特許第6899602号(P6899602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899602
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/12 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   A01B33/12 A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-73457(P2020-73457)
(22)【出願日】2020年4月16日
(62)【分割の表示】特願2015-238618(P2015-238618)の分割
【原出願日】2015年12月7日
(65)【公開番号】特開2020-115885(P2020-115885A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 忠治
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−107704(JP,A)
【文献】 特開平08−163903(JP,A)
【文献】 特開平08−130903(JP,A)
【文献】 特開昭61−176722(JP,A)
【文献】 特開2008−092813(JP,A)
【文献】 特開平03−087101(JP,A)
【文献】 米国特許第04398606(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第104838744(CN,A)
【文献】 特開昭63−007707(JP,A)
【文献】 特開2004−008082(JP,A)
【文献】 特開平07−289005(JP,A)
【文献】 実開昭49−043405(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B27/00−49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の耕耘爪を含む耕耘ロータと、
前記耕耘ロータを覆い、前記耕耘ロータが配置される側に複数の砕土壁を有するシールドカバーとを備え、
前記複数の砕土壁の各々は、前記耕耘ロータの回転軸の方向に延び、耕耘作業時における水平面との成す鋭角側の角が70°以上85°以下であり、
側面視において、前記耕耘ロータの回転中心と前記複数の砕土壁のうち少なくとも1つを含む平面との間の垂直距離は、前記耕耘爪の回転半径よりも小さい、農作業機。
【請求項2】
複数の耕耘爪を含む耕耘ロータと、
前記耕耘ロータを覆うシールドカバーとを備え、
前記シールドカバーの前記耕耘ロータが配置される側に複数の砕土壁が折り曲げ形成され、
前記複数の砕土壁の各々は、前記耕耘ロータの回転軸の方向に延び、耕耘作業時における水平面との成す鋭角側の角が70°以上85°以下であり、
側面視において、前記耕耘ロータの回転中心と前記複数の砕土壁のうち少なくとも1つを含む平面との間の垂直距離は、前記耕耘爪の回転半径よりも小さい、農作業機。
【請求項3】
側面視において、前記耕耘ロータの回転中心と前記複数の砕土壁のうち、最も進行方向側に位置する砕土壁を含む平面との間の垂直距離は、前記耕耘爪の回転半径よりも大きい、請求項1または2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記耕耘ロータの回転軸に直交する平面上の断面において、前記複数の砕土壁の各々の長さが40mm以上70mm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項5】
前記複数の砕土壁は、前記耕耘ロータの回転軸よりも当該農作業機の進行方向側に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項6】
前記複数の砕土壁は、進行方向側に位置する砕土壁の上方と隣接する砕土壁の下方とが接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項7】
前記複数の耕耘爪は、前記耕耘ロータのロータリ軸の軸周りに着脱可能に取り付けられ、
前記耕耘ロータの回転軸から前記シールドカバーまでの最小距離と、前記耕耘爪の回転半径との差は、19mm以上24mm以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項8】
前記耕耘ロータの回転軸から前記シールドカバーまでの最小距離は、210mm以上215mm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項9】
