(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では、関連する図面を参照して、さまざまな実施形態が説明される。本書の範囲を逸脱することなく、代替の実施形態を考案することができる。以下の説明および図面において、要素間のさまざまな接続および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が示されるということに注意する。それらの接続または位置関係あるいはその両方は、特に規定されない限り、直接的または間接的であってよく、この点において限定するよう意図されていない。したがって、各実体の結合は、直接的結合または間接的結合を指してよく、各実体間の位置関係は、直接的位置関係または間接的位置関係であってよい。間接的位置関係の一例として、層「B」の上に層「A」を形成することへの言及は、層「A」および層「B」の関連する特性および機能が中間層によって大幅に変更されない限り、1つまたは複数の中間層(例えば、層「C」)が層「A」と層「B」の間にある状況を含んでいる。
【0019】
1つまたは複数の実施形態は、マイクロ波読み出し信号を光子に変換することによって量子ビットの量子状態を読み出すためのデバイスおよび方法を含む。試験者は、光ファイバを介して、量子ビット状態に関する情報を含む光子を受信することによって、室温で(光子測定デバイスを介して)量子ビット状態を測定する。
【0020】
最先端のシステムにおける標準的なマイクロ波の制御および読み出しの設定について説明する。単一の量子ビットの読み出しのための標準的なハードウェアのオーバーヘッドとして、3つのアイソレータ、1つ〜2つのサーキュレータ、2つの増幅器、同軸ケーブル、およびすべてのコンポーネントの良好な熱化が必要である。1量子ビットあたりの体積(体積/量子ビット)は、約0.001立方メートル(m
3)であり、1量子ビットあたりの重量(重量/量子ビット)は、約1キログラム(kg)である。最先端の読み出しの設定は、拡張不能であり、例えば、100量子ビットの読み出しの設定全体が現在の最先端の希釈冷凍機に収まらないため、100量子ビットに拡張することができない。最先端のマイクロ波の読み出しには、大量のハードウェア(大きい設置面積、大きい質量、および大きい熱質量)が必要である。
【0021】
各実施形態は、光ファイバを含む出力チェーンが大きい熱質量を有していない、より小さくて軽い読み出しシステムを提供する。1つまたは複数の実施形態は、100量子ビット以上に拡張可能な解決策を提供する。1つまたは複数の実施形態では、N(Nは1よりも大きい整数)個の量子ビットに対して、多重化が利用されてよい。
【0022】
ここで図を参照すると、
図1は、1つまたは複数の実施形態による、アーキテクチャ/マイクロ波および光装置100(量子ビット読み出しシステム)の回路図であり、量子システムの測定を示している。
図1は反射における量子システムの測定を示しているが、量子システムが送信において動作する場合に測定が行われてよいということが、理解されるべきである。読み出し共振器が送信において動作する場合、入力信号および出力信号は、同じ伝送線を共有せず、一般性を失うことなく、入力信号が1本の伝送線に入り、出力信号が別の伝送線から出る。読み出し共振器が反射において動作する場合、
図1に示されているように、入力信号および出力信号は両方とも同じ伝送線を共有する。
【0023】
読み出しアーキテクチャ/マイクロ波および光装置100は、マイクロ波/光変換器を使用したマイクロ波量子ビット(microwave qubit)の読み出し用である。アーキテクチャ/マイクロ波および光装置100は、マイクロ波量子ビット読み出しデバイス60内のマイクロ波/光変換器50を利用する。
【0024】
読み出しアーキテクチャ/マイクロ波および光装置100は、マイクロ波量子ビット72およびマイクロ波読み出し共振器74である量子システム70を含んでいる。1つの例では、量子システム70は超伝導量子システムであってよく、マイクロ波量子ビット72は超伝導量子ビットであってよい。1つの例では、マイクロ波読み出し共振器74は、2次元(2D)マイクロ波空洞または3次元(3D)マイクロ波空洞として実装されてよい。
