特許第6899680号(P6899680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6899680-食器収容容器および食器洗浄システム 図000002
  • 特許6899680-食器収容容器および食器洗浄システム 図000003
  • 特許6899680-食器収容容器および食器洗浄システム 図000004
  • 特許6899680-食器収容容器および食器洗浄システム 図000005
  • 特許6899680-食器収容容器および食器洗浄システム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899680
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】食器収容容器および食器洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/50 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   A47L15/50
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-63466(P2017-63466)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-164623(P2018-164623A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北村 知也
(72)【発明者】
【氏名】市川 惠
(72)【発明者】
【氏名】河邑 貴広
【審査官】 永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−101466(JP,U)
【文献】 特許第2620142(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器を収容する籠本体部に前記食器を洗浄する洗浄水を当該籠本体部の下に流下させる籠底部を備え、
前記籠底部は、
揺動自在に並設された複数の底板と、
前記底板を揺動可能に軸支する軸支部と、
前記籠本体部を食器洗浄装置の洗浄槽に載置した場合に、前記底板の板面が水平面と交差し、前記洗浄水が前記籠本体部の下に流下することを許容する開き状態とし、前記籠本体部を前記洗浄槽から取り出した場合に、前記底板の板面が水平面に沿い、前記食器に残留した前記洗浄水が前記籠本体部の下に流下することを防止する閉じ状態とする切替機構と、を備えており、
前記切替機構は、前記複数の底板を前記軸支部の回転方向に付勢するリンク棒を備えており、
前記リンク棒は、前記閉じ状態において、前記籠本体部から水平方向に所定距離だけ突出した状態で設けられ、前記籠本体部を前記洗浄槽に載置した場合に、前記洗浄槽と当接する当接部を備えており、
前記切替機構は、前記籠本体部が前記洗浄槽に載置される際に、前記リンク棒の前記当接部が前記洗浄槽に押圧されて、前記閉じ状態において前記軸支部に軸支された状態で水平面に沿い横置された前記複数の底板を前記リンク棒で付勢して、前記閉じ状態から前記開き状態に切替える食器収容容器。
【請求項2】
前記底板のそれぞれが、前記リンク棒と係合する係合部を備える請求項に記載の食器収容容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の食器収容容器を備えた食器洗浄システムであって、
前記食器収容容器を洗浄槽に収容して食器を洗浄する食器洗浄装置と、当該食器洗浄装置に並設されて、当該洗浄槽から引き出した当該食器収容容器を載置する複数の棚段を備えた作業棚と、を備えた食器洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器収容容器および当該食器収容容器を用いた食器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外食産業などの厨房では、食器洗浄装置で食器の洗浄作業を終えると、洗浄を終えた食器を収容した籠(食器収容容器)を、食器洗浄装置の隣に置いた机や棚などの台上に仮置きし、その後、乾燥した食器を片づけることがある。