前記シールドカバーは、少なくとも一部に高張力鋼が用いられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項10】
前記シールドカバーは、前記耕耘ロータの回転軸の方向に延びる溝状のプレスリブを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項11】
前記シールドカバーは、前記複数の砕土壁の各々を前記耕耘ロータが配置される側とは反対側から覆うカバー部材を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクタの後部に昇降可能に装着され、耕耘ロータを備える農作業機に関する。特に、農作業機が有するシールドカバーの形状に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタの後部に3点リンクヒッチ機構を介して昇降可能に装着される農作業機は、複数の耕耘爪が取り付けられた耕耘ロータを有し、耕耘ロータはトラクタからの動力が伝達されて回転する。
【0003】
ロータリ軸の周りに複数の耕耘爪等が配設された耕耘ロータを備える農作業機では、耕耘爪が跳ね上げる土砂が農作業機本体に及ぶことを防止すると共に、耕耘性能(特に砕土性)の向上を図るために、耕耘ロータの上方にシールドカバーが固定される。シールドカバーは農作業機本体の幅方向に張り出し、ロータリ軸に動力を伝達する伝動フレームと、ギヤボックスを挟んで伝動フレームに連続する支持フレームに支持される。
【0004】
例えば特許文献1には、カバー体(シールドカバー)の前端部に、垂直状の案内板(砕土壁)が設けられる構成が開示されている。耕耘爪によって跳ね上げられた土砂が泥土飛散防止体の垂直状の案内板(砕土壁)に衝突して砕土されることによって、農作業機の砕土性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−107704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のカバー体(シールドカバー)が有する構成は、耕耘爪にて持ち上げられて落下する泥土による泥水の飛び散りを防止することを目的としており、砕土壁の形状について十分に最適化がされておらず、砕土壁が奏する効果が十分ではない。更に、耕耘爪によって跳ね上げられた土砂の衝突が繰り返されることによって、カバー体(シールドカバー)が変形することが懸念される。
【0007】
本願発明は、上記実情に鑑み、シールドカバーの形状が最適化され、高い砕土性を有する農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による農作業機は、耕耘ロータと、耕耘ロータを覆い、耕耘ロータが配置される側に複数の砕土壁を有するシールドカバーとを備え、複数の砕土壁の各々は、耕耘ロータの回転軸の方向に延び、耕耘作業時における水平面との成す鋭角側の角が70°以上85°以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シールドカバーの形状が最適化され、高い砕土性を有する農作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る農作業機の構成を説明する斜視図である。
図2】本実施形態に係る農作業機の構成を説明する上面図である。
図3】本実施形態に係る農作業機の構成を説明する側面図である。
図4】本実施形態に係る農作業機の構成を説明する断面図である。
図5】本実施形態に係る農作業機が有するシールドカバーの構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
本実施形態においては、特に代掻き作業のための農作業機10を例示して説明する。しかし、後述する農作業機10の構成は、これに限られず、耕耘・整地作業のための農作業機にも適用することができる。
【0012】
以下、本実施形態に係る農作業機10の構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1図2図3及び図4はそれぞれ、本実施形態に係る農作業機10の構成を説明する斜視図、上面図、側面図及び断面図である。
【0013】
本実施形態に係る農作業機10は、中央作業部10C、延長作業部左10L及び延長作業部右10Rを備えた3分割構造となっている。中央作業部10Cは、農作業機10の中央部に配置されている。延長作業部左10L及び延長作業部右10Rは、中央作業部10Cの左右両端部に上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0014】
中央作業部10Cは、トップマスト12と、ロアーリンク連結部14と、入力軸16と、伝動フレーム20と、支持フレーム22と、耕耘ロータ28と、シールドカバー34と、整地板42と、リンク機構部44とを備えている。
