特許第6899559号(P6899559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6899559非接触表面電位測定装置、測定治具、及び非接触表面電位測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899559
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】非接触表面電位測定装置、測定治具、及び非接触表面電位測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/12 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   G01R29/12 G
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-61786(P2017-61786)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-163121(P2018-163121A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】品川 満
(72)【発明者】
【氏名】勝山 純
(72)【発明者】
【氏名】松本 憲典
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−032782(JP,A)
【文献】 特開2003−215186(JP,A)
【文献】 特開2007−47015(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/046587(WO,A1)
【文献】 特開2008−96129(JP,A)
【文献】 特開平11−211771(JP,A)
【文献】 特開2003−307534(JP,A)
【文献】 特開2009−2839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象であるN(1以上の整数)個の電圧発生源の表面電位を非接触で測定する非接触表面電位測定装置であって、
前記電圧発生源の電界強度を測定する電界強度測定部と、
各電圧発生源が発生する各電界強度を、前記各電圧発生源の表面電位に変換する変換係数群を記憶する記憶部と、
前記変換係数群を用いて、前記電界強度測定部で測定された前記測定対象の電界強度を、前記表面電位に変換する変換部と、
を備える非接触表面電位測定装置。
【請求項2】
前記電界強度測定部を各電圧発生源の上方の所定位置に移動可能な第1移動部をさらに備え、
前記電界強度測定部は、前記第1移動部により前記表面電位を測定する電圧発生源の上方の所定位置に移動させられた後に、当該電圧発生源の電界強度を測定する請求項1に記載の非接触表面電位測定装置。
【請求項3】
前記第1移動部は、
前記電圧発生源と前記電界強度測定部との間の鉛直方向の距離を一定に保ちながら前記電界強度測定部の水平方向の移動をガイドするガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って前記電界強度測定部を水平方向に移動させる駆動部と、
を備える請求項2に記載の非接触表面電位測定装置。
【請求項4】
前記第1移動部を鉛直方向に昇降させることで、前記電界強度測定部と前記電圧発生源との間の鉛直方向の距離を変更可能な第2移動部と、
前記電圧発生源と当該電圧発生源の上方の所定位置に配置された前記電界強度測定部との間の鉛直方向の距離を測定する距離測定部と、
を備え、
前記電界強度測定部は、前記第1移動部により前記表面電位を測定する電圧発生源の上方の所定位置に移動させられ、且つ前記第2移動部により当該電圧発生源との間の鉛直方向の距離が調整された後に、当該電圧発生源の電界強度を測定し、
前記距離測定部は、前記電界強度測定部が前記電界強度を測定した場合に、前記鉛直方向の距離を測定し、
前記変換部は、前記距離測定部で測定された距離に応じた変換係数群を前記記憶部から読み出し、読み出した変換係数群を用いて、前記電界強度測定部で測定された前記電界強度を、前記表面電位に変換する請求項3に記載の非接触表面電位測定装置。
【請求項5】
前記電圧発生源の位置と同一の位置に配置された1からi(i=1,…,N)番目の各電極に、N個の電圧ケースj(j=1,…,N)の電圧を印加させる電圧制御部と、
前記変換係数群を算出する変換係数算出部と、
を備え、
前記電界強度測定部は、i番目の前記電極の上方の所定位置に配置され、前記電圧ケースjにおけるi番目の前記電極の前記電界強度Eijを測定し、
前記変換係数算出部は、前記電圧Vijを各要素としたN行N列の行列である表面電位行列と、前記電界強度Eijを各要素としたN行N列の行列である電界強度行列と、に基づいて、前記変換係数群として変換係数の逆行列を算出する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触表面電位測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の非接触表面電位測定装置における前記変換係数群を算出するための測定治具であって、
前記電圧発生源の位置と同一の位置に配置される電極と、
前記電圧制御部の制御により、N個の電圧ケースj(j=1,…,N)の電圧を各電極に印加可能な電圧発生装置と、
を備える測定治具。
【請求項7】
測定対象であるN(1以上の整数)個の電圧発生源の表面電位を非接触で測定する非接触表面電位測定方法であって、
前記電圧発生源の電界強度を電界強度測定部によって測定する電界強度測定ステップと、
各電圧発生源が発生する各電界強度を、前記各電圧発生源の表面電位に変換する変換係数群を用いて、前記電界強度測定ステップで測定された前記測定対象の電界強度を、前記表面電位に変換する変換ステップと、
を含む非接触表面電位測定方法。
【請求項8】
前記電界強度測定ステップで前記電界強度が測定された場合に、前記電圧発生源と当該電圧発生源の上方の所定位置に配置された前記電界強度測定部との間の鉛直方向の距離を測定する距離測定ステップを更に含み、
