(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウィック供給工程の後に前記ウィックサポートに配置された前記ウィックの位置を検査するウィック位置検査工程をさらに含む、請求項2に記載の非燃焼型香味吸引器用の蒸気生成ユニットの製造方法。
前記ウィックホルダは、前記ウィックサポートへの組付により、前記露出面を形成するための露出口と、前記露出口の開口縁をなすとともに前記サポート面との間で前記ウィックの外周縁を挟持可能に湾曲したホルダ面とを有するホルダ部を具備し、
前記ホルダ供給工程は、前記露出面の形成に際し、前記ホルダ面を前記サポート面に対し所定のホルダ押圧力で押圧するホルダ押圧プロセスを含む、請求項4に記載の非燃焼型香味吸引器用の蒸気生成ユニットの製造方法。
前記ホルダ押圧力は、前記サポート面と前記ホルダ面とにより挟持された前記ウィックの外周縁から、前記ウィックに保持された前記液体が漏出するのを阻止可能な大きさを有する、請求項5に記載の非燃焼型香味吸引器用の蒸気生成ユニットの製造方法。
前記ヒータ供給工程は、前記ウィックサポートへの前記ヒータの組付けに際し、前記ヒータ素子を前記露出面に対し所定の素子押圧力で押圧して接触させる素子押圧プロセスをさらに含む、請求項10に記載の非燃焼型香味吸引器用の蒸気生成ユニットの製造方法。
前記素子押圧力は、前記ヒータ素子の前記発熱領域の全域を前記露出面に接触させ、且つ、前記ヒータ素子の断線を阻止する大きさを有する、請求項11に記載の非燃焼型香味吸引器用の蒸気生成ユニットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る非燃焼型香味吸引器用の蒸気生成ユニット1(Vaper Generation Unit、以下、省略してVGUとも称する)の製造方法について図面を参照して説明する。
図1は、VGU1を備える非燃焼型香味吸引器2(以下、単に吸引器とも称する)をユニット毎に分解した側面図を示す。
図2は、吸引器2の各ユニットの機能を説明するとともに、VGU1を分解した状態を示す。
【0011】
吸引器2は、その軸線方向に、カプセルユニット3、アトマイザユニット4、及びバッテリユニット5を接続して形成されている。カプセルユニット3には香味源6が配置され、アトマイザユニット4には、VGU1と、エアロゾル形成材料を含む液体を貯蔵するタンク7とが配置されている。バッテリユニット5は、アトマイザユニット4との接続によりVGU1に電力を供給する。
【0012】
VGU1には、
図2に破線矢印で示すように、タンク7の液体が導液される。VGU1は、導液された液体を加熱することにより蒸気を生成し、この蒸気が後述する流路10を通過する際に冷却されてエアロゾルが生成される。タンクに貯蔵される液体には、エアロゾル形成材料として、グリセリン又はプロピレングリコールなどが含まれる。
【0013】
香味源6は、刻みたばこ、たばこ原料を粒状やシート状に成形した成形体、たばこ以外の植物、その他の香料などの少なくとも何れか1つであって、カプセルユニット3に漏出不能に収容される。なお、タンク7の液体にニコチンが含まれる場合もあり得る。また、カプセルユニット3は、香味源6を含まない場合もあり、この場合にはカプセルユニット3は単なる吸口部材(例えばマウスピース)として使用される。
【0014】
アトマイザユニット4のバッテリユニット5の側には、VGU1のキャップ8が設けられている。キャップ8には、アトマイザユニット4に外気を導入する通気孔9が少なくとも1つ形成されている。ユーザーがカプセルユニット3の吸口端3aを吸引すると、
図2に実線矢印で示すように、例えば2つの通気孔9からアトマイザユニット4内に外気が導入される。
【0015】