【0025】
マイクロ波読み出し共振器74は、マイクロ波量子ビット72の状態を読み取る(すなわち、探査する)ように設計される。1つの実装では、マイクロ波量子ビット72は、ジョセフソン接合を含んでいる超伝導トランズモン量子ビットであってよい。1つの実装では、マイクロ波量子ビット72は、マイクロ波読み出し共振器74に容量結合される。マイクロ波読み出し共振器に関して、さまざまな設計が存在する。マイクロ波読み出し共振器74の例は、インダクタおよびコンデンサ、同一平面上の導波管共振器、同一平面上のストリップライン共振器、集中素子共振器、3D導波管空洞、または円筒空洞、あるいはその組み合わせを含んでよい。マイクロ波量子ビット72は、説明の目的ではトランズモン量子ビット回路であってよいが、マイクロ波量子ビット72が、限定されるように意図されておらず、トランズモン量子ビット回路ではない他の超伝導量子ビット回路にも適用されると理解されるということに注意する。
【0026】
この例では、1つの量子ビット72および1つの読み出し共振器74が示されているが、量子システム70は、1つまたは複数の量子ビット72および1つまたは複数のマイクロ波読み出し共振器74を含んで/表してよく、各量子ビット72は、それ自身のマイクロ波読み出し共振器74に結合される。
【0027】
読み出しデバイス60は、マイクロ波サーキュレータ80、マイクロ波/光変換器50、および終端点30を含む。読み出しシステム100は、マイクロ波導波管1、71、および81としての伝送線、ならびにマイクロ波/光変換器50の入力側および出力側にある光導波管2および4を含んでいる。読み出しデバイス60および量子システム70は両方とも、低い熱ノイズ、および必要に応じて超伝導を実現するために、事前に定義された温度に冷却する冷凍機150内にある。破線の下の要素は、導波管(すなわち、伝送線)を含めて、事前に定義された温度に維持される。1つの実装では、冷凍機150は、約10ミリケルビン(mK)の事前に定義された温度で温度を維持してよく、この温度は、熱励起および熱ノイズを抑制するために使用される標準的温度である。冷凍機150は、読み出しデバイス60、量子システム70、および関連する導波管を10mKステージに維持する希釈冷凍機であってよい。読み出しデバイス60は、事前に定義された温度に冷却されたときに超伝導の原理に従って動作する超伝導材料でできていてよい。量子システム70も、超伝導材料でできていてよい。
【0028】
マイクロ波サーキュレータ80は、伝送線71を介して量子システム70に接続される。マイクロ波信号発生器20は、伝送線1を介して入力マイクロ波信号21をサーキュレータ80に送信する。
【0029】
入力マイクロ波信号21は、サーキュレータ80の1つのポートに入力/受信され、入力マイクロ波信号21は、反時計回り(すなわち、矢印の方向)に回転した後に、次のポートを通って出力される。サーキュレータ80は、3つのポートと共に示されている。この例は、第1のポートが量子システム70の入力/出力に接続されたサーキュレータ80を示している。サーキュレータ80の第2のポートは、マイクロ波/光変換器50のマイクロ波入力に接続されている。サーキュレータ80の第3のポートは、マイクロ波信号発生器20に接続されている。
【0030】
マイクロ波信号発生器20(または、マイクロ波量子ビットに接続された別の信号発生器(図示されていない))は、マイクロ波量子ビット72の量子ビット共振周波数(f
q)でマイクロ波信号(図示されていない)を生成するように構成されており、この量子ビット信号(f
q)は量子システム70に入力される。入力量子ビット共振周波数信号は、量子ビット72を初期化、操作、励起、または制御する。各量子ビット状態は、読み出し共振器の一意の共振を発生させる。超伝導量子ビット72の状態を測定または推定するために、マイクロ波信号発生器20または別の発生器によって、読み出し共振器74の読み出し共振周波数(f
r)で、入力読み出し信号21が生成される。入力読み出し信号21は、量子システム70に送信される。入力読み出し信号21は、読み出し共振器74が励起されるように、サーキュレータ80を介して、共振で(または、読み出し共振器74の共振の近くで)読み出し共振器74に入力される。読み出し共振器74は、読み出し共振周波数(f
