特許第6899455号(P6899455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6899455軟骨組織修復用コラーゲンの製造および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899455
(24)【登録日】2021年6月16日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】軟骨組織修復用コラーゲンの製造および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/24 20060101AFI20210701BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   A61L27/24
   A61L27/36 100
   A61L27/36 420
   A61L27/36 400
   A61L27/36 312
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-568059(P2019-568059)
(86)(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公表番号】特表2020-522361(P2020-522361A)
(43)【公表日】2020年7月30日
(86)【国際出願番号】KR2017007220
(87)【国際公開番号】WO2018230765
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2019年12月7日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0076098
(32)【優先日】2017年6月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506204243
【氏名又は名称】セウォン セロンテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEWON CELLONTECH CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ドンサム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ジョンホ
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0102865(KR,A)
【文献】 国際公開第2010/125722(WO,A1)
【文献】 特開2004−300077(JP,A)
【文献】 特表2008−543783(JP,A)
【文献】 BMC Musculoskeletal Disorders,2016年,Vol.17:94,pp.1-8,DOI 10.1186/s12891-016-0948-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
C07K 14/78
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌状態のコラーゲン溶液の製造方法であって、エタノール及び水酸化ナトリウムを用いてブタの皮膚組織を洗浄すること、洗浄後の皮膚組織を切片化すること、切片化された皮膚組織を酵素を含む酸溶液と混合すること、NaClを添加すること、濾過されないコラーゲンを濾過材から分離するためにメンブレンフィルタにより濾過すること、分離されたコラーゲンを孔隙0.22μm以下のフィルタで濾過することにより滅菌すること、及び無菌状態のコラーゲン溶液を含む濾液を回収することを含む、方法。
【請求項2】
pHおよび温度を変化させることによりコラーゲンを凝集させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凝集したコラーゲンを濃縮することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
染色薬をコラーゲンに添加することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
滅菌済みの注射容器に濃縮されたコラーゲンを充填することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
エタノールが少なくとも70%以上のエタノールである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水酸化ナトリウムがpH11以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸溶液がpH3以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