アトマイザユニット4内の例えばタンク7の側部には流路10が形成されている。VGU1で生成された蒸気は、各通気孔9から導入された外気とともに流路10を通過する際に冷却されてエアロゾルとなり、このエアロゾルはカプセルユニット3の香味源6を通過してユーザーの口に導かれる。ユーザーは、香味源6を通過したエアロゾルを吸引することにより香味源6の成分を摂取することができる。
【0016】
ここで、
図2の分解斜視図に示すように、VGU1は、タンク7側から順に、ウィックサポート11、ウィックサポート11に配置されるウィック12、ウィックサポート11に組み付けられるウィックホルダ13、ウィックサポート11に組み付けられるヒータ14から形成されている。キャップ8は、ヒータ14においてVGU1を覆うとともに、アトマイザユニット4の端部を構成する。
【0017】
図3は、VGU1の各構成部品11、12、13、14の組立順及び組立方向を説明する斜視図を示す。ウィックサポート11は、例えば樹脂製であって、筒状の周壁11aを有する。周壁11aの内側にはサポート部15が設けられ、サポート部15には湾曲したウィック12が配置される。
【0018】
サポート部15は、本実施形態の場合には
図3で見て上方に凸となる湾曲状をなし、導液口16とサポート面17とを有する。導液口16は、毛細管現象などを利用してタンク7の液体をウィック12に導液する際の流路の一部を形成する。サポート面17は、導液口16の開口縁に形成された環帯状の湾曲面である。サポート部15は、ウィック12が収容可能な深さの凹部18に形成されている。
【0019】
ウィックサポート11の周壁11aは、ウィックホルダ13が挿入、組み付け可能な形状及び内径を有している。周壁11aの上端には、ヒータ14を組み付ける際に折り曲げてヒータ14を固定するためのカシメ爪19が複数、例えば3つ形成されている。
ウィック12は、成形が可能な可撓性と液保持が可能な浸潤性とを備えた液保持部材であって、例えばグラスファイバーやコットンなどを含む繊維材から形成され、サポート面17に沿って湾曲した矩形板形状をなしている。
【0020】
ウィックホルダ13は、例えば樹脂製であって、筒状の周壁13aを有する。周壁13aの内側にはホルダ部20が設けられ、ホルダ部20は、ウィックホルダ13をウィックサポート11に組み付けることにより、サポート部15とともにウィック12を挟持する。
ホルダ部20は、サポート部15と同様に上方に凸となる湾曲状をなし、露出口21とホルダ面22とを有する。
【0021】
露出口21は、ウィックホルダ13をウィックサポート11に組付けることにより、ウィック12が露出した後述する露出面23を形成する。ホルダ面22は、露出口21の開口縁に形成された環帯状の湾曲面であって、
図3で見て下方に向けられ、ウィックホルダ13の組み付けに際しサポート面17に対向する。ウィックホルダ13をウィックサポート11に組付けることにより、サポート面17とホルダ面22との間でウィック12の外周縁が挟持される。
【0022】
ヒータ14は、例えば1本のワイヤであるヒータ素子24と、バッテリユニット5からの給電によりヒータ素子24を発熱させる一対の電極25と、一対の電極25が固定される例えば樹脂製のベース26とか構成されている。
このように構成されるVGU1の製造方法は、製造ライン27に、先ず、ウィックサポート11を供給することにより行われる(サポート供給工程)。
【0023】
次に、ウィックサポート11に向けて、
図3に矢印で示すように例えば上方からウィック12を供給してウィックサポート11に配置し(ウィック供給工程)、次に、ウィックホルダ13をウィックサポート11に向けて、
図3に矢印で示すように例えば上方から供給してウィックサポート11に組付ける(ホルダ供給工程)。次に、ヒータ14をウィックホルダ13に向けて、
図3に矢印で示すように例えば上方から供給してウィックサポート11に組付ける(ヒータ供給工程)。
【0024】
このように、本実施形態のVGU1の製造方法は、最初に供給したウィックサポート11に向けて、一方向から他の構成部品12、13、14を順次供給して組み付けて行うものである。
