特許第6899631号(P6899631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899631
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】分散ノズル
(51)【国際特許分類】
   B01F 3/06 20060101AFI20210628BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20210628BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20210628BHJP
   B01F 5/04 20060101ALI20210628BHJP
   B05B 7/14 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   B01F3/06ZAB
   B01D53/68 100
   B01D53/83
   B01F5/04
   B05B7/14
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-45302(P2016-45302)
(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公開番号】特開2017-159227(P2017-159227A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年9月18日
【審判番号】不服2020-4249(P2020-4249/J1)
【審判請求日】2020年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】成澤 道則
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 大光 太朗
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−140228(JP,U)
【文献】 実公昭18−5124(JP,Y1)
【文献】 国際公開第2008/068828(WO,A1)
【文献】 特開2003−159512(JP,A)
【文献】 特開平5−272499(JP,A)
【文献】 特開昭59−229100(JP,A)
【文献】 特開平3−296427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F3/,5/,
B01D53/,
B01J4/,
B05B7/14
B65G53/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸方向の一端側に作動気体を供給する作動気体供給部が接続され、前記一軸方向の他端部は前記作動気体供給部から供給される前記作動気体の噴射口である、気体噴射手段と、
前記気体噴射手段の前記一軸方向の他端側に配置されて、前記噴射口から噴射される前記作動気体の噴流を軸心方向の一端側から入れて前記軸心方向の他端側へ流通させる筒状の混合撹拌部と、
前記混合撹拌部の前記軸心方向の一端側に配置されて、粉体輸送ラインを介して搬送気体で輸送される供給対象粒子を供給する粒子供給部と
有してなり
前記粒子供給部に対する前記粉体輸送ラインの接続位置は、前記気体噴射手段の前記噴射口よりも、前記気体噴射手段の前記一軸方向の一端側に位置し、
前記噴射口の口径、前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内径、および、前記噴射口から前記混合撹拌部の軸心方向他端側までの距離は、前記噴射口から噴射されて前記混合撹拌部内を拡径しながら進行する作動気体の噴流が前記混合撹拌部の内面のうち前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内面のみに接する設定とされていること
を特徴とする分散ノズル。
【請求項2】
前記混合撹拌部の軸心方向他端側にディフューザーを備えて、
ディフューザーの出口をガス流路に接続した
請求項1記載の分散ノズル。
【請求項3】
前記供給対象粒子は、排ガスに分散させて供給する薬剤の粉体とした
請求項1または2記載の分散ノズル。
【請求項4】
前記気体噴射手段は、前記粒子供給部の外周に配置され、
前記気体噴射手段の噴射口は、前記粉体供給部の周方向に離れた個所に複数配置される、
請求項1記載の分散ノズル。
