特許第6899650号(P6899650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899650
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】リン酸肥料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05B 17/00 20060101AFI20210628BHJP
   C05F 7/00 20060101ALI20210628BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   C05B17/00
   C05F7/00
   C02F1/58 R
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-242895(P2016-242895)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-95525(P2018-95525A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】592012384
【氏名又は名称】小野田化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】松澤 大起
(72)【発明者】
【氏名】美濃和 信孝
(72)【発明者】
【氏名】明戸 剛
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/176579(WO,A1)
【文献】 特開2009−285635(JP,A)
【文献】 特開2014−000487(JP,A)
【文献】 特開2015−140294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B
C02F 1/58
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ガラスと消石灰スラリーを、カルシウムとシリカのモル比(Ca/Si)が0.8〜2.0になるように反応させて珪酸カルシウム水和物を製造する際に、反応槽の消石灰スラリーに水ガラス希釈液を添加し、あるいは反応槽に消石灰スラリーと水ガラス希釈液を同時の時間に添加し、添加後に常温で反応させて珪酸カルシウム水和物を製造し、この珪酸カルシウム水和物のスラリーに、ヒドロキシアパタイトのカルシウムとリンのモル比(Ca/Pモル比)が2.0〜3.0になる量のリン酸を加え、常温でリン酸の添加時間1時間以下、および反応時間1時間以下で反応させてヒドロキシアパタイトを生成させることによって、該ヒドロキシアパタイトとシリカからなり、ク溶性リン酸(C-P)の含有量が17.9質量%以上であり、中性クエン酸アンモニウム溶液に溶ける可溶性リン酸(S-P)のク溶性リン酸に対する量比(S/C)が93.5%以上、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.8nm以下、リン酸の溶解度が4.3mg/L以上であるリン酸肥料を製造することを特徴とするリン酸肥料の製造方法
【請求項2】
カルシウムの溶解度が10.9mg/L以上であるリン酸肥料を製造する請求項1に記載するリン酸肥料の製造方法。
【請求項3】
リン酸源として排水中に含まれるリン酸を利用し、排水中のリン量に対して、生成物のカルシウム量がCa/Pモル比で2.0〜3.0になるように、上記珪酸カルシウム水和物と該排水と混合して上記リン酸肥料を製造する請求項1または請求項2に記載するリン酸肥料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪酸カルシウム水和物とリン酸の反応生成物からなるリン酸肥料であって、施肥効果が高いリン酸肥料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンやリン酸は植物にとって必要な養分であるが、土壌中のリン酸含有量は必ずしも多くないので、従来からリン酸肥料が用いられている。リン酸肥料に含まれるリン酸成分には水溶性リン酸と、水には溶けないがクエン酸アンモニウムのような溶媒に溶ける可溶性リン酸があり、さらに弱酸性の2%クエン酸に溶けるク溶性リン酸がある。過リン酸石灰は水溶性リン酸からなる代表的なリン酸肥料であり、熔成リン肥(熔リン)はク溶性リン酸肥料の代表的なリン酸肥料である。
【0003】
水溶性リン酸は肥効が速い利点があるが、水に溶けたリン酸分が容易に土中の活性化したアルミニウムや鉄と結びついて土に固定される問題がある。ク溶性リン酸は、水に溶けず、土に施されると作物の根が分泌する酸によってリン酸成分が少しずつ溶け出して、ゆるやかに吸収されるので、肥効は遅いが肥料の損失は少ない利点を有する。
