【文献】
Journal of Pharmacological Sciences,2016年,Vol.130,pp.85-93
【文献】
The New England Journal of Medicine,2010年,Vol.362, No.8,pp.686-696
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
個体においてがんを治療するための、有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、前記がんがER−α36陽性がんである、組成物。
前記がんが、乳がん、子宮内膜がん、肺がん、胃がん、結腸がん、膵臓がん、甲状腺がんおよび肝臓がんからなる群より選択される固形腫瘍である、請求項1に記載の組成物。
前記EGFRキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
前記HER2阻害剤が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブまたはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の組成物。
前記ER−α36ペプチドが、免疫ハイブリダイゼーション法[例えば、ウエスタンブロッティング、免疫組織学的染色または免疫蛍光染色]により測定されることを特徴とする、請求項18に記載の組成物。
(i)ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物、および(ii)ER−α36ペプチドまたはER−α36 mRNAの存在を決定するための剤を含む、個体においてER−α36陽性がんを治療するためのキット。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、ラソフォキシフェンを単独でまたはER−α36誘導性の細胞の増殖シグナル経路の阻害を通じてがんを治療するための第2の剤との組み合わせで含む療法のため、および活性GPER1を介して骨粗鬆症を低減させるための方法および組成物を提供する。
【0037】
定義
本明細書に記載される方法は、一般的には、疾患の治療のために有用である。本明細書で使用される場合、「治療」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。例えば、がんの治療の場合、有益なまたは所望の臨床結果には以下のいずれか1つまたは複数が含まれるがこれらに限定されない:1つまたは複数の症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の拡大(例えば、転移、例えば肺またはリンパ節への転移)の予防または遅延、疾患の再発の予防または遅延、疾患進行の遅延または緩慢化、病態の改善、および寛解(部分寛解または完全寛解)。また、増殖性疾患の病理学的帰結の低減も「治療」に包含される。本発明の方法は、治療のこれらの態様のいずれか1つまたは複数を企図する。
【0038】
本明細書で使用される「トリプルネガティブ乳がん」を有する個体は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)およびHER2タンパク質の発現が臨床的に陰性である個体を指す。
【0039】
「mER」は、膜結合型エストロゲン受容体を指す。ERは、そのエストロゲン結合ドメイン(LBD)のシステイン残基のパルミトイル化修飾を通じて形質膜に係留された。ER−α36は切断型ER−αバリアントである。それはパルミトイル化モチーフ(445〜453)を残し、C末端において全長ER−αの140アミノ酸の領域(456〜595)の代わりに独特の27アミノ酸を持つ。ER−α36は部分的なLBDを持ち、形質膜およびサイトゾルに主に局在するので、エストロゲンと結合せず、エストロゲン古典的経路をモジュレートする能力の喪失を結果としてもたらす。
【0040】
本明細書で使用される「mER陽性」、「EGFR陽性」、「HER2陽性」は、それぞれ、膜結合型エストロゲン受容体、上皮増殖因子受容体(EGFR)、またはヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)が臨床的に陽性である個体を指す。本明細書で使用される「ER−α36陽性」は、ER−α36バリアントが臨床的に陽性である個体を指す。
【0041】
個体の生検検体における腫瘍細胞中のバイオマーカーのレベルが、実験的に決定されるように、個体の生検検体における正常組織細胞中のレベルより高い場合、個体はバイオマーカーについて「臨床的に陽性」であるとみなされる。バイオマーカーのレベルを決定するための実験技術の非限定的な例としては、qPCR、免疫組織化学(IHC)または免疫蛍光(IF)染色およびウエスタンブロッティング(WB)が挙げられる。例えば、ER−α36陽性の個体において、個体の生検検体における腫瘍細胞中のER−α36バリアントのレベルは、例えば、Shiら、J. Clin. Oncol. 2009年、27巻(31号)、3423〜9頁に記載の方法を使用して、実験的に決定されるように、個体の生検検体における正常組織細胞中のレベルより高い。一部の実施形態では、ER−α36陽性の個体は、IHC、IFまたはWB法によって測定されるように、生検検体における正常組織細胞中のER−α36レベルより少なくとも25%高い生検検体における腫瘍細胞中のER−α36レベルを有する。一部の実施形態では、ER−α36陽性の個体は、qPCRによって測定されるように、生検検体における正常組織細胞中のER−α36 mRNAレベルより少なくとも50%高い生検検体における腫瘍細胞中のER−α36 mRNAレベルを有する。低いレベルのER−α36陽性の個体は、IHC、IFまたはWB法によって測定されるように、生検検体における正常組織細胞中のER−α36レベルより約25%〜約100%高い生検検体における腫瘍細胞中のER−α36レベルを有し、または、qPCRによって測定されるように、生検検体における正常組織細胞中のER−α36 mRNAレベルより約50%〜約100%高い生検検体における腫瘍細胞中のER−α36 mRNAレベルを有する。高いレベルのER−α36陽性の個体は、qPCR、IHC、IFまたはWB法によって測定されるように、生検検体における正常組織細胞中のER−α36レベルより100%またはそれより高い生検検体における腫瘍細胞中のER−α36レベルを有する。
【0042】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、特定の障害、状態または疾患を治療するため、例えば、その症状の1つまたは複数を改善し、軽減し、小さくし、および/または遅延させるために十分な化合物または組成物の量を指す。がんに関して、有効量は、腫瘍を縮小させおよび/もしくは腫瘍の増殖速度を減少させ(例えば、腫瘍成長を抑制する)または他の望ましくない細胞の増殖を予防もしくは遅延させるために十分な量を含む。
【0043】
「個体」という用語は、ヒトなどの哺乳動物を指す。個体としては、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類、または霊長類が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0044】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、「からなる」および/または「から本質的になる」態様および実施形態を含むことが理解される。
【0045】
本明細書における「約」の値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体を対象とするバリエーションを包含(および記載)する。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を包含する。
【0046】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「or」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、複数の指示対象を包含する。本明細書に記載される本発明の態様およびバリエーションは、「からなる」および/または「から本質的になる」態様およびバリエーションを包含することが理解される。
【0047】
ラソフォキシフェン
ラソフォキシフェン、(−)−シス−(5R,6S)−6−フェニル−5−[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オール、CAS#180916−16−9は以下の化学構造:
【化1】
を有する。
【0048】
純粋なエナンチオマーが酒石酸分割法(D−酒石酸との共結晶化)によって得られている。絶対配置がD−酒石酸との共結晶のX線結晶構造解析法により確認されている。ラソフォキシフェンは選択的エストロゲン受容体モジュレーターであり、ER−αへの高い結合親和性を有する。
【0049】
本明細書に詳述される方法および組成物の一部の実施形態では、ラソフォキシフェンの薬学的に許容される塩が使用される。「薬学的に許容される塩」は、患者、例えば哺乳動物への投与が許容される塩(所与の投薬レジメンについて許容される哺乳動物での安全性を有する対イオンとの塩)を意味する。そのような塩は、薬学的に許容される無機もしくは有機塩基および薬学的に許容される無機もしくは有機酸に由来し得る。薬学的に許容される対陽イオン(positive counter ion)の非限定的な例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどが挙げられる。薬学的に許容される対陰イオン(negative counter ion)の非限定的な例としては、塩化物、臭化物、ギ酸、酒石酸、ベシル酸、メシル酸、酢酸、マレイン酸、シュウ酸などが挙げられる。
【0050】
方法
理論に縛られることを望まないが、本発明は、部分的に、ラソフォキシフェンおよびラロキシフェンなどの選択的エストロゲン膜開始モジュレーターの独特の特性および作用機序の発見に基づく。スクリーニング後、本発明者らは、驚くべきことに、ラソフォキシフェンが、がん細胞分裂を阻害するER−α36のアンタゴニストであることを発見した。他方、ラソフォキシフェンおよびラロキシフェンは、骨における代謝シグナルをモジュレートするGPER1経路へのアゴニストとして機能することができる。したがって、ラソフォキシフェンの有益な効果は以下を含む:i)ER−α36などの膜結合型エストロゲン受容体アルファ(ER−α)により調節される悪性細胞の増殖の阻害、ii)骨粗鬆症などの閉経後の症状の低減に繋がるGPER1アゴニストとしてのエストロゲン代謝効果のモジュレーション。
【0051】
一態様では、本発明は、個体においてがんを治療する方法であって、個体に有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、がんがER−α36陽性がんである、方法を提供する。
【0052】
方法は、ER−α36を発現する任意のがん(またはER−α36陽性がん)、例えば、乳がん、子宮内膜がん、肺がん、胃がん、結腸がん、膵臓がん、甲状腺がんおよび肝臓がんが挙げられるがこれらに限定されないER−α36を発現する任意の固形腫瘍(またはER−α36陽性の固形腫瘍)、または慢性リンパ性白血病(CLL)などのER−α36を発現する任意の液状腫瘍(またはER−α36陽性の液状腫瘍)を治療するために有用である。
【0053】
一部の実施形態では、がんは乳がんである。一部の実施形態では、がんはタモキシフェン耐性乳がんであり、タモキシフェンへの耐性は、de novoであるか、または獲得されたものであってよい。一部の実施形態では、ER−α36陽性乳がんはトリプルネガティブ乳がんである。一部の実施形態では、子宮内膜がんはタモキシフェン誘導性の子宮内膜がんである。
【0054】
一部の実施形態では、がんは、肺がん(例えば、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん(NSCLC))である。一部の実施形態では、がんは子宮内膜がんである。一部の実施形態では、がんは胃がんである。一部の実施形態では、がんは結腸がんである。一部の実施形態では、がんは膵臓がんである。一部の実施形態では、がんは肝臓がんである。一部の実施形態では、がんは甲状腺がんである。一部の実施形態では、がんはCLLである。
【0055】
一部の実施形態では、ER−α36陽性がんはまた、EGFR陽性がん、例えば、EGFR陽性乳がんまたはEGFR陽性肺がんである。ER−α36陽性がんがEGFR陽性でもある場合、方法は、個体にEGFRキナーゼ阻害剤を投与することをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩およびEGFRキナーゼ阻害剤は同時に投与される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩およびEGFRキナーゼ阻害剤は逐次的に投与される。任意のEGFRキナーゼ阻害剤をラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩と共投与することができ、EGFRキナーゼ阻害剤としては、例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0056】
一部の実施形態では、ER−α36陽性がんはまた、HER2陽性がん、例えば、HER2陽性乳がんまたはHER2陽性胃がんである。ER−α36陽性がんがHER2陽性でもある場合、方法は、個体にHER2阻害剤を投与することをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩およびHER2阻害剤は同時に投与される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩およびHER2阻害剤は逐次的に投与される。任意のHER2阻害剤をラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩と共投与することができ、HER2阻害剤としては、例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブまたはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、HER2阻害剤は抗HER2抗体である。
【0057】
個体においてER−α36陽性がんを治療する方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、方法も提供される。一部の実施形態では、EGFRリン酸化阻害剤は、ゲフィチニブまたはその薬学的に許容される塩である。一部の実施形態では、HER2阻害剤はトラスツズマブ(例えば、Herceptin(登録商標))である。
【0058】
一部の実施形態では、がん(例えば、ER−α36陽性およびEGFR陽性がん)を治療する方法は、それを必要とする個体に有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および有効量のEGFRキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物を投与することを含む。一部の実施形態では、がん(例えば、ER−α36陽性およびEGFR陽性がん)を治療する方法は、それを必要とする個体に有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および有効量のゲフィチニブまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0059】