r)で出力読み出し信号11を生成する(または、共振させる)。読み出し共振器74から出る出力読み出し信号11は、量子ビット72と分散的に相互作用した後に、量子ビット72の状態に関する(量子)情報(すなわち、量子ビット72が、基底状態、励起状態、またはこれら2つの状態の重ね合わせ、あるいはその組み合わせのいずれの状態にあるか)を運ぶ。この量子ビット情報は、出力マイクロ波読み出し信号11の位相または振幅あるいはその両方でエンコードされる。出力読み出し信号11は、共振器の読み出し信号であり、伝送線71上で読み出し共振器74からサーキュレータ80に出力された後に、伝送線81上でマイクロ波/光変換器50に出力される。サーキュレータ80は、共振器の出力読み出し信号11を(回転させて)マイクロ波/光変換器50に向けるように設計されている。共振器の出力読み出し信号11は、読み出し共振器74の読み出し共振周波数(f
r)で(または読み出し共振周波数の近くで)のマイクロ波信号である。
【0031】
同時に、光信号発生器22(例えば、光ポンプ)は、光ポンプ周波数(f
p)で光ポンプ信号23を生成するように構成される。光信号発生器22は、光ポンプ信号23を、伝送線2上でマイクロ波/光変換器50に送信する。同時に、光信号発生器24は、入力光信号周波数(f
io)で入力光信号25を生成するように構成される。光信号発生器24は、入力光信号25を、マイクロ波/光変換器50に送信する。
【0032】
マイクロ波/光変換器50は、量子ビット72の量子ビット状態を有する出力読み出し信号11および光ポンプ信号23を(同時に)受信するように構成される。入力光信号25は任意選択であり、マイクロ波/光変換器50を特徴付けるため、またはこれにバイアスを印加するために使用され得る。マイクロ波/光変換器50は、出力マイクロ波読み出し信号11を、周波数f
ooで出力光信号27に変換する。出力光信号27は、(出力側で)伝送線4を介してマイクロ波/光変換器50から光子検出器26に送信される。出力光信号27は、量子ビット72の量子ビット状態の情報を含んでおり、光子検出器26は、出力光信号27において光子を検出することによって、量子ビット状態を読み取る/抽出するように構成される。光子検出器26は、例えば4ケルビン(すなわち、4Kステージにある)などの、極低温度に冷却され得る。
【0033】
残りの光ポンプ信号23は、光ダンプ28へダンプされる。光ダンプまたはビームダンプは、エネルギービーム内の光子またはその他の粒子のエネルギーを吸収するように設計されたデバイスである。残りの出力読み出し信号11は、終端点30で終端される。終端点30は50オームの負荷であってよく、終端点は、事前に定義された温度(例えば、10mK)に冷却される。1つの実装では、終端点30は抵抗器であってよい。
【0034】
実施形態によれば、マイクロ波/光変換デバイス50内で、量子ビット状態の情報を含んでいるマイクロ波出力読み出し信号11が、光ポンプ信号23からのパワー(power)を使用して光信号(例えば、周波数は約193テラヘルツ(THz)である)に変換される。ただし、光ポンプ周波数(f
p)=出力マイクロ波信号周波数(f
r)+マイクロ波信号から変換された出力光信号周波数(f
oo)である。
【0035】
図2は、1つまたは複数の実施形態による、読み出しアーキテクチャ/マイクロ波および光装置100の動作例を示すフローチャート150である。この例では、量子ビット状態A(量子状態Aと交換可能なように呼ばれる)は、励起状態に対応してよい。
【0036】
ブロック152で、読み出し共振器74が量子ビット72の量子ビット状態の情報を含んでいるマイクロ波出力読み出し信号11を出力するように、マイクロ波入力読み出し信号21が、読み出し共振器74に入力される。1つの実装では、マイクロ波入力信号21は読み出し共振器周波数(f
r)である。
【0037】
