特許第6899698号(P6899698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899698
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】車両用シートクッション芯材
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20210628BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   A47C27/15 A
   B29C44/00 G
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-94799(P2017-94799)
(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公開番号】特開2018-187270(P2018-187270A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】高山 敦夫
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−174340(JP,A)
【文献】 特開2012−126816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/15
A47C 27/14
B29C 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡粒子成形体と、該熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の周縁部にインサート成形により埋設された金属製の環状フレーム部材との複合成形体からなる車両用シートクッション芯材であって、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、貫通孔を有する熱可塑性樹脂発泡粒子の融着体からなり、
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、成形収縮による不等収縮を緩和するために形成されたスリットを有することを特徴とする車両用シートクッション芯材。
【請求項2】
前記環状フレーム部材が、平均径2〜5mmの金属製の環状ワイヤーフレーム部材であることを特徴とする請求項1に記載の車両用シートクッション芯材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の嵩密度が10〜90kg/mであり、空隙率が10〜40体積%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シートクッション芯材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を構成している発泡粒子の貫通孔の平均径が1〜7mmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用シートクッション芯材。
【請求項5】
前記スリットの両側端が、前記環状フレーム部材の内方に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用シートクッション芯材。
【請求項6】
前記車両用シートクッション芯材は、長手と短手を有する上面視略矩形状であり、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が、前記車両用シートクッション芯材の短手方向に沿って分割されている複数の発泡粒子成形体からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用シートクッション芯材。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が、前記車両用シートクッション芯材の長手方向を略等分する位置で、前記芯材の短手方向に沿って分割されている複数の発泡粒子成形体からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用シートクッション芯材。
【請求項8】
前記車両用シートクッション芯材は、長手と短手を有する上面視略矩形状であり、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が、1又は2以上の連結部を残して、前記車両用シートクッション芯材の短手方向に沿って分断されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用シートクッション芯材。
【請求項9】
前記連結部は、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の成形収縮による相対移動を許すように変形可能であることを特徴とする請求項8に記載の車両用シートクッション芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形により、補強部材として環状フレーム部材が埋め込まれた熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる車両用シートクッション芯材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用シートクッション芯材として、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体とその内部に埋設された補強部材とからなる複合成形体が用いられている。補強部材は、通常、金属製の環状ワイヤーフレーム部材が用いられ、車両本体への取り付けや衝突時の補強のために埋め込まれる。
【0003】
このような複合成形体は、例えばインサート成形により製造される。具体的には、まず、成形型内の所定の位置に補強部材を配設し、次いで熱可塑性樹脂発泡粒子を金型内に充填して加熱する。これにより、発泡粒子が相互に融着して熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が得られると共に、この熱可塑性樹脂発泡粒子成形体内に補強部材が埋め込まれて一体化する。
【0004】
熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、型内成形後に収縮を起こし、金型寸法よりも小さな寸法で形状が安定する(以下、この収縮を成形収縮ともいう)。したがって、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体と補強部材とがインサート成形により一体的に成形された場合には、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体と補強部材との収縮率の相違に起因して、成形後、複合成形体に反りが発生する場合があった。このような反りを有する複合成形体を車両用シートクッション芯材として用いると、車体への取り付け精度が悪くなる場合や、所望の性能が得られなくなるおそれがあった。
【0005】
これらの問題を解決するための対策として、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の上面、又は上面及び下面から、その厚み方向に凹欠したスリットを形成することにより、成形後の複合成形体の反りを少なくする方法がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−174340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の提案によれば、成形後の複合成形体の反りを低減することが可能となる。しかしながら、例えば、埋め込まれる補強部材の直径が細いなど、剛性が低い場合には、複合成形体の反りを低減する効果が不十分となる場合があった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、剛性が低い補強部材を用いてインサート成形によって製造した場合でも、反りが少なく、優れた寸法精度を発揮できる複合成形体からなる車両用シートクッション芯材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下に記載の車両用シートクッション芯材を提供する。