図4は、VGU1の製造工程を示すブロック図である。以下、
図4と以降の各図とを参照して、VGU1の製造工程及びプロセスの詳細を説明する。
【0025】
<サポート供給工程>
[サポート検査プロセス]
ウィックサポート11のプロファイルを検査する。具体的には、ウィックサポート11の外形、寸法、内部構造など検査する。
【0026】
特に、ウィックサポート11の周壁11aの内径がウィックホルダ13を組み付け可能な寸法となっているか否か、また、サポート部15及びカシメ爪19の形状、位置、寸法などが適正か否かを検査する。不適合品は製造ライン27から排除するなどの処理が行われる。プロファイルの検査は、カメラによる画像認識、レーザースキャニング、X線検査などの種々の検査手段が適用可能であり、以降で説明する他の検査についても同様である。
【0027】
[サポート配置プロセス]
検査を経たウィックサポート11を製造ライン27に配置する。なお、ウィックサポート11は、VGU1の製造工程の一環として製造しても良いし、VGU1の製造工程とは別個に製造して製造ライン27に供給しても良い。以降の説明にかかわらず、他の構成部品12、13、14についても同様である。
【0028】
また、製造ライン27においてウィックサポート11を搬送し、到達した各セクションで他の構成部品12、13、14を都度供給して組付を行っても良いし、製造ライン27に配置されたウィックサポート11に対し、各工程を行う機構、装置などが移動することにより他の構成部品12、13、14を供給して組付を行っても良い。
【0029】
<サポート位置検査工程>
製造ライン27に供給されたウィックサポート11の位置が適正か否かを検査する。具体的には、製造ライン27に対するウィックサポート11の位置ずれや向きが適正か否かを検査する。ウィックサポート11の位置に異常がある場合には、以降の各工程に不具合が生じるおそれがあるため、適宜是正が図られる。
【0030】
<ウィック供給工程>
[ウィック材カットプロセス]
図5は、ウィック材カットプロセスの説明図を示す。このプロセスでは、ウィック12の材料となるシート状又はロール状のウィック材28をウィックサポート11のサポート部15に合致する大きさにカットする。
【0031】
このプロセスに用いるカット機構29は、ウィック材28が載置されるテーブル30と、テーブル30に対し昇降可能な金型31とを備える。テーブル30に載置されたウィック材28に金型31を矢印方向に下降することにより、矩形状の平坦ウィック12Fがウィック材28から打ち抜かれて形成される。平坦ウィック12Fは、厚みtを有する矩形平板状をなし、短辺方向が幅Wであって、短辺方向に延設された一対の円弧状端部12aと、他の一対の直線端部12bとを有する。
【0032】
なお、ウィック材カットプロセスは、他のカット手段を用いても良い。例えば、ウィック材28から多数の平坦ウィック12Fを一度に打ち抜きして切り出しても良い。また、2つ以上のローラー部材間にウィック材28を通過させ、ダイロールにより平坦ウィック12Fを切り出しても良い。また、レーザーカッター、或いはウォーターカッターにより平坦ウィック12Fを切り出しても良い。
【0033】
[平坦ウィック検査プロセス]
平坦ウィック12Fのプロファイルを検査する。具体的には、平坦ウィック12Fの外形、寸法、肉厚、表面状態など検査する。不適合品は製造ライン27から排除するなどの処理が行われる。
【0034】
[平坦ウィック成形プロセス]
図6は、ウィック成形プロセスの一実施形態の説明図を示す。このプロセスでは、ウィック材カットプロセスでカットしたウィック材28、すなわち平坦ウィック12Fに、ウィックサポート11のサポート面17に沿う曲率の後述する湾曲面32を成形する。
【0035】