前記変換ステップでは、前記距離測定ステップで測定された距離に応じた変換係数群用いて、前記電界強度測定ステップで測定された前記電界強度を、前記表面電位に変換する、請求項7に記載の非接触表面電位測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触表面電位測定装置、測定治具及び非接触表面電位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象である電圧発生源(以下、「測定対象物」という。)の表面電位を非接触で測定する非接触表面電位測定装置が知られている。この非接触表面電位測定装置は、測定対象物からの電界強度を測定し、この測定した電界強度に基づいて、当該測定対象物の表面電位を計測する。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−089391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、測定対象物の周囲に別の電圧発生源が配置されている場合がある。この場合には、測定対象物の電界強度を測定したとしても、その測定値は、周囲にある電圧発生源からの電界の影響を受けてしまう。そのため、測定対象物の周囲に別の電圧発生源が配置されている場合には、測定対象物の表面電位を正確に計測することができない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、測定対象物の周囲に別の電圧発生源が配置されている場合に、測定対象物の表面電位を正確に測定することができる非接触表面電位測定装置、測定治具及び非接触表面電位測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、測定対象であるN(1以上の整数)個の電圧発生源の表面電位を非接触で測定する非接触表面電位測定装置であって、前記電圧発生源の電界強度を測定する電界強度測定部と、各電圧発生源が発生する各電界強度を、前記各電圧発生源の表面電位に変換する変換係数群を記憶する記憶部と、前記変換係数群を用いて、前記電界強度測定部で測定された前記測定対象の電界強度を、前記表面電位に変換する変換部と、を備える非接触表面電位測定装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上述の非接触表面電位測定装置であって、前記電界強度測定部を各電圧発生源の上方の所定位置に移動可能な第1移動部をさらに備え、前記電界強度測定部は、前記第1移動部により前記表面電位を測定する電圧発生源の上方の所定位置に移動させられた後に、当該電圧発生源の電界強度を測定する。
【0008】
本発明の一態様は、上述の非接触表面電位測定装置であって、前記第1移動部は、前記電圧発生源と前記電界強度測定部との間の鉛直方向の距離を一定に保ちながら前記電界強度測定部の水平方向の移動をガイドするガイドレールと、前記ガイドレールに沿って前記電界強度測定部を水平方向に移動させる駆動部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様は、上述の非接触表面電位測定装置であって、前記第1移動部を鉛直方向に昇降させることで、前記電界強度測定部と前記電圧発生源との間の鉛直方向の距離を変更可能な第2移動部と、前記電圧発生源と当該電圧発生源の上方の所定位置に配置された前記電界強度測定部との間の鉛直方向の距離を測定する距離測定部と、を備え、前記電界強度測定部は、前記第1移動部により前記表面電位を測定する電圧発生源の上方の所定位置に移動させられ、且つ前記第2移動部により当該電圧発生源との間の鉛直方向の距離が調整された後に、当該電圧発生源の電界強度を測定し、前記距離測定部は、前記電界強度測定部が前記電界強度を測定した場合に、前記鉛直方向の距離を測定し、前記変換部は、前記距離測定部で測定された距離に応じた変換係数群を前記記憶部から読み出し、読み出した変換係数群を用いて、前記電界強度測定部で測定された前記電界強度を、前記表面電位に変換する。
【0010】
本発明の一態様は、上述の非接触表面電位測定装置であって、前記電圧発生源の位置と同一の位置に配置された1からi(i=1,…,N)番目の各電極に、N個の電圧ケースj(j=1,…,N)の電圧を印加させる電圧制御部と、前記変換係数群を算出する変換係数算出部と、を備え、前記電界強度測定部は、i番目の前記電極の上方の所定位置に配置され、前記電圧ケースjにおけるi番目の前記電極の前記電界強度Eijを測定し、前記変換係数算出部は、前記電圧Vijを各要素としたN行N列の行列である表面電位行列と、前記電界強度Eijを各要素としたN行N列の行列である電界強度行列と、に基づいて、前記変換係数群として前記変換係数の逆行列を算出する。
【0011】
本発明の一態様は、上述の変換係数群を算出するための測定治具であって、前記電圧発生源の位置と同一の位置に配置される電極と、前記電圧制御部の制御により、N個の電圧ケースj(j=1,…,N)の電圧を各電極に印加可能な電圧発生装置と、を備える測定治具である。
【0012】
本発明の一態様は、測定対象であるN(1以上の整数)個の電圧発生源の表面電位を非接触で測定する非接触表面電位測定方法であって、前記電圧発生源の電界強度を測定する電界強度測定ステップと、各電圧発生源が発生する各電界強度を、前記各電圧発生源の表面電位に変換する変換係数群を用いて、前記電界強度測定部で測定された前記測定対象の電界強度を、前記表面電位に変換する変換ステップと、を含む非接触表面電位測定方法である。
【0013】
本発明の一態様は、上述の非接触表面電位測定方法であって、前記電界強度測定部が前記電界強度を測定した場合に、前記電圧発生源と当該電圧発生源の上方の所定位置に配置された前記電界強度測定部との間の鉛直方向の距離を測定する距離測定ステップを更に含み、前記変換ステップは、距離測定ステップで測定された距離に応じた変換係数群を前記記憶部から読み出し、読み出した変換係数群を用いて、前記電界強度測定部で測定された前記電界強度を、前記表面電位に変換する、非接触表面電位測定方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、測定対象物の周囲に別の電圧発生源が配置されている場合に、測定対象物の表面電位を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1の概略構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る、単一の電圧発生源100に対する表面電位を測定する様子を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る電圧発生源100−1〜100−3に対する表面電位を測定する様子を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る電界強度Eの重ね合わせの原理を説明する図である。
図5】第1の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1の校正計測を行う様子を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る処理部13の概略構成の一例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る変換係数群の算出方法を説明する図である。
図8】第1の実施形態に係る校正ステップの流れを説明する図である。
図9】第1の実施形態に係る本計測・計算ステップの流れを説明する図である。
図10】第2の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1Aの概略構成の一例を示す図である。
図11】第2の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1Aの校正計測を行う様子を示す図である。
図12】第2の実施形態に係る処理部13Aの概略構成の一例を示す図である。