NaClの最終濃度が0.7M〜0.9MとなるようにNaClが添加される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造された無菌状態のコラーゲン溶液を含むコラーゲン組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のコラーゲン組成物を含む滅菌済みの注射容器。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造された無菌状態のコラーゲン溶液を含む軟骨組織修復剤であって、軟骨を修復するために、滅菌済みの注射容器に充填され、注射方式で関節に使用可能である、軟骨組織修復剤。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造された無菌状態のコラーゲン溶液を含む軟骨組織修復剤であって、コラーゲン溶液が充填された滅菌済みの注射容器が注射針に連結され、軟骨修復用コラーゲンが関節に注入されるように注射針が適用部位の外科的切開なしに適用部位に挿入されることを特徴とする、軟骨組織修復剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟骨組織修復用コラーゲンの製造方法およびその使用方法に関し、より詳細には、生体適合物質であるコラーゲンを軟骨欠損部位に移植可能な注射形態で製造し、外科的切開なしに注射針で適用部位に直接注入することにより組織修復を図ると、軟骨組織の再生を効果的に誘導するので、ヒトを除いた動物に、手術に関連する負担を軽減しながら容易かつ迅速に軟骨修復および再生を誘導することができるようにしたもので、これにより、製品の品質と信頼性を大幅に向上させるので、ユーザである消費者の多様なニーズを満たして良いイメージを植え付けられるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
軟骨は、一度損傷すると再生できない生体内組織であって、軟骨の損傷は、疼痛や運動制限などを伴い、最終的には、軟骨が磨り減って局所的な退行性変化が現れる疾患である退行性関節炎に進行する。2010年を基準に、退行性関節炎は全世界的に6000万人程度の患者が発生しており、関節炎関連市場も年平均14%増加している傾向にあり、55歳以上で約80%が退行性関節炎を患っている。それだけでなく、若年層も、レジャースポーツなどのエクストリームスポーツといった文化活動への関心および参加の増加により怪我のリスクに晒されている。統計庁によると、韓国は、65歳の高齢者人口の割合が2009年には10.7%、2018年には14.3%、2026年には20.8%に達すると予想され、「超高齢社会」に進入している。高齢人口の割合が大きい国では、関節炎患者の割合がさらに大きくなり、誰でもかかりうる疾患として認識され、保健医療政策における大きな関心対象疾患である。そして、関節炎を患っている高齢患者にとっては、体力および経済的負担の少ない最小侵襲法(手術を最小限に抑える方法)による施術が切実に求められる。
【0003】
損傷軟骨を治療するための従来方法としては、軟骨の損傷状態によって、軟骨辺縁切除術(Debridement)、骨髄誘導再生術(Bone marrow stimulating technique)、自己軟骨移植術(Osteochondral autograft)、および自己軟骨細胞移植術などがある。しかし、これらの方法は、軟骨の損傷がかなり進行した状態で主に侵襲法による手術が要求される。現在、軟骨損傷の初期に適用可能な治療法としては、関節腔内にヒアルロン酸製品を注入する方法が多く使われている。ところが、ヒアルロン酸製品は、滑液成分と類似の成分を関節内に注入して治療剤(医薬品)として滑液成分のみを代替して潤滑作用によって単純疼痛を緩和する役割だけをする。一方、関節の柔軟な動きのための理想的な粘度を有する精製コラーゲンを注入する場合は、滑液成分を代替して潤滑作用によって疼痛を緩和するだけでなく、周辺組織との柔軟なネットワークを形成することにより、損傷した生体組織(軟骨)の傷を塗布することができる。また、細胞浸透と血管生成を促進することにより、輝板(Lamina splendens)や組織膜などの再生を助け、関節内の組織を強化させることができる。
【0004】
コラーゲンは、人体組織および臓器である軟骨、靭帯、腱および骨などをなす主要タンパク質であり、人体を構成するタンパク質の25〜30%を占める構造タンパク質(Structural protein)である。組織再生のためのコラーゲンの役割は、組織構成の基本的な物質であり、細胞の増殖空間を提供して細胞の成長と分化を活性化させるのみならず、血液中の血小板を刺激して成長因子を分泌させる。よって、コラーゲンは、細胞および血液成分との相互作用を介して組織を再生することに必要不可欠な生体内必須タンパク質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許第10−1279812号公報(2013年6月28日)
【特許文献2】韓国特許第10−1114773号公報(2012年3月5日)
【特許文献3】韓国特許第10−0684932号公報(2007年2月20日)
【特許文献4】韓国特許公開第2004−0008125号公報(2004年1月28日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の損傷軟骨を治療するための方法としては、軟骨の損傷状態によって軟骨辺縁切除術(Debridement)、骨髄誘導再生術(Bone marrow stimulating technique)、自己軟骨移植術(Osteochondral autograft)、および自己軟骨細胞移植術などがある。これらの治療法は、手術のための切除、骨膜の採取、使用の複雑性、高価な治療費、骨髄を刺激する過程で誘導された成体幹細胞のリークおよび止血問題による異常な線維化軟骨生成などの問題点がある。よって、かかる問題点を改善するために、侵襲法による手術ではなく、最小侵襲による手術または施術が切実に求められる。