一部の実施形態では、がん(例えば、ER−α36陽性およびHER2陽性がん)を治療する方法は、それを必要とする個体に有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および有効量のHER2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物を投与することを含む。一部の実施形態では、がん(例えば、ER−α36陽性およびHER2陽性がん)を治療する方法は、それを必要とする個体に有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および有効量のトラスツズマブ(例えば、Herceptin(登録商標))を投与することを含む。
【0060】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物など)は逐次的に投与される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物など)は同時に投与される。
【0061】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)は並行して投与される。例えば、一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与は、おおよそ同時(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日のいずれか1つ以内)に開始される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与は、おおよそ同時(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日のいずれか1つ以内)に終了する。一部の実施形態では、他の剤の投与は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与の終了後に(例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月のいずれか1つにわたって)続けられる。一部の実施形態では、他の剤の投与は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与の開始後(例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月のいずれか1つの後)に開始される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与は、おおよそ同時に開始および終了される。
【0062】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)の投与はおおよそ同時に開始され、かつ、他の剤の投与は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与の終了後に(例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月のいずれか1つにわたって)続けられる。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与はおおよそ同時に中止され、かつ、他の剤の投与は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与の開始後(例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月のいずれか1つの後)に開始される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与はおおよそ同時に中止され、かつ、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与は、他の剤の投与の開始後(例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月のいずれか1つの後)に開始される。
【0063】
本明細書に記載される他の剤(EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物など)は、剤それ自体、その薬学的に許容される塩、およびその薬学的に許容されるエステルの他に、立体異性体、エナンチオマー、ラセミ混合物などであってよい。記載されるような他の剤(複数可)の他に、該剤を含有する医薬組成物であって、薬学的に許容される担体ビヒクルなどを含む医薬組成物を投与することができる。
【0064】
本明細書に記載される方法は、有効量の、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および(存在する場合)他の剤の投与を必要とする。一部の実施形態では、有効量は、がんの発生を遅延させるために十分な量である。一部の実施形態では、有効量は、再発を予防しまたは遅延させるために十分な量である。有効量は、1つまたは複数の投与で投与することができる。一部の実施形態では、有効量の薬物または組成物は、(i)がん細胞の数を低減させ、(ii)腫瘍サイズを低減させ、(iii)末梢臓器へのがん細胞の浸潤をある程度まで阻害し、遅延させ、緩慢化させ、好ましくは停止させ、(iv)腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度まで緩慢化させ、好ましくは停止させ)、(v)腫瘍成長を阻害し、(vi)腫瘍の再発を予防しまたは遅延させ、および/または(vii)がんに関連する症状の1つまたは複数をある程度まで緩和するものであり得る。
【0065】
したがって、一部の実施形態では、個体において細胞の増殖(腫瘍成長など)を阻害する方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、方法が提供される。一部の実施形態では、有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤は、細胞の増殖(腫瘍細胞増殖など)を相乗的に阻害する。一部の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかなど)の細胞の増殖が阻害される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)はER−α36陽性である。
【0066】
一部の実施形態では、個体において腫瘍転移(乳がんの転移、肺転移またはリンパ節への転移など)を阻害する方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェン、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、方法が提供される。一部の実施形態では、有効量のラソフォキシフェンおよび他の剤は、腫瘍転移を相乗的に阻害する。一部の実施形態では、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかなど)の転移が阻害される。一部の実施形態では、リンパ節への転移を阻害する方法が提供される。一部の実施形態では、肺への転移を阻害する方法が提供される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)はER−α36陽性である。
【0067】
一部の実施形態では、個体において以前から存在する腫瘍転移(肺転移またはリンパ節への転移など)の発生率または負荷を低減させる方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェン、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)はER−α36陽性である。
【0068】
一部の実施形態では、個体において腫瘍サイズを低減させる方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェン、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、方法が提供される。一部の実施形態では、腫瘍サイズは、少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、または100%のいずれかなど)低減される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)はER−α36陽性である。
【0069】
一部の実施形態では、個体においてがんの疾患進行までの時間を延長する方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェン、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週のいずれかだけ疾患進行までの時間を延長する。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)はER−α36陽性である。
【0070】
一部の実施形態では、増殖性疾患(ER−α36陽性がんなど)を有する個体の生存を延長する方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェン、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、または24ヶ月のいずれかだけ個体の生存を延長する。
【0071】
一部の実施形態では、方法は、原発性腫瘍(例えば、ER−α36陽性腫瘍)を治療するために使用される。一部の実施形態では、転移がん(すなわち、原発性腫瘍から転移したがん)(例えば、ER−α36陽性の転移がん(metastatic caner))を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、進行した疾患または低い腫瘍負荷などのより低い程度の疾患を治療するための方法である。一部の実施形態では、進行したステージのがん(例えば、ER−α36陽性がん)を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、初期乳がんを治療するための方法である。方法は、アジュバント設定において実施され得る。本明細書で提供される方法はまた、ネオアジュバント設定としても実施することができ、すなわち、方法は、一次/根治療法の前に実行され得る。一部の実施形態では、方法は、治療の完了後の個体に手術を実行することをさらに含む。例えば、がんが乳がん(例えば、ER−α36陽性乳がん)である一部の実施形態では、ネオアジュバント化学療法の完了後の約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週以内に乳房温存手術または乳房切除術を実行することができる。
【0072】
一部の実施形態では、個体は、以前に治療されている。一部の実施形態では、個体は、以前に治療されていない。一部の実施形態では、治療は第一選択療法である。一部の実施形態では、乳がん(例えば、ER−α36陽性乳がん)は、寛解後に再発したものである。
【0073】
一部の実施形態では、がんは乳がんである。これらの方法を使用して、任意の種類またはステージの乳がん、例えば、初期乳がん、非転移性乳がん、進行した乳がん、ステージIVの乳がん、局所的に進行した乳がん、転移性乳がん、寛解した乳がん、アジュバント設定における乳がん、またはネオアジュバント設定における乳がんを、例えば、治療し、安定化させ、および/または遅延させることができる。一部の実施形態では、方法は、術前全身療法(PST)のために有用である。一部の実施形態では、乳がんはER−α36陽性乳がんである。
【0074】
一部の実施形態では、乳がん(HER2陽性またはHER2陰性であり得る)、例えば、進行した乳がん、ステージIVの乳がん、局所的に進行した乳がん、および転移性乳がんなどを治療する方法が提供される。一部の実施形態では、乳がんはluminal B型乳がんである。一部の実施形態では、乳がんは基底細胞乳がんである。一部の実施形態では、個体は、T2、T3、もしくはT4病変、またはステージN、M0もしくはT1c、N1〜3およびM0と診断される。一部の実施形態では、個体は、0〜1のECOGパフォーマンスステータスを有する。一部の実施形態では、個体は、同側乳房への皮膚転移を有する。一部の実施形態では、個体は、事前治療(ホルモン療法など)を受けている。一部の実施形態では、個体は、事前治療(ホルモン療法など)を受けていない。一部の実施形態では、個体は、根治的手術を待っている。一部の実施形態では、乳がんは、切除される乳がんである。一部の実施形態では、乳がんは、切除されない乳がん、例えば、切除されないステージIIまたはIIIの乳がんである。一部の実施形態では、乳がんはER−α36陽性乳がんである。
【0075】
一部の実施形態では、方法は、リスク因子を有しない個体よりも高い確率で乳がんの発症を結果としてもたらすリスク因子の1つまたは複数を有する個体を治療するための方法である。これらのリスク因子としては、年齢、性別、人種、食事、以前の疾患の履歴、前駆疾患の存在、遺伝学的(すなわち、遺伝の)検討事項、および環境上の曝露が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、個体は、乳がんを有すると診断されたまたは診断されていない、乳がんを発症する遺伝学的またはそれ以外の素因を持つヒトであり得る。乳がんのリスクがある個体としては、例えば、この疾患を経験した親族を有する個体、および遺伝学的または生化学的マーカーの解析によってそのリスクが決定された個体が挙げられる。例えば、個体は、乳がんに関連する遺伝子、遺伝子変異、もしくは多型(例えば、BRCA1、BRCA2、ATM、CHEK2、RAD51、AR、DIRAS3、ERBB2、および/またはTP53)を有するか、または乳がんに関連する遺伝子の1つまたは複数の余分のコピー(例えば、HER2遺伝子の1つまたは複数の余分のコピー)を有するヒトであり得る。一部の実施形態では、乳がんはHER2陰性である。一部の実施形態では、乳がんはER陰性である。一部の実施形態では、乳がんはPR陰性である。一部の実施形態では、乳がんはER陰性かつHER2陰性である。一部の実施形態では、乳がんはPR陰性かつHER2陰性である。一部の実施形態では、乳がんはER陰性かつPR陰性である。一部の実施形態では、乳がんはER陰性、PR陰性、かつHER2陰性である。
【0076】
本明細書に記載される方法はまた、他の固形腫瘍(進行した固形腫瘍など)を治療するためにも有用である。一部の実施形態では、肺がん、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC、例えば進行したNSCLC)、小細胞肺がん(SCLC、例えば進行したSCLC)、および肺における進行した固形腫瘍悪性疾患などを治療する方法が提供される。一部の実施形態では、卵巣がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、胃悪性疾患、黒色腫(転移性黒色腫および悪性黒色腫など)、卵巣がん、結腸直腸がん、および膵臓がんのいずれかを治療する方法が提供される。一部の実施形態では、上記に詳述されるがんはER−α36陽性である。
