(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルキル化触媒がMCM−22、PSH−3、SSZ−25、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、MCM−36、MCM−49、MCM−56、EMM−10、EMM−12、EMM−13、UZM−8、UZM−8HS、UZM−37、MIT−1およびこれらの混合物から成る群から選ばれた少なくとも1種のモレキュラーシーブを含んでいる、請求項1に記載のプロセス。
工程(e1)で前記アルキル化製品から分離された前記ベンゼンおよび/またはトルエンの少なくとも一部がトランスアルキル化反応ゾーンに供給され、前記トランスアルキル化反応ゾーンはC9+芳香族炭化水素を含んでいる供給原料もまた受け取る、請求項5に記載のプロセス。
【背景技術】
【0003】
ベンゼン、トルエンおよびキシレン(BTX)は重要な芳香族炭化水素であり、それらに対する世界的な需要は着実に増加している。キシレン、特にパラキシレンの需要は、ポリエステル繊維およびフィルムの需要の増加に比例して増加してきており、典型的には年当たり5〜7%の割合で成長している。ベンゼンは化学原料として使用するための極めて有用な製品である。トルエンもまた、溶媒および化学品製造プロセスにおける中間体としておよび高オクタン価ガソリン成分として使用するための有用な石油化学製品である。しかし、現代の多くの芳香族複合製造設備ではベンゼンおよび/またはトルエンの一部または全部は、トランスアルキル化またはメチル化のいずれかまたはこれらの組み合わせによってさらにキシレンに転化されている。
【0004】
ベンゼン、トルエンおよびキシレン(BTX)の主な供給源は、接触改質油であり、これは石油ナフサを担体上の水素化/脱水素化触媒と接触させることによって製造される。得られる改質油は、パラフィンおよび所望のC
6〜C
8芳香族化合物、それに加えてかなりの量のより重質の芳香族炭化水素の複雑な混合物である。軽質(C
5−)パラフィン成分を除去した後、残りの改質油は通常、複数の蒸留工程を用いてC
7−、C
8−およびC
9+含有留分へと分離される。次に、C
7−含有留分から非芳香族同沸点化合物を除去するために液−液抽出または抽出蒸留が典型的には必要とされ、それによってその後ベンゼンが回収されることが可能となってトルエンに富む留分が残され、この留分は一般にメチル化または不均化のいずれかによって追加のC
8芳香族化合物を製造するために使用される。C
8含有留分はキシレン製造ループに供給され、そこでパラキシレンが一般に吸着または晶析によって回収される。残されたパラキシレン欠乏流は接触転化に付されて、キシレンが元の平衡分布へと異性化され、かつさもなければキシレン製造ループ中に蓄積するであろうエチルベンゼンのレベルが低減される。さらに、C
9+含有留分の少なくとも一部を、C
7−含有留分から回収されたベンゼンおよび/またはトルエンの一部との反応によって追加のキシレンに転化するために、トランスアルキル化が加えられてもよい。
【0005】
これらの技術は有効ではあるが、設備費および変動費がかかり、また、従来の芳香族供給原料中の非キシレン芳香族分子の価値を高めることに係る費用を削減または排除しようとする業界内での一般的な必要性が存在する。さらに、最も従来型の芳香族供給原料の場合、メチル基とアリール基とのモル比は、供給原料1トン当たりのキシレン製品の収率を最大にするための最適範囲(モル基準で1.8:1〜2.2:1)未満である。したがって、従来型の芳香族供給原料からのキシレン収率を増加させる課題に対する低コストで効率的な方法を開発することに大きな関心が寄せられている。
【0006】
米国特許第6,504,072号は、パラキシレンを選択的に製造するプロセスを開示し、このプロセスは120℃の温度および60トール(8kPa)の2,2−ジメチルブタン圧力で測定されたときに約0.1〜15秒
−1の2,2−ジメチルブタンについての拡散パラメーターを有する多孔性結晶性材料を含んでいる触媒の存在下にアルキル化条件下でトルエンをメタノールと反応させる工程を含む。多孔性結晶性材料は好ましくは中細孔径ゼオライト、特にZSM−5であり、これは少なくとも950℃の温度で厳しくスチーミングされたものである。アルキル化条件としては、約500〜700℃の温度、約1気圧〜1000psig(100〜7000kPa)の圧力、約0.5〜約1000の重量時空間速度および少なくとも約0.2のトルエンとメタノールとのモル比が挙げられる。
【0007】
さらに、米国特許第6,642,426号は、メタノールを含んでいるアルキル化剤で芳香族炭化水素反応物、特にトルエンをアルキル化してアルキル化芳香族製品を製造するプロセスを開示しており、このプロセスは、リアクター装置中に第一の場所で芳香族炭化水素反応物を導入し、このリアクター装置は500〜700℃の温度および約300〜600kg/m
3の運転床密度を含む流動床反応ゾーンを含んでいてアルキル化芳香族生成物を製造する工程;当該アルキル化反応物の複数の流れを当該流動床反応ゾーン中に芳香族炭化水素反応物の流れの方向に離間された位置で直接に導入する工程であって、当該流れの少なくとも1つが第1の位置から下流の第2の位置で導入される工程;および芳香族反応物とアルキル化剤との反応によって生成されたアルキレート芳香族製品をリアクター装置から回収する工程を含む。好ましい触媒は、高温スチーミング処理によって選択性付与されたZSM−5である。
【0008】
上で議論された米国特許に例示されているように、メタノールを用いたベンゼンおよび/またはトルエンのアルキル化の現行プロセスは、中細孔径のゼオライト、特にZSM−5の存在下に高温で、すなわち500〜700℃で行われる。これは、多くの問題、特にサイクル当たりの触媒寿命が比較的短く、したがって触媒の頻繁な再生が必要となる結果をもたらす。加えて、既存のプロセスは、典型的にはかなりの量のメタノールがエチレンおよび他の軽質オレフィンに転化される結果をもたらし、これはキシレンなどの望ましい製品の収率を低下させ、回収コストを増加させる。
