特許第6899554号(P6899554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899554
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ロールプレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 3/00 20060101AFI20210628BHJP
   B30B 15/14 20060101ALN20210628BHJP
【FI】
   B30B3/00 B
   !B30B15/14 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-203375(P2016-203375)
(22)【出願日】2016年10月17日
(65)【公開番号】特開2018-65142(P2018-65142A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】715008492
【氏名又は名称】株式会社ロボテック
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
【審査官】 大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−268145(JP,A)
【文献】 特開2000−280015(JP,A)
【文献】 特開昭60−009509(JP,A)
【文献】 特開2008−106314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 3/00
B30B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期回転をして対をなすロール間に被対象物を挟み、プレスにて加工物を形成するロールプレス装置であって、
前記各ロールをそれぞれ駆動する複数のモータ部と、
前記各ロール及び前記各モータ部の少なくとも1つの回転位置をそれぞれ検出して回転位置信号を出力する回転位置検出部と、
前記各ロールの中心軸若しくは前記各ロールの中心軸に連結された回転軸に加わるトルクをそれぞれ検出してトルク値信号を出力する複数のトルク検出部と、
前記各モータ部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記回転位置検出部からの前記回転位置信号を基に前記各ロールを所望する回転速度にて駆動するように前記各モータ部へ指令を行いつつ、前記各トルク検出部からの前記トルク値信号の和が所望の値となるように演算して前記各モータ部へ差分を加減した指令を行うことを特徴とするロールプレス装置。
【請求項2】
前記各モータ部は、それぞれの出力部に波動歯車減速機を備えていることを特徴とする請求項1に記載のロールプレス装置。
【請求項3】
前記各トルク検出部は、歪みゲージを有して前記各ロールに加わる前記トルクを検出することを特徴とする請求項1又は2に記載のロールプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対をなすロール間に被対象物を挟みプレスによって加工物を形成するロールプレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりロールを用いてプレスするロールプレス装置は、プリント配線板の基材と銅箔やカバーフィルムのラミネート、液晶パネル用ガラス基板等の基板表面へのカラーフィルタの貼り付け、電池のセパレータへと電極のラミネート、異種金属のクラッド製造など幅広く使用されている。
【0003】
そしてそれぞれのロールプレス装置に共通した課題は、被対象物である金属箔や薄いフィルムをプレスにて貼り合わせる際の品質ムラであって、特に皺や部分的な剥がれが生じることであり、これらの対策を示した文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−169464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にて開示されているような、同期モータをロールに接続してロールを同じ速度で回転させる方法では、ロールの直径の誤差、ロールの偏心、加熱の際の温度差によるロールの膨張による寸法差などで、対をなすロールの周速度を全く同じにして被対象物をプレス・搬送することは困難であった。またロールは新品と経時変化したものでは摩擦係数が変化すること、被対象物は表面の摩擦係数が異なる部材を扱うことが通常であることから、たとえ対をなすロールを全く同じ速度で回転させたとしても、搬送の摩擦力による差が生じ、皺等の不良発生は依然として生じる場合があった。
【0006】
このような問題に鑑みて、本発明は、被対象物である金属箔や薄いフィルムをプレスにて貼り合わせる際の品質の向上を図り、特に皺や部分的な剥がれなどの不良を低減するロールプレス装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のロールプレス装置は、上記の目的を達成するために、
同期回転をして対をなすロール間に被対象物を挟み、プレスにて加工物を形成するロールプレス装置であって、
各ロールをそれぞれ駆動する複数のモータ部と、
各ロール及び各モータ部の少なくとも1つの回転位置をそれぞれ検出して回転位置信号を出力する回転位置検出部と、
各ロールの中心軸若しくは各ロールの中心軸に連結された回転軸に加わるトルクをそれぞれ検出してトルク値信号を出力する複数のトルク検出部と、
各モータ部を制御する制御部と、
を備え、