【0004】
これらの過リン酸石灰肥料および熔成リン肥は何れも工業上はリン鉱石を原料として製造されているが、現在、リン鉱石は全量を輸入に頼っている。一方、我国の下水には輸入リン鉱石量の4〜5割相当のリンが流入しており、その大部分は回収されずに再利用されていない。
【0005】
そこで、下水などから効率良くリンを回収する試みがなされており、回収率の高いリン回収材が知られている(特開2012−50975号公報、特開2012−192397号公報)。これらのリン回収材は珪酸カルシウム水和物とCa(OH)2との凝集体からなるものであり、高いリン回収率を有しており、その回収物はリン酸肥料としての利用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−50975号公報
【特許文献2】特開2012−192397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
珪酸カルシウム水和物(CSHと云う)を主体とする凝集物はリンとの反応性が良く、生成したリン酸カルシウムの大部分がク溶性であり、ク溶性リン酸の含有量の高い回収物が得られる。一方、ク溶性リン酸のうち、クエン酸アンモニウム溶液のような中性域で溶解する可溶性リン酸の割合が高いものは、植物によるリンの吸収量が多く、高い施肥効果を得ることができる。
【0008】
本発明は、珪酸カルシウム水和物(CSH)を主体とする凝集体にリン酸を反応させてなるヒドロキシアパタイト(HAPと云う)からなるリン酸肥料であって、ク溶性リン酸含有量が高く、かつク溶性リン酸のうち可溶性リン酸の割合が高いことによって、優れた施肥効果を有するリン酸肥料の製造方法を提供する。また、好ましくは、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが小さく、リンの溶解性に優れたリン酸肥料の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は以下の構成を有するリン酸肥料の製造方法に関する。
〔1〕水ガラスと消石灰スラリーを、カルシウムとシリカのモル比(Ca/Si)が0.8〜2.0になるように反応させて珪酸カルシウム水和物を製造する際に、反応槽の消石灰スラリーに水ガラス希釈液を添加し、あるいは反応槽に消石灰スラリーと水ガラス希釈液を同時の時間に添加し、添加後に常温で反応させて珪酸カルシウム水和物を製造し、この珪酸カルシウム水和物のスラリーに、ヒドロキシアパタイトのカルシウムとリンのモル比(Ca/Pモル比)が2.0〜3.0になる量のリン酸を加え、常温でリン酸の添加時間1時間以下、および反応時間1時間以下で反応させてヒドロキシアパタイトを生成させることによって、該ヒドロキシアパタイトとシリカからなり、ク溶性リン酸(C-P)の含有量が17.9質量%以上であり、中性クエン酸アンモニウム溶液に溶ける可溶性リン酸(S-P)のク溶性リン酸に対する量比(S/C)が93.5%以上、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.8nm以下、リン酸の溶解度が4.3mg/L以上であるリン酸肥料を製造することを特徴とするリン酸肥料の製造方法
〔2〕カルシウムの溶解度が10.9mg/L以上であるリン酸肥料を製造する上記[1]に記載するリン酸肥料の製造方法。
〔3〕リン酸源として排水中に含まれるリン酸を利用し、排水中のリン量に対して、生成物のカルシウム量がCa/Pモル比で2.0〜3.0になるように、上記珪酸カルシウム水和物と該排水と混合して上記リン酸肥料を製造する上記[1]または上記[2]に記載するリン酸肥料の製造方法。
【0010】
〔具体的な説明〕
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、水ガラスと消石灰スラリーを、カルシウムとシリカのモル比(Ca/Si)が0.8〜2.0になるように反応させて珪酸カルシウム水和物を製造する際に、反応槽の消石灰スラリーに水ガラス希釈液を添加し、あるいは反応槽に消石灰スラリーと水ガラス希釈液を同時の時間に添加し、添加後に常温で反応させて珪酸カルシウム水和物を製造し、この珪酸カルシウム水和物のスラリーに、ヒドロキシアパタイトのカルシウムとリンのモル比(Ca/Pモル比)が2.0〜3.0になる量のリン酸を加え、常温でリン酸の添加時間1時間以下、および反応時間1時間以下で反応させてヒドロキシアパタイトを生成させることによって、該ヒドロキシアパタイトとシリカからなり、ク溶性リン酸(C-P)の含有量が17.9質量%以上であり、中性クエン酸アンモニウム溶液に溶ける可溶性リン酸(S-P)のク溶性リン酸に対する量比(S/C)が93.5%以上、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.8nm以下、リン酸の溶解度が4.3mg/L以上であるリン酸肥料を製造することを特徴とするリン酸肥料の製造方法である。