【0009】
それ故、メタノール(またはジメチルエーテル)によるベンゼンおよび/またはトルエンのアルキル化のための改善されたプロセスの必要が存在し、このプロセスは触媒サイクル寿命を延ばしガス生成を減少させるとともにパラキシレン製造複合体へのこのプロセスの統合を促進する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に開示された実施形態はキシレン、特にパラキシレンを製造するアルキル化プロセスを提供し、このプロセスは比較的温和な条件下で実施されて、従来の高温プロセスよりも少ない軽質ガス副生成物およびより長い触媒サイクル寿命でキシレンを製造することができる。メタノール利用率(すなわち、メタノールのキシレンへの転化率)もまた改善される。開示されたプロセスでは、ベンゼンおよび/またはトルエンを含む炭化水素供給原料は、アルキル化条件下でアルキル化触媒の存在下にメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいるアルキル化剤と接触させられる。アルキル化触媒は5以下の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでおり、またアルキル化条件は500℃未満の温度を含む。キシレンを含んでいるアルキル化生成物は次に、パラキシレン回収装置およびキシレン異性化装置を含むパラキシレン製品ループに供給されてパラキシレンの製造量が最大にされる。
【0019】
本明細書で使用される用語「C
n」炭化水素は、nが正の整数、たとえば1、2、3、4、5等であり、1分子あたりn個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。用語「C
n+」炭化水素は、nが正の整数、たとえば1、2、3、4、5等であり、1分子あたり少なくともn個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。用語「C
n−」炭化水素は、nが正の整数、たとえば1、2、3、4、5等であり、本明細書で使用されるとき1分子あたりn個以下の炭素原子を有する炭化水素を意味する。
【0020】
本明細書で使用される用語「アルキル化すること」および「メチル化すること」または「アルキル化」および「メチル化」は互換的に使用されてもよい。
【0021】
炭化水素供給原料は、任意の供給源のベンゼン、トルエンまたはベンゼンとトルエンとの組み合わせを含むことができる。適当なベンゼンおよびトルエンの供給源には、接触改質油およびスチームクラッキングナフサが挙げられ、中間留分としてのベンゼン留分も含まれる。適当な供給原料はまた、1種以上の公知のガス・ツー・化学製品技術に由来することもでき、低級アルカンおよびアルケン、例としてメタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレンおよびブタンを芳香族化合物に転化するプロセス、メタノール/DMEおよび/またはプロパノールを芳香族化合物に転化するプロセス、メタノールからガソリンへのプロセスおよびアセチレンから芳香族化合物へのプロセスが挙げられる。
【0022】
供給原料は主にまたは完全に芳香族留分であり、たとえば供給原料源中に存在する脂肪族成分を従来の液−液抽出または抽出蒸留法によって抽出した後のものであることができる。したがって、いくつかの実施形態では、供給原料は90重量%超、たとえば95重量%超、たとえば98重量%超、さらには99重量%超のベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいてもよい。
【0023】
あるいは、抽出されていない供給原料が使用されてもよく、その場合には供給原料は液−液抽出または抽出蒸留に付されて非芳香族化合物が除去される。抽出されていない供給原料は、ベンゼンおよび/またはトルエンに加えてC
6+脂肪族炭化水素を含んでいる。したがって、いくつかの実施形態では、供給原料は、5重量%〜80重量%のC
6+脂肪族炭化水素、特にベンゼンおよび/またはトルエン同沸点物(ベンゼンおよび/またはトルエンに近い沸点を有する非芳香族化合物)を含んでいてもよい。
【0024】
本発明のプロセスは、炭化水素供給原料を5未満、たとえば4未満、たとえば3未満、またはいくつかの実施形態では2未満の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでいるアルキル化触媒の存在下におよび500℃未満の温度を含むアルキル化条件の下に少なくとも1つのアルキル化反応ゾーンでメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいるアルキル化剤と接触させる工程を含んでいる。このプロセスは供給原料中のベンゼンおよび/またはトルエンを本質的に100%のメタノール転化率および実質的に軽質ガスの生成なしにキシレンに転化するのに有効である。高いメタノール利用率は、先行技術のトルエンおよび/またはベンゼンのメチル化プロセスにおけるメタノール利用率に照らして驚くべきことであり、またより少ないコーク形成量という実質的な利点をもたらし、これは触媒寿命を増加させる。さらに、先行技術のプロセスでは、メタノールの副反応を最小化するためにリアクター中にメタノールとともにスチームを同時供給することが好まれているところ、スチームは触媒寿命に悪影響を与える。本発明のプロセスではほぼ100%のメタノール利用率でありながらスチームを同時供給する必要がなく、このプロセスのエネルギー需要量を減少させ、かつ触媒寿命を増加させる。
【0025】
