(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899704
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】軌道走行式機械のレールクランプ装置
(51)【国際特許分類】
B66C 9/18 20060101AFI20210628BHJP
B61K 7/22 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
B66C9/18
B61K7/22
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-106118(P2017-106118)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-199569(P2018-199569A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中瀬古 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】石野 泰造
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−052623(JP,A)
【文献】
米国特許第04085849(US,A)
【文献】
特開2015−063384(JP,A)
【文献】
特開2015−058805(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103552917(CN,A)
【文献】
特開平06−072690(JP,A)
【文献】
特開2014−210623(JP,A)
【文献】
実開昭58−114290(JP,U)
【文献】
特開昭49−124763(JP,A)
【文献】
特開2013−209193(JP,A)
【文献】
実開昭54−150277(JP,U)
【文献】
特開昭49−124707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/00 − 11/26
B61K 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って転動自在な走行車輪が配設された走行装置を備えた軌道走行式機械のレールクランプ装置において、
先端部にシューが設けられ且つ該シューにより前記レールの両側面を挟持・開放自在なクランプアームと、
該クランプアームの基端部間に伸縮自在に配設され、且つ伸長時に前記クランプアームの先端部を互いに近接させて前記シューをレールの両側面に圧接させる一方、収縮時に前記クランプアームの先端部を互いに離反させて前記シューをレールの両側面から開放させる流体圧シリンダと、
通常運転時には前記流体圧シリンダへ作動流体を導入することにより該流体圧シリンダを伸縮させつつ蓄圧する一方、電源遮断される非常停止時及び停電時には蓄圧した作動流体を前記流体圧シリンダへ導いて該流体圧シリンダを伸長させる流体圧ユニットと
を備え、
前記流体圧ユニットは、
タンク内の作動流体を圧送するポンプと、
該ポンプによって圧送される作動流体の蓄圧用のアキュムレータと、
前記ポンプによって圧送される作動流体を前記流体圧シリンダのキャップ側室へ導入しつつ該流体圧シリンダのロッド側室の作動流体をタンクへ排出するブレーキ作動ポジションと、前記ポンプによって圧送される作動流体を前記流体圧シリンダのロッド側室へ導入しつつ該流体圧シリンダのキャップ側室の作動流体をタンクへ排出するブレーキ解除ポジションとを有し、電源遮断される非常停止時及び停電時には前記ブレーキ作動ポジションに切り換わるソレノイドバルブと、
常時開で前記ポンプによって圧送される作動流体を前記アキュムレータへ導入しつつ該アキュムレータにおける作動流体の圧力が高位設定圧に達した際に閉となり且つ電源遮断される非常停止時及び停電時には前記アキュムレータに蓄圧された作動流体を前記ブレーキ作動ポジションに切り換わったソレノイドバルブを介して流体圧シリンダのキャップ側室へ導き該流体圧シリンダを伸長させるシャットオフ弁と
を備えたことを特徴とする軌道走行式機械のレールクランプ装置。
