(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基の含有量が、全芳香族二価カルボン酸成分の残基に対して、50〜100モル%である請求項1または2に記載のポリアリレート樹脂。
前記一般式(1)で示される二価フェノール残基が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン残基である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
前記一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基が、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基である請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに近年では、電気電子部品および液晶ディスプレイを長時間使用すると、空気中の水分によりディスプレイ内部の電子部品が劣化し、電気信号の伝搬遅延および/または伝送損失が大きくなる問題が、より厳しくなっている。そのため、水蒸気透過度が小さく、水蒸気遮断性の高い材料が求められていた。
【0009】
また、ポリアリレートに対して、外部応力および/または内部応力等の負荷が継続的にかけられた場合、ポリアリレートがもつ粘性挙動に起因して、ポリアリレート自体が変形してしまったり、被膜または積層体として用いられているときは、剥離が発生してしまったりする課題があった。そのため、これらの変形および剥離が発生しないように、耐変形性に優れたポリアリレートが求められていた。詳しくは、粘性挙動の小さいポリアリレート、すなわち動的粘弾性測定における粘性挙動の指標となる損失弾性率(E'')が低い値を示すポリアリレートが求められていた。
【0010】
特許文献1のポリアリレート樹脂は、近年要求が高まっている非ハロゲン系有機溶媒への溶解性に限界があり、前記溶解性のさらなる向上が求められていた。また特許文献1のポリアリレート樹脂には、水蒸気遮断性および耐変形性(例えば密着性)に問題があった。
【0011】
特許文献2,3のポリアリレート樹脂には、耐熱性、機械強度および耐液垂れ性に問題があった。例えば、耐液垂れ性に劣ったポリアリレート樹脂から得られた樹脂溶液を塗付すると、液垂れが発生する場合があった。液垂れとは、基板上に塗付された直後に溶液状態となっている塗付膜が形状保持できずに変形してしまう現象である。液垂れが発生すると、塗付膜の形状および厚みが制御できなくなり、生産上の問題となった。液垂れの問題は、基板の塗布面が水平面に対して垂直にまたは傾斜して配置されている場合だけでなく、水平面に平行に配置されている場合においても生じた。特に、液垂れの問題が水平面に平行な塗布面において生じた場合、塗付された直後に溶液状態となっている塗付膜がその端部(エッジ部)でやはり形状保持できず、塗付膜の形状および厚みを制御することが困難であった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであって、耐熱性、耐摩耗性、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、水蒸気遮断性、機械強度、耐液垂れ性、および耐変形性(例えば密着性)に優れたポリアリレート樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、一般式(1)に示される二価フェノール残基と、一般式(2)に示される芳香族二価カルボン酸残基を併用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
<1>
一般式(1)で示される二価フェノール残基と、一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基を含むポリアリレート樹脂。
【化1】
(式(1)中、Xは炭素数が4〜8の直鎖状または分岐状の二価炭化水素基を表す。)
【化2】
(式(2)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1〜6の一価炭化水素基またはハロゲン原子を表し、pおよびqは、独立して、0〜4の整数を表す。)
<2>
前記一般式(1)で示される二価フェノール残基の含有量が、全二価フェノール成分の残基に対して、5〜100モル%である<1>に記載のポリアリレート樹脂。
<3>
前記一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基の含有量が、全芳香族二価カルボン酸成分の残基に対して、50〜100モル%である<1>または<2>に記載のポリアリレート樹脂。
<4>
さらに一般式(3)で示される二価フェノール残基を含む<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
【化3】
(式(3)中、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1〜6の一価炭化水素基またはハロゲン原子を表し、rおよびsは、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。)
<5>
前記一般式(1)および前記一般式(3)で示される残基のモル比率が、[一般式(1)で示される残基]/[一般式(3)で示される残基]で、20/80〜80/20である<4>に記載のポリアリレート樹脂。
<6>
前記一般式(3)で示される二価フェノール残基が、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール残基である<4>または<5>に記載のポリアリレート樹脂。
<7>
前記一般式(1)で示される二価フェノール残基が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン残基である<1>〜<6>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
<8>