【0011】
珪酸カルシウム水和物(CSH)にリン酸を反応させると、カルシウムがリン酸と反応して、ク溶性リン酸を含むヒドロキシアパタイト〔Ca10(PO)(OH)〕が生成し、カルシウムと離れたシリカを含む凝集物になる。本発明のリン酸肥料に用いるヒドロキシアパタイトはこのようなヒドロキシアパタイトとシリカの凝集物を含む。
【0012】
珪酸カルシウム水和物とリン酸の反応によって生じたヒドロキシアパタイトに含まれるリン酸の大部分はク溶性リン酸であり、水溶性リン酸(W-PO)は実質的に含まれていない。従って、このヒドロキシアパタイトをク溶性リン酸肥料として用いることができる。
【0013】
本発明のヒドロキシアパタイトからなるリン酸肥料において、カルシウムとリンのモル比(Ca/Pモル比)は2.0以上が好ましい。Ca/Pモル比が1.3程度では、珪酸カルシウム水和物とリン酸を長時間(48時間)反応させてもヒドロキシアパタイトが生成し難く、ク溶性リン酸の含有量は3.5質量%程度である。
【0014】
本発明の製造方法に係るヒドロキシアパタイトからなるリン酸肥料(以下、本発明のリン酸肥料と云う)は、Ca/Pモル比が2.0以上、好ましくはCa/Pモル比が2.0〜3.0であり、ク溶性リン酸(C-P)の含有量が17.9質量%以上である。代表的なク溶性リン酸肥料である熔成リン肥のク溶性リン酸の含有量は概ね20質量%前後であるので、本発明のリン酸肥料は一般的な熔成リン肥と同程度のク溶性リン酸を含有している。
【0015】
本発明のリン酸肥料は、ク溶性リン酸(C-P)の含有量が17.9質量%以上であって、可溶性リン酸(S-P)のク溶性リン酸(C-P)に対する量比(S/C=(S-P)/(C-P))が93.5%以上である。可溶性リン酸(S-P)とは中性クエン酸アンモニウム溶液に溶けるリン酸を云う。
【0016】
ク溶性リン酸(C-PO)の含有量が15質量%未満では、ク溶性リン酸肥料としての効果が乏しくなる。ク溶性リン酸の含有量が多く、可溶性リン酸のク溶性リン酸に対する量比(S/C)が高いものは、リン酸の吸収効果が高く、肥料効果の良い結果が得られる。例えば、代表的なク溶性リン酸肥料である熔成リン肥は、水溶性リン酸(W-PO)を殆ど含まず、約20質量%前後のク溶性リン酸を含んでいる。このク溶性リン酸のかなりの割合が可溶性であり、可溶性リン酸量が概ね15質量%前後であり、ク溶性リン酸に対する可溶性リン酸の量比(S/C)は概ね70%前後であり、施肥後の植物のリン酸吸収量は概ね20mg程度である。
【0017】
一方、珪酸カルシウム水和物とリン酸の反応生成物であるヒドロキシアパタイトからなるリン酸肥料では、珪酸カルシウム水和物とリン酸の反応条件の相違によって可溶性リン酸量の割合が大きく異なり、ク溶性リン酸に対する可溶性リン酸の量比(S/C)は53〜100%である。
【0018】
ク溶性リン酸に対する可溶性リン酸の量比(S/C)は、施肥後の植物のリン酸吸収量に大きな相違を生じる。例えば、ク溶性リン酸量が約20質量%のリン酸肥料において、上記S/C比が約98%の場合にはリン酸の吸収量が約20mg程度と高いが、上記S/C比が約53%の場合にはリン酸の吸収量は約8mg程度であり、肥料効果が大幅に減少する。
【0019】
本発明のリン酸肥料は、ク溶性リン酸に対する可溶性リン酸の量比(S/C)が93.5%以上であり、ク溶性リン酸の大部分がクエン酸アンモニウムなどの中性の溶媒にも溶解する可溶性リン酸である。上記S/C比が93.5%未満では施肥後のリン酸吸収効果が低いので好ましくない。
【0020】
本発明のリン酸肥料は、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.8nm以下の微細結晶であるので、施肥後に溶解しやすく、水に対するリン酸の溶解度が4.3mg/L以上であり、また、好ましくは、カルシウムの溶解度が10.9mg/L以上である。具体的には、本発明のリン酸肥料は、例えば、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.3〜2.8nmであって、リン酸の溶解度が4.3〜5.2mg/Lであり、カルシウムの溶解度が10.9〜11.9mg/Lである。
【0021】