たとえば昼時などの混雑時には、乾燥した食器の片付けを留保して、食器の洗浄作業のみを行うことがある。この場合、食器洗浄装置から順次取り出された籠は、例えば、複数段の棚段を備えた棚の当該棚段に、リフタ機構により順次段積みされて、所定場所に保管される場合がある(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献2には、主として、多数のワイヤを折曲し、更に溶接、塗装をすることによって構成した食器籠(食器収容容器)が記載されている。また、この食器籠を、食器洗浄装置の内部に収容して用いる事例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2620142号公報
【特許文献2】特開2001−231737公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されているような食器収容容器は、食器洗浄装置の内部において洗浄水を循環させるべく、食器収容容器の本体部分である食器を収容する籠本体部は、当該洗浄水の籠本体部からの流下を許容する構造になっている。
このような食器収容容器を、特許文献1に記載されるような複数段の棚段を備えた棚の棚段に載置すると、上位の棚段に載置した食器収容容器の食器に残留した洗浄水が、下位の棚段に載置した食器収容容器に流下するおそれが生ずる。このように、食器収容容器を棚段に載置した場合に、残留した洗浄水の流下を許容すると、たとえば衛生面で好ましくないため改善が望まれる。
また、食器収容容器を取り扱う際、たとえば、食器洗浄装置から食器収容容器を取り出す際や、棚段に載置する作業を行う際に、残留した洗浄水が流下して、使用者が当該洗浄水に暴露する場合も想定されるため、改善が望まれる。
【0006】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、食器洗浄装置から取り出した際に洗浄水の流下を防止する食器収容容器、および当該食器収容容器を用いた食器洗浄システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る食器収容容器の特徴構成は、
食器を収容する籠本体部に前記食器を洗浄する洗浄水を当該籠本体部の下に流下させる籠底部を備え、
前記籠底部は、
揺動自在に並設された複数の底板と、
前記底板を揺動可能に軸支する軸支部と、
前記籠本体部を食器洗浄装置の洗浄槽に載置した場合に、前記底板の板面が水平面と交差し、前記洗浄水が前記籠本体部の下に流下することを許容する開き状態とし、前記籠本体部を前記洗浄槽から取り出した場合に、前記底板の板面が水平面に沿い、前記食器に残留した前記洗浄水が前記籠本体部の下に流下することを防止する閉じ状態とする切替機構と、を備えており、
前記切替機構は、前記複数の底板を前記軸支部の回転方向に付勢するリンク棒を備えており、
前記リンク棒は、前記閉じ状態において、前記籠本体部から水平方向に所定距離だけ突出した状態で設けられ、前記籠本体部を前記洗浄槽に載置した場合に、前記洗浄槽と当接する当接部を備えており、
前記切替機構は、前記籠本体部が前記洗浄槽に載置される際に、前記リンク棒の前記当接部が前記洗浄槽に押圧されて、前記閉じ状態において前記軸支部に軸支された状態で水平面に沿い横置された前記複数の底板を前記リンク棒で付勢して、前記閉じ状態から前記開き状態に切替える点にある。
【0008】
上記構成によれば、食器と共に、すなわち、籠本体部に食器を収容した状態でこの食器収容容器を食器洗浄装置の洗浄槽から取り出すと、切替機構が、洗浄水が籠本体部の下に流下することを許容する状態から、籠本体部の下に流下することを防止する状態に切替えて、当該食器に残留した洗浄水が籠本体部から流下することを籠底部が防止する。したがって、食器洗浄装置から取り出すと洗浄水の流下を防止する食器収容容器を提供することができる。
【0009】
そしてこのような籠底部を備えた食器収容容器を用いれば、食器収容容器を取り扱う際に、籠本体部に収容された食器に残留した洗浄水が、籠本体部から流下して、作業者が当該流下した洗浄水に暴露することを回避できる。
また、このような籠底部を備えた籠本体部を用いれば、籠本体部に食器を載置したままで、鉛直方向に重複するように棚の棚段に積み上げた場合にも、上位の棚段に載置した食器収容容器の食器に残留した洗浄水が、下位の棚段に載置した食器収容容器に流下することを防止できる。
【0010】
なお、食器収容容器、すなわち食器を収容する籠本体部が食器洗浄装置の洗浄槽の所定位置に載置された場合には、洗浄水が籠本体部から流下することを籠底部が許容するため、当該洗浄槽において、洗浄水を籠本体部を通流させて食器の洗浄を行える。
【0012】
また、上記構成によれば、閉じ状態においては、籠底部の並設された複数の底板の板面が水平面に沿い、籠底部において蓋となり、洗浄水が籠本体部の下に流下することを防止することができる。つまり、食器収容容器を食器洗浄装置の洗浄槽から取り出された場合に、洗浄水が籠本体部の下に流下することを防止することができる。
