(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899701
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】レンズユニット、カメラモジュールおよび第1レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20210628BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20210628BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G02B1/18
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-102760(P2017-102760)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-197821(P2018-197821A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】317015179
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 章
(72)【発明者】
【氏名】馬場 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】杉目 孝行
(72)【発明者】
【氏名】中山 修
【審査官】
▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−148276(JP,A)
【文献】
特開2009−265473(JP,A)
【文献】
特開2017−068070(JP,A)
【文献】
特開2015−018106(JP,A)
【文献】
特開2015−035722(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/167574(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 1/10
G02B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられたレンズ群と、このレンズ群が収納される鏡筒とを備えるレンズユニットであって、
前記レンズ群の最も物体側の第1レンズは、前記鏡筒の物体側の端部に設けられたカシメ部によってカシメられて前記鏡筒の端部に固定され、
前記第1レンズの物体側のレンズ面の全体に撥水膜が設けられ、
前記撥水膜の表面のうち、前記撥水膜の外周縁から少なくとも前記カシメ部が接触する接触外周縁部を超えて、前記接触外周縁部より径方向内側の表面に、円環状の親水膜が設けられていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記接触外周縁部より径方向内側における前記レンズ面の径方向の半径を露出半径とすると、
前記親水膜は前記接触外周縁部より径方向内側に前記露出半径の5%以上の長さで設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレンズユニットを備えていることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項4】
鏡筒の物体側の端部に設けられたカシメ部によって前記鏡筒の物体側の端部に固定され、かつ物体側を向くレンズ面に膜が設けられた第1レンズの製造方法であって、
レンズ面全体に撥水膜が設けられたレンズ本体を用意するとともに、
前記レンズ本体の前記レンズ面と対向する面を固定する固定面と、
前記レンズ面に設けられた前記撥水膜の外周縁部を除く中央部表面に密着して当該中央部表面を覆うマスク面と、を備えたレンズホルダを用意し、
前記レンズホルダの内部には、親水膜を形成すべき形成面を露出させるための空洞部が設けられ、当該空洞部は前記レンズホルダの外部と連通しており、
前記レンズ面に前記撥水膜が設けられた前記レンズ本体を前記レンズホルダに固定するに際し、
前記マスク面を、前記撥水膜の外周縁部を除く中央部表面である、前記親水膜を形成しない非形成面に密着させるとともに、前記レンズ面と対向する面を前記固定面に固定し、
次に、前記レンズ本体が固定された前記レンズホルダを、アクリル系ポリマー液からなる塗料が充填された容器に浸漬して、前記レンズホルダの前記空洞部を前記塗料によって充満することによって、前記空洞部に露出している前記形成面に前記塗料を付着させ、
次に、前記容器から前記レンズホルダを取り出して熱処理を施すことによって、前記形成面にアクリル系ポリマーからなる親水膜を形成し、
前記親水膜は前記撥水膜の表面に、当該撥水膜の外周縁から少なくとも前記カシメ部が接触する接触外周縁部を超えて円環状に設けられており、
最後に前記レンズホルダから前記レンズ本体を取り出すことを特徴とする第1レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載される車載カメラに設けられる膜付きレンズ、レンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行われており、さらに自動運転への応用が試みられている。
このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般的に、複数のレンズが光軸に沿って並べられた複数のレンズからなるレンズ群と、このレンズ群が収容される鏡筒と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備えている。