前記一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基が、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸残基である<1>〜<7>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
<9>
さらに一般式(4)で示されるフタル酸残基を含む<1>〜<8>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂。
【化4】
<10>
前記一般式(4)で示されるフタル酸残基の含有量が、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、20〜50モル%である<9>に記載のポリアリレート樹脂。
<11>
<1>〜<10>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂からなるフィルム。
<12>
<1>〜<10>のいずれかに記載のポリアリレート樹脂の層を基材上に設けた積層体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐熱性、耐摩耗性、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、水蒸気遮断性、機械強度、耐液垂れ性、および耐変形性(例えば密着性)に優れたポリアリレート樹脂を提供することができる。詳しくは、本発明のポリアリレート樹脂は、優れた耐熱性、耐摩耗性、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性および機械強度を十分に維持しながらも、水蒸気遮断性、耐液垂れ性、および耐変形性(例えば密着性)に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポリアリレート樹脂は、二価フェノール残基と芳香族二価カルボン酸残基とから構成される。
【0017】
二価フェノール残基としては、一般式(1)で示される残基を含有させることが必要である。一般式(1)で示される残基を含有させない場合、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、水蒸気遮断性、耐変形性(例えば密着性)が低下するので好ましくない。また耐熱性が低下することがある。耐変形性とは、ポリアリレート樹脂自体に外部応力および/または内部応力等の負荷が継続的にかけられた場合であっても、ポリアリレート樹脂自体が変形し難い性能のことである。耐変形性は、例えば、ポリアリレート樹脂を被膜または積層体の形態で用いるときの、当該被膜または積層体の密着性(耐剥離性)も包含する。
【0019】
一般式(1)において、Xは、炭素数が4〜8、好ましくは4〜7、より好ましくは5〜7または4〜6の直鎖状または分岐状の二価炭化水素基を示す。Xの炭素数が4より小さい場合、水蒸気遮断性および/またはハロゲン系有機溶媒への溶解性が低下する場合がある。Xの炭素数が8より大きい場合、高いガラス転移温度が低下する場合がある。直鎖状とは、二価炭化水素基の2つの結合手が水素原子と結合したものと仮定したとき、得られる炭化水素化合物の化学構造式において炭素鎖が直鎖状であるという意味である。分岐状とは、二価炭化水素基の2つの結合手が水素原子と結合したものと仮定したとき、得られる炭化水素化合物の化学構造式において炭素鎖が分岐状であるという意味である。二価炭化水素基として、飽和脂肪族炭化水素基および不飽和脂肪族炭化水素基等の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。好ましいXは直鎖状または分岐状の二価脂飽和肪族炭化水素基であり、より好ましくは分岐状の二価飽和脂肪族炭化水素基である。直鎖状の二価飽和脂肪族炭化水素基の具体例として、例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、へプタメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ブチレン基、2,2−ペンチレン基、2,2−ヘキシレン基、2,2−ヘプチレン基、2,2−オクチレン基、3,3−ペンチレン基等の直鎖状アルキレン基が挙げられる。分岐状の二価飽和脂肪族炭化水素基の具体例として、例えば、3−メチル−2,2−ブチレン基、4−メチル−2,2−ペンチレン基、2−エチル−1,1−ヘキシレン基、2−メチル−1,1−プロピレン基、3−メチル−1,1−ブチレン基等の分岐状アルキレン基が挙げられる。
【0020】
一般式(1)で示される残基を与える二価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン)が挙げられる。これらの中でも、水蒸気遮断性の観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンが好ましい。
【0021】
全二価フェノール成分に対して、一般式(1)で示される残基を与える二価フェノールの含有量は通常、5〜100モル%であり、10〜100モル%であることが好ましく、10〜90モル%であることがより好ましい。耐熱性、水蒸気遮断性、および非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、機械強度、耐液垂れ性、および耐変形性(例えば密着性)のさらなる向上の観点から、一般式(1)で示される残基を与える二価フェノールの含有量は、全二価フェノール成分に対して、20〜80モル%であることが好ましく、40〜70モル%であることがより好ましく、40〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。一般式(1)で示される残基を与える二価フェノールの全二価フェノール成分に対する含有量は、一般式(1)で示される二価フェノール残基の全二価フェノール成分の残基に対する含有量のことである。耐液垂れ性とは、ポリアリレート樹脂から得られた樹脂溶液を塗付しても液垂れが発生し難い特性であり、例えば、樹脂溶液を塗布しても、塗布された樹脂溶液の粘度が低下し難い特性のことである。