また、上記構成によれば、開き状態においては、籠底部の並設された複数の底板の板面が水平面と交差し、すなわち、底板が傾いて、並設された複数の底板同士の間に隙間を生じさせ、洗浄水が当該隙間を通流して籠本体部の下に流下することを許容することができる。つまり、食器収容容器を食器洗浄装置の洗浄槽に収容した場合に、洗浄水が籠本体部の下に流下することを許容して、洗浄水を籠本体部を通流させて食器の洗浄を行える。
そして、切替機構により、底板の状態を開き状態と、閉じ状態とに切替えることができる。
【0014】
更に、上記構成によれば、籠底部の底板は、籠底部の軸支部で、揺動可能に軸支される。そして底板は、閉じ状態において軸支部に軸支された状態で水平面に沿い横置された状態で付勢される。たとえば、閉じ状態において底板は、重力などで付勢されて水平面に横たわる横置された状態を維持する。
閉じ状態において横置された状態にある底板は、切替機構のリンク棒に付勢されると、その板面が軸支部の回転方向に沿い回転し、一方の辺部を持ち上げるように傾いて、その板面が水平面と交差し、閉じ状態から開き状態に切替わる。つまり、底板は、閉じ状態において切替機構のリンク棒に付勢されると、一方の辺部が重力などの付勢力に抗して持ち上がり、閉じ状態から開き状態に切替わる。
したがって、リンク棒の付勢力から解放されると、底板の一方の辺部は重力などの付勢力で降下する。つまり、底板は、リンク棒の付勢力から解放されると、再び重力などの付勢力で横たわり、開き状態から閉じ状態に戻る(切替わる)。
【0016】
加えて、上記構成によれば、食器収容容器として籠本体部を洗浄槽に載置する際に、リンク棒の当接部が洗浄槽の壁部などと当接し、リンク棒は当該当接部を介して押圧されて、底板を付勢する。そのため、籠本体部を洗浄槽に載置すると、籠底部の底板が、閉じ状態から開き状態に切替わる。
【0017】
本発明に係る食器収容容器の更なる特徴構成は、
前記底板のそれぞれが、前記リンク棒と係合する係合部を備える点にある。
【0018】
上記構成によれば、底板は、リンク棒と係合して一体の切替機構として動作することができる。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る食器洗浄システムの特徴構成は、
上記の食器収容容器を備え、
前記食器収容容器を洗浄槽に収容して食器を洗浄する食器洗浄装置と、当該食器洗浄装置に並設されて、当該洗浄槽から引き出した当該食器収容容器を載置する複数の棚段を備えた作業棚と、を備える点にある。
【0020】
上記構成によれば、上述の食器収容容器の効果を得た食器洗浄システム提供することができる。
すなわち、食器洗浄装置の洗浄槽に食器を収容した食器収容容器を載置して食器の洗浄を繰り返し、当該食器の洗浄が終了する毎に、当該食器収容容器を当該洗浄槽から引き出して作業棚の複数の棚段に順次積み上げて載置した場合にも、上位の棚の食器収容容器から、食器に残留した洗浄水が流下することを回避することができる。したがって、衛生な状態を確保しつつ、食器洗浄を行い、洗浄した食器を収容した食器収容容器を作業棚に積み上げて複数保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】食器収容容器の基本的な構成を説明する説明図
図2】食器収容容器が開き状態にある場合の状態を説明する図
図3】底板および切替機構の構成を説明する図
図4】閉じ状態から開き状態に切替わる際の切替機構の動作を説明する図
図5】食器洗浄システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図5に基づいて、本発明の実施形態に係る食器収容容器及び当該食器収容容器を用いた食器洗浄システムについて説明する。
【0023】
〔食器収容容器および食器洗浄システムの概略構成〕
まず、食器収容容器としての食器籠100と、食器籠100を用いた食器洗浄システム1の概略構成を説明する。
【0024】
本実施形態に係る食器籠100は、図1および図2に示すように、食器70を収容する籠本体部10に食器70を洗浄する洗浄水dを籠本体部10の下に流下させる籠底部50を備え、籠底部50は、籠本体部10を食器洗浄装置200の洗浄槽21に載置した場合に、洗浄水dが籠本体部10の下に流下することを許容する状態(図2参照)とし、籠本体部10を洗浄槽21から取り出した場合に、食器70に残留した洗浄水dが籠本体部10の下に流下することを防止する状態(図1参照)とする切替部40(切替機構)を備える。
【0025】
