特許第6899508号(P6899508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝プラントシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6899508-床落下装置及び床落下方法 図000002
  • 特許6899508-床落下装置及び床落下方法 図000003
  • 特許6899508-床落下装置及び床落下方法 図000004
  • 特許6899508-床落下装置及び床落下方法 図000005
  • 特許6899508-床落下装置及び床落下方法 図000006
  • 特許6899508-床落下装置及び床落下方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899508
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】床落下装置及び床落下方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   G09B9/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-175653(P2019-175653)
(22)【出願日】2019年9月26日
(65)【公開番号】特開2021-51266(P2021-51266A)
(43)【公開日】2021年4月1日
【審査請求日】2019年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 健太
(72)【発明者】
【氏名】小川 健三
(72)【発明者】
【氏名】中山 健一
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−218323(JP,A)
【文献】 特開平08−339159(JP,A)
【文献】 再公表特許第2008/132851(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00− 9/56、17/00−19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高さの位置に配置される踏板と、
前記踏板の底部に輪郭部を当接させて前記踏板を支持し、前記輪郭部の一部に前記底部に当接しない非当接部が設けられたカムを回転駆動するカム機構と、
前記踏板を、前記第1の高さの位置よりも低い位置で支持する支持機構と
を具備する床落下装置。
【請求項2】
落下を指示するトリガの発生により前記カム機構を制御し前記踏板の前記底部が前記輪郭部と非当接になる位置へ前記カムを回転させる制御部を具備する請求項1記載の床落下装置。
【請求項3】
復帰を指示するトリガの発生により前記カムを落下方向と同じ方向に回転させて、前記支持機構により支持された前記踏板を前記輪郭部で押し上げ、前記第1の高さの位置(床面の位置)で前記カムの回転を停止させる制御部を具備する請求項1記載の床落下装置。
【請求項4】
前記カム機構が、
前記踏板の底部の一端を支持し、前記踏板の底部と接する輪郭部の一部に前記底部に当接しない第1非当接部が設けられた第1カムを回転駆動する第1カム機構と、
前記踏板の底部の他端を支持し、前記踏板の底部と接する輪郭部の一部に前記第1非当接部と対向し前記底部に当接しない第2非当接部が設けられた第2カムを回転駆動する第2カム機構と
を具備する請求項1記載の床落下装置。
【請求項5】
前記制御部に対して前記落下または前記復帰のトリガを発生させるトリガ発生部を備える請求項2または請求項3記載の床落下装置。
【請求項6】
前記制御部は、
落下のトリガとなる信号を外部装置から受け取る通信インターフェースを備える請求項2記載の床落下装置。
【請求項7】
前記トリガ発生部が、
落下のトリガが発生する落下釦を備える操作ユニットである請求項5記載の床落下装置。
【請求項8】
前記トリガ発生部が、
復帰のトリガが発生する復帰釦を備える操作ユニットである請求項5記載の床落下装置。
【請求項9】
前記踏板の上に配置され、被験者の足の動きを検出し、検出した足の動きを示す信号を前記外部装置へ出力するマットセンサを具備する請求項6記載の床落下装置。
【請求項10】