【0022】
本発明においては、二価フェノール残基として、さらに一般式(3)で示される残基を含有させることが好ましい。一般式(1)で示される残基に加えて、一般式(3)で示される残基を含有させることにより、耐熱性をさらに向上させることができる。また、本発明品をコーティング剤等の塗材として使用する場合、液垂れ抑制の観点から、粘度の安定時間が長いことが求められる。そのため、全二価フェノール成分に対して、一般式(3)で示される残基を与える二価フェノールの含有量は通常、20〜80モル%であることが好ましく、30〜60モル%であることがより好ましく、35〜60モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。
【0024】
一般式(3)において、R
3およびR
4は、ベンゼン環に結合する置換基を表し、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1〜6の一価炭化水素基またはハロゲン原子を表す。一価炭化水素基に置換されていてもよいハロゲン原子およびR
3およびR
4としてのハロゲン原子は、それぞれ独立して、あらゆるハロゲン原子であってもよく、例えばフッ素原子、塩素原子または臭素原子が挙げられる。一価炭化水素基としては飽和脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基および芳香族炭化水素基が挙げられ、これらの基は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。飽和脂肪族炭化水素基として、炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基または炭素数1〜6、好ましくは1〜3のハロゲン化アルキル基が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基およびこれらのハロゲン化アルキル基が挙げられる。脂環族炭化水素基として、炭素数3〜6、好ましくは4〜6のシクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基)または炭素数3〜6、好ましくは4〜6のハロゲン化シクロアルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素基として、フェニル基またはハロゲン化フェニル基が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手し易いことおよび合成し易いことから、飽和脂肪族炭化水素基(特にメチル基、エチル基)、芳香族炭化水素基(特にフェニル基)、および脂環族炭化水素基(特にシクロヘキシル基)が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基(特にメチル基)がより好ましい。
【0025】
一般式(3)において、rおよびsは、ベンゼン環に結合する置換基の数を表し、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。rおよびsが0の場合、ベンゼン環に結合するすべての水素原子がR
3およびR
4に置換されていないことを表す。rが2〜4の場合、複数のR
3は、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。sが2〜4の場合、複数のR
4は、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。非ハロゲン系溶媒への溶解性に優れることから、rおよびsはそれぞれ独立して1〜4、特に1〜3の整数であることが好ましい。
【0026】
一般式(3)で示される残基を与える二価フェノールとしては、例えば、4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビフェノールが挙げられる。中でも、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性の観点から、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールが好ましい。
【0027】
一般式(1)および一般式(3)で示される残基を与える二価フェノールを併用する場合、一般式(1)および一般式(3)で示される残基を与える二価フェノールのモル比率は、[一般式(1)で示される残基を与える二価フェノール]/[一般式(3)で示される残基を与える二価フェノール]=10/90〜90/10とすることが好ましく、耐熱性、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、水蒸気遮断性、機械強度、耐液垂れ性、および耐変形性(例えば密着性)のさらなる向上の観点から、20/80〜80/20とすることが好ましく、40/60〜70/30とすることがより好ましく、40/60〜65/35とすることがさらに好ましく、40/60〜60/40とすることがより好ましい。また、全二価フェノール成分に対して、一般式(1)および一般式(3)で示される残基を与える二価フェノールの合計の含有量は、耐熱性、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、水蒸気遮断性、機械強度、耐液垂れ性、および耐変形性(例えば密着性)のさらなる向上の観点から、90モル%以上とすることが好ましく、95%以上とすることがより好ましく、100モル%とすることがさらに好ましい。一般式(1)および一般式(3)で示される残基を与える二価フェノールのモル比率は一般式(1)および一般式(3)で示される残基のモル比率のことであり、[一般式(1)で示される残基]/[一般式(3)で示される残基]で表される。
【0028】