【請求項5】
前記気体噴射手段の前記噴射口は、前記混合撹拌部の内部に配置される、
請求項1記載の分散ノズル。
【請求項6】
前記噴射口から噴射されて前記混合撹拌部内を拡径しながら進行する作動気体の噴流が前記混合撹拌部の内面のうち前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内面のみに接するために、
前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内径の半径と、前記噴射口から前記混合撹拌部の軸心方向他端側までの距離とは、以下の式(1)を満たす、
請求項1記載の分散ノズル。
(r2−r1)/L=tanθ (1)
ただし、
r1:前記噴射口の口径の半径
r2:前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内径の半径
L:前記噴射口から前記混合撹拌部の軸心方向他端側までの距離
θ:前記噴射口より噴射される作動気体の噴流が拡径するときの前記混合撹拌部の軸心方向からの拡がり角
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体や粒体などの供給対象粒子を分散させて供給する分散ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物焼却炉のように、煤塵と、塩化水素などの酸性ガスとが含まれる排ガスを排出する装置は、排ガスの処理設備として、排ガスの流路に接続されたバグフィルタなどの集塵装置と、排ガス中の酸性ガスを中和するための手段とを備えている。
【0003】
排ガス中の酸性ガスを中和するための手段としては、集塵装置の上流側の排ガスの流路に、消石灰などのアルカリ性の薬剤の粉体を吹き込む形式のものが多く用いられている。
【0004】
この種の薬剤の粉体は、薬剤供給装置や貯槽から切り出された後、空気輸送で搬送されるが、この粉体が空気輸送される配管内では、粉体は、主に配管の底部を流れる管底流となっている。また、この管底流の内部では、部分的に粉体同士が凝集していることもある。
【0005】
そのため、空気輸送される薬剤の粉体は、単に搬送用空気の流れに乗せて排ガスの流路に供給されると、凝集物を含んでいることがあり、この凝集物を含んだ状態では、酸性ガスとの反応に利用可能な粉体(粒子)の表面積が低下する。更に、薬剤の粉体同士の凝集物は、排ガスの流路に供給されても、排ガスの流れに同伴されずに直ぐに集塵装置の底部に着床してしまい、排ガスとの反応にほとんど寄与せずに煤塵と一緒に回収されることもある。このような未反応薬剤が生じることは、ランニングコストの増加を招く。
【0006】
そこで、排ガスの流路の周壁に、内筒部と外筒部とを備えた二重筒構造の薬剤供給ノズルを設けて、内筒部と外筒部のいずれか一方から空気輸送された薬剤の粉体を供給すると共に、いずれか他方から高圧蒸気を吹き込むように供給することが従来提案されている。この構成によれば、供給される薬剤の粉体の撹拌を促進させることができるとされている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−128060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に示された薬剤供給ノズルは、内筒部と外筒部とが共に排ガスの流路に開口した構成とされているため、薬剤の粉体が高圧蒸気の流れに接するのは、排ガスの流路に吹き込まれる時点となる。
【0009】
一方、薬剤の粉体は、排ガスの流路に吹き込まれた時点で、移動可能な範囲が排ガスの流路内全体に拡大される。
【0010】
そのため、排ガスの流路に吹き込まれた薬剤の粉体では、部分的に高圧蒸気の流れから外れた領域に移動するものが生じる可能性がある。このように高圧蒸気の流れから外れた領域に移動した薬剤の粉体は、高圧蒸気の流れによる撹拌を受けないため、凝集した粉体の分散性が低下する場合がある。
【0011】
よって、特許文献1に示されたノズルの構成では、粉体や粒体などの供給対象粒子を分散させて供給するときに、供給対象粒子の分散性をあまり高めることができない。
【0012】