第1の高さの位置に配置された踏板の底部に、輪郭部の一部に前記底部に当接しない非当接部を設けたカムの輪郭部を当接させて前記踏板を支持し、
前記カムを回転駆動し、前記踏板を支持する位置に前記非当接部を向けることで前記踏板を落下させて、前記第1の高さの位置よりも低い位置に配置した支持機構で前記踏板を支持する、床落下装置による床落下方法。
【請求項11】
前記カムを回転駆動し、前記支持機構で支持された前記踏板を前記カムの前記輪郭部で押し上げて前記踏板を前記第1の高さの位置に戻す、請求項10記載の床落下装置による床落下方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、危険体感教育のための床落下装置及び床落下方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、労働災害などを防止するため、作業従事者に危険を体感させ、災害防止の感度を上げる教育が実施されている。
【0003】
一般に、危険体感教育は、実際の災害に近い設備や環境を再現し、安全対策を講じた上で危険を体感させる手法がとられていたが、体験設備が大掛かりになる上、安全対策を講じていても被災するリスクがある。このため、バーチァルリアリティ(以下「VR」と称す)技術を用いた危険体感教育システムが導入されつつある。
【0004】
VR技術を用いた従来の危険体感教育システムは、ヘッドマウントディスプレイを用いて3D映像を被験者に見せて視覚を刺激し、ヘッドホンからの音声で被験者の聴覚を刺激する他、落下体験のため、床落下装置で床を落下させて被験者の触覚なども同時に刺激することで、よりリアリティ効果を上げるようにしている。
【0005】
従来の床落下装置は、ベースの上に滑走可能な支持部材を配置し、支持部材の上に踏板を配置したものである。この床落下装置の場合、被験者が踏板に乗った状態で、支持部材を横方向に引いて踏板を落下させる。その後、踏板の上から被験者がいなくなり、踏板に荷重がなくなると、踏板の下に設けたバネの反発力で踏板が落下前の位置(元の位置)に自動復帰する構造になっている(特許文献1参照)。
【0006】
このような構造の従来の床落下装置の場合、支持部材を一方向に引くためリニアガイドが必要であり、自動復帰のために戻りばねも必要である。さらに被験者が踏板に乗って荷重がかかった状態で支持部材を引くため、摩擦軽減のために支持部材と踏板との間に車輪を取り付ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−218323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来の場合、落下と復帰の2つの機構を設けるため、多くの部品が必要であり、機構の大型化と共に広いスペースを要する。このため、広い設置スペースでの常設のVR体感イベントなどで運用されることが多い。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、設置スペースが小さくて済み、VR体感システム全体としてイベント会場や会議室等へ移動及び設置が容易な床落下装置及び床落下方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の床落下装置は、踏板、カム機構、支持機構を備える。踏板は第1の高さの位置に配置される。カム機構は踏板の底部に輪郭部を当接させて踏板を支持し、輪郭部の一部に底部に当接しない非当接部が設けられたカムを回転駆動する。支持機構は、第1の高さの位置よりも低い第2の高さの位置で踏板を支持する。
【0011】
実施形態の床落下方法は、第1の高さの位置に配置された踏板の底部に、輪郭部の一部に底部に当接しない非当接部を設けたカムの輪郭部を当接させて踏板を支持し、カムを回転駆動し、踏板を支持する位置に非当接部を向けることで踏板を落下させて、第1の高さの位置よりも低い位置に配置した支持機構で踏板を支持する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一つの実施の形態のVR体感システムの構成を示す図である。
図2】VR体感システムの搭乗ユニットを示す拡大図である。
図3】VR体感システムの床落下装置のカムの形状を示す図である。
図4】カムの回転位置検出機構を示す斜視図である。
図5】床落下装置の床落下動作を示す図である。