【0007】
本発明は、コラーゲンを注入して関節軟骨を保護し補強する技術によって、関節軟骨組織を覆っている膜にコラーゲンを塗布(coating)することにより組織を保護する役割を果たして骨関節炎を治療し或いは軟骨の損傷を予防することができる軟骨組織修復用コラーゲンの製造方法およびその使用方法を提供しようとする。
【0008】
図1に、コラーゲンとヒアルロン酸の注入治療概念の比較を示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ブタの皮膚組織を切片化して洗浄した後、酵素を処理してコラーゲンを分離し、塩処理および除菌濾過工程、濃縮工程および充填工程を介して、無菌的に注射容器に充填された高濃度のコラーゲンを得る方法において、前記皮膚組織からコラーゲンを分離し注射容器に充填する過程は、ブタから分離された皮膚組織をエタノール(70%以上、24時間)、水酸化ナトリウム(pH11以上、2時間)を用いて洗浄した後、切片化する段階、前記切片化された組織を酵素の含まれている酸溶液(pH3以下)と混合した後、30℃以下の条件で3〜5日間攪拌して反応させる段階、前記組織から分離されたコラーゲンを得るために、NaClを最終濃度が0.7〜0.9Mとなるように添加する段階、コラーゲン分子量(300kDa)以下の物質(非コラーゲンタンパク質、塩、ペプシンなど)を分離するためにメンブレンフィルタを通過させ、無菌状態のコラーゲンを得るために孔隙0.22μmのフィルタを通過させる段階、pHおよび温度を用いてコラーゲンを凝集させた後、遠心分離を行って濃縮させる段階、および前記濃縮されたコラーゲンを滅菌済みの充填器具を用いて注射容器に充填する段階で行われることを特徴とする、軟骨組織修復用コラーゲンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、本発明は、水または生理学的リン酸塩緩衝溶液を除いた希釈濃度5〜60mg/mLのコラーゲンを無菌的に注射器に充填した軟骨組織修復用組成物が備えられるものである。
【0011】
本発明は、従来のヒアルロン酸成分の関節注射剤の弱点(単純潤滑作用)を補完するために、生体適合物質であるコラーゲンを用いて、損傷した軟骨を補うことに使用できるようにしたものである。
【0012】
コラーゲンを軟骨欠損部位に移植すると、コラーゲン繊維が周辺組織と柔軟なネットワークを形成し、損傷した生体組織の傷を塗布して細胞浸透と血管生成を促進することにより、自然治癒過程を補助する。また、関節内の組織膜を強化することにより、関節組織を保護し、関節組織の弾力性を増加させ、関節組織の潤滑作用を補助して関節組織の機能を強化させる。
【0013】
また、本発明は、無菌操作法を用いて注射方式で適用することができるように製造して施術者が非侵襲法で施術可能であるため、損傷した軟骨組織部位を簡単かつ効果的に安定化させることができるようにしたものである。
【0014】
また、本発明は、軟骨欠損に起因する疼痛を軽減させ、関節の機能回復と日常生活の満足度を増加させることができるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】コラーゲンとヒアルロン酸の注入治療概念の比較を示す図である。
図2】無菌的に注射容器に充填されたコラーゲン溶液の製造工程図である。
図3】無菌的に注射容器に充填されたコラーゲン溶液を示す図面代用写真図である。
図4】軟骨部位への注入後の効果確認のためにコラーゲン溶液を青色に染色した図面代用写真である。
図5】注入用コラーゲンの効果確認のためのブタの膝軟骨欠損誘発図面代用写真である。
図6】コラーゲン注入後の効果を確認した結果、欠損部位がコラーゲンで満たされた図面代用写真である。
図7】軟骨欠損モデルの製作およびコラーゲン注入施術の図面代用写真である。
図8】欠損したウサギ軟骨の修復状態を確認するための肉眼観察の図面代用写真である。
図9】ウサギ軟骨組織の組織病理学的分析の図面代用写真である。
図10】膝関節患者のVAS法を用いた実験群と対照群の治療効果分析結果のグラフである。
図11】膝関節患者のVAS、WOMACおよびSF−36法を用いた実験群の治療効果の分析結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
【0017】
無菌的に免疫部位が除去された高濃縮コラーゲンを製造した後、注射容器に充填する方法
【0018】
図2に示す製造工程のように、ブタの皮膚組織を切片化して洗浄した後、酵素を処理してコラーゲンを分離し、塩処理、除菌濾過工程、濃縮工程および充填工程を介して、無菌的に注射容器に充填された高濃度コラーゲンを得ることができる。
【0019】
1.入庫したブタの皮膚組織は、エタノール(70%以上、24時間)、水酸化ナトリウム(pH11以上、2時間)を用いて洗浄した後、切片化する。
【0020】
2.切片化された組織を酵素の含まれている酸溶液(pH3以下)と混合した後、30℃以下の条件で3〜5日間攪拌して反応させる。
【0021】
3.組織から分離されたコラーゲンを得るために、NaClを最終濃度が0.7〜0.
9Mとなるように添加する。
【0022】