そこで、本発明は、粉体や粒体などの供給対象粒子を分散させて供給することができ、更に、供給対象粒子の分散性の向上化を図ることができる分散ノズルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために、一軸方向の一端側に作動気体を供給する作動気体供給部が接続され、前記一軸方向の他端部は前記作動気体供給部から供給される前記作動気体の噴射口である、気体噴射手段と、前記気体噴射手段の前記一軸方向の他端側に配置されて、前記噴射口から噴射される前記作動気体の噴流を軸心方向の一端側から入れて前記軸心方向の他端側へ流通させる筒状の混合撹拌部と、前記混合撹拌部の前記軸心方向の一端側に配置されて、粉体輸送ラインを介して搬送気体で輸送される供給対象粒子を供給する粒子供給部と有してなり前記粒子供給部に対する前記粉体輸送ラインの接続位置は、前記気体噴射手段の前記噴射口よりも、前記気体噴射手段の前記一軸方向の一端側に位置し、前記噴射口の口径、前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内径、および、前記噴射口から前記混合撹拌部の軸心方向他端側までの距離は、前記噴射口から噴射されて前記混合撹拌部内を拡径しながら進行する作動気体の噴流が前記混合撹拌部の内面のうち前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内面のみに接する設定とされている構成を有する分散ノズルとする。
【0014】
前記混合撹拌部の軸心方向他端側にディフューザーを備えて、ディフューザーの出口をガス流路に接続した構成とする。
【0015】
前記供給対象粒子は、排ガスに分散させて供給する薬剤の粉体とした構成とする。
また、前記気体噴射手段は、前記粒子供給部の外周に配置され、前記気体噴射手段の噴射口は、前記粉体供給部の周方向に離れた個所に複数配置される構成とする。
さらに、前記気体噴射手段の前記噴射口側は、前記混合撹拌部の内部に配置される構成とする。
さらにまた、前記噴射口から噴射されて前記混合撹拌部内を拡径しながら進行する作動気体の噴流が前記混合撹拌部の内面のうち前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内面のみに接するために、前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内径の半径と、前記噴射口から前記混合撹拌部の軸心方向他端側までの距離とは、以下の式(1)を満たす構成とする。
(r2−r1)/L=tanθ (1)
ただし、r1:前記噴射口の口径の半径、r2:前記混合撹拌部の軸心方向他端側の内径の半径、L:前記噴射口から前記混合撹拌部の軸心方向他端側までの距離、θ:前記噴射口より噴射される作動気体の噴流が拡径するときの前記混合撹拌部の軸心方向からの拡がり角、とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の分散ノズルによれば、供給対象粒子を分散させて供給することができ、更に、供給対象粒子の分散性の向上化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】分散ノズルの第1実施形態を示す概略図である。
図2図1の分散ノズルの混合撹拌部を拡大して示す図である。
図3】分散ノズルの使用例を示す概要図である。
図4】分散ノズルの第1実施形態の変形例を示す概略図である。
図5】分散ノズルの第2実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の分散ノズルについて、図面を参照して説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、分散ノズルの第1実施形態を示す切断概略側面図である。図2は、図1の分散ノズルにおける混合撹拌部を拡大して示す切断側面図である。図3は、図1の分散ノズルの使用例を示す図である。
【0020】
本実施形態の分散ノズルは、図1に符号1で示すものである。本実施形態では、分散ノズル1は、図3に示すように、排ガスaが流通するガス流路bに設置されて、供給対象粒子として、消石灰のようなアルカリ性の薬剤の粉体7をガス流路bに分散させて供給するために使用する場合の例を説明する。
【0021】
本実施形態の分散ノズル1の基本的構成は、作動気体としての空気4の噴射口3を有する気体噴射手段2と、気体噴射手段2の噴射口3側に配置されて、噴射口3から噴射される空気4の噴流を軸心方向の一端側5aから受け入れて軸心方向の他端側5bへ流通させる筒状の混合撹拌部5と、混合撹拌部5の軸心方向の一端側5aに粉体7を供給する粒子供給部としての粉体供給部6とを備える構成とされている。
【0022】