図6】床落下装置の床復帰動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は一つの実施の形態のVR体感システムを示す図である。
図1に示すように、このVR体感システムは、VR再生装置10、ヘッドマウントディスプレイ20(以下「HMD20」と称す)、ヘルメット21、制御部としての制御ボックス30、操作ユニット31、床落下装置40などを備える。
【0015】
VR再生装置10は、例えばコンピュータなどであり、VR動画(3D映像およびステレオ音声など)を再生し出力する。
【0016】
HMD20は、ゴーグル形のディスプレイ22、ヘッドホン23などを備える。ディスプレイ22及びヘッドホン23は、装着位置を調整可能に一体的に設けられている。ヘルメット21は、被験者の頭部を覆い保護するものである。なお、ヘルメット21は、なくてもよい。
【0017】
ディスプレイ22及びヘッドホン23は、それぞれのケーブルを介してVR再生装置10に接続されている。ディスプレイ22は、VR再生装置10から入力される3D映像を表示する。3D映像中には、被験者の視点からの映像が映し出され、被験者の動きに合わせて被験者視点で画像が動くよう制御される。ヘッドホン23は、VR再生装置10から入力されるステレオ音声または3D音声などを発声(出力)する。
【0018】
この他、HMD20には、モーションセンサや視線センサなどが設けられている。モーションセンサがこのHMD20(被験者の頭部)の上下左右の動きを検知し視線センサが被験者の視線を検知することで、HMD20は、これらの検知情報をVR再生装置10に通知し、検知した頭部の動きや視線に応じてVR再生装置10から出力される映像(例えば右を向いたら右側の映像)や音声をディスプレイ22やヘッドホン23に出力する。
【0019】
制御ボックス30には、USB端子(図示せず)及び同軸端子(図示せず)等が設けられている。制御ボックス30は、同軸端子に接続された同軸ケーブル(通信ケーブル)を介して床落下装置40のカム機構(パルスモータ部51、61)やマットセンサ55と接続されている。
また、制御ボックス30は、USB端子に接続されたUSBケーブルを介してVR再生装置10や操作ユニット31等の外部装置と接続されている。つまりUSB端子は、落下のトリガとなる信号を外部装置から受け取る通信インターフェースである。制御ボックス30は、VR再生装置10の3D映像に同期したタイミング信号に基づき床落下装置40を制御する。
【0020】
制御ボックス30は、VR再生装置10から画像の落下タイミングに合わせて出力されるタイミング信号を基に、床落下装置40のカム機構(第1カム機構及び第2カム機構)を動作させる。
【0021】
床落下の動きを詳細に説明すると、制御ボックス30は、落下を指示するトリガが発生すると、パルスモータ部51、61のスイッチをONし、カム53、63をそれぞれの方向(矢印A、Bの方向)に回転させ、カム53、63の頂部53a、63aが踏板54から外れて踏板54を落下し、支持機構56により支持される。
【0022】
具体的には、制御ボックス30は、VR再生装置10からのタイミング信号が受信されると、床落下装置40のカム機構を制御し、床板54の底部が輪郭部59、69(図3参照)に接する位置から非当接になる段差部58の位置(図5参照)へカム53、63を回転させる。この場合VR再生装置10からのタイミング信号の受信が、落下を指示するトリガの発生である。
【0023】
踏板54が落下した後も、カム53、63をそのまま回転させて一定角度(例えば頂部53a、63aが最上部にあった位置から330°)まで回転すると、その後は、カム53、63の頂部53a、63aが元の位置に戻るようにカム53、63を落下時と同じ方向に回動させ、支持機構56により支持された踏板54を輪郭部59、69で押し上げながら第1の高さの位置(床面の位置)でカム53、63の回転を停止させる。
【0024】
操作ユニット31は、制御ボックス30に対して、落下または復帰のトリガを発生させるトリガ発生部である。操作ユニット31には、LED32、落下釦33、復帰釦34などが設けられている。LED32は、制御ボックス30からの電源信号を受けて点灯し、床落下装置40および制御ボックス30が動作中、つまり電源が入っていることを通知する。
【0025】