二価フェノール残基としては、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(1)および一般式(3)で示される残基以外の他の二価フェノール残基を含有させてもよい。他の二価フェノール残基を与える二価フェノールとしては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフルオレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−[1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)]、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジ−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−(p−フルオロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エタン、イサチンビスフェノール、イサチンビスクレゾール、ビス(2ーヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2ーヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9、9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。他の二価フェノールを含有させる場合、その含有量は、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、耐熱性、水蒸気遮断性、耐変形性(例えば密着性)の観点から、全二価フェノール成分において、10モル%未満とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましく、実質的に含まないことがさらに好ましい。
【0029】
芳香族二価カルボン酸残基としては、一般式(2)で示される残基を含有させることが必要である。一般式(2)で示される残基が含有されない場合、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、耐熱性、耐摩耗性、機械強度および耐液垂れ性、特に耐熱性、耐摩耗性、機械強度および耐液垂れ性が低下するので好ましくない。
【0031】
全芳香族二価カルボン酸成分に対して、一般式(2)で示される残基を与える芳香族二価カルボン酸の含有量は通常、10〜100モル%であり、耐摩耗性のさらなる向上の観点から、50〜100モル%であることが好ましく60〜100モル%であることがより好ましく、70〜100モル%とすることがさらに好ましく、90〜100モル%とすることがより好ましい。一般式(2)で表される残基を与える芳香族二価カルボン酸の含有量は、耐摩耗性の確保と、耐熱性、耐液垂れ性および/または機械強度のさらなる向上とのバランスの観点から、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、50〜80モル%とすることが好ましく、60〜80モル%とすることがより好ましく、60〜75モル%とすることがさらに好ましい。一般式(2)で示される残基を与える芳香族二価カルボン酸の全芳香族二価カルボン酸成分に対する含有量とは、一般式(2)で示される芳香族二価カルボン酸残基の全芳香族二価カルボン酸成分の残基に対する含有量のことである。
【0032】
一般式(2)において、R
1およびR
2は、ベンゼン環に結合する置換基を表し、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数が1〜6の一価炭化水素基またはハロゲン原子を表す。一価炭化水素基に置換されていてもよいハロゲン原子およびR
1およびR
2としてのハロゲン原子は、それぞれ独立して、あらゆるハロゲン原子であってもよく、例えばフッ素原子、塩素原子または臭素原子が挙げられる。一価炭化水素基としては飽和脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基および芳香族炭化水素基が挙げられ、これらの基は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。飽和脂肪族炭化水素基として、炭素数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基または炭素数1〜6、好ましくは1〜3のハロゲン化アルキル基が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基およびこれらのハロゲン化アルキル基が挙げられる。脂環族炭化水素基として、炭素数3〜6、好ましくは4〜6のシクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基)または炭素数3〜6、好ましくは4〜6のハロゲン化シクロアルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素基として、フェニル基またはハロゲン化フェニル基が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手し易いことおよび合成し易いことから、飽和脂肪族炭化水素基(特にメチル基、エチル基)、芳香族炭化水素基(特にフェニル基)、および脂環族炭化水素基(特にシクロヘキシル基)が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基(特にメチル基)がより好ましい。
【0033】
一般式(2)において、pおよびqは、ベンゼン環に結合する置換基の数を表し、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。pおよびqが0の場合、ベンゼン環に結合するすべての水素原子がR
1およびR
2に置換されていないことを表す。pが2〜4の場合、複数のR
1は、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。qが2〜4の場合、複数のR
2は、互いに同じ置換基でもよく、異なる置換基でもよい。耐熱性、耐摩耗性、水蒸気遮断性、機械強度、耐液垂れ性、および耐変形性(例えば密着性)および非ハロゲン系有機溶媒への溶解性のさらなる向上の観点から、pおよびqはそれぞれ独立して0または1、特に同時に0であることが好ましい。