一方、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが5.5nmより大きいと、ヒドロキシアパタイトが溶解し難く、ク溶性リン酸に対する可溶性リン酸の量比(S/C)が低下する。例えば、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが6.8nmでは、S/Cは53.5%と低くなる。一方、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.3nm未満であると、理由は明らかではないがリン酸とカルシウムの溶解度が低下し、肥効が劣る。さらに完全に非晶質のリン酸カルシウムでは、リン酸とカルシウムの溶解度は再び増大するが、ろ過性に劣り、含水率が高くなるため製造上実際的ではない。
【0022】
本発明のリン酸肥料の製造方法は、水ガラスと消石灰スラリーを、カルシウムとシリカのモル比(Ca/Si)が0.8〜2.0になるように反応させて珪酸カルシウム水和物を製造する際に、反応槽の消石灰スラリーに水ガラス希釈液を添加し、あるいは反応槽に消石灰スラリーと水ガラス希釈液を同時の時間に添加し、添加後に常温で、1〜6時間反応させて、珪酸カルシウム水和物を製造する。この珪酸カルシウム水和物のスラリーに、ヒドロキシアパタイトのカルシウムとリンのモル比(Ca/Pモル比)が2.0〜3.0になる量のリン酸を加え、常温でリン酸の添加時間1時間以下、および反応時間1時間以下で反応させてヒドロキシアパタイトを生成させ、該ヒドロキシアパタイトとシリカからなり、ク溶性リン酸(C-P)の含有量が17.9質量%以上であり、中性クエン酸アンモニウム溶液に溶ける可溶性リン酸(S-P)のク溶性リン酸に対する量比(S/C)が93.5%以上、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.8nm以下、リン酸の溶解度が4.3mg/L以上であるリン酸肥料を製造する。


【0023】
上記Ca/Siが0.8より低いと、この珪酸カルシウム水和物にリン酸を添加して製造するリン酸肥料中のリン酸含量が低くなるため好ましくない。また、Ca/Siが2.0より高いと、珪酸カルシウム水和物スラリーに未反応の消石灰が多く残存するようになり、製造したリン酸肥料中のヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが大きくなり、リン酸の溶解度が低下し、肥効が劣るため好ましくない。
【0024】
消石灰スラリーと水ガラス希釈液の添加後に常温で反応させて珪酸カルシウム水和物を合成する。この珪酸カルシウム水和物は反応性に優れるため、次の工程のリン酸を添加する時間は0.5時間程度、反応時間も0.5時間程度で反応が完了する。100℃より高い温度で合成した珪酸カルシウム水和物は、反応性に劣るため、リン酸を添加して反応させるときに、6〜48時間と非常に長い反応時間が必要になる。
【0025】
この珪酸カルシウム水和物を排水中のリンと反応させてリン酸肥料を生成させる場合にも、100℃より高い温度で合成した珪酸カルシウム水和物は、反応性に劣るためリンの回収率が低く、リン酸肥料中のリン酸濃度が高くならないため好ましくない。
【0026】
常温で珪酸カルシウム水和物を水熱合成するには、珪酸源としては水ガラスが好ましく、珪石などの結晶質シリカや非晶質シリカは、段落[0042]表1に示すように85℃以上の温度が必要なため、珪酸源としては不適である。
【0027】
珪酸源として非晶質シリカを使った場合でも、180℃の水熱反応で製造した珪酸カルシウム水和物はリン酸との反応性に劣るため、ヒドロキシアパタイトの生成に70℃の温度で6時間〜48時間の反応時間を必要とする。しかも、このヒドロキシアパタイトのリン酸の溶解度は約0.1mg/L程度であり、カルシウムの溶解度はほぼ0.0mg/Lであって、リン酸とカルシウムの溶解度は何れも低い。
【0028】
珪酸源として水ガラスを使った場合は、珪酸カルシウム水和物の製造を常温で行うことができるため、珪酸カルシウム水和物の結晶子サイズは10nm未満と小さく、リン酸との反応性に優れるため、この珪酸カルシウム水和物とリン酸を反応させて生成したヒドロキシアパタイトの結晶子サイズも2.8nm以下と小さくなり、リン酸とカルシウムの溶解度が何れも大きく、肥効に優れる。
【0029】
本発明のリン酸肥料の製造方法において、珪酸カルシウム水和物と反応させるリン酸の添加量は、ヒドロキシアパタイトに含まれるカルシウムとリンのモル比(Ca/Pモル比)が2.0以上になる量である。上記Ca/Pモル比が2.0より低いと、ヒドロキシアパタイトが生成し難く、例えば、Ca/Pモル比が1.3ではヒドロキシアパタイトが殆ど生成せず、ク溶性リン酸の含有量は3.5質量%程度である。
【0030】