本実施形態に係る食器洗浄システム1は、図5に示すように、上述の食器籠100(食器収容容器)を洗浄槽21に収容して食器70を洗浄する食器洗浄装置200と、食器洗浄装置200に併設されて、洗浄槽21から引き出した食器籠100を載置する複数の棚段を備えた作業棚300とを含む。
【0026】
食器洗浄装置200の洗浄槽21は、図5に示すように、壁部25と、食器籠100の出入り口となる扉部23とで区画された空間であり、洗浄槽21には、食器籠100を載置する洗浄台22が設けられている。洗浄槽21の鉛直方向の上方および下方には、食器70を洗浄する洗浄ノズル(図示せず)が備えられている。
【0027】
作業棚300は、図5に示すように、複数の棚段として、第一棚段31と、第二棚段32と、第三棚段33とを備え、第一棚段31と、第二棚段32と、第三棚段33とは上下方向Z(鉛直方向)の下方から順に上方に向けて所定の間隔をあけて重複して配置される。第一棚段31と、第二棚段32と、第三棚段33とは、四本の脚部39で地面に対してその棚面を平行(すなわち水平に)に支持される。
本実施形態において、第一棚段31と、第二棚段32と、第三棚段33との棚段の棚面はそれぞれ、ステンレスなどの金属棒を格子状に形成し、その棚面の上下方向Zにおいて、水や空気などの流体が通流可能なものである。
【0028】
〔食器収容容器の詳細構成の説明〕
以下、食器収容容器としての食器籠100について詳細を説明していく。
本実施形態の食器籠100は、図1に示すように、食器を収容する籠である籠本体部10に、籠本体部10の上下方向Zにおける下方側(つまり、食器籠100の下)へ洗浄水dを流下させる籠底部50を備えてなる。
【0029】
籠本体部10は、例えばポリエステルなどの樹脂で一体に成形されている。
籠本体部10は、およそ方形の籠であり、主として、籠本体部10を支持する支柱として籠の四隅に支柱11を備え、籠の側面の壁部となる四面の格子壁12と、籠本体部10に収容された食器70を載置する籠の底となる格子底13を備え、さらに、格子底13の上下方向Zの下方に籠底部50を有している。
本実施形態では、籠本体部10は、奥行方向Yの幅よりも左右方向Xの幅がやや長い、長方形の籠である。つまり、図1において、左右方向Xが籠本体部10の長手方向に一致する。
なお、本実施形態では、支柱11は、支柱11の上下方向Zにおける下方部分に、支柱11と一体に形成された底脚15を、籠本体部10の支持部として備えている。底脚15と、左右方向Xにおいて一方の支柱11と隣り合う他方の支柱11とは、それぞれの支柱11の上下方向Zにおける下方部分において一体に形成されている。
【0030】
籠本体部10は、四面の格子壁12と格子底13で囲われた空間に、食器70を載置するようになっている。
格子壁12ないし格子底13には、食器70を区画ないし区分して載置するための仕切部(図示せず)を備える場合がある。
【0031】
格子壁12は、本実施形態では、樹脂で一体成形されて格子状に形成されている。格子壁12は、本実施形態では、上下方向Zに沿う、等間隔に配置された複数の枠線12aと、枠線12aに直交し、等間隔に配置された枠線12bで格子を形成して成る。
格子壁12は、支柱11に支持されている。また、格子壁12は、支柱11と一体に成形されている。
【0032】
格子底13は、本実施形態では、樹脂で一体成形されて格子状に形成されている。格子底13は、本実施形態では、左右方向Xに沿う、等間隔に配置された複数の枠線13aと、枠線13aに直交し、等間隔に配置された枠線13bで格子を形成して成る。
格子底13は、支柱11および格子壁12に支持されている。また、格子底13は、支柱11および格子壁12と一体に成形されている。
格子底13は、籠本体部10を水平面状に載置した場合に、当該水平面に沿うように設ける。本実施形態では、格子底13は、この水平面に平行になるように設けている。
【0033】
籠底部50は、主として、左右方向Xに沿う二本の底枠51と、底枠51と直交する二本の底枠52と、底枠51に軸支された複数の底板53と、を備える。
また、籠底部50には、複数の底板53と係合する切替部40(切替機構)が設けられている。
【0034】
二本の底枠51は本実施形態では、左右方向Xに沿い、奥行方向Yの奥側および手前側のそれぞれの二本の支柱11に直交して交わり横架される。
底枠51は、支柱11と一体に成形されている。
【0035】
底枠51は、後述するように、底板53を揺動可能に軸支する複数の軸支部54を備える。軸支部54は、奥行方向Yの手前側と奥側の底枠51において、一対で設けられる。そして、この一対の軸支部54は、左右方向Xの向きにおいて複数の底板53のそれぞれに対応して等間隔で配置される。