【0034】
一般式(2)で示される残基を与える芳香族二価カルボン酸としては、例えば、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手しやすいことから、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が好ましい。
【0035】
本発明においては、芳香族二価カルボン酸残基として、さらに一般式(4)で示されるフタル酸残基を含有させてもよい。一般式(2)で示される残基に加えて、一般式(4)で示されるフタル酸残基を含有させることにより、耐熱性および機械強度をさらに向上させることができる。一般式(4)で示されるフタル酸残基を与える化合物として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸が挙げられる。
【0037】
一般式(4)で示されるフタル酸残基の含有量は、全芳香族二価カルボン酸成分(すなわち全芳香族二価カルボン酸成分に由来する全残基)に対して、通常は50モル%以下であり、耐摩耗性の観点から、40%以下とすることが好ましく、35モル%以下とすることがより好ましく、30モル%以下とすることがさらに好ましく、25モル%以下とすることが最も好ましい。一般式(4)で表されるフタル酸残基の含有量は、耐熱性、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、水蒸気遮断性、耐液垂れ性、耐変形性(例えば密着性)および/または機械強度のさらなる向上の観点から、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、10モル%以上とすることが好ましく、20モル%以上とすることがより好ましく、25モル%以上とすることがさらに好ましい。一般式(4)で表されるフタル酸残基の含有量は、耐摩耗性の確保と、耐熱性、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、水蒸気遮断性、耐液垂れ性、耐変形性(例えば密着性)および/または機械強度のさらなる向上とのバランスの観点から、全芳香族二価カルボン酸成分に対して、20〜50モル%とすることが好ましく、20〜40モル%とすることがより好ましく、25〜40モル%とすることがさらに好ましい。
【0038】
本発明においては、芳香族二価カルボン酸残基は、本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(2)および一般式(4)の残基を与える芳香族二価カルボン酸以外の他の芳香族二価カルボン酸の残基を含有させてもよい。そのような残基を与える芳香族二価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等のフタル酸誘導体;4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸類およびその誘導体;および1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類およびその誘導体が挙げられる。誘導体とは、当該芳香族二価カルボン酸において、ベンゼン環に結合する水素原子が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基等のアルキル基に置換されている化合物のことである。他の芳香族二価フェノールを含有させる場合、その含有量は、全芳香族二価カルボン酸成分において、10モル%未満とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0039】
本発明のポリアリレート樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、二価フェノール残基および芳香族二価カルボン酸残基以外に、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸等の他の成分の残基を含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。脂環族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。他の成分の残基の含有量は、原料モノマーの総モル数に対して、10モル%未満とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0040】
本発明のポリアリレート樹脂の重量平均分子量は、耐熱性、機械強度、加工性の観点から、重量平均分子量が60000〜150000であることが好ましい。重量平均分子量が60000未満の場合、ガラス転移温度および/または機械強度が低下する場合がある。一方、重量平均分子量が150000を超えた場合、非ハロゲン系有機溶媒に溶解させた時の溶液粘度および/または溶融粘度が高すぎて、加工性が低下する場合がある。
【0041】
本発明のポリアリレート樹脂のガラス転移温度は、200℃以上であることが好ましく、215℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることが最も好ましい。ポリアリレート樹脂を液晶ディスプレイ等に用いる場合、液晶ディスプレイにコートし、その上に、ITO(インジウム−錫酸化物)溶液を塗布し、その後、200℃以上の温度で結晶化させることが通常である。ポリアリレート樹脂のガラス転移温度を200℃以上とすることにより、ITOを容易に結晶化させることができる。
【0042】
本発明のポリアリレート樹脂の熱分解温度は、加工時の熱安定性の観点から、10%質量減少温度が370℃以上であることが好ましく、380℃以上であることがより好ましく、390℃以上であることが最も好ましい。
【0043】
本発明のポリアリレート樹脂は、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性に優れている。非ハロゲン系有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族化合物;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテル化合物;およびシクロヘキサノン、シクロペンタノン等の環状ケトン化合物が挙げられる。中でも、芳香族化合物(特にキシレン)、および環状ケトン化合物(特にシクロヘキサノン)が好ましい。