図13】第2の実施形態に係る校正ステップの流れを説明する図である。
図14】第2の実施形態に係る本計測・計算ステップの流れを説明する図である。
図15】処理部13,13Aをコンピュータ等の電子情報処理装置で構成した場合のハードウェア構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。また、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0017】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」、「有する」や「備える」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る非接触表面電位測定装置、測定治具、及び非接触表面電位測定方法を、図面を用いて説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1の概略構成の一例を示す図である。
【0020】
非接触表面電位測定装置1は、測定対象であるN(1以上の整数)個の電圧発生源100−1〜100−N(以下、電圧発生源100と総称する)の各表面電位を非接触で測定する。この電圧発生源100は、例えば、太陽電池の電極パターンなどである。
【0021】
この電圧発生源100−1〜100−Nは、基板200の上に載置されている。本実施形態では、電圧発生源100−1〜100−Nが基板200の長手方向に規則的に載置されている。
【0022】
非接触表面電位測定装置1は、電界強度測定部10、距離測定部11、第1移動部12、及び処理部13を備える。
【0023】
電界強度測定部10は、電圧発生源100から所定距離だけ離れた位置に配置されている。電界強度測定部10は、電圧発生源100の電界強度を非接触で測定する。電界強度測定部10は、測定した電界強度を処理部13に出力する。
【0024】
距離測定部11は、電圧発生源100と電界強度測定部10との間の鉛直方向の距離(以下、「測定距離」という。)hを測定する。距離測定部11は、測定した測定距離を処理部13に出力する。
【0025】
第1移動部12は、電界強度測定部10を各電圧発生源100の直上に移動可能な構成を備える。第1移動部12は、処理部13からの移動信号に基づいて、各電圧発生源100の直上に電界強度測定部10を移動させる。なお、本実施形態では、距離測定部11と電界強度測定部10とは、一体に構成されている。ただし、本発明はこれに限定されず、第1移動部12は、電界強度測定部10を各電圧発生源100の上方の所定位置に移動させてもよい。すなわち、第1移動部12は、電界強度測定部10を各電圧発生源100の直上に移動させなくてもよい。
【0026】
第1移動部12は、ガイドレール121及び駆動部122を備える。
ガイドレール121は、電圧発生源100と電界強度測定部10との間の鉛直方向の距離を一定に保ちながら、基板200の長手方向(以下、単に「長手方向」という。)への電界強度測定部10の移動をガイドする。
駆動部122は、処理部13からの移動信号に基づいて、ガイドレール121に沿って電界強度測定部10を長手方向に移動させる。例えば、駆動部122は、電界強度測定部10をガイドレール121に沿って移動させるモータである。
【0027】
処理部13は、第1移動部12に移動信号を出力することで、電界強度測定部10を、各電圧発生源100−1〜100−Nの直上に移動させる。
処理部13は、電界強度測定部10が測定したN個の電界強度から変換係数群を用いて、各電圧発生源100−1〜100−Nの電界強度を、各電圧発生源100−1〜100−Nの表面電位に変換する。
【0028】
ここで、第1の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1の電圧発生源100−1〜100−Nの表面電位の計測方法(以下、「本計測」という。)について説明する。なお、説明が煩雑になることを防ぐことを目的として、Nが3の場合について説明する。
【0029】
処理部13は、第1移動部12に移動信号を出力することで、電界強度測定部10を電圧発生源100−1の直上に移動させる。電界強度測定部10が電圧発生源100−1の直上に移動すると、当該電界強度測定部10は、電圧発生源100−1の電界強度を測定する。ただし、この測定された電界強度は、電圧発生源100−1の直上の位置において測定される電圧発生源100−1、電圧発生源100−2、及び電圧発生源100−3の電界強度を含んだ値である。
【0030】
次に、処理部13は、第1移動部12に移動信号を出力することで、電界強度測定部10を電圧発生源100−2の直上に移動させる。電界強度測定部10が電圧発生源100−2の直上に移動すると、当該電界強度測定部10は、電圧発生源100−2の電界強度を測定する。ただし、この測定された電界強度は、電圧発生源100−2の直上の位置において測定される電圧発生源100−1、電圧発生源100−2、及び電圧発生源100−3の電界強度を含んだ値である。
【0031】
最後に、処理部13は、第1移動部12に移動信号を出力することで、電界強度測定部10を電圧発生源100−3の直上に移動させる。電界強度測定部10が電圧発生源100−3の直上に移動すると、当該電界強度測定部10は、電圧発生源100−3の電界強度を測定する。ただし、この測定された電界強度は、電圧発生源100−3の直上の位置において測定される電圧発生源100−1、電圧発生源100−2、及び電圧発生源100−3の電界強度を含んだ値である。
【0032】
処理部13は、電界強度測定部10が測定した3つの電界強度を取得する。そして、処理部13は、その3つの電界強度のそれぞれを、変換係数群を用いて表面電位に変換する。これにより、処理部13は、電圧発生源100−1、電圧発生源100−2、及び電圧発生源100−3のそれぞれの表面電位を求めることができる。
【0033】
ここで、第1の実施形態に係る変換係数群について、図面を用いて説明する。この変換係数群は、各電圧発生源100が発生する電界強度を、各電圧発生源100の表面電位に変換する変換係数の集合体である。以下に、変換係数について説明する。
【0034】
図2は、単一の電圧発生源100に対する表面電位を測定する様子を示す図である。図2に示す例では、基板200には、単一の電圧発生源100しか載置されていないため、電界強度測定部10は、周囲電界の影響を受けずに電圧発生源100の電界強度を測定することができる。ここで、電圧発生源100の表面電位が表面電位Vである場合に、電界強度測定部10において、電界強度Eが得られたとする。
【0035】
この場合に、表面電位Vと電界強度Eとは、線形の関係にある。そのため、表面電位Vと電界強度Eとの関係は、変換係数kを用いた、以下に示す式で表すことができる。
【0036】
【数1】
【0037】
ここで、表面電位Vは、大きさのみを持つ量である、すなわちスカラーである。一方、電界強度Eは、大きさと向きとを持った量である、いわゆるベクトルである。ただし、本実施形態では、電界強度Eを特定方向の成分のスカラーのみに限定して説明する。
【0038】