【0015】
トップマスト12及びロアーリンク連結部14は、中央作業部10Cの前方中央部及び前方左右2箇所にそれぞれ設けられている。トップマスト12及び左右2箇所に設けられたロアーリンク連結部14は、図示しないトラクタのトップリンク及び左右2箇所に設けられたロアーリンク(3点リンクヒッチ機構)にそれぞれ連結され、農作業機10はトラクタの後部に昇降可能に装着される。
【0016】
入力軸16は、中央作業部10Cの前方中央部に設けられたギヤボックス18に内装され、前方に突出している。入力軸16には、トラクタのPTO軸から、ユニバーサルジョイント、伝動シャフト等を介して、動力が伝達される。
【0017】
伝動フレーム20及び支持フレーム22は、本体フレームを兼ね、ギヤボックス18の左右両側に、水平方向に延設されている。伝動フレーム20は、伝動シャフト21(図示せず)を内装している。支持フレーム22は、伝動シャフト21を内装せず、中空となっていてもよい。伝動フレーム20の側端部にはチェーン伝動ケース24が垂設され、また、支持フレーム22の側端部には側部フレーム26がチェーン伝動ケース24と対向して垂設されている。
【0018】
耕耘ロータ28は、ロータリ軸30及び複数の耕耘爪32を含む。ロータリ軸30は、チェーン伝動ケース24の下端部と側部フレーム26の下端部との間に軸架されている。複数の耕耘爪32は、ロータリ軸30の軸周りに、着脱可能に取り付けられている。トラクタから入力軸16に伝達された動力は、ギヤボックス18内で変速され、伝動シャフト21を回転させてチェーン伝動ケース24を介してロータリ軸30を回転駆動し、耕耘ロータ28を所定方向に回転させて耕耘作業を行う構成となっている。尚、ロータリ軸30は、取付フランジを含んでもよく、複数の耕耘爪32は、取付フランジに着脱可能に取り付けられてもよい。
【0019】
シールドカバー34は、伝動フレーム20と側部フレーム26の下部間に配置され、耕耘ロータ28を覆う。以下では、図面を用いて、本実施形態に係るシールドカバー34の構成について更に詳細に説明する。
【0020】
図4は、本実施形態に係る農作業機10の構成を説明する断面図であり、特に中央作業部10Cの断面を示している。図5は、本実施形態に係るシールドカバー34の構成を説明する断面図である。図5において、各距離及び各部位の長さを示す数値の単位は、全てmmである。
【0021】
シールドカバー34は、耕耘ロータ28を覆い、内側に複数の砕土壁36を有する。ここで「内側」とは、シールドカバー34に対して耕耘ロータ28が配置される側である。本実施形態においては、2枚の砕土壁36(第1砕土壁36a及び第2砕土壁36b)が、シールドカバー34の前端部付近に設けられている。第1砕土壁36a及び第2砕土壁36bは、シールドカバー34の前端部付近に、3箇所の折り曲げ部(第1折曲部A、第2折曲部B及び第3折曲部C)が設けられることによって形成されている。耕耘ロータ28によって放擲された土が、複数の砕土壁36に衝突し、それに伴う衝撃によって砕土される。
【0022】
複数の砕土壁36の各々は、耕耘ロータ28の回転軸Oの方向に延びている。また、本実施形態においては、複数の砕土壁36の各々は、耕耘作業時における水平面90との成す鋭角側の角θが70°以上85°以下である。
【0023】
複数の砕土壁36の各々と水平面90との成す角が上記範囲よりも小さいと、放擲された土が複数の砕土壁36から受ける衝撃が小さくなり、砕土性が悪化する。複数の砕土壁36の各々と水平面90との成す角が上記範囲よりも大きいと、砕土壁36に衝突した土が落下しにくくなり、砕土壁36に堆積してしまう。これによって、砕土性が悪化する。
【0024】
本実施形態においては、第1砕土壁36a及び第2砕土壁36bと水平面90との成す角θはいずれも80°である。但し、複数の砕土壁36の各々と水平面90との成す角は、必ずしも全てが一致する必要はなく、各々の角度は異なっていてもよい。また、本実施形態においては、第1砕土壁36a及び第2砕土壁36bの2枚の砕土壁36を設けているが、3枚以上の砕土壁36が設けられても構わない。
【0025】
また、耕耘ロータ28の回転軸Oに直交する平面上の断面において、複数の砕土壁36の各々の長さが40mm以上70mm以下であることが好ましい。
【0026】
当該長さが上記範囲よりも短いと、耕耘作業によって放擲された土の衝突する面積が小さくなり、砕土性が悪化する。当該長さが上記範囲よりも長いと、シールドカバー34の重量が増し、農作業機の燃費が悪化する。
【0027】
本実施形態においては、当該長さは、第1砕土壁36aについては68.5mm、第2砕土壁36bについては41.5mmである。