一方、上記Ca/Pモル比が3.0より大きいと、リンに対するCSHの量が過剰であるので、リン酸肥料に含まれるリン酸含有量が相対的に少なくなる。例えば、Ca/Pモル比2.0のときに、ク溶性リン酸(C-P)の含有量が21.4質量%になるときに、Ca/Pモル比を2.5に上げるとク溶性リン酸は約18質量%に低下し、Ca/Pモル比を3.0に上げるとク溶性リン酸は約15質量%に低下する。このように、十分なリン酸量を含有するヒドロキシアパタイトを生成させるには、上記Ca/Pモル比は2.0〜3.0の範囲が好ましく、2.0〜2.5の範囲がより好ましい。
【0031】
本発明の製造方法において、珪酸カルシウム水和物とリン酸との反応温度は、表3に示すように常温が好ましい。肥効の高いリン酸肥料を製造するには、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.3〜2.8nmの範囲であることが好ましいので、原料のCSHの反応性に応じて、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが上記範囲になるように適切な反応温度を選択することが重要である。反応温度が60℃以上では加熱に必要なエネルギーが多くなるだけでなく、段落[0050]表4に示すようにリン酸の溶解度が低下するので好ましくない。
【発明の効果】
【0032】
本発明のリン酸肥料は、ク溶性リン酸(C-P)の含有量が17.9質量%以上であり、一般的な熔成リン肥と同程度のク溶性リン酸を含有している。また、可溶性リン酸のク溶性リン酸に対する量比(S/C)が93.5%以上であり、可溶性リン酸の割合が多く、また、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが2.8nm以下であるので溶解しやすく、さらにリン酸の溶解度が4.3mg/L以上であるので、施肥後の植物のリン酸の吸収量が多く、優れた肥料効果を得ることができる。
【0033】
本発明のリン酸肥料は、水溶性リン酸を含有しないにもかかわらず、速効性のリン酸肥料である過リン酸石灰と同等の肥効があり、さらに土壌に固定化され難く、肥効が長続きするためリン酸の利用効率が高く、資源保護、環境保全的な観点からも非常に優れたリン酸肥料である。
【0034】
本発明のリン酸肥料は、珪酸カルシウム水和物とリン酸の反応によって製造されるので、珪酸カルシウム水和物からなるリン回収材を下水などの排水に接触させて排水中のリンを回収する際に、その回収物から本発明のリン酸肥料の条件に適するものを選択して利用することができる。具体的には、例えば、排水中のリン量に対して、生成物のカルシウム量がCa/Pモル比で2.0〜3.0になるように、珪酸カルシウム水和物を該排水と混合し、混合時間が1時間以下、反応時間が1時間以下、常温で反応させ、生成物を回収してリン酸肥料を製造することができる。


【0035】
本発明のリン酸肥料の製造方法は、珪酸カルシウム水和物スラリーにリン酸を反応させてヒドロキシアパタイトを生成させる方法において、100℃以下の温度で合成した珪酸カルシウム水和物を用い、ヒドロキシアパタイトのカルシウムとリンのモル比(Ca/Pモル比)が2.0以上、好ましくは2.0〜3.0になるリン酸添加量とし、リン酸の添加時間および反応時間を1時間以下に制御して製造する方法であるので、特殊な製造設備を必要とせず、容易に実施することができる。
【0036】
また、本発明のリン酸肥料の製造方法は、珪酸カルシウム水和物の結晶子サイズやカルシウムとリンのモル比(Ca/P)および反応時間を調整することによって、珪酸カルシウム水和物による排水中のリン回収において適用することができ、幅広く実施することができる。具体的には、本発明に記載の珪酸カルシウム水和物を、排水中のリンに対して、Ca/Pモル比2.0〜3.0になるように添加し、15分から1時間反応させることによって本発明のリン酸肥料を得ることができる。
【0037】
本発明のリン酸肥料は、上記製造方法によって、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズ2.3〜2.8nmのリン酸肥料を得ることができ、珪酸カルシウム水和物とリン酸との反応によって製造されるリン酸肥料と同等のリン酸肥料を得ることができる。特にリン回収により得られたリン酸肥料は、リン濃度の低い条件でヒドロキシアパタイトが生成するため、一般に比表面積が66〜120m/gと高い特徴があり、肥効が高い。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。測定方法を以下に示す。
(A) リン酸肥料のク溶性リン酸(C−P)は、肥料分析法に基づき、乾燥させた1gのサンプルを2%クエン酸で30℃、1時間振盪し、溶解したリン酸をバナドモリブデン酸アンモニウム法で定量した。
(B) リン酸肥料の可溶性リン酸(S−P)は、AOAC分析法の中性クエン酸アンモニウム溶解性リン酸の定量法に基づき分析した。
