(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料を保持する保持体の上面または下面に設けられた第1凹部に第1突部を係合させた状態で、前記第1突部を、保持体の上面または下面に設けられた第2凹部の延びる方向に移動させて、前記保持体を前記第2凹部の延びる方向に搬送する工程と、
前記工程において、前記第2凹部に第2突部を前記第2凹部の延びる方向から挿入させた後、前記第2突部を第1凹部の延びる方向に移動させて、前記保持体を前記第1凹部の延びる方向に搬送する工程と、を有し、
前記第1凹部は、前記保持体の側面まで延びて外部に連通し、
前記第2凹部は、前記保持体の側面まで延びて外部に連通している、試料搬送方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の構成は、第1リフター部材909と第2リフター部材904によってマルチウェルプレート903を昇降させつつ、アーム部材905を旋回させてマルチウェルプレート903を搬送する構成であるため、装置の構成が複雑となり且つ大型化する。
【0010】
かかる課題に鑑み、本発明は、簡素な構成によって円滑に試料を2次元平面に沿って搬送することが可能な試料搬送装置、試料測定装置、試料搬送方法および保持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、試料搬送装置に関する。本態様に係る試料搬送装置(10)は、第1凹部(510、120)、および、第1凹部の延びる方向と異なる方向に延びる第2凹部(520、220)とを有し、試料を保持するための保持体(500)と、第1凹部(510、120)に係合するための第1突部(110、540)を有し、第1凹部(510、120)に係合した第1突部(110、540)を第2凹部(520、220)の延びる方向に移送させて保持体(500)を搬送する第1搬送部(310)と、第2凹部(520、220)に係合するための第2突部(210、550)を有し、第2凹部(520、220)に係合した第2突部(210、550)第1凹部の延びる方向に移送させて保持体(500)を搬送する第2搬送部(320)と、を備える。第1凹部(510、120)は
、保持体(500)の上面および下面の少なくとも一方に形成され、
保持体(500)を第1凹部(510,220)の延びる方向に搬送する搬送動作において第1突部(110、540)が抜けるように、保持体(500)の側面まで延びて外部に連通しており、第2凹部(520、220)は、保持体(500
)の上面および下面の少なくとも一方に形成され、保持体(500)の側面まで延び
て外部に連通するように形成されている。
【0012】
本態様に係る試料搬送装置によれば、第1搬送部が第1突部を第2凹部の延びる方向に移送すると、第1凹部と第1突部との係合により、保持体が第2凹部の延びる方向の力を受ける。このとき、第2凹部に係合する第2突部は、第2凹部に沿って第2凹部の延びる方向に移動可能である。したがって、保持体は、第1突部の移動により付与された力によって第2凹部の延びる方向に搬送される。また、第2凹部は保持体の側面まで延びるように形成されているため、保持体が第2凹部の延びる方向に移動することにより、第2突部が第2凹部に進入して第2凹部に係合する。第2凹部の延びる方向における保持体の搬送が終了した後、第2搬送部が第2突部を第1凹部の延びる方向に移送すると、第2凹部と第2突部との係合により、保持体が第1凹部の延びる方向の力を受ける。このとき、第1凹部に係合する第1突部は、第1凹部に沿って第1凹部の延びる方向に移動可能である。したがって、保持体は、第2突部の移動により付与された第1凹部の延びる方向の力によって第1凹部の延びる方向に搬送される。
【0013】
このように、本態様に係る試料搬送装置によれば、第1凹部および第1突部の係合と、第2凹部および第2突部の係合とを用いた簡素な構成によって、試料を保持する保持体を2次元平面に沿って円滑に搬送できる。また、第2突部を反対方向に移動させ、第1突部を反対方向に移動させることにより、保持体を搬送前の位置に戻すことができる。さらに、第2突部は、第2凹部の延びる方向において第2凹部に挿脱可能であるため、第2凹部の延びる方向における保持体の搬送距離を広くできる。よって、本態様に係る試料搬送装置によれば、簡素な構成によって広範囲に、保持体を往復移動させることができる。
【0014】
なお、「第1凹部」と「第2凹部」は、必ずしも互いに垂直な方向に延びていなくてもよく、互いに平行でない方向に延びていればよい。
【0015】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、第1凹部(510、120)は、保持体(500)を第1凹部の延びる方向に搬送する搬送動作において第1突部(110、540)が抜けるように、保持体(500)の側面まで延びる構成とされ得る。こうすると、さらに、第1凹部の延びる方向における保持体の搬送距離を広くできる。
【0016】
また、第2凹部(520、220)は、保持体500を第2凹部の延びる方向に搬送する搬送動作において第2突部(210、550)が抜けるように、保持体(500)の側面まで延びる構成とされ得る。こうすると、第2凹部の延びる方向における保持体の搬送距離をさらに広げることができる。
【0017】
この場合、第2凹部(520、220)の幅が、保持体(500)の側面に向かうに従って広げられ得る。また、第1凹部(510、120)の幅が、保持体(500)の側面に向かうに従って広げられ得る。こうすると、第1突部と第1凹部との間または第2突部と第2凹部との間に位置ずれが生じても、第1突部または第2突部を、対応する凹部に対して円滑に挿脱できる。
【0018】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、第1凹部(510、120)および第2凹部(520、220)は、保持体(500)の下面(501)に配置されるよう構成され得る。こうすると、搬送経路上の所定の位置に保持体を載置することによって、凹部と突部とを係合させることができる。よって、別途、係合のために凹部または突部を移動させる機構を設ける必要がなく、試料搬送装置の構成を簡素化できる。
【0019】
また、第1突部(110、540)は、根元側よりも幅が広い幅広部(111)を有し、第1凹部(510、120)は、幅広部(111)を受け入れる第1の幅の部分(511)と、第1の幅の部分(511)に対して第1突部(110、540)の根元側に位置し、幅広部(111)よりも幅の狭い第2の幅の部分(512)と、を備えるよう構成され得る。こうすると、保持体が、第2凹部の延びる方向における移動範囲において取り外されることを抑止できる。
【0020】
また、突出方向に見たときの第1突部(110、540)および第2突部(210、550)の形状が円形であるよう構成され得る。こうすると、第1突部が第1凹部に進入する際に、第1突部が第1凹部に引っかかりにくくなり、第2突部が第2凹部に進入する際に、第2突部が第2凹部に引っかかりにくくなる。よって、第1突部および第2突部を、それぞれ第1凹部および第2凹部に円滑に進入させることができる。
【0021】
また、第1突部(110、540)および第2突部(210、550)が周方向に回転可能に構成され得る。こうすると、第1突部が第1凹部に進入する際に、第1突部が第1凹部に引っかかった場合にも、第1突部が回転することにより、第1突部が第1凹部に円滑に進入する。同様に、第2突部が第2凹部に進入する際に、第2突部が第2凹部に引っかかった場合にも、第2突部が回転することにより、第2突部が第2凹部に円滑に進入する。
【0022】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、第1凹部(510、120)に挿入される第1突部(110、540)の部分の最大幅が第1凹部(510、120)の幅と略等しく、第2凹部(520、220)に挿入される第2突部(210、550)の部分の最大幅が第2凹部(520、220)の幅と略等しいように構成され得る。こうすると、第1突部と第1凹部との間、および第2突部と第2凹部との間に、がたつきが略生じない。よって、保持体を円滑に搬送でき、かつ、保持体の移動範囲における位置精度を高めることができる。
【0023】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、上方から見たときに、第1突部(110、540)の移動経路(101)と第2突部(210、550)の移動経路(201)とが互いに交差しないように設定され得る。こうすると、第1搬送部の駆動機構と第2搬送部の駆動機構とを、互いに接触することなく個別に配置できる。よって、第1搬送部と第2搬送部の構成を簡素にできる。
【0024】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、保持体は、第2凹部(520、220)と同じ方向に延びる第3凹部(530)を有し、第3凹部(530)に係合する第3突部(810)を第1凹部の延びる方向に移送させて保持体(500)を搬送する第3搬送部(330)を備えるよう構成され得る。ここで、第3凹部(530)は、第1突部(110、540)により保持体(500)を第2凹部(520、220)の延びる方向に搬送する搬送動作において第3突部(810)が進入するように、保持体(500)の第2凹部(520、220)の延びる方向側の側面まで延びて
外部に連通している。こうすると、第3搬送部により、保持体を第2搬送部による搬送範囲以外の範囲にも搬送できる。よって、保持体の搬送範囲を広げることができる。
【0025】
この場合、第1凹部(510、120)は、第3突部(810)により保持体(500)を搬送する搬送動作において第1突部(110、540)が抜けるように、保持体(500)の側面まで延び
て外部に連通する構成とされ得る。こうすると、第3突部による保持体の搬送距離を広くできる。
【0026】
本態様に係る試料搬送装置(10)は、保持体(500)の移動範囲において保持体(500)の下面(501)が載せられる平面状の支持面(401)を備えるよう構成され得る。こうすると、保持体を滑らかに搬送できる。