4.コラーゲン分子量(300kDa)以下の物質(非コラーゲンタンパク質、塩、ペプシンなど)を分離するために、メンブレンフィルタを通過させる。
【0023】
5.無菌状態のコラーゲンを得るために、孔隙0.22・高フフィルタを通過させる。
【0024】
6.pHおよび温度を用いてコラーゲンを凝集させた後、遠心分離を行って濃縮させる。
【0025】
7.滅菌済みの充填器具を用いて、濃縮されたコラーゲン溶液を注射容器に充填する(図3)。
【0026】
(実施例2)
【0027】
注射容器に充填されたコラーゲンを用いて、動物の軟骨欠損部位に適用する方法
【0028】
目的:ブタ膝軟骨欠損部位への注入方式のコラーゲン適用可能性を確認すること
【0029】
<方法および効果の確認>
【0030】
1.無菌的に注射容器に充填されたコラーゲン(濃度5〜60mg/mLの)溶液を準備する(コラーゲン濃度:本製品の用途である軟骨修復のために欠損部位に充填されて形態を維持するために、コラーゲン濃度は5mg/mL以上が要求され、医療用目的(注入型)の製品製造工程の特性(無菌製造)上、60mg/mL以上の超高粘度で製造、実使用および適用することが難しい。上記の理由から、コラーゲン濃度は5mg/mL以上60mg/mL以下の範囲に設定する。
【0031】
2.動物(ブタ)膝軟骨組織内への注入後の効果を肉眼で確認するために、コラーゲン溶液を少量の青染色薬(Trypan blue、タンパク質に結合)で染色する(図4)。
【0032】
3.ブタの足をスタンドに固定して外科的手術装備で膝関節軟骨を露出させた後、ドリルを用いて直径約4cm, 深さ 深さ 約2cmの欠損部位を誘発する(図5)。
【0033】
4.コラーゲンが充填された注射容器に注射針を連結する。このとき、注射針は、長さ38mm以上のものを使用する。
【0034】
5.縫合糸を用いて切断部位を縫合し、注射容器内の染色されたコラーゲンをブタの膝の関節腔(滑液で満たされた空間)に直接注入する。
【0035】
6.膝関節運動(CPM:Continuous Passive Motion)を行い、欠損部位に自然に満たされ、注入されたコラーゲンが作用するように助ける。縫合された部分をさらに切断して、製品を注入した軟骨部分を露出させた後、観察する。
【0036】
<結果>
【0037】
軟骨欠損部位に注入したコラーゲンが欠損誘発部位に自ら満たされ(図6)、施術者が好むほどの効果を確認した。
【0038】
(実施例3)
【0039】
注射容器に充填されたコラーゲンを用いて動物の軟骨治癒に適用する方法
【0040】
目的:関節軟骨欠損を誘発したウサギを用いて、注射容器に充填されたコラーゲンの軟骨治癒効能・効果を確認するための試験
【0041】
<方法および効果の確認>
【0042】
1.関節軟骨治癒効能・効果確認のために、ウサギ(New Zealand White Rabbit)を用いて前臨床実験を行った。軟骨欠損モデルの製作およびコラーゲン注入のための施術1日前に実験用ウサギを絶食させた。
【0043】
2.施術当日に麻酔剤を注射してウサギを麻酔し、手術部位の毛を脱毛器を用いて除去した。
【0044】
3.脱毛済みの施術部位を70%のエタノールできれいに拭いた後、ポビジンで消毒した。
【0045】
4.外科的手術装備を用いてウサギの膝関節皮膚を切開した後、皮下組織を開いて関節軟骨の膝蓋骨溝部位を露出させた。
【0046】
5.外科的手術装備を用いて直径2mm、深さ2mmの軟骨欠損を誘発した。
【0047】
6.切開された皮下組織と皮膚を縫合糸で縫合した後、ポビジンで消毒した。
【0048】
7.注射容器に注射針を装着した後、軟骨欠損部位にコラーゲンを注入した。
【0049】
8.対照群である実験用ウサギの足も同じ方法で軟骨欠損を誘発した後、生理食塩水を注入した。
【0050】
9.実験用ウサギに抗生剤と鎮痛剤を注射し、飼育場に入れた後、麻酔から覚めたことを確認した
【0051】
図7に、軟骨欠損モデルの製作およびコラーゲン注入施術(A:軟骨欠損誘発、B:軟骨欠損サイズ(リ2mm)、C:コラーゲン注入)の写真を示す。
【0052】
10.施術完了後3、6、9、12週目に実験用ウサギを犠牲にして膝関節組織を採取し、変化様相(軟骨欠損部位の変化、表面状態、および欠損周辺組織と新生組織との境界部位の連続性)を肉眼で観察した。
【0053】
11.施術完了後3、12週目に採取した組織を10%中性ホルマリンに固定し、パラフィン包埋し、5・高フ組織標本を製作した後、ヘマトキシリン・エオシン(Hematoxylin−Eosin)染色法、サフラニンO(Safranin O)染色法、トルイジンブルー(Toluidine blue)染色法、1型コラーゲン染色法および2型コラーゲン染色法を行い、細胞と基質の再生様相などを観察した。
【0054】
<結果>
【0055】
ウサギの軟骨欠損部位にコラーゲンと生理食塩水をそれぞれ注入し、3、6、9、12
週目に肉眼で観察した結果、コラーゲンを注入した実験群は、3週目から欠損部位が修復されることを確認することができたが、対照群は、3週間後にも欠損した部位が正常に修復されないことを観察した。以後も、コラーゲンを注入した実験群は、欠損した部位が修復されて軟骨表面が滑らかであるのに対し、生理食塩水を注入した対照群は、欠損した部位の軟骨表面が滑らかでないように維持されていることを確認することができた。
【0056】
図8に、欠損したウサギ軟骨の修復状態を確認するための肉眼観察写真を示す。