更に、噴射口3より噴射される空気4の噴流は、略円錐状に徐々に拡径しながら進行する。このことに着目して、混合撹拌部5は、噴射口3より噴射された空気4の噴流が混合撹拌部5内を徐々に拡径しながら進行して混合撹拌部5の軸心方向他端側5bに達するときに、軸心方向他端側5bの内面に拡径した空気4の噴流が接するように、噴射口3の口径(半径r1)、軸心方向他端側5bの内径(半径r2)、および、軸心方向他端側5bの噴射口3からの距離Lが設定されている。
【0023】
本実施形態では、気体噴射手段2は、一軸方向(図1では左右方向)に沿って配置された管状の部材とされている。気体噴射手段2は、上流側端部となる軸心方向の一端側(図1では左端側)に、図示しない作動気体供給部としての空気供給部が接続されている。
【0024】
気体噴射手段2は、下流側端部となる軸心方向の他端部(図1では右端部)が、空気4の噴射口3とされている。これにより、気体噴射手段2は、空気供給部より軸心方向の一端側に供給される空気4を、噴射口3から噴流として噴射することができる。
【0025】
混合撹拌部5は、気体噴射手段2の外径よりも大きな内径を有する筒状の部材とされている。混合撹拌部5は、気体噴射手段2に対し、同軸に配置され、且つ、本実施形態では、混合撹拌部5の軸心方向の一端側(図1では左端側)5aが、気体噴射手段2の噴射口3側の外周に、設定された寸法分、重なるように配置されている。これにより、混合撹拌部5は、気体噴射手段2の噴射口3より噴射される空気4の噴流を、軸心に沿う位置で軸心方向一端側5aから軸心方向他端側5bへ流通させることができるようにしてある。
【0026】
また、図2に示すように、混合撹拌部5の軸心方向他端側5bの内径の半径r2と、噴射口3から軸心方向他端側5bまでの距離Lは、たとえば、噴射口3の口径の半径r1と、噴射口3より噴射される空気4の噴流が略円錐状に拡径するときの軸心方向からの拡がり角θのデータを基に、以下の式(1)を満たすように設定すればよい。
(r2−r1)/L = tanθ ・・・(1)
【0027】
これにより、拡径した空気4の噴流は、混合撹拌部5の軸心方向他端側5bの内面に接するようになる。なお、図2では、図示する便宜上、空気4の噴流の外形を示す線は、混合撹拌部5の内面よりも内側に記載してある。
【0028】
ところで、空気4の噴流は、厳密には、進行するにしたがって速度が低下し、速度の低下に伴って空気4の噴流が単位距離当たりに拡径する割合(角度)は次第に増加する。そのため、この空気4の噴流の減速に伴う拡径の割合の変化も考慮して、拡径した空気4の噴流が混合撹拌部5の軸心方向他端側5bの内面に接するように、前記半径r2と距離Lとを定めるようにしてもよいことは勿論である。
【0029】
なお、噴射口3より噴射された空気4の噴流が混合撹拌部5を通過するときの圧力損失が過大にならず、空気4の噴流を最終的にガス流路bへ吹き込むことができるという条件が満たされていれば、距離Lは、前記式(1)で求まる値よりも長く設定されていてもよい。同様に、半径r2は、前記式(1)で求まる値よりも小さく設定されていてもよい。これらいずれの場合も、空気4の噴流は、混合撹拌部5の軸心方向他端側5bの内面に接するようになる。
【0030】
また、噴射口3より噴射された空気4の噴流が混合撹拌部5の軸心方向他端側5bに達するときに、この噴流が軸心方向他端側5bの内面に接するようにしてあれば、前記半径r1、半径r2、距離Lなどの設定は、数値モデルを用いた数値解析の結果や、試験体を用いて行う試験の結果に基づいて定めるようにしてもよいことは勿論である。
【0031】
粉体供給部6は、混合撹拌部5よりも大径として気体噴射手段2の外周に配置された筒状部8と、筒状部8の軸心方向の一端側と、気体噴射手段2の外面との間を閉塞させる円環状の端壁部9と、軸心方向の一端側から他端側へ徐々に縮径する筒状としてあって軸心方向の一端側が筒状部8の軸心方向の他端側に接続された縮径筒部10とを備えた構成とされている。縮径筒部10の軸心方向の他端側は、混合撹拌部5の軸心方向一端側5aに接続されている。これにより、筒状部8と端壁部9と縮径筒部10の内側には、気体噴射手段2を囲む配置の円筒状の空間が形成され、この空間が分散室11とされている。
【0032】
筒状部8には、図示しない粉体供給装置から切り出される粉体7を空気などの搬送気体12により空気輸送する粉体輸送ライン13が、分散室11に連通するように接続されている。筒状部8に接続された粉体輸送ライン13の向きは、筒状部8の軸心に向く方向とされていてもよいし、軸心からずれた方向とされていてもよい。