【請求項2】
レールに沿って転動自在な走行車輪が配設された走行装置を備えた軌道走行式機械のレールクランプ装置において、
先端部にシューが設けられ且つ該シューにより前記レールの両側面を挟持・開放自在なクランプアームと、
該クランプアームの基端部間に伸縮自在に配設され、且つ伸長時に前記クランプアームの先端部を互いに近接させて前記シューをレールの両側面に圧接させる一方、収縮時に前記クランプアームの先端部を互いに離反させて前記シューをレールの両側面から開放させる流体圧シリンダと、
通常運転時には前記流体圧シリンダへ作動流体を導入することにより該流体圧シリンダを伸縮させつつ蓄圧する一方、電源遮断される非常停止時及び停電時には蓄圧した作動流体を前記流体圧シリンダへ導いて該流体圧シリンダを伸長させる流体圧ユニットと、
前記クランプアームを開放する方向へ付勢する引張バネとを備え、
前記流体圧ユニットは、
タンク内の作動流体を圧送するポンプと、
該ポンプによって圧送される作動流体の蓄圧用のアキュムレータと、
前記流体圧シリンダのロッド側室がタンクと連通された状態で前記ポンプによって圧送される作動流体を前記流体圧シリンダのキャップ側室へ導入するブレーキ作動ポジションと、前記流体圧シリンダのロッド側室がタンクと連通された状態で流体圧シリンダのキャップ側室の作動流体をタンクへ排出するブレーキ解除ポジションとを有し、電源遮断される非常停止時及び停電時には前記ブレーキ作動ポジションに切り換わるソレノイドバルブと、
常時開で前記ポンプによって圧送される作動流体を前記アキュムレータへ導入しつつ該アキュムレータにおける作動流体の圧力が高位設定圧に達した際に閉となり且つ電源遮断される非常停止時及び停電時には前記アキュムレータに蓄圧された作動流体を前記ブレーキ作動ポジションに切り換わったソレノイドバルブを介して流体圧シリンダのキャップ側室へ導き該流体圧シリンダを前記引張バネの付勢力に抗して伸長させるシャットオフ弁と
を備えたことを特徴とする軌道走行式機械のレールクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道走行式機械のレールクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は一般的な軌道走行式機械としてのコンテナクレーンの一例を示すものであって、1はコンテナクレーン、2はコンテナクレーン1が配備される港湾、3は港湾2における岸壁、4は岸壁3に
図5の紙面と直交する方向へ延びるよう敷設されたレールであり、コンテナクレーン1のクレーン本体5の支持脚6には、レール4に沿って転動自在な走行車輪7を有する走行装置8が取り付けられている。
【0003】
前記コンテナクレーン1は、荷役作業中に強風に煽られると、運転者の意に反して走行が止まらず、逸走してしまい、隣接する機械や近接構造物への衝突や倒壊に至る虞がある。
【0004】
このため、前述の如き軌道走行式機械の逸走を防止する装置として、従来、例えば、特許文献1に開示されているようなレールクランプ装置がある。
【0005】
前記レールクランプ装置は、先端部に挟み部(シュー)が形成された一対の接触子(クランプアーム)をその略中間部が軸を中心として回動自在となるよう連結した挟み機構と、該挟み機構における前記接触子の基端部に設けられ且つ該接触子の基端部間を狭めて前記挟み部が常時レールを挟む閉方向へ前記接触子を回動させるようにしたばね機構と、前記一対の接触子の基端部に形成されたカム受部をその内側から押し開く方向へ駆動して前記挟み部によるレールの挟み付けを解放するための回転カムとを備えている。
【0006】
又、前記レールクランプ装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、特許文献2もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−72690号公報
【特許文献2】特許第5781560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記コンテナクレーン1のような軌道走行式機械においては、前記レール4の側面の精度が低く、その幅方向における中心線から側面までの寸法に左右でばらつきが生じていることがあり、又、前記レール4の摩耗や腐食等による断面の変形が生じている場合もある。