【0077】
一部の実施形態では、方法は、以下:皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、白血病、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、および急性骨髄性白血病の1つまたは複数を治療するために有用である。一部の実施形態では、上記に詳述されるがんはER−α36陽性である。
【0078】
一部の実施形態では、がんは、以下:基底細胞癌、髄芽腫、膠芽腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病、膵臓がん、肺がん(小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん)、食道がん、胃がん(stomach cancer)、胆道がん、前立腺がん、肝臓がん、肝細胞がん、胃腸がん、胃がん(gastric cancer)、甲状腺がん、子宮内膜がん、卵巣がんおよび膀胱がんのいずれか1つである。一部の実施形態では、がんは、膵臓管腺癌(pancreas ductal adenocarcinoma)、結腸腺癌、子宮内膜がん、および卵巣嚢胞腺癌からなる群より選択される。一部の実施形態では、がんは膵臓管腺癌である。一部の実施形態では、がんは、灌流が乏しいおよび/または血管新生が乏しい腫瘍である。一部の実施形態では、上記に詳述されるがんはER−α36陽性である。
【0079】
一部の実施形態では、がんは、膵臓がん、例えば、膵臓腺癌、膵臓腺扁平上皮癌、膵臓扁平細胞癌、および膵臓巨細胞癌などである。一部の実施形態では、膵臓がんは外分泌膵臓がんである。一部の実施形態では、膵臓がんは内分泌膵臓がん(膵島細胞癌など)である。一部の実施形態では、膵臓がんは進行した転移性膵臓がんである。一部の実施形態では、上記に詳述される膵臓がんはER−α36陽性の膵臓がんである。
【0080】
本発明の方法によって治療され得るがんの他の例としては、副腎皮質癌(adenocortical carcinoma)、原因不明骨髄様化生、AIDS関連がん(例えば、AIDS関連リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫(例えば、小脳および大脳)、基底細胞癌、胆管がん(例えば、肝臓外)、膀胱がん、骨がん、(骨肉腫および悪性線維性組織球腫)、脳腫瘍(例えば、神経膠腫、脳幹部神経膠腫、小脳または大脳の星状細胞腫(例えば、重細胞性神経膠星状細胞腫、びまん性星状細胞腫、未分化(悪性)星状細胞腫)、悪性神経膠腫、上衣腫、乏突起膠腫(oligodenglioma)、髄膜腫、頭蓋咽頭腫、血管芽腫、髄芽腫、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、視路および視床下部神経膠腫、および膠芽腫)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍(例えば、胃腸カルチノイド腫瘍)、原発未知の癌腫、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、慢性骨髄増殖性障害、子宮内膜がん(例えば、子宮がん)、上衣腫、食道がん、ユーイングファミリー腫瘍、目のがん(例えば、眼内黒色腫および網膜芽腫)、胆嚢がん、胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、生殖細胞腫瘍、(例えば、頭蓋外、性腺外、卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん(例えば、肝臓癌およびヘパトーマ(heptoma))、下咽頭がん、膵島細胞癌(内分泌膵臓)、喉頭がん、喉頭がん、白血病、口唇口腔がん、口腔がん(oral cancer)、肝臓がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、および肺の扁平癌)、リンパ系新生物(例えば、リンパ腫)、髄芽腫、卵巣がん、中皮腫、転移性扁平上皮性頸部がん、口腔がん(mouth cancer)、多発性内分泌腺腫症候群、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、神経内分泌がん、口腔咽頭がん、卵巣がん(例えば、卵巣上皮がん、卵巣生殖細胞腫瘍、境界悪性卵巣腫瘍)、膵臓がん、副甲状腺がん、陰茎がん、腹膜のがん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、肺胸膜芽細胞腫(pleuropulmonary blastoma)、リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫(ミクログリオーマ)、肺リンパ管筋腫症、直腸がん、腎臓がん、腎盂および尿管がん(移行細胞がん)、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん(例えば、非黒色腫(例えば、扁平細胞癌)、黒色腫、およびメルケル細胞癌)、小腸がん、扁平細胞がん、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、結節硬化症、尿道がん、膣がん、外陰がん、ウィルムス腫瘍、および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、母斑症に関連する血管増殖異常、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、およびメーグス症候群が挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
一部の実施形態では、がんは固形腫瘍(進行した固形腫瘍など)である。固形腫瘍としては、肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、カポジ肉腫、軟組織肉腫、子宮サクロノーマ滑膜腫(uterine sacronomasynovioma)、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌(例えば、腺癌、腎明細胞癌、乳頭状腎細胞癌、色素嫌性腎細胞癌、集合管腎細胞癌、顆粒腎細胞癌(granular renal cell carcinoma)、混合型顆粒腎細胞癌(mixed granular renal cell carcinoma)、腎臓血管筋脂肪腫、または腎紡錘細胞癌(spindle renal cell carcinoma)など)、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽腫、および網膜芽腫が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、上記に詳述されるがんはER−α36陽性である。
【0082】
一部の実施形態では、リンパ系新生物(例えば、リンパ腫)はB細胞新生物である。B細胞新生物の例としては、前駆B細胞新生物(例えば、前駆Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫)および末梢B細胞新生物(例えば、B細胞慢性リンパ性白血病/前リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(小リンパ球性(SL)NHL)、リンパ形質細胞様リンパ腫/免疫細胞腫(immunocytoma)、マントル細胞リンパ腫、濾胞中心リンパ腫(follicle center lymphoma)、濾胞性リンパ腫(例えば、細胞学的グレード:I(小細胞)、II(小細胞および大細胞の混合)、III(大細胞)および/またはサブタイプ:びまん性および小細胞優位型)、低グレード/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、中等度グレード/濾胞性NHL、辺縁帯B細胞リンパ腫(例えば、節外性(例えば、MALT型+/−単球様B細胞)および/またはNodal(例えば、+/−単球様B細胞))、脾辺縁帯リンパ腫(例えば、+/−絨毛リンパ球)、有毛細胞白血病、形質細胞腫/形質細胞骨髄腫(例えば、骨髄腫および多発性骨髄腫)、びまん性大B細胞リンパ腫(例えば、原発性縦隔(胸腺)B細胞リンパ腫)、中等度グレードびまん性NHL、バーキットリンパ腫、高グレードB細胞リンパ腫、バーキット様、高グレード免疫芽球性NHL、高グレードリンパ芽球性NHL、高グレード小型非分割細胞NHL、巨大腫瘤NHL、AIDS関連リンパ腫、およびワルデンストレームマクログロブリン血症)が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、上記に詳述されるリンパ系新生物はER−α36陽性である。
【0083】
一部の実施形態では、リンパ系新生物(例えば、リンパ腫)は、T細胞および/または推定NK細胞新生物である。T細胞および/または推定NK細胞新生物の例としては、前駆T細胞新生物(前駆Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病)ならびに末梢T細胞およびNK細胞新生物(例えば、T細胞慢性リンパ性白血病/前リンパ性白血病、および大顆粒リンパ球性白血病(LGL)(例えば、T細胞型および/またはNK細胞型)、皮膚T細胞リンパ腫(例えば、菌状息肉症/セザリー症候群)、不特定原発性T細胞リンパ腫(例えば、細胞学的カテゴリー(例えば、中型細胞、中型細胞および大細胞の混合)、大細胞、リンパ上皮細胞、サブタイプ肝脾γδ T細胞リンパ腫、および皮下脂肪織炎T細胞リンパ腫)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AILD)、血管中心性リンパ腫、腸T細胞リンパ腫(例えば、+/−腸症関連)、成人T細胞リンパ腫/白血病(ATL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)(例えば、CD30+、Tおよびヌル細胞種)、未分化大細胞リンパ腫、およびホジキン様)が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、上記に詳述されるリンパ系新生物はER−α36陽性である。
【0084】
一部の実施形態では、リンパ系新生物(例えば、リンパ腫)はホジキン病(例えば、ER−α36陽性ホジキン病)である。例えば、ホジキン病は、リンパ球優勢、結節性硬化、混合細胞性、リンパ球枯渇、および/またはリンパ球富化であり得る。
【0085】
一部の実施形態では、がんは白血病(例えば、ER−α36陽性白血病)である。一部の実施形態では、白血病は慢性白血病である。慢性白血病の例としては、慢性骨髄球性I型(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性、および慢性リンパ性白血病(CLL)が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、白血病は急性白血病である。急性白血病の例としては、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、および急性骨髄球性白血病(例えば、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
一部の実施形態では、がんは液状腫瘍または形質細胞腫である。形質細胞腫としては、骨髄腫が挙げられるがこれに限定されない。骨髄腫としては、髄外形質細胞腫、孤立性骨髄腫、および多発性骨髄腫が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、形質細胞腫は多発性骨髄腫である。
【0087】
一部の実施形態では、がんは多発性骨髄腫(例えば、ER−α36陽性多発性骨髄腫)である。多発性骨髄腫の例としては、IgG多発性骨髄腫、IgA多発性骨髄腫、IgD多発性骨髄腫、IgE多発性骨髄腫、および非分泌性多発性骨髄腫が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、多発性骨髄腫はIgG多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫はIgA多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、くすぶり型または無痛性多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は進行性多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、多発性骨髄腫は、薬物、例えば、以下に限定されないが、ボルテゾミブ、デキサメタゾン(Dex−)、ドキソルビシン(Dox−)、およびメルファラン(LR)に耐性であり得る。
【0088】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩により少なくとも1つの他の剤の副作用を低減させる方法であって、個体に他の剤と組み合わせて有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、他の剤が、タモキシフェン、ラロキシフェンまたはその機能的同等物、およびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体はER−α36陽性である。一部の実施形態では、個体はEGFR陽性である。一部の実施形態では、個体はHER2陽性である。
【0089】
一部の実施形態では、がんは、それらの細胞においてER−α36の発現が陽性である、乳がん、子宮内膜がん、肺がん、膵臓がん、胃がん、結腸がん、肝臓がん、甲状腺がん、CLLなどからなる群より選択される。一部の実施形態では、ER−α36陽性乳がんは、タモキシフェンを用いる治療に耐性である。
【0090】
ER−α36陽性がんを治療する方法の一部の態様では、例えば、ER−α36ペプチドの存在および/またはER−α36 mRNAの存在により、がんにおけるER−α36の発現を決定することをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、がんにおけるER−α36の発現は、例えば、免疫ハイブリダイゼーション法(例えば、ウエスタンブロッティング、免疫組織学的染色または免疫蛍光染色)によって測定されるように、ER−α36ペプチドの存在により決定される。一部の実施形態では、がんにおけるER−α36の発現は、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q−PCR)によって測定されるように、ER−α36 mRNAの存在により決定される。
【0091】
一部の実施形態では、がん治療のための個体を選択する(またはがん治療において他の剤の副作用を低減させる)ための基準としてER−α36の状態が使用される。例えば、以下のいずれか1つまたは複数における決定(および評価の補助)のためにER−α36のレベルを使用することができる:a)最初に治療を与えることに個体が好適である可能性、b)最初に治療を与えることに個体が好適でない可能性、c)治療への応答性、d)治療を与えるのを続けることに個体が好適である可能性、e)治療を与えることに個体が好適でない可能性、f)投与量の調整、g)臨床的利益の尤度の予測。本出願は、これらの方法のいずれかを包含する。