判定ブロック154で、量子ビット72が量子ビット状態Aであるかどうかに従って、フローは2つの異なる動作を含むことができる。「いいえ」である(量子ビット72が量子ビット状態Aでない)場合、ブロック156で、マイクロ波出力読み出し信号11はゼロであるか、または低い。低いマイクロ波出力読み出し信号11は、光信号に変換するためにマイクロ波/光変換器50に対して事前に定義されたしきい値を下回る事前に定義された値として、定義される。1つの実装では、低いマイクロ波出力読み出し信号11は、マイクロ波/光変換器50が光変換を認識すること、または利用すること、あるいはその両方を行うことができないほど、非常に小さい。
【0038】
ブロック158で、読み出し共振器74からのマイクロ波出力読み出し信号11が、マイクロ波/光変換器50に入る。ブロック160で、マイクロ波出力読み出し信号11が低い(または、事前に定義されたしきい値を下回る)ため、マイクロ波/光変換器50によってマイクロ波信号が変換されない。それに応じて、ブロック162で、光子検出器26によって光信号が検出されず、したがって、量子ビット72が量子ビット状態Aではないということを確定する(光子検出器26による)検出はない。
【0039】
代替として、判定ブロック154で、「はい」である(量子ビット72が量子ビット状態Aである)ため、フローがブロック164に分岐する。ブロック164で、読み出し共振器74からのマイクロ波出力読み出し信号11が、マイクロ波/光変換器50に入る。
【0040】
ブロック166で、マイクロ波/光変換器50が、マイクロ波出力読み出し信号11を、量子ビット状態を含んでいる出力光信号27に変換する。
【0041】
ブロック168で、光子検出器26によって出力光信号27が検出され、光子検出器26によるこの出力光信号27の(少なくとも1つの光子の)検出が、量子ビット72が状態Aであることを確定する。1つの実装では、量子ビット状態は、光子数または光パワーに含まれる(必ずしも、位相にも振幅にも含まれない)。光信号が検出される(すなわち、状態Aにおいて「はい」である)か、または検出されないかということが、量子ビット72が状態Aであるかどうかを決定する。
【0042】
図3は、1つまたは複数の実施形態による、アーキテクチャ/マイクロ波および光装置100(量子ビット読み出しシステム)の回路図であり、量子システムの測定を示している。
図1、
図2、および
図3には同一の要素が含まれており、それらの説明は繰り返されないが、本明細書においてすでに説明されている。
【0043】
図3は、マイクロ波/光変換器50を含んでおり、より詳細な図を示している。この例では、マイクロ波/光変換器50は、光学機械式マイクロ波/光変換デバイスとして表されている。光学機械式マイクロ波/光変換デバイス50は、圧電光学機械式発振器/共振器(piezo optical mechanical oscillator/resonator)205を含んでいる。圧電光学機械式発振器205は、光ポンプ信号23および入力光信号25と共に、マイクロ波出力読み出し信号11に基づいて発振する(すなわち、動く)圧電材料を含んでいる。光学機械式マイクロ波/光変換デバイス50は、光子検出器26による検出のために、マイクロ波出力読み出し信号11を出力光信号27に変換する。1つの実装では、光学機械式発振器は、圧電式である必要はない。1つの実装では、光学機械式発振器は、光結晶の光ビーム空洞(optical beam cavity)または誘電体膜の光学機械式空洞(opto-mechanical cavity)であることが可能である。
【0044】
例えば、量子ビット状態の情報を含んでいるマイクロ波出力読み出し信号11が、光学機械式マイクロ波/光変換デバイス50において、光ポンプ信号23からのパワーを使用して(約193テラヘルツ(THz)の光周波数として)出力光信号27に変換される。光学機械式マイクロ波/光変換デバイス50では、光共振器205を機械的に振動させることによって、マイクロ波出力読み出し信号11が光周波数を変調し、光ポンプ22からの光ポンプ信号23を使用して、出力光信号27に変換される。
【0045】
図4は、1つまたは複数の実施形態による、アーキテクチャ/マイクロ波および光装置100(量子ビット読み出しシステム)の回路図であり、量子システムの測定を示している。
図1、
図2、および
図4には同一の要素が含まれており、それらの説明は繰り返されないが、本明細書においてすでに説明されている。