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に開示されているようなレールクランプ装置では、圧縮バネの付勢力によってレールを両側から挟み付ける方式が採用されているため、前記圧縮バネのバネ定数が一定のもと、レールの側面を挟持する力を前記ばらつきや変形に応じて調節することができず、前記シューによる挟み付けが均一に行われずに締付力が大きく低下してしまい、充分な保持力が得られなくなる可能性があった。
【0010】
又、前記シューによる挟み付けが均一に行われていないと、レールの側面並びにシューの偏摩耗が発生しやすくなり、レールクランプ装置の寿命短縮につながる虞があった。
【0011】
更に又、前述の如きレールクランプ装置においては、非常停止時(緊急を要する意図的な電源遮断時)及び停電時にレールの両側面を確実に挟持できることもきわめて重要となっている。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、安定した保持力を得ることができ且つ接触面の偏摩耗を抑えて寿命延長を図ることができ、電源遮断される非常停止時及び停電時にもレールの両側面を確実に挟持し得る軌道走行式機械のレールクランプ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置は、レールに沿って転動自在な走行車輪が配設された走行装置を備えた軌道走行式機械のレールクランプ装置において、
先端部にシューが設けられ且つ該シューにより前記レールの両側面を挟持・開放自在なクランプアームと、
該クランプアームの基端部間に伸縮自在に配設され、且つ伸長時に前記クランプアームの先端部を互いに近接させて前記シューをレールの両側面に圧接させる一方、収縮時に前記クランプアームの先端部を互いに離反させて前記シューをレールの両側面から開放させる流体圧シリンダと、
通常運転時には前記流体圧シリンダへ作動流体を導入することにより該流体圧シリンダを伸縮させつつ蓄圧する一方、電源遮断される非常停止時及び停電時には蓄圧した作動流体を前記流体圧シリンダへ導いて該流体圧シリンダを伸長させる流体圧ユニットと
を備え
、
前記流体圧ユニットは、
タンク内の作動流体を圧送するポンプと、
該ポンプによって圧送される作動流体の蓄圧用のアキュムレータと、
前記ポンプによって圧送される作動流体を前記流体圧シリンダのキャップ側室へ導入しつつ該流体圧シリンダのロッド側室の作動流体をタンクへ排出するブレーキ作動ポジションと、前記ポンプによって圧送される作動流体を前記流体圧シリンダのロッド側室へ導入しつつ該流体圧シリンダのキャップ側室の作動流体をタンクへ排出するブレーキ解除ポジションとを有し、電源遮断される非常停止時及び停電時には前記ブレーキ作動ポジションに切り換わるソレノイドバルブと、
常時開で前記ポンプによって圧送される作動流体を前記アキュムレータへ導入しつつ該アキュムレータにおける作動流体の圧力が高位設定圧に達した際に閉となり且つ電源遮断される非常停止時及び停電時には前記アキュムレータに蓄圧された作動流体を前記ブレーキ作動ポジションに切り換わったソレノイドバルブを介して流体圧シリンダのキャップ側室へ導き該流体圧シリンダを伸長させるシャットオフ弁と
を備えることができる。
【0015】
又、
本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置は、レールに沿って転動自在な走行車輪が配設された走行装置を備えた軌道走行式機械のレールクランプ装置において、
先端部にシューが設けられ且つ該シューにより前記レールの両側面を挟持・開放自在なクランプアームと、
該クランプアームの基端部間に伸縮自在に配設され、且つ伸長時に前記クランプアームの先端部を互いに近接させて前記シューをレールの両側面に圧接させる一方、収縮時に前記クランプアームの先端部を互いに離反させて前記シューをレールの両側面から開放させる流体圧シリンダと、
通常運転時には前記流体圧シリンダへ作動流体を導入することにより該流体圧シリンダを伸縮させつつ蓄圧する一方、電源遮断される非常停止時及び停電時には蓄圧した作動流体を前記流体圧シリンダへ導いて該流体圧シリンダを伸長させる流体圧ユニットと、