(C) リン酸肥料の水溶性リン酸(W−P)は、肥料分析法に基づき、サンプル5gに水約400mlを加え、30分間振盪し、溶解したリン酸をバナドモリブデン酸アンモニウム法で定量した。
(D) ヒドロキシアパタイト(HAP)の結晶子サイズは、リン酸肥料の乾燥物について、HAPのメインピーク(2θ=32°)のX線回折測定を行い、回折ピークの半値幅からシェラー式に従って求めた。
(E) ヒドロキシアパタイト(HAP)の比表面積(A)は、150℃で1時間真空脱気を行なったリン酸肥料全体の比表面積(B)、 リン酸肥料中のHAPを希塩酸で溶解させて除去し、残渣のシリカについて測定した比表面積(C)を、日本BEL社装置(BELSORP−mini)を用い、窒素吸着法(BHJ法)により測定し、そのデータから、次の式に従って算出した。
A=(100B−xC)/(100−x)
ここでxはリン酸肥料中のシリカの割合(質量%)
(F) リン酸とカルシウムの溶解度は、脱イオン水100mlに対し、試料0.05gを添加し、25℃の温度条件において4日間スターラーで撹拌した後にろ過し、ろ液中のリン酸の量を比色法に基づいて測定し、カルシウムの量を原子吸光分析装置で分析して溶解度を求めた。
【0039】
〔実施例1:CSHの製造〕
表1に示す条件で珪酸カルシウム水和物(CSH)を合成した。水は全てイオン交換水を使用した。試料1、試料2は水ガラス(3号)と消石灰(薬仙石灰社製、JIS R 9001:2006特号消石灰に準拠)を原料とし、表1に記載の水量の半量を水ガラスの希釈水、残りの半量を消石灰スラリーとして用いた。
試料1は消石灰スラリーを張った反応槽に撹拌しつつ水ガラスの希釈液を10分間で添加した(標準添加)。試料2は反応槽に消石灰スラリーと水ガラスの希釈液を撹拌しつつ同時に10分かけて添加した。その後、常温で1時間撹拌して反応を完結させた。試料3と試料5は珪酸源として非晶質シリカ(SiO:55質量%)を用い、試料4は珪藻土(SiO:50質量%)を使用した。試料3と試料4は蒸留水に0.5wt%量(外割り)のNaOHを珪酸源に添加して85℃に加熱してシリカ溶液にし、このシリカ溶液と消石灰の全量を同時に添加して6時間撹拌した。試料5はオートクレーブに原料を仕込み、180℃まで1時間で昇温し、その温度を保持して4時間撹拌した。
【0040】
製造したCSHスラリーを100mlメスシリンダーに入れて30分静置後、沈殿汚泥の容積(mL)の割合から沈降性指標SVを求めた。次に100mlのスラリーを減圧吸引ろ過器で濾過し、濾過時間を測定した。ろ別した含水固形物の重量を測定後、150℃の乾燥機で1昼夜加熱して再び重量を測定して含水率を求めた。また、スラリーの粒度分布をレーザー回折・散乱法により、超音波分散時間5秒で測定し、平均粒子径D50を求めた。CSHの結晶子サイズはCSH乾燥物についてX線回折測定を行い、2θ=29°の回折ピークの半値幅からシェラー式に従って求めた。
【0041】
製造したCSHの物性を表2に示した。試料1,2の結晶子サイズは他の試料3〜6に比べて格段に小さい。従って、結晶子サイズ20nm以下のCSHを製造するには、反応温度常温、反応時間1時間程度が好ましい。また、試料2の平均粒子径D50は他の試料1,3〜5より大きいが、比表面積が小さいので、試料1よりもスラリーの沈降性(SV)および濾過性が良く、濾過ケーキの含水率が低い。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
〔実施例2:リン酸肥料の製造〕
表3に示すように、表2の試料No.1、No.3、No.4のCSHスラリーに対して、Ca/Pモル比2.0に相当するリン酸(肥料用濃縮リン酸をP10wt%になるように水で希釈したリン酸液を使用)を、常温(試料No.10)、60℃(試料No.11、12)の温度で30分かけて添加し、添加終了後30分間攪拌して本発明のリン酸肥料(試料No.10〜No.12)を製造した。
試料No.13は、表2の試料No.1のCSHスラリーにCa/Pモル比2.0に相当する上記希釈リン酸液を95℃の温度で30分かけて添加し、添加終了後30分間攪拌してリン酸肥料を製造した。
試料No.14、試料No.15、試料No.16は、表2の試料No.5のCSHスラリーを用い、表3に示すCa/Pモル比相当の希釈リン酸を70℃の温度にて1時間で添加し、その後70℃の温度を保持して撹拌、反応途中のろ液のpHとP濃度をモニターしつつ、反応が完結するまで表3に示す保持時間まで反応を継続した。
試料No.17は、CSHスラリーに代えて、発泡気泡コンクリート粉(ALC)を用い、試料No.18は消石灰を用い、水でパルプ濃度10wt%のスラリーとした後、Ca/Pモル比2.0に相当する希釈リン酸を添加してリン酸肥料を製造した。なお、試料No.17はALCとリン酸の反応が遅かったため、反応保持時間を48時間とした。