本発明のプロセスにおけるキシレンへの選択率は典型的にはおよそ80%であり、主要な副生成物はベンゼンおよびC
9+芳香族化合物である。ベンゼンはアルキル化流出物から分離されてアルキル化反応ゾーンにリサイクルされることができ、他方、C
9+芳香族化合物はガソリンプールへのブレンド用に分離され、または追加のベンゼンおよび/またはトルエンとともにトランスアルキル化されて追加のキシレンを作ることができる。既存のプロセスと比較してアルキル化触媒の寿命は改善されている、というのはより低い反応温度ではメタノールの分解がはるかに少ないからである。さらに、より大きい細孔のモレキュラーシーブの使用は拡散の制限を最小限にし、アルキル化が商業ベースにのったWHSVで実施されることが可能になる。
【0026】
さらに、抽出されていない供給原料が使用されると、供給原料中のベンゼンおよび/またはトルエンの全てまたは一部は、より高い沸点の芳香族化合物、とりわけキシレンに転化され、また供給原料の芳香族成分と脂肪族成分との間の揮発性の差が増加する。その結果、アルキル化流出物から脂肪族成分の分離の少なくとも一部は、従来の蒸留によって達成されることができ、それによって混合C
6/C
7留分からベンゼンおよびトルエンの同沸点物を除去するのに通常必要とされるコストのかかる液−液抽出または抽出蒸留技術の必要が排除されまたは低減される。
【0027】
上記のように、本発明のメチル化プロセスで使用された触媒は5以下の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでいる。これに関して、拘束指数とは、その内部構造によって様々なサイズの分子を制御するモレキュラーシーブが提供する範囲の便利な尺度である。拘束指数が測定される方法は米国特許第4,016,218号に十分に記載されており、その方法の詳細について同特許は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明のプロセスで使用するのに適した5以下の拘束指数を有する適当なモレキュラーシーブの例としては、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定Y(USY)、超疎水性Y(UHP−Y)、脱アルミニウムY(Deal Y)、モルデナイト、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−12、ZSM−14、ZSM−18、ZSM−20およびこれらの混合物が挙げられる。ゼオライトZSM−3は米国特許第3,415,736号に記載されている。ゼオライトZSM−4は米国特許第4,021,947号に記載されている。ゼオライトZSM−12は、米国特許第3,832,449号に記載されている。ゼオライトZSM−14は米国特許第3,923,636号に記載されている。ゼオライトZSM−18は米国特許第3,950,496号に記載されている。ゼオライトZSM−20は米国特許第3,972,983に記載されている。ゼオライトベータは米国特許第3,308,069号および再発行特許第28,341号に記載されている。低ナトリウム超安定Yモレキュラーシーブ(USY)は米国特許第3,293,192号および第3,449,070号に記載されている。超疎水性Y(UHP−Y)は米国特許第4,401,556号に記載されている。脱アルミニウムYゼオライト(Deal Y)は米国特許第3,442,795号に認められる方法によって調製されてもよい。ゼオライトYおよびモルデナイトは天然材料であるが、合成型、たとえばTEA−モルデナイト(すなわち、テトラエチルアルミニウム指向剤を含んでいる反応混合物から調製された合成モルデナイト)でも入手可能である。TEA−モルデナイトは米国特許第3,766,093号および第3,894,104号に記載されている。
【0029】
本発明のプロセスで使用するのに適した5以下の拘束指数を有する1つの好ましい種類のモレキュラーシーブは、MWW骨格構造型の結晶性細孔性材料である。本明細書で使用される用語「MWW骨格構造型の結晶性細孔性材料」としては、以下のうちの1種以上が挙げられる:
●通常の一次結晶構成ブロック単位格子からつくられたモレキュラーシーブであって、その単位格子がMWW骨格構造トポロジーを有するもの(単位格子は原子の空間配置であり、3次元空間に嵌め込まれるとその結晶構造を記述する。このような結晶構造は「ゼオライト骨格構造型のアトラス」、第5版、2001年刊で検討されており、その全内容は参照によって取り込まれる)。
●通常の二次構成ブロックからつくられたモレキュラーシーブであって、この二次構成ブロックはそのようなMWW骨格構造トポロジー単位格子の2次元嵌め込みであり、1個の単位格子の厚さ、好ましくは1個のc軸単位格子の厚さの単層を形成するもの。
●通常の二次構成ブロックからつくられたモレキュラーシーブであって、この二次構成ブロックは1個以上の単位格子の厚さの層であり、1個より多い単位格子の厚さの層はMWW骨格構造トポロジー単位格子の少なくとも2つの単層を積み重ね、詰め込みまたは結合することによってつくられる。そのような二次構成ブロックの積み重ねは、規則的な様式、不規則な様式、ランダムの様式またはこれらの任意の組み合わせであってもよいもの。および
●任意の規則的なまたはランダムの、2次元または3次元のMWW骨格構造トポロジーを有する単位格子の組み合わせによってつくられたモレキュラーシーブ。
【0030】
MWW骨格構造型の結晶性細孔性材料としては、12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07および3.42±0.07オングストロームにd間隔の最大値を含んでいるX線回折パターンを有するモレキュラーシーブが挙げられる。この材料を特性付けるために使用されるX線回折データは、入射放射線として銅のK−アルファ二重線を使用する標準技術ならびにシンチレーション計数器および収集装置として付帯されたコンピューターを備えた回折計によって得られる。