【0003】
従来のレンズユニットの一例として、特許文献1に記載のものが知られている。このレンズユニットにおいては、4枚のレンズが、鏡筒に光軸方向をそれぞれ揃えて一列に並べられた状態に保持されている。
このようなレンズユニットは、車載カメラに使用された場合、雨天時に鏡筒から露出するレンズ面に水滴が付着する場合がある。このようなレンズ面に付着する水滴は画像劣化の要因となるため、水滴付着防止のために例えば、鏡筒から露出するレンズ面(最も物体側に位置する物体側レンズのレンズ面)に撥水膜を設けることによって、レンズ面に付着した水滴を、当該レンズ面の撥水膜上を外周側に向けて流し、レンズ面に付着した水滴がその場所に留まらないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−231993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記鏡筒の最も物体側に位置するレンズ(物体側レンズ)は、鏡筒の物体側の端部をカシメてなるカシメ部(固定部)によって鏡筒の物体側の端部に固定されているので、レンズ面の外周縁部にはカシメ部が接触している。このため、このカシメ部とレンズ面の外周縁部との間に段差が生じ、この段差に撥水膜上を外周側に向けて流れてきた水滴が溜まってしまい、視認性を低下させるという問題があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、レンズ面を外周側に向けて流れてきた水滴の滞留を防止することで、視認性の低下を防止できる膜付きレンズ、レンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の膜付きレンズは、鏡筒の物体側の端部に設けられた固定部によって前記鏡筒の物体側の端部に固定され、かつ物体側を向くレンズ面に膜が設けられた膜付きレンズであって、
前記レンズ面の全体に撥水膜が設けられ、
前記撥水膜の表面のうち、少なくとも前記固定部が接触する接触外周縁部より径方向内側の表面に親水膜が設けられていることを特徴とする。
【0008】
ここで、撥水膜とは撥水性を有する薄膜のことであり、撥水膜に対する水滴の接触角が90度以上となるものをいう。
また、親水膜とは親水性を有する薄膜のことであり、親水膜に対する水滴の接触角が40度以下となるものをいう。
接触角の測定は、静滴法(A・half−angle・Method)を用いるものとし、膜の形成されたレンズ面に、レンズ面の影響を受けにくいように2.5マイクロリットルの水滴を滴下し、液滴の左右端点を結ぶ曲面は直線と見做して、水滴の接触角を測定するものとする。
また、親水膜は撥水膜の少なくとも前記固定部が接触する接触外周縁部より径方向内側の表面に設ければよいため、親水膜は撥水膜の表面全体に設けてもよいし、前記接触外周縁部を含み、かつ接触外周縁部より径方向内側の表面に設けてもよい。さらに、親水膜は撥水膜の径方向中央部には設けなくてもよい。
【0009】
本発明においては、撥水膜の表面のうち、少なくとも前記固定部が接触する接触外周縁部より径方向内側の表面に親水膜が設けられているので、撥水膜上を外周側に向けて流れてきた水滴は、接触外周縁部より径方向内側の表面に設けられている親水膜上を拡がって薄い水膜となり、固定部とレンズ面の外周縁部との間に生じている段差に水滴として滞留することがない。したがって、レンズ面上の撥水膜の表面を外周側に向けて流れてきた水滴の滞留を防止できるので、視認性の低下を防止できる。
【0010】
また、本発明の前記構成において、前記接触外周縁部より径方向内側における前記レンズ面の径方向の半径を露出半径とすると、
前記親水膜は前記接触外周縁部より径方向内側に前記露出半径の5%以上の長さで設けられていてもよい。
【0011】
このような構成によれば、撥水膜の表面を外周側に向けて流れてきた水滴が段差に水滴として滞留するのをより効果的に防止できる。
【0012】
また、本発明に係るレンズユニットは、複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられたレンズ群と、このレンズ群が収納される鏡筒とを備えるレンズユニットであって、
前記鏡筒の物体側の開口部に前記膜付きレンズが設けられ、前記鏡筒の物体側の端部に設けられた固定部によって、前記膜付きレンズが前記鏡筒の端部に固定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、固定部と膜付きレンズのレンズ面の外周縁部との間に生じている段差に撥水膜の表面を外周側に向けて流れてきた水滴は、接触外周縁部より径方向内側の表面に設けられている親水膜上を拡がって薄い水膜となり、段差に水滴として滞留することがない。したがって、レンズ面上の撥水膜の表面を外周側に向けて流れてきた水滴の滞留を防止できるので、視認性の低下を防止できる。
【0014】
また、本発明に係るカメラモジュールは、前記レンズユニットを備えていることを特徴とする。
このような構成によれば、上述のレンズユニットの作用効果をカメラモジュールで得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、撥水膜上を外周側に向けて流れてきた水滴は、接触外周縁部より径方向内側の表面に設けられている親水膜上を拡がり水滴として滞留することがない。したがって、レンズ面を外周側に向けて流れてきた水滴の滞留を防止できるので、視認性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るレンズユニットを示すもので、その概略断面図である。
【
