により、未反応のアクリレート系化合物を分離した。最後に、減圧蒸留処理された後のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレート製品をろ過で精製することにより、o−フェニルフェノキシアルキルアクリレート製品が得られた。転化率は92%であり、選択率は97%より大きかった。
【0048】
ASTM−D1209の標準試験方法に準拠し、前記o−フェニルフェノキシアルキルアクリレート製品の100mLを取ってサンプル液とし、色差計(hunterLac Color Quest XE)と白金−コバルト標準溶液(Apha色度値はそれぞれ5、10、15、30、50、100、500である)を利用して比色を行い、前記o−フェニルフェノキシアルキルアクリレート製品のApha色度値が24と測定された。
【0049】
[実施例2]
製造方法は実施例1と同様であるが、前記ジオクチルスズオキシドの代わりに3重量%のチタン酸テトライソプロピルを用い、エステル交換反応の時間を6時間としたところ、Apha色度値が500より大きいo−フェニルフェノキシアルキルアクリレート製品が得られた。転化率は90%であり、選択率は95%より大きかった。
【0050】
[実施例3]
製造方法は実施例1と同様であるが、前記ジオクチルスズオキシドの代わりに1.4重量%のジブチルスズオキシドを用い、エステル交換反応の時間を4時間としたところ、Apha色度値が500より大きいo−フェニルフェノキシアルキルアクリレート製品が得られた。転化率は88%であり、選択率は97%より大きかった。
【0051】
[実施例4]
製造方法は実施例1と同様であるが、前記ジオクチルスズオキシドの代わりに3重量%のチタン酸テトラブチルを用い、エステル交換反応の時間を6時間としたところ、Apha色度値が500より大きいo−フェニルフェノキシアルキルアクリレート製品が得られた。転化率は71%であり、選択率は95%より大きかった。
【0052】
[比較例1]
製造方法は実施例1と同様であるが、前記ジオクチルスズオキシドの代わりに1重量%のチタン酸カリウムを用い、エステル交換反応の時間を6時間としたところ、転化率は24%であり、選択率は97%より大きかった。
【0053】
[比較例2]
製造方法は実施例1と同様であるが、前記ジオクチルスズオキシドの代わりに3重量%の酸化カルシウムを用い、エステル交換反応の時間を4時間としたところ、転化率は8%であり、選択率は97%より大きかった。
【0054】
[比較例3]
製造方法は実施例1と同様であるが、前記ジオクチルスズオキシドの代わりに1重量%の炭酸カルシウムを用い、エステル交換反応の時間を2時間としたところ、転化効果はなかった。
【0055】
[比較例4]
製造方法は実施例1と同様であるが、前記ジオクチルスズオキシドの代わりに0.1重量%の塩化リチウムを用い、エステル交換反応の時間を4時間としたところ、転化効果はなかった。
【0056】
[比較例5]
アクリル酸メチル(388g、4.51モル)、2−(2−ジフェニル)エタノール(642.78g、3.00モル)、重合防止剤としての0.13重量%のp−ヒドロキシアニソール(MEHQ)と0.05重量%のヒドロキノン、及び触媒としての0.4重量%のジメチル二塩化スズと0.11重量%のナトリウムメトキシドを丸底フラスコ内へ仕込み、昇温するとともに、蒸留設備の塔頂温度を58℃に制御し、アクリル酸メチルと副産物であるメタノールとを共沸混合物に形成して留出させ、フラスコ内の反応物にエステル交換反応を進行させ、反応時間は約6時間であったところ、転化効果はなかった。
【0057】
上記のように、本発明のo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートの製造方法は、アクリレート系化合物を反応溶媒とし、特定の触媒及び重合防止剤の組み合わせを使用することにより、良好な透明性及び高屈折率を有するo−フェニルフェノキシアルキルアクリレートを製造でき、高転化率及び高選択性という特徴がある。また、本発明の製造方法は、反応過程において他の有機溶媒をさらに添加する必要がないので、後処理の生産コストを効果的に低減させることができ、環境への被害を減少させ、工業上の応用価値を有する。
【0058】
上記の実施例は、例示的な説明に過ぎず、本発明を限定するためのものではない。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、上記の実施例に様々な変更および修飾を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されており、本発明の効果および実施目的に影響を及ぼさない限り、その公開技術の内容に含まれる。