この変換係数kは、電界強度測定部10と電圧発生源100との間の距離、電界強度測定部10と電圧発生源100との相対位置、電圧発生源100の形状に依存する。したがって、電界強度測定部10と電圧発生源100とのそれぞれの位置及び電圧発生源100の形状が予め既知であれば、変換係数kを求めることができる。そして、変換係数kを予め求めておけば、処理部13は、電界強度測定部10が測定する電界強度Eを表面電位Vに換算することができる。
【0039】
次に、複数の電圧発生源100が基板200に載置されている場合について、説明する。図3は、電圧発生源100−1〜100−3に対する表面電位を測定する様子を示す図である。図3に示す例では、電界強度測定部10は、電圧発生源100−1の表面電位を測定するために、電圧発生源100−1の直上に配置される。
【0040】
ここで、図3に示すように、電圧発生源100−1は、表面電位がVである場合に、電界強度測定部10の位置に対して、電界強度Eを発生させる。電圧発生源100−2は、表面電位がVである場合に、電界強度測定部10の位置に対して、電界強度Eを発生させる。電圧発生源100−3は、表面電位がVである場合に、電界強度測定部10の位置に対して、電界強度Eを発生させる。このとき、電界強度測定部10で測定される電界強度Eは、表面電位を測定したい電圧発生源100−1からの電界強度Eだけではなく、電界強度E及び電界強度Eの影響を受ける。
【0041】
この場合において、図4に示すように、電界強度測定部10で測定される電界強度Eは、重ね合わせの原理により以下の式で表すことができる。
【0042】
【数2】
【0043】
この式(2)は、式(1)の関係式を用いると、以下に示す式に変形できる。
【0044】
【数3】
【0045】
ここで、変換係数kは、表面電位Vである電圧発生源100−1から発生する電界強度を電圧発生源100−1の直上にある電界強度測定部10が測定する際の変換係数である。変換係数kは、表面電位Vである電圧発生源100−2から発生する電界強度を電圧発生源100−1の直上にある電界強度測定部10が測定する際の変換係数である。変換係数kは、表面電位Vである電圧発生源100−3から発生する電界強度を電圧発生源100−1の直上にある電界強度測定部10が測定する際の変換係数である。
【0046】
したがって、変換係数k,k2,を予め求めておけば、処理部13は、電界強度測定部10が測定する電界強度Eを、電圧発生源100−1〜100−3のそれぞれの表面電位V,V,Vに換算することができる。この変換係数k,k2,は、上述の変換係数群に相当する。
【0047】
そこで、第1の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1の特徴の一つは、複数の電圧発生源100−1〜100−Nの表面電位を計測する本計測の前に、予め変換係数群を計測する校正計測を行い、本計測の場合にその校正計測で得られた変換係数群を用いることで、複数の電圧発生源100−1〜100−Nの表面電位を算出することである。
【0048】
以下に、第1の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1の校正計測について、図面を用いて、具体的に説明する。
【0049】
図5は、非接触表面電位測定装置1の校正計測を行う様子を示す図である。
図5に示すように、非接触表面電位測定装置1は、校正計測を行う場合には、測定治具2を用いる必要がある。すなわち、測定治具2は、変換係数群を算出するための測定治具である。
【0050】
測定治具は、N個の電極300−1〜300−N(以下、電極300と総称する)、及びN個の電圧発生装置400−1〜400−N(以下、電圧発生装置400と総称する)を備える。
【0051】
電極300−1〜300−Nは、本計測における測定対象である電圧発生源100−1〜100−Nの位置と同一の位置にそれぞれ配置される。この電極300−1〜300−Nの形状は、電圧発生源100−1〜100−Nのそれぞれと略同一である。
【0052】
電圧発生装置400は、電極300ごとに設けられている。すなわち、N個の電極300−1〜300−Nには、電圧発生装置400−1〜400−Nが接続されている。
電圧発生装置400−1〜400−Nは、処理部13の制御により、N個の電圧ケースj(j=1,…,N)の電圧を各電極300−1〜300−Nに印加可能である。ただし、電圧発生装置400は、必ずしもN個である必要はなく、N個の電圧ケースj(j=1,…,N)の電圧を各電極300−1〜300−Nに印加可能であれば1つでもよい。すなわち、本発明の電圧発生装置400は、個数に限定されない。
【0053】
次に、第1の実施形態に係る処理部13について、図面を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係る処理部13の概略構成の一例を示す図である。
図6に示すように、処理部13は、取得部131、移動制御部132、電圧制御部133、制御部134及び記憶部135を備える。
【0054】
取得部131は、電界強度測定部10及び距離測定部11にそれぞれ接続されている。取得部131は、電界強度測定部10が測定した電界強度を取得する。取得部131は、距離測定部11が測定した測定距離hを取得する。取得部131は、取得した電界強度及び測定距離hを制御部134に出力する。
【0055】
移動制御部132は、第1移動部12の駆動を制御する。すなわち、移動制御部132は、ガイドレール121を移動する電界強度測定部10の移動量を制御する。
例えば、移動制御部132は、制御部134からの駆動信号に基づいて、第1移動部12を駆動させることで、電界強度測定部10を所定の位置に移動させる。
なお、この駆動信号は、電界強度測定部10を移動させる位置情報を含む。したがって、第1移動部12は、駆動信号に含まれる位置情報に基づいて、電界強度測定部10を所定の位置に移動させる。例えば、この所定の位置とは、各電極300(又は電圧発生源100)の直上の位置である。
【0056】
電圧制御部133は、各電圧発生装置400に電気的に接続されている。電圧制御部133は、各電圧発生装置400が電極300に印加する電圧を制御する。例えば、電圧制御部133は、各電圧発生源100の位置と同一の位置に配置された1からi(i=1,…,N)番目の各電極300に、N個の電圧ケースj(j=1,…,N)の電圧を印加させる。なお、電極300に印加する電圧は、電極300の表面電位に相当する。そして、各電極300に印加するN個の電圧ケースj(j=1,…,N)の電圧は、予め記憶部135に設定されており既知である。
【0057】
制御部134は、駆動制御部136、変換係数算出部137、及び変換部138を備える。
【0058】
駆動制御部136は、移動制御部132及び電圧制御部133の駆動を制御する。例えば、駆動制御部136は、移動制御部132に第1駆動指令信号を出力する。これにより、移動制御部132は、この第1駆動指令信号に基づいて、第1移動部12を駆動する。駆動制御部136は、電圧制御部133に第2駆動指令信号を出力する。これにより、電圧制御部133は、この第2駆動指令信号に基づいて、各電極300に所定の電圧を発生させる。