前記クランプアームを開放する方向へ付勢する引張バネ
とを備え、
前記流体圧ユニットは、
タンク内の作動流体を圧送するポンプと、
該ポンプによって圧送される作動流体の蓄圧用のアキュムレータと、
前記流体圧シリンダのロッド側室がタンクと連通された状態で前記ポンプによって圧送される作動流体を前記流体圧シリンダのキャップ側室へ導入するブレーキ作動ポジションと、前記流体圧シリンダのロッド側室がタンクと連通された状態で流体圧シリンダのキャップ側室の作動流体をタンクへ排出するブレーキ解除ポジションとを有し、電源遮断される非常停止時及び停電時には前記ブレーキ作動ポジションに切り換わるソレノイドバルブと、
常時開で前記ポンプによって圧送される作動流体を前記アキュムレータへ導入しつつ該アキュムレータにおける作動流体の圧力が高位設定圧に達した際に閉となり且つ電源遮断される非常停止時及び停電時には前記アキュムレータに蓄圧された作動流体を前記ブレーキ作動ポジションに切り換わったソレノイドバルブを介して流体圧シリンダのキャップ側室へ導き該流体圧シリンダを前記引張バネの付勢力に抗して伸長させるシャットオフ弁と
を備えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置によれば、安定した保持力を得ることができ且つ接触面の偏摩耗を抑えて寿命延長を図ることができ、電源遮断される非常停止時及び停電時にもレールの両側面を確実に挟持し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例を示す正面図である。
【
図3】本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例における流体圧シリンダ及び流体圧ユニットを示す概要構成図であって、
図2のIII−III矢視相当図である。
【
図4】本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例において引張バネを備えた変形例を示す概要構成図である。
【
図5】軌道走行式機械としてのコンテナクレーンの一例を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜
図3は本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例であって、図中、
図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
図1に示す如く、レール4に沿って転動自在な走行車輪7を有する走行装置8が取り付けられている軌道走行式機械としてのコンテナクレーン1のクレーン本体5の支持脚6間には、該支持脚6をつなぐようレール4に沿って延びる下部フレーム6aが設けられている。該下部フレーム6aの底面側には、前記走行装置8の間に配設されるようクランプブラケット10が垂下され、該クランプブラケット10の下部には、レール4に沿って転動自在な車輪11aを有するクランプ台車11が取り付けられている。該クランプ台車11には、レールクランプ機構20と油圧ユニット等の流体圧ユニット50とが搭載されている。
【0021】
前記レールクランプ機構20は、
図2及び
図3に示す如く、クランプアーム21と、流体圧シリンダ22とを備えている。
【0022】
前記クランプアーム21は、
図2及び
図3に示す如く、二個一組で構成される部材であって、前記クランプ台車11にレール4と平行に延びるよう軸支されたメインピン23に対し下端部(先端部)が枢着され、その上端部(基端部)には、前記レール4と平行に延びるシリンダ支持ピンボルト24が枢着されている。前記クランプアーム21の先端部には、シュー25が設けられている。
【0023】
前記流体圧シリンダ22は、
図2及び
図3に示す如く、前記レール4と直交する水平方向へ延びて前記シリンダ支持ピンボルト24の間に掛け渡すように配設され、前記流体圧ユニット50から給排される作動流体により伸縮するようになっている。
【0024】