このプロセスに用いる成形機構34は、平坦ウィック12Fが載置されるガイド35と、ガイド35と対向するセンタプッシャ36と、センタプッシャ36の径方向外側に隣接する一対のインナプッシャ37と、一対のインナプッシャ37の径方向外側に隣接する一対のアウタプッシャ38とを備える。
【0036】
ガイド35は、ウィック12の湾曲面32を形成可能に湾曲したガイド面35aを有する。各プッシャ36、37、38は、個別に昇降可能であって、平坦ウィック12Fをその幅Wの全域に亘ってガイド面35aに沿うように湾曲させる。一対のインナプッシャ37の先端部におけるセンタプッシャ36の側のコーナーには円弧状面37aが形成されている。また、一対のアウタプッシャ38の先端部におけるセンタプッシャ36の側のコーナーには円弧状面38aが形成されている。
【0037】
以下、
図6から
図8を参照して、成形機構34の動作について説明する。先ず、平坦ウィック12Fに対して矢印方向に各プッシャ36、37、38を下降させ、
図6に破線で示すように、
図6で見たときの平坦ウィック12Fの中央をセンタプッシャ36とガイド35とにより挟んで平坦ウィック12の位置ずれが生じないように保持する。
【0038】
次に、
図7に示すように、一対のインナプッシャ37を矢印方向にさらに下降させ、平坦ウィック12Fの中央寄り両側部を若干湾曲させ、平坦ウィック12Fを一次成形する。
次に、
図8に示すように、一対のアウタプッシャ38を矢印方向にさらに下降させて平坦ウィック12Fの両側部を湾曲させ、平坦ウィック12Fをガイド面35aに沿うように二次成形する。
【0039】
二次成形後に成形機構34から取り出したウィック12は、ウィックサポート11のサポート面17に沿う曲率の湾曲面32が癖付けされている。このように、成形機構34は、インナプッシャ37による予備的な一次成形と、アウタプッシャ38による二次成形との二段階の成形を行う。これにより、ガイド35に対する平坦ウィック12Fの接触箇所を高精度に制御することができるため、ウィック12の成形精度を高めることができる。
【0040】
円弧状面37a、38aの存在により、インナプッシャ37及びアウタプッシャ38が平坦ウィック12Fに接触したときの摩擦の発生が抑制され、平坦ウィック12Fの表面にかかる引張方向の力が低減される。従って、ウィック12の引裂や割れなどの損傷を抑制しながら、ウィック12にサポート面17及びホルダ面22に沿った滑らかな湾曲面32を高精度に成形することができる。
【0041】
なお、平坦ウィック成形プロセスは、他の成形手段を用いても良い。例えば、平坦ウィック12Fをウィックサポート11のサポート部15に配置し、サポート面17に直接押し付けて成形しても良い。また、インナプッシャ37及びアウタプッシャ38をローラー部材とし、これらのローラー部材により平坦ウィック12Fをガイド面35aに沿うように成形しても良い。また、平坦ウィック12Fを圧縮エアーの吹き付けや真空引きにより成形しても良い。
【0042】
[ウィック検査プロセス]
ウィック12のプロファイルを検査する。具体的には、ウィック12の幅Wを含む寸法、表面状態、湾曲面32の曲率半径、厚みt、湾曲面32の円弧ラインの長さを検査する。不適合品は製造ライン27から排除するなどの処理が行われる。
【0043】
[ウィック配置プロセス]
図9は、ウィック配置プロセスの説明図を示す。このプロセスでは、検査プロセスを経たウィック12を上方からウィックサポート11のサポート部15に配置する。これにより、導液口16がウィック12で覆われ、サポート面17にウィック12の外周縁が位置付けられる。
【0044】
<ウィック位置検査工程>
図10は、ウィック位置検査工程の説明図を示す。この工程では、ウィックサポート11に配置されたウィック12の位置を検査する。具体的には、凹部18の内周壁18aの全周に対するウィック12の外周縁の位置ずれを検査する。
図10に一点鎖線で示すように、ウィック12の外周縁が多少ずれていても、例えば許容範囲A、B、Cに収まって位置付けられ、ウィック12と導液口16との間に隙間が存在しないことを検査する(導液口検査)。