制御部は、回転位置検出部からの回転位置信号を基に各ロールを所望する回転速度にて駆動するように各モータ部へ指令を行いつつ、各トルク検出部からのトルク値信号の和が所望の値となるように演算して各モータ部へ差分を加減した指令を行うように構成されている。
【0008】
請求項2に記載のロールプレス装置は、上記の目的を達成するために、各モータ部は、それぞれの出力部に波動歯車減速機を備えて構成されている。
【0009】
請求項3に記載のロールプレス装置は、上記の目的を達成するために、各トルク検出部は、歪みゲージを有して各ロールに加わるトルクを検出するように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明のロールプレス装置によれば、単純に対をなすロールの回転速度を単純に一致させるのではなく、対をなすロールに加わる摩擦力をトルク値としてトルク検出部で検出して、このトルク値の和を所望の値にするようにモータを制御することができることから、対をなすロールに加わる摩擦力をコントロールすることが可能となって、様々な種類の被対象物のロールプレスでのプレス品質を向上させることができる。またこのトルク値の和をゼロの所望値にするように、すなわち摩擦力を打ち消し合うようにモータを制御する場合、特に箔や薄いフィルムを貼り合わせる際、摩擦力の差によって生ずる皺や部分的な剥がれを低減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明のロールプレス装置によれば上記効果に加えて、モータを起点とする回転動力伝達系の回転方向のガタを微小にして回転動力をロールに伝達できるため、ガタの発生によって生ずる皺や部分的な剥がれをさらに低減することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明のロールプレス装置によれば上記効果に加えて、各トルク検出部が各ロールに繋がった回転軸を有して、回転軸に加わる捻れを歪みゲージにて検出することから、温度変化とクリープ変形に対する自己補償特性を付与することができるため、別段の補償手段を講ずることなく、温度変化や回転軸のクリープ変形に対する補償ができる。したがって高精度かつ高安定な回転トルク測定により、より精密に摩擦力を打ち消し合うようにモータを制御して被対象物貼り合わせることが可能となり、加工物の皺や部分的な剥がれを温度に左右されずまた長期に渡って安定して低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るロールプレス装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るロールプレス装置のロール部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る荷役装置について、図面を基に詳細な説明を行う。図1は本発明の実施形態のロールプレス装置の構成図である。
【0015】
ロール1aとロール1bは対をなしてプレス加工を行うものであって、その軸方向両端に一体的に設けた金属の軸部は回転軸受によって回転自在に支持されている。 ロール1aとロール1bの材質は被対象物やその工法によって定められ、被対象物が直接当たる箇所は金属であったり、ゴムや樹脂であったりする。
【0016】
各ロール1a、1bそれぞれは、トルク検出部2a、2bがロール1aとロール1b双方の一体的に設けた金属の中心軸によって繋がっていて、各ロール1a、1bに加わるトルクを検出してトルク値信号として出力する。各トルク検出部2a、2bは各ロール1a、1bの中心軸に連結された回転軸を有し、この回転軸に設けた起歪部に歪みゲージが添着されていて、この起歪部に加わる歪みを検出できるようになっている。そして歪みゲージはホイートストーンブリッジ回路を構成して歪み量に応じたアナログ信号を出力し、さらに検出したアナログ信号を増幅して演算を行ってトルク値を求めトルク値信号として出力するものである。もちろん各ロール1a、1bの中心軸に起歪部を設けて歪みゲージを添着して同様にトルク値を求めトルク値信号として出力するように構成しても良い。
【0017】
次いでトルク検出部2a、2bにはそれぞれロール1aとロール1bを駆動するモータ部3a、3bが接続されている。モータ部3a、3bは例えばACサーボモータが使用され、本発明の実施形態では各ロール1a、1bの回転速度を減速するため、モータ部3a、3bの出力部には波動歯車減速機が設けられている。
【0018】
波動歯車減速機は、外周が楕円状のウエーブジェネレータと、外周に多数の外歯が形成されウエーブジェネレータに外嵌されてウエーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なフレクスプラインと、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えたサーキュラスプラインからなる。そして動力は、フレクスプラインが回転出力として繋がったトルク検出部2a、2bに取り出されるようになっている。波動歯車機構は、バックラッシが極めて微小な減速機である。回転動力系のガタは可能な限り減少させることが望ましく、減速機のバックラッシはロール1a、1bの回転変動に影響するので、本発明の実施形態ではバックラッシが極めて微小な波動歯車減速機を用いている。
【0019】
そしてモータ部3a、3bを駆動するのがモータドライバ6a、6bであって、ゆえにモータ部3a、3bにて発生する動力は各トルク検出部2a、2bに伝達され、その結果、各ロール1a、1bが回転する。
【0020】
各ロール1a、1bには加熱手段であるヒーター4a、4bが内蔵されていて、各ロール1a、1bを加熱することができる。したがって、被対象物30aと被対象物30bはそれぞれ各ロール1a、1b間に挿入されて、プレス及び加熱されることで、加工物30cが形成される。またヒーター4a、4bはコントローラ7a、7bによって所定の温度に保持される。