<1>熱可塑性樹脂発泡粒子成形体と、該熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の周縁部にインサート成形により埋設された環状フレーム部材との複合成形体からなる車両用シートクッション芯材であって、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、貫通孔を有する熱可塑性樹脂発泡粒子の融着体からなり、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、成形収縮による不等収縮を緩和するために形成されたスリットを有することを特徴とする車両用シートクッション芯材。
<2>前記環状フレーム部材が、平均径2〜5mmの金属製の環状ワイヤーフレーム部材であることを特徴とする<1>に記載の車両用シートクッション芯材。
<3>前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の嵩密度が10〜90kg/mであり、空隙率が10〜40体積%であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の車両用シートクッション芯材。
<4>前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体を構成している前記熱可塑性樹脂発泡粒子の貫通孔の平均径が1〜7mmであることを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の車両用シートクッション芯材。
<5>前記スリットの両側端が、前記環状フレーム部材の内方に位置することを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の車両用シートクッション芯材。
<6>前記車両用シートクッション芯材は、長手と短手を有する上面視略矩形状であり、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が、前記車両用シートクッション芯材の短手方向に沿って分割されている複数の発泡粒子成形体からなることを特徴とする<1>から<5>のいずれかに記載の車両用シートクッション芯材。
<7>前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が、前記車両用シートクッション芯材の長手方向を略等分する位置で、前記芯材の短手方向に沿って分割されている複数の発泡粒子成形体からなることを特徴とする<1>から<6>のいずれかに記載の車両用シートクッション芯材。
<8>前記車両用シートクッション芯材は、長手と短手を有する上面視略矩形状であり、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が、1又は2以上の連結部を残して、前記車両用シートクッション芯材の短手方向に沿って分断されていることを特徴とする<1>から<7>のいずれかに記載の車両用シートクッション芯材。
<9>前記連結部は、前記熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の成形収縮による相対移動を許すように変形可能であることを特徴とする<8>に記載の車両用シートクッション芯材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用シートクッション芯材は、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体と、該発泡粒子成形体の周縁部にインサート成形により埋設された環状フレーム部材との複合成形体からなり、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が、貫通孔を有する発泡粒子の融着体であるため、成形後の発泡粒子成形体の収縮力が小さく、さらに、熱可塑性樹脂発泡粒子成形体は、スリットを有するため、発泡粒子成形体の収縮力が分断される。そのため、本発明の車両用シートクッション芯材は、反りが抑制され、寸法精度に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る車両用シートクッション芯材の一実施形態を示す概略斜視図である。
図2図1に示す車両用シートクッション芯材の発泡粒子成形体への補強部材の埋設状態を現した概略平面図である。
図3図2のX−X線に沿った部分の概略断面図である。両用座席シート芯材の第一実施形態を示す斜視略図である。
図4】(a)、(b)は、本発明で用いられる貫通孔を有する熱可塑性樹脂発泡粒子の一実施形態を示す概略斜視図である。
図5】(a)〜(d)はスリットの形成状態を示す概略説明図である。
図6図5に示す実施形態において、上面にスリットを形成した状態を示す概略説明図である。
図7図5に示す実施形態において、上面及び下面にスリットを形成した状態を示す概略説明図である。
図8】(a)は、車両用シートクッション芯材の貫通型のスリットの位置を示す概略平面図であり、(b)は、(a)におけるb1−b1線矢視断面図である。
図9】(a)は、車両用シートクッション芯材における非貫通型のスリット位置を示す概略平面図であり、(b)は、(a)におけるb2−b2線矢視断面図である。
図10】(a)〜(e)は、車両用シートクッション芯材におけるスリット位置の各変形例を示す概略平面図である。
図11】長手方向に分割された離隔状態の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる車両用シートクッション芯材の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
図12】熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の厚みと継手部の厚みが同じ場合の一つの形態の継手構成部の曲げ変形の説明図であり、(a)は無負荷時を示す図、(b)は熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が伸長して縮小方向の負荷が加わった場合の継手構成部の曲げ変形を示す図、(c)は熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が縮小して拡張方向の負荷が加わった場合の継手構成部の曲げ変形を示す図である。
図13】熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の厚みと継手部の厚みが同じ場合の他の形態の継手構成部の曲げ変形の説明図であり、(a)は無負荷時を示す図、(b)は熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が伸長して縮小方向の負荷が加わった場合の曲げ変形を示す図、(c)は熱可塑性樹脂発泡粒子成形体が縮小して拡張方向の負荷が加わった場合の曲げ変形を示す図である。
図14】離隔状態の基材部分を継手構成部にて相互に連結した形態を示す説明図であり、(a)は熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の長手方向の2か所に継手構成部を設けた実施形態を示す図、(b)は基材の短手方向の端部2か所に継手構成部を設けた実施形態を示す図である。
図15】短手方向に分割された離隔状態の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体からなる車両用シートクッション芯材の一実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
図16】熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の厚みと継手部の厚みが同じ場合の継手構成部の他の実施形態の説明図であり、(a)は継手部がI字型の場合、(b)は継手部がV字型の場合、(c)は継手部がX字型の場合を示す図である。
図17】熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の厚みと継手部の厚みが異なる場合の継手構成部の他の実施形態の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図を示した図である。
図18】熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の厚みと継手部の厚みが異なる場合の継手構成部の他の実施形態の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図を示した図である。