【0028】
一方、図4からわかるように、第2砕土壁36bについては、第2砕土壁36bを含む平面Pと、耕耘ロータ28の回転軸Oとの距離OPは、耕耘爪32の回転半径Rよりも小さい。換言すると、平面Pは、回転軸Oを中心とする半径Rの円の内部を通る。ここで、第2砕土壁36bを含む平面Pのうち、第2砕土壁36bよりも下方部分の面が、回転軸Oを中心とする半径Rの円の内部を通る。本実施形態においては、平面Pと耕耘ロータ28の回転軸Oとの距離OPは182.4mmであり、耕耘爪32の回転半径Rは191.0mmである。
【0029】
このように、複数の砕土壁36のうち少なくとも1枚は、砕土壁36を成す平面Pと耕耘ロータ28の回転軸Oとの距離OPが、耕耘爪32の回転半径Rよりも小さいことが好ましい。
【0030】
また、複数の砕土壁36は、耕耘ロータ28の回転軸Oよりも農作業機10の進行方向側に配置されることが好ましい。
【0031】
このような構成を有することによって、耕耘作業によって放擲された土が農作業機10の進行方向側に配置された複数の砕土壁36に衝突し、複数の砕土壁36から落下する土をさらに耕耘爪32の回転によって細かく砕土することができるので、効率的に砕土でき、砕土性が向上する。
【0032】
耕耘ロータ28の回転軸Oからシールドカバー34までの最小距離Lと、耕耘爪32の回転半径Rとの差は、19mm以上24mm以下であることが好ましい。本実施形態においては、耕耘ロータ28の回転軸Oからシールドカバー34までの最小距離Lは210.4mm、耕耘爪32の回転半径Rは191.0mmであるため、両者の差は19.4mmである。
【0033】
このような構成を有することによって、当該差が従来のシールドカバーのそれに比べて長くなる。これによって、耕耘作業によって放擲された石がシールドカバー34に衝突するまでの飛距離が長くなり、衝突による衝撃を緩和することができる。これによって、シールドカバー34の変形を抑制することができる。当該差が上記範囲よりも小さいと、放擲された石の衝突によってシールドカバー34が受ける衝撃が強くなり、シールドカバー34が変形し易くなる。当該差が上記範囲よりも大きいと、シールドカバー34が大型化し、農作業機の燃費が悪化する。
【0034】
但し、耕耘爪32は、耕耘作業に伴う摩耗が進むと、回転半径Rが減少する場合がある。そこで、シールドカバー34の設計においては、耕耘ロータ28の回転軸Oとの位置関係に着目し、以下のように設計されてもよい。
【0035】
つまり、耕耘ロータ28の回転軸Oからシールドカバー34までの最小距離Lは、210mm以上215mm以下であることが好ましい。本実施形態においては、当該最小距離は210.4mmである。
【0036】
このような構成を有することによって、最小距離Lが従来のシールドカバーのそれに比べて長くなる。これによって、耕耘作業によって放擲された石がシールドカバー34に衝突するまでの飛距離が長くなり、衝突による衝撃を緩和することができる。これによって、シールドカバー34の変形を抑制することができる。当該距離が上記範囲よりも小さいと、放擲された石の衝突によってシールドカバー34が受ける衝撃が強くなり、シールドカバー34が変形し易くなる。当該距離が上記範囲よりも大きいと、シールドカバー34が大型化し、農作業機の燃費が悪化する。
【0037】
シールドカバー34の材質としては、少なくとも一部に高張力鋼が用いられることが好ましい。高張力鋼は、溶接が可能な高強度の鋼材である。高張力鋼は、鋼材中の炭素の含有量を抑え、マンガンおよびシリコンの含有量を高めて強度を増加させている。更に、降伏点や靭性を高めるためにニッケル、クロム、モリブデン、バナジウム等が添加されている。本実施形態においては、高張力鋼としてSAPH(Steel Automobile Press Hot)440を用いている。また、シールドカバー34の厚さは1.6mmとしている。
【0038】
このような構成を有することによって、従来の鋼材を用いた場合と同等の強度を維持しつつ薄肉化することができる。これによって、シールドカバー34を軽量化することができ、農作業機10の燃費が向上する。
【0039】
また、従来の鋼材を用いた場合と同等の厚さを維持しつつ高強度化することもできる。これによって、耕耘作業によって放擲された石によるシールドカバー34の変形を更に抑制することができる。
【0040】
シールドカバー34は、耕耘ロータ28の回転軸Oの方向に延びる溝状のプレスリブ38を有することが好ましい。
【0041】
本実施形態においては、シールドカバー34の2箇所に溝状のプレスリブ38が設けられている。プレスリブ38の各々は、シールドカバー34の外側に突き出した凸形状を有し、二つの平面から構成されている。換言すると、プレスリブ38の各々は、三角形の形状を有している。断面視における各々のプレスリブ38の幅(当該三角形の底辺)は、29.9mmであり、凸形状の頂部の高さは4mmである。これによって、当該二つの平面の成す角は略150°となる。