【0092】
例えば、一部の実施形態では、個体(ヒト個体など)においてがんを治療する方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択され、個体がER−α36陽性である(例えば、個体が、高レベルのER−α36を有する)、方法が提供される。一部の実施形態では、個体(ヒト個体など)においてがんを治療する方法であって、個体に、a)有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩、および必要に応じてb)有効量の少なくとも1つの他の剤を投与することを含み、少なくとも1つの他の剤が、上皮増殖因子受容体のリン酸化キナーゼ阻害剤、例えばEGFRリン酸化阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2の阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択され、ER−α36のレベルが治療のための個体を選択するための基準として使用される、方法が提供される。一部の実施形態では、個体は、個体が高レベルのER−α36を有する場合に治療のために選択される。一部の実施形態では、ER−α36のレベルは免疫組織化学法により決定される。一部の実施形態では、ER−α36のレベルはタンパク質の発現レベルに基づく。一部の実施形態では、ER−α36のレベルはmRNAレベルに基づく。一部の実施形態では、ER−α36のレベルは、エストロゲン刺激に応答したCa
2+シグナルに基づく。一部の実施形態では、方法は、治療の前にER−α36のレベルを決定することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、ER−α36レベルに基づいて治療のための個体を選択することをさらに含む。
【0093】
ER−α36のレベルは、対照試料と比較して高いレベルまたは低いレベルであり得る。一部の実施形態では、個体におけるER−α36のレベルは、対照試料におけるER−α36のレベルと比較される。一部の実施形態では、被験体におけるER−α36のレベルは、複数の対照試料におけるER−α36のレベルと比較される。一部の実施形態では、統計量を生成するために複数の対照試料が使用され、該統計量は、がんを有する個体におけるER−α36のレベルを分類するために使用される。
【0094】
ER−α36レベルの分類または順位付け(すなわち、高いまたは低い)を対照レベルの統計分布に対して決定してもよい。一部の実施形態では、分類または順位付けは、該個体から得られた対照試料に対するものである。一部の実施形態では、ER−α36のレベルは、対照レベルの統計分布に対して分類または順位付けされる。一部の実施形態では、ER−α36のレベルは、該被験体から得られた対照試料からのレベルに対して分類または順位付けされる。
【0095】
対照試料は、非対照試料と同じ供給源および方法を使用して得ることができる。一部の実施形態では、対照試料は、異なる個体(例えば、がんを有しない個体ならびに/または類似の人種、年齢、および性別の正体を共有する個体)から得られる。一部の実施形態では、試料が腫瘍組織試料である場合、対照試料は、同じ個体からの非がん性試料であってよい。一部の実施形態では、(例えば、異なる個体からの)複数の対照試料を使用して、特定の組織、臓器、または細胞集団におけるER−α36のレベルの範囲が決定される。一部の実施形態では、対照試料は、適切な対照であると決定された培養組織または細胞である。一部の実施形態では、対照は、ER−α36を発現しない細胞である。一部の実施形態では、標準化試験において臨床的に認められる正常レベルが、ER−α36レベルを決定するための対照レベルとして使用される。一部の実施形態では、被験体におけるER−α36の参照レベルは、免疫組織化学ベースのスコア付けシステムなどのスコア付けシステムにしたがって高い、中等度または低いと分類される。
【0096】
一部の実施形態では、ER−α36レベルは、個体におけるER−α36のレベルを測定し、対照または参照(例えば、所与の患者集団のメジアンレベルまたは第2の個体のレベル)と比較することによって決定される。例えば、単一個体についてのER−α36のレベルが患者集団のメジアンレベルより高いと決定された場合、その個体はER−α36の高い発現を有すると決定される。あるいは、単一個体についてのER−α36のレベルが患者集団のメジアンレベルより低いと決定された場合、その個体はER−α36の低い発現を有すると決定される。一部の実施形態では、個体は、治療に応答する第2の個体および/または患者集団と比較される。一部の実施形態では、個体は、治療に応答しない第2の個体および/または患者集団と比較される。本明細書における実施形態のいずれかでは、レベルは、ER−α36のレベルを測定することによって決定される。例えば、単一個体についてのER−α36をコードするmRNAのレベルが患者集団のメジアンレベルより高いと決定された場合、その個体はER−α36をコードするmRNAの高いレベルを有すると決定される。あるいは、単一個体についてのER−α36をコードするmRNAのレベルが患者集団のメジアンレベルより低いと決定された場合、その個体はER−α36をコードするmRNAの低いレベルを有すると決定される。
【0097】
一部の実施形態では、ER−α36の参照レベルは、ER−α36レベルの統計分布を得ることによって決定される。
【0098】
一部の実施形態では、バイオインフォマティクス方法がER−α36のレベルの決定および分類のために使用される。遺伝子発現プロファイリングデータを使用して遺伝子セットの発現プロファイルを評価するための多数の代替的なバイオインフォマティクスアプローチが開発されている。方法としては、Segal, E.ら、Nat. Genet. 34巻:66〜176頁(2003年);Segal, E.ら、Nat. Genet. 36巻:1090〜1098頁(2004年);Barry, W. T.ら、Bioinformatics 21巻:1943〜1949頁(2005年);Tian, L.ら、Proc Nat’l Acad Sci USA 102巻:13544〜13549頁(2005年);Novak B AおよびJain A N. Bioinformatics 22巻:233〜41頁(2006年);Maglietta Rら、Bioinformatics 23巻:2063〜72頁(2007年);Bussemaker H J、BMC Bioinformatics 8巻、追補6号:S6(2007年)に記載されたものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0099】
一部の実施形態では、mRNAレベルが決定され、低いレベルは、臨床的に正常とみなされるレベルまたは対照から得られるレベルの約2、1.9、1.8、1.7、1.6または1.5倍未満のmRNAレベルである。一部の実施形態では、高いレベルは、臨床的に正常とみなされるレベルまたは対照試料から得られるレベルの約2、2.2、2.5、2.7、3、5、7、10、20、50、70、100、200、500、1000倍を超えるまたは1000倍より高いmRNAレベルである。
【0100】
一部の実施形態では、タンパク質の発現レベルは、例えば免疫組織化学によって決定される。例えば、低いまたは高いレベルの基準は、例えばER−α36タンパク質を特異的に認識する抗体を使用することによる、陽性染色細胞の数および/または染色の強度に基づいて作ることができる。一部の実施形態では、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%未満の細胞が陽性染色を有する場合、レベルは低い。一部の実施形態では、染色が、陽性対照染色より1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低い強度である場合、レベルは低い。一部の実施形態では、腫瘍細胞についての陽性対照染色は、正常細胞の約2倍の強度を有する。
【0101】
一部の実施形態では、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%より多くの細胞が陽性染色を有する場合、レベルは高い。一部の実施形態では、染色が陽性対照染色と同じ強度である場合、レベルは高い。一部の実施形態では、染色が陽性対照染色の80%、85%、または90%ほどの強度である場合、レベルは高い。一部の実施形態では、腫瘍細胞についての陽性対照染色は、正常細胞の約2倍の強度を有する。
【0102】
一部の実施形態では、強い染色、中等度の染色、および弱い染色は、染色の軟正されたレベルであり、ここで範囲が確立され、かつ染色の強度が範囲内でビニングされる。一部の実施形態では、強い染色は強度範囲の75パーセンタイルより高い染色であり、中等度の染色は強度範囲の25〜75パーセンタイルの染色であり、低い染色は強度範囲の25パーセンタイルより低い染色である。一部の態様では、具体的な染色技術に精通した当業者は、ビンの大きさを調整し、染色のカテゴリーを定義する。
【0103】
一部の実施形態では、エストロゲン感受性レベルは、例えばCa
2+振動または電気生理学的パッチクランプによって決定される。例えば、低いまたは高いレベルの基準は、例えばエストロゲンを使用することにより、Ca
2+濃度または陽性細胞の応答シグナルの変化に基づいて作ることができる。一部の実施形態では、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%未満の細胞が陽性の感受性を有する場合、レベルは低い。一部の実施形態では、Ca
2+濃度または応答シグナルの変化が陽性対照の感受性より1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低い強度である場合、レベルは低い。一部の実施形態では、腫瘍細胞における陽性対照の感受性は、正常細胞の感受性の約2倍である。
【0104】
一部の実施形態では、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%より多くの細胞が陽性の変化を有する場合、レベルは高い。一部の実施形態では、感受性が陽性対照の感受性と同じ強度である場合、レベルは高い。一部の実施形態では、変化が陽性対照の80%、85%、または90%ほどの強度である場合、レベルは高い。一部の実施形態では、腫瘍細胞における陽性対照の感受性は、正常細胞の感受性の約2倍である。
【0105】
一部の実施形態では、最も高い感受性、中等度の感受性、および弱い感受性は、細胞におけるCa
2+シグナルの軟正されたレベルであり、ここで範囲が確立され、Ca
2+シグナルの強度が範囲内でビニングされる。一部の実施形態では、最も高い感受性は強度範囲の75パーセンタイルより高いCa
2+シグナルの変化であり、中等度の感受性は強度範囲の25〜75パーセンタイルのCa
2+シグナルの変化であり、低い感受性は強度範囲の25パーセンタイルより低くに測定されるCa
2+シグナルの変化である。一部の態様では、具体的な灌流技術に精通した当業者は、ビンの大きさを調整し、シグナルの記録のカテゴリーを定義する。
【0106】
本明細書に詳述されるER−α36陽性がんなどのER−α36陽性がんを治療する方法において使用するための、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩も提供される。一部の実施形態では、ER−α36陽性がんを治療するための、別の剤とのラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の組み合わせであって、別の剤が、タモキシフェンまたはその機能的同等物、EGFRキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ)またはその機能的同等物、およびHER2阻害剤(例えば、トラスツズマブ)またはその機能的同等物からなる群より選択され、がんがEGFRキナーゼまたはHER2などのバイオマーカーも発現する、組み合わせが提供される。
【0107】
本明細書に詳述されるER−α36陽性がんなどのER−α36陽性がんの治療のための医薬の製造における、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の使用がさらに提供される。一部の実施形態では、ER−α36陽性がんを治療するための医薬の製造における、別の剤とのラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の組み合わせの使用であって、別の剤が、タモキシフェンまたはその機能的同等物、EGFRキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択され、がんがEGFRキナーゼまたはHER2などのバイオマーカーも発現する、使用が提供される。
【0108】
ER−α36陽性がんを治療するための本明細書に詳述される方法の一部の実施形態では、方法は、個体に有効量のラソフォキシフェンを投与することを含む。一部の実施形態では、個体はヒト(例えば、ER−α36陽性のヒト)である。
【0109】
投与方式
併用療法の文脈において、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)を含む組成物は、同時に(すなわち、同時投与)および/または逐次的に(すなわち、逐次投与)投与することができる。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(本明細書に記載される特定の剤など)は同時に投与される。本明細書で使用される場合、「同時投与」という用語は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩と他の剤とが、約15分以下、例えば、約10、5、または1分以下のいずれかの時間の分離で投与されることを意味する。薬物が同時に投与される場合、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤は、同じ組成物(例えば、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の両方を含む組成物、例えば本発明に含まれる医薬組成物)中に含有されてもよいし、別々の組成物中に含有されてもよい(例えば、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤は別々の組成物中に含有される)。
【0110】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)は逐次的に投与される。本明細書で使用される場合、「逐次投与」という用語は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩と他の剤とが、約15分より長い、例えば、約20、30、40、50、60分またはそれより長い時間のいずれかより長い時間の分離で投与されることを意味する。ラソフォキシフェンもしくはその薬学的に許容される塩または他の剤のいずれを最初に投与してもよい。ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤は、別々の組成物中に含有され、該組成物は同じまたは異なるパッケージ中に含有されてよい。