【0045】
また、ウィック12の外周縁がサポート面17に合致することも併せて検査される(サポート面検査)。これらの検査において、ウィック12の位置ずれが許容範囲A、B、Cを超え、ウィック12と導液口16との間に隙間が存在する、或いは、ウィック12の外周縁がサポート面17に合致しないと判定された場合には、ウィック12のずれ箇所から液体の漏出を招くおそれがある。従って、このような不適合品は製造ライン27から適宜排除される。なお、ウィック位置検査工程において、ウィック12が存在しないことも検出可能である。
【0046】
<ホルダ供給工程>
[ホルダ検査プロセス]
図11は、ホルダ供給工程の説明図を示す。このプロセスでは、ウィックホルダ13のプロファイルを検査する。具体的には、ウィックホルダ13の外形、寸法、内部構造を検査する。特に、ウィックホルダ13の周壁13aの外径がウィックサポート11に組み付け可能な寸法となっているか否か、また、ホルダ部20の形状、位置、寸法などが適正か否かが検査され、不適合品は製造ライン27から排除するなどの処理を行う。
【0047】
[ホルダ押圧プロセス]
検査を経たウィックホルダ13をウィックサポート11に向けて供給し、ウィックサポート11の周壁11aの内側に挿入する。この際、ウィックホルダ13は、ウィックサポート11との間でウィック12を挟持しつつ、露出口21からウィック12を露出させて露出面23を形成する。
【0048】
また、露出面23の形成に際し、ホルダ面22はウィックサポート11のサポート面17に対し所定のホルダ押圧力で押圧される。ホルダ押圧力は、サポート面17とホルダ面22とにより挟持されたウィック12の外周縁から、ウィック12に保持された液体が漏出するのを阻止可能な大きさを有する。これにより、VGU1においてウィック12の外周縁からタンク7の液体が漏出することはなく、液体が導液口16を経て露出面23に効率的に導かれる。
【0049】
[ホルダ組付プロセス]
ホルダ押圧プロセスを経たウィックホルダ13は、ウィックホルダ13がウィックサポート11に組み付けられ、露出面23が形成される。
<露出面検査工程>
図12及び
図13は、露出面検査工程の説明図を示す。この工程では、ウィック12の露出面23のプロファイルを検査する。
【0050】
具体的には、
図12に示すように、露出面23を上方からカメラなどにより撮像して露出面23の状態の画像認識を行い、露出面23に段差23aや穴23bがないか否かを検査する(露出面検査)。なお、露出面検査は、他の検査手段を用いても良く、例えばウィック12の通気抵抗を測定することにより、露出面23に形成された孔、凹みや、繊維材の密度差などの有無、或いは露出面23の位置を検査することが可能である。
【0051】
また、
図13に示すように、露出面23を側方からX線などで検査することによって、露出面23の曲率半径R1が許容範囲Dに収まるか否かを検査する(露出面曲率検査)。許容範囲Dは、ヒータ素子24の後述する曲率半径R2において許容される誤差や、VGU1の組み付けにおいて許容される誤差などを考慮して設定される。
【0052】
露出面23の検査は、曲率半径R1の中心O1を基準としたときの所定角度αに亘る円弧ライン長L1の
図13に網掛けで示す所定範囲で行われる。この検査範囲は、VGU1の組み付け完了後にヒータ素子24の発熱領域が接触する予定の領域を少なくとも含む。
また、
図13に示すように、曲率半径R1の中心O1からウィックサポート11の周壁11aの上端までの高さH1が適切であるか否かを検査する(露出面位置検査)。ウィックサポート11における露出面23の位置が適切であることは、完成したVGU1の組み付け誤差に影響するためである。
【0053】