軸支部54は、底枠51に対して垂直に交わり、上下方向Zの下方側に向けて平板状に延出するリブ状に設けられ、当該リブ状部分に、奥行方向Yの向きに沿い貫通した円筒状の貫通孔を備える。
【0036】
二本の底枠52は本実施形態では、奥行方向Yに沿い、左右方向Xの右側および左側のそれぞれの二本の支柱11に直交して交わり横架される。また、底枠52は、底枠51と直交して交わる。
本実施形態では、底枠52は、底枠51が支柱11に交わる位置と同じ位置で、支柱11と交わる。したがって、底枠51と底枠52は、水平面に沿う同一平面状に配設される。
なお、底枠52は、支柱11および底枠51と一体に成形されている。
【0037】
底板53は、長方形の板材であり、その長手方向が奥行方向Yに沿うようにして、底枠51に取り付けられる。
底板53は、閉じ状態において、左右方向Xの方向に、複数の底板53を並べた状態で、底枠51に沿い横置される。
また、底板53は、籠底部50の底枠51の一対の軸支部54で揺動可能に軸支して取り付けられる。
【0038】
底板53は、格子底13と上下方向Zにおいて重複する範囲に対して、複数枚、それぞれ隣り合わせて左右方向Xの方向において隣接させて、複数枚をそれぞれ隙間なく密に並べて配置する。本実施形態においては、それぞれ隣り合う底板53は、それぞれ互いの端部を当接した状態で隙間なく密に並べて配置されている。したがって、複数枚の底板53は、底枠51に横置された状態で並設され、およそ一体の板状となる。
底板53は、底枠51に横置された状態で、籠底部50の上下方向Zの向きにおいて、洗浄水dの通流を防止する。籠底部50は、このように一体の板状となった複数の底板53により、上下方向Zの向きにおいて、籠底部50の上方側にある格子底13から流下した洗浄水dが、籠底部50の下方側に流下することを防止する。
つまり、複数枚の底板53が底枠51に横置された状態が、籠底部50における閉じ状態(図1参照)である。
【0039】
底板53は、図3に示すように、底板53の底枠51に沿う側の両側の辺部から、奥行方向Yの向きに突起する一対の回転軸55を備える。
本実施形態では、回転軸55は、底板53が横置された状態において、底板53の面に対して垂直に交わり、上下方向Zの下方側に向けて平板状に延出するリブを設け、当該リブから、奥行方向Yにおいて底板53の外側に向いて突出する円柱状の軸として設けられている。
回転軸55は、回転軸55を底枠51の軸支部54の貫通孔に挿入する態様で、底板53を籠底部50に揺動可能(揺動自在)に軸支している。
【0040】
また、本実施形態では、複数の底板53は、一対の軸支部54と、一方の底枠51から他方の底枠51に向けて底枠52に平行に横架された梁部59とで支持されて、底枠51に沿い横置される。なお、梁部59は、複数の底板53に対応して等間隔で配置されている。
本実施形態では、梁部59を、底板53における左右方向Xの左側に偏位した位置で、上下方向Zにおける下方側から底板53を支持する位置に配置している。
【0041】
一対の回転軸55は、本実施形態では、底板53において、左右方向Xの右側に偏位した位置に設けている。したがって、底板53は、底枠51に対して上下方向Zにおける下向きに働く重力(付勢力)で自然に横たわり、底枠51に横置された状態を自然に維持する。
本実施形態では、一対の回転軸55を、底板53における左右方向Xの右側辺部分に隣接した位置に設けている。すなわち、それぞれの底板53において、一対の回転軸55および一対の軸支部54と、梁部59とは底板53における左右方向Xのそれぞれ他端側(反対側)に偏位した位置に配置されている。
【0042】
底板53は、本実施形態では、それぞれの底板53の底枠51に沿う側の両側の辺部であって、左右方向Xの左側に偏位した位置に、後述する切替部40と係合する係合部となる軸受部56を備える。
本実施形態では、軸受部56を、底板53における左右方向Xの左側辺部分に隣接した位置であって、奥行方向Yの手前側の辺部(端部)に設けている。軸受部56は、底板53が横置されて状態において、底板53の面に対して垂直に交わり、上下方向Zの上方側に延出するリブ状に設けられ、当該リブ状部分に、奥行方向Yに沿う貫通孔を軸穴56aとして備える。
【0043】
切替部40は、図3に示すように、切替部40の本体部分であるリンク棒41と、リンク棒41に設けられたリンク軸42とで成る。なお、図3は、奥行方向Yにおいて手前側の底板53の端部と底枠52との間の断面を、奥行方向Yの方向視で奥向きに見た場合を図示している。
【0044】
リンク棒41は、食器籠100の外部から押圧力を受ける押圧部43(当接部)を備える。