【0031】
MWW骨格構造型の結晶性細孔性材料の例としては、MCM−22(米国特許第4,954,325号に記載されている。)、PSH−3(米国特許第4,439,409号に記載されている。)、SSZ−25(米国特許第4,826,667号に記載されている。)、ERB−1(欧州特許第0293032号に記載されている。)、ITQ−1(米国特許第6,077,498号に記載されている。)およびITQ−2(国際特許出願公開第WO97/17290号に記載されている。)、MCM−36(米国特許第5,250,277号に記載されている。)、MCM−49(米国特許第5,236,575号に記載されている。)、MCM−56(米国特許5,362,697に記載されている。)、UZM−8(米国特許第6,756,030号に記載されている。)、UZM−8HS(米国特許第7,713,513号に記載されている。)、UZM−37(米国特許第7,982,084号に記載されている。)、EMM−10(米国特許第7,842,277号に記載されている。)、EMM−12(米国特許第8,704,025号に記載されている。)、EMM−13(米国特許第8,704,023号に記載されている。)、MIT−1(Chemical Science、2015年、第6巻、6320〜6324頁でLuoらによって記載されている。)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ、MCM−49が一般に好ましい。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるMWW骨格構造型の結晶性細孔性材料は、他の結晶性材料、たとえばフェリエライトまたは石英で汚染されていることがある。これらの汚染物質は≦10重量%、通常≦5重量%の量で存在してもよい。
【0033】
本発明のアルキル化プロセスで使用される他の好ましいモレキュラーシーブとしては、BEA骨格構造型のモレキュラーシーブ(たとえば、ゼオライトベータ)およびMTW骨格構造型のモレキュラーシーブ(たとえば、ZSM−12)が挙げられる。
【0034】
さらにまたは代わりに、本発明に有用なモレキュラーシーブはケイ素とアルミニウムとの比によって特性付けられてもよい。特定の実施形態では、本発明に適したモレキュラーシーブとしては100未満の、好ましくは約15〜50のSi/Al比を有するものが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明に使用されるモレキュラーシーブは前処理、たとえば高温スチーミングに付されて、その拡散特性が修正されることはない。他の実施形態では、モレキュラーシーブは、その触媒を選択性付与剤、たとえばケイ素、スチーム、コークまたはこれらの組み合わせと接触させることによって、芳香族化リアクターに導入される前にあるいはこのリアクター中でその場で(in−situ)選択性付与処理されてもよい。1つの実施形態では、触媒は、その触媒を少なくとも1種の有機ケイ素と液体担体中で接触させ、続いて酸素含有雰囲気中で、たとえば350〜550℃の温度の空気中で焼成することによってシリカ選択性付与される。適当なシリカ−選択性付与手順は、米国特許第5,476,823号に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、触媒は、その触媒をスチームと接触させることによって選択性付与される。ゼオライトのスチーミングは、少なくとも約950℃、好ましくは約950〜約1075℃、最も好ましくは約1000〜約1050℃の温度で約10分間〜約10時間、好ましくは30分間〜5時間で達成される。選択性付与手順は、複数回繰り返されてもよいものであり、モレキュラーシーブの拡散特性を変更し、キシレン収率を増加させてもよい。
【0036】
シリカまたはスチーム選択性付与に加えてまたはそれらの代わりに、触媒はコーク選択性付与に付されてもよい。この任意的なコーク選択性付与は典型的には、触媒を、当該化合物の分解温度を超えるがモレキュラーシーブの結晶性に悪影響を及ぼす温度以下の高められた温度で熱分解性有機化合物と接触させることを含んでいる。コーク選択性付与技術に関するさらなる詳細は米国特許第4,117,026号に示されており、この内容は参照によって本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、シリカ選択性付与およびコーク選択性付与の組み合わせが使用されてもよい。
【0037】
選択性付与の前に、モレキュラーシーブを、少なくとも1種の酸化物変性剤、たとえば周期表の2〜4族および13〜16族の元素から選ばれた少なくとも1種の酸化物と組み合わせることが望ましいこともある。最も好ましくは、当該少なくとも1種の酸化物変性剤は、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、ランタン、最も好ましくはリン、の酸化物から選ばれる。いくつかの場合には、モレキュラーシーブは1種を超える酸化物変性剤と組み合わせられてもよく、たとえばリンとカルシウムおよび/またはマグネシウムとの組み合わせと組み合わせられてもよい。というのは、このようにすれば目標の拡散性の数値を達成するために必要なスチーミングの過酷度を低減させることが可能かもしれないからである。いくつかの実施形態では、触媒中に存在する酸化物変性剤の元素基準で測定された合計量は、最終触媒の重量に基いて約0.05〜約20重量%であってもよく、好ましくは約0.1〜約10重量%である。変性剤がリンを含んでいる場合には、触媒中への変性剤の取り込みは米国特許第4,356,338号、第5,110,776号、第5,231,064号および第5,348,643号に記載された方法によって好都合に達成され、これらの全開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0038】