【0042】
このような構成を有することによって、シールドカバー34の剛性を確保し、変形を抑制することができる。特に、耕耘ロータ28の回転軸Oの方向の対称性を破る変形を抑制することができる。
【0043】
尚、プレスリブ38の断面形状は上述した三角形状に限らず、凸形状を有していれば上述の効果を奏することができる。ここで、プレスリブ38の凸形状は、シールドカバー34の外側に突き出す形状でもよく、内側に突き出す形状でもよい。
【0044】
シールドカバー34は、複数の砕土壁36の各々を外側(耕耘ロータ28が配置される側とは反対側)から覆うカバー部材40を有することが好ましい。本実施形態においては、第1折曲部A及び第3折曲部C間を覆うようにカバー部材40が設けられている。
【0045】
このような構成を有することによって、シールドカバー34の耐久性が向上し、更に変形が外観に現れにくくなる。
【0046】
以上、本実施形態に係るシールドカバー34の構成について詳細に説明した。本実施形態に係るシールドカバー34によれば、複数の砕土壁36によって農作業機10の砕土性が向上する。更に、耕耘作業によって放擲された石の衝突による衝撃を緩和することができ、シールドカバー34の変形を抑制することができる。
【0047】
整地板42は、シールドカバー34の後端部に取り付けられている。本実施形態においては、整地板42は、第1整地板42a及び第2整地板42bから構成される。第1整地板42aは、シールドカバー34の後端部に、上下方向に回動自在に取り付けられ、後側が斜め下方へ延びる。第1整地板42aの後端部によって耕耘地面が平坦に整地される。第2整地板42bは、第1整地板42aの後端部に取り付けられ、第1整地板42aの後端部に上下方向に回動自在に取り付けられている。第2整地板42bによって圃場の耕耘地面が更に平坦に整地される。
【0048】
リンク機構部44は、一端部がギヤボックス18の後部に接続され、他端部が第2整地板42bの上面に接続されている。リンク機構部44は、第2整地板42bの上下方向の回動に伴って上下方向に移動自在となっている。本実施形態においては、リンク機構部44は、揺動アーム46及び連結ロッド48から構成されている。
【0049】
揺動アーム46は、ギヤボックス18の後部に一端部が回動自在に接続され、他端部が機体進行方向後側に延びて上下方向に揺動可能となっている。ここで、揺動アーム46の一端部は、ギヤボックス18の後部に横方向に延びる軸部50を回動支点として回動自在に接続されている。
【0050】
連結ロッド48は、揺動アーム46の他端部と第2整地板42bの上面との間に接続されている。つまり、揺動アーム46は、連結ロッド48を介して第2整地板42bに接続されている。連結ロッド48の両端部は、揺動アーム46及び第2整地板42bに対して回動自在に接続されている。このため、第2整地板42bが上下方向に回動すると、連結ロッド48を介して揺動アーム46が軸部50を回動支点として上下方向に回動する。
【0051】
以上、本実施形態に係る農作業機10の中央作業部10Cの構成について説明した。次いで、延長作業部左10L及び延長作業部右10Rの構成について説明する。
【0052】
延長作業部左10L及び延長作業部右10Rは、中央作業部10Cの左右方向両端部に設けられた回動支点である前後方向の折畳用軸52を中心として、上下方向に回動可能となっている。延長作業部左10L及び延長作業部右10Rは、回動により折畳非作業状態(閉状態)および展開作業状態(開状態)に選択的に切り換えられ、展開作業状態時には中央作業部10Cからの動力によって耕耘作業が可能である。
【0053】
延長作業部左10L及び延長作業部右10Rは、ほぼ左右対称の構造を有するため、以下では特に延長作業部左10Lの構成ついて更に詳細に説明する。延長作業部左10Lは、左油圧シリンダ54L、2つの側部フレーム左56L及び57L(図示せず)、耕耘ロータ28L(図示せず)、シールドカバー左34L及び整地板左42Lを有している。
【0054】
左油圧シリンダ54Lは、伸縮動作に基づいて延長作業部左10Lを中央作業部10Cに対して回動させる駆動源としての左回動駆動手段として機能する。延長作業部左10Lは、左油圧シリンダ54Lの作動に基づき、折畳用軸52を中心とする展開方向への所定角度、例えば略180度回動することにより中央作業部10Cの外側方に位置する展開作業状態となり、折畳用軸52を中心とする折畳方向への所定角度、例えば略180度回動することにより中央作業部10Cの上方に位置する折畳非作業状態となる。
【0055】