【0027】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、保持体(500)は、マトリックス状にウェル(601)が形成されたプレート(600)を上面(502)に設置可能に構成され得る。こうすると、保持体に対して容易に試料を配置できる。
【0028】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、保持体(500)の上面(502)に、マトリックス状にウェル(508)が形成され得る。こうすると、プレートを省略できる。
【0029】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、保持体(500)の上面に、試料容器(12)を設置するための凹部(506)が形成され得る。こうすると、試料容器に収容された試料をプレートのウェルに分注する必要がなくなり、操作を簡便化できる。
【0030】
この場合、保持体(500)の上面に、凹部(506)に設置される試料容器(12)内の試料の種類を識別するための識別標識が付されることが好ましい。こうすると、オペレータは、どのような種類の試料を収容した試料容器を保持体の凹部に設置すべきかを的確に把握できる。
【0031】
また、試料搬送装置(10)が、第1搬送部(310)により搬送される複数の保持体(500)を備える場合、各保持体(500)の上面に、複数の保持体(500)の搬送順序を示す識別標識が付されることが好ましい。こうすると、各保持体に設置された試料容器の処理順序を的確に把握できる。
【0032】
また、試料搬送装置(10)は、試料容器(12)の蓋(12a)を設置するための蓋ホルダ(13)をさらに備える構成とされ得る。こうすると、オペレータは、試料容器から外した蓋を試料搬送装置の蓋ホルダに設置でき、試料容器から外した蓋の管理を適切に行い得る。
【0033】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、第2凹部の延びる方向に対して第1凹部の延びる方向が略垂直であるよう構成され得る。こうすると、第1凹部と第1突部とを係合させた状態から、第1凹部の延びる方向に対して略垂直な方向に第1突部が移送されるため、第1搬送部による駆動力が、第1突部を介して第1凹部に効率的に伝達される。同様に、第2凹部と第2突部とを係合させた状態から、第2凹部が延びる方向に対して略垂直な方向に第2突部が移送されるため、第2搬送部による駆動力が、第2突部を介して第2凹部に効率的に伝達される。よって、第1搬送部および第2搬送部による駆動力を、効率的に保持体に伝達できる。
【0034】
本態様に係る試料搬送装置(10)は、第1突部(110、540)が第1凹部の延びる方向に沿って複数配置され、第2突部(210、550)が第2凹部の延びる方向に沿って複数配置された構成とされ得る。こうすると、第1突部および第2突部によって第1凹部および第2凹部を安定的に押すことができる。
【0035】
本態様に係る試料搬送装置(10)において、保持体(500)は、ポリアセタールにより形成され得る。ポリアセタールは、ステンレスや電気亜鉛めっき鋼板(SECC)との摩擦抵抗が小さい。このため、保持体が載せられる支持面がステンレスや電気亜鉛めっき鋼板(SECC)によって構成される場合、支持面上において保持体を円滑に搬送できる。
【0036】
本発明の第2の態様は、試料測定装置に関する。本態様に係る試料測定装置(30)は、第1の態様に係る試料搬送装置(10)と、保持体(500)により搬送された試料を吸引する吸引部(32)と、吸引部(32)により吸引された試料を測定する測定部(33)と、を備える。
【0037】
本態様に係る試料測定装置によれば、第1の態様と同様の効果が奏される。
【0038】
この場合、試料を収容する複数のウェル(508)が、第2凹部の延びる方向および第1凹部の延びる方向にマトリックス状に並ぶように保持体(500)に配置され、吸引部(32)は、試料を吸引する吸引管(710)と、吸引管(710)を第2凹部の延びる方向に移送する移送部(720)と、を備え、試料搬送装置(10)は、第1搬送部(310)および第2搬送部(320)により保持体(500)を搬送して、第2凹部の延びる方向に並ぶウェル(508)を吸引管(710)の移送経路に位置付けるよう構成され得る。本態様に係る試料測定装置は、第1の態様に係る試料搬送装置により保持体を搬送する構成であるため、保持体を第1凹部の延びる方向に精度よく搬送できる。このため、第2凹部の延びる方向に並ぶウェルを吸引管の移動経路に正確に位置付けることができる。よって、各ウェルから試料を適正に吸引できる。
【0039】
本発明の第3の態様は、試料を2次元平面に沿って第1方向および第2方向に搬送するための試料搬送装置に関する。本態様に係る試料搬送装置(10)は、試料を保持するための保持体(500)と、第1移動体(100)を第1方向に搬送する第1搬送部(310)と、第2移動体(200)を第2方向に搬送する第2搬送部(320)と、を備える。ここで、第2方向に延びる第1間隙(510、120)が、保持体(500)と第1移動体(100)の一方に配置されるとともに、第1間隙(510、120)に係合する第1突部(110、540)が、保持体(500)と第1移動体(100)の他方に配置される。また、第1方向に延びる第2間隙(520、220)が、保持体(500)と第2移動体(200)の一方に配置されるとともに、第2間隙(520、220)に係合する第2突部(210、550)が、保持体(500)と第2移動体(200)の他方に配置される。第2間隙(520、220)と第2突部(210、550)は、保持体(500)が第1方向に搬送される過程において互いに係合する位置に配置され、
第1隙間(510、120)は、保持体(500)または第1移動体(100)の側面まで延びて外部に連通し、第2間隙(520、220)は、保持体(500)を第1方向に搬送する搬送動作において第2突部(210、550)が進入するよう、保持体(500)の第1方向側の側面または前記第2移動体(200)の第1方向と反対側の側面を貫通している。
【0040】
本態様に係る試料搬送装置によれば、第1の態様と同様の効果が奏される。
【0041】
なお、「第1間隙」および「第2間隙」は、必ずしも、互いに対向する2つの面によって構成されていなくともよく、たとえば、互いに対向する2つの線状部分によって構成されていてもよい。また、「第1間隙」および「第2間隙」は、有底の凹部でなくてもよく、たとえば、無底の開口からなる構成であってもよい。
【0042】
本発明の第4の態様は、試料搬送方法に関する。本態様に係る試料搬送方法は、試料を保持する保持体(500)の上面または下面に設けられた第1凹部(510、120)に第1突部(110、540)を係合させた状態で第1突部(110、540)を、保持体の上面または下面に設けられた第2凹部の延びる方向に移動させて、保持体(500)を
、第2凹部(520、220)の延びる方向に搬送する工程(S11、S14)と、この工程において、第2凹部(520、220)に第2突部(210、550)を第2凹部の延びる方向から挿入された後、第2突部(210、550)を第1凹部の延びる方向に移動させて、保持体(500)を第1凹部の延びる方向に搬送する工程(S12、S13)と、を有する。
第1凹部(510、120)は、保持体(500)の側面まで延びて外部に連通し、第2凹部(520、220)は、保持体(500)の側面まで延びて外部に連通している。
【0043】
本態様に係る試料搬送方法によれば、第1の態様と同様の効果が奏される。
【0044】
本態様に係る試料搬送方法では、保持体(500)を第1凹部の延びる方向に搬送する工程において、第1突部(110、540)を第1凹部(510、120)から抜くようにすることが好ましい。こうすると、第1凹部の延びる方向における保持体の搬送距離を広くすることができる。
【0045】
本発明の第
5の態様は、試料を保持するための保持体に関する。本態様に係る保持体(500)は、第1凹部(510)と、第1凹部(510)と異なる方向に延びる第2凹部(520)とを有する下面(501)を備える。ここで、第1凹部(510)は、少なくとも1つの側面まで延びて
外部に連通しており、第2凹部(520)は、少なくとも1つの側面まで延びて
外部に連通している。
【0046】
本態様に係る保持体によれば、この保持体を用いることにより、第1の態様と同様の効果が奏される。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、簡素な構成によって円滑に試料を2次元平面に沿って搬送できる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
<実施形態1>
図1(a)に示すように、試料搬送装置10は、第1移動体100と、第2移動体200と、第1搬送部310と、第2搬送部320と、支持板400と、を備える。支持板400は、たとえば、ステンレスや電気亜鉛めっき鋼板(SECC)からなっている。試料搬送装置10は、試料を2次元平面に沿って搬送する。実施形態1では、試料搬送装置10は、試料をXY平面に沿って搬送する。
図1(a)において、XYZ軸は互いに直交している。XY平面は水平面を示し、Z軸正方向は鉛直下方向を示している。以下の図面においても、XYZ軸は、
図1(a)のXYZ軸と同様である。なお、X軸正方向は第1方向に対応し、Y軸正方向は第2方向に対応する。
【0050】
図1(b)に示すように、試料搬送装置10は、さらに保持体500を備える。保持体500は、プレート600を上面に設置可能に構成されている。プレート600には、マトリックス状にウェル601が形成されている。具体的には、プレート600には、X軸方向に並ぶ12個のウェル601の組合せが、Y軸方向に8つ並んでおり、合計で96個のウェル601が形成されている。隣り合うウェル601の中心間の距離は、9mmであり、ウェル601の上端部分における直径は、5.5mmである。オペレータは、各ウェル601に試料を収容させ、試料を保持するプレート600を保持体500の上面に設置する。このように、保持体500は、プレート600を介して試料を保持する。保持体500がプレート600を上面に設置できるように構成されると、オペレータは、保持体500に対して容易に試料を配置できる。
【0051】