【0111】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)の投与は、並行的、すなわち、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与期間と他の剤の投与期間とが互いに重なる。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩は、他の剤の投与の前に少なくとも1サイクル(例えば、少なくとも2、3、または4サイクルのいずれか)にわたって投与される。一部の実施形態では、他の剤は、少なくとも1、2、3、または4週のいずれかにわたって投与される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与は、おおよそ同時(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日のいずれか1つ以内)に開始される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与は、おおよそ同時(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日のいずれか1つ以内)に終了する。一部の実施形態では、他の剤の投与は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与の終了後に(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月のいずれか1つにわたって)続けられる。一部の実施形態では、他の剤の投与は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与の開始後(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、またはweヶ月のいずれか1つの後)に開始される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与は、おおよそ同時に開始および終了される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与はおおよそ同時に開始され、他の剤の投与は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与の終了後に(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月のいずれか1つにわたって)続けられる。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の投与はおおよそ同時に中止され、他の剤の投与は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与の開始後(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、またはweヶ月のいずれか1つの後)に開始される。
【0112】
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および/または他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)の投薬頻度は、投与する臨床医の判断に基づいて、治療の過程にわたって調整することができる。別々に投与される場合、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤を異なる投薬頻度または間隔で投与することができる。例えば、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を毎週投与することができ、一方別の剤をより高いまたはより低い頻度で投与することができる。持続放出を達成するための様々な製剤およびデバイスが当該分野において公知である。例示的な投薬頻度は本明細書でさらに提供される。
【0113】
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)は、同じ投与経路または異なる投与経路を使用して投与することができる。例示的な投与経路は本明細書でさらに提供される。(同時投与および逐次投与の両方について)一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤は、予め決定された比で投与される。例えば、一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の重量比は約1:1である。一部の実施形態では、重量比は、約0.001:約1〜約1000:約1、または約0.01:約1〜100:約1であってよい。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の重量比は、約100:1、50:1、30:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、および1:1のいずれか未満である。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の重量比は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、30:1、50:1、100:1のいずれかより高い。他の比が企図される。
【0114】
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および/または他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)のために必要とされる用量は、各剤が単独で投与される時に通常必要とされる用量より低いものであり得る(ただし、必ずしもそうではない)。したがって、一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および/または他の剤としての薬物の治療量以下の量が投与される。「治療量以下の量」または「治療量以下のレベル」は、治療的な量未満の量、すなわち、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および/または他の剤としての薬物が単独で投与される時に通常使用される量より少ない量を指す。低減は、所与の投与での投与量および/または所与の期間にわたる投与量(低減された頻度)の点で反映され得る。
【0115】
一部の実施形態では、同じ程度の治療をもたらすために必要とされるラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の通常の用量の、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれより多くのいずれかの低減を可能とするために十分な他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)が投与される。一部の実施形態では、同じ程度の治療をもたらすために必要とされる他の剤の通常の用量の、少なくとも約5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれより多くのいずれかの低減を可能とするために十分なラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩が投与される。
【0116】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)の両方の用量は、単独で投与される場合のそれぞれの対応する通常の用量と比較して低減される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤の両方は、治療量以下のレベル、すなわち低減されたレベルで投与される。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および/または他の剤の用量は、確立された最大毒性用量(MTD)より実質的に低い。例えば、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および/または他の剤の用量は、MTDの約50%、40%、30%、20%、または10%未満である。
【0117】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の用量および/または他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)の用量は、各剤が単独で投与される場合に通常必要とされる用量より高い。例えば、一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および/または他の剤の用量は、MTDより実質的に高い。例えば、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および/または他の剤の用量は、単独で投与される場合の剤のMTDの約50%、40%、30%、20%、または10%より高い。
【0118】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(単独でまたは別の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)と組み合わせて)の量は、以下の範囲のいずれかに含まれる:約0.1〜約0.5mg、約0.5〜約5mg、約5〜約10mg、約10〜約15mg、約15〜約20mg、約20〜約25mg、約20〜約50mg、約25〜約50mg、約50〜約75mg、約50〜約100mg、約75〜約100mg、約100〜約125mg、約125〜約150mg、約150〜約175mg、約175〜約200mg、約200〜約225mg、約225〜約250mg、約250〜約300mg、約300〜約350mg、約350〜約400mg、約400〜約450mg、または約450〜約500mg。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(例えば、単位投与剤形)の量は、約5mg〜約500mg、例えば、約30mg〜約300mgまたは約50mg〜約200mgの範囲内である。
【0119】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(単独でまたは別の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)と組み合わせて)の量としては、少なくとも約0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2.5mg/kg、3.5mg/kg、5mg/kg、6.5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kgまたは20mg/kgのいずれかが挙げられる。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(単独でまたは別の剤と組み合わせて)の量としては、少なくとも約0.01mg/kg/日、0.05mg/kg/日、0.1mg/kg/日、0.25mg/kg/日、0.5mg/kg/日、1mg/kg/日、2.5mg/kg/日、3.5mg/kg/日、5mg/kg/日、6.5mg/kg/日、7.5mg/kg/日、10mg/kg/日、15mg/kg/日または20mg/kg/日のいずれかが挙げられる。
【0120】
一部の実施形態では、他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)の量としては、少なくとも約0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2.5mg/kg、3.5mg/kg、5mg/kg、6.5mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kg、15mg/kgまたは20mg/kgのいずれかが挙げられる。一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(単独でまたは別の剤と組み合わせて)の量としては、少なくとも約0.01mg/kg/日、0.05mg/kg/日、0.1mg/kg/日、0.25mg/kg/日、0.5mg/kg/日、1mg/kg/日、2.5mg/kg/日、3.5mg/kg/日、5mg/kg/日、6.5mg/kg/日、7.5mg/kg/日、10mg/kg/日、15mg/kg/日または20mg/kg/日のいずれかが挙げられる。
【0121】
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物))の例示的な投薬頻度としては、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、6週毎に1回、または8週毎に1回が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、組成物は、1週当たり少なくとも約1回、2回、3回、4回、5回、6回、もしくは7回(すなわち、毎日)、または1日に3回、1日に2回のいずれかで投与される。一部の実施形態では、各投与間の間隔は、約6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月、20日、15日、12日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、または1日のいずれか未満である。一部の実施形態では、各投与間の間隔は、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、または12ヶ月のいずれかより長い。一部の実施形態では、投薬スケジュールに休みはない。一部の実施形態では、各投与間の間隔は、約1週以下である。
【0122】
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物))の投与は、長期間、例えば、約1ヶ月から最大約7年に及ぶことができる。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、48、60、72、または84ヶ月のいずれかの期間にわたって投与される。
【0123】
一部の実施形態では、個体は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のいずれかの治療サイクルにわたって治療される。
【0124】
他の剤の投薬頻度は、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投薬頻度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例示的な頻度は上記に提供される。
【0125】