上記のモレキュラーシーブは、何らかのバインダーまたはマトリクスなしで、すなわち、いわゆる自己バインダー形態で、本明細書で用いられるアルキル化触媒として使用されてもよい。あるいは、モレキュラーシーブは、アルキル化反応で用いられる温度その他の条件に耐性がある別の材料で複合化されてもよい。そのような材料としては、活性および不活性の材料ならびに合成のまたは天然のゼオライトとともに無機材料、たとえばクレーおよび/または酸化物、例としてアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアまたはこれらの混合物および他の酸化物が挙げられる。後者は、天然物あるいはゼラチン状沈殿物またはゲルの形態のもの、たとえばシリカと金属酸化物との混合物であってもよい。クレーもまた、酸化物型のバインダーとともに組み入れられて、触媒の機械的特性を修正しまたはその製造を助けてもよい。モレキュラーシーブと一緒に、ある材料を、すなわちそれと組み合わせられまたはその合成の際に存在するものであって、それ自体が触媒的に活性であるものを使用することは、触媒の転化率および/または選択率を変更することがある。不活性な材料は希釈剤としての役割を適当に果たして、反応速度を調節するための他の手段を用いることなく製品が経済的にかつ秩序立って得られるように転化量を調節することができる。これらの材料は天然のクレー、たとえばベントナイトおよびカオリンに組み入れられてもよく、商業運転条件下の触媒の破砕強度を改善しかつ触媒のためのバインダーまたはマトリクスとして機能する。モレキュラーシーブと無機酸化物マトリクスとの相対割合は広い範囲で様々であり、モレキュラーシーブ含有量は約1〜約90重量%であり、より普通には、特に、複合物がビーズの形態で調製されるときは複合物の約2〜約80重量%の範囲である。
【0039】
本発明のアルキル化プロセスは比較的低い温度で、すなわち500℃未満、たとえば475℃未満、または450℃未満、または425℃未満、または400℃未満で実施される。商業的に実現可能な反応速度を提供するために、このプロセスは少なくとも250℃、たとえば少なくとも275℃、たとえば少なくとも300℃の温度で実施されてもよい。範囲に関しては、このプロセスは、250〜500℃未満、たとえば275〜475℃、たとえば300〜450℃の範囲の温度で実施されてもよい。運転圧力は温度に応じて様々であろうが、一般には少なくとも700kPa、たとえば少なくとも700kPa−a、たとえば少なくとも1000kPa−a、たとえば少なくとも1500kPa−a、または少なくとも2000kPa−a、約7000kPa−aまで、たとえば約6000kPa−aまで、約5000kPa−aまでである。範囲に関しては、運転圧力は700kPa−a〜7000kPa−a、たとえば1000kPa−a〜6000kPa−a、たとえば2000kPa−a〜5000kPa−aの範囲でもよい。芳香族化合物およびアルキル化剤供給原料の合計に基づいた適当なWHSV値は、50〜0.5時
−1の範囲、たとえば10〜1時
−1の範囲にある。いくつかの実施形態では、芳香族供給原料の少なくとも一部、メタノール/ジメチルエーテルアルキル化剤および/またはアルキル化流出物は、液相でアルキル化反応ゾーンの中に存在してもよい。
【0040】
アルキル化反応は、任意の公知のリアクター装置、たとえば固定床リアクター、移動床リアクター、流動床リアクターおよび反応蒸留装置で実施されることができるが、これらに限定されず、固定床リアクターが好ましい。さらに、リアクターは、同じまたは異なる反応容器中にある単一の反応ゾーンまたは複数の反応ゾーンを含んでいてもよい。さらに、メタノール/ジメチルエーテルアルキル化剤の注入は、リアクターの単一の点でまたはリアクターに沿って間隔を空けた複数の点で達成されることができる。
【0041】
アルキル化反応の生成物はキシレン、ベンゼンおよび/またはトルエン(残留するものおよび本プロセスで同時に製造されたものの両方)、C
9+芳香族炭化水素、同時に生成された水、およびいくつかの場合には未反応メタノールを含んでいる。しかし、一般に全てのメタノールが芳香族炭化水素供給原料と反応させられて、アルキル化製品が概して残留メタノールを含んでいないように、本プロセスを運転することが好ましい。アルキル化製品はまた、一般に、メタノールのエチレンその他のオレフィンへの分解によって生成される軽質ガスを一般に含んでいない。いくつかの実施形態では、アルキル化製品の有機成分は少なくとも80重量%のキシレンを含んでいてもよい。
【0042】
水の分離の後、アルキル化製品は、分離部門、たとえば1基以上の蒸留塔に供給されて、キシレンが回収され、またC
9+芳香族炭化水素副生成物からベンゼンおよびトルエンが分離されてもよい。得られたベンゼンおよびトルエンはアルキル化反応ゾーンにリサイクルされてもよく、C
9+芳香族化合物はガソリンプール中にブレンドするために回収され、または補足のベンゼンおよび/またはトルエンとトランスアルキル化されて追加のキシレンが作られることができる。
【0043】
アルキル化製品および任意の下流のC
9+トランスアルキル化プロセスから回収されたキシレンは、パラキシレン製造ループに送られてもよい。このパラキシレン製造ループはパラキシレン分離部門を含んでおり、そこでパラキシレンが通常通りに吸着法もしくは晶析法または両方の組み合わせによって分離され、回収される。パラキシレンが吸着法によって分離される場合、使用される吸着剤は好ましくはゼオライトを含んでいる。吸着カラムは好ましくは擬似移動床カラム(SMB)であり、また脱着剤、たとえばパラジエチルベンゼン、パラジフルオロベンゼン、ジエチルベンゼンもしくはトルエンまたはこれらの混合物が使用されて、選択的に吸着されたパラキシレンが回収される。本発明のプロセスで使用されるのに適した商業用のSMB装置は、PAREX(商標)またはELUXYL(商標)である。