保持体500は、たとえば、ポリアセタールにより形成される。一般に、ポリアセタールは、支持板400の構成材料であるステンレスや電気亜鉛めっき鋼板(SECC)との摩擦抵抗が小さい。このため、保持体500をポリアセタールにより形成することにより、支持板400の支持面401上において、保持体500を円滑に搬送できる。保持体500は、成形しやすく且つ支持面401との摩擦抵抗が小さい樹脂材料からなることが好ましい。
【0052】
図1(b)、(c)に示すように、保持体500の下面501には、第1凹部510と第2凹部520が配置されている。第1凹部510は、Y軸方向に平行に延びるとともに、下面501に形成された溝により構成されている。第2凹部520は、X軸方向に平行に延びるとともに、下面501に形成された溝により構成されている。第1凹部510と第2凹部520とを溝により構成すると、第1凹部510と第2凹部520を保持体500に容易に成形できる。第1凹部510は、下面501のX軸方向における中央位置を通るように配置されている。第2凹部520は、下面501のY軸正側の端部付近を通るように配置されている。
【0053】
図1(a)に戻り、第1搬送部310は、第1移動体100と第1突部110とを含み、第1移動体100とともに第1突部110をX軸方向に搬送する。第2搬送部320は、第2移動体200と第2突部210とを含み、第2移動体200とともに第2突部210をY軸方向に搬送する。第1移動体100と第2移動体200は、支持板400の下面側すなわちZ軸正側に位置付けられている。第1移動体100には、一対の第1突部110が配置されており、第2移動体200には、一対の第2突部210が配置されている。一対の第1突部110は、第1移動体100においてY軸方向に並んでおり、一対の第2突部210は、第2移動体200においてX軸方向に並んでいる。第1突部110は、第1凹部510と係合し、第2突部210は、第2凹部520と係合する。
【0054】
Z軸方向に見たときに、第1移動体100の移動経路101と第2移動体200の移動経路201とが、互いに交差しないように設定されている。これにより、第1搬送部310の駆動機構と第2搬送部320の駆動機構とを、互いに接触することなく個別に配置できる。よって、第1搬送部310と第2搬送部320の構成を簡素にできる。
【0055】
支持面401は、平面状に形成された支持板400の上面である。支持面401には、保持体500の移動範囲において、保持体500の下面501が載せられる。これにより、保持体500を支持面401に支持させながら、支持面401上を滑らかに搬送できる。なお、保持体500の下面501が、第1突部110と第2突部210によってのみ支持され、支持面401から離れていてもよい。
【0056】
支持板400には、一対の第1溝411と一対の第2溝412が形成されている。一対の第1溝411はX軸方向に延びており、一対の第2溝412はY軸方向に延びている。一対の第1突部110は、一対の第1溝411を介して、支持面401から上方向に突出している。一対の第2突部210は、一対の第2溝412を介して、支持面401から上方向に突出している。
【0057】
次に、
図2(a)〜
図3(b)を参照して、保持体500の搬送について説明する。なお、
図2(a)〜
図3(b)では、便宜上、第1移動体100と、第2移動体200と、第1搬送部310と、第2搬送部320と、プレート600の図示が省略されている。
【0058】
ここで、保持体500が支持面401のX軸負側の端部に位置付けられたときの、保持体500の位置を位置421とする。保持体500が支持面401のX軸正側の端部に位置付けられたときの、保持体500の位置を位置424とする。保持体500が位置421と位置424の中間に位置付けられたときの、保持体500の位置を位置422とする。保持体500が支持面401のY軸正側の端部に位置付けられたときの、保持体500の位置を位置423とする。
【0059】
図2(a)に示すように、保持体500は、第1溝411のX軸負側の端部に位置付けられた一対の第1突部110が第1凹部510に係合するように、支持面401上に配置される。これにより、保持体500は、位置421に位置付けられる。このとき、第1突部110は、第1凹部510に嵌まり込み、保持体500の下面501は、支持面401により支持される。続いて、第2突部210は、第2溝412のY軸負側の端部に位置付けられる。
【0060】
図2(a)の状態から、第1突部110がX軸正方向に移動される。これにより、第1突部110が第1凹部510のX軸正側の壁を押し、保持体500がX軸正方向に搬送される。このとき、保持体500が第2突部210の位置に差しかかると、第2突部210が、第2凹部520のX軸正側の端部から第2凹部520に入り込む。そして、第1突部110が第1溝411のX軸方向における中央位置まで移動すると、
図2(b)に示すように、一対の第2突部210が第2凹部520に嵌まり込んだ状態となる。こうして、保持体500は、位置422に位置付けられる。
【0061】
続いて、
図2(b)の状態から、第2突部210がY軸正方向に移動される。これにより、第2突部210が第2凹部520のY軸正側の壁を押し、保持体500がY軸正方向に搬送される。このとき、保持体500の移動に合わせて、第1突部110が、第1凹部510のY軸負側の端部から保持体500の外部へと抜き取られる。そして、第2突部210が第2溝412のY軸正側の端部まで移動すると、
図3(a)に示すように、保持体500が、位置423に位置付けられる。
【0062】
続いて、
図3(a)の状態から、第2突部210がY軸負方向に移動される。これにより、第2突部210が第2凹部520のY軸負側の壁を押し、保持体500がY軸負方向に搬送される。このとき、保持体500が第1突部110の位置に差しかかると、第1突部110が、第1凹部510のY軸負側の端部から第1凹部510に入り込む。そして、第2突部210が第2溝412のY軸負側の端部まで移動すると、
図3(b)に示すように、一対の第1突部110が第1凹部510に嵌まり込んだ状態となる。こうして、保持体500は、位置422に再び位置付けられる。
【0063】
その後、第1突部110がX軸負方向に移動される。これにより、第1突部110が第1凹部510のX軸負側の壁を押し、保持体500がX軸負方向に搬送される。このとき、保持体500の移動に合わせて、第2突部210が第2凹部520のX軸正側の端部から保持体500の外部へと抜き取られる。そして、第1突部110が第1溝411のX軸負側の端部まで移動すると、保持体500が元の位置421に位置付けられる。なお、
図3(b)の状態から、第1突部110がX軸正方向に移動されてもよい。この場合、第2突部210が第2凹部520のX軸負側の端部から保持体500の外部へと抜き取られる。そして、保持体500が、位置424に位置付けられる。
【0064】
以上のように、第1搬送部310が第1移動体100をX軸正方向に搬送すると、第1凹部510と第1突部110との係合により、保持体500がX軸正方向の力を受ける。このとき、第2凹部520はX軸方向に延びているため、第2凹部520に係合する第2突部210は、第2凹部520に沿ってX軸方向に移動可能である。したがって、保持体500は、第1移動体100の移動により付与されたX軸正方向の力によってX軸正方向に移動できる。
【0065】
また、第2搬送部320が第2移動体200をY軸正方向に搬送すると、第2凹部520と第2突部210との係合により、保持体500がY軸正方向の力を受ける。このとき、第1凹部510はY軸方向に延びているため、第1凹部510に係合する第1突部110は、第1凹部510に沿ってY軸方向に移動可能である。したがって、保持体500は、第2移動体200の移動により付与されたY軸正方向の力によってY軸正方向に移動できる。
【0066】
このように、試料搬送装置10によれば、第1凹部510および第1突部110の係合と、第2凹部520および第2突部210の係合とを用いた簡素な構成によって、試料を保持する保持体500をXY平面に沿って円滑に搬送できる。
【0067】
第2搬送部320は、第2移動体200をY軸方向に搬送したが、これに限らず、XY平面においてX軸方向およびY軸方向に対して角度を有する方向に搬送してもよい。すなわち、第2搬送部320は、XY平面において、第2移動体200をX軸方向およびY軸方向とは異なる方向に搬送してもよい。この場合、第2溝412の延びる方向と、第1凹部510の延びる方向と、一対の第1突部110の並び方向とは、第2移動体200の搬送方向に平行な方向とされる。これにより、保持体500は、第1移動体100によりX軸方向に搬送されるとともに、第2移動体200によりX軸方向およびY軸方向とは異なる方向に搬送される。
【0068】
ただし、第2移動体200の搬送方向は、第1移動体100の搬送方向に対して略垂直であるのが好ましい。こうすると、第1凹部510と第1突部110とを係合させた状態から、第1凹部510の延びる方向に対して略垂直な方向に第1突部110が移動するため、第1搬送部310による駆動力が、第1突部110を介して第1凹部510に効率的に伝達される。同様に、第2凹部520と第2突部210とを係合させた状態から、第2凹部520が延びる方向に対して略垂直な方向に第2突部210が移動するため、第2搬送部320による駆動力が、第2突部210を介して第2凹部520に効率的に伝達される。よって、第1搬送部310および第2搬送部320による駆動力を、効率的に保持体500に伝達できる。
【0069】
<具体的構成>
次に、
図1(a)〜
図3(b)に示した構成を、さらに具体的に説明する。
【0070】
図4に示すように、第1移動体100は、X軸方向に長い形状を有している。第1移動体100のX軸正側の端部付近およびX軸負側の端部付近には、それぞれ、一対の第1突部110が配置されている。支持面401上には、2つの保持体500が配置される。2組の一対の第1突部110により、X軸方向に2つの保持体500を同時に搬送可能となる。
【0071】
第1搬送部310は、ベルト311と、2つのプーリ312と、モータ313と、留め具314と、を備える。ベルト311は、2つのプーリ312に架けられている。2つのプーリ312は、所定の間隔をあけてX軸方向に並んで配置されている。X軸正側のプーリ312は、モータ313の駆動軸に接続されている。モータ313は、ステッピングモータにより構成される。第1移動体100は、図示しないレールに支持されながらX軸方向に移動可能に構成される。第1移動体100は、留め具314によりベルト311に接続されている。