【0044】
本発明のポリアリレート樹脂の製造方法としては、界面重合法および溶液重合法等の有機溶媒中で反応させる方法、または溶融重合等の溶融状態で反応させる方法が挙げられる。重合性および/または得られる樹脂の外観の観点から、有機溶媒中での反応、特に低温での反応が可能な界面重合法を用いることが好ましい。
【0045】
界面重合法としては、二価カルボン酸ハライドを水と相溶しない有機溶媒に溶解させた溶液(有機相)を、二価フェノール、末端封止剤、酸化防止剤および重合触媒を含むアルカリ水溶液(水相)に混合し、50℃以下の温度で1〜8時間撹拌しながら重合反応をおこなう方法が挙げられる。
【0046】
有機相に用いる溶媒としては、水と相溶せずポリアリレートを溶解する溶媒が好ましい。このような溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられ、製造上使用しやすいことから、塩化メチレンが好ましい。
【0047】
水相に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびそれらの混合物の水溶液が挙げられる。
【0048】
末端封止剤は、ポリアリレート樹脂の分子量の調整および熱安定性の向上の観点から用いられる。末端封止剤としては、例えば、一価フェノール、一価酸クロライド、一価アルコール、一価カルボン酸が挙げられる。一価フェノールとしては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2−フェニル−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。一価酸クロライドとしては、例えば、ベンゾイルクロライド、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートが挙げられる。一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールが挙げられる。一価カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸が挙げられる。中でも、熱安定性が高いことから、一価フェノール(特にp−tert−ブチルフェノール)が好ましい。
【0049】
酸化防止剤は、二価フェノール成分の酸化を防止するために用いられる。酸化防止剤としては、例えば、ハイドロサルファイトナトリウム、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、トコフェノール、ブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。中でも、水溶性に優れていることから、ハイドロサルファイトナトリウムが好ましい。
【0050】
重合触媒としては、例えば、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリエチルベンジルアンモニウムハライド等の第四級アンモニウム塩;およびトリ−n−ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムハライド、トリメチルベンジルホスホニウムハライド、トリエチルベンジルホスホニウムハライド等の第四級ホスホニウム塩が挙げられる。中でも、分子量が高く、酸価の低いポリマーを得ることができることから、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハライド、トリ−n−ブチルベンジルホスホニウムハライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムハライドが好ましい。
【0051】
本発明のポリアリレート樹脂は、有機溶媒に溶解した後、基材上に塗布して乾燥したり、基材上に溶融樹脂を押出したりすることにより、基材上にポリアリレート樹脂の層を設けた積層体を得ることができる。また、前記積層体から、樹脂層を剥離することによりフィルムを得ることができる。無色透明のフィルムを得るためには、熱分解による色調低下が生じないことから、有機溶媒に溶解した後、基材上に塗布乾燥し剥離してフィルムを得ることが好ましい。
【0052】
ポリアリレート樹脂を溶解する有機溶媒としては、前記した非ハロゲン系有機溶媒以外に、例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼンが挙げられる。
【0053】
基材としては、例えば、PETフィルム、ポリイミドフィルム、ガラス板、ステンレス板が挙げられる。塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコーター塗り法、フィルムアプリケーター塗り法、はけ塗り法、スプレー塗り法、グラビアロールコーティング法、スクリーン印刷法、リバースロールコーティング法、リップコーティング、エアナイフコーティング法、カーテンフローコーティング法、浸漬コーティング法が挙げられる。
【0054】
本発明のポリアリレート樹脂から得られるフィルムの引張破断強度は、機械強度の観点から、70MPa以上であることが好ましく、80MPa以上であることがより好ましく、90MPa以上であることがより好ましい。また、靭性の観点からフィルムの引張破断伸びは60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0055】
本発明のポリアリレート樹脂から得られるフィルムの水蒸気透過係数は、0.80g・cm/(m
2・day)以下であることが好ましく、0.70g・cm/(m
2・day)以下であることがより好ましく、0.65g・cm/(m
2・day)以下であることがより好ましい。
【0056】