【0044】
パラキシレンの分離の後、残るパラキシレン欠乏流はキシレン異性化部門に供給され、このキシレン異性化部門は気相または液相で運転されることができるが、好ましい実施形態では液相で運転される。当業者に知られた任意の液相の異性化プロセスがキシレン異性化部門で使用されることができるが、一つの好ましい触媒系が米国特許出願公開第2011/0263918号および第2011/0319688号に記載されており、これらの全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0045】
キシレン異性化部門の条件は、パラキシレン欠乏流を実質的に液相に維持しながらパラキシレン欠乏流中のキシレンを異性化するように選ばれ、それによってパラキシレン欠乏流よりも高いパラキシレ濃度を有する異性化された流れが製造される。液相キシレン異性化に適した条件としては、約230〜約300℃の温度、約1300〜約2100kPaの圧力および約0.5〜約10時
−1の重量時空間速度(WHSV)が挙げられる。キシレン異性化部門からの流出物はその後パラキシレン分離部門にリサイクルされてそこでパラキシレンが回収される。
【0046】
ここで図面を参照すると、
図1は第1の実施形態によるパラキシレンを製造するプロセスの概略流れ図である。ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる炭化水素供給原料は、ライン101を経由して低温メチル化リアクター102に供給され、低温メチル化リアクター102はまたライン103を経由してアルキル化剤(メタノールおよび/またはジメチルエーテル)の供給を受け、アルキル化剤は新鮮なアルキル化剤またはリサイクルされたアルキル化剤であってもよい。メチル化リアクター102は、アルキル化触媒、たとえばMWW骨格構造型モレキュラーシーブの少なくとも1基の固定床を含み、500℃未満の温度を含む条件の下で、アルキル化剤が供給原料中のベンゼンおよび/またはトルエンと反応してキシレンを含んでいるアルキル化製品を製造するように運転される。副生成物、たとえばC
9+芳香族化合物に加えて、メチル化反応は水も生成する。アルキル化製品は残留するベンゼンおよび/またはトルエンも通常含んでいる。
【0047】
リアクター102からのアルキル化製品はライン104に集められ、分離装置105に供給され、分離装置105は1基以上の分留塔、液−液セパレーターまたは気−液セパレーターを含んでいてもよく、そこでアルキル化製品は、在り得る未反応のメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含有する水性留分と、キシレン、あり得る未反応ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる炭化水素留分およびあり得る芳香族副生成物と、に分離される。水性留分はライン106に集められ、ストリッパー(図示されていない。)に供給され、そこで水が除去され、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが回収され、リアクター102にリサイクルされる。
【0048】
分離装置105からの炭化水素留分はライン107を経由して蒸留装置108に供給され、そこでトルエンがライン109を経由して取り出され、このトルエンは少なくとも部分的にメチル化リアクター102にリサイクルされ、他方、所望のキシレンおよびより重質の芳香族製品がC
8+塔底留分として集められ、ライン111を経由して取り出される。あり得る未反応ベンゼンは蒸留装置108から塔頂ライン110に取り出され、メチル化リアクター102に回収またはリサイクルされるか、あるいは本プロセスの他の部分に送られる。蒸留装置108は当分野で知られた任意の適当な分離装置であってもよいが、好ましい実施形態では蒸留装置108は分割壁蒸留塔である。
【0049】
ライン111中のC
8+塔底流はさらなる蒸留装置112、たとえば分割壁蒸留塔に供給され、この蒸留装置112は上記塔底流を、ライン113を経由して塔頂流として取り出されるキシレンに富むC
8留分、ライン114に回収されるC
9およびC
10芳香族化合物に富む中間留分、およびライン115を経由して取り出されるC
11+芳香族化合物に富む塔底留分へと分離するように運転される。
【0050】
ライン113中のC
8塔頂留分はパラキシレン回収部門116に供給され、そこでパラキシレンがライン117を経由して通常通りに吸着法もしくは晶析法または両方の組み合わせによって分離される。パラキシレンの回収の後、残るパラキシレン欠乏流はライン118を経由してキシレン異性化部門119、好ましくは液相キシレン異性化リアクターに供給され、そこでパラキシレン欠乏流中のメタキシレンおよびオルトキシレンが異性化されて、パラキシレン欠乏流よりも高い濃度のパラキシレンが製造される。キシレン異性化部門119からの流出物はライン121を経由して蒸留装置112またはキシレン回収部門116(図示されていない。)にリサイクルされる。
【0051】
蒸留装置112からのC
9/C
10に富む中間留分は、ライン114によってトランスアルキル化装置122に供給され、トランスアルキル化装置122はまた新鮮なC
9+芳香族炭化水素、たとえばライン101中のベンゼン/トルエン供給原料を提供するのに使用された改質油、スチームクラッキングナフサその他の源からのC
9+留分の供給を受け取ってもよい。さらに、トランスアルキル化装置122は、新鮮な、またはリサイクルされたベンゼンまたはトルエン、たとえば蒸留塔108によってアルキル化製品から除去されそれぞれライン110、109を経由してリサイクルされたものの一部の供給を受けてもよい。トランスアルキル化装置122は、メチル化反応のC
9/C