リンク棒41は、本実施形態では、四隅の支柱11で囲われる枠内において、奥行方向Yの手前側の底枠51に隣接して沿うように、底板53の上下方向Zにおける上方側に橋架され、閉じ状態において、四隅の支柱11で囲われる枠内から、押圧部43が、左右方向Xにおける左側に向けて所定距離tだけ突出(延出)した状態に設けられる。
【0045】
リンク軸42は、リンク棒41に設けられた円柱状の突起である。
リンク軸42は、リンク棒41とそれぞれの軸受部56とを係合させるべく、軸受部56の軸穴56aに摺動自在に挿入される。
リンク軸42は、軸受部56と対応して左右方向Xにおいてリンク棒41に等間隔で設けられている。
本実施形態では、リンク軸42は、リンク棒41において、奥行方向Yの奥側の向きに、円柱状に突出(延出)する態様で設けられ、軸受部56の軸穴56aに対し、奥行方向Yの手前側から奥側の向きに貫通させた状態で摺動自在に挿入される。リンク軸42は、軸受部56の軸穴56aに対する抜け防止のために、例えば軸穴56aを貫通したリンク軸42の先端部分に割ピン(図示せず)を取り付けて抜け防止される。
【0046】
リンク棒41は、押圧部43が、外部から左右方向Xの右側に向けて押圧力を受けると、左右方向Xの右側に向けて移動し、当該移動に伴って、リンク軸42を介し、軸受部56の部分から底板53を左右方向Xの右側に向けて引っ張るように作用する(図4参照)。
つまり、底板53は、切替部40としてのリンク棒41の押圧部43が、外部から左右方向Xの右側に向けて押圧力を受けると、軸受部56の部分から左右方向Xの右向きに付勢されるのである。
【0047】
底板53は、図4に示すように、閉じ状態において切替部40としてのリンク棒41により左右方向Xの右向きに付勢されると、その板面が軸支部54の回転方向に沿い回転し、係合部となる軸受部56のある側の辺部(一方の辺部)を持ち上げるように傾いて、その板面が水平面、すなわち、格子底13に平行となる面と交差する状態になる。この際、リンク棒41は、軸受部56の移動に沿い、円弧状の軌跡を描いて上下方向Zの上向きかつ左右方向Xの右向きに移動する。つまり、リンク棒41は、重力に抗して持ち上がる。
なお、本実施形態においては、押圧部43が押圧されて、リンク棒41が所定距離tだけ左右方向Xにおける右側に移動すると、底板53板面が、水平面(格子底13に平行となる面)から角度αに傾くように、所定距離tが定められている。ここで、角度αは鋭角(90°未満)ないし90°の範囲で設定される。
【0048】
このように底板53の板面が水平面と交差する状態で、籠底部50は、上下方向Zの向きにおいて、籠底部50の上方側にある格子底13から洗浄水dが流下した場合に、その洗浄水dが籠底部50の下方側に流下することを許容する。それぞれの底板53の間に隙間ができるため、洗浄水dが、当該隙間を通流可能となるためである。
つまり、複数枚の底板53が、切替部40に付勢され、その板面が水平面と交差する状態が、籠底部50における開き状態(図2参照)である。
本実施形態においては底板53の板面が、底枠51に対して交差する状態が、底板53の板面が水平面と交差する状態に一致する。
【0049】
このように、底板53は、閉じ状態において切替部40に付勢されると、係合部である軸受部56のある側の辺部(一方の辺部)が重力に抗して持ち上がり、閉じ状態から開き状態に切替わるのであるが、底板53は、切替部40の付勢力から解放されると、底板53の軸受部56のある側の辺部(一方の辺部)は重力で降下する。この際、リンク棒41は、重力で降下し、その押圧部43が、四隅の支柱11で囲われる枠内から、左右方向Xにおける左側に向けて所定距離tだけ突出(延出)した状態に戻る。
つまり、底板53は、切替部40の付勢力から解放されると、再び重力で横たわり、開き状態から閉じ状態に戻る(切替わる)。
【0050】
〔食器収容容器の使用方法の説明〕
以下、食器収容容器としての食器籠100の使用方法の説明として、食器洗浄システム1の使用方法を説明する。
【0051】
食器70を洗浄する際には、食器70を食器籠100に収容し、食器洗浄装置200に収納し、洗浄する。食器洗浄装置200は、高温水や蒸気により、食器70を洗浄する。つまり、食器洗浄装置200の洗浄水dは熱い。
食器70を食器籠100に収容する際は、籠底部50は閉じ状態にあり、食器籠100を食器洗浄装置200に収納すると、籠底部50は開き状態に切替わる。食器籠100を食器洗浄装置200から引き出すと、籠底部50は閉じ状態に切替わる。
【0052】
以下、食器70を洗浄する手順を詳述する。
まず、食器洗浄装置200の扉部23を開き、食器籠100を洗浄台22に載置して洗浄槽21の所定位置に収容し、扉部23を閉じる。