【0059】
変換係数算出部137は、校正計測により取得部131が取得した電界強度に基づいて、変換係数群を算出する。そして、変換係数算出部137は、算出した変換係数群を記憶部135に格納する。
【0060】
変換部138は、校正計測後の本計測により取得部131が取得した電界強度を、記憶部135に格納されている変換係数群を用いて、電圧発生源100の表面電位の値に変換する。
【0061】
以下に、第1の実施形態に係る変換係数群の算出方法について、図面を用いて説明する。図7は、第1の実施形態に係る変換係数群の算出方法を説明する図である。なお、説明が煩雑になることを防ぐことを目的として、Nが3の場合について説明する。
【0062】
図7に示すように、電圧制御部133は、電極300の数と同数の電圧ケースの電圧を各電極300に印加させる。本実施形態では、一例としてNが3である場合について説明する。したがって、電圧制御部133は、電圧ケース1から電圧ケース3の3つの電圧ケースの電圧を、電極300−1〜電極300−3のそれぞれに印加する。そして、電界強度測定部10は、各電極300−1〜電極300−3の直上において、3つの電圧ケースの電圧により発生した電界強度を測定する。
【0063】
ここで、電圧ケースjは、(V1j,V2j,V3j)で表される。電圧V1jは、電極300−1(i=1番目)に印加される電圧を示す。電圧V2jは、電極300−2(i=2番目)に印加される電圧を示す。電圧V3jは、電極300−3(i=3番目)に印加される電圧を示す。そして、Nが3である場合には、jが1から3となる。そのため、電圧ケース1=(V11,V21,V31),電圧ケース2=(V12,V22,V32),電圧ケース3=(V13,V23,V33)となる。
【0064】
電界強度測定部10は、各電圧ケースにおいて、各電極300−1〜電極300−3の直上で電界強度を測定する。ここで、電界強度測定部10が電極300−1の直上で測定する電界強度を電界強度E1jとした場合に、電圧ケース1〜3において電極300−1の直上で測定する電界強度は、以下の式で表される。
【0065】
【数4】
【0066】
なお、電界強度E11は、電極300−1の直上における電圧ケース1の電界強度である。電界強度E12は、電極300−1の直上における電圧ケース2の電界強度である。電界強度E13は、電極300−1の直上における電圧ケース3の電界強度である。
【0067】
また、変換係数k11は、電極300−1から発生する電界強度を電極300−1の直上に配置される電界強度測定部10が測定する場合の変換係数である。変換係数k12は、電極300−2から発生する電界強度を電極300−1の直上に配置される電界強度測定部10が測定する場合の変換係数である。変換係数k13は、電極300−3から発生する電界強度を電極300−1の直上に配置される電界強度測定部10が測定する場合の変換係数である。
【0068】
このように、変換係数算出部137は、電圧ケース1〜3の各電圧ケースにおいて、電極300−1の直上での電界強度を得ることで、式(4)に示すように、3つの連立方法式を作ることができる。したがって、式(4)と同様に、電圧ケース1〜3の各電圧ケースにおいて、電極300−2の直上と、電極300−2の直上とのそれぞれで電界強度を測定すると、変換係数算出部137は、合計で9つの連立方程式を生成することができる。この9つの連立方程式は、行列の形式で以下の式で表すことができる。
【0069】
【数5】
【0070】
ここで、電界強度Eijは、電圧ケースjである場合において、i番目の電極300の直上に配置される電界強度測定部10が測定する電界強度である。変換係数kijは、j番目の電極300から発生する電界を、i番目の電極300の直上に配置される電界強度測定部10が測定する際の変換係数である。表面電位Vijは、電圧ケースjである場合における、i番目の電極300の表面電位である。
【0071】
したがって、式(5)は、以下の式に変形することができる。
【0072】
【数6】
【0073】
なお、Ecalは、電界強度Eijの行列であって、電界強度行列という。Vcalは、表面電位Vijの行列であって、表面電位行列という。kcalは、変換係数kijの行列であって、変換行列という。
【0074】
ここで、電界強度行列Ecalは、校正計測によって測定される。表面電位行列Vcalは予め記憶部135に格納されており既知である。したがって、変換係数算出部137は、式(6)を用いて、変換行列kcalを算出することができる。この変換行列kcalは、電極300の形状によって一意に決まるため、どんな表面電位の組み合わせであろうと、電極形状が変わらなければ不変である。変換係数算出部137は、算出した変換行列kcalの逆行列k-1calを変換係数群として記憶部135に格納する。なお、変換係数算出部137は、算出した変換行列kcalを変換係数群として記憶部135に格納してもよい。
【0075】
そして、逆行列k-1calが記憶部135に格納された段階で、本計測が可能となる。すなわち、逆行列k-1calが記憶部135に格納された段階で、隣り合う複数の電圧発生源100からの周囲電界の影響がある中での、一つの電圧発生源100に対する表面電位の測定が可能となる。具体的には、本計測において、電界強度測定部10は、表面電位が未知である各電圧発生源100の直上の電界強度を測定する。変換部138は、電界強度測定部10で測定された各電界強度の行列Emeasを求める。そして、変換部138は、行列Emeasに対して、記憶部135に格納されている逆行列k-1calで行列計算することで、複数の電圧発生源100の各表面電位を取得することができる。
【0076】
以下に、校正計測及び、その校正計測によって得られた電界強度行列Ecalから変換係数群を算出する方法(以下、「校正ステップ」という。)の流れについて、図8を用いて説明する。
【0077】
変換係数算出部137は、N行N列の既知の表面電位行列Vcalを決定し、記憶部135に格納する(ステップS101)。なお、このN行N列の既知の表面電位行列Vcalの決定は、ユーザが行ってよい。
【0078】
非接触表面電位測定装置1は、j=1からNまで、ステップS103からステップS106までの処理を繰り返す(ステップS102)。
【0079】
具体的には、まず、非接触表面電位測定装置1は、jを1として、i番目の電圧発生装置400に電圧Vi1を発生させる(ステップS103)。
次に、非接触表面電位測定装置1は、i番目の電極300の直上に電界強度測定部10を移動させ(ステップS105)、電界強度測定部10により電界強度Ei1を取得する(ステップS106)、測定工程をi=1からNまで繰り返す(ステップS104)。
【0080】
非接触表面電位測定装置1は、jが1である場合に、i=1からNまでの電界強度Ei1の測定を終了すると、jを2として、電界強度Ei2の測定をi=1からNまで繰り返す。
このように、非接触表面電位測定装置1は、i=1からNまで繰り返す電界強度Eijの測定を、jが1からNまで繰り返す。これにより、変換係数算出部137は、電界強度Eijの行列であるN行N列の電界強度行列Eijを取得する。
【0081】