【0033】
これにより、分散室11では、粉体輸送ライン13から搬送気体12と一緒に粉体7が供給されると、この粉体7を分散室11内で気体噴射手段2の周方向に分散させることができる。この際、筒状部8に接続された粉体輸送ライン13の向きが筒状部8の軸心からずれた方向とされている場合は、粉体輸送ライン13より分散室11に供給される搬送気体12および粉体7が、分散室11内に旋回流れを形成する。よって、この場合は、分散室11内での周方向への粉体7の分散性をより向上させることができる。
【0034】
粉体供給部6では、縮径筒部10の軸心方向他端側の開口が、混合撹拌部5への粉体7の供給口14となる。
【0035】
なお、本実施形態では、この供給口14の軸心位置に、気体噴射手段2の噴射口3寄りの部分が配置されている。したがって、本実施形態における粉体供給部6は、分散室11内で周方向に分散された搬送気体12および粉体7を、混合撹拌部5の軸心方向一端側5aで且つ気体噴射手段2の噴射口3の外周となる位置へ供給することができる。
【0036】
更に、粉体供給部6では、気体噴射手段2の噴射口3から噴射される空気4の噴流に対し、平行流となる方向に向けて搬送気体12および粉体7を供給することができる。このため、混合撹拌部5では、空気4の噴流の周囲における渦の発生を、搬送気体12および粉体7の流れを利用して抑制することができ、よって、前記渦の発生に起因する粉体7の滞留や、渦に巻き込まれた粉体7による混合撹拌部5の内面の摩耗を抑制することができる。
【0037】
混合撹拌部5の軸心方向の他端側5bには、軸心方向の一端側から他端側へ徐々に拡径するディフューザー(拡径筒)15の軸心方向一端側が接続されている。
【0038】
本実施形態の分散ノズル1は、ディフューザー15の軸心方向他端側が、最終的な出口16となる。したがって、この出口16としてのディフューザー15の軸心方向他端側が、ガス流路bに連通接続されている(図3参照)。
【0039】
これにより、混合撹拌部5を通過した後の空気4の噴流は、ディフューザー15を通過した後、出口16からガス流路bへ供給される。この際、ディフューザー15は、軸心方向一端側から他端側に向けて徐々に拡径していて、流路断面積が徐々に増加するので、空気4の噴流の静圧は、ディフューザー15の軸心方向一端側よりも他端側で高くなる。
【0040】
ところで、本実施形態の分散ノズル1からガス流路bへ空気4の噴流を吹き込むためには、出口16の直前個所となるディフューザー15の軸心方向他端付近での空気4の静圧(圧力)が、ガス流路bにおける分散ノズル1の設置個所での内部圧力よりも高いことが必要とされる。
【0041】
一方、本実施形態の分散ノズル1からガス流路bへ空気4の噴流を吹き込むときに、出口16直前での静圧が高すぎると、ガス流路bに吹き込まれた空気4の噴流は、ガス流路bにおける排ガスaの流れを横切るような流れになってしまい、排ガスaの流れに分散されにくくなる。
【0042】
したがって、ディフューザー15を通過した空気4の噴流を出口16からガス流路bへ吹き込むことができ、しかも、ガス流路bに吹き込まれた空気4の噴流が、ガス流路bにおける排ガスaの流れに円滑に分散されるようにするためには、出口16直前での空気4の噴流の静圧について、ある圧力範囲に収まることが望まれる。なお、この圧力範囲は、本実施形態の分散ノズル1が設置された個所でのガス流路bの形状や、その個所での排ガスaの流速分布や圧力分布、分散ノズル1の設置角度などに依存して変化する。
【0043】
この点に鑑みて、ディフューザー15は、ディフューザー15の軸心方向他端側に達した時点での空気4の噴流の静圧が、前記所定の圧力範囲に収まるように、ディフューザー15の軸心方向他端側の径や流路断面積が設定されている。
【0044】
以上の構成としてある本実施形態の分散ノズル1を使用する場合は、たとえば、図3に示すように、バグフィルタcに接続されている排ガスa用のガス流路bの壁に、本実施形態の分散ノズル1の出口16を連通接続する。なお、本実施形態の分散ノズル1は、図3に実線で示すように、出口16が横向きとなる姿勢で設置してもよく、あるいは、図3に二点鎖線で示すように、出口16が下向きとなる姿勢で設置してもよい。
【0045】
この状態で、気体噴射手段2では、図示しない空気供給部より供給される空気4を、噴射口3から噴流として噴射する。また、図示しない粉体供給装置から粉体輸送ライン13を通して空気輸送される粉体7を、搬送気体12と一緒に、粉体供給部6へ供給する。