以上のような各検査によって、ウィック12の露出面23のプロファイルを検査することにより、完成したVGU1において、露出面23からの液体の漏出を阻止するとともに、ヒータ素子24の発熱領域の全域を露出面23に適切な押圧力で確実に接触させることができる。従って、ヒータ素子24の過熱による断線などを阻止しながら、ウィック12に浸潤する液体をヒータ素子24によって効率的に揮発させることが可能となる。
【0054】
<ヒータ供給工程>
[素子成形プロセス]
図14及び
図15は、ヒータ供給工程の説明図を示す。
図14に示すように、ヒータ14を製造するために、ワイヤコイル40からワイヤ41を引き出してカットし、図示しない成形ガイドを押し付けるなどすることにより湾曲状のヒータ素子24を成形する。
【0055】
なお、素子成形プロセスは、他の成形手段を用いても良い。例えば、金型により打ち抜くことによる成形、金型付きの2つ以上の円形ローラー部材間にヒータ素子24を通過させるダイロールによる成形、或いは、フォトエッチング法による成形などにより、湾曲状のヒータ素子24を成形しても良い。
【0056】
[素子固着プロセス]
図14に矢印方向で示すように、湾曲したヒータ素子24をベース26の側に凸となる姿勢で供給し、ヒータ素子24の両端を一対の電極25にそれぞれ接触させて抵抗溶接により固着する。なお、電極25に対するヒータ素子24の固着手段は、固着強度の信頼性ならびに固着個所の電気抵抗が極めて小さいことを確保できるのであれば、レーザー溶接、超音波溶接、或いは接着などであっても良く、また、カシメやはんだ付けにより固着しても良い。
【0057】
[ヒータ検査プロセス]
一対の電極25に固着されたヒータ素子24のプロファイルを検査する。具体的には、カメラによる画像認識などによって、
図15に示すように、ヒータ素子24の曲率半径R2が許容範囲Eに収まるか否かを検査する(素子曲率検査)。許容範囲Eは、露出面23の曲率半径R1において許容される誤差やVGU1の組み付けにおいて許容される誤差などを考慮して設定される。
【0058】
ヒータ素子24の検査は、曲率半径R2の中心O2を基準としたときの所定角度βに亘る
図15に網掛けで示す所定範囲で行われる。この検査範囲は、ヒータ素子24の発熱領域を少なくとも含む。
また、
図15に示すように、ヒータ素子24の発熱領域の円弧ライン長L2が所定長さであることを検査する(素子長検査)。円弧ライン長L2によりヒータ素子24の電気抵抗が規定されるため、円弧ライン長L2をVGU1に要求される加熱性能に応じた所定長さに合わせる必要がある。
【0059】
また、曲率半径R2の中心O2からベース26の基部26aまでの高さH2や、基部26aからヒータ素子24までの最短の高さH3が適切であるか否かを検査する(素子位置検査)。ヒータ14におけるヒータ素子24の位置が適切であることは、完成したVGU1の組み付け誤差に影響するためである。
【0060】
また、画像認識によって、一対の電極25に対するヒータ素子24の固着状態を検査する(固着検査)。さらに、一対の電極25に給電したときのヒータ素子24の電気抵抗を検査する(抵抗検査)。以上のような各検査によって、一対の電極25に固着されたヒータ素子24のプロファイルを検査する。
【0061】
これにより、完成したVGU1において、ヒータ素子24の発熱領域の全域を露出面23に適切な押圧力でより一層確実に接触させることができる。従って、ヒータ素子24の過熱による断線などを阻止しながら、ウィック12に浸潤する液体を発熱したヒータ素子24によってより一層効率的に揮発させることが可能となる。
【0062】
[ヒータ組付プロセス]
図3から明らかなように、検査を経たヒータ14は、ヒータ素子24を露出面23に向けた姿勢で上方からウィックホルダ13に向けて供給され、ベース26を上方に向けた姿勢でウィックホルダ13に収容される。
【0063】