図19】熱可塑性樹脂発泡粒子成形体の厚みと継手部の厚みが異なる場合の継手構成部の他の実施形態の説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の車両用シートクッション芯材(以下、単にシート芯材ともいう)について図面に基づいて以下に詳述する。図1は、本発明に係るシート芯材の一実施形態を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示すシート芯材の熱可塑性樹脂発泡粒子成形体(以下、単に発泡粒子成形体ともいう)への補強部材の埋設状態を示した概略平面図、図3は、図2のX−X線に沿った部分の概略断面図である。また、図4(a)は本発明に用いられる貫通孔を有する熱可塑性樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう)の一例を示す斜視図であり、図4(b)は本発明に用いられる他の実施形態の発泡粒子(多層発泡粒子)を示す斜視図である。
【0013】
本発明のシート芯材1は、発泡粒子成形体2と、該発泡粒子成形体2の周縁部にインサート成形により埋設された環状フレーム部材3との複合成形体からなる一体成形物である。発泡粒子成形体2は、貫通孔22を有する発泡粒子20(21)が相互に融着した融着体からなり、発泡粒子成形体2の成形収縮による不等収縮を緩和するために形成されたスリット4を有する。
【0014】
シート芯材1は、上記インサート成形により得られる発泡粒子成形体2と環状フレーム部材3との一体成形物である。即ち、シート芯材1は、発泡粒子成形体2を型内成形するための金型内に環状フレーム部材3を配置した状態で発泡粒子20を上記金型に充填して型内成形する、所謂インサート成形により得られる。
【0015】
なお、本実施形態において、一体成形物とは、発泡粒子成形体2の型内成形時に発泡粒子成形体2の内部に環状フレーム部材3が埋設されることで両者が一体化された成形物を意味する。上記一体成形物は、予め成形された成形体に環状フレーム部材3が取り付けられて製造されたシート部材と区別される。
【0016】
本実施形態の発泡粒子成形体2は、図4(a)に示すような貫通孔22を有する発泡粒子20により構成されている。発泡粒子20を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0017】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、又はポリプロピレン系樹脂が好ましく、中でも強度や耐衝撃性の観点から、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のコモノマーとの共重合体、又はこれらの混合物が挙げられる。プロピレンと他のコモノマーとの共重合体としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、又はプロピレン−エチレン−ブテン共重合体等が例示される。このようなプロピレン系樹脂は、樹脂中のプロピレン成分単位が概ね50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂等の結晶性樹脂を含む発泡粒子20から構成される発泡粒子成形体2は、非晶性樹脂を用いた場合に比べ、成形収縮率がより大きくなる。これに対し、貫通孔22を有する発泡粒子20により構成されたシート芯材1によれば、結晶性樹脂を用いた場合にもその湾曲、反りが良好に抑制される。
【0019】
なお、図4(a)に示す実施形態の発泡粒子20は、断面円形状の貫通孔22を有した円筒形状に形成されているが、この形状に限定されるものではなく、例えば、円柱、楕円柱、角柱等の柱状で、少なくとも当該柱を貫通する貫通孔22を有する形状の発泡粒子であればよい。
【0020】
発泡粒子成形体を構成している発泡粒子20の貫通孔22の平均径は特に限定されるものではないが、通常、1mm以上7mm以下であることが好ましい。貫通孔22の平均径は、発泡粒子成形体2の断面写真において観察される発泡粒子20の貫通孔22の断面積を50点以上測定し、測定した各断面積と同じ面積を有する仮想真円の直径をそれぞれ求め、これらを算術平均することで求めることができる。貫通孔22の平均径が上記範囲内であれば、成形後の発泡粒子成形体の収縮によるシート芯材1に生じる反りをより効果的に抑制することができる。かかる観点から、貫通孔22の平均径は、1mm以上5mm以下の範囲にあることがより好ましい。
【0021】
また、発泡粒子20は、通常、実質的に単層で構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、図4(b)示すような多層構造であってもよい。また、多層発泡粒子21の各層を構成する樹脂は、互いに同種の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。図4(b)に示す多層発泡粒子21では二層構造の発泡粒子を示している。
【0022】
図4(b)に示す実施形態の多層発泡粒子21では、貫通孔を有する筒状の熱可塑性樹脂発泡芯層24(以下、単に芯層24という場合がある)と、芯層24を被覆する熱可塑性樹脂被覆層25(以下、単に被覆層25という場合がある。)とを有する多層構造を有するものである。また、図4(b)に示す多層発泡粒子21は、二層構造であるが、芯層24と被覆層25との間に任意の中間層がさらに設けられていてもよい。
【0023】
多層発泡粒子21の芯層24は発泡状態の樹脂よりなる発泡層であるのに対し、多層発泡粒子21の被覆層25は実質的に非発泡状態の樹脂よりなる樹脂層であってもよい。ここで、実質的に非発泡とは、被覆層25に気泡が全く存在しないもの(発泡粒子を発泡させる際に一旦形成された気泡が溶融破壊されて気泡が消滅したものも包含する)のみならず、ごく微小な気泡が僅かに存在するものも包含される。
【0024】
芯層24、及び被覆層25の基材樹脂は、上記図4(a)に示す発泡粒子20と同様の樹脂を用いることができ、中でも、芯層24をポリオレフィン系樹脂、被覆層25をポリオレフィン系樹脂とすることが好ましく、芯層24をポリプロピレン系樹脂、被覆層25をポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂とすることがより好ましく、芯層24をポリプロピレン系樹脂、被覆層25をポリエチレン系樹脂とすることがさらに好ましい。
【0025】
ポリエチレン系樹脂は、樹脂中のエチレン成分単位が概ね50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体が好ましく用いられる。より具体的には、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、さらにこれらの2種以上の混合樹脂が挙げられる。
【0026】
また、芯層24を構成する樹脂と被覆層25を構成する樹脂が共にポリオレフィン系樹脂である場合、多層発泡粒子21の被覆層25を構成する樹脂は、芯層24を構成する樹脂よりも融点が低い樹脂であることが好適である。さらに、被覆層25を構成する樹脂の融点Ts(℃)が芯層24を構成する樹脂の融点Tc(℃)よりも15℃以上低い(Tc−15≧Ts)ことがより好ましく、被覆層25を構成する樹脂の融点Ts(℃)が芯層24を構成する樹脂の融点Tc(℃)よりも30℃以上低い(Tc−30≧Ts)ことがさらに好ましい。
【0027】
上記の点を考慮した、多層発泡粒子21の芯層24を構成する樹脂の具体的な融点は、概ね120℃以上165℃以下であることが好ましく、より好ましくは130℃以上165℃以下であり、さらに好ましくは140℃以上165℃以下であり、特に好ましくは145℃以上165℃以下である。また、被覆層25の融点は、概ね90℃以上130℃以下であることが好ましく、より好ましくは95℃以上125℃以下である。
【0028】
上記樹脂の融点は、JIS K7121(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」を採用し(試験片の状態調節における加熱速度及び冷却速度はいずれも10℃/分とする。)、DSC装置により加熱速度10℃/分で昇温してDSC曲線を描かせた際に、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う吸熱ピークの頂点温度として求められる値である。なお、DSC曲線上に複数の吸熱ピークが存在する場合には、吸熱ピークの面積が最も大きい吸熱ピークの頂点を融点とする。測定装置としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製DSCQ1000などを使用することができる。
【0029】