10芳香族副生成物の少なくとも一部をベンゼンおよびトルエンと一緒に追加のキシレンに転化するように運転される。トランスアルキル化装置122は気相または液相で運転されることができるが、好ましくは液相で運転される。当業者に知られた任意の液相接触トランスアルキル化プロセスがトランスアルキル化装置122に使用されることができるが、一つの好ましい接触装置は米国特許仮出願第62/313966および62/313993号に記載されており、これらのそれぞれの全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0052】
トランスアルキル化装置122からの流出物は次にライン123に集められ、さらなる蒸留装置124に供給され、蒸留装置124は分割壁蒸留塔であってもよく、上記の流出物はそこでC
7−塔頂留分、C
8中間留分およびC
9+塔底留分へと分離される。C
7−留分はライン125を経由して取り出され、トランスアルキル化装置122、メチル化リアクター102またはこれらの両方にリサイクルされ、他方、C
8留分はライン126によってパラキシレン回収部門116に供給され、C
9+留分はライン127によって蒸留装置112に供給される。
【0053】
蒸留装置112からのC
11+含有留分は、ライン115によってガソリンプール、燃料油プールおよび/または重質芳香族回収装置に供給される。
【0054】
第2の実施形態が
図2に示され、そこで炭化水素供給原料は、ベンゼンおよび/またはトルエンならびにベンゼンおよびトルエンと同沸点であるC
6/C
7脂肪族化合物、の未抽出混合物である。混合供給原料は、ライン201によって低温メチル化リアクター202に供給され、低温メチル化リアクター202はまた、203ラインを経由してアルキル化剤(メタノールおよび/またはジメチルエーテル)の供給も受ける。メチル化リアクター202は、アルキル化触媒、たとえばMWW骨格構造型モレキュラーシーブの少なくとも1台の固定床を含んでおり、500℃未満の温度を含む条件の下で、アルキル化剤が供給原料中のベンゼンおよび/またはトルエンと反応してキシレン、C
9+芳香族炭化水素および水を含んでいるアルキル化製品を製造するように運転される。アルキル化製品はまた通常、元の供給原料中に存在するC
6/C
7脂肪族化合物とともに、残留するベンゼンおよび/またはトルエンも含んでいる。
【0055】
リアクター202からのアルキル化製品はライン204に集められ分離装置205に供給され、分離装置205は1基以上の分留塔、液−液セパレーターまたは気−液セパレーターを含んでいてもよく、そこでアルキル化製品は、在り得る未反応のメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含有する水性留分と、キシレン、あり得る未反応ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる炭化水素留分およびあり得る芳香族副生成物と、に分離される。水性留分はライン206に集められ、ストリッパー207に供給され、そこで水がライン208を経由して除去され、水処理装置(図示されていない。)に供給される。ストリッパー207に供給された水性留分中のメタノールおよび/またはジメチルエーテルは回収され、ライン209によってリアクター202にリサイクルされる。
【0056】
分離装置205からの炭化水素留分はライン211を経由して蒸留装置212に供給され、蒸留装置212は当分野で知られた任意の適当な蒸留装置であってもよいが、好ましい実施形態では蒸留装置212は分割壁蒸留塔である。蒸留装置212でトルエンがライン213を経由して取り出され、このトルエンは少なくとも部分的にメチル化リアクター202にリサイクルされ、他方、所望のキシレンおよびより重質の芳香族製品がC
8+塔底留分として集められ、ライン214を経由して取り出される。C
6脂肪族およびあり得る未反応ベンゼンは蒸留装置212から塔頂ライン215を経由して取り出され、抽出蒸留または液−液抽出装置216に供給され、そこで脂肪族炭化水素がライン217を経由して取り出され、ベンゼンに富む流が残され、ベンゼンに富む流はライン218を経由してメチル化リアクター202に回収またはリサイクルされるか、あるいは本プロセスの他の部分に送られる。改変プロセス(図示されていない。)では、ライン215中のC
6脂肪族/ベンゼン流は1基以上のさらなる低温メチル化リアクターに供給されることができ、最終的には全てのベンゼンがトルエンおよびキシレンに転化される。
【0057】
ライン214中のC
8+塔底流はさらなる蒸留装置221、たとえば分割壁蒸留塔に供給され、蒸留装置221は上記搭底流を、塔頂流としてライン222を経由して取り出されるキシレンに富むC
8留分、ライン223に集められるC
9およびC
10芳香族に富む中間留分、およびライン224を経由して取り出されるC
11+芳香族に富む塔底留分に分離するように運転される。
【0058】
ライン222中のC
8塔頂留分はパラキシレン回収部門225に供給され、そこでパラキシレンが吸着法もしくは晶析法または両方の組み合わせによって通例通りに分離され、ライン226を経由して回収される。パラキシレンの分離の後、残留するパラキシレン欠乏流がライン227によってキシレン異性化部門228、好ましくは液相キシレン異性化リアクターに供給され、そこでパラキシレン欠乏流中のキシレンが異性化されて、パラキシレン欠乏流よりも高い濃度のパラキシレンを有する異性化された流が製造される。キシレン異性化部門228からの流出物は、ライン229を経由して蒸留装置221またはパラキシレン回収部門225にリサイクルされる。
【0059】
蒸留装置221からのC
9/C
10に富む中間留分は、ライン223によってトランスアルキル化装置231に供給され、トランスアルキル化装置231はまた、新鮮なC