試料No.19は、石灰源として塩化カルシウム(CaCl)を用い、Ca/Pモル比2.0に相当する希釈リン酸を添加し、最終pHが9.0になるように水酸化ナトリウム溶液を添加してリン酸肥料を製造した。
【0045】
製造したリン酸肥料の物性を表4に示す。
リン酸肥料スラリーのろ過時間は、スラリー5Lを減圧吸引ろ過するのに要した時間とした。平均粒径はスラリー試料を60秒間超音波処理後、レーザー回折式粒度分布計にて測定した。含水率は減圧吸引ろ過により得た固形分について、乾燥前の重量と150℃で3時間加熱した後の重量に基づいて求めた。
【0046】
表4に示すように、本発明のリン酸肥料(試料No.10)は、ク溶性リン酸(C-P)は17.9質量%、可溶性リン酸(S-P)は17.9質量%、ク溶性リン酸と可溶性リン酸の比率(S/C)は100%であった。溶解性の指標となるヒドロキシアパタイトの結晶子サイズは2.5nmであった。またリン酸の溶解度は4.3mg/L、カルシウムの溶解度は11.5mg/Lであった。
【0047】
一方、合成温度が95℃の試料No.13は、ヒドロキシアパタイトの結晶子サイズが1.0nmであり、リン酸とカルシウムの溶解度が本発明のリン酸肥料よりも低かった。
また、180℃の高温で合成したCSH(試料No.5)を原料とした試料No.14、No.15、No.16は、リン酸との反応性に劣り、70℃の温度でも反応時間が6時間から48時間と長い。特にCa/Pモル比1.3の試料No.16はHAPがほとんど生成しなかったため、48時間反応させても肥料中のク溶性リン酸は3.5%にとどまった。また、Ca/Pモル比1.9の試料No.14はろ過時間が3時間30分とろ過性が非常に劣る。また、試料No.14、No.15のリン酸の溶解度は0.1mg/Lと低く、肥効に劣る。
【0048】
トバモライトから成る結晶質ケイ酸カルシウム水和物(ALC)を用いた試料No.17は、リン酸との反応が非常に遅く、48時間反応させても肥料中のク溶性リン酸は11.4%と低いうえに、可溶性リン酸も6.1%と低く、肥効に劣る。
石灰源として消石灰を用いた試料No.18は、ろ過時間が非常に長く、固液分離が困難である上に、結晶子サイズが13.0nmと大きく、リン酸の溶解度が0.2mg/Lと低いために肥効に劣る。
石灰源として塩化カルシウムを用いた試料No.19は非晶質のリン酸カルシウムが生成し、粒子径が微細なため、ろ過時間が長く、含水率も非常に高いため、実際的ではない。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
〔実施例3:排水を利用したリン酸肥料の製造〕
試料No.20は実施例2の希釈リン酸液に代えて、リン酸源として下水処理場の消化汚泥脱離液(排水)を用い、硫酸を添加して該排水のpHを5.3に下げ、エアレーションを行って脱炭酸した後、この排水中のリン量に対して、生成物のカルシウム量がCa/Pモル比で2.0となるように、表1のNo.2CSHスラリーを該排水と共に撹拌槽中に滞留時間30分の設定で連続的に送入して生成物を回収した。
試料No.21〜No.23は、リン酸源としてリン酸含有模擬排水(PO3−濃度400mg/Lのリン酸水素二カリウム溶液)を用いた。この模擬排水を1水準につき20L使用し、模擬排水中のリン量に対して、生成物のカルシウム量がCa/Pモル比で2.0となるように、表1のNo.2、No.3、No.5のCSHスラリーを模擬排水に添加し、常温で30分間撹拌して生成物を回収した。この回収物をろ別して含水固形物とろ液を得た。含水固形物を150℃の乾燥器中で3時間乾燥し、乾燥粉末のリン酸肥料を得た。この製造条件を表5に示す。
【0052】
上記リン酸肥料の成分と物性を表6に示す。リン酸肥料によるリン回収率は、ろ液のリン酸濃度を規格(JISK0102「工場排水試験方法」)に規定するモリブデン青吸光光度法に準拠して測定し、以下の式からリン回収率を求めた。
リン回収率(%)=(1−ろ液のP濃度/初期P濃度)×100
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
表6に示すように、本発明の試料No.20〜No.21は、Ca/Pモル比2.0において、ク溶性リン酸(C-PO)の含有量は21.9質量%以上、可溶性リン酸(S-PO)のク溶性リン酸に対する量比(S/C)は93.5%以上、ヒドロキシアパタイト(HAP)の結晶子サイズは2.3nm〜2.9nm、リン酸の溶解度は4.4mg/L以上であり、本発明のリン酸肥料の物性を満足する。また、試料No.20〜No.21のカルシウムの溶解度は10.9mg/L以上であって、これらの物性も本発明のリン酸肥料の物性を満足する。このように、珪酸カルシウム水和物スラリーに反応させるリン酸源として下水処理場の消化汚泥脱離液(排水)を用いても、本発明のリン酸肥料を製造できることが確認された。