また、被覆層25を構成する樹脂の融点を芯層24を構成する樹脂の融点よりも低くすることにより、発泡粒子成形体2の型内成形時に多層発泡粒子21同士をより確実に融着させつつ、貫通孔22による空隙が維持された発泡粒子成形体2を成形することができる。そのため、発泡粒子成形体2の空隙率を所定の範囲に制御することが容易となるとともに、融着が良好な発泡粒子成形体2を得ることができ、シート芯材1の強度及び寸法精度を向上させることができる。
【0030】
本実施形態において、芯層24と被覆層25との質量比率は特に限定されるものではないが、上記のような芯層24と被覆層25とで融点に差のある実施形態では、芯層24の質量:被覆層25の質量=99:1〜75:25であることが好ましく、より好ましくは芯層24の質量:被覆層25の質量=98:2〜80:20である。なお、上記質量比率は、各々の層を構成する樹脂の密度と、各々の層の樹脂体積との積から、各々の層の質量を求めることにより算出することができる。
【0031】
貫通孔22を有する発泡粒子が相互に融着している発泡粒子成形体2において、発泡粒子成形体2を形成している発泡粒子の貫通孔22の部分は空隙となる。よって、発泡粒子成形体2には成形体全体にわたって均質に空隙が形成されることとなる。これにより、発泡粒子成形体2の機械的強度を大きく低下させることなく、成形後の不等収縮の影響を効果的に低減させることができる。
【0032】
貫通孔22を有する発泡粒子20は、公知の製造方法を適宜選択して製造することができる。例えば、まず、熱可塑性樹脂を押出機で溶融混練した後、ダイを通して筒状に押出し、適宜の長さに切断することによって、貫通孔22を有する樹脂粒子を得る。次に、発泡剤を含有する樹脂粒子を発泡させる。これにより、貫通孔22を有する発泡粒子20を製造することができる。また、押出発泡法により、貫通孔22を有する発泡粒子20を製造することもできる。
【0033】
シート芯材1が、強度に優れるとともに、適度な弾性を備えるという観点からは、発泡粒子成形体2の嵩密度は、10kg/m以上90kg/m以下であることが好ましい。特に発泡粒子成形体2がポリオレフィン系樹脂よりなる場合には上記嵩密度は、20kg/m以上60kg/m以下であることがより好ましい。尚、異なる嵩密度を有する発泡粒子成形体を複数組み合わせて、一つの発泡粒子成形体2とすることもできる。この場合には、異なる嵩密度を有する発泡粒子成形体2の各々の嵩密度が上記の数値範囲内にあればよい。
【0034】
上記嵩密度は、次のように測定することができる。発泡粒子成形体2から無作為に選択された5か所以上において、所定寸法のカットサンプルを切り出し、そのカットサンプルの体積V(cm)を算出するとともに、カットサンプルの質量(g)を測定する。そして、カットサンプルの体積V(cm)でカットサンプルの質量M(g)を除することによりM/Vを算出する。カットサンプルごとに算出されたM/Vの値を算術平均し、発泡粒子成形体2の嵩密度とすることができる。
【0035】
本発明のシート芯材1に用いられる環状フレーム部材3は、発泡粒子成形体2の内部に埋め込まれ、発泡粒子成形体2を補強するための部材である。環状フレーム部材3の材質としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属や繊維強化樹脂等が挙げられるが、シート芯材1の強度を向上させる観点から金属製が好ましい。また、環状フレーム部材3は、線状、管状、棒状等、任意の形状の長尺部材を加工して用いることができ、これらの中でも平均径2〜5mm、好ましくは3〜5mmの棒状又は線状の金属製の環状ワイヤーフレーム部材を用いるのが好ましい。
【0036】
上記の長尺部材は、引張強さが200N/mm以上であることが好ましく、シート芯材1の強度を向上させる観点から、250〜1300N/mmであることがより好ましい。また、降伏点は、400N/mm以上であることが好ましく、440N/mm以上であることがさらに好ましい。上記数値範囲の平均径及び引張強さを有する長尺部材は、所定の形状に成形し易く、またシート芯材1の適度な強度及び軽量性を保つことが可能である。なお、長尺部材の引張強さは、JIS G3532 SWM−Bに示される測定方法に準じて測定することができる。また、環状フレーム部材3は、上記の長尺部材を溶接や曲げ加工することにより環状に形成することができる。
【0037】
本実施形態における環状フレーム部材3の形状は、製造するシート芯材1に応じて適宜設計されるものであるが、通常、図1図2に示すように、上面視外形略矩形状で、後方掛け止め部3a、前方掛け止め部3b等の他の部材を保持させることができる。環状フレーム部材3は、発泡粒子成形体2の平面視における外縁に沿って発泡粒子成形体2に埋設されている。
【0038】
ここで環状フレーム部材3が環状であるとは、環状フレーム部材3を構成する長尺部材が、切れ目なく環状に構成されている態様、及び環状フレーム部材3を構成する長尺部材が他の部材を介して環状に構成されている態様のいずれも含む。切れ目のない長尺部材とは、一本の連続した長尺部材だけでなく、所定の箇所で溶接などにより互いに接合された2以上の長尺部材の連続体を含む。また、シート芯材1や取り付け箇所の形状にあわせて、長辺や短辺部分を屈曲させたり、一部にクランク形状3cを設けたり、角部分を切り欠いた構成も含む。
【0039】
上記で説明した発泡粒子20及び環状フレーム部材3を用いて一体成形したシート芯材1は、例えば以下のような型内成形方法により製造される。具体的には、車両用シートクッション芯材成形用の金型内の所定の位置に、環状フレーム部材3を配置するとともに、発泡粒子20を当該金型内に充填する。その後、加熱スチームを金型内に導入して発泡粒子20を加熱して二次発泡させると共に、発泡粒子20を相互に融着させる。これにより発泡粒子成形体2に環状フレーム部材3が埋設されている複合成形体からなるシート芯材1が製造される。このように製造されたシート芯材1は、発泡粒子成形体2と環状フレーム部材3との一体成形物であり、両者の一体性に優れたものとなる。
【0040】
発泡粒子成形体2の空隙率は、10体積%以上40体積%以下の範囲が好ましい。空隙率が前記範囲であると、シート芯材が機械的強度に特に優れると共に、シート芯材の反りをより効果的に抑制することができる。かかる観点から、空隙率の下限は、12体積%以上であることが好ましく、14体積%以上であることがより好ましく、16体積%以上であることがさらに好ましい。また、空隙率の上限は、35体積%以下であることが好ましく、30体積%以下であることがより好ましい。
なお、発泡粒子成形体2に形成される空隙としては、発泡粒子成形体2を構成する発泡粒子間に存在する空隙と、発泡粒子自体に貫通孔22等として形成される空隙とが挙げられる。
【0041】
本実施形態における発泡粒子成形体2の空隙率の算出方法は、発泡粒子成形体2の外形寸法から求められる嵩体積Hと、発泡粒子成形体2の空隙部を除いた見掛けの体積I(cm)から、下記(式1)により体積比率(体積%)として算出する。
空隙率(体積%)=[(H−I)/H]×100 ・・・(式1)
具体的には以下のとおり測定することができる。
【0042】
成形収縮が収まった後の発泡粒子成形体2から、測定対象箇所を無作為に10箇所以上選択し、各測定対象箇所からそれぞれ50cm以上の直方体形状のカットサンプルを切り出す。上記カットサンプルは、成形スキン面を有しないよう切り出される。該カットサンプルの各々について、カットサンプル外形寸法から嵩体積H(cm)を算出するとともに、カットサンプルの空隙部を除いた見掛けの体積I(cm)を測定する。見掛けの体積Iは、カットサンプルをアルコール中に沈めた時の、アルコールとカットサンプルとの合計体積から、カットサンプルをアルコール中に沈める前のアルコールの体積を減ずることで求めることができる。このとき、アルコールとしては、例えばエタノールなどを用いることができる。そして、嵩体積Hの値及び見掛けの体積Iの値に基づき、上記(式1)により空隙率を体積比率として算出する。各々のカットサンプルについて算出された空隙率の値を算術平均し、それを発泡粒子成形他の空隙率(体積%)とする。
【0043】
本実施形態の発泡粒子成形体2は、貫通孔22を有する発泡粒子20の融着体であり、上記のとおり空隙を有するため、後工程で、成形型内に芯材を配置し、型内にウレタン原液を注入して発泡させ、シート芯材1にウレタンフォームを積層する際に、貫通孔22を有する発泡粒子成形体2の空隙にウレタン原液を含浸させて発泡させることにより、シート芯材1とウレタンフォームとを一体化させることができる。
【0044】
上記のように形成したシート芯材1は、取り付ける自動車の車種や形状により、種々の設計がなされる。例えば、図1に示すシート芯材1の実施形態では、発泡粒子成形体2の上面部左方及び右方に各々1箇所ずつ座部となる凹部6が形成されている。また、シート芯材1の縁部の形状に応じて埋設する環状フレーム部材3の形状を設定することができる。例えば、図1図2の実施形態では、シート芯材1の後方側の肉抜き部2bに応じて環状フレーム部材3の後方側がクランク形状3cに形成されている。上記の凹部6や肉抜き部2bは、設置される車両の車体の構造に合わせて適宜設計することができる。