【0046】
図4は、マイクロ波/光変換器50をさらに詳細に示している。この例では、マイクロ波/光変換器50は、電子光学式マイクロ波/光変換器として表されている。電子光学式マイクロ波/光変換器50は、光読み出し結合共振器310(λ’)、電子光学デバイス305(f)、および光ポンプ結合共振器(optical pump coupling resonator)315(λ)を含んでいる。光読み出し結合共振器310(λ’)は、電子光学デバイス305(f)に結合され、光ポンプ結合共振器315(λ)も、電子光学デバイス305(f)に結合される。
【0047】
この例では、光読み出し結合共振器310(λ’)は、出力光信号27の出力光周波数f
ooに対応する(または、一致する)波長λ’を有する。電子光学デバイス305(f)は、マイクロ波出力読み出し信号11の読み出し共振器周波数f
rに対応する(または、一致する)自由スペクトル領域の周波数(f)を有する。また、光ポンプ結合共振器315(λ)は、光ポンプ信号23のポンプ周波数f
pに対応する(または、一致する)波長λを有する。電子光学デバイス305は、fでのマイクロ波共振器および電子光学材料で作製された光共振器を含んでおり、光共振器の光共振器周波数は、マイクロ波光子がマイクロ波共振器fから加えられたときに変化する。
【0048】
例えば、量子ビット状態の情報を含んでいるマイクロ波出力読み出し信号11が、電子光学式マイクロ波/光変換デバイス50において、光ポンプ信号23からのパワーを使用して出力光信号27(例えば、約193THzの周波数)に変換される。電子光学式マイクロ波/光変換デバイス50は、マイクロ波信号が光周波数を変調できるようにする電子光学効果を変換に使用する。光ポンプ信号23およびマイクロ波信号11が電子光学デバイス305に入った場合、マイクロ波出力読み出し信号11が出力光信号27に変換される。
【0049】
図5は、1つまたは複数の実施形態による、アーキテクチャ/マイクロ波および光装置100(量子ビット読み出しシステム)の回路図であり、量子システムの測定を示している。
図5で、読み出しシステム100は、複数の量子ビットの多重化読み出し用に構成されている。
図1、
図2、
図4、および
図5には同一の要素が含まれており、それらの説明は繰り返されないが、本明細書においてすでに説明されている。
【0050】
図5は、複数の電子光学式マイクロ波/光変換器50_1〜50_Nを含んでおり、それらの各電子光学式マイクロ波/光変換器は、それ自身の光読み出し結合共振器310(λ1’〜λN’)、それ自身の電子光学デバイス305(f1〜fN)、およびそれ自身の光ポンプ結合共振器315(λ1〜λN)を含んでいる。各光読み出し結合共振器310(λ1’〜λN’)は、各電子光学デバイス305(f1〜fN)に結合され、各光ポンプ結合共振器315(λ1〜λN)も、それ自身の電子光学デバイス305(f1〜fN)に結合される。Nは、特定の要素の最後の番号を表す整数である。
【0051】
この例では、光読み出し結合共振器310(λ1’〜λN’)は、出力光信号27の出力光周波数f
oo1〜f
ooNにそれぞれ対応する(または、一致する)波長λ1’〜λN’(または周波数)を有する。個々の光読み出し結合共振器310は、ポンプ23を使用して入力マイクロ波信号11が出力光信号27に変換された後に、出力光信号27の光を発する。マイクロ波出力読み出し信号11の読み出し共振器周波数f
r1〜f
rNは、多重化されて、マイクロ波導波管71、81上で各電子光学デバイス305(f1〜f2)に送信される。それに応じて、電子光学デバイス305(f1〜f2)は、マイクロ波出力読み出し信号11の読み出し共振器周波数f
r1〜f
rNに対応する(または一致する)周波数(f1〜f2)を有する。
【0052】
また、光ポンプ信号23の複数のポンプ周波数f
p1〜f
pNが存在する。それに応じて、光ポンプ結合共振器315(λ1〜λN)は、光ポンプ信号23のポンプ周波数f
p1〜f
pNに対応する(または、一致する)波長λ1〜λN(または周波数)をそれぞれ有する。
【0053】