本明細書に記載されるラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(および他の剤)は、様々な経路を介して個体(ヒトなど)に投与することができ、該経路としては、例えば、経口、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、吸入、小胞内(intravesicular)、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内、経粘膜、および経皮が挙げられる。一部の実施形態では、組成物の持続連続放出製剤を使用してもよい。
【0126】
本明細書に記載される投与の構成の組み合わせを使用することができる。本明細書に記載される併用療法の方法は、単独で、または手術、放射線、化学療法、免疫療法、遺伝子療法などの別の療法との組み合わせで行うことができる。さらに、増殖性疾患を発症する高いリスクを有する人には、疾患の発症を阻害しおよび/または遅延させるための治療を与えることができる。
【0127】
当業者によって理解されるように、他の剤の適切な用量は、概ね、他の剤が単独でまたは他の剤と組み合わせて投与される臨床療法において既に用いられているものであろう。投与量のバリエーションが、治療されている状態に応じて起こる可能性がある。上記に記載される通り、一部の実施形態では、他の剤は、低減されたレベルで投与され得る。
【0128】
組成物、キット、および薬
本発明はまた、本明細書に記載される方法のために有用な組成物(医薬組成物など)、薬、キット、および単位投与量も提供する。医薬としての使用および/または医薬の製造のための使用の文脈において本明細書に記載される任意の使用も提供される。
【0129】
有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つの追加の剤を含む医薬組成物であって、少なくとも1つの追加の剤が、タモキシフェンまたはその機能的同等物、EGFRキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、医薬組成物が提供される。
【0130】
一部の実施形態では、有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つの追加の剤を含む医薬組成物であって、少なくとも1つの追加の剤が、EGFRキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物、およびHER2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される、医薬組成物が提供される。
【0131】
一部の実施形態では、組成物は、単位投与剤形(経口単位投与剤形など)中に存在してもよい。好適な単位投与剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、カプレット、ゲル剤、液体(例えば、懸濁物、溶液、エマルション)、散剤または他の微粒子などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0132】
一部の実施形態では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の投与量は、1日当たり約0.25〜50mgである。
【0133】
別の態様では、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤(例えば、EGFRキナーゼ阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物またはHER2阻害剤もしくは本明細書に詳述される機能的同等物)を別々の容器中にまたは同じ容器中に含むキットが提供される。本発明のキットは、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩(または単位投与剤形および/もしくは製品)および/または少なくとも1つの他の剤を含む1つまたは複数の容器を含み、一部の実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかにしたがって使用するための指示をさらに含む。キットは、好適な個体または治療の選択に関する説明をさらに含んでもよい。本発明のキット中に供給される指示は、典型的に、ラベルまたは添付文書(例えば、キット中に含まれる紙のシート)上の書面での指示であるが、機械読取り可能な指示(例えば、磁気または光学記憶ディスク上の指示)も許容される。
【0134】
一部の実施形態では、キットは、a)有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩、およびb)有効量の少なくとも1つの他の剤を含み、少なくとも1つの他の剤は、EGFRキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物およびHER2阻害剤(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブもしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはその薬学的に許容される塩)またはその機能的同等物からなる群より選択される。一部の実施形態では、キットは、がん(例えば、ER−α36陽性がん)の治療(または本明細書に記載される他の使用)のために、ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤を、同時に、逐次的に、または並行して投与するための指示をさらに含む。
【0135】
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および他の剤は、別々の容器中に存在してもよいし、単一の容器中に存在してもよい。キットは、1つの明確な組成物(ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および別の剤を含む単一の組成物)を含んでもよいし、1つの組成物がラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を含み、かつ1つの組成物が別の剤を含む2つまたはそれより多くの組成物を含んでもよいことが理解される。
【0136】
本発明のキットは、好適な包装中にある。好適な包装としては、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟性包装(例えば、密閉されたMylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられるがこれらに限定されない。キットは、必要に応じて、緩衝液および説明的情報などの追加の成分を提供してもよい。したがって、本出願は、バイアル(密閉されたバイアルなど)、ボトル、ジャー、柔軟性包装などを含む製品も提供する。
【0137】
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の使用に関する指示は、一般に、意図する治療のための投与量、投薬スケジュール、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)または部分単位用量(sub−unit dose)であってよい。例えば、本明細書に開示されるラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩の十分な投与量を含有して長期間、例えば、1週、2週、3週、4週、6週、8週、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、またはそれより長く、のいずれかにわたって個体の有効な治療を提供するキットが提供され得る。キットはまた、複数の単位用量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および医薬組成物ならびに使用のための指示を含み、薬局、例えば、病院薬局および調剤薬局における貯蔵および使用のために十分な量で包装される。
【0138】
一態様では、本発明は、(i)ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物、および(ii)ER−α36ペプチドまたはER−α36 mRNAの存在を決定するための剤を含む、キットを提供する。一部の実施形態では、キットは、ER−α36ペプチドの存在を決定するための剤、例えば、ER−α36ペプチドを認識する抗体を含む。一部の実施形態では、キットは、ER−α36 mRNAの存在を決定するための剤、例えば、ER−α36 mRNAの定量的測定のためのオリゴヌクレオチドを含む。
【実施例】
【0139】
本発明をある特定の程度の具体性で記載し、説明してきたが、本開示は単に例示的なものとして為されたものであり、特許請求の範囲に定義される本発明の趣旨および範囲から離れることなく、パーツの組み合わせおよび構成において多数の変更が当業者により為され得ることが理解される。
【0140】
(実施例1 ラソフォキシフェン(5,6,7,8−テトラヒドロ−6−フェニル−5−[4−[2−(1−ピロリジニル)エトキシ]フェニル]−2−ナフタレノール)の化学合成)
ラソフォキシフェンは、PCT/CZ2008/000058、WO2008/145075 A2(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される通りに、または以下に詳述するステップを使用して調製することができる。
【化2】
【0141】
ステップa
グリニャール試薬の調製:マグネシウム(5.83g、240mmol)および50mlの乾燥THFを500mLの3口フラスコに加え、窒素雰囲気下で終夜撹拌した。THF中の4−[2−ピロリジノエトキシ]フェニルブロミド2の一部を滴下添加し、熱により反応を開始させた後、2の残り(62.1g、230mmoL)およびTHF(350mL)を20〜30℃でゆっくりと加えて、灰色溶液としてグリニャール試薬を得た。
【0142】
乾燥THF(120mL)中の6−(ベンジルオキシ)−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ナフタレノン1(34.2g、136mmol)の環流溶液に上記グリニャール試薬を30分以内に加えた。結果として得られた混合物をさらに30分環流させた後、室温まで冷却し、水性飽和NH
4Cl(400mL)でクエンチした。混合物を酢酸エチル(160mL×2)で抽出し、合わせた抽出物を水(20mL×2)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、最終的に蒸発させた。残留物を2.0Mの水性HClに溶解し、イソプロピルエーテル(120mL×2)で抽出した。水相を合わせ、2Mの水性NaOH(21mL)でpH11〜12に調整した後、酢酸エチル(160mL×2)で抽出した。有機層を飽和ブライン(200mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、蒸発させて、6−ベンジルオキシ−1−{4−[2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ]フェニル}−3,4−ジヒドロナフタレン3を油状物として得た。
【0143】
ステップb
CH2Cl2(100ml)中の5(30.6g、72mmol)の溶液にCH2Cl2(186ml)中のm−CPBA(18.6g、108mmol)の溶液を0〜5℃で1時間加え、1.5時間撹拌した。反応物をNa2SO3(5.12g、40.6mmol)の水溶液でクエンチし、2Mの水性NaOH(21mL)でpH10〜11まで塩基性にした。2つの層を分離し、有機層を飽和ブライン(50mL×2)で洗浄し、無水Na2SO4(12.1g)で乾燥させ、蒸発させて、6−ベンジルオキシ−1−[4−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)フェニル]−3,4−ジヒドロナフタレン−2(1H)−オン4(29.0g、90.0%)を得た。
【0144】
ステップc
THF(80mL)中の塩化セリウム(12.3g、33.0mmol)の懸濁物にTHF(45mL)中の化合物4(12.8g、30.1mmol)の溶液を窒素雰囲気下0℃で加えた。結果として得られた混合物をその温度で1.5時間撹拌し、−10〜−5℃にさらに冷却した。乾燥THF中のフェニルマグネシウムブロミドの溶液を加えた。[グリニャール試薬をTHF(40mL)中のブロモベンゼン(5.21g、33.2mmol)および削り屑状マグネシウム(magnesium turnings)(0.820g、33.7mmol)から新たに調製した]。混合物をさらに2時間撹拌し、水性NH4Cl(80mL)でクエンチした。塩化セリウムを濾過により分離し、濾液をCH2Cl2(120mL×2)で抽出し、合わせた有機層を飽和ブラインで洗浄した。抽出物を蒸発させて、黄ばんだ油状物を残し、それをMeOH中のD−酒石酸で処理して6−ベンジルオキシ−2−フェニル−1−{4−[2−(ピロリン−1−イル)エトキシ)]フェニル}−3,4−ジヒドロナフタレン酒石酸塩6を固体として得た。
【0145】
ステップd
オートクレーブにEtOHとMeOHとの混合物中の6(1.5g)、5%のPd/C(0.32g)を入れた。容器を密閉した後、混合物を水素雰囲気(10atmの圧力)下50℃で10時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を室温に冷却し、セライトで濾過し、メタノール(20mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、所望の生成物1−{2−[4−(6−ベンジルオキシ−2−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレン−1−イル)−フェノキシ]エチル}ピロリジンを得た。収率:0.736g(85%)。粗生成物をエタノール中で再結晶化して所望の生成物(ラソフォキシフェン)を得た。
【0146】
ステップe
ステップdからの精製したラソフォキシフェン(2g)を20mLの95%エタノールに溶解し、7.8mLの95%エタノール中に溶解した0.78gのD−酒石酸と一緒に混合した。混合溶液をわずかに環流するまで慎重に5分加熱した後、室温に冷却した。ラソフォキシフェンD−酒石酸塩の約1.4gの沈殿を得た(収率50%)。
【0147】
ラソフォキシフェンD−酒石酸塩をNMR解析のためにDMSO−d
6(50mg/mL)に溶解した。
1H NMR (600 MHz,DMSO-d
6)δ 1.71~1.85 (m, 5H), 2.08 (s, 1H), 2.90~2.99 (m, 6H),3.17 (br, 2H), 3.295 (m, 1H), 4.02~4.06 (m, 4H), 4.17(d, J = 3.6 Hz, lH),4.43 (br, 2H), 6.6 (m, 5H),6.81 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 7.11 (s, 1H), 7.13 (s, 2H).
13C NMR(150 MHz,DMSO-d
6) δ 174.26, 155.74, 155.36,144.12, 137.08, 135.37, 131.09, 130.97, 130.04, 127.83, 127.61, 125.87, 114.35,113.58, 112.91, 71.90, 64.07, 53.59, 53.100, 49.40, 44.41, 29.244, 22. 56, 22.41.