【0045】
また、シート芯材1の形状は、図1図3に示すように、乗員の大腿部が接する部分2aは厚みが厚く、臀部が接する凹部6は厚みが薄い成形体形状である。大腿部が接する部分2a及び臀部が接する凹部6の厚みは、座席の設計に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではないが、通常、臀部が接する凹部6のシート芯材1の厚みは0〜100mmであることが好ましく、5〜70mmであることがより好ましい。厚みが0mmとあるのは、一部に穴が設けられていてもよいためである。また、臀部が接する凹部6のシート部材の厚みと大腿部が接する部分2aの厚みの差は、車両が衝突した際の乗員の滑り出し防止のためには20〜200mmであることが好ましく、30〜170mmであることがより好ましい。
【0046】
なお、このようにシート芯材1の厚みに偏りがある場合、発泡粒子成形体2の4辺部分にわたって環状フレーム部材3を一体成形すると、補強部分が発泡粒子成形体2の厚み方向の中央部分に位置しない箇所や、厚み方向において上下のどちらかに偏った部位に配置されることがある。
【0047】
このような場合、環状フレーム部材3が存在する部分は環状フレーム部材3によって発泡粒子が拘束され、収縮量が小さくなる傾向にあるのに対し、環状フレーム部材3が存在しない部分は収縮量が大きくなる。例えば、発泡粒子成形体2の厚み方向において環状フレーム部材3が下面側に偏った位置に存在すると、発泡粒子成形体2の上面側の収縮量が大きくなってしまう。
【0048】
即ち、シート芯材1を形成する発泡粒子成形体2は、成形型から取り出した時点から収縮を開始し、発泡粒子成形体2に埋め込んだ環状フレーム部材3の位置によっては反りが発生する。例えば、環状フレーム部材3が発泡粒子成形体2の下面寄りに埋め込まれている場合には、環状フレーム部材3の上部の厚い部分である発泡粒子成形体2の上部2bの収縮量が、環状フレーム部材3の下部の厚みの薄い部分である発泡粒子成形体2の下部2cの収縮量に比べて大きいため、成形後に端部が上方に反り上がる場合がある。
【0049】
本発明のシート芯材1では、材料として上記の貫通孔22を有する発泡粒子を用いることにより、成形後の発泡粒子成形体2の収縮力を小さく抑制することができるが、上記のように環状フレーム部材3が埋設されていることに起因する発泡粒子成形体2の成形収縮時の不等収縮を緩和するために、発泡粒子成形体2にはスリットを形成している。スリット4の形状や形成箇所は、成形収縮による不等収縮を緩和することができれば限定されるものではなく、種々の形態に形成することができる。
【0050】
具体的には、例えば、図5に示すように、発泡粒子成形体2の上面(座面側)、又は上面及び下面(座面の反対側の面)から、厚み方向に、凹欠した少なくとも1本のスリット4を、該環状フレーム部材3が埋め込まれた箇所に、該環状フレーム部材3に交差して形成させることができる。該スリット4が形成されることにより、不等収縮によりかかる力が該スリット4を介して分断され、緩和されることになり、発泡粒子成形体2の変形量を低減させることができる。さらに、効率的に発泡粒子成形体2の変形量を低減させるためには、環状フレーム部材3に交差してスリット4を形成する。
【0051】
シート芯材1においては、環状フレーム部材3が発泡粒子成形体2の厚み方向の下面側に位置することが多いので、スリット4が少なくとも環状フレーム部材3の上面側の発泡粒子成形体2上面に形成されることが好ましい。
【0052】
また、本発明で発泡粒子成形体2に形成するスリット4の深さは、図6に示すように、発泡粒子成形体2の上面に形成したスリット4の底部から環状フレーム部材3までの厚み方向の長さ(a)(mm)と、下面から環状フレーム部材3までの厚み方向の長さ(b)(mm)が下式を満足することが好ましい。
|a−b|≦100mm・・・(1)
【0053】
即ち、発泡粒子成形体2の上面に形成したスリット4の底部から環状フレーム部材3までの厚み方向の長さ(a)(mm)と、下面から環状フレーム部材3までの厚み方向の長さ(b)(mm)との差を小さくすることにより、環状フレーム部材3の上面と下面とで異なっていた収縮によってかかる力の差を小さくすることができるので、発泡粒子成形体2の反りをより少なくすることができる。
【0054】
上記の観点から、好ましくは、
|a−b|≦80mm・・・(2)
であり、より好ましくは、
|a−b|≦60mm・・・(3)
であり、さらに好ましくは、
|a−b|≦40mm・・・(4)
である。
【0055】
一方、シート芯材1の厚みが厚い場合には、図7に示すように、発泡粒子成形体2の上面及び下面から環状フレーム部材3に向けてスリット4が形成されると、発泡粒子成形体2に生じる収縮量をさらにコントロールし易くなることから、発泡粒子成形体2の反りを低減させることが容易となる。
【0056】
この場合には、発泡粒子成形体2の上面に形成したスリット4の底部から環状フレーム部材3までの厚み方向の長さ(a)(mm)と、下面に形成したスリット4の底部から環状フレーム部材3までの厚み方向の長さ(c)(mm)が下式を満足することが好ましい。
|a−c|≦100mm・・・(5)
好ましくは、
|a−c|≦80mm・・・(6)
であり、より好ましくは、
|a−c|≦60mm・・・(7)
であり、さらに好ましくは、
|a−c|≦40mm・・・(8)
である。
【0057】
なお、発泡粒子成形体2の上面及び下面から環状フレーム部材3に向けてスリット4を形成する場合には、上面と下面のスリット4が一対の対向する位置に形成させることもできるが、例えば、上面に形成された2本のスリット4に対する中間に下面のスリット4が形成されてもよい。このような場合、前記長さ(a)と(c)は、隣接したスリット4間に対して上式を満足することが好ましい。
【0058】
前記スリット4を形成する方向は、前記環状フレーム部材3と交差するように、製造するシート芯材1の、形状や大きさに応じて適宜設定する。ここで交差とは、自動車用シート部材を上面から観察する二次元平面において、環状フレーム部材3がスリット4と交わって観察される状態のことを意味する。スリット4はシート芯材1の環状フレーム部材3に対して垂直方向に形成するのが好ましい。
【0059】
また、スリット4を形成する位置は、シート芯材1の長手方向の長さを等分する位置に形成するのが好ましく、シート部材の長手方向を2等分する位置に形成されてもよいが、さらにスリット4を多く形成させて、3等分する位置に、或いはそれ以上に等分する位置に形成してもよい。
【0060】
形成するスリット4の長さは、図5に示すように、環状フレーム部材3を矩形とした場合には、少なくとも環状フレーム部材3が埋め込まれた箇所の上面側に垂直方向にスリット4を形成することが好ましい。即ち、図5(c)に示すように環状フレーム部材3を2本跨ぐように長く形成してもよいし、図5(a)に示すように環状フレーム部材3を1本跨ぐように短く形成してもよい。上記の観点から、スリット4の長さは、環状フレーム部材3を跨いで50mm以上形成することが好ましく、100mm以上形成することがさらに好ましい。
【0061】
形成するスリット4の数は、製造するシート芯材1の形状や大きさに応じて適宜設定することができ、少なくとも1本、車幅が大きい自動車のシート芯材1の場合には図5(b)のように3本以上形成することもできる。
【0062】
また、本発明のシート芯材1に形成するスリット4においては、他の実施形態として、例えば、図8図10に示すような、発泡粒子成形体2に形成可能なスリット4を例示することができる。
【0063】
具体的には、例えば、環状フレーム部材3に近接する領域にスリット4を形成することができ、環状フレーム部材3の伸長方向と平行に環状フレーム部材3の近傍にスリット4を形成することができる。また、環状フレーム部材3の伸長方向と直交する方向にスリット4を形成することもできる。環状フレーム部材3に交差するスリット4を形成することもできる。さらに、車両の幅方向に伸びるスリット4や、車両の前後方向に伸びるスリット4を形成することができる。また、複数のスリット4を組み合わせることも可能である。なお、ここでいう平行や直交は、外観上全体として平行や直交であればよく、厳密な平行や直交から多少の傾きを有するものも含む。
【0064】