落下釦33は、踏板54の落下を指示する釦である。この落下釦33の押下によって、制御ボックス30は、落下を指示するトリガが発生したことを検出する。この落下釦33を操作することで、任意のタイミングで踏板54を落下させることが可能である。
【0026】
復帰釦34は、落下した踏板54の位置を元の位置に戻す、つまり復帰を指示する釦であり、復帰釦34を操作することで任意のタイミングで各カム機構を動作させて、落下した踏板54を元の高さまで戻す動作が可能である。
【0027】
上記床落下体験時には、踏板54が落下した後、カム53、63をそのまま回転させて踏板54が元に位置に自動的に戻るように制御したが、踏板54が落下した後、カム53、63の回転を一時停止させて、その後、操作ユニット31の復帰釦34の操作でカム53、63の回転を再開させて踏板54を元の位置に戻すようにしてもよい。
【0028】
復帰の動きを具体的に説明すると、制御ボックス30は、復帰を指示するトリガが発生したことを検出すると、各カム機構のカム53、63を回転させるパルスモータ部51、61のスイッチをONし、回転シャフト52、62を矢印A、Bそれぞれの方向に回転させて(図6参照)、カム53、63の頂部53a、63aが最上点に達したときにスイッチをOFFし、パルスモータ部51、61の回転を停止させる。カム53、63の頂部53a、63aが最上点に達したタイミングは、フォトセンサ72(図4参照)により検出される。
【0029】
床落下装置40は、搭乗ユニット41、フロアロック42、キャスター43、縦フレーム45と横フレーム46を骨組みとしてL形金具44で固定した枠部47、枠部47に設けられた掛止部材48及び開閉バー49などからなる手すり部50を備える。
【0030】
フロアロック42は、搭乗ユニット41の底部の縁部に設けられた支持部材であり、床面と搭乗ユニット41との間に介在して搭乗ユニット41を支持する。フロアロック42は、この装置全体のがたつき防止と位置固定の機能を有する。キャスター43は、搭乗ユニット41の底部の縁部に設けられた車輪であり、搭乗ユニット41のフロアロック42側を持ち上げて搭乗ユニット41を移動する際に利用することで、移動を容易に行える。
【0031】
図2に示すように、搭乗ユニット41は、上部に開口41aを有する筐体であり、内部に、パルスモータ部51と回転シャフト52とカム53とを備える第1カム機構と、パルスモータ部61と回転シャフト62とカム63とを備える第2カム機構と、前後2つのカム機構(第1カム機構及び第2カム機構)に支持される踏板54と、この踏板54の上に配置されるマットセンサ55と、カム53、63の回転で支持が外れて落下した踏板54をカム53、63に当たらない高さ(第2の高さの位置)で支持する支持機構56とを有する。
【0032】
踏板54及びマットセンサ55は、搭乗ユニット41の上部の床面の一部を構成するように開口41aに配置される。床面の高さを第1の高さの位置とする。
【0033】
第1カム機構のカム53と第2カム機構のカム63は、互いに対向して配置されている。カム53、63は、踏板54の底部に輪郭部59、69(図3参照)を当接させて踏板54を支持する。カム53、63には、輪郭部59、69の一部に踏板54の底部に当接しない非当接部である段差部58、68が設けられている。
【0034】
第1カム機構は、開口41aの一側縁(前縁)の下部に設けられ、第2カム機構は、他の側縁(後縁)の下部に設けられる。第1カム機構は、パルスモータ部51を駆動して回転シャフト52を回転させてカム53を回転駆動する。カム53は、矢印A方向(図面に向かって反時計方向)に回動される。第2カム機構は、パルスモータ部61を駆動して回転シャフト62を回転させてカム63を回転駆動する。カム63は、矢印B方向(図面に向かって時計方向)に回動される。
【0035】
このカム機構では、対向する2つのカム53、63を同時に回動させ、踏板54の端部の位置に段差部58、68が移動すると、カム53、63による踏板54の底部の支持が外れて踏板54が落下する。
【0036】
マットセンサ55は、制御ボックス30を介してVR再生装置10に接続されており、被験者の足の押圧力(足踏みまたは足の動き)を検知し、検出した足の押圧力(足踏みまたは足の動き)を示す信号を外部装置であるVR再生装置10に出力する。VR再生装置10は、マットセンサ55から受信される信号に応じて3D画像の中の被験者画像を歩くように制御する。なお、マットセンサ55の代わりに被験者の足にモーションセンサを取り付けることでも同様のことができる。