【0046】
これにより、混合撹拌部5では、噴射口3より噴射された空気4の噴流が、軸心方向一端側5aから軸心方向他端側5bへ流通すると共に、粉体供給部6の供給口14からは、分散室11内で周方向に分散された状態の搬送気体12および粉体7が、軸心方向一端側5aにおける噴射口3の外周側位置に供給される。
【0047】
噴射口3より噴射されて混合撹拌部5を流通する空気4の噴流の周囲には、この噴流に誘引される流れが生じる。したがって、供給口14から供給された粉体7および搬送気体12は、空気4の噴流に引き込まれる。
【0048】
このように、空気4の噴流に粉体7が引き込まれると、粉体7は空気4の噴流による撹拌を受ける。このため、たとえば、粉体7が粉体輸送ライン13で空気輸送されるときに管底流を生じ、この管底流にて部分的な凝集を生じていたとしても、その粉体7の凝集物は、混合撹拌部5を流通する空気4の噴流に引き込まれた時点で撹拌されるため、凝集が解除される。
【0049】
更に、混合撹拌部5は、噴射口3から噴射された空気4の噴流が徐々に拡径して軸心方向他端側5bの内面に接するようにしてあるため、粉体7が空気4の噴流に引き込まれない状態のままで混合撹拌部5を通過することが防止される。
【0050】
よって、混合撹拌部5の軸心方向他端側5bからは、空気4の噴流と共に、撹拌されて分散性が高められた状態の粉体7が排出される。
【0051】
混合撹拌部5の軸心方向他端側5bから排出された粉体7を含む空気4の噴流は、その後、ディフューザー15を通過することで圧力が調整されてから、出口16を通してガス流路bへ供給される。
【0052】
ディフューザー15は、前記したように、空気4の噴流に対して所定の圧力調整を行うものとしてあるから、出口16からガス流路bへ供給される空気4の噴流は、ガス流路bを流通している排ガスaの流れに円滑に分散される。よって、この空気4の噴流と共に供給される粉体7は、排ガスaに対して分散される。
【0053】
このように、本実施形態の分散ノズル1によれば、粉体7を、排ガスaが流通しているガス流路bに分散させて供給することができる。
【0054】
更に、ガス流路bに供給される粉体7は、混合撹拌部5を通過するときに空気4の噴流による撹拌を受けたものとすることができるため、凝集物についての凝集を解除させることができ、よって、ガス流路bに供給される粉体7について、分散性の向上化を図ることができる。
【0055】
したがって、排ガスa中に含まれている酸性ガスは、効率よく粉体7と反応させることができて、バグフィルタcで効率よく回収することが可能になる。
【0056】
[第1実施形態の変形例]
図4は、第1実施形態の変形例を示す切断概略側面図である。
【0057】
なお、図4において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
第1実施形態では、分散ノズル1は、気体噴射手段2の噴射口3の外周に、混合撹拌部5の軸心方向一端側5aが重なるように配置された構成を備えるものとしたが、図4に示すように、気体噴射手段2の噴射口3が、混合撹拌部5の軸心方向一端側5aとは重ならない配置で設けられた構成としてもよい。
【0059】
この場合、噴射口3は、粉体供給部6の分散室11内に、混合撹拌部5の軸心方向に沿う配置で設けられている。
【0060】
これにより、噴射口3より噴射する空気4の噴流は、混合撹拌部5に軸心方向一端側5aから入って軸心方向他端側5bまで流通するようになる。この際、徐々に拡径しながら混合撹拌部5内を進行する空気4の噴流が混合撹拌部5の軸心方向他端側5bに達する時点で、軸心方向他端側5bの内面に接するようにする点は、第1実施形態と同様である。
【0061】
かかる構成としてある本変形例の分散ノズル1によっても、第1実施形態の分散ノズル1と同様に使用して、同様の効果を得ることができる。
【0062】
[第2実施形態]
図5は、分散ノズルの第2実施形態を示すもので、図5(a)は切断概略側面図、図5(b)は図5(a)のA−A方向矢視図である。
【0063】
なお、図5(a)(b)において、第1実施形態に示したものと同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
【0064】