スリット4は、発泡粒子成形体2の厚み方向を貫通していてもよい。つまり、スリット4は、シート芯材1の発泡粒子成形体2の上面から下面までを厚み方向に貫通していてもよい。また、スリット4は、発泡粒子成形体2を厚み方向に貫通せず有底溝であってもよい。つまり、スリットは、貫通溝、有底溝を含む。
【0065】
以下、図8図10に示すスリット4の例についてさらに詳細に説明する。なお、図8(a)、図9(a)、図10(a)〜(e)においては、図の紙面における上部が後方側に相当し、下部が前方側に相当する。
【0066】
図8(a)及び図8(b)は、長手と短手を有する上面視略矩形状のシート芯材1の前後方向に伸びるスリット4dの実施形態を示している。スリット4dは、図8(a)に示すように、発泡粒子成形体2の前方から後方に向けて形成されており、シート芯材1の短手方向に沿って発泡粒子成形体2を分断している。つまり、スリット4dは、発泡粒子成形体2の前方端から後方端まで形成されている。このようなスリット4dは、環状フレーム部材3のうち車幅方向と平行に伸びる一対の辺(つまり、フロントフレーム部31、リアフレーム部32)と交差する。また、図8(b)に例示されるように、スリット4は、発泡粒子成形体2を厚み方向に貫通するように設けることができる。
なお、本実施形態では長手の略中央部から短手方向に沿って1本のスリットを設けているが、複数のスリットを設けることもできる。また、複数のスリットを設ける場合には、シート芯材1の長手方向を略等分する位置で短手方向に沿って複数設けることができる。
【0067】
図9(a)及び図9(b)は、シート芯材1の前後方向に伸びるスリット4eの実施形態を示している。スリット4eは、前後方向に伸びる点においては、上述のスリット4dと同様であるが、図9(b)に示すように発泡粒子成形体2を厚み方向に貫通していない。つまり、スリット4eは、上面から所定の深さまで形成された有底溝である。スリット4eは、図9(a)及び図9(b)に示すように、発泡粒子成形体2を厚み方向に貫通する貫通溝であっても、非貫通型の有底溝であってもよい。
【0068】
図8(a)及び図9(a)に示す実施形態によれば、シート芯材1の前後方向に伸びるスリット4d、4eは、発泡粒子成形体2の収縮力が幅方向に伝達することを緩和できる。これにより、シート芯材1の反りの発生をより抑制することができる。また、図9(b)に示す実施形態によれば、スリット4eのように、スリット4が有底溝の場合には、発泡粒子成形体2がスリット4によって分断されないため、シート芯材1としての一体感を失わずに反りを抑制することができる。
【0069】
図10(a)〜(e)にさらに異なるスリットの実施形態を示す。なお、図10(a)〜(e)に示す形状のスリット4は、発泡粒子成形体2を貫通する貫通型であってもよいし、非貫通型であってもよい。
【0070】
図10(a)は、車幅方向に伸びるスリット4fの実施形態を示している。このスリット4fの伸長方向の両端は、発泡粒子成形体2の側方の両端には至っておらず、両端よりも内側に形成されている。さらには、発泡粒子成形体2に埋設された環状フレーム部材3の内側に形成されている。つまり、スリット4fの伸長方向の両端は、各々環状フレーム部材3のサイドフレーム部33よりも内方の位置に形成されている。スリット4は、発泡粒子成形体2の後方側の領域に形成されている。スリット4は、環状フレーム部材3における車幅方向に伸びる後方の辺(つまり、リアフレーム部32)に沿って形成されており、この辺の近傍で、かつこの辺よりも内側(前方側)に形成されている。
【0071】
図10(b)は、車幅方向に伸びる複数のスリット4g、4h、4iの実施形態を示している。このように、スリット4を複数形成することも可能である。スリット4g、4hは、車幅方向に並列に形成されており、いずれも発泡粒子成形体2に埋設された環状フレーム部材3の内側に形成されている。また、スリット4g、4hは、いずれもシート芯材1の後方側の領域に形成されている。さらに、2つのスリット4g、4hの間にスリット4iを形成してもよい。2つのスリット4g、4hの間にスリット4iの中心が配置するようにスリット4iを形成することができる。図10(b)においては、スリット4iは、スリット4g、4hよりもさらに内側(つまり前方側)に形成されているが、後方側に形成してもよい。
【0072】
図10(c)は、車幅方向に伸びると共に、両端が環状フレーム部材3の外側まで到達したスリット4jの実施形態を示している。このスリット4jの伸長方向の両端は、発泡粒子成形体2の側方の両端には至っておらず、両端よりも内側に形成されている。しかし、図10(a)に示すスリット4fに比べて、スリット4jは、両端が車幅方向に延長されており、発泡粒子成形体2に埋設された環状フレーム部材3の外側に至る。スリット4jは、発泡粒子成形体2の後方側の領域に形成されており、前後方向については環状フレーム部材3の内側に形成されている。
【0073】
環状フレーム部材3が環状ワイヤフレーム部材であり、環状ワイヤーフレームの剛性が低いと、環状フレーム部材3のリアフレーム部32の中央部分が、厚みの厚い部分の収縮により前方に引張られやすくなり、環状フレーム部材3が歪んでしまい、その結果、シート芯材1が反りやすくなる。また、特に環状フレーム部材3のリアフレーム部32側が、図2に示すようなクランク形状であると、リアフレーム部32の剛性が低くくなるため、発泡粒子成形体2の収縮により、発泡粒子成形体2でリアフレーム部32の幅方向中央部が内方側に引張られやすくなる。そのため、環状フレーム部材3自体に大きな歪みが生じ、シート芯材1の反りがより大きくなる傾向にある。そこで、図10(a)〜図10(c)に示すように、幅方向に伸びるスリット4を発泡粒子成形体2に形成することにより、発泡粒子成形体2の収縮が前後方向に伝達することを緩和できる。これにより、シート芯材1の反りの発生をより抑制することができる。また、図示しないが、上記スリット4f〜4jは、環状フレーム部材3の内側であれば、前後方向については発泡粒子成形体2の前方側の領域に形成されていてもよい。
【0074】
図10(d)は、シート芯材1の前後方向に伸びる2のスリット4k、4lの実施形態を示している。これらのスリット4k、4lの伸長方向の両端は、発泡粒子成形体2の前後方向の両端には至っておらず、両端よりも内側に形成されている。さらには、発泡粒子成形体2に埋設された環状フレーム部材3の内側に形成されている。つまり、スリット4k、4lの伸長方向の両端は、各々フロントフレーム部31、リアフレーム部32よりも内方の位置に形成されている。環状フレーム部材3の内側において、スリット4k4lは、環状フレーム部材3の前後方向に伸びる側方の辺(サイドフレーム部33)に沿って形成されている。
【0075】
また、シート芯材1は、発泡粒子成形体2の収縮により、発泡粒子成形体2でサイドフレーム部33の中央部分が内方に引張られて、環状フレーム部材3が歪んでしまい、その結果、シート芯材1が反りやすくなる場合がある。さらに、上述したように、環状フレーム部材3のリアフレーム部32側の剛性が低いと、発泡粒子成形体2の収縮により、発泡粒子成形体2でリアフレーム部32の幅方向中央部が内方側に引張られやすくなる。そのため、サイドフレーム部33が内方に引張られると共に、リアフレーム33も内方に引張られるため、環状フレーム部材3の歪みがより大きくなるため、シート芯材1の反りが特に大きくなる場合がある。このような場合、図10(d)に示すように、前後方向に伸びるスリット4k、4lを側方に形成することにより、発泡粒子成形体2の収縮力のサイドフレーム部33への影響を緩和できる。これにより、シート芯材1の反りの発生をより抑制することができる。また、図示しないが、スリット4k、4lと、上記のスリット4g、4hを組合せてもよい。
【0076】
図10(e)は、前後方向及び車幅方向に各々伸びると共に互いに交差する2つのスリット4m、4nの実施形態を示している。スリット4mは、図9(a)及び図9(a)に示すスリットと同様に発泡粒子成形体2の前方から後方に向けて形成されており、発泡粒子成形体2を分断している。つまり、スリット4mは、発泡粒子成形体2の前方の端部から後方の端部まで形成されている。スリット4nは、発泡粒子成形体2の車幅方向に伸びるように形成されている。スリット4nの両端は、発泡粒子成形体2の側方の両端に到達し、発泡粒子成形体2を分断している。スリット4nは、前後方向における後方寄りに形成されている。スリット4mとスリット4nとは互いに交差する。
【0077】
図10(e)に示すように、前後方向及び車幅方向に各々伸びると共に互いに交差する2つのスリット4を形成すると、発泡粒子成形体2の収縮力が前後方向及び車幅方向に伝達することを緩和できる。これにより、シート芯材1の反りの発生をより抑制することができる。
【0078】