図4】本実施の形態に係る膜付きレンズの製造方法を説明するための工程図である、(a)はレンズホルダにレンズ本体を固定した状態を示す図、(b)アクリル系ポリマー液が充填された容器にレンズホルダを浸漬した状態を示す図、(c)は容器からレンズホルダを取り出した状態を示す図、(d)は膜付きレンズユニットの概略構成を示す図である。
【
図5】本発明に実施の形態に係るカメラモジュールを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態のレンズユニットは、車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。
なお、
図1、
図3および
図5において複数のレンズ部材についてはハッチングを省略するとともに、それらの一部を破断している。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態のレンズユニット11は、円筒状の鏡筒12と、鏡筒12内に配置される複数(例えば、4つ)のレンズ13,14,15,18と、2つの絞り部材22a,22bとを備えている。このレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0019】
鏡筒12に固定されて支持されている複数のレンズ13,14,15,18は、それぞれの光軸を一致させた状態に配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,18が並べられた状態となって、撮像に用いられる1群のレンズ群を構成している。また、レンズ18は、貼合わせレンズ18であり、レンズ16とレンズ17が接着剤によって貼合された状態となっている。また、レンズ13は後述するように膜付きレンズ13となっている。なお、以下ではレンズ13を膜付きレンズ13と称する場合もある。
【0020】
2つの絞り部材22a,22bのうちの物体側から1番目の絞り部材22aは、物体側から2番目のレンズ14と3番目のレンズ15との間に配置されている。物体側から2番目の絞り部材22bは、物体側から3番目のレンズ15と4番目のレンズ16との間に配置されている。絞り部材22a,22bは透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。
【0021】
鏡筒12の物体側の端部(
図1において上端部)には、当該端部を内径側にカシメてなるカシメ部(固定部)23が設けられており、このカシメ部23によって膜付きレンズ13が鏡筒12の物体側の端部に固定されている。なお、膜付きレンズ13の膜以外のレンズ本体はガラスレンズであるが、樹脂レンズであってもよい。
また、鏡筒12の像面側の端部(
図1において下端部)には、貼合わせレンズ18より径の小さい開口部を有するフランジ部24が設けられている。このフランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群を構成する複数のレンズ13、14、15、18と絞り部材22a,22bが保持されている。なお、膜付きレンズ13を固定する場合、カシメ部23に限ることなく、鏡筒12にレンズ13,14,15,18を収納した後に鏡筒12の物体側の端部に取り付けられる固定部であってもよい。
【0022】
最も物体側の膜付きレンズ13の外周面には、当該膜付きレンズ13の像面側部分に径が小さくなった縮径部が設けられ、当該縮径部にシール部材としてのOリング26が設けられ、膜付きレンズ13の外周面と鏡筒12の内周面との間を、鏡筒12の物体側端部で封止した状態となっている。これにより、レンズユニット11の物体側の端部から鏡筒12内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。なお、鏡筒12の内部には物体側において円筒状の内壁12bが設けられ、この内壁12bと外壁12aとの間に環状体27が設けられ、この環状体27にOリング26が密接している。
【0023】
鏡筒12は、その内径が物体側から像面側に向かって段階的に小さくなっている。これに対応して、レンズ13,14,15,18は、物体側から像面側に向かうにつれて、外径が小さくなっている。基本的にレンズ13,14,15,18それぞれの外径と、鏡筒12の各レンズ13,14,15,18が支持される部分それぞれの内径とは略等しくなっている。なお、鏡筒12の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられるフランジ部25が鏡筒12の外周面に鍔状に設けられている。
【0024】
また、
図1〜
図3に示すように、膜付きレンズ13の物体側を向くレンズ面13aは断面視において物体側に凸の円弧面状に形成されており、当該レンズ面13aには、その全体に図示しない反射防止膜(ARコーティング)が設けられている。さらにその反射防止膜上に撥水膜20が蒸着によって設けられている。撥水膜20はフッ素樹脂によって形成され、膜厚は2〜200nmに設定されているが、本実施の形態では20nm程度となっている。
【0025】
撥水膜20の表面のうち、少なくとも前記カシメ部23が接触する接触外周縁部20aより径方向内側の表面に親水膜21が塗装により設けられている。具体的には、
図1および
図2に示すように、接触外周縁部20aより径方向内側におけるレンズ面13aの径方向の半径を露出半径rとすると、親水膜21は接触外周縁部20aより径方向内側に露出半径rの5%以上の長さLで設けられている。本実施の形態では、親水膜21はレンズ面13aの外周縁から接触外周縁部20aおよびカシメ部23の先端縁23aを超え、当該先端縁23aから径方向内側にLの長さだけ延在している。