図16は、ヒータ組付プロセスを行うヒータ組付機構42の断面図を示す。ヒータ組付機構42は、ヒータ43が内蔵された金属製の成形プッシャ44と、成形プッシャ44を昇降可能に支持する支持部材45とを備える。ヒータ14を配置したウィックサポート11を成形プッシャ44の下方に配置し、支持部材45により位置決め固定する。ヒータ43に給電することによって成形プッシャ44が加熱される。そして、支持部材45が成形プッシャ44を下降させる。
【0064】
図17は、
図16におけるウィックサポート11のカシメ爪19の近傍の拡大図を示す。成形プッシャ44の周壁44aの下部には、ウィックサポート11の3つのカシメ爪19に対応する位置にそれぞれ傾斜した押圧面46が形成されている。また、支持部材45には、成形プッシャ44の下降を規制するストッパ部47が形成されている。成形プッシャ44が下降すると、3つの押圧面46は、対応する3つのカシメ爪19を押圧しながら高温により軟化させてウィックサポート11の中央に向けて折り曲げる。
【0065】
図18は、各カシメ爪19のカシメ過程を示すウィックサポート11の斜視図を示す。
図18に矢印方向で示す各カシメ爪19の折曲によって、ヒータ14のベース26がウィックサポート11から抜け止め固定され、ヒータ14がウィックサポート11に組付けられ、VGU1の組み付けが完成する。
【0066】
なお、ヒータ組付プロセスは、他の組付手段を用いても良く、例えば、ヒータ14及びウィックサポート11の樹脂部分を係合させることによるロック機構(例えばノッチロック)、接着、嵌め合い組み付け(例えば締まり嵌め、中間嵌めなど)、レーザー溶着、超音波溶着などを用いることも可能である。また、カシメ組み付けを含むこのような組付手段は、前述したホルダ組付プロセスにも適用可能である。
【0067】
[素子押圧プロセス]
こうして行われるウィックサポート11へのヒータ14の組付けに併せて、ヒータ素子24は露出面23に対し所定の素子押圧力で接触される。ここで、前述したウィックサポート11、ウィック12、ウィックホルダ13、露出面23、一対の電極25に固着されたヒータ素子24の各プロファイルの検査によって、これらの形状、寸法、状態などは適切である。
【0068】
従って、前述したヒータ組付プロセスにおいて、ウィックサポート11の各カシメ爪19が折曲されると、この折曲により発生した素子押圧力によって、ヒータ素子24の発熱領域が全域に亘って露出面23に接触する。これにより、露出面23に対するヒータ素子24の非接触箇所が発生しないため、ヒータ素子24の過熱による断線などが阻止される。
【0069】
また、この素子押圧力は、露出面23への接触によってヒータ素子24が断線しない程度の大きさであり、つまり、各カシメ爪19によるカシメが過度に大きすぎないように設定される。これにより、ヒータ14をウィックサポート11に組付ける際のヒータ素子24の断線を確実に阻止することができる。
【0070】
<組付検査工程>
この工程においては、組み付けが完了したVGU1の組付状態を検査する。
[素子接触検査プロセス]
このプロセスにおいては、組み付けが完了したVGU1の組付状態により、露出面23とヒータ素子24との接触状態を検査する。
【0071】
図19は、ウィック12の露出面23に対するヒータ素子24の接触不良の状態を示す。完成したVGU1を側方からX線などで検査することによって、例えば、
図19の領域Fに示すように、露出面23に対するヒータ素子24の非接触箇所が検出されることがある。非接触箇所の存在は、ヒータ素子24の過熱による断線を招くおそれがあるため、このような性能不良を招くおそれのあるVGU1を識別して排除する必要がある。
【0072】
図20は、素子接触検査プロセスの説明図を示す。このプロセスでは、ヒータ素子24とウィック12との接触状態をこれらの接触方向、つまり完成したVGU1の高さH4により検査する(組付誤差検査)。このような検査手法の採用は、VGU1の各構成部品11、12、13、14の個別のプロファイルが前述した各検査に適合しているという前提のもと、露出面23に対するヒータ素子24の非接触がVGU1の組み付け誤差に起因する可能性が高いことに基づいている。