食器籠100を洗浄槽21に収容する際は、リンク棒41の押圧部43を、洗浄槽21の壁部25に向けた状態で食器籠100を洗浄台22に載置する(図3参照)。そして、押圧部43が壁部25に当接し、壁部25により押圧されるように、所定位置としての食器籠100を洗浄槽21の奥まで押し込む(図2または図4参照)。本実施形態では、洗浄槽21の奥(左右方向Xにおける左側)の壁部25に対して、食器籠100の左右方向Xにおける右側の格子壁12が当接するまで食器籠100を洗浄槽に押し込むと、押圧部43が当該壁部25に押圧されてリンク棒41が所定距離tだけ左右方向Xにおける右側に移動する(図4も示す動作を参照)。
【0053】
リンク棒41が所定距離tだけ左右方向Xにおける右側に移動した際、リンク棒41は切替部40として底板53を付勢し、籠底部50を開き状態に切替える(図2または図4参照)。
この開き状態で食器洗浄装置200を動作させ、食器70を洗浄する。
食器70を洗浄する際、洗浄水dは、籠底部50の下方側に流下するため、食器洗浄装置200は、食器70を何ら問題なく洗浄できる。
なお、籠底部50が開き状態にある際は、籠底部50の下方側から上方側に向けた洗浄水dの通流も許容されるため、食器洗浄装置200において、洗浄ノズル(図示せず)は、洗浄槽21において食器籠100の上方側に設けることも、下方側に設けることもできる。すなわち、この食器籠100は、従来の食器洗浄装置200に特別な変更を要することなく、そのまま用いることができる。
【0054】
食器70の洗浄が終了すると、食器洗浄装置200の扉部23を開き、食器籠100を洗浄台22から引き出して、洗浄槽21から取り出す。
食器籠100を洗浄槽21から取り出す際に、リンク棒41の押圧部43が、壁部25と当接する状態が解除される。すると、底板53は、切替部40の付勢力から解放されて、閉じ状態に戻る。つまり、籠底部50が閉じ状態に切替わる(図4に示す動作の逆)。
【0055】
したがって、食器籠100を食器洗浄装置200の洗浄槽21から取り出した後は、籠底部50が閉じ状態にあるため、たとえば、食器70上に残留した洗浄水dが存在する場合にも、当該洗浄水dは、籠底部50の下方側に流下することを防止される。したがって、食器籠100から、洗浄水dが流下しない。
【0056】
食器洗浄装置200から取り出した食器籠100は、食器70を収容したまま、たとえば作業棚300の第三棚段33に載置して仮置きする。作業者が食器籠100を第一棚段31に載置する際は、籠底部50は閉じ状態にあるから、食器70に洗浄水dが熱い状態で残留する場合にも、食器籠100から熱い洗浄水dは流下しない。したがって、作業者が熱い洗浄水dに暴露することを回避できる。すなわち、作業者は安全に洗浄作業を行える。
なお、食器70に残留した洗浄水dが既に冷えている場合にも、作業者が洗浄水dに暴露することを回避して、作業者がまとう衣類を洗浄水dで濡らすことなどがないため、作業者に不快感を与えない。
【0057】
上記仮置きと並行して、第二の(別の)食器籠100に、未洗浄の食器70を収容し、食器洗浄装置200で洗浄する。当該洗浄が終了すると、第二の食器籠100を、さらに作業棚300の第二棚段32に載置して仮置きする。すなわち、洗浄済みの食器70を収容した二つの食器籠100が上下方向Z(鉛直方向)において重複するように仮置きされる。
この際、第三棚段33に載置した食器籠100の籠底部50は閉じ状態にあるから、第三棚段33に載置した食器籠100から、第二棚段32に載置した食器籠100の洗浄済みの食器70に、洗浄水dが流下することを回避することができる。したがって、洗浄済みの食器70の衛生状態は保たれる。
【0058】
上記仮置きと並行して、第三の(さらに別の)食器籠100に、未洗浄の食器70を収容し、食器洗浄装置200で洗浄する。当該洗浄が終了すると、第三の食器籠100を、さらに作業棚300の第一棚段31に載置して仮置きする。
この際、第三の食器籠100の籠底部50は閉じ状態にある。したがって、上記同様に、作業者が熱い洗浄水dに暴露することを回避できる。
また、上記同様に、第三棚段33に載置した食器籠100および第二棚段32に載置した食器籠100の籠底部50はそれぞれ閉じ状態にある。したがって、これら第三棚段33および第二棚段32に載置した食器籠100からは洗浄水dは流下せず、第一棚段31および第二棚段32に載置した食器籠100の洗浄済みの食器70の衛生状態は保たれる。
【0059】
以上のようにして、食器洗浄装置から取り出すと洗浄水の流下を防止する食器収容容器、および当該食器収容容器を用いた食器洗浄システムを提供することができる。