本実施形態の分散ノズルは、図5(a)に符号1Aで示すもので、作動気体としての空気4の噴射口18を有する気体噴射手段17と、気体噴射手段17の噴射口18側に配置されて、噴射口18から噴射される空気4の噴流を軸心方向の一端側19aから受け入れて軸心方向の他端側19bへ流通させる筒状の混合撹拌部19と、混合撹拌部19の軸心方向の一端側19aに粉体7を供給する粉体供給部20とを備える構成とされている。
【0065】
本実施形態では、粉体供給部20が、一軸方向(図5(a)では左右方向)に沿って配置された管状の部材とされている。
【0066】
粉体供給部20は、上流側端部となる軸心方向の一端側(図5(a)では左端側)に、第1実施形態に示したと同様の粉体輸送ライン13が接続されている。粉体供給部20の下流側端部(図5(a)では右端側)は、粉体輸送ライン13より導かれる粉体7及び搬送気体12を、混合撹拌部19の軸心方向一端側19aへ供給する供給口21とされている。
【0067】
気体噴射手段17は、粉体供給部20よりも大径として粉体供給部20の外周に配置された筒状部22と、筒状部22の軸心方向の一端側と、粉体供給部20の外面との間を閉塞させる円環状の端壁部23と、筒状部22の軸心方向の他端側と、粉体供給部20の外面との間を閉塞させる円環状の厚肉の噴射口形成部材24とを備えた構成とされている。これにより、筒状部22と端壁部23と噴射口形成部材24の内側には、粉体供給部20を囲む配置の円筒状の空間が形成され、この空間が空気4のヘッダ25とされている。
【0068】
噴射口形成部材24には、図5(a)(b)に示すように、粉体供給部20から離れた半径方向中間付近の周方向複数個所、たとえば、4個所に、板厚方向に貫通する噴射口18が設けられている。各噴射口18のヘッダ25寄りに位置する基端側は、それぞれヘッダ25に連通接続されている。
【0069】
更に、各噴射口18は、ヘッダ25とは反対側に位置する先端側が、基端側に比して筒状部22の軸心に近付くように、筒状部22の軸心方向に対して傾斜した角度で設けられている。この各噴射口18の傾斜は、図5(a)に一点鎖線で示す各噴射口18の中心線が、混合撹拌部19の軸心方向他端側19bの概ね中心に向くように設定されている。
【0070】
筒状部22には、図示しない作動気体供給部としての空気供給部から空気4を導く空気供給ライン26が接続されている。
【0071】
これにより、気体噴射手段17では、空気供給部から空気供給ライン26を通して供給される空気4をヘッダ25に一旦受け入れ、その後、ヘッダ25から各噴射口18に空気を分配して、それぞれの噴射口18から空気4を噴流として噴射することができる。
【0072】
混合撹拌部19は、軸心方向一端側19aから軸心方向他端側19bへ徐々に縮径する筒状の部材としてある。軸心方向一端側19aは、気体噴射手段17の筒状部22と同様の径としてあり、筒状部22の軸心方向の他端側に接続されている。
【0073】
これにより、混合撹拌部19は、気体噴射手段17の各噴射口18より噴射される空気4の噴流を、軸心方向一端側19aから軸心方向他端側19bへ流通させることができる。
【0074】
混合撹拌部19の軸心方向の寸法と、軸心方向他端側19bの径は、各噴射口18から噴射される空気4の噴流が徐々に拡径しながら軸心方向他端側19bまで達したときに、この拡径した空気4の噴流が軸心方向他端側19bの内面に接するように設定されている。
【0075】
この場合の混合撹拌部19の軸心方向の寸法と、軸心方向他端側19bの径の設定手法は、第1実施形態に示したと同様の幾何学的な計算による手法、数値モデルを用いた数値解析の結果に基づいて定める手法、試験体を用いて行う試験の結果に基づいて定める手法のいずれを用いてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、混合撹拌部19の軸心方向他端側19bを通るのは、複数の噴射口18より噴射された複数の空気4の噴流が合流して形成された噴流となる。したがって、この複数の空気4の噴流が合流して形成される噴流全体で、軸心方向他端側19bの内面に接するようにしてあればよい。
【0077】
混合撹拌部19の軸心方向一端側19aの軸心位置には、粉体供給部20の供給口21が配置されている。
【0078】
混合撹拌部19の軸心方向他端側19bには、第1実施形態と同様のディフューザー15が接続されている。
【0079】
以上の構成としてある本実施形態の分散ノズル1Aを使用する場合は、第1実施形態の分散ノズル1と同様に、排ガスa用のガス流路bの壁に、ディフューザー15の軸心方向他端側の出口16を連通接続する。この際、本実施形態の分散ノズル1Aは、出口16が横向きとなる姿勢と、出口16が下向きとなる姿勢のいずれで用いてもよいことは、第1実施形態と同様である。