【0021】
温度検出部5a、5bは各ロール1a、1bの表面温度を検出するものであって、例えば赤外線放射温度計が用いられるが、非接触型に限定されるものではなく各ロール1a、1bに内蔵されていても良い。そして温度検出部5a、5bにて検出した温度はコントローラ7a、7bによって各ロール1a、1bを所定の温度にするようにヒーター4a、4bを調整する。
【0022】
加圧装置8は、ロール1bを固定とした時に、ロール1aを移動させて、各ロール1a、1b間に圧力を付与するものである。なお加圧装置8は圧力を一定に保つ機能で作動する場合もあれば、各ロール1a、1b間のギャップを規定する場合もあって、加工物30cに求められる性能及び仕様により適宜使い分けが行われる。コントローラ9はこの加圧装置8の動きを直接制御するものである。
【0023】
回転位置検出部10a、10bはロール1a、1b近傍にあって、ロール1a、1bの回転位置を検出してこれを出力するものである。本実施形態ではロール1a、1b近傍に設置したが、モータ部3a、3bの反負荷側等に取り付けても良いし、両方にあっても良い。また本実施形態では光学的な反射によるエンコーダを用いたがこれに限らず、また光学式で透過式ものであっても良いし、また磁力を使用したものであっても良い。
【0024】
制御部20は、ロールプレス装置の制御を行うものであって、各コントローラ、モータドライバ6a、6b及び各検出部と電気的に接続して信号の通信を行っている。例えば、ヒーター4a、4b用のコントローラ7a、7bに対して所定の温度を設定し、加圧装置8用のコントローラ9に対して所定の圧力若しくはギャップを設定する。
【0025】
そしてモータ駆動演算部21は、回転位置検出部10a、10bからの回転位置信号から各ロール1a、1bの回転速度を演算して、この回転速度が同じになるようにさらに演算し、モータドライバ6a、6bに駆動制御用の信号を生成する。これと同時にモータ駆動演算部21には、各トルク検出部2a、2bからのトルク値信号の和が入力され、この和が所望の値となるように演算して、回転速度が同じになるように演算した駆動制御用の信号に対して差分として加減する信号を生成する。したがって制御部20は、各トルク検出部2a、2bからのトルク値信号TaとTbの和が所望の値であれば各回転位置検出部10a、10bからの回転位置信号から回転数が同じになる駆動制御用の信号を生成してモータドライバ6a、6bへ指令となる信号を送信し、各トルク検出部2a、2bからのトルク値信号TaとTbの和が所望の値でなければ直ちにこれを所望の値にする差分の演算を行ってこれを加減した駆動制御用の信号を生成してモータドライバ6a、6bへ指令となる信号を送信する。
【0026】
この構成で、被対象物30a及び被対象物30bが、所望する回転速度で同期回転しているロール1aとロール1bの間に挿入され、プレスされると同時にヒーター4a、4bによって加熱されつつ送られて加工物30cが形成される。プレス前の被対象物30a及び被対象物30bは、例えばそれぞれフレキシブルプリント配線板のベース材と銅箔のような複数の各々独立した部材であって、供給ロール等によって供給されるものである。
【0027】
図2は本発明の実施形態に係るロールプレス装置のロール部の説明図である。被対象物30aと被対象物30bがロール1aとロール1b間に挟まれた状態では、ロール1aにおける被対象物30aの搬送による摩擦力により生ずるトルクTa2が発生しており、同様にロール1bにおける被対象物30bの搬送による摩擦力により生ずるトルクTb2が発生している。そしてもしロール1aとロール1bの周速度の差が発生すると、ロール1a側には速度差によって生ずるトルクTa1が発生し、一方、ロール1b側には速度差によって生ずるトルクTb1が発生する。実際に検出されるトルク値は、トルク検出部2aではTa=Ta1−Ta2であり、トルク検出部2bではTb=Tb1+Tb2となる。したがってトルク値信号TaとTbの和、Ta+Tb=所望値、となるようにモータ駆動演算部21は演算を行う。
【0028】
さてトルク値信号TaとTbの和=ゼロとする場合は、ロール1aと被対象物30a、ロール1bと被対象物30b、それぞれ双方での摩擦力を同じにすることでバランスさせることになる。一方トルク値信号TaとTbの和を所望値として上記の摩擦力差を一定に保つ場合は、被対象物30aと被対象物30bの伸縮特性の差異を吸収する際に用いたり、意図的にカールさせた加工物を作り出したり、間欠的に摩擦力差を生じさせて剥離した部分を意図的に作ったりする際等に使用される。
【0029】
ゆえに、被対象物30aと被対象物30bがプレスされる時、双方が搬送される速度の誤差によって生じるずれを極めて抑制できることから、プレス品質の向上を図ることができ、皺や剥がれなどの不良を低減することが可能となる。
【0030】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の活用例として、プリント配線板の基材と銅箔やカバーフィルムのラミネート、液晶パネル用ガラス基板等の基板表面へのカラーフィルタの貼り付け、電池のセパレータと電極のラミネート、異種金属のクラッド製造及び金属圧延等を行う各種ロールプレス装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1a、1b :ロール
2a、2b :トルク検出部
3a、3b :モータ部
4a、4b :ヒーター
5a、5b :温度検出部
6a、6b :モータドライバ
7a、7b :コントローラ
8 :加圧装置
9 :コントローラ
10a、10b :回転位置検出部
20 :制御部
21 :モータ駆動演算部
30a、30b :被対象物
30c :加工物

図1
図2