また、本発明のシート芯材1では、上記の実施形態のほか、発泡粒子成形体2が1又は2以上の連結部を残して、シート芯材1の短手方向に沿って分断されるように設けることもできる。また、連結部は、発泡粒子成形体2の成形収縮による相対移動を許すように可変可能に形成することが好ましい。
【0079】
具体的には、発泡粒子成形体2は、発泡粒子成形体2を連結部と交差する方向に複数の発泡粒子成形体2に離隔する1つ以上の継手構成部を設け、継手構成部は、隣接する2つの発泡粒子成形体部分26、27を連結する単数又は複数の継手部5により構成されているとともに、継手部の各々は、発泡粒子成形体2が収縮もしくは膨張したときに、隣接する2つの発泡粒子成形体部分26、27の間の相対移動を許すように変形可能に形成することができる。
【0080】
単数の継手構成部28の発泡粒子成形体2に対する配設形態の例としては、図11に示すように、継手構成部28が長手方向Lに1か所で、かつ短手方向Sの両端にわたって形成している実施形態や、図15に示すように、継手構成部28が短手方向Sに1か所で、かつ長手方向Lの両端にわたって形成している実施形態が例示される。また、複数の継手構成部28の発泡粒子成形体2に対する配設形態の例としては、図14(a)に示すように、長手方向Lに2か所で、かつ短手方向Sの両端にわたって形成している実施形態や、図14(b)に示すように、長手方向Lに1か所で、かつ短手方向Sの両端に各々形成している実施形態や、長手方向L又は短手方向Sに離隔状態の発泡粒子成形体部分26、27を断続的に複数設けた継手部5を有する継手型構造部28にて連結する実施形態等が例示される。継手型構造部28の発泡粒子成形体2に対する配設形態は、環状フレーム部材3の連結部23と交差する任意の位置に配置され、継手型構造部28が曲げ変形可能となる配設形態であればいずれの実施形態であってもよい。
【0081】
以下に、継手構成部28の構成について説明する。継手構成部28は、図12図13図16図19に示すように、継手構成部28の両側の発泡粒子成形体部分26、27同士を連結する継手部5を構成している。前記継手部5は、図12等に示すように、発泡粒子成形体部分26、27との各々の連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向Sおよび厚み方向Tの少なくともいずれかでずれた状態で連結し又は、図13等に示すように、前記連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させて前記継手部5自体を屈曲形体としていることが好ましい。また、図示のように、継手部5の両側には継手部5を曲げ変形可能にするためのスリット4又はスリット4aが設けられていることが好ましい。
【0082】
隣接する2つの発泡粒子成形体部分26、27との各々の連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S又は厚み方向Tでずれた状態で連結させたり、前記連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させている場合は、前記継手部5自体を屈曲形体とすることにより、継手部5を曲げ変形させることができる。発泡粒子成形体2が不等収縮等によって伸縮する際、継手部5が柔軟に曲げ変形することによって伸縮を吸収する。このことにより発泡粒子成形体2全体が伸縮により反る等の変形を起こすことを防止できる。
【0083】
また、好ましい態様として、継手構成部28の継手部5の両側の連結部位Kは、継手部5のみで発泡粒子成形体部分26、27と連結させて両側の発泡粒子成形体部分26、27同士を直接連結させないようにするために、例えば、図14(b)に示すように、長手方向Lに対する前記継手構成部28の範囲であって短手方向Sで継手部5が存在しない範囲には両側の発泡粒子成形体部分26、27同士を離隔させるためのスリット4を設けている。
【0084】
継手部5の実施形態の例を、継手部5と両側の発泡粒子成形体部分26、27との連結部位Kの実施形態別に説明する。継手部5の実施形態は、継手部5の発泡粒子成形体部材26、27との厚み関係、連結部位Kの長手方向L、短手方向S又は厚み方向Tの位置関係によって異なる。
【0085】
まず、図12図13図16に示すように、継手部5の厚みが発泡粒子成形体部分26、27の厚みと同じ場合と、図17図19に示すように、継手部5の厚みを発泡粒子成形体部分26、27の厚みより薄くして異なる場合とがある。
【0086】
継手部5の厚みが発泡粒子成形体部分26、27の厚みと同じ場合で、連結部位Kを長手方向L又は短手方向Sでずらした継手部5の実施形態は、例えば、図12に示すように連結部位Kを短手方向Sでずらしてスリット4aを両側に配設した実施形態、図16(a)に示すように図12に示す継手部5を変形させて連結部位Kを短手方向Sでずらしてスリット4aを両側に配設した実施形態、図16(c)に示すように連結部位Kを短手方向Sでずらした継手部5をX字型に形成してスリット4aとスリット4とを両側に配設した実施形態がある。これらの実施形態は例であって、継手部5の実施形態は長手方向及び/又は短手方向に曲げ変形可能な実施形態であればよい。
【0087】
次に、継手部5の厚みが発泡粒子成形体部分26、27の厚みと同じ場合で、連結部位Kを長手方向L及び短手方向S及び厚み方向Tで正対させている継手部5の実施形態は、例えば、図13に示すように連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで一致させて平面視で屈曲部を設けて略U字型としスリット4aを両側に配設した実施形態、図16(b)に示すように連結部位Kの位置を長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで一致させて平面視で屈曲部を設けて略V字型としスリット4aを両側に配設した実施形態がある。これらの実施形態は例であって、継手部5の実施形態は長手方向及び/又は短手方向に曲げ変形可能な実施形態であればよい。
【0088】
次に、継手部5の厚みが発泡粒子成形体部分26、27の厚みと異なる場合で、連結部位Kを長手方向L、短手方向S又は厚み方向Tでずらした継手部5の実施形態は、例えば、図18に示すように継手部5の厚みを発泡粒子成形体部分26、27の厚みより薄くし、連結部位Kを短手方向S及び厚み方向Tでずらしてスリット4aを両側に配設した実施形態、図19に示すように継手部5の厚みを発泡粒子成形体部分26、27の厚みより薄くし、連結部位Kを発泡粒子成形体部材26の方を2ケ所とし発泡粒子成形体部材27の方を1か所とした平面視略V字型とし、連結部位Kを短手方向S及び厚み方向Tでずらして、スリット4aとスリット4とを両側に各々配設した実施形態がある。これらの実施形態は例であって、継手部5の実施形態は長手方向及び/又は短手方向に曲げ変形可能な実施形態であればよい。
【0089】
次に、継手部5の厚みが発泡粒子成形体部分26、27の厚みと異なる場合で、連結部位Kを長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させている継手部5の実施形態は、例えば、図17に示すように継手部5の厚みを発泡粒子成形体部分26、27の厚みより薄くし、連結部位Kを長手方向L、短手方向S及び厚み方向Tで正対させて、平面視で屈曲部を設けて略V字型としスリット4aを両側に配設した実施形態がある。これらの実施形態は例であって、継手部5の実施形態は長手方向及び/又は短手方向に曲げ変形可能な実施形態であればよい。
【0090】
次に、前記継手型構造部28の継手部5の曲げ変形について図12又は図13で説明する。図12(a)及び図13(a)に発泡粒子成形体2からなる発泡粒子成形体部分26、27の設計時の実施形態を示し、図12(b)及び図13(b)に発泡粒子成形体2からなる発泡粒子成形体部分26、27が寸法的に拡張してきた場合の継手部5の曲げ変形状態を示し、図12(c)及び図13(c)に発泡粒子成形体2からなる発泡粒子成形体部分26、27が寸法的に縮小してきた場合の継手部5の曲げ変形状態を示している。このように、継手部5の曲げ変形によって、発泡粒子成形体2からなる発泡粒子成形体部分26、27の拡張又は縮小を寸法的に吸収することができる。これにより、発泡粒子成形体部分26、27の変形を防ぐことができ、発泡粒子成形体2からなる長尺発泡部品1の寸法精度を安定化させることができる。
【0091】
なお、本実施形態のシート芯材1に形成するスリット4は、成形装置により成形したシート芯材1を成形型から取り出してから反りが発生するまでに、できる限り速やかに形成する必要がある。そのため、成形型から取り出してから予め設定した場所及び深さでカッターや熱線などにより切り込みを入れることができる。また、スリット4の形成は、前記カッター等による切り込みの他、予め金型内にスリット4を形成するための突条を形成させておいてもよい。また、形成されるスリット4の幅は、0.1〜20mmであることが好ましく、0.2〜10mmであることがより好ましい。