【0072】
同様に、第2搬送部320は、ベルト321と、2つのプーリ322と、モータ323と、留め具324と、を備える。ベルト321は、2つのプーリ322に架けられている。2つのプーリ322は、所定の間隔をあけてY軸方向に並んで配置されている。Y軸正側のプーリ322は、モータ323の駆動軸に接続されている。モータ323は、ステッピングモータにより構成される。第2移動体200は、留め具324によりベルト321に接続されている。
【0073】
支持板400は、支持面401の周囲に、壁部431〜435、441〜445を備える。壁部431〜433は、位置421に位置付けられた保持体500の3つの側面を囲んでいる。壁部433〜435は、位置424に位置付けられた保持体500の3つの側面を囲んでいる。壁部441〜443は、位置423に位置付けられた保持体500の3つの側面を囲んでいる。このように、位置421、423、424において保持体500が3つの壁部に囲まれることにより、支持面401上における保持体500が、確実に位置421、423、424に位置付けられる。
【0074】
特に、位置423近傍において、壁部441、442により保持体500のX軸方向の位置が規定されるため、後述する吸引管710による試料の吸引の際に、保持体500上に設置されたプレート600のウェル601の位置と吸引管710の吸引位置とを一致させることができる。これにより、吸引管710による試料の吸引を適正に行うことができる。
【0075】
壁部444、445は、位置422と位置423の間に設けられている。壁部444と壁部445のX軸方向における間隔は、位置422から位置423に向かうに従って、保持体500のX軸方向の幅より大きい状態から、保持体500のX軸方向の幅とほぼ等しい状態へと変化する。これにより、保持体500が位置422から位置423に搬送される際に、保持体500のX軸方向の位置がずれていても、壁部444、445により保持体500のX軸方向の位置が徐々に位置423のX軸方向の位置に合わせられる。よって、保持体500を位置422から位置423へと円滑に移送できる。
【0076】
試料搬送装置10は、さらに、一対のセンサ451〜455を備える。一対のセンサ451〜455は、発光部と受光部からなる透過型のセンサであり、ペアとなるセンサ間が遮光状態と透過状態のいずれの状態かを検出できる。
【0077】
一対のセンサ451は、位置421に位置付けられた保持体500上のプレート600が、適正に保持体500に設置されているか否かを検出するために用いられる。具体的には、保持体500に設置するプレート600の向きが間違っている場合、後述するように、保持体500上におけるプレート600は、適正にプレート600が設置された場合に比べて高い位置に位置付けられる。一対のセンサ451は、適正にプレート600が設置された場合に透過状態となり、誤ってプレート600が設置された場合に遮光状態となるよう試料搬送装置10内に設置されている。したがって、一対のセンサ451の検出信号に基づいて、位置421の保持体500上のプレート600が、適正に保持体500に設置されているか否かを検出できる。
【0078】
一対のセンサ452は、一対のセンサ451と同様に試料搬送装置10内に設置されている。一対のセンサ452は、位置422の保持体500上のプレート600が、適正に保持体500に設置されているか否かを検出するために用いられる。
【0079】
一対のセンサ453は、位置422と位置423との間を移動する保持体500を検出するために用いられる。一対のセンサ453は、位置422から位置423へと所定距離だけ変位した範囲に保持体500がある場合に遮光状態となり、保持体500がこの範囲から位置423側へと抜けると透過状態となる。したがって、一対のセンサ453の検出信号に基づいて、位置422から位置423へと所定距離だけ変位した範囲に保持体500が位置付けられているか否かを検出できる。
【0080】
一対のセンサ454は、位置421に位置付けられた保持体500に、プレート600が設置されているか否かを検出するために用いられる。具体的には、後述するように、保持体500には、Y軸方向に貫通する一対の孔504が設けられている。一対のセンサ454は、位置421の保持体500にプレート600が設置されている場合にプレート600によって遮光状態となり、位置421の保持体500にプレート600が設置されていない場合に透過状態となるよう試料搬送装置10内に設置されている。したがって、一対のセンサ454の検出信号に基づいて、位置421の保持体500にプレート600が設置されているか否かを検出できる。
【0081】
一対のセンサ455は、一対のセンサ454と同様に試料搬送装置10内に設置されている。一対のセンサ455は、位置422の保持体500にプレート600が設置されているか否かを検出するために用いられる。
【0082】
図9を参照して後述する処理装置20は、吸引管710と、吸引管710をX軸方向およびZ軸方向に移送する移送部720と、を備える。吸引管710のX軸方向における移動経路は、保持体500に設置されたプレート600の全てのウェル601から試料を吸引可能となるように設定されている。具体的には、保持体500が最もY軸正側に位置付けられたときに、プレート600のY軸負側の端部においてX軸方向に1列に並ぶ12個のウェル601のXY平面における位置に重なるよう、吸引管710のX軸方向における移動経路が設定されている。これにより、保持体500をY軸方向に移動させることで、吸引管710は、全てのウェル601内の試料を吸引できる。また、吸引管710のX軸方向における移動経路は、
図9に示す処理装置20の外部の位置21にも重なるよう設定されている。移送部720の構成については、追って
図8(a)〜(c)を参照して説明する。
【0083】
図5(a)に示すように、第1突部110は、根元側すなわちZ軸正側よりも幅が広い幅広部111を有する。突出方向すなわちZ軸方向に見たときの第1突部110の形状は円形である。第1突部110は、周方向に回転可能に構成されている。第1凹部510に挿入される第1突部110の部分の最大幅は、第1凹部510の幅と略等しい。
【0084】
具体的には、第1突部110は、幅広部111と軸部材112を備える。軸部材112は、Z軸方向に延びている。軸部材112のZ軸正側の端部は、第1移動体100に設置されている。幅広部111は、軸部材112を中心として回転可能となるよう、軸部材112のZ軸負側の端部に設置されている。Z軸方向に見たときの幅広部111の形状は、円形である。幅広部111は、ローラにより構成される。
【0085】
第1凹部510は、幅広部111を受け入れる第1の幅の部分511と、第1の幅の部分511に対して第1突部110の根元側に位置し、幅広部111よりも幅の狭い第2の幅の部分512と、を備える。第1の幅の部分511は、Y軸方向に延びるとともに、YZ平面に平行な一対の壁により構成される。第2の幅の部分512は、Y軸方向に延びるとともに、YZ平面に平行な一対の壁により構成される。第1の幅の部分511は、Z軸方向において、幅広部111の位置を含んでいる。第2の幅の部分512は、Z軸方向において、幅広部111よりもZ軸正側に位置付けられている。
【0086】
第1の幅の部分511の幅、すなわち第1の幅の部分511を構成する一対の壁の間隔はw1であり、第2の幅の部分512の幅、すなわち第2の幅の部分512を構成する一対の壁の間隔はw2である。w1、w2の関係は、w1>w2である。幅広部111の直径は、w1以下、かつ、w2より大きい。より具体的には、第1の幅の部分511の幅は、9.2mmに設定され、幅広部111の直径は、w1とほぼ同じ値である9.0mmに設定される。軸部材112の径は、w2より小さい。このように第1突部110と第1凹部510が構成されることにより、保持体500が、X軸方向における移動範囲において取り外されることを抑止できる。
【0087】
図5(b)に示すように、第2突部210は、第1突部110と同様、根元側すなわちZ軸正側よりも幅が広い幅広部211を有する。突出方向すなわちZ軸方向に見たときの第2突部210の形状は円形である。第2突部210は、周方向に回転可能に構成されている。第2凹部520に挿入される第2突部210の部分の最大幅は、第2凹部520の幅と略等しい。
【0088】
具体的には、第2突部210は、幅広部211と軸部材212を備える。軸部材212は、Z軸方向に延びている。軸部材212のZ軸正側の端部は、第2移動体200に設置されている。幅広部211は、軸部材212を中心として回転可能となるよう、軸部材212のZ軸負側の端部に設置されている。Z軸方向に見たときの幅広部211の形状は、円形である。幅広部211は、ローラにより構成される。
【0089】
第2凹部520は、幅広部211を受け入れる第1の幅の部分521を備える。第1の幅の部分521は、X軸方向に延びるとともに、XZ平面に平行な一対の壁により構成される。第1の幅の部分521の幅、すなわち第1の幅の部分521を構成する一対の壁の間隔はw1である。幅広部211の直径は、w1以下である。より具体的には、第1の幅の部分521の幅は、9.2mmに設定され、幅広部211の直径は、w1とほぼ同じ値である9.0mmに設定される。軸部材212の径は、w1より小さい。このように第2突部210と第2凹部520が構成されることにより、保持体500が、Y軸方向における移動範囲において取り外し可能となる。
【0090】
なお、第2凹部520も、第1凹部510と同様、幅広部211よりも幅の狭い第2の幅の部分を備えてもよい。こうすると、保持体500が、Y軸方向における移動範囲においても取り外されることを防止できる。ただし、第2凹部520が第2の幅の部分を備えない場合、Y軸方向における移動範囲において、保持体500を試料搬送装置10に対して容易に着脱できる。
【0091】
図5(a)、(b)を参照して説明したように、突出方向に見たときの第1突部110および第2突部210の形状は円形である。これにより、第1突部110が第1凹部510に進入する際に、第1突部110が第1凹部510に引っかかりにくくなり、第2突部210が第2凹部520に進入する際に、第2突部210が第2凹部520に引っかかりにくくなる。よって、第1突部110および第2突部210を、それぞれ第1凹部510および第2凹部520に円滑に進入させることができる。