前記流体圧ユニット50は、油等の作動流体が貯留されたタンク51から延びる圧送ライン52と、流体圧シリンダ22のキャップ側室22a(ピストンロッド22cが突出していない側の室)に接続されるキャップ側ライン53と、流体圧シリンダ22のロッド側室22b(ピストンロッド22cが突出している側の室)に接続されるロッド側ライン54と、前記タンク51へ通じる戻しライン55とを備えている。前記圧送ライン52途中には、モータ56にて駆動されるポンプ57と、該ポンプ57にて圧送される作動流体の逆流を阻止する逆止弁58とが設けられている。前記圧送ライン52及び戻しライン55と、前記キャップ側ライン53及びロッド側ライン54とは、ソレノイドバルブ59を介して接続され、前記逆止弁58とソレノイドバルブ59との間における圧送ライン52途中から分岐させた蓄圧ライン60には、アキュムレータ61が接続されている。
【0025】
前記ソレノイドバルブ59は、ブレーキ作動ポジション59Aとブレーキ解除ポジション59Bとを有している。前記ブレーキ作動ポジション59Aは、前記圧送ライン52とキャップ側ライン53とを連通させることにより、前記ポンプ57によって圧送される作動流体を流体圧シリンダ22のキャップ側室22aへ導入しつつ、前記ロッド側ライン54と戻しライン55とを連通させることにより、前記流体圧シリンダ22のロッド側室22bの作動流体をタンク51へ排出するポジションである。前記ブレーキ解除ポジション59Bは、前記圧送ライン52とロッド側ライン54とを連通させることにより、前記ポンプ57によって圧送される作動流体を前記流体圧シリンダ22のロッド側室22bへ導入しつつ、前記キャップ側ライン53と戻しライン55とを連通させることにより、前記流体圧シリンダ22のキャップ側室22aの作動流体をタンク51へ排出するポジションである。尚、前記ソレノイドバルブ59は、通常運転時以外の非常停止時(緊急を要する意図的な電源遮断時)及び停電時にはソレノイドへの通電が停止されてバネ力により機械的に前記ブレーキ作動ポジション59Aに切り換わるようになっている。
【0026】
前記ポンプ57と逆止弁58との間における圧送ライン52途中には、前記タンク51へ通じるリリーフライン62が分岐接続され、該リリーフライン62途中には、前記圧送ライン52における作動流体の圧力が設定圧以上となった際に開いて作動流体をタンク51へ戻すリリーフ弁63が設けられている。
【0027】
前記蓄圧ライン60途中には、該蓄圧ライン60における作動流体の圧力が高位設定圧に達した際に作動する高位圧力スイッチ64Hと、前記蓄圧ライン60における作動流体の圧力が低位設定圧に達した際に作動する低位圧力スイッチ64Lと、常時開(ノーマルオープン)で且つ前記高位圧力スイッチ64Hの作動時に閉となるシャットオフ弁64Vとが設けられている。これにより、前記蓄圧ライン60における作動流体の圧力が前記アキュムレータ61の設定圧に達した際には高位圧力スイッチ64Hが作動して前記ポンプ57のモータ56に対し、図示していない制御装置から停止指令が出力されると共に前記シャットオフ弁64Vが閉じる一方、前記圧力が前記アキュムレータ61の設定圧以下に低下した際には低位圧力スイッチ64Lが作動して前記ポンプ57のモータ56に対し、前記制御装置から駆動指令が出力されると共に前記シャットオフ弁64Vが開くようになっている。
【0028】
尚、前記蓄圧ライン60途中には、メンテナンス時等に前記アキュムレータ61の作動流体をタンク51に抜くためのドレンライン65が接続され、該ドレンライン65には、作業者によって開閉される手動開閉弁66が設けられている。
【0029】
図1〜
図3に示すレールクランプ機構20では、前記流体圧シリンダ22を
図3の実線の矢印で示す如く伸長させ、クランプアーム21の上端部(基端部)を、互いの間隔が広がるよう押し広げることによって、前記レール4の両側面をクランプアーム21の下端部(先端部)のシュー25で挟持するようになっている。一方、前記流体圧シリンダ22を
図3の仮想線の矢印で示す如く収縮させ、前記クランプアーム21の基端部を、互いの間隔が狭まるよう引き縮めることによって、前記レール4の両側面のクランプアーム21による挟持を開放するようになっている。
【0031】