変換係数算出部137は、記憶部135に格納されているN行N列の既知の表面電位行列Vcalの逆行列V−1calを算出する(ステップS109)。
【0082】
変換係数算出部137は、式(6)により、電界強度行列Eijに対して逆行列V−1calを乗算することで、N行N列の変換行列kijを算出する(ステップS110)。そして、変換係数算出部137は、変換行列kcalの逆行列k-1calを算出し(ステップS111)、その算出した逆行列k-1calを変換係数群として記憶部135に格納する。
【0083】
以下に、第1の実施形態に係る本計測の計測方法と、その本計測により測定された電界強度から電圧発生源100の表面電位を計算する計算方法との流れについて、図9を用いて説明する。なお、本計測の計測方法と上記計算方法とを総称して「本計測・計算ステップ」という。
【0084】
非接触表面電位測定装置1は、i=1からNまで、ステップS202及びステップS203の処理を繰り返す(ステップS201)。
【0085】
具体的には、非接触表面電位測定装置1は、i番目の電圧発生源100の直上に電界強度測定部10を移動させ(ステップS202)、電界強度測定部10により電界強度Eを取得する(ステップS203)、測定工程をi=1からNまで繰り返す。これにより、変換部138は、電界強度測定部10により得られたi番目の電圧発生源100の電界強度Eを各要素としてN行1列の行列Emeasを取得する。そして、非接触表面電位測定装置1は、この行列Emeasに対して、校正ステップで求めた変換係数群である逆行列k-1calを乗算することで、i番目の電圧発生源100に発生する表面電位Vを各要素としたN行1列の行列Vmeasを算出する(ステップS205)。
【0086】
このように、非接触表面電位測定装置1は、周囲の電界の影響によって正確な値が得られなかった測定対象の表面電位を、校正ステップで求めた変換行列と本計測で測定した電界強度との計算によって換算することにより、周囲電界の影響を補正して測定対象の正確な表面電位を得ることが可能となる。
【0087】
上述したように、第1の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1は、N個の電圧発生源100の電界強度を測定する電界強度測定部10と、各電圧発生源100が発生する電界強度を、各電圧発生源100の表面電位に変換する変換係数群を記憶する記憶部135と、その変換係数群を用いて、電界強度測定部10で測定された測定対象の電界強度を、表面電位に変換する変換部138と、を備える。これにより、非接触表面電位測定装置1は、測定対象物の周囲に別の電圧発生源が配置されている場合でも、測定対象物の表面電位を正確に測定することができる。
【0088】
また、第1の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1は、電界強度測定部10を各電圧発生源100の直上に移動可能な第1移動部12をさらに備える。そして、電界強度測定部10は、第1移動部12により表面電位を測定する電圧発生源100の直上に移動させられた後に、当該電圧発生源100の電界強度を測定する。
【0089】
ここで、この第1移動部12は、電圧発生源100と電界強度測定部10との間の鉛直方向の距離を一定に保ちながら電界強度測定部10の水平方向の移動をガイドするガイドレール121と、ガイドレール121に沿って電界強度測定部10を水平方向に移動させる駆動部122と、を備える。これにより、ユーザが電界強度測定部10を移動させる手間を省くことができる。
【0090】
また、電界強度測定部10は、ガイドレール121に沿って移動するため、電圧発生源100との鉛直方向の距離が一定である。したがって、距離測定部11の測定が不要となる。
【0091】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1Aの概略構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1Aは、第1の実施形態と比較して、電圧発生源100と電界強度測定部10との間の鉛直方向の距離である測定距離hに応じた変換関数群を用いる点が異なる。
以下、第2の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1Aについて、説明する。
【0092】
図10に示すように、非接触表面電位測定装置1Aは、電界強度測定部10、距離測定部11、第1移動部12、第2移動部14及び処理部13Aを備える。
【0093】
第2移動部14は、第1移動部12を鉛直方向に昇降させることで、一体に構成された電界強度測定部10及び距離測定部11と、電圧発生源100との間の鉛直方向の測定距離hを変更する。
【0094】
処理部13Aは、処理部13の機能を備える。また、処理部13Aは、第2移動部14に移動信号を出力することで、第2移動部14で変更可能な測定距離hを制御する。
【0095】
また、処理部13Aは、校正ステップにおいて測定距離hをパラメータとした変換係数群を算出する。そして、処理部13Aは、本計測・計算ステップにおいて、距離測定部11が測定した測定距離hに応じた変換係数群を用いて、電界強度測定部10で測定された各電圧発生源100の電界強度を、表面電位に変換する。
【0096】
以下に、第2の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1Aの校正計測について、図面を用いて、具体的に説明する。
図11は、非接触表面電位測定装置1Aの校正計測を行う様子を示す図である。
図11に示すように、非接触表面電位測定装置1Aは、校正計測を行う場合に、測定治具2を用いる必要がある。すなわち、測定治具2は、第2の実施形態に係る変換係数群を算出するための測定治具でもある。
【0097】
以下に、第2の実施形態に係る処理部13Aの概略構成について、図面を用いて説明する。図12は、第2の実施形態に係る処理部13Aの概略構成の一例を示す図である。
図12に示すように、処理部13Aは、取得部131、移動制御部132A、電圧制御部133、制御部134A及び記憶部135Aを備える。
【0098】
移動制御部132Aは、第1移動部12の駆動を制御する。すなわち、移動制御部132Aは、ガイドレール121を移動する電界強度測定部10の移動量を制御する。また、移動制御部132Aは、第2移動部14の駆動を制御する。すなわち、移動制御部132Aは、電界強度測定部10における鉛直方向の移動量を制御する。
【0099】
制御部134Aは、駆動制御部136A、変換係数算出部137A、及び変換部138Aを備える。
【0100】
駆動制御部136Aは、移動制御部132A及び電圧制御部133の駆動を制御する。例えば、駆動制御部136Aは、移動制御部132Aに第1駆動指令信号を出力する。これにより、移動制御部132Aは、この第1駆動指令信号に基づいて、第1移動部12を駆動する。駆動制御部136Aは、移動制御部132Aに第3駆動指令信号を出力する。これにより、移動制御部132Aは、この第3駆動指令信号に基づいて、第2移動部14を駆動する。駆動制御部136Aは、電圧制御部133に第2駆動指令信号を出力する。これにより、電圧制御部133は、この第2駆動指令信号に基づいて、各電極300に所定の電圧を発生させる。