【0092】
また、
図5(a)、(b)を参照して説明したように、第1突部110および第2突部210が周方向に回転可能に構成されている。これにより、第1突部110が第1凹部510に進入する際に、第1突部110が第1凹部510に引っかかった場合にも、第1突部110が回転することにより、第1突部110が第1凹部510に円滑に進入する。同様に、第2突部210が第2凹部520に進入する際に、第2突部210が第2凹部520に引っかかった場合にも、第2突部210が回転することにより、第2突部210が第2凹部520に円滑に進入する。
【0093】
また、
図5(a)、(b)を参照して説明したように、第1凹部510に挿入される第1突部110の部分の最大幅は、第1凹部510の幅と略等しく、第2凹部520に挿入される第2突部210の部分の最大幅は、第2凹部520の幅と略等しい。これにより、第1突部110と第1凹部510との間、および、第2突部210と第2凹部520との間に、がたつきが略生じない。よって、保持体500を円滑に搬送でき、かつ、保持体500の移動範囲における位置精度、たとえば位置421〜424に搬送された保持体500の位置精度を高めることができる。
【0094】
図5(c)に示すように、第2凹部520のX軸正側の端部522は、X軸正方向に開放されている。端部522は、保持体500をX軸正方向に搬送する搬送動作において、第2突部210が進入する側の端部である。端部522がX軸正方向に開放されることにより、端部522がX軸正方向に開放されない場合に比べて、X軸方向における保持体500の搬送距離を広げることができる。
【0095】
同様に、第2凹部520のX軸負側の端部523は、X軸負方向に開放されている。端部523は、保持体500をX軸正方向に搬送する搬送動作において、第2突部210が進入した後に抜ける側の端部である。端部523がX軸負方向に開放されることにより、端部523がX軸負方向に開放されない場合に比べて、X軸方向における保持体500の搬送距離を広げることができる。
【0096】
端部522の幅は、端部522の端縁に向かうに従って、すなわちX軸正方向に向かうに従って広がっている。同様に、端部523の幅は、端部523の端縁に向かうに従って、すなわちX軸負方向に向かうに従って広がっている。これにより、第2突部210と第2凹部520との間に位置ずれが生じても、第2突部210を第2凹部520に対して円滑に挿脱できる。
【0097】
また、第1凹部510のY軸負側の端部513は、Y軸負方向に開放されている。端部513は、保持体500をY軸正方向に搬送する搬送動作において、第1突部110が抜ける側の端部である。端部513がY軸負方向に開放されることにより、端部513がY軸負方向に開放されない場合に比べて、Y軸方向における保持体500の搬送距離を広げることができる。
【0098】
端部513の幅は、端部513の端縁に向かうに従って、すなわちY軸負方向に向かうに従って広がっている。これにより、第1突部110と第1凹部510との間に位置ずれが生じても、第1突部110を第1凹部510に対して円滑に挿脱できる。
【0099】
図6(a)に示すように、第1凹部510は、第2凹部520と交わっていてもよい。また、
図6(b)に示すように、第1凹部510は、第2凹部520と交わり、かつ、Y軸正方向側に開放されてもよい。
図6(b)の構成の場合、たとえば、位置421、424に位置付けられた保持体500を、別途設けられた機構によってY軸負側に押し出すことができる。この場合、第1突部110は、第1凹部510のY軸正側の端部514から抜けるため、位置421、424の保持体500をY軸負側に押し出すことが可能となる。
【0100】
図7(a)に示すように、保持体500の上面502には、凹部503が設けられている。凹部503のY軸正側およびY軸負側の側面には、それぞれ孔504が設けられている。Y軸正側の孔504およびY軸負側の孔504は、Y軸方向に見たときに同じ位置にある。上面502のX軸正側かつY軸正側の位置には、切欠505が設けられている。プレート600は、上面502の外周形状に嵌まり込む形状を有している。プレート600のX軸正側かつY軸正側の位置には、切欠602が設けられている。プレート600を保持体500に設置する際には、プレート600の切欠602を保持体500の切欠505に合わせて、プレート600を保持体500の上面502に設置する。
【0101】
なお、凹部503の底面には、試料を収容する試料容器を設置するための凹部506が設けられている。これにより、プレート600を保持体500に設置することに代えて、試料を収容する試料容器を保持体500に設置することもできる。この場合、保持体500は、凹部506に設置された試料容器中の試料を、プレート600と同様、XY平面において搬送する。
【0102】
図7(b)に示すように、プレート600が保持体500に設置されると、96個のウェル601が、凹部503内に収容される。このとき、一対の孔504の間にウェル601が位置付けられる。これにより、位置421に位置付けられた保持体500にプレート600が設置されている場合、一対のセンサ454は遮光状態となり、位置421に位置付けられた保持体500にプレート600が設置されていない場合、一対のセンサ454は透過状態となる。よって、一対のセンサ454によれば、位置421の保持体500にプレート600が設置されているか否かを検出できる。同様に、一対のセンサ455によれば、位置422の保持体500にプレート600が設置されているか否かを検出できる。
【0103】
プレート600が誤った向きで保持体500に設置されると、すなわち、プレート600の切欠602が保持体500の切欠505に合わせられていないと、プレート600の位置は、
図7(b)の状態よりもZ軸負方向にずれる。これにより、位置421の保持体500にプレート600が適正に設置された場合、センサ451は透過状態となり、位置421の保持体500にプレート600が適正に設置されていない場合、センサ451は遮光状態となる。よって、一対のセンサ451によれば、位置421の保持体500に適正にプレート600が設置されているか否かを検出できる。同様に、一対のセンサ452によれば、位置422の保持体500にプレート600が適正に設置されているか否かを検出できる。
【0104】
上述したように、第1凹部510と第1突部110の構成により、保持体500は、X軸方向における移動範囲において取り外されることが防止されるため、保持体500のZ軸方向の位置は常に適正な位置に保たれる。したがって、センサ451、452が遮光状態となった場合に、保持体500が傾いた状態で支持面401上に設置されている可能性を排除できる。よって、位置421、422の保持体500にプレート600が適正に設置されているか否かを確実に検出できる。
【0105】
図8(a)に示すように、移送部720は、移送機構730、740と支持部750を備える。
【0106】
移送機構730は、ベルト731と、2つのプーリ732と、モータ733と、支持部材734と、留め具735と、レール736と、を備える。ベルト731は、2つのプーリ732に架けられている。2つのプーリ732は、所定の間隔を開けてX軸方向に並んで配置されている。X軸正側のプーリ732は、モータ733の駆動軸に接続されている。モータ733は、ステッピングモータにより構成される。支持部材734は、図示しないレールに支持されながらX軸方向に移動可能に構成される。支持部材734は、留め具735によりベルト731に接続されている。レール736は、Z軸方向に延びており、支持部材734に設置されている。
【0107】
移送機構740は、ベルト741と、2つのプーリ742と、モータ743と、支持部材744と、留め具745と、ガイド部材746と、を備える。ベルト741は、2つのプーリ742に架けられている。2つのプーリ742は、所定の間隔を開けてZ軸方向に並んで配置されている。
図8(a)には、便宜上、Z軸負側のプーリ742のみが示されている。Z軸負側のプーリ742は、モータ743の駆動軸に接続されている。モータ743は、ステッピングモータにより構成される。支持部材744は、図示しないレールに支持されながらZ軸方向に移動可能に構成される。支持部材744は、留め具745によりベルト741に接続されている。ガイド部材746は、X軸方向に延びており、支持部材744に設置されている。
【0108】
支持部750は、摺動部材751と、支軸752と、ローラ753と、保持部材754と、を備える。摺動部材751は、レール736に支持されながらZ軸方向に移動可能に構成される。支軸752は、Y軸方向に延びており、支軸752のY軸正側の端部は、摺動部材751に設置されている。ローラ753は、支軸752を中心として回転可能となるよう、支軸752のY軸負側の端部に設置されている。保持部材754は、摺動部材751に設置されており、吸引管710を保持している。
【0109】
図8(b)、(c)に示すように、ガイド部材746は、X軸方向に延びた凹部746aを備える。ローラ753は、X軸方向に移動可能となるよう、凹部746aに収容されている。
【0110】
移送部720が吸引管710をZ軸方向に移動させる場合、モータ743が駆動される。これにより、ベルト741が移動し、ベルト741の動きに合わせて、支持部材744とガイド部材746がZ軸方向に移動する。ガイド部材746がZ軸方向に移動すると、凹部746aに挟まれたローラ753がZ軸方向に力を受ける。ローラ753がZ軸方向に力を受けると、支軸752を介して摺動部材751と保持部材754がZ軸方向に移動する。こうして、吸引管710がZ軸方向に移動される。
【0111】
移送部720が吸引管710をX軸方向に移動させる場合、モータ733が駆動される。これにより、ベルト731が移動し、ベルト731の動きに合わせて、支持部材734がX軸方向に移動する。支持部材734がX軸方向に移動すると、レール736を介して摺動部材751がX軸方向に力を受ける。このとき、ローラ753が凹部746a内にガイドされながらX軸方向に移動する。摺動部材751がX軸方向に力を受けると、保持部材754がX軸方向に移動する。こうして、吸引管710がX軸方向に移動される。
【0112】