図3に示す如く、流体圧ユニット50のソレノイドバルブ59をブレーキ作動ポジション59Aに切り換えた状態にすると、圧送ライン52とキャップ側ライン53とが連通することにより、ポンプ57によって圧送される作動流体が流体圧シリンダ22のキャップ側室22aへ導入されつつ、ロッド側ライン54と戻しライン55とが連通することにより、前記流体圧シリンダ22のロッド側室22bの作動流体がタンク51へ排出される。これにより、流体圧シリンダ22が伸長駆動され、クランプアーム21の基端部が、互いの間隔が広がるよう押し広げられることによって、クランプアーム21の先端部のシュー25が互いに近接するようレール4の両側面に圧接され、該レール4の両側面がシュー25で挟持される形となって制動が行われる。
【0032】
一方、
図3に示す状態から、流体圧ユニット50のソレノイドバルブ59をブレーキ解除ポジション59Bに切り換えると、圧送ライン52とロッド側ライン54とが連通することにより、ポンプ57によって圧送される作動流体が流体圧シリンダ22のロッド側室22bへ導入されつつ、キャップ側ライン53と戻しライン55とが連通することにより、流体圧シリンダ22のキャップ側室22aの作動流体がタンク51へ排出される。これにより、流体圧シリンダ22が収縮駆動され、前記クランプアーム21の基端部が、互いの間隔が狭まるよう引き縮められることによって、前記シュー25がレール4の両側面から離反し、前記レール4の両側面のクランプアーム21による挟持が開放される形となって制動が解除され、コンテナクレーン1を走行させることが可能となる。
【0033】
又、前記蓄圧ライン60における作動流体の圧力が前記アキュムレータ61の高位設定圧に達した際には高位圧力スイッチ64Hが作動して、前記ポンプ57のモータ56に対し、図示していない制御装置から停止指令が出力されると共にシャットオフ弁64Vが閉じる。一方、前記圧力が前記アキュムレータ61の低位設定圧以下に低下した際には低位圧力スイッチ64Lが作動して、前記ポンプ57のモータ56に対し、前記制御装置から駆動指令が出力されると共に前記シャットオフ弁64Vが開く。これにより、前記アキュムレータ61は常時、高位設定圧と低位設定圧との間の圧力に蓄圧される。しかも、前記ソレノイドバルブ59は、非常停止時及び停電時にはソレノイドへの通電が停止されてバネ力により機械的に前記ブレーキ作動ポジション59Aに切り換わるようになっている。又、前記シャットオフ弁64Vは、常時開(ノーマルオープン)であって非常停止時及び停電時には開いている。このため、非常停止時及び停電時には、前記アキュムレータ61に蓄圧された作動流体が蓄圧ライン60からキャップ側ライン53を介し前記流体圧シリンダ22のキャップ側室22aへ導かれて流体圧シリンダ22が伸長駆動され、クランプアーム21の基端部が、互いの間隔が広がるよう押し広げられることによって、前記レール4の両側面がクランプアーム21の先端部のシュー25で挟持される。この結果、非常停止時及び停電時にたとえポンプ57が停止したとしても、ブレーキを作動させることが可能となる。
【0034】
これにより、本実施例の場合、レール4を両側から挟み付ける方式を採用しているものの、レール4の側面の精度が低く、その幅方向における中心線から側面までの寸法に左右でばらつきが生じていたり、或いはレール4の摩耗や腐食等による断面の変形が生じていたりしたとしても、特許文献1、2に開示されているような圧縮バネの付勢力を利用したレールクランプ装置とは異なり、前記シュー25による挟み付けが流体圧シリンダ22の伸長駆動により均一に行われることから、締付力が大きく低下してしまうことがなく、充分な保持力が得られる。
【0035】
又、前記シュー25による挟み付けが流体圧シリンダ22の伸長駆動により均一に行われるため、レール4の側面並びにシュー25の偏摩耗が発生しにくくなり、レールクランプ機構20の寿命を延長することが可能となる。
【0036】
こうして、安定した保持力を得ることができ且つ接触面の偏摩耗を抑えて寿命延長を図ることができ、電源遮断される非常停止時及び停電時にもレール4の両側面を確実に挟持し得る。
【0037】
図4は本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置の実施例において引張バネ70を備えた変形例を示すものであって、図中、
図1〜