【0148】
ステップf
混合物が透明になるまで5mLの95%水性エタノール中の20mgのラソフォキシフェンD−酒石酸塩の懸濁物を1口フラスコ中で60℃に加熱した。溶液を60℃で慎重に濾過した。濾液を2日暗所に置いた。形成された微細な結晶をX線解析のために収集した。
【0149】
(実施例2 生物学的実験のための一般的な材料および方法)
ER−α66、ER−βおよびGPER1抗体はcell signal transduction(CST)およびsanta cluzから購入した。ウシ胎仔血清(FBS)、培地およびL−グルタミン、抗真菌および抗生物質はlife scienceから購入した。タモキシフェン(MPG USP GRADE)はOkahata(Shanghai)Trading Co.,Ltd.より供与された。全ての化合物はSigmaまたはAladdinから購入した。マウスの食餌は、Trophic Animal Feed High−tech Co., Ltd、Nantong、Chinaにより作られた。ヌードマウスはBK animal Inc.から購入した。
【0150】
ER−α36抗体およびプラスミドの調製
GL Biochem Inc.(China)によりER−α36の最後の27アミノ酸を合成し、BSAで架橋した。抗ウサギ血清はAbgent(China)により調製された。pEGFP−GPER1プラスミドの構築は以前に記載された。
【0151】
細胞培養、細胞溶解物の抽出およびウエスタンブロッティングアッセイ
HEK−293、MCF−7、MDA−MB−231、HBE、H1299およびH460細胞をATCCプロトコールにしたがって生育させた。ウエスタンブロッティングを使用してエストロゲン結合受容体の発現レベルを測定した。簡潔に述べれば、80〜90%コンフルエンスの細胞を回収し、RIPA緩衝液または1%のtriton−x−100およびプロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する1×PBS中に溶解させた。Bio−radのタンパク質染色色素を使用して総タンパク質濃度を測定した。ニトロセルロース膜(Millipore)およびBio−radのセミドライトランスファーシステムを使用して標準的なプロトコールにしたがってウエスタンブロッティングを行った。細胞溶解物からの等量の総タンパク質をウエスタンブロッティングのためにSDS−PAGEにロードした。抗体を使用してER−α36および66、ER−βおよびGPER1の発現レベルを測定した。
【0152】
サイトゾルCa
2+濃度の測定
以下の通りにアッセイを行った。簡潔に述べれば、倒立共焦点顕微鏡(Andor)のステージにマウントしたガラス底の灌流チャンバー上で細胞を生育した後、通常の培養培地中37℃で60分2μMのFura−red AM(Molecular Probes、Eugene、OR、USA)とインキュベートした。次に、1.8mMのCaCl
2および0.8mMのMgCl
2を含有するpH7.4のハンクス平衡塩溶液(Sigma)で細胞を連続的に灌流させた。Ca
2+濃度が変化したことがデータから明らかになった時に蛍光密度を記録した。フェノールレッドを含まない完全培養培地で細胞を灌流させ、Fura−redを572nmで励起させた。次に、657nmで放出された蛍光を収集し、CCDベースのイメージングシステムランニングソフトウェア(Andor)を使用して記録した。
【0153】
細胞分裂を阻害する薬物活性の測定
培養培地を含む24ウェルプレートに細胞を接種し、指定した濃度の薬物を使用して処理した。細胞計数器(Count Star)を使用して細胞数を計数した。総細胞数および移動を含む細胞の生物挙動をリアルタイム細胞モニタリングシステムを使用して測定した。簡潔に述べれば、画像を5分間隔で66時間捕捉した。各個々の細胞の細胞形態学的パラメーターおよび移動を製造者の指示にしたがって算出した。
【0154】
タモキシフェン耐性MCF−7細胞の誘導
10%のFBS、抗生物質および0.1μMのタモキシフェンを含有するEMEM培地中でMCF−7細胞を3ヶ月生育した。次に、タモキシフェン濃度をさらに3ヶ月にわたって0.5μMに増加させ、最終的に、10%のFBS、抗生物質および1μMのタモキシフェンを含有するEMEM培地中でMCF−7細胞を4ヶ月生育した。細胞を高濃度タモキシフェン中で生育させた時の細胞の増殖速度を計数することにより、タモキシフェン耐性MCF−7細胞を試験した。
【0155】
ヌードマウスにおける異種移植腫瘍の生成および薬物阻害アッセイ
10%のFBSを含有するRPMI−1640培地中でH460細胞を生育させた。細胞が70〜80%コンフルエントとなり、実験の準備ができた時に、培地を新鮮な培地と3時間交換する。培地を除去し、FBSを含まない培地で細胞を3回洗浄する。次に、細胞をトリプシン処理し、培地中に懸濁し、等しい体積の細胞およびサポートゲルを各注射のために最大200μlまで混合した。4〜6週齢のヌードマウスの皮下(s.c.)に細胞を注射した。1.0〜2.0×10
6個のH460細胞を各ヌードマウスに投与した。腫瘍が約50〜60mm
3の平均体積に達した時に、薬物を胃内に毎日投与した。式:体積=(幅)
2×長さ/2により腫瘍サイズを算出した。
【0156】
動物
ヌードマウスはShanghai BK Animal Model Inc. Ltd.、Chinaから購入した。動物実験プロトコールは、2011年に中国政府より発行された動物実験の第588規制にしたがって、Shanghai Institute of Planned Parenthood Researchの動物倫理委員会により承認された(SIPPR規制
#2015−13)。全ての動物実験はSIPPR動物倫理委員会の監査の下で行われた。
【0157】
統計解析
表および図面において、結果を平均±SDとして表した。アスタリスクは、少なくとも3回の繰返しまたはN≧6からの両側のスチューデントt検定を使用して算出された統計的有意差を指し示す。
【0158】
(実施例3 ラソフォキシフェンはタモキシフェンと比較して弱くエストロゲン古典的核内経路を阻害した)
エストロゲンおよびER複合体は染色体中のエストロゲン応答エレメント(ERE)に結合してRNA転写を調節する。Bcl−2は、抗アポトーシスファミリータンパク質の鍵となるメンバーである。その過剰発現は、人間における多くの種類のがんに関連付けられている。Bcl−2プロモーターはERE配列を含有し、MCF−7細胞におけるBcl−2 mRNAの発現は、E2により正に調節され、タモキシフェンにより阻害されることが発見されている(Gennari L. Drug Today(Barc)、2006年6月;42巻(6号):355〜67頁)。ラソフォキシフェンは、ラロキシフェンおよびタモキシフェンについて報告されたものより少なくとも10倍高い親和性で両方のエストロゲン受容体サブタイプ(ER−αまたはER−β)に選択的に結合する(Gennari L. Drug Today(Barc)、2006年6月;42巻(6号):355〜67頁)。本発明者らは最初に、ラソフォキシフェンがタモキシフェンと比較してより高い効率でBcl−2発現を阻害するかどうかを評価した。インスリンおよび10%のFBSまたは5%のチャコール処理済みFBSを含有するDMEM培地中で72時間MCF−7細胞を生育させた。次に、細胞をラソフォキシフェンおよびタモキシフェンにより48時間処理した。Bcl−2タンパク質の発現は、チャコール処理済み(CS)FBSを含有するものと比較してエストロゲンを含有する培養培地により増進されるという先行する研究を本発明者らは確認した(
図2AおよびB、ブランク)。驚くべきことに、ラソフォキシフェンは、タモキシフェンと比較してBcl−2発現を阻害するより弱い活性を示した(
図2C、2.5μMのTAM:2.5μMのLAS)。重要なことに、タモキシフェンおよびラソフォキシフェンのいずれも、エストロゲンを含まない培地中で培養された細胞中で小胞(ブランク)と比較してBcl−2発現に影響しなかった(フェノールレッド(PR)を含まないEMEM培地中のチャコール処理済み(CS)FBS;
図2B、CS FBSのパネル)。これらの結果は、ラソフォキシフェンはタモキシフェンと比較して弱くエストロゲン古典的核内経路をブロックすること、および、ラソフォキシフェンは、エストロゲンによりモジュレートされる異なる経路を介してMCF−7細胞の増殖を阻害し得ることを指し示した。
【0159】
(実施例4 ラソフォキシフェンは、ER−α36の発現が陽性である時にタモキシフェンと比較してより鋭敏にMCF−7細胞の増殖を阻害した)
ER−α36の転写バリアントはAF−1およびAF2ドメインを欠く。それは、部分的なリガンド結合ドメインおよびパルミトイル化モチーフ(445〜453)を含有し、全長ER−αの典型的な140アミノ酸(456〜595)の代わりに独特のC末端27アミノ酸配列を持つ。それは形質膜およびサイトゾルに位置して発見された(Boonyaratanakornkit, V.、Steroids、2011年8月;76巻(9号):877〜84頁)。ER−α36はMIESをモジュレートするように拘束されており、MDA−MB−231などのタモキシフェン耐性がん細胞において特有に発現されることが発見されたので、ER−α36はタモキシフェン耐性に関与すると考えられる(Kang Lら、Mol Endocrinol.、2010年4月;24巻(4号):709〜21頁;Rao Jら、J Steroid Biochem Mol Biol.、2011年11月;127巻(3−5号):231〜7頁)。さらに、インスリン(IL)はインスリン受容体(IR)に結合し、インスリン受容体基質(IRS)のリン酸化を刺激する。リン酸化されたIRSは二量体エストロゲン−ER複合体と相互作用し、次にそれは核内にトランスロケーションしてERE配列と結合することにより、エストロゲン古典的核内経路を通じてRNA転写を調節することができる。MCF−7細胞の増殖はILによりモジュレートされ、タモキシフェンに対するこれらの細胞の感受性は、培養培地からのILの一時的な除去後に(Butler WBら、Cancer Res. 1981年1月;41巻(1号):82〜8頁)、またはIRS特異的siRNAを使用してIRS発現を一過的にノックダウンした時に(Cesarone Gら、J Cell Biochem. 2006年5月15日;98巻(2号):440〜50頁)増加する。以上を合わせると、インスリンはMCF−7細胞においてタモキシフェン感受性を調節し得ることが指し示される。本発明者らはMCF−7細胞をインスリン非含有培地中で3ヶ月生育させ、ER−α36の転写バリアントがインスリン非含有培地中で上方調節されることを発見した。対照的に、他のエストロゲン受容体の発現レベルは影響されなかった(
図3A)。ILを含むまたは含まない培地中で生育させたMCF−7細胞は、MCF−7細胞のIC
50(μM)により示されるラソフォキシフェンまたはタモキシフェンの処理に応答する別個のパターンを示した。(
図3B〜D)ラソフォキシフェンは、ER−α36の発現が陽性であるMCF−7細胞の分裂をより有効に阻害した(
図3B、右)。他方、タモキシフェンは反対の効果を及ぼした(
図3B、左)。MCF−7細胞によるER−α36の発現が陽性である場合(MCF−7)、ラソフォキシフェンはタモキシフェンと比較してER−α36+のMCF−7細胞分裂をより有効に阻害した。(
図3C)他方、MCF−7細胞がER−α36を発現しない場合(MCF−7/IL)、ラソフォキシフェンは、タモキシフェンと比較してMCF−7細胞分裂を阻害するより低い活性を呈し、過剰発現されたER−α36バリアントは獲得されたまたはde novoのタモキシフェン耐性を結果としてもたらし得ることを指し示した。
【0160】
MCF−7細胞をインスリン非含有培地中で3ヶ月生育させた。ウエスタンブロッティングを使用してエストロゲン結合受容体の発現レベルを測定した。簡潔に述べれば、80〜90%コンフルエンスの細胞を回収し、RIPA緩衝液または1%のtriton−x−100およびプロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する1×PBS中に溶解させた。Bio−radのタンパク質染色色素を使用して総タンパク質濃度を測定した。ニトロセルロース膜(Millipore)およびBio−radのセミドライトランスファーシステムを使用して標準的なプロトコールにしたがってウエスタンブロッティングを行った。細胞溶解物からの等量の総タンパク質をウエスタンブロッティングのためにSDS−PAGEにロードした。Cell Signal Transduction(CST)およびSanta Cruzから購入した抗体を使用してER−α36、ER−α66、ER−βおよびGPER1の発現レベルを測定した。
【0161】
(実施例5 ラソフォキシフェンによる獲得されたタモキシフェン耐性MCF−7細胞の増殖の阻害)
過剰発現されたER−α36バリアントは獲得されたde novoのタモキシフェン耐性を結果としてもたらし得るという本発明者らの仮説を検証するために、タモキシフェンを使用してMCF−7細胞を10ヶ月誘導した。ER−α66の発現が減少したことを本発明者らは発見した(
図3A、上パネル)。対照的に、ER−α36の発現レベルは増進された(
図4A、中パネル)。GPER1の発現レベルは影響されなかった(
図4A、下パネル)。2μMのタモキシフェンは10ヶ月にわたってタモキシフェンにより誘導されたMCF−7細胞の増殖を阻害しなかった。対照的に、2μMのラソフォキシフェンは、同じ試験条件下で50%を上回る阻害活性を示した(
図4B)。ラソフォキシフェンがER−α36アンタゴニストであり、タモキシフェン耐性およびER−α36+乳がんの増殖を阻害することが指し示された。
(実施例6)
ラソフォキシフェンは(de novoのまたは獲得された)ER−α36を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害した
【0162】
女性は、抗エストロゲン療法により治療された乳がんを有する女性および喫煙の効果を除外した後に男性と比較して非小細胞肺がん(NSCLC)のより高いリスクおよび肺がん死のより低いリスクを有することを疫学データは実証する(Ramchandran Kら、Semin Oncol 2009年、36巻:516〜523頁;Kiyohara Cら、Gender Medicine 2010年、7巻:381〜401頁;Bouchardy Cら、Cancer 2011年、117巻:1288〜1295頁)。それは、ER−α36が一部の肺がん細胞において過剰発現され得ることを指し示す。したがって、本発明者らは、肺がん細胞からのER−α36の発現を試験した。ER−α66、ER−α36、GPER1およびEGFRの発現のスクリーニング後に、HBE細胞はER−α36を発現しないことを本発明者らは発見した。H1299細胞は高レベルのER−α36を発現したが、EGFRを発現しなかった。H460細胞は、高レベルのER−α36およびEGFRの両方を発現した(
図5−A)。H460およびH1299細胞の増殖は2μMのラソフォキシフェンの処理の下で阻害された(
図5−BおよびD)。対照的に、タモキシフェンは反対の効果を呈した(