本発明のポリアリレート樹脂から得られるフィルムの損失弾性率(E'')(周波数が1Hzの場合)は、0.20GPa以下であることが好ましく、0.15GPa以下であることがより好ましく、0.12GPa以下であることがより好ましい。前記損失弾性率を0.20GPa以下とすることにより、負荷がある状態においても、塑性変形しにくくすることができる。
【0057】
本発明のポリアリレート樹脂、それから得られるフィルムおよび積層体は、耐熱性、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性、水蒸気遮断性、機械強度、耐液垂れ性、および耐変形性(例えば密着性)に優れている。そのため、液晶ディスプレイ、フィルムコンデンサー、照明、太陽電池、プリント回路等の基板フィルムとして電気・電子材料分野で好適に用いることができる。
【0058】
特に、本発明のポリアリレート樹脂は耐液垂れ性に優れている。詳しくは、液垂れを抑制する目安として、溶液粘度を測定するときの粘度安定時間が指標となる。一般に、粘度計を用いて樹脂溶液を測定した場合、時間経過とともに粘度が低下し、一定時間後に粘度が安定する。本発明において、粘度安定時間とは、粘度が安定するまでの時間であり、時間に対して粘度が変化しなくなるまでの時間をいう。ここでは、粘度安定時間が長いほど、せん断に対して溶液が流動しにくいと判断される。そのため、塗付直後に溶液状態となっている塗付膜は、外部から受ける力の影響を受けにくく形状保持しやすくなる。溶液粘度を測定するときの粘度安定時間は、液垂れ抑制の観点から、10分間以上であることが好ましく、15分間以上であることがより好ましく、20分間以上であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0059】
次に、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、ポリアリレート樹脂の物性測定は、以下の方法によりおこなった。
【0060】
(1)樹脂組成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製LA−400 NMR)を用いて、
1H−NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から樹脂組成を求めた(分解能:400MHz、溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化テトラクロロエタンとの容量比が1/11の混合溶媒、温度:50℃)。
【0061】
(2)数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件でポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量を測定した。
送液装置:ウォーターズ社製、Isocratic HPLC Pump 1515
検出器:ウォーターズ社製、Refractive Index Detector 2414
カラム:Mixed−D(充填シリカゲル粒径5μm、チューブ長さ300mm、内径7.5mm)
溶媒:クロロホルム
流速:1mL/分
測定温度:35℃
【0062】
(3)ガラス転移温度(Tg)(耐熱性)
ポリアリレート樹脂10mgをサンプルとして用いて、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製、DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で昇温し、昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をガラス転移温度とした。
◎:230℃以上(最良)。
○:215℃以上230℃未満(良)。
△:200℃以上215℃未満(実用上問題なし)。
×:200℃未満(実用上問題あり)。
【0063】
(4)熱分解温度
ポリアリレート樹脂を以下の条件で測定し、10%質量が減少した温度を熱分解温度として求めた。
装置:日立ハイテクサイエンス社製、TG/DTA 7200
昇温速度:10℃/分
流入ガス:空気、流速200mL/分
◎:390℃以上(最良)。
○:380℃以上390℃未満(良)。
△:370℃以上380℃未満(実用上問題なし)。
×:370℃未満(実用上問題あり)。
【0064】
(5)水蒸気透過係数
ポリアリレート樹脂10質量部にクロロホルム90質量部を加えて樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液を用いて、PETフィルム上に塗膜を形成した。室温で風乾後、PETフィルムから剥離し、減圧にて150℃で24時間乾燥して、厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを用いて以下の条件で測定した。
試験装置: MOCON社製 水蒸気透過率測定装置
温度:23.0℃
湿度:80.0%
測定時間:24時間
◎:0.65g・cm/(m
2・day)以下(最良)。
○:0.65g・cm/(m
2・day)超0.70g・cm/(m
2・day)以下(良)。
△:0.70g・cm/(m
2・day)超0.80g・cm/(m
2・day)以下(実用上問題なし)。
×:0.80g・cm/(m
2・day)超(実用上問題あり)。
【0065】
(6)引張破断強さおよび引張破断伸び
(5)で得られたフィルムを用いてJIS K7127に準拠し、以下の条件で測定した。
試験装置:株式会社インテスコ製、Model2020
引張速度:50mm/分
試験環境:23℃、60%RH
・引張破断強さ
◎:90MPa以上(最良)。
○:80MPa以上90MPa未満(良)。
△:70MPa以上80MPa未満(実用上問題なし)。
×:70MPa未満(実用上問題あり)。
・引張破断伸び
◎:70%以上(最良)。
○:65%以上70%未満(良)。
△:60%以上65%未満(実用上問題なし)。
×:60%未満(実用上問題あり)。
【0066】
(7)損失弾性率(E'')
(5)で得られたフィルムを用いて、以下の条件で測定し、周波数1Hzの値を損失弾性率(E'')とした。損失弾性率(E'')が小さいほど、フィルムは耐変形性(例えば密着性)に優れている。