マイクロ波量子システム(microwave quantum system)70は、N個の量子ビット72およびN個のマイクロ波読み出し共振器74を含んでいる。N個の量子ビット72はそれぞれ、N個のマイクロ波読み出し共振器74のうちのそれ自身の1つに結合される。N個のマイクロ波読み出し共振器74のうちの個々のマイクロ波読み出し共振器はそれぞれ、N個の量子ビット72のうちの各量子ビットの状態を読み取る(すなわち、探査する)ように設計される。N個の量子ビット72のうちの1つは、N個の読み出し共振器74のうちの1つに動作可能なように結合される。
【0054】
N個の量子ビット72それぞれの複数の量子ビット状態の情報をそれぞれ含んでいる複数の多重化されたマイクロ波出力読み出し信号11が、マイクロ波/光変換デバイス50_1〜50_Nに入る。各マイクロ波/光変換デバイス50_1〜50_Nは、N個の量子ビット72それぞれからの各マイクロ波出力読み出し信号11(各周波数f
r1〜f
rNを有する)を選択的に変換するように設計された、わずかに異なる周波数(f1〜fN)を有する。この設定により、各マイクロ波/光変換器50_1〜50_Nを介して、光導波管4およびN個の光子検出器(出力側)上で、多重化された各マイクロ波出力読み出し信号11(各読み出し周波数f
r1〜f
rNを有する)を多重化された出力光信号27に変換することによって、N個の量子ビット72それぞれの複数の量子ビット状態を同時に読み出すことが可能になる。各指定1〜Nは、対応する各要素、信号、周波数、波長、デバイスなどに関連付けられるように意図されているということが理解されるべきである。
【0055】
図6は、1つまたは複数の実施形態による、マイクロ波読み出し共振器74に結合された量子ビット72を読み取る方法のフローチャート500である。
図1、2、3、4、5、8、または9、あるいはその組み合わせを参照することができる。
【0056】
ブロック505で、マイクロ波入力読み出し信号21が、マイクロ波共振器周波数で、量子ビット72に結合されたマイクロ波読み出し共振器74に入力される。
【0057】
ブロック510で、マイクロ波読み出し信号11がマイクロ波読み出し共振器74からマイクロ波/光変換器50に出力する。マイクロ波読み出し信号11は量子ビット72の量子ビット状態の情報を含んでいる。ここで、マイクロ波/光変換器50は、マイクロ波読み出し信号を光信号に変換するように構成されている。
【0058】
ブロック515で、マイクロ波/光変換器50によって光信号27が出力されることに応答して、量子ビット72が事前に定義された量子ビット状態にあるということが決定される。ブロック520で、マイクロ波/光変換器50によって光信号が出力されないことに応答して、量子ビット72が事前に定義された量子ビット状態にないということが決定される。
【0059】
量子ビット72が事前に定義された量子ビット状態にあるということを決定することは、マイクロ波/光変換器50によってマイクロ波読み出し信号11を光信号27に変換することを含む。マイクロ波/光変換器50は、光信号27を出力するように構成される。
【0060】
光子検出器26は、マイクロ波/光変換器50からの光信号27(における少なくとも1つの光子)を検出する。光子検出器26による光信号の検出は、量子ビットが事前に定義された量子ビット状態にあるということの決定に使用される。光子検出器26が、マイクロ波/光変換器50から出力された光信号を検出しないことに応答して、光信号を検出しないことが、量子ビット72が事前に定義された量子ビット状態にないということの決定に使用される。マイクロ波読み出し信号11がマイクロ波/光変換器50のしきい値を下回り、それによって、マイクロ波/光変換器が光信号を出力しないので、光子検出器によって光信号が検出されない。
【0061】
1つの実装では、ブロック525および530で、光子検出器26を読み取る操作者が決定を行う。1つの実装では、プロセッサ、コンピュータ実装命令、およびメモリを含んでいるコンピュータが、光子検出器26に接続されてよく、このコンピュータは、このコンピュータがブロック525および530で決定を行うことができるように、光子検出器26による光信号27の検出を認識するように構成される。
【0062】
マイクロ波/光変換器50は、電子光学デバイス(