図5−B)。タモキシフェンおよびラソフォキシフェンもいずれも、HBE細胞の増殖に影響しなかった(
図5−B)。H1299細胞は、H460細胞と比較して弱くEGFRを発現し(
図5A)、EGFRキナーゼの阻害剤であるゲフィチニブはH1299細胞の増殖を阻害しなかった(
図5D)。対照的に、それは、EGFRの発現が陽性であるH460の増殖を阻害した(
図5C)。加えて、H460細胞は、ラソフォキシフェンおよびゲフィチニブの併用処理により感受性であった(
図4C)。H1299細胞におけるラソフォキシフェンおよびゲフィチニブでの併用処理は、ラソフォキシフェン単独による処理と比較して類似の効果を示した(
図4D)。加えて、結腸がん(
図8−B)、胃がん(
図8−D)、およびトリプルネガティブ乳がん(
図9)などのER−α36+がんを治療するためにそれを使用した時にも、同じラソフォキシフェンの活性が発見された。これは、ラソフォキシフェンが、獲得されたおよびde novoのタモキシフェン耐性またはER−α36+がんの増殖を阻害できることを指し示した。
【0163】
(実施例7 ラソフォキシフェンは異種移植ヌードマウスにおいてER−α36陽性がんの増殖を阻害した)
in vitroの結果を検証するために、本発明者らはヌードマウスにおいて異種移植H460腫瘍を構築した。腫瘍サイズはデジタルノギスを使用して測定した。腫瘍が60〜70mm
3まで増大した時に、ゲフィチニブ、もしくはラソフォキシフェン、またはゲフィチニブとラソフォキシフェンとの組み合わせを2〜3週にわたって毎日マウスに投与した。ラソフォキシフェンは異種移植H460腫瘍の増殖を阻害したことを本発明者らは発見した(
図7)。加えて、E2およびEGFRの両方は、ERK/MAPKおよびAKT/PI3Kシグナル伝達経路を活性化する。マウスにラソフォキシフェンとゲフィチニブとの組み合わせを投与した時に、阻害効果はラソフォキシフェンまたはゲフィチニブ単独による投与よりも一層顕著であった(
図7−A、B)。したがって、ラソフォキシフェンはER−α36+がんの増殖を阻害する。ラソフォキシフェンおよびゲフィチニブの併用投与は、ER−α36+がんの増殖に対する阻害効果を増進させた。
【0164】
(実施例8 ラソフォキシフェンはGPER1アゴニストを介して骨粗鬆症を予防する)
ラソフォキシフェンおよびラロキシフェンの両方は、閉経後の女性において骨粗鬆症を予防するエストロゲン剤として市販された。ラソフォキシフェンはER−α36および古典的エストロゲン核内経路の阻害剤であること、およびE2はGPER1に結合し、Gαsシグナルを調節してInsP
3Rを通じてサイトゾル[Ca
2+]の上昇の増進を結果としてもたらすことを本発明者らは既に実証したので、ラソフォキシフェンはGPER1アゴニストであるという仮説を立てる。GPER1−EGFPは、GPER1−EGFPプラスミドを一過的にトランスフェクトしたHEK293細胞において過剰発現された(
図11A)。本発明者らの結果は、GPER1アンタゴニストであるG15は、EGFPベクターをトランスフェクトした細胞と比較してGPER1−EGFPを過剰発現するHEK293細胞においてサイトゾル[Ca
2+]
iを有意に変化させなかったことを示した(
図7B)。ラソフォキシフェンおよびラロキシフェンは、GPER1−EGFPを過剰発現するHEK293細胞においてサイトゾル[Ca
2+]
iを有意に増進させた(
図11B)。サイトゾル[Ca
2+]
iシグナルはMIESのアゴニストと考えられ、またラソフォキシフェンおよびラロキシフェンはサイトゾル−Ca
2+シグナルを上昇させたので、ラソフォキシフェンおよびラロキシフェンはGPER1のアゴニストと考えられた。したがって、ラソフォキシフェンおよびラロキシフェンは、骨においてGPER1シグナル伝達経路の活性化を介して骨粗鬆症を予防した。
【0165】
考察
ラソフォキシフェンは、骨粗鬆症を予防する選択的エストロゲン受容体モジュレーターとして開発および市販された。それはまた、乳がんを予防することが報告された。しかしながら、機序はいまだに報告されていない。ラソフォキシフェンは、タモキシフェンと比較して、エストロゲン古典的核内経路を介してBcl−2発現をブロックするより弱い阻害剤であることを本研究は指し示した。興味深いことに、ラソフォキシフェンはER−αLBDに1.5nMの結合親和性を有することが報告されており、ラソフォキシフェンはタモキシフェンと比較してより高い効率で膜結合ERの生物学的機能を阻害し得ることを示唆する。ラソフォキシフェンはER−α36陽性がん細胞の増殖をブロックするER−α36アンタゴニストであることを本研究は指し示した。
【0166】
タモキシフェンは、ERを高度に発現する乳がん患者を治療するためのエストロゲン受容体のアンタゴニストとして市販された。それはまた、薬物耐性および子宮内膜がんを誘導し、膜結合型エストロゲン受容体であるER−α36およびGPER1の発見を結果としてもたらす。さらに、MIESはERK/MAPKおよびAKT/PI3Kシグナル伝達経路を活性化することが報告されており、MIES誘導性のがんを考えるべきであることを指し示す。しかしながら、異なる膜結合型エストロゲン受容体を有する選択的モジュレーターとそれらのシグナル伝達経路との間の関与する分子メカニズムおよび干渉性クロストークの十分な理解を欠いていることが、ER−α36とGPER1との間の生理学的機能を明らかにし、MIES誘導性のがんを治療するための化合物を設計することを困難にしている。本研究は、ラソフォキシフェンがER−α36陽性がんの増殖を阻害することを指し示し、MIES誘導性のがんおよび獲得されたまたはde novoのタモキシフェン耐性を誘導するのはGPER1よりむしろER−α36であることを指し示した。
【0167】
ラソフォキシフェンは、閉経後の女性において骨粗鬆症を予防するためのSERMとして開発された。ラソフォキシフェンは、E2−GPER1経路の活性化を介してイノシトール三リン酸受容体(InsP
3R)のCa
2+チャネルゲーティングを増進させるGPER1アゴニストであることを本研究は指し示した。GPER1は主に小胞体に局在することが発見されている。先行する報告は、GPER1とIL−IR複合体とのクロストークに対して為された。また、InsP
3Rの増進された活性は、グルコース取込みを向上させることが報告された。エストロゲンはGPER1および活性Gαsに結合し、InsP
3R Ca
2+チャネルの増進された活性を結果としてもたらすことが報告された。ミトコンドリア関連小胞体膜(MAM)は細胞代謝の主要な機構である。したがって、GPER1に結合するE2は細胞代謝シグナルをモジュレートする可能性がある。加えて、GPER1ノックアウトマウスは、GPER1が雌マウスにおいて正常な骨成長、グルコースホメオスタシス、および血圧のために必要とされることを実証した。したがって、GPER1は、閉経後の女性における一部のエストロゲン関連の代謝性疾患の新規の治療に活用するための興味深い治療標的である。以上を合わせると、ラソフォキシフェンはGPER1アゴニストであるので、閉経後の女性において骨粗鬆症を予防する。
【0168】
要約すると、エストロゲンは、正常な哺乳動物の生理、加齢および多くの病態を調節する鍵となるホルモンである。エストロゲン核内受容体は、ホルモンで調節される組織および疾患においてゲノム効果を媒介するリガンド活性化転写因子として説明されると考察されるが、エストロゲンはまた、膜結合型エストロゲン受容体(ER−α36)およびGPER1(Gタンパク質共役型エストロゲン受容体、以前はGPR30)に伝統的に関連付けられてきた迅速なシグナル伝達事象も媒介する。多くの場合において、エストロゲンの保護的なまたは有益な効果は、エストロゲン媒介性の疾患を治療するためにSERMによって模倣される。ER−α36またはGPER1を標的化する治療薬への臨床的に新規の可能性を本発明者らは開発している。本発明者らのデータは、ラソフォキシフェンがMIES誘導性のがんのER−α36アンタゴニストであるが、タモキシフェンと比較してエストロゲン古典的核内経路のより弱いアンタゴニストであることを指し示す。さらに、それはまた、閉経後の女性において骨粗鬆症を予防するGPER1アゴニストでもある。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0169】
刊行物、特許、特許出願および特許出願公開などの本明細書の全体を通じた全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0170】
理解を明確にする目的で、以上の発明を説明および例によりある程度詳細に記載したが、ある特定の軽微な変更および改良が実施されることは当業者に明らかである。したがって、説明および例が本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
本発明の実施形態の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
個体においてがんを治療する方法であって、前記個体に有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記がんがER−α36陽性がんである、方法。
(項目2)
前記がんが、乳がん、子宮内膜がん、肺がん、胃がん、結腸がん、膵臓がん、甲状腺がんおよび肝臓がんからなる群より選択される固形腫瘍である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記がんが乳がんである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記がんがタモキシフェン耐性乳がんである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記がんがトリプルネガティブ乳がんである、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記がんがEGFR陽性がんである、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記がんがEGFR陽性肺がんである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記個体にEGFRキナーゼ阻害剤を投与することをさらに含む、項目6または7に記載の方法。
(項目9)
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および前記EGFRキナーゼ阻害剤が同時に投与される、項目8に記載の方法。
(項目10)
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および前記EGFRキナーゼ阻害剤が逐次的に投与される、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記EGFRキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩である、項目8〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記がんがHER2陽性がんである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記がんがHER2陽性乳がんまたはHER2陽性胃がんである、項目16に記載の方法。
(項目14)
前記個体にHER2阻害剤を投与することをさらに含む、項目12または13に記載の方法。
(項目15)
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および前記HER2阻害剤が同時に投与される、項目14に記載の方法。
(項目16)
ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩および前記HER2阻害剤が逐次的に投与される、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記HER2阻害剤が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブまたはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)である、項目14〜16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記がんにおけるER−α36の発現が、ER−α36ペプチドの存在により決定される、項目1〜17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記ER−α36ペプチドが、免疫ハイブリダイゼーション法[例えば、ウエスタンブロッティング、免疫組織学的染色または免疫蛍光染色]により測定される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記がんにおけるER−α36の発現が、ER−α36 mRNAの存在により決定される、項目1〜17のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記ER−α36 mRNAが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q−PCR)により測定される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記個体に有効量のラソフォキシフェンを投与することを含む、項目1〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記個体がヒトである、項目1〜22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
(i)ラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物、および(ii)ER−α36ペプチドまたはER−α36 mRNAの存在を決定するための剤を含む、キット。
(項目25)
ER−α36ペプチドの存在を決定するための前記剤が、前記ER−α36ペプチドを認識する抗体である、項目24に記載のキット。
(項目26)
ER−α36 mRNAの存在を決定するための前記剤が、ER−α36 mRNAの定量的測定のためのオリゴヌクレオチドである、項目24に記載のキット。
(項目27)
有効量のラソフォキシフェンまたはその薬学的に許容される塩、ならびにEGFRキナーゼ阻害剤またはその機能的同等物およびHER2阻害剤またはその機能的同等物からなる群より選択される少なくとも1つの追加の剤を含む、医薬組成物。
(項目28)
前記EGFRキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、アファチニブ、ネラチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、ロシレチニブもしくはオルムチニブ、またはこれらの薬学的に許容される塩である、項目27に記載の医薬組成物。
(項目29)
前記HER2阻害剤が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、もしくはアドトラスツズマブエムタンシン(T−DM1)、またはこれらの薬学的に許容される塩である、項目27に記載の医薬組成物。