【0037】
支持機構56は、第1カム機構と第2カム機構との間の開口41aの下に配置される。支持機構56は、支持柱部56aとこの支持柱部56aの上に配置されるクッション部56bとを有する。支持機構56は、カム53、63が回転して段差部58により底部が輪郭部59と非当接になった踏板54を、床面(第1の高さの位置)よりも低くカム53、63に当らないような高さの位置(第2の高さの位置)で支持する。つまり、支持機構56は、落下した踏板54が各カム機構に接触せずに受け支えることが可能な高さで設けられている。
【0038】
図3に示すように、第1カム機構のカム53は、輪郭部59を有しその一部に段差部58が設けられている。段差部58は、カム53の頂部53aとカム53の谷部53bと直線的に結ぶように設けられている。なお、段差部58は、必ずしも直線的も設ける必要はなく、輪郭部59の曲面内側に入り込むようにへこませて設けてもよい。
【0039】
輪郭部59は、カム53の頂部53aとカム53の谷部53bとを回転シャフト52の周囲を囲むような曲面で構成されている。曲面は、回転シャフト52の中心からの距離が連続的に変化するように設けられている。距離が連続的に変化するとは、カム53の頂部53aから谷部53bまでの距離の間で中心からの距離が連続的に短くなることをいう。なお、この構成は、第2カム機構も同様でありその説明は省略する。
【0040】
図4に示すように、第1カム機構には、回転シャフト52に支持された遮蔽板71と、搭乗ユニット41に固定されたフォトセンサ72とが設けられている。遮蔽板71は、回転シャフト52が回転すると、カム53と共に回転する。
【0041】
フォトセンサ72は、光を発光する発光部と、この発光部と間隔を空けて発光部の光軸73上に設けられた受光部とを有する。遮蔽板71は、カム回転時に発光部と受光部の間を通過するように配置される。フォトセンサ72は、遮蔽板71の回転位置によって遮蔽板71が光軸73上の光を遮り、カム53の回転位置を検出するように設けられている。この例では、カム53の回転位置を検出する手段としてフォトセンサ72を用いたが、これ以外に、例えばエンコーダやリミットスイッチ等を用いてもよい。なお、このカム機構の構成は、第2カム機構についても同様である。
【0042】
以下、このVR体感システムの動作を説明する。
このVR体感システムの場合、VR再生装置10から出力された被災映像がHMD20のディスプレイ22に表示され、そのときの音声がヘッドホン23から出力され、被験者が被災体験する。
【0043】
被験者の動きに合わせて映像が変化し、その中で、被験者の画像が所定の位置に差し掛かったときに(マットセンサ55の位置で足踏み)、VR再生装置10からタイミング信号が制御ボックス30へ出力される。
【0044】
このタイミグ信号を受けた制御ボックス30は、第1カム機構及び第2カム機構を制御して、パルスモータ部51、61のスイッチをONし、対向するカム53、63をそれぞれの矢印A、B方向に回動させ、踏板54の端部の位置に段差部58を向けることでカム53、63の頂部53a、63aが踏板54から外れ、踏板54が矢印C方向に落下し(図5参照)、踏板54の上に足踏みして立っている被験者が落下を体感する。落下した踏板54は、支持機構56の高さの位置(第2の高さ位置)で支持される。
【0045】
踏板54の落下距離は、例えば10mm〜30mm程度であるが、被験者にとっては3D映像および効果音との相乗効果で想像以上の落下体験が可能になる。
【0046】
そして、カム53、63が一定の位置に達すると(図5参照)、フォトセンサ72から検知信号が制御ボックス30に出力されるので、制御ボックス30は、パルスモータ部51、61のスイッチをOFFし、パルスモータ部51,61による回転シャフト52、62の回転動作を停止させる。
【0047】
踏板54を落下させた後、操作ユニット31の復帰釦34を操作することで、制御ボックス30は、各カム機構のパルスモータ部51、61のスイッチをONし、回転シャフト52、62を矢印A、Bそれぞれの方向に回転させる(図6参照)。
【0048】