図4および5)、光学機械デバイス(
図1)、圧電光学デバイス(opto-piezo-electricdevice)(
図3)、磁気光学デバイス、または量子マイクロ波信号(quantum microwave signal)を光信号に変換できる任意のデバイスから成る群から選択されるデバイスである。
【0063】
マイクロ波読み出し共振器74は、マイクロ波空洞(例えば、1D、2D、または3Dマイクロ波読み出し空洞)である。
【0064】
マイクロ波共振器74、量子ビット72、およびマイクロ波/光変換器50は、熱ノイズ温度(thermal noise temperature)よりも非常に低い、事前に定義された温度に冷却される。
【0065】
図7は、1つまたは複数の実施形態による、N個のマイクロ波共振器74(例えば、1〜N個のマイクロ波読み出し共振器)にそれぞれ結合されたN個の量子ビット72を読み取る方法のフローチャート600である。
図1、2、3、4、5、6、8、または9、あるいはその組み合わせを参照することができる。
【0066】
ブロック605で、N個のマイクロ波入力読み出し信号21が、N個の異なるマイクロ波共振器周波数で、N個の量子ビット72をそれぞれ結合するN個のマイクロ波読み出し共振器74に入力される。ここで、Nは整数であり、N個のマイクロ波共振器周波数のうちの各マイクロ波共振器周波数が、N個のマイクロ波共振器74のうちの1つに個々に対応する。N個の異なるマイクロ波共振器周波数は、1対1で、N個のマイクロ波共振器74に対応する。
【0067】
ブロック610で、N個のマイクロ波読み出し信号11(例えば、1〜N個のマイクロ波読み出し信号が導波管71〜81上で多重化されてよい)が、N個のマイクロ波共振器74からN個のマイクロ波/光変換器50_1〜50_Nにそれぞれ出力される。N個のマイクロ波読み出し信号11は、N個の量子ビットそれぞれの量子ビット状態の情報を個々に含む。ここで、N個のマイクロ波/光変換器50は、N個のマイクロ波読み出し信号11をN個の光信号27(例えば、光導波管4上の1〜N個の光信号)に変換するように構成されている。N個のマイクロ波読み出し信号11のうちの1つは、N個の量子ビット72のうちの1つに個々に対応する。
【0068】
ブロック615で、N個のマイクロ波/光変換器50_1〜50_NによってN個の光信号27のいずれかが出力されることに応答して、N個の量子ビット72のうちの対応する量子ビットが事前に定義された量子ビット状態にあるということが決定される。
【0069】
ブロック620で、N個のマイクロ波/光変換器50_1〜50_Nのいずれかによって光信号が出力されないことに応答して、N個の量子ビット72のうちの対応する量子ビットが事前に定義された量子ビット状態にないということが決定される。
【0070】
N個のマイクロ波/光変換器50_1〜50_Nは、N個の出力光信号27を、N個の光子検出器に向かう光回線4上に出力される多重光信号に多重化するように構成される。
【0071】
1つまたは複数のマイクロ波導波管71、81は、マイクロ波/光変換器50およびマイクロ波共振器74に結合される。1つまたは複数の光導波管2、4は、マイクロ波/光変換器50に結合される。1つまたは複数のマイクロ波サーキュレータ80は、マイクロ波共振器74およびマイクロ波/光変換器50を接続する。
【0072】
読み出しデバイス70または読み出しデバイス70内の任意のデバイスあるいはその両方が、チップ上で、例えば集積回路として実装されてよいということが理解されるべきである。マイクロ波/光変換器50またはマイクロ波/光変換器50内の任意のデバイスあるいはその両方が、チップ上で、例えば集積回路として実装されてよいということが理解されるべきである。
【0073】
1つまたは複数の実施形態によるハードウェアのオーバーヘッドの削減およびハードウェア要件の低減を理解することにおいて読者を支援するために、例示の目的で、ただしこれに限定されない表が、
図8および9に示されている。
【0074】
図8は、量子ビットごとの従来の読み出しと、1つまたは複数の実施形態による量子ビットごとのマイクロ波/光変換を使用した読み出しを示す表700である。表700は、ハードウェア要件、量子ビット設定ごとの物理的設置面積、拡張、および良好な信号対ノイズ比(SNR:signal-to-noise ratio)の要件というタイトルが付けられた4つの行を示している。