【0056】
なお、本発明の試料No.20〜No.21において、リン酸肥料の製造によって排水から回収されたリンの回収率は85.1%以上であり、高いリン回収率を示している。
【0057】
一方、180℃の高温で合成した試料No.5のCSHを用いた試料No.23は、得られたリン酸肥料のク溶性リン酸(C-PO)は7.5質量%であり、またHAPの結晶子サイズは6.1nmであって、本発明に係るリン酸肥料の物性の範囲から外れるものであった。
【0058】
〔実施例4:リン酸の肥効試験〕
本発明のリン酸肥料(No.10、No.20〜21)、比較例のリン酸肥料(No.13、No.22〜23)、市販のヒドロキシアパタイトを主成分とする副産リン酸肥料(No.31)、市販の熔成リン肥(No.32)、過リン酸石灰(No.33)を用いてリン酸の肥効試験を行った。なお、本発明のリン酸肥料(No.10、No.20〜21)および比較例のリン酸肥料(No.13、No.22〜23)の物性は表4および表6に示すとおりであり、また、これらのリン酸肥料の水溶性リン酸(W-PO)の含有量はゼロである。比較例の試料No.31〜No.33の物性を表7に示す。
【0059】
供試土壌の性状を表8に示す。黒ボク土に苦土石灰を5g/kg混合してpHを6.8に調整した供試土壌を用い、コマツナを供試作物とし、1/5000アールの6号長鉢にて栽培を行った。施肥量は、窒素(N)0.5g、ク溶性リン酸(C-PO)1.0g、カリ(KO)0.5gとし、窒素は硫安、カリは塩化加里、ク溶性リン酸は上記リン酸肥料(No.10〜13、No.20〜23、No.31〜33)を施肥した。各試験区は3連にて実施した。播種後、23日間の栽培を行い、各ポットの地上部を収穫し、収量調査と成分分析を行った。栽培試験後の跡地土壌については、可給態リン酸をオルセン法(0.5M重炭酸ナトリウム可溶)によって測定した。その結果を表9に示す。
【0060】
本発明のリン酸肥料(No.10、20、21)を用いた試験区は、比較リン酸肥料No.31を用いた試験区31に比べて、リン酸吸収量は約2.1倍〜約2.5倍であった。これは、本発明のリン酸肥料に含まれるHAPの結晶子サイズが2.3〜2.8nmであり、比較リン酸肥料No.31の28.3nmに比較して1/9〜1/12のサイズであることから、溶解性に優れており、そのためク溶性リン酸に対する可溶性リン酸の量比(S/C)が93.5〜100%であり、比較リン酸肥料No.31のS/Cの52.5%に比べて大幅に高いことが理由の一つである。また、リン酸の溶解度も影響しており、本発明のリン酸肥料のリン酸溶解度は4.3〜5.2mg/Lであり、比較リン酸肥料No.31のリン酸溶解度0.1mg/Lに比べると大幅に高く、リン酸吸収量が高い原因になっている。
【0061】
本発明のリン酸肥料(No.10、20、21)と比較例の試料No.13についてみると、本発明の上記リン酸肥料のリン酸吸収量は17.7mg以上であるが、試料No.13はHAPの結晶子サイズが1.0nmと小さいので、このリン酸肥料を用いた試験区No.13のリン酸吸収量は12.9mgと低かった。このことから、高い肥効を得るためには、HAPの結晶子サイズは2.3〜2.8nmの範囲が好ましいことが推察される。
【0062】
排水中のリンをCSHで回収したリン酸肥料(No.20〜23)の中では、No.23のリン酸肥料を用いた試験区No.23のリン酸吸収量は15.5mgであり、他の試験区に比べてリン酸吸収量がやや低い。この原因としては、試料No.23はHAPの結晶子サイズが6.1nmと大きく、比表面積が29m/gと小さいためであると考えられる。
【0063】
本発明のリン酸肥料(No.10、No.20、21)は、水溶性リン酸(W-PO)を全く含有しないが、リン酸の肥効に関しては、水溶性リン酸が100%である過リン酸石灰(試料No.33)と同等あるいはそれに近い成績を示した。これは、本発明のリン酸肥料に含まれるヒドロキシアパタイトが、適度な結晶子サイズと比表面積を持つことによって、植物に利用されやすい溶解性が高い形態で存在しているためであると考えられる。
【0064】
さらに、本発明のリン酸肥料(No.10、No.20、21)は、水溶性リン酸を含有しないことから、過リン酸石灰のように水溶性リン酸を主体とした肥料とは異なり、土壌中のアルミニウムや鉄と結合して不溶化し難い特質がある。表9に示すように、本発明のリン酸肥料(No.10、No.20、21)を用いた試験区10、20、21の跡地土壌の可給態リン酸は、過リン酸石灰No.33を用いた試験区33と同等ないしは3倍近く高く、リン酸肥料として無駄が少なく、施肥効率が高い。
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
【表9】