この際、カム53、63の回動に伴いカム53、63の輪郭部59、69が踏板54に当接し、その後、カム53、63の輪郭部59、69のふくらみ(曲面形状)に沿って踏板54が矢印D方向に持ち上げられる(図6参照)。
【0049】
そして、カム53、63の頂部53a、63aが最上点に達したときにフォトセンサ72から検知信号が制御ボックス30に出力されるので、制御ボックス30は、パルスモータ部51、61のスイッチをOFFし、パルスモータ部51、61の駆動を停止させる。これにより、回転シャフト52、62の回転が止まり、カム53、63によって持ち上げられた踏板54もその位置(図2の元の高さの位置)で停止する。
【0050】
このようにこの実施形態のVR体感システムによれば、輪郭に段差部58、68を設けたカム53、63を用いたカム機構を導入して踏板54の落下機能と元の位置への復帰機能の2つの機能を実現したので、部品が少なく小型化が可能になる。このため設置スペースが小さくて済み、VR体感システム全体としての移動が容易であり、イベント会場への移動設置や会議室等での設置が可能になる。
【0051】
この他、この実施形態では、以下のような効果も得られる。
すなわち、このVR体感システムでは、被験者は、HMD22を装着してVR映像を視聴しつつ床の落下を体感することで、VR映像中で自身が墜落した状況の浮遊感や、落下後の衝撃力及び衝突音を体感し、迫力ある危険体感を味わうことができる。
【0052】
また、被験者は、ハーネス等の安全装置を付けることなく、リアルな墜落事故を安全に体感でき、搭乗ユニット41も小型軽量で小さな会議室等でも設置できる。
さらに、2つのカム機構の間に、支持機構56を設け、落下した踏板54がカム53、63に当たらないようにしたので、カム53、63を含む駆動機構を保護することができる。
【0053】
縦フレーム45と横フレーム46を骨組みとしこれらをL形金具44で固定して枠部47を設け、その一部に開閉可能な手すり部50を設けたので、危険体感時に被験者が倒れないように支えることができ、また移動時にフレーム類をばらしてコンパクトに持ち運ぶことができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、搭乗ユニット41の開口41aに配置した踏板54の前縁と後縁を支持するために2つのカム機構(第1カム機構及び第2カム機構)を用意し、踏板54を落下させたが、踏板54の片縁を搭乗ユニット41の開口の縁部に回動可能に支持しておき、他の片縁だけにカム機構を設けてもよい。この場合、踏板54の面が傾斜して落下することになる。また、本実施形態では、踏板54の前端・後端に2つのカム機構(第1カム機構及び第2カム機構)を配置したが、踏板54の左端・右端または四隅(対角線上)に配置してもよい。
【0055】
上記実施形態では、搭乗ユニット41と制御ボックス30とを別体としてケーブルで接続したが、搭乗ユニット41に制御ボックス30の制御機能(制御部)を内蔵してもよい。操作ユニット31も制御ボックス30と別体にしてケーブルで接続したが、搭乗ユニット41に操作ユニット31の釦やLEDなどを取り付けてもよい。
【0056】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0057】
また上記実施形態に示した制御ボックス30の構成要素を、VR再生装置10などのコンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…VR再生装置、20…ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、21…ヘルメット、22…ディスプレイ、23…ヘッドホン、30…制御ボックス、31…操作ユニット、33…落下釦、34…復帰釦、40…床落下装置、41…搭乗ユニット、41a…開口、42…フロアロック、43…キャスター、44…L形金具、45…縦フレーム、46…横フレーム、47…枠部、48…掛止部材、49…開閉バー、50…手すり部、51,61…パルスモータ部、52、62…回転シャフト、53、63…カム、53a、63a…頂部、53b、63b…谷部、54…踏板、55…マットセンサ、56…支持機構、56a…支持柱部、56b…クッション部、58、68…段差部、59、69…輪郭部、71…遮蔽板、72…フォトセンサ、73…光軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6