親水膜21はアクリル系ポリマーによって形成され、膜厚は2〜200nmに設定されているが、本実施の形態では撥水膜20と同厚の20nm程度となっている。
【0026】
膜付きレンズ13の親水膜21は例えば以下のようにして形成すればよい。
すなわちまず、
図4(a)に示すように、レンズ面13aに図示しない反射防止膜と撥水膜20が設けられたレンズ本体13Aを膜形成用のレンズホルダ30に取り付ける。なお、レンズ本体13Aはデフォルメして記載している。
レンズホルダ30は、レンズ本体13Aのレンズ面13aと対向する面を固定する固定面30aと、この固定面30aに固定されたレンズ本体13Aのレンズ面13a上の撥水膜20の外周縁部を除く中央部表面に密着して当該中央部表面を覆うマスク面30bを有する支持部30cとを備えている。
マスク面30bは撥水膜20の表面のうち親水膜21を形成しない非形成面に密着している。親水膜21を形成すべき形成面は撥水膜20の表面の外周縁部の略リング状の面であり、この形成面より径方向内側の面(非形成面)にマスク面30bが密着している。
また、レンズホルダ30の内部には親水膜21を形成すべき形成面を露出させるための空洞部30d,30dが設けられており、当該空洞部30d,30dはレンズホルダ30の外部と連通している。
【0027】
次に、
図4(b)に示すように、レンズ本体13Aが固定されたレンズホルダ30を、アクリル系ポリマー液からなる塗料PLが充填された容器31に浸漬する。これによって、レンズホルダ30の空洞部30d,30dが塗料PLによって充満され、空洞部30d,30dに露出している前記形成面に塗料PLが付着する。
そして、レンズホルダ30を所定時間、容器31に浸漬した後、
図4(c)に示すように、この容器31からレンズホルダ30を取り出し熱処理を施す。これによって、前記形成面にアクリル系ポリマーからなる親水膜21が形成される。
最後に、
図4(d)に示すように、レンズホルダ30からレンズ本体13Aを取り出すことによって、膜付きレンズ13を得ることができる。
【0028】
図5は、本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。
図5に示すように、カメラモジュール300は、フィルタ100が装着されたレンズユニット11を含んで構成されている。
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(フランジ、台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0029】
上ケース301は、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面との間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0030】
パッケージセンサ304は、上ケース301の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成された物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光して到達した光を電気信号に変換する。変換された電気信号はカメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0031】
以上のように本実施の形態によれば、
図3に示すように、撥水膜20の表面のうち、少なくともカシメ部23が接触する接触外周縁部20aより径方向内側の表面に親水膜21が設けられているので、撥水膜20上を外周側に向けて流れてきた水滴wdは、接触外周縁部20aより径方向内側の表面に設けられている親水膜21上を拡がって薄い水膜wfとなり、カシメ部23とレンズ面13aの外周縁部との間に生じている段差に水滴wdとして滞留することがない。したがって、レンズ面13a上の撥水膜20の表面を外周側に向けて流れてきた水滴wdの滞留を防止できるので、視認性の低下を防止できる。
【0032】
また、接触外周縁部20aより径方向内側におけるレンズ面13aの径方向の半径を露出半径rとすると、親水膜21は接触外周縁部20aより径方向内側に露出半径の5%以上の長さで設けられているので、撥水膜20の表面を外周側に向けて流れてきた水滴が段差に水滴として滞留するのをより効果的に防止できる。
さらに、レンズユニット11の膜付きレンズ13の外部に露出している表面に付着している塵や汚れ等を除去するために、当該表面をタワシやブラシ等の清掃具によって擦った場合、外周縁部に設けられている親水膜21は、中央部に設けられている撥水膜20に比して清掃具が当たり難い。そのため、レンズ面13aの全面に親水膜を設ける場合に比して、親水膜21が傷付き難くなる。
また、カメラモジュール300は、レンズユニット11を備えているので、上述のレンズユニット11の膜付きレンズ13の作用効果をカメラモジュール300で得ることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、撥水膜20の表面の外周縁部に親水膜21を設けたが、撥水膜20の表面全体に親水膜21を設けてもよい。この場合、上述したような清掃具によって親水膜21の中央部が剥がれる虞があるが、たとえ剥がれても剥がれた部分に撥水膜20が露出するだけであるので、本実施の形態と同様に、撥水膜20の表面を外周側に向けて流れてきた水滴の滞留を防止できるので、視認性の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0034】
11 レンズユニット
12 鏡筒
13 膜付きレンズ
13a レンズ面
20 撥水膜
20a 接触外周縁部
21 親水膜
23 カシメ部(固定部)
300 カメラモジュール