【0075】
各量子ビットの読み出しに関して、従来のマイクロ波読み出しには、実施形態のマイクロ波/光変換器を使用した光読み出しよりも大きいハードウェア要件がある。
【0076】
図9は、1つまたは複数の実施形態による、N個の量子ビットの読み出しのハードウェア要件の比較を示す表800である。表800は、読み出し駆動線、アイソレータ、サーキュレータ、量子増幅器、およびポンプ線というタイトルが付けられた5つの行を示している。
【0077】
表8は、従来の読み出し、従来の多重化読み出し、および1つまたは複数の実施形態による多重化を使用した光読み出しの比較を示している。N個の量子ビット読み出しの読み取りに関して(Nは整数)、実施形態におけるN個の量子ビットの多重化を使用した光読み出しは、従来の読み出しまたは従来の多重化読み出しよりも、必要なハードウェア・デバイスが少ない。
【0078】
技術的効果および利点は、例えば1つまたは複数のマイクロ波/光変換器を利用することによる、改善された量子ビット読み出しシステムおよび量子ビット読み出し方法を含む。技術的利点は、光ファイバを介して光子を使用して、マイクロ波周波数での信号を有する量子ビットの量子状態を読み出す、新しい構造および方法を提供する。さらに、実施形態は、重いマイクロ波コンポーネントの量における大幅な削減を実現することによって、最新技術と比較して、ハードウェア要件の少ないマイクロ波量子ビットの拡張を可能にする。さらに、実施形態は、読み出しケーブルが低温段で終端された、極めて熱的および電気的に分離された環境内でのマイクロ波量子ビットの量子状態の読み出しを開示する。
【0079】
本発明の態様は、本明細書において、本発明の実施形態による、方法、装置(システム)、およびコンピュータ・プログラム製品のフローチャート図またはブロック図あるいはその両方を参照して説明される。フローチャート図またはブロック図あるいはその両方の各ブロック、ならびにフローチャート図またはブロック図あるいはその両方に含まれるブロックの組み合わせが、コンピュータ可読プログラム命令によって実装され得るということが理解されるであろう。
【0080】
図内のフローチャートおよびブロック図は、本発明のさまざまな実施形態による、システム、方法、およびコンピュータ・プログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能、および処理を示す。これに関連して、フローチャートまたはブロック図内の各ブロックは、規定された論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能な命令を備える、命令のモジュール、セグメント、または部分を表してよい。一部の代替の実装では、ブロックに示された機能は、図に示された順序とは異なる順序で発生してよい。例えば、連続して示された2つのブロックは、実際には、含まれている機能に応じて、実質的に同時に実行されるか、または場合によっては逆の順序で実行されてよい。ブロック図またはフローチャート図あるいはその両方の各ブロック、ならびにブロック図またはフローチャート図あるいはその両方に含まれるブロックの組み合わせは、規定された機能または動作を実行するか、または専用ハードウェアとコンピュータ命令を組み合わせて実行する専用ハードウェアベースのシステムによって実装され得るということにも注意する。
【0081】
本発明のさまざまな実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であることは意図されておらず、開示された実施形態に制限されない。記載された実施形態の範囲および思想を逸脱することなく多くの変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。本明細書で使用された用語は、実施形態の原理、実際の適用、または市場で見られる技術を超える技術的改良を最も適切に説明するため、または他の当業者が本明細書で開示された実施形態を理解できるようにするために選択されている。