このように、吸引管710はX軸方向とZ軸方向に移動され、Y軸方向には移動されない。また、保持体500は、上述したように位置423付近においてY軸方向に搬送される。したがって、実施形態1によれば、吸引管710をY軸方向に移動させる機構がなくても、吸引管710により、保持体500に設置されたプレート600の全てのウェル601から試料の吸引が可能となる。また、移送部720は吸引管710をY軸方向に移動させる機構を備える必要がないため、移送部720の構成が簡素になる。
【0113】
図9に示すように、試料測定装置30は、試料搬送装置10と処理装置20を備える。吸引管710と移送部720は、処理装置20内に配置されている。
【0114】
試料測定装置30は、BEAMing(Bead, Emulsion,Amplification, and Magnetics)法に基づいて作製された試料を測定するための装置である。プレート600のウェル601に収容させる試料は、あらかじめ、BEAMing法に基づく前処理によって作製される。BEAMing法に基づく前処理は、たとえば、DNA抽出処理、希釈処理、エマルジョン作製処理、PCR処理、エマルジョン破壊処理、ハイブリダイゼーション処理、洗浄処理、等からなる。試料測定装置30は、前処理により作製された試料を、フローサイトメータを用いて測定する。
【0115】
なお、試料測定装置30は、フローサイトメータによる測定処理に加えて、BEAMing法に基づく前処理の一部または全部の処理を行う装置であってもよく、フローサイトメータによる測定処理に代えて、BEAMing法に基づく前処理の一部または全部の処理を行う装置であってもよい。また、試料測定装置30は、BEAMing法に基づく処理に限らず、試料の測定または処理を行う装置であってもよい。
【0116】
オペレータは、試料の測定を行う場合、試料を2つのプレート600のウェル601に収容させる。オペレータは、試料搬送装置10の蓋部11を、点線矢印に示すように開ける。蓋部11は、位置421、422に位置付けられた保持体500の上方を開放する位置に設けられている。2つの保持体500は、初期位置として、位置421、422に位置付けられている。オペレータは、位置421、422に位置付けられた2つの保持体500上に、試料を収容した2つのプレート600を設置し、蓋部11を閉じる。
【0117】
続いて、オペレータは、後述する入力部35を操作し、試料測定装置30による試料の測定を開始させる。これにより、保持体500が搬送され、ウェル601内の試料が吸引管710によって吸引される。そして、試料測定装置30は、後述する測定部33により試料を測定し、測定結果を、後述する表示部34に表示する。
【0118】
なお、オペレータは、上述したように、プレート600に代えて、試料を収容した試料容器を保持体500に設置することもできる。また、オペレータは、試料を収容した試料容器を、試料測定装置30の外部の位置21に位置付けて、試料容器内の試料を測定させることもできる。この場合、
図9に示すように、吸引管710が位置21の真上まで移動し、位置21に位置付けられた試料容器から試料が吸引される。
【0119】
図10に示すように、試料測定装置30は、試料搬送装置10と、移送部720と、制御部31と、吸引部32と、測定部33と、表示部34と、入力部35と、駆動部36と、センサ部37と、を備える。移送部720と、制御部31と、吸引部32と、測定部33と、表示部34と、入力部35と、駆動部36と、センサ部37とは、
図9に示した処理装置20に配置されている。別途、処理装置20に情報処理装置が接続される場合、制御部31、表示部34および入力部35は、情報処理装置に配置されてもよい。
【0120】
制御部31は、たとえば、演算処理部と記憶部を含む。演算処理部は、たとえば、CPU、MPUなどにより構成される。記憶部は、たとえば、フラッシュメモリ、ハードディスクなどにより構成される。制御部31は、試料測定装置30の各部から信号を受信し、試料測定装置30の各部を制御する。吸引部32は、吸引管710と、試料を吸引するための圧力印加部と、を備える。吸引部32は、圧力印加部により吸引管710に陰圧を付与して、保持体500により搬送された試料を、吸引管710を介して吸引する。測定部33は、フローサイトメータを備え、吸引部32により吸引された試料を、フローサイトメータを用いて測定する。
【0121】
表示部34と入力部35は、たとえば、処理装置20の側面部分や上面部分などに配置される。表示部34は、たとえば、液晶パネルなどにより構成される。入力部35は、たとえば、ボタンやタッチパネルなどにより構成される。駆動部36は、試料測定装置30内に配された他の機構を含む。センサ部37は、試料測定装置30内に配された他のセンサを含む。
【0122】
次に、
図11(a)〜
図14を参照して、保持体500の搬送について説明する。
【0123】
図11(a)に示すように、2つの保持体500は、初期位置として位置421、422に位置付けられている。この状態で、上述したように、2つの保持体500上に、それぞれプレート600が設置される。測定開始の指示が入力されると、
図11(a)の状態から第2突部210がY軸正方向に移動され、位置422の保持体500が、
図11(b)に示すように、位置423に位置付けられる。ここで、保持体500が位置422から位置423へ搬送される際に、吸引管710がX軸方向に移送され、保持体500上の全てのウェル601から順に試料が吸引される。
【0124】
続いて、
図11(b)の状態から第2突部210がY軸負方向に移動され、位置423の保持体500が、
図12(a)に示すように、位置422に戻される。続いて、
図12(a)に示す状態から第1突部110がX軸正方向に移動され、位置421、422の保持体500が、
図12(b)に示すように、それぞれ、位置422、424に位置付けられる。なお、
図4を参照して説明したように、X軸正側の一対の第1突部110と、X軸負側の一対の第1突部110は、第1移動体100によって同時にX軸正方向に送られる。これにより、X軸正側の保持体500と、X軸負側の保持体500とが、同時にX軸正方向に移送される。
【0125】
続いて、
図12(b)に示す状態から第2突部210がY軸正方向に移動され、位置422の保持体500が、
図13(a)に示すように、位置423に位置付けられる。この場合も、保持体500が位置422から位置423へ搬送される際に、吸引管710がX軸方向に移送され、保持体500上の全てのウェル601から順に試料が吸引される。続いて、
図13(a)に示す状態から第2突部210がY軸負方向に移動され、位置423の保持体500が、
図13(b)に示すように、位置422に戻される。続いて、
図13(b)に示す状態から第1突部110がX軸負方向に移動され、位置422、424の保持体500が、
図14に示すように、それぞれ、位置421、422に位置付けられる。
【0126】
こうして、2つの保持体500上にある全てのウェル601に対する吸引が完了する。オペレータは、蓋部11を開けて、位置421、422に位置付けられた保持体500上に設置されたプレート600を回収する。
【0127】
なお、位置421および位置422に位置付けられた2つの保持体500の何れか一方のみにプレート600が置かれた場合は、プレート600が置かれた保持体500に対する搬送動作のみが実行される。位置421に位置付けられた保持体500のみにプレート600が置かれた場合、上記の搬送動作のうち、位置422に位置付けられた保持体500に対する搬送動作がスキップされる。また、位置422に位置付けられた保持体500のみにプレート600が置かれた場合、上記の搬送動作のうち、位置421に位置付けられた保持体500に対する搬送動作がスキップされる。
【0128】
次に、
図15を参照して、保持体500の搬送動作について説明する。
図15に示すフローチャートは、2つの保持体500のうち、X軸負側の保持体500に関する搬送動作を示している。
【0129】
ステップS11において、制御部31は、第1凹部510と第1突部110とを係合させた状態で、第1搬送部310を駆動して、第1突部110をX軸正方向に移動させて、保持体500をX軸正方向に搬送する。これにより、
図12(a)に示すように初期位置として位置421に位置付けられた保持体500が、
図12(b)に示すように、位置422まで搬送される。ステップS11では、保持体500がX軸正方向に搬送されることにより、第2凹部520に第2突部210が挿入される。
【0130】
ステップS12において、制御部31は、第2凹部520と第2突部210とを係合させた状態で、第2搬送部320を駆動して、第2突部210をY軸正方向に移動させて、保持体500をY軸正方向に搬送する。これにより、
図12(b)に示すように位置422に位置付けられた保持体500が、
図13(a)に示すように、位置423まで搬送される。ステップS12では、保持体500がY軸正方向に搬送されることにより、第1凹部510に挿入されていた第1突部110が、第1凹部510から抜き取られる。
【0131】
ステップS13において、制御部31は、第2凹部520と第2突部210とを係合させた状態で、第2搬送部320を駆動して、第2突部210をY軸負方向に移動させて、保持体500をY軸負方向に搬送する。これにより、
図13(a)に示すように位置423に位置付けられた保持体500が、
図13(b)に示すように、位置422まで搬送される。ステップS13では、保持体500がY軸負方向に搬送されることにより、第1凹部510に第1突部110が挿入される。
【0132】
ステップS14において、制御部31は、第1凹部510と第1突部110とを係合させた状態で、第1搬送部310を駆動して、第1突部110をX軸負方向に移動させて、保持体500をX軸負方向に搬送する。これにより、
図13(b)に示すように位置422に位置付けられた保持体500が、
図14に示すように、位置421まで搬送される。ステップS14では、保持体500がX軸負方向に搬送されることにより、第2凹部520に挿入されていた第2突部210が、第2凹部520から抜き取られる。こうして、X軸負側の保持体500の搬送動作が終了する。
【0133】
なお、X軸正側の保持体500の搬送動作についても同様に行われる。X軸正側の保持体500の搬送動作では、ステップS11の処理が、ステップS13の処理とステップS14の処理との間に移動される。
【0134】