【0060】
[別実施形態]
(1)上記実施形態では、籠本体部10を、樹脂で一体に成形する場合を例示したが、籠本体部10は、ステンレスなどの金属の針金を屈曲させ、また溶接して、籠状に形成する場合もある。籠本体部10は、洗浄水dが通流可能ものであれば、その態様は問わない。
【0061】
(2)上記実施形態では、底板53に回転軸55を設け、当該回転軸55を底枠51の軸支部54の貫通孔に挿入する態様を例示したが、底枠51に奥行方向Yに突出させた回転軸55を設け、底板53に軸支部54として孔部を設け、底板53の軸支部54に、底枠51の回転軸55を挿入する態様とすることもできる。
【0062】
(3)上記実施形態では、リンク棒41に食器籠100の外部から押圧力を受ける押圧部43を備え、当該押圧部43が、四隅の支柱11で囲われる枠内から、左右方向Xにおける左側に向けて所定距離tだけ突出(延出)した状態に設け、食器籠100を洗浄槽21に収容する際に、洗浄槽21の奥(左右方向Xにおける左側)の壁部25で押圧部43を右側に押圧する態様を例示した。
しかし、リンク棒41の押圧部43を、四隅の支柱11で囲われる枠内に設け、洗浄槽21の壁部25に、左右方向Xにおける右側に向けて所定距離tだけ突出(延出)した壁側押圧部を設け、当該壁側押圧部でリンク棒41の押圧部43を押圧する態様としてもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、リンク棒41に食器籠100の外部から押圧力を受ける押圧部43を備え、当該押圧部43が、四隅の支柱11で囲われる枠内から、左右方向Xにおける左側に向けて所定距離tだけ突出(延出)した状態に設け、食器籠100を洗浄槽21に収容する際に、洗浄槽21の奥側(左右方向Xにおける右側)の壁部25で押圧部43を押圧する態様を例示した。
しかし、リンク棒41に押圧部43を設ける代わりに係止部を設け、食器籠100を洗浄槽21に収容する際に、当該係止部を洗浄槽21の側面(奥行方向Yの手前側)に壁部25に係止させ、当該係止よりリンク棒41を食器籠100に対して相対的に左右方向Xにおける右側に移動させる態様としてもよい。
つまり、切替部40は、その態様を問わず、底板53、すなわち籠底部50を開き状態と閉じ状態に切替えられるものであればいずれの機構も採用しうる。
【0064】
(5)上記実施形態では、底板53は、閉じ状態において、底枠51に対して上下方向Zにおける下向きに働く重力(付勢力)で自然に横たわり、底枠51に横置された状態を自然に維持し、この閉じ状態において、切替部40に付勢されると、係合部である軸受部56のある側の辺部(一方の辺部)が重力に抗して持ち上がり、閉じ状態から開き状態に切替わる場合を例示した。
しかし、底板53は、閉じ状態において、底枠51に対して上下方向Zにおける下向きに付勢するバネなどの付勢部材の付勢力で付勢されて横たわり、底枠51に横置された状態を維持し、この閉じ状態において、切替部40が付勢部材による付勢を解除して、閉じ状態から開き状態に切替わる場合もある。また、付勢部材による付勢を解除された底板53が、重力により自然に開き状態に切替わるように構成する場合もある。
【0065】
(6)上記実施形態では、籠本体部10に収容された食器70を載置する籠の底となる格子底13を備え、さらに、格子底13の上下方向Zの下方に籠底部50を有している場合を例示した。
しかし、格子底13を籠底部50としてもよい。
この場合、格子底13の枠線13aを、その長手方向に沿うスリットを備えた中空の筒(断面がC字形状の筒)に形成して軸支部54とし、底板53の枠線13aに沿う一方の辺部を回転軸55として、その軸支部54に嵌めて、底板53を枠線13aで揺動可能に軸支することもできる。
【0066】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は食器洗浄装置から取り出すと洗浄水の流下を防止する食器収容容器、および当該食器収容容器を用いた食器洗浄システムに適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 :食器洗浄システム
10 :籠本体部
21 :洗浄槽
31 :第一棚段(複数の棚段)
32 :第二棚段(複数の棚段)
33 :第三棚段(複数の棚段)
40 :切替部(切替機構)
41 :リンク棒(切替機構)
42 :リンク軸(切替機構)
43 :押圧部(当接部)
50 :籠底部
53 :底板
54 :軸支部
70 :食器
100 :食器籠(食器収容容器)
200 :食器洗浄装置
300 :作業棚
d :洗浄水
図1
図2
図3
図4
図5