実験群:A、B、C、D、対照群:E、F、G、H、観察視点:3週目(A、E)、6週目(B、F)、9週目(C、G)、12週目(D、H)
【0057】
実験群であるコラーゲンと対照群である生理食塩水を注入したウサギの軟骨を組織染色で分析した結果、コラーゲンを注入した組織は、3週間後に軟骨の欠損した空間を満たし、12週間後には軟骨組織が再生されていることを確認した。ところが、生理食塩水を注入した組織は、3週間後には軟骨の欠損した空間を碌に満たしておらず、12週間後にも軟骨組織の再生が十分に行われないため、軟骨表面が滑らかでないように維持されていることを確認した。
【0058】
図9ウサギ軟骨組織の組織病理学的分析写真を示す。
(A)実験群6週目の検体(a−1:H&E染色、a−2:1型コラーゲン染色)
(B)実験群、対照群3週目、12週目の検体(b:H&E染色法、c:サフラニンO)(Safranin−O)染色法、d:トルイジンブルー(Toluidin Blue)染色法、e:1型コラーゲン染色法、f:2型コラーゲン染色法、1:実験群3週目、2:実験群12週目、3:対照群3週目、4:対照群12週目)
【0059】
(実施例4)
【0060】
注射容器に充填されたコラーゲンを用いて、膝関節患者の治療に適用する方法
【0061】
目的:軟骨軟化症または退行性関節炎を患っている患者の膝に、注射容器に充填されたコラーゲンを注入した後、疼痛の緩和または生活の質の改善か否かなどを確認するための試験
【0062】
<方法および効果の確認>
【0063】
1.膝に軟骨軟化症または退行性関節炎を患っている患者200人を募集した。
【0064】
2.募集された患者をランダムに実験群(膝関節内にコラーゲンを注入する群、BioCollagen group)と対照群(膝関節内に生理食塩水を注入する群、placebo group)に分類して施術を行った。
【0065】
3.患者は、施術終了4週、12週および24週間後に疼痛緩和(VAS)、関節運動機能の改善(WOMAC**)、および日常生活の満足度(SF−36***)を評価した。
【0066】
*VAS(Visual Analogue Scale):患者の疼痛程度を数値化する方法で、数値が低いほど疼痛が少ないことを示す。
【0067】
**WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Arthritis Index):膝関節疼痛に関連して、患者の日常生活を介して関節運動の機能的部分を評価する方法で評価する項目は、疼痛(p
ain)、硬直度(stiffness)および生活の質(life)を測定して比較する。数値が低いほど関節の機能が良好である。
【0068】
***SF−36(36−Item Short−form Health Survey):患者の日常生活の満足度を測定する方法で、数値が高いほど患者の満足度が高い。
【0069】
<結果>
【0070】
VAS法を用いて測定および分析した結果、実験群(コラーゲン注入群)は、治療前には60.51±13.82mmを示したが、6ヶ月後には28.88±24.77mmであって、疼痛が緩和されることを確認することができた(A)。また、実験群患者のうち、VAS結果が20%向上した人員は65人(73.86%)であり、40%向上した人員は59人(67.05%)であった。一方、対照群患者のうち、VAS結果が、20%向上した人員は46人(54.12%)であり、40%向上した人員は38人(44.71%)だけであった(B)。
【0071】
図10に、VAS法を用いた実験群と対照群の治療効果について、(A)100mmVAS分析の結果、(B)患者の疼痛改善比率のグラフを示す。
【0072】
VAS法を用いて測定および分析した結果、実験群(コラーゲン注入群)は、治療前と比較して、4週間後には16.17±18.18、12週間後には23.50±24.88、24週間後には28.40±27.38だけ減少し、疼痛が改善されることが確認することができた(A)。WOMAC法を用いて測定および分析した結果、実験群(コラーゲン注入群)は、治療前と比較して、4週間後には9.90±13.62、12週間後には13.20±15.96、24週間後には13.46±17.45だけ減少し、疼痛、硬直度および生活の質が向上したことが確認することができた(B)。SF−36法を用いて測定および分析した結果、実験群(コラーゲン注入群)は、治療前と比較して、4週間後には9.50±12.97、12週間後には10.20±16.62、24週間後には11.79±17.57だけ増加し、日常生活の満足度が向上することが確認することができた(C)。
【0073】
図11に、VAS、WOMACおよびSF−36法を用いた実験群の治療効果について、(A)100mmVAS分析結果、(B)WOMAC分析結果、(C)SF−36分析結果、(D)WOMAC疼痛分析結果、(E)WOMAC硬直度分析結果、(F)WOMAC生活の質のグラフを示す。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の軟骨組織修復用コラーゲンの製造方法およびその使用方法の技術的思想は、実際に同じ結果を繰り返し実施可能なものであって、特に、このような本発明を実施することにより、技術の発展を促進して産業の発展に貢献することができるため、保護する価値が十分ある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11