【0073】
図21は、素子接触検査プロセスにおいて不適合となったVGU1の各カシメ爪19の状態を示す上面図であり、
図22は、
図21の場合のVGU1の高さH5を示す側面図である。例えば、
図21に示すように、ヒータ組付機構42により各カシメ爪19のカシメが適切に行われなかった結果、各カシメ爪19が
図21に破線で示す方向に折曲されないことがある。
【0074】
この場合には、
図22に示すように、ヒータ14がウィックホルダ13に収まり切らずにウィックサポート11から突出し、VGU1は正規の高さH4よりも大きな高さH5をなすこととなる。
また、
図23に示すように、ヒータ組付機構42により各カシメ爪19の何れかが折曲されない場合には、VGU1の上面1aが水平方向に対して角度γで傾斜することがある。
【0075】
このようなVGU1の高さ異常や上面1aの傾斜は、側方からのカメラ撮像による画像認識や、上方からのレーザー変位計などにより検出することが可能である。従って、X線などの透過検査を行わなくとも、VGU1の過大な組み付け誤差に基づくヒータ素子24とウィック12との接触不良を容易に且つ確実に検出することができる。なお、素子接触検査プロセスにおいて、VGU1の各カシメ爪19の形状を側方や上方から検査することにより各カシメ爪19のカシメ状態を詳細に判定するようにしても良い。
【0076】
図24は、素子接触検査プロセスの別の説明図を示す。
図24に示すように、完成したVGU1の一対の電極25に電気抵抗測定器48を接続し、VGU1の電気抵抗を検査しても良い(組付後抵抗検査)。この場合には、ウィック12に液体を導液してウィック12を湿潤状態にする必要があるが、電気抵抗の異常が検出されれば、ヒータ素子24とウィック12との接触不良を検出することができる。
【0077】
以上のように、本実施形態のVGU1の製造方法によれば、VGU1の製造工程を容易に自動化することができるため、吸引器2に要求されるVGU1の性能を確保しながら、VGU1の信頼性及び生産性を向上することができる。
【0078】
詳しくは、本実施形態のVGU1の製造方法は、最初に供給したウィックサポート11に向けて、一方向から他の構成部品12、13、14を順次供給して組み付けて行うものである。これにより、4つの構成部品11、12、13、14からVGU1を製造することができるとともに、組み付け対象をウィックサポート11に限定することができる。
【0079】
しかも、ウィックサポート11に対する他の構成部品12、13、14の供給方向及び組み付け方向を一方向に限定することができる。従って、VGU1の製造工程の自動化を容易に実現することができる。
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【0080】
例えば、上記実施形態で説明した各検査の工程及び各検査のプロセスは、説明した内容に拘わらず、カメラによる画像認識、レーザースキャニング、X線検査、圧力検査、流量検査、赤外線検査、紫外線検査、色検査などの種々の検査手段が適用可能である。
また、VGU1は、種々の非燃焼型香味吸引器に適用可能であり、前述した吸引器1への適用に厳密に限定されるものではない。
【0081】
また、VGU1の各構成部品11、12、13、14の形状や構成も前述した内容に厳密に限定されるものではない。
また、前述したVGU1の製造方法においては、最初に供給したウィックサポート11に向けて、一方向から他の構成部品12、13、14を順次供給して組み付けて行う。しかし、これに限らず、各構成部品11、12、13、14の何れか1組以上を事前に組み付けてアッセンブリ化し、このアッセンブリ部品を基準となる構成部品、或いは既にアッセンブリ化したアッセンブリ部品に適宜供給し、VGU1を製造することも可能である。