上記のように保持体500がXY平面に沿って搬送されると、たとえば、位置421、423、424に処理装置が設けられる場合に、各装置に対して保持体500を搬送できる。これにより、位置421、423、424に設置された各装置の間で、試料の受渡しを行うことができる。たとえば、位置421の近傍にBEAMing法に基づく前処理を行う装置を配置した場合、この装置において前処理により作製された試料を、位置421に位置付けられた保持体500上のプレート600のウェル601に分注することもできる。こうすると、前処理を行う装置で作製された試料を、保持体500により位置423まで搬送して、吸引管710により吸引させることができるため、BEAMing法に基づく前処理および測定を円滑に行うことができる。
【0135】
なお、プレート600を外して、試料を収容した試料容器を直接保持体500に設置する構成の場合、さらに、各保持体500の処理順序や、各保持体500に設置されるべき試料の種類等を示す識別標識が、各保持体500や位置421、422等に付されてもよい。
【0136】
たとえば、オペレータが、試料測定装置30の精度管理を行う場合、コントロール物質を収容した試料容器を保持体500に設置し、入力部35を操作し、試料測定装置30によるコントロール物質の測定を開始させる。この場合、
図16(a)、(b)に示すように、保持体500の凹部503の底面に、凹部506に設置されるべきコントロール物質の種類を示す識別標識503aが付され、また、保持体500の処理順序を示す識別標識503bが付されてもよい。
図16(b)には、
図16(a)のX軸負側の保持体500が示されている。
【0137】
X軸負側の保持体500には、凹部506に保持されるべき精度管理用の試料容器12が陰性のコントロール物質を収容した試薬容器であることを示す“NC”の文字の識別標識503aと、処理順序が2番目であることを示す“2”の文字の識別標識503bが付されている。また、X軸正側の保持体500には、凹部506に保持されるべき精度管理用の試料容器12が陽性のコントロール物質を収容した試薬容器であることを示す“PC”の文字の識別標識503aと処理順序が1番目であることを示す“1”の文字の識別標識503bが付されている。さらに、
図16(a)の構成例では、試料搬送装置10の筐体上面の位置421、422のY軸負側の位置に、それぞれ、保持体500の処理順序を示す識別標識421a、422aが付されている。
【0138】
これらの識別標識によって、オペレータは、陽性のコントロール物質を収容した試料容器12と陰性のコントロール物質を収容した試料容器12の何れを保持体500に保持させればよいかを的確に把握でき、併せて、各試料容器12の処理順序を把握できる。
【0139】
オペレータは、各保持体500の識別標識503aに基づいて、位置421に位置付けられた保持体500に陰性のコントロール物質を収容した試料容器12を設置し、位置422に位置付けられた保持体500に陽性のコントロール物質を収容した試料容器12を設置する。このように、精度管理物質を収容した試料容器12を凹部506に設置できるため、オペレータは、試料容器12に収容されたコントロール物質を、プレート600のウェル601に分注する必要が無くなり、試料測定装置30の精度管理の操作を簡便に行い得る。
【0140】
また、
図16(a)、(b)の構成では、識別標識503aにより、各保持体500に陽性、陰性の何れのコントロール物質を収容した試料容器12が設置されるかが予め決められているため、試料測定装置30は、試料搬送装置10により搬送されて精度管理に供されたコントロール物質が、陽性および陰性の何れのコントロール物質であるかを確定できる。よって、試料測定装置30は、精度管理に供されるコントロール物質を指定する入力操作をオペレータから受けることなく、予め保持した陽性または陰性の精度管理条件に従って、円滑に精度管理のための処理を実行できる。
【0141】
さらに、
図16(a)の構成例では、試料搬送装置10の筐体上面の位置421、422のY軸負側の位置に、それぞれ、試料容器12の蓋12aを置くための蓋ホルダ13が設けられている。オペレータは、試料容器12から外した蓋12aを蓋ホルダ13に設置でき、試料容器12から外した蓋12aの管理を適切に行い得る。
【0142】
図16(a)に示すように、2つの蓋ホルダ13は、各保持体500が
図16(a)に示す初期位置にあるときに凹部506のY軸負方向の直近位置に設けられることが好ましい。これにより、オペレータは、試料容器12に対する蓋12aの着脱と、蓋ホルダ13に対する蓋12aの着脱を円滑に進め得る。
【0143】
図16(c)に示すように、蓋ホルダ13は、Z軸負方向に突出した一対の突部13aと、水平面(X−Y平面)に平行な平面13bとを有する。蓋12aは、平面13bに載せられる。一対の突部13aは、平面13bに載せられた蓋12aのY軸方向の移動を規制する。一対の突部13aの内側面には、傾斜面13cと壁面13dが上下に連続的に形成されている。平面視において傾斜面13cは円弧形状であり、Z軸負側に向かうほど径が小さくなっている。平面視において壁面13dは円弧形状である。壁面13dは、平面13bに蓋12aが載せられた状態において、蓋12aの外周面に僅かな隙間で全ての領域が対向するように構成されている。これにより、蓋12aが平面13bからX軸方向に脱落することが規制される。蓋ホルダ13は、X軸方向およびY軸方向に対象な形状である。
【0144】
オペレータは、試料容器12から外した蓋12aを、蓋ホルダ13の上方から傾斜面13cに沿って円滑に平面13bに載せることができる。また、蓋ホルダ13の平面13bより上の部分は、X軸正負の方向に開放されているため、オペレータは、平面13bに載せられた蓋12aをX軸方向に容易に摘み得る。
【0145】
なお、
図16(c)に示すように、蓋ホルダ13は、一対の突部13aのX軸方向の幅が蓋12aの径より小さくなるように構成することが好ましい。こうすると、蓋12aが平面13bに載せられた状態において、蓋12aのX軸正負側の部分が突部13aからはみ出すため、オペレータは、平面13bに載せられた蓋12aを、より円滑に摘み得る。
【0146】
<実施形態2>
図17に示すように、実施形態2の試料搬送装置10は、
図1(a)に示した実施形態1の構成と比較して、第3搬送部330と第3移動体800をさらに備える。第3搬送部330は、第3移動体800をY軸方向に搬送する。第3移動体800は、第1移動体100と第2移動体200と同様、支持板400のZ軸正側に位置付けられている。第3移動体800には、一対の第3突部810が配置されている。一対の第3突部810は、第3移動体800においてX軸方向に並んでいる。Z軸方向に見たときに、第3移動体800の移動経路801は、第1移動体100の移動経路101および第2移動体200の移動経路201に、交差しないように設定されている。
【0147】
また、実施形態2では、
図1(a)に示した実施形態1の構成と比較して、X軸正側の支持板400の端部が、Y軸負方向に延ばされている。Y軸負方向に延ばされた支持板400の部分には、一対の第3溝413が形成されている。一対の第3溝413は、Y軸方向に延びている。一対の第3突部810は、一対の第3溝413を介して、支持面401から上方向に突出している。
【0148】
図18に示すように、実施形態2の保持体500の下面501には、
図5(c)に示した実施形態1の構成と比較して、第3凹部530が配置されている。第3凹部530は、X軸方向に平行に延びるとともに、下面501に形成された溝により構成されている。第3凹部530は、第2凹部520よりもY軸負側に配置されている。具体的には、第3凹部530は、下面501のY軸負側の端部付近を通るように配置されている。第3凹部530は、第3突部810と係合する。第3凹部530のその他の構成は、第2凹部520の構成と同様である。第1凹部510は、第2凹部520および第3凹部530と交わり、かつY軸正方向およびY軸負方向に開放されている。実施形態2のその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0149】
実施形態2では、第1搬送部310による保持体500のX軸方向の搬送と、第2搬送部320による保持体500のY軸方向の搬送は、実施形態1と同様に行われる。実施形態2では、第1搬送部310により位置424に位置付けられた保持体500は、第3搬送部330によりY軸負方向に搬送される。
【0150】
図19(a)に示すように、吸引管710による吸引動作が終了すると、保持体500は、位置423から位置422に搬送される。
図19(a)に示す状態から第1突部110がX軸正方向に移動され、位置422の保持体500が、
図19(b)に示すように、位置424に位置付けられる。このとき、保持体500がX軸正方向に搬送されることにより、第2凹部520に挿入されていた第2突部210が、第2凹部520から抜き取られる。そして、第3凹部530に第3突部810が挿入される。
【0151】
図19(b)に示す状態から第3突部810がY軸負方向に移動され、位置424の保持体500が、位置425に位置付けられる。このとき、保持体500がY軸負方向に搬送されることにより、第1凹部510に挿入されていた第1突部110が、第1凹部510から抜き取られる。
【0152】
ここで、第2搬送部320により保持体500をY軸方向に搬送する搬送動作において、第3凹部530と第3突部810とは係合しない。第3搬送部330により保持体500をY軸方向に搬送する搬送動作において、第2凹部520と第2突部210とは係合しない。これにより、保持体500をX軸方向の搬送範囲から、Y軸正方向とY軸負方向の両方に搬送でき、保持体500の搬送範囲を広げることができる。保持体500が位置425まで搬送されると、位置425において他の装置などに保持体500上のプレート600を供給することもできる。また、位置421においてプレート600を設置したオペレータとは異なるオペレータが、位置425に位置付けられた保持体500上のプレート600を取り出すこともできる。
【0153】
<実施形態3>
図20(a)に示すように、実施形態3では、
図1(a)に示した実施形態1の構成と比較して、第1移動体100に第1凹部120が配置されており、第2移動体200に第2凹部220が配置されている。第1凹部120は、Y軸方向に延びる溝により構成され、第2凹部220は、X軸方向に延びる溝により構成されている。第1凹部120と第2凹部220は、支持板400のZ軸負側に配置されている。なお、