【0101】
変換係数算出部137Aは、校正計測により取得部131が取得した電界強度及び測定距離hに基づいて、変換係数群を算出する。そして、変換係数算出部137Aは、算出した変換係数群を記憶部135に格納する。この変換係数群は、測定距離hをパラメータとした変換係数の集合体である。
【0102】
ここで、第2の実施形態に係る変換係数群について、説明する。
第1の実施形態に係る変換行列kcalの各要素kijは、測定距離hに依存する。そのため、変換行列kcalの各要素は、測定距離hをパラメータとした関数kij(h)と表すことができる。すなわち、変換行列kcal及びその逆行列k−1calは、それぞれ測定距離hをパラメータとした関数kcal(h)及び関数k−1cal(h)と表される。第1の実施形態では、校正計測及び本計測のそれぞれの計測において、測定距離hは変化せず、且つ校正計測及び本計測の距離hは互いに同一である。そのため、第1の実施形態では、測定距離hを考慮する必要がない。一方、第2の実施形態では、本計測において、測定距離hが変化することを考慮し、校正ステップにおいて、測定距離hをパラメータとした変換係数群を求めることとしている。
【0103】
変換部138Aは、校正計測後の本計測により測定された電界強度及び測定距離hを取得する。変換部138Aは、その取得した測定距離hに応じた変換係数群を記憶部135から読み出し、読み出した変換係数群を用いて、本計測により測定された電界強度を、表面電位に変換する。
【0104】
以下に、第2の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1Aの校正ステップの流れについて、図13を用いて、説明する。
【0105】
変換係数算出部137Aは、N行N列の既知の表面電位行列Vcalを決定し、記憶部135に格納する(ステップS301)。なお、このN行N列の既知の表面電位行列Vcalの決定は、ユーザが行ってよい。
【0106】
非接触表面電位測定装置1は、n=1から3まで、ステップS303からステップS308までの処理を繰り返す(ステップS302)。
具体的には、nを1として、移動制御部132Aは、測定距離hが測定距離hになるように電界強度測定部10を移動させる(ステップ303)。非接触表面電位測定装置1は、jを1として、i番目の電圧発生装置400に電圧Vi1を発生させる(ステップS305)。次に、非接触表面電位測定装置1は、i番目の電極300の直上に電界強度測定部10を移動させ(ステップS307)、電界強度測定部10により電界強度Ei1(h)を取得する(ステップS308)、測定工程をi=1からNまで繰り返す。
【0107】
上述したように、非接触表面電位測定装置1は、nを1として、i=1からNまで繰り返す電界強度Eijの測定を、jが1からNまで繰り返す。そして、非接触表面電位測定装置1は、nを2として、i=1からNまで繰り返す電界強度Eijの測定を、jが1からNまで繰り返す。このように、非接触表面電位測定装置1は、i=1からN、且つjが1からNまでの電界強度Eij(h)の測定を、nが1から3まで繰り返す。
なお、本実施形態の非接触表面電位測定装置1は、nが1から3まで繰り返すが、本発明はこれに限定されない。
【0108】
変換係数算出部137Aは、測定距離がh,h,hに調整された場合の3つの場合において、電界強度Eij(h)の行列であるN行N列の電界強度行列E(h)を取得する。
【0109】
変換係数算出部137Aは、記憶部135に格納されているN行N列の既知の表面電位行列Vcalの逆行列V−1calを算出する(ステップS312)。
【0110】
変換係数算出部137Aは、式(6)により、電界強度行列Eij(h)に対して逆行列V−1calを乗算することで、N行N列の変換係数kij(h)を算出する(ステップS313)。すなわち、変換係数算出部137Aは、電界強度行列Eij(h)に対して逆行列V−1calを乗算することで、各要素kij(h)の変換行列kcal(h)を算出する。
【0111】
このように、測定距離hを距離h,h,hと変化させて校正のステップを行うことでkcal(h),kcal(h),kcal(h)と3つの変換行列が得られる。
変換係数算出部137Aは、得られた3つの変換行列から各要素kij(h)を、以下に示す近似式で近似する。
【0112】
【数7】
【0113】
変換係数算出部137Aは、得られた3つの変換行列から各要素kij(h)を式(7)の近似式で近似することで各係数aij,bij,cijを算出する(ステップS314)。そして、変換係数算出部137Aは、算出した各係数aij,bij,cijを記憶部135Aに格納する。
【0114】
以下に、第2の実施形態に係る本計測・計算ステップの流れについて、図14を用いて説明する。
【0115】
非接触表面電位測定装置1Aは、i=1からNまで、ステップS402からステップS404の処理を繰り返す(ステップS401)。
【0116】
具体的には、非接触表面電位測定装置1Aは、i番目の電圧発生源100の直上に電界強度測定部10を移動させ(ステップS402)、電界強度測定部10が測定した電界強度Eと(ステップS403)、距離測定部11が測定した測定距離hと(ステップS404)、を取得する、測定工程をi=1からNまで繰り返す。これにより、変換部138Aは、電界強度測定部10により得られたi番目の電圧発生源100の電界強度Eを各要素としてN行1列の行列Emeasを取得する。
【0117】
変換部138Aは、ステップS404で取得した測定距離hと、記憶部135に格納されている係数aij,bij,cijとに基づいて、本計測・計算ステップで用いる変換行列kcal(h)を決定する(ステップS406)。そして、変換部138Aは、決定した変換行列kcal(h)の逆行列k−1cal(h)を算出する(ステップS407)。
【0118】
変換部138Aは、行列Emeasに対して、変換係数群として逆行列k-1cal(h)を乗算することで、i番目の電圧発生源100に発生する表面電位Vを各要素としたN行1列の行列Vmeasを算出する(ステップS408)。
【0119】
上述したように、第2の実施形態に係る非接触表面電位測定装置1Aは、N個の電圧発生源100の電界強度を測定する電界強度測定部10と、各電圧発生源100が発生する電界強度を、各電圧発生源100の表面電位に変換する変換係数群を記憶する記憶部135Aと、その変換係数群を用いて、電界強度測定部10で測定された測定対象の電界強度を、表面電位に変換する変換部138Aと、を備える。
これにより、非接触表面電位測定装置1Aは、測定対象物の周囲に別の電圧発生源が配置されている場合でも、測定対象物の表面電位を正確に測定することができる。
【0120】
また、第2の実施形態に係る変換係数群は、測定距離hをパラメータとした変換行列として設定される。これにより、変換部138Aは、測定対象物の周囲に別の電圧発生源が配置されている場合でも、所望の測定距離hにおいて測定対象物の表面電位を正確に測定することができる。
【0121】