【0092】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、スリット4の形成パターンは1種類に限定されるものではなく、2種類のスリットの形成パターンを組み合わせて形成することができる。また、シート芯材1の設計に応じて前後、左右で非対称となるように形成することもできる。
【0093】
シート芯材1の形状、寸法は、搭載する車両に応じて適宜変形可能であるが、シート芯材1が車両の後部座席用のシート芯材である場合、シート芯材の形状は、上面視略矩形状であり、その長手方向の長さは1000〜1500mm、短手方向の長さは400〜700mm程度に調整される。また、シート芯材1の厚みは5〜300mm程度とすることができ、必ずしも均一な厚みである必要はない。なお、厚みとは車体にシート芯材1を取り付けた状態における上下方向の長さを意味する。
【0094】
本発明のシート芯材1によれば、発泡粒子成形体2が、貫通孔22を有する発泡粒子20(21)の融着体とすることにより、成形後の発泡粒子成形体2の収縮力が小さく、さらに、発泡粒子成形体2にスリット4を形成することにより、発泡粒子成形体2の収縮力が分断され、より反りが抑制され、寸法制度に優れたシート芯材1とすることができる。
【0095】
また、発泡粒子成形体2が貫通孔22を有する発泡粒子20(22)の融着体であるため、後工程で、成形型内に芯材を配置し、型内にウレタン原液を注入して発泡させ、シート芯材1にウレタンフォームを積層する際に、発泡粒子成形体2の空隙にウレタン原液を含浸させて発泡させることにより、シート芯材1との接着性が悪いウレタンフォームとを強固に一体化させることが可能となる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例により本発明のシート芯材についてさらに詳しく説明するが、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
成形装置を使用し、発泡粒子成形体と環状フレーム部材とを一体化させてなる実施例1のシート芯材を製造した。
原料の発泡粒子として、発泡状態の貫通孔を有する円筒状の芯層と、該芯層の周側面を被覆する非発泡状態の被覆層とからなる鞘芯構造の多層発泡粒子を用いた。芯層は、融点142℃のポリプロピレン系樹脂から形成されており、被覆層は、融点127℃のポリプロピレン系樹脂から形成されていた。芯層と被覆層との質量比は95:5であった。発泡粒子の嵩密度は、25kg/m、平均粒子質量は1.5mg、貫通孔の平均径は1.9mm、平均L/D=0.8であった。
【0098】
環状フレーム部材は、太さ4.5mmの金属性の環状ワイヤーフレーム部材であり、図2及び図3に示すような、上面視外形略矩形状で、最大長手寸法1040mm、最大短手寸法430mmで、側面視前後方向中央部付近で屈曲し、前方部と後方部との段差が30mmであり、後方部に2箇所の屈曲部を有していた。
【0099】
そして、上記の環状フレーム部材を配設した成形金型内に上記の発泡粒子を充填し、スチーム加熱による型内成形を行い、発泡粒子成形体と環状フレーム部材とを一体化させてなるシート芯材を得た。得られたシート芯材は、上面視略矩形状のもので、その長手方向に並んで2個の乗員着座部となる凹み部が形成されている。また、環状フレーム部材のクランク形状3cに合わせて後方に肉抜き部2bが形成されたものである。
【0100】
次いで、該シート芯材1を金型から取り出した直後(180秒以内)に、カッターナイフを用いて、図2に示すように、スリット40、スリット41、スリット42及びスリット43を形成した。スリット40は、長手略中央部に短手方向に沿って表面側(座面側)から環状フレーム部材の上10mmの深さまで形成した。
【0101】
また、スリット41、42は、上記乗員着座部の前方及び側方に埋め込まれた環状フレーム部材3の内方位置に、該環状フレーム部材3に沿って裏面側(座面の反対側)から表面側の厚み15mmを残して略L状に左右対称に形成した。略L状の長手方向の片42及び短手方向の片41の長さは、発泡粒子成形体2の長手方向の長さを100%としたとき、略L状のスリットの長手方向の片42はその29%にわたる範囲で形成し、発泡粒子成形体2の短手方向の長さを100%としたとき、略L状のスリットの短手方向の片41はその44%にわたる範囲で形成した。
【0102】
スリット43は、上記厚肉部であって環状フレーム部材3が埋め込まれている位置で、該環状フレーム部材3に交差する位置に左右対称に形成した。また、スリット43の深さは、表面側(座面側)から環状フレーム部材3の上10mmの深さで形成し、長さは、環状フレーム部材3を跨いで200mmの長さで形成した。
【0103】
複合成形体に上記スリットを形成した後、60℃の雰囲気で12時間養生を行ない、さらに23℃の雰囲気で1週間養生を行なった。養生後のシート芯材の長手方向の最大長さは1210mmであり、短手方向の最大長さは500mmであり、上記凹み部の厚みは20〜25mmであり、前方と両側方に存在する厚肉部の厚みは130〜140mmであった。また、養生後の発泡粒子成形体部分の嵩密度は25kg/mであり、空隙率は30体積%であった。
【0104】
得られたシート芯材の成形体の嵩密度及び空隙率を以下の方法で測定した。養生後の発泡粒子成形体2から無作為に選択された10か所において、25mm×25mm×100mmの直方体状のカットサンプルを切り出した。上記カットサンプルは、スキン面を有しないよう切り出した。その外形寸法からカットサンプルの嵩体積V(cm)を算出するとともに、カットサンプルの質量(g)をそれぞれ測定した。そして、カットサンプルの嵩体積V(cm)でカットサンプルの質量M(g)を除することによりM/Vを算出し、カットサンプルごとに算出されたM/Vの値を算術平均し、発泡粒子成形体2の嵩密度とした。また、カットサンプルをエタノール中に沈めた時の、エタノールとカットサンプルとの合計体積から、カットサンプルをエタノール中に沈める前のエタノールの体積を減ずることでカットサンプルの空隙部を除いた体積I(cm)を求めた。そして、体積H(=体積V)の値及び体積Iの値に基づき、下記(式1)により空隙率を体積比率として算出し、カットサンプルごとに算出された空隙率の値を算術平均し、発泡粒子成形体2の空隙率とした。
空隙率(体積%)=[(H−I)/H]×100 ・・・(式1)
上記の方法で求めたシート芯材の嵩密度及び空隙率を表1に示す。
【0105】
(比較例1)
原料の発泡粒子として、貫通孔を有さないポリプロピレン系樹脂発泡粒子(嵩密度25kg/m、平均粒子質量1mg、L/D=1.0)を用いて、スリットを形成しなかった以外は実施例1と同様の条件で比較例1のシート芯材を成形した。
(比較例2)
原料の発泡粒子として、貫通孔を有さないポリプロピレン系樹脂発泡粒子(嵩密度25kg/m、平均粒子質量1mg、L/D=1.0)を用いた以外は実施例1と同様の条件で比較例2のシート芯材を製造した。
【0106】
(反りの測定方法)
上記の条件で製造した実施例1、比較例1、2のシート芯材について、座面側を上にして検査治具上に載置し、図2に示したA〜Dの位置において、基準位置からの変位量(mm)を測定した。なお、基準位置よりも高くなっている場合を「+」、低くなっている場合を「−」とした。実施例、比較例1、2の各々の測定結果の算術平均値を、表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1より、原料として芯層に貫通孔を有する多層発泡粒子を用いて成形した実施例1は、原料として、貫通孔を有さない発泡粒子を用いた比較例1、2に比べて製品の変形量が小さく、発泡粒子成形体の反りが低減されており、品質が優れていることがわかった。また、スリットを設けなかった比較例1はスリットを設けた実施例1、比較例2と比べても反りが大きく品質が劣っていることがわかった。
【0109】
上記の結果から、本発明のシート芯材は、貫通孔を有する発泡粒子を用いて、特定の条件でスリットを形成することにより、軽量で、反りが少なく商品価値の極めて優れたシート芯材であることが確認された。
【符号の説明】
【0110】
1 車両用シートクッション芯材
2 熱可塑性樹脂発泡粒子成形体
20 可塑性樹脂発泡粒子(単層)
21 可塑性樹脂発泡粒子(多層)
3 環状フレーム部材
4 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図18
図19