【0080】
この状態で、気体噴射手段17では、図示しない空気供給部より空気供給ライン26を介してヘッダ25に供給される空気4を、各噴射口18から噴流として噴射する。また、粉体供給部20では、図示しない粉体供給装置から粉体輸送ライン13を通して空気輸送される粉体7を、搬送気体12と一緒に、供給口21から混合撹拌部19の軸心方向一端側19aへ供給する。
【0081】
これにより、混合撹拌部19では、各噴射口18より噴射された複数の空気4の噴流が、軸心方向一端側19aから軸心方向他端側19bへ流通すると共に、粉体供給部20の供給口21からは、搬送気体12および粉体7が、軸心方向一端側19aの軸心位置に供給される。
【0082】
この際、各噴射口18より噴射されて混合撹拌部19を流通する複数の空気4の噴流の周囲には、各噴流に誘引される流れが生じる。したがって、供給口21から供給された粉体7および搬送気体12は、各噴流に引き込まれる。
【0083】
このように、複数の空気4の噴流に粉体7が引き込まれると、粉体7はそれぞれの噴流による撹拌を受ける。このため、粉体7が粉体輸送ライン13で空気輸送されるときに部分的な凝集を生じていたとしても、その粉体7の凝集物は、凝集が解除される。
【0084】
更に、混合撹拌部19は、各噴射口18から噴射された空気4の噴流が軸心方向他端側19bの内面に接するようにしてあるため、粉体7が空気4の噴流に引き込まれない状態のままで混合撹拌部19を通過することが防止される。
【0085】
よって、混合撹拌部19の軸心方向他端側19bからは、空気4の噴流と共に、撹拌されて分散性が高められた状態の粉体7が排出される。
【0086】
混合撹拌部19の軸心方向他端側19bから排出された粉体7を含む空気4の噴流は、その後、ディフューザー15を通過することで圧力が調整されてから、出口16を通してガス流路bへ供給される。このディフューザー15の機能は、第1実施形態と同様である。
【0087】
したがって、本実施形態の分散ノズル1Aによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
なお、本発明は、前記各実施形態および変形例にのみ限定されるものではなく、各図に示した各部材の寸法や、部材同士の寸法比は、図示するための便宜上のものであり、実際の寸法を反映したものではない。
【0089】
気体噴射手段2,17より噴射する気体は、ガス流路bを流通するガスの性状や、使用する粉体の性状に応じて、窒素ガスや不活性ガス、その他、空気4以外の気体を用いるようにしてもよい。また、粉体7を空気輸送するために用いる搬送気体12は、ガス流路bを流通するガスの性状や、使用する粉体の性状に応じて、窒素ガスや不活性ガス、その他、空気以外の気体を用いるようにしてもよい。
【0090】
分散ノズル1,1Aを設置するガス流路bは、粉体を分散して供給することが望まれるガスを流通させるものであれば、排ガスa以外のガス用の流路であってもよい。
【0091】
第2実施形態において、噴射口形成部材24に設ける噴射口18の数は、2または3、あるいは、5以上であってもよい。
【0092】
混合撹拌部5,19の軸心方向他端側5b,19bに達した時点での空気4の噴流の静圧が、出口16直前での空気4の噴流の静圧として望まれる前述した圧力範囲に収まっている場合は、ディフューザー15を省略した構成としてもよい。この場合は、混合撹拌部5,19の軸心方向他端側5b,19bを分散ノズル1,1Aの出口として、ガス流路bに接続する構成を採ればよい。
【0093】
分散ノズル1,1Aは、図3に示した以外の任意の角度姿勢で使用してもよいことは勿論である。更に、分散ノズル1,1Aは、ガス流路bに対し、ガス流路bの延びる方向に直交する方向に沿った姿勢以外の任意の角度姿勢として設置してもよいことは勿論である。
【0094】
分散ノズル1,1Aでガス流路bに分散させて供給する対象を粉体7として説明したが、分散供給対象となる粒子は、搬送気体による輸送(いわゆる空気輸送)が可能な粒子であれば粒体や粉粒体であってもよい。
【0095】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
2 気体噴射手段
3 噴射口
4 空気(作動気体)
5 混合撹拌部
6 粉体供給部(粒子供給部)
7 粉体(供給対象粒子)
12 搬送気体
15 ディフューザー
a 排ガス
b ガス流路
図1
図2
図3
図4
図5