図15は、処理部13,13Aをコンピュータ等の電子情報処理装置で構成した場合のハードウェア構成の一例を示す。処理部13,13Aは、CPU(Central Processing Unit)周辺部と、入出力部と、レガシー入出力部とを備える。CPU周辺部は、ホスト・コントローラ801により相互に接続されるCPU802、RAM(Random Access Memory)803、グラフィック・コントローラ804、及び表示装置805を有する。入出力部は、入出力コントローラ806によりホスト・コントローラ801に接続される通信インターフェース807、ハードディスクドライブ808、及びCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ809を有する。レガシー入出力部は、入出力コントローラ806に接続されるROM(Read Only Memory)810、フレキシブルディスク・ドライブ811、及び入出力チップ812を有する。
【0122】
ホスト・コントローラ801は、RAM803と、高い転送レートでRAM803をアクセスするCPU802、及びグラフィック・コントローラ804とを接続する。CPU802は、ROM810、及びRAM803に格納されたプログラムに基づいて動作して、各部の制御をする。グラフィック・コントローラ804は、CPU802等がRAM803内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得して、表示装置805上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ804は、CPU802等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
【0123】
入出力コントローラ806は、ホスト・コントローラ801と、比較的高速な入出力装置であるハードディスクドライブ808、通信インターフェース807、CD−ROMドライブ809を接続する。ハードディスクドライブ808は、CPU802が使用するプログラム、及びデータを格納する。通信インターフェース807は、ネットワーク通信装置891に接続してプログラム又はデータを送受信する。CD−ROMドライブ809は、CD−ROM892からプログラム又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808、及び通信インターフェース807に提供する。
【0124】
入出力コントローラ806には、ROM810と、フレキシブルディスク・ドライブ811、及び入出力チップ812の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM810は、処理部13,13Aが起動時に実行するブート・プログラム、あるいは処理部13,13Aのハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ811は、フレキシブルディスク893からプログラム又はデータを読み取り、RAM803を介してハードディスクドライブ808、及び通信インターフェース807に提供する。入出力チップ812は、フレキシブルディスク・ドライブ811、あるいはパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を接続する。
【0125】
CPU802が実行するプログラムは、フレキシブルディスク893、CD−ROM892、又はIC(Integrated Circuit)カード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。記録媒体に格納されたプログラムは圧縮されていても非圧縮であってもよい。プログラムは、記録媒体からハードディスクドライブ808にインストールされ、RAM803に読み出されてCPU802により実行される。CPU802により実行されるプログラムは、処理部13を、図1から図9に関連して説明した取得部131、移動制御部132、電圧制御部133、制御部134及び記憶部135として機能させ、処理部Aを、図1から図14に関連して説明した取得部131、移動制御部132A、電圧制御部133、制御部134A及び記憶部135Aとして機能させる。
【0126】
以上に示したプログラムは、外部の記憶媒体に格納されてもよい。記憶媒体としては、フレキシブルディスク893、CD−ROM892の他に、DVD(Digital Versatile Disk)又はPD(Phase Disk)等の光学記録媒体、MD(MiniDisk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワークあるいはインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶媒体を記録媒体として使用して、ネットワークを介したプログラムとして提供してもよい。
【0127】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
【0128】
(1)上述の実施形態において、電界強度測定部10が電圧発生源100を測定する場合に、その電源発生源100の直上に移動して測定する場合について、説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、3個(N=3)の電圧発生源100の表面電位測定の場合は、3つの異なる測定位置で測定すれば、電圧発生源100の直上でなくてもよい。例えば、3個(N=3)の電圧発生源100の表面電位測定の場合は、電圧発生源100の上方であって、且つ3つの異なる位置で測定すれば、電圧発生源100の直上でなくてもよい。
【0129】
(2)第2の実施形態において、各要素kij(h)を式(7)に示す近似式で近似したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各要素kij(h)を近似する式は、電圧発生源100の数に応じて変化する。そのため、本発明では、変換係数算出部137Aは、各要素kij(h)を、ある近似式に近似して、その近似式中の各係数を求めて記憶部135Aに格納すればよい。
【0130】
(3)第2の実施形態において、変換関数群を測定距離hに応じた値に補正する補正方法として、k(h)を距離の関数として近似したが、これに限定されない。例えば、本発明では、電界強度E(h)を距離の関数として近似したのちにkを求めるようにして、変換関数群を測定距離hに応じた値に補正してもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 非接触表面電位測定装置
10 電界強度測定部
11 距離測定部
12 第1移動部
13 処理部
100 電圧発生源
121 ガイドレール
122 駆動部
131 取得部
132 移動制御部
133 電圧制御部
134 制御部
135 記憶部
136 駆動制御部
137 変換係数算出部
138 変換部
300 電極
400 電圧発生装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15