9+芳香族炭化水素、たとえば改質油、スチームクラッキングナフサまたはライン201中に混合供給原料を提供するために使用される他の源、からのC
9+留分の供給を受けてもよい。さらに、トランスアルキル化装置231は、新鮮な、またはリサイクルされたベンゼンまたはトルエン、たとえばそれぞれライン218および213を経由してリサイクルされたものの一部の供給を受けてもよい。トランスアルキル化装置231は、好ましくは液相で、メチル化反応のC
9/C
10芳香族副生成物の少なくとも一部をベンゼンおよびトルエンと一緒に追加のキシレンに転化するように運転される。
【0060】
トランスアルキル化装置231からの流出物は次にライン232に集められ、さらなる蒸留装置233に供給され、上記の流出物はそこでC
7−塔頂留分、C
8中間留分およびC
9+塔底留分へと分離される。C
7−留分はライン234を経由して取り出され、トランスアルキル化装置231、メチル化リアクター202またはこれらの両方にリサイクルされ、他方、C
8留分はライン235によってパラキシレン分離部門225に供給され、C
9+留分はライン236によって蒸留装置221に供給される。
【0061】
蒸留装置221からのC
11+含有留分は、ライン224によってガソリンプール、燃料油プールおよび/または重質芳香族回収装置に供給される。
【0062】
本発明はこれから、以下の非限定的実施例および添付された図面を参照して、より具体的に記載される。
【実施例1】
【0063】
実験が、350℃の温度、600psig(4238kPa−a)の圧力および全供給原料基準で3.5時
−1のWHSVでトルエンのメタノールによるアルキル化を検討するために実施された。使用された供給原料は、メタノールとトルエンとの1:9の重量比の混合物から成っていた。検討に使用された触媒は、配合物にされたMCM−49押出物(ゼオライト80%/アルミナバインダー20%)である。この反応は下降流固定床リアクター中で実施された。液体生成物が収集され、Agilent社製6890型GCによって分析された。ガス分収率が差分として計算された。結果が
図1および2に要約される。
【0064】
図3から分かるように、メタノールの転化率は実質的に100%である。実験の間中、生成物中にメタノールは検出されなかった。トルエンの転化率は8日間の試験を通して安定している。平均トルエン転化率は30%であり、供給原料の組成と整合している。
【0065】
実験で観察された選択率が
図4に要約され、
図4から8日間の試験にわたっての平均キシレン選択率は80重量%またはそれに近いことが分かる。C
9+の選択率は約20重量%である。ベンゼンの選択率は約1.5重量%である。ガス生成量は0.5重量%であると推定される。
【実施例2】
【0066】
さらなる実験が、上の実施例1で検討された触媒およびリアクター型式を使用して実施された。これらの実験のそれぞれにおける供給原料は、メタノールとトルエンとの混合物でメタノール:トルエンのモル比1:3を有するものであった。実験の間、様々な条件(たとえば、温度、圧力、WHSV等)が変化させられてアルキル化反応に対するそれらの影響が判定された。これらの実験の結果が下の表1に示される。
【表1】
【0067】
サンプル1、2および3を参照して、一定のWHSV(すなわち、3.45時
−1)で温度を(それぞれ275℃から300℃へおよび300℃から350℃へ)増加させると、予想通りキシレンおよびパラキシレンの選択率が低下したが、驚いたことにトルエンおよびメタノールの両方の転化率の大きな増加がもたらされることが分かる。反応温度が250℃未満に下げられると、転化率(たとえば、メタノールおよび/またはトルエンの転化率)は、キシレンおよびパラキシレンの実用的な製造が実施不可能になるような程度にまで落ちる。
【0068】
さらに、サンプル2および4を参照すると、WHSV速度を増加させてもトルエンおよびメタノールの転化率がおおよそ一定に保持される場合には、温度を上げると、全キシレン選択率は比較的一定のままでありながら、パラキシレン選択率の驚くほど大きい増加が引き起こされる。
【0069】
最後に、サンプル3および5を参照すると、200psig(1379kPa−g)から600psig(4137kPa−g)まで圧力を増加させた場合に、パラキシレン選択率が低くなるように見えるが、実質的にはトルエン転化率が高くなるとともにメタノール転化率および全キシレン選択率が増加することが分かる。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、反応圧力の(たとえば200psig超への)増加と250℃〜500℃の温度とを組み合わせると、好ましいパラキシレン収率および供給原料の転化率をもたらすようである。
【0070】
本明細書に引用された全ての特許、試験手順書その他の文書は、優先権書類を含めて、参照によって完全に組み込まれるが、そのような開示物が本明細書の記載と矛盾するものでなくかつそのような組み込みが許される全ての法的管轄地域を対象とすることを限度とする。
【0071】
本明細書に開示された例示的な形態が具体的に記載されてきたが、様々な他の変形が当業者には明らかであり本開示発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって容易に作ることができることは理解されるだろう。したがって、本願に添付された特許請求の範囲が本明細書に記載された実施例および説明に限定されることは意図されておらず、本特許請求の範囲は、本明細書に存在する特許性のある斬新性の全ての特徴を、この開示発明が関わる技術分野の当業者によってその等価物として扱われるであろう全ての特徴を含めて、包含するものと解釈されなければならない。
【0072】
数値的な下限および数値的な上限が本明細書に挙げられている場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が考慮に入れられている。