図20(a)では、支持板400が、便宜上、破線で示されている。
【0154】
図20(b)に示すように、保持体500の下面501には、一対の第1突部540と、一対の第2突部550とが配置されている。一対の第1突部540は、Y軸方向に並んでおり、一対の第2突部550は、X軸方向に並んでいる。一対の第1突部540は、下面501のX軸方向における中央位置に配置されており、一対の第2突部550は、下面501のY軸正側の端部付近に配置されている。第1突部540は、第1凹部120と係合し、第2突部550は、第2凹部220と係合する。実施形態3のその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0155】
実施形態3では、第1凹部120と第1突部540とが係合した状態で、第1凹部120がX軸方向に移送されることにより、保持体500をX軸方向に搬送できる。また、第2凹部220と第2突部550とが係合した状態で、第2凹部220がY軸方向に移送されることにより、保持体500をY軸方向に搬送できる。よって、実施形態3においても、実施形態1と同様に保持体500を搬送できる。
【0156】
実施形態1、3に示したように、第1凹部510を保持体500と第1移動体100の一方に配置するとともに、第1突部110を保持体500と第1移動体100の他方に配置してもよい。同様に、第2凹部520を保持体500と第2移動体200の一方に配置するとともに、第2突部210を保持体500と第2移動体200の他方に配置してもよい。実施形態2においても、第3凹部530を第3移動体800に配置し、第3突部810を保持体500に配置してもよい。
【0157】
ただし、実施形態3のように保持体500に第1突部540と第2突部550とが設けられると、保持体500を試料搬送装置10から取り外した場合に、第1突部540と第2突部550が物体に接触して破損するおそれがある。したがって、実施形態1、2に示したように、第1凹部510、第2凹部520、および第3凹部530を保持体500に配置し、第1突部110、第2突部210、および第3突部810を、それぞれ、第1移動体100、第2移動体200、および第3移動体800に配置するのが好ましい。これにより、保持体500を取り外して行う作業を、円滑に進めることができる。
【0158】
<実施形態4>
図21(a)に示すように、実施形態4では、第1凹部510と第2凹部520が、保持体500の上面502に配置される。実施形態4では、
図1(b)に示した実施形態1の構成と比較して、上面502がX軸負方向とY軸正方向に広げられており、広がった上面502の部分に、第1凹部510と第2凹部520が設けられている。また、実施形態4では、第1移動体100と第1突部110は、上面502側に配置される。同様に、第2移動体200と第2突部210が、上面502側に配置される。実施形態4のその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0159】
なお、
図21(b)に示すように、上面502と下面501との間に設けられた上面507に、第1凹部510と第2凹部520が配置されてもよい。
【0160】
図21(a)、(b)の構成においても、第1突部110と第2突部210を移動させることにより、実施形態1と同様に、保持体500をX軸方向とY軸方向に搬送できる。ただし、
図21(a)、(b)の構成では、XY平面における保持体500のサイズが大きくなるため、保持体500が大型化してしまう。また、第1突部110と第2突部210が、保持体500の上側に位置付けられるため、保持体500を搬送するための機構が複雑になってしまう。また、第1突部110と第2突部210の少なくとも一方により、保持体500のZ軸方向の移動が規制されるため、保持体500を支持面401から取り出せなくなる。
【0161】
したがって、第1凹部510と第2凹部520は、実施形態1のように、保持体500の下面501に配置されるのが好ましい。第1凹部510と第2凹部520が下面501に配置されると、搬送経路上の所定の位置に保持体500を置くことによって、凹部と突部を係合させることができる。たとえば、実施形態1の場合は、位置423付近において、保持体500を上から支持面401に配置できる。このように、第1凹部510と第2凹部520が下面501に配置されると、別途、係合のために第1突部110と第2突部210とをZ軸方向に移動させる機構を設ける必要がなく、試料搬送装置10の構成を簡素化できる。
【0162】
なお、
図21(a)、(b)の上面502、507において、上向きに延びた第1突部と第2突部が配置されてもよい。この場合、第1移動体100と第2移動体200には、第1凹部と第2凹部とが配置され、第1凹部と第2凹部が、保持体500の上側に位置付けられる。しかしながら、この場合も、
図21(a)、(b)の場合と同様、保持体500を搬送するための機構が複雑になり、保持体500を支持面401から取り出せなくなる。したがって、第1突部と第2突部は、保持体500に配置される場合、
図20(b)に示したように、下面501に配置されるのが望ましい。
【0163】
<実施形態5>
図22(a)に示すように、実施形態5では、第1凹部510が、保持体500の下面501に配置され、第2凹部520が、保持体500の上面502に配置される。実施形態5では、
図1(b)に示した実施形態1の構成と比較して、上面502がY軸正方向に広げられており、広がった上面502の部分に、第2凹部520が設けられている。また、実施形態5では、第2移動体200と第2突部210が、上面502側に配置される。実施形態5のその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0164】
なお、
図22(b)に示すように、第1凹部510が、保持体500の上面502に配置され、第2凹部520が、保持体500の下面501に配置されてもよい。
図22(b)に示す構成の場合、
図1(b)に示した実施形態1の構成と比較して、上面502がX軸負方向に広げられており、広がった上面502の部分に、第1凹部510が設けられている。この場合、第1移動体100と第1突部110が、上面502側に配置される。
【0165】
図22(a)、(b)の構成においても、第1突部110と第2突部210を移動させることにより、実施形態1と同様に、保持体500をX軸方向とY軸方向に搬送できる。また、
図22(a)、(b)の構成では、第1移動体100と第2移動体200が、保持体500の上側と下側に分かれて配置される。このため、第1移動体100の移動経路101と第2移動体200の移動経路201とが、Z軸方向にずれているため、互いに交差することがない。よって、移動経路101、201を、Z軸方向に見て交差するように設定したとしても、第1搬送部310の駆動機構と第2搬送部320の駆動機構とを、互いに接触することなく配置できる。
【0166】
<実施形態6>
上記実施形態1〜5では、第1凹部510および第2凹部520によって形成される間隙に、第1突部110および第2突部210がそれぞれ係合する構成であったが、第1突部110および第2突部210が係合する間隙は、必ずしも、凹部によって構成されていなくてもよく、たとえば、
図23(a)、(b)に示す構成や、
図23(c)に示す構成であってもよい。
図23(a)、(b)の構成と、
図23(c)の構成のいずれにおいても、実施形態1と比較して、第1凹部510と第2凹部520が、間隙に変更されており、その他の構成については実施形態1の構成と同様である。
【0167】
図23(a)、(b)に示す構成の場合、第1間隙560と第2間隙570は、互いに対向する2つの線状部515によって構成される。
【0168】
具体的には、
図23(a)に示すように、板状に形成された下面501がY軸方向に切り欠かれることにより、互いに対向する2つの線状部515が形成される。線状部515は、Y軸方向に延びるとともに、突出方向において徐々にZ軸方向の幅が小さくなっている。線状部515の突出方向の頂点は、Y軸方向に線状に延びている。2つの線状部515の間に、棒状に形成された第1突部110が挿入される。2つの線状部515の頂点が、第1突部110と係合する。
図23(b)に示すように、板状に形成された下面501がX軸方向に切り欠かれることにより、互いに対向する2つの線状部524が形成される。線状部524は、X軸方向に延びるとともに、突出方向において徐々にZ軸方向の幅が小さくなっている。線状部524の突出方向の頂点は、X軸方向に線状に延びている。2つの線状部524の間に、棒状に形成された第2突部210が挿入される。2つの線状部524の頂点が、第2突部210と係合する。
【0169】
図23(c)に示す構成の場合、第1間隙580と第2間隙590は、Z軸方向に保持体500を貫通している。この場合、第1間隙580と第2間隙590は、
図5(a)、(b)に示したように底部を有する凹部ではなく、底部を有しない開口として構成される。
【0170】
図23(a)、(b)の構成と
図23(c)の構成のいずれにおいても、第1突部110を第1間隙560、580に係合させ、第2突部210を第2間隙570、590に係合させることができる。よって、実施形態1と同様に、保持体500をXY平面において搬送できる。
【0171】
<実施形態7>
図23(d)に示すように、実施形態7では、
図7(a)に示した実施形態1の構成と比較して、保持体500の凹部503と、孔504と、切欠505と、凹部506とが省略され、代わりに、上面502にマトリックス状にウェル508が形成されている。ウェル508は、プレート600のウェル601と同様に、上面502に96個形成されている。
【0172】
このように保持体500が構成されると、プレート600を省略できる。ただし、実施形態7では、オペレータは、蓋部11を開放して、位置421、422に位置付けられた保持体500のウェル508に対して、直接試料を滴下する必要がある。あるいは、オペレータは、支持面401上の保持体500を取り外し、別の場所で試料をウェル508に保持させた上で、保持体500を再度、支持面401上に設置する必要がある。したがって、作業の繁雑さを軽減させる観点から、実施形態1のように、試料を保持するためのプレート600が用いられるのが好ましい。