試験装置:レオメトリック社 粘弾性アナライザー RSAII
周波数:0.159〜15.9Hz
温度:25.0℃
歪み:0.20%
◎:0.12GPa以下(最良)。
○:0.12GPa超0.15GPa以下(良)。
△:0.15GPa超0.20GPa以下(実用上問題なし)。
×:0.20GPa超(実用上問題あり)。
【0067】
(8)溶解性
ポリアリレート樹脂15質量部にキシレンまたはシクロヘキサノン85質量部を加えて、ウェーブローターを用いて室温で攪拌した。1日後の樹脂溶液の状態を以下の基準で評価した。
◎:樹脂溶液は流動性を有しており、透明であった(最良)。
○:樹脂溶液は流動性を有してはいたが、僅かに白濁していた(良)。
△:樹脂溶液は流動性を有し、白濁していたが、実用上問題なかった。
×:樹脂溶液が流動性を有していなかったか、樹脂が全く溶解していなかった(実用上問題あり)。
【0068】
(9)粘度安定時間
ポリアリレート樹脂10質量部にN−メチルピロリドン90質量部を加えて、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液について、東機産業社製のデジタル粘度計(VISCOMETER TVB−10)、HM−1型ロータおよびHM/H2少量サンプルアダプタを用いて、粘度を25.0℃の温度で測定するに際し、測定開始から粘度が安定するまでの時間を測定した。
◎: 20分間以上(最良)。
○: 15分間以上 20分間未満(良)。
△: 10分間以上 15分間未満(実用上問題なし)。
×: 10分間未満(実用上問題あり)。
【0069】
実施例1
攪拌装置を備えた反応容器中に、二価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン(BisMIBK)100.00質量部、末端封止剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)1.61質量部、アルカリとして水酸化ナトリウム(NaOH)31.51質量部、重合触媒としてトリ−n−ブチルベンジルアンモニウムクロライド(TBBAC)の50質量%水溶液を1.57質量部、酸化防止剤としてハイドロサルファイトナトリウム0.51質量部を仕込み、水3100質量部に溶解させた(水相)。また、これとは別に、塩化メチレン2400質量部に、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロリド(DEDC)110.72質量部を溶解させた(有機相)(BisMIBK:PTBP:DEDC:TBBAC:NaOH=100.00:2.90:101.45:0.42:213.05(モル比))。水相をあらかじめ攪拌しておき、有機相を水相中に強攪拌下で添加し、15℃で2時間、界面重合法で重合をおこなった。この後、攪拌を停止し、水相と有機相をデカンテーションして分離した。水相を除去した後、塩化メチレン500質量部、純水3000質量部と酢酸10質量部を添加して反応を停止し、15℃で30分間攪拌した。その後、有機相を純水で10回洗浄し、有機相をメタノール中に添加してポリマーを沈殿させた。沈殿させたポリマーを濾過した後、165℃で24時間真空乾燥をおこない、ポリアリレート樹脂を得た。
得られたポリアリレート樹脂を組成分析したところ、樹脂組成は、BisMIBK:PTBP:DEDC:TBBAC:NaOH=100.00:2.90:101.45:0.42:213.05(モル比)と、仕込組成と同一であった。
【0070】
実施例2〜9および比較例1〜6
表1に示すように、樹脂組成を変更する以外は実施例1と同様の操作をおこなって、ポリアリレート樹脂を得た。
【0071】
実施例1〜9、比較例1〜6で得られたポリアリレート樹脂の評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
BisMIBK:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン
TMBP:3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール
BisA:ビスフェノールA
DEDC:ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸クロライド
TPC:テレフタル酸クロライド
MPC:イソフタル酸クロライド/テレフタル酸クロライド=1/1(モル比)混合物
【0074】
実施例1〜9のポリアリレート樹脂は、本発明で規定する二価フェノール残基および芳香族二価カルボン酸残基から構成されていたため、ガラス転移温度、熱分解温度が高く、キシレンおよびシクロヘキサノンへの溶解性も高かった。また、フィルムとした場合の水蒸気透過係数および損失弾性率(E'')が低く、引張破断強さ、引張破断伸びが高かった。また、粘度安定時間が長かった。
【0075】
比較例1、2のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分に一般式(1)で示される残基を与えるモノマーを用いず、ビスフェノールA、およびビスフェノールSを用いたため、キシレンへの溶解性が低く、フィルムとした場合の水蒸気透過係数および損失弾性率(E'')が高かった。
比較例3、4のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分に一般式(1)で示される残基を与えるモノマーを用いなかったため、熱分解性が低く、キシレンおよびシクロヘキサノンへの溶解性が低く、フィルムとした場合の水蒸気透過係数および損失弾性率(E'')が高かった。
比較例5のポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分に一般式(1)で示される残基を与えるモノマーを用いず、一般式(3)で示される残基を与えるモノマーのみを用いたため、水蒸気透過係数が高く、キシレンおよびシクロヘキサノンへの溶解性が低く、損失弾性率(E'')が高かった。
比較例6のポリアリレート樹脂は、芳香族二価カルボン酸成分に一般式(2)で示される残基を与えるモノマーを用いなかったため、ガラス転移温度が低く、引張破断強さが低く、粘度安定時間が短かった。