側部フレーム左56L及び57L(図示せず)は、延長作業部左10Lの左右両端に設けられている。
【0056】
耕耘ロータ28Lは、側部フレーム左56L及び57Lの下部間に、回転自在に支持されている。耕耘ロータ28Lは、中央作業部10Cに設けられた耕耘ロータ28と同様に、ロータリ軸30L及び複数の耕耘爪32L(共に図示せず)を有している。
【0057】
シールドカバー左34Lは、側部フレーム左56L及び57Lの上部間に、耕耘ロータ28Lを覆うように設けられている。本実施形態においては、シールドカバー左34Lは、中央作業部10Cに設けられたシールドカバー34と同様に構成される。
【0058】
整地板左42Lは、シールドカバー左34Lの後端部に取り付けられている。本実施形態においては、整地板左42Lは、中央作業部10Cに設けられた整地板42と同様に、第1整地板左42La及び第2整地板左42Lbから構成される。
【0059】
延長作業部左10Lは、耕耘ロータ28Lの回転軸OL(図示せず)方向の構成が、中央作業部10Cの構成とほぼ同様となっている。つまり、耕耘ロータ28Lの回転軸OLに直交する平面上の断面において、耕耘ロータ28Lの回転軸OL、シールドカバー左34L及び整地板左42Lの断面構成が、中央作業部10Cのそれらとほぼ同様の断面構成を有している。
【0060】
前述のように、トラクタから入力軸16に伝達された動力が、前述の伝動機構を介して中央作業部10Cの耕耘ロータ28と共に、延長作業部左10L及び延長作業部右10Rに設けられた耕耘ロータ28L及び28R(図示せず)に伝達され、耕耘ロータ28L及び28Rを所定方向に回転させるように構成されている。
【0061】
延長整地板左58Lは、第2整地板左42Lbの外側端部に、上下方向に回動自在に設けられている。延長整地板左58Lは、第2整地板左42Lbの左右方向外側端部に前後方向に延設された軸部60を中心として回動自在に設けられている。延長整地板左58Lは、展開された作業位置では第2整地板左42Lbの外側に延びて第2整地板左42Lbの整地作業を補助し、第2整地板左42Lbの上方側に折り畳まれる位置(格納位置)に回動すると第2整地板左42Lb上に格納される。
【0062】
延長整地板左58Lは、更に、延長作業部左10Lのシールドカバー左34L上に設けられた回動装置62によって格納位置と作業位置との間を回動可能である。回動装置62は、カバー64によって覆われた駆動モータ66(図示せず)と、駆動モータ66と延長整地板左58Lとの間に接続され、駆動モータ66からの駆動力によって延長整地板左58Lを回動させるリンク機構部68とを有している。
【0063】
以上、延長作業部左10Lの構成について説明した。延長作業部右10Rの構成は延長作業部左10Lとほぼ同様であり、説明で用いた符号についてはLをRと読み替えればよい。
【0064】
農作業機10は、更に、複数の土寄せ板70を備えてもよい。複数の土寄せ板70は、農作業機10の前方に取り付けられる。例えば、走行するトラクタのタイヤ痕が耕耘地面に形成されて土の片寄りが発生した場合に、土寄せ板70によって土の片寄りを戻して耕耘地面を平坦にすることができる。
【0065】
以上、本実施形態に係る農作業機10の構成について説明した。本実施形態に係る農作業機10の構成によれば、高い砕土性を有する農作業機10を提供することができる。
【0066】
尚、本実施形態においては、中央作業部10C、延長作業部左10L及び延長作業部右10Rを備えた3分割構造を例示して説明したが、分割構造を有しない農作業機であっても、本実施形態に係るシールドカバー34は同様の効果を奏する。
【0067】
また、本実施形態においては、特に代掻き作業のための農作業機10を例示して説明した。しかし、本実施形態に係るシールドカバー34は、これに限られず、耕耘・整地作業のための農作業機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
農作業機:10 中央作業部:10C 延長作業部左:10L 延長作業部右:10R トップマスト:12 ロアーリンク連結部:14 入力軸:16 ギヤボックス:18 伝動フレーム:20 伝動シャフト:21 支持フレーム:22 チェーン伝動ケース:24 側部フレーム:26 耕耘ロータ:28 ロータリ軸:30 耕耘爪:32 シールドカバー:34 砕土壁:36 プレスリブ:38 カバー部材:40 整地板:42 リンク機構部:44 揺動アーム:46 連結ロッド:48 軸部:50 折畳用軸:52 左油圧シリンダ:54L 側部フレーム左:56L、57L 延長整地板左:58L 軸部:60 回動装置:62 カバー:64 駆動モータ:66 リンク機構部:68 土寄せ板:70 水平面:90 回転軸:O 回転半径:R 折曲部:A、B、C
図1
図2
図3
図4
図5