図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0038】
図4に示す変形例の場合、クランプアーム21の基端部間に掛け渡すように引張バネ70が設けられ、該引張バネ70によりクランプアーム21を開放する方向へ付勢するよう構成してある。尚、流体圧シリンダ22のロッド側室22bに接続されるロッド側ライン54は、流体圧ユニット50におけるソレノイドバルブ59を介さずに直接、戻しライン55と接続し、タンク51と連通させてある。
【0040】
図4に示す如く、流体圧ユニット50のソレノイドバルブ59をブレーキ作動ポジション59Aに切り換えた状態にすると、圧送ライン52とキャップ側ライン53とが連通することにより、ポンプ57によって圧送される作動流体が流体圧シリンダ22のキャップ側室22aへ導入される。ロッド側ライン54は戻しライン55と直接接続されているため、前記流体圧シリンダ22のロッド側室22bの作動流体はタンク51へ排出される。これにより、流体圧シリンダ22が、引張バネ70の付勢力に抗して伸長駆動され、クランプアーム21の基端部が、互いの間隔が広がるよう押し広げられることによって、クランプアーム21の先端部のシュー25が互いに近接するようレール4の両側面に圧接され、該レール4の両側面がシュー25で挟持される形となって制動が行われる。
【0041】
一方、
図4に示す状態から、流体圧ユニット50のソレノイドバルブ59をブレーキ解除ポジション59Bに切り換えると、引張バネ70の付勢力により、流体圧シリンダ22が収縮され、前記クランプアーム21の基端部が、互いの間隔が狭まるよう引き縮められることによって、前記シュー25がレール4の両側面から離反し、前記レール4の両側面のクランプアーム21による挟持が開放される形となって制動が解除され、コンテナクレーン1を走行させることが可能となる。因みに、ロッド側ライン54は戻しライン55と連通した状態のまま保持されているため、前記引張バネ70の付勢力による流体圧シリンダ22の収縮と連動して、タンク51の作動流体が流体圧シリンダ22のロッド側室22bに吸い上げられつつ、キャップ側ライン53と戻しライン55とがブレーキ解除ポジション59Bに切り換えられたソレノイドバルブ59を介して連通しているため、流体圧シリンダ22のキャップ側室22aの作動流体がタンク51へ排出される。
【0042】
又、前記蓄圧ライン60における作動流体の圧力が前記アキュムレータ61の高位設定圧に達した際には高位圧力スイッチ64Hが作動して、前記ポンプ57のモータ56に対し、図示していない制御装置から停止指令が出力されると共にシャットオフ弁64Vが閉じる。一方、前記圧力が前記アキュムレータ61の低位設定圧以下に低下した際には低位圧力スイッチ64Lが作動して、前記ポンプ57のモータ56に対し、前記制御装置から駆動指令が出力されると共に前記シャットオフ弁64Vが開く。これにより、前記アキュムレータ61は常時、高位設定圧と低位設定圧との間の圧力に蓄圧される。しかも、前記ソレノイドバルブ59は、非常停止時及び停電時にはソレノイドへの通電が停止されてバネ力により機械的に前記ブレーキ作動ポジション59Aに切り換わるようになっている。又、前記シャットオフ弁64Vは、常時開(ノーマルオープン)であって非常停止時及び停電時には開いている。このため、非常停止時及び停電時には、前記アキュムレータ61に蓄圧された作動流体が蓄圧ライン60からキャップ側ライン53を介し前記流体圧シリンダ22のキャップ側室22aへ導かれて流体圧シリンダ22が引張バネ70の付勢力に抗して伸長駆動され、クランプアーム21の基端部が、互いの間隔が広がるよう押し広げられることによって、前記レール4の両側面がクランプアーム21の先端部のシュー25で挟持される。この結果、非常停止時及び停電時にたとえポンプ57が停止したとしても、ブレーキを作動させることが可能となる。
【0043】
これにより、
図4に示す変形例の場合も、
図3に示すものと同様、レール4を両側から挟み付ける方式を採用しているものの、レール4の側面の精度が低く、その幅方向における中心線から側面までの寸法に左右でばらつきが生じていたり、或いはレール4の摩耗や腐食等による断面の変形が生じていたりしたとしても、特許文献1、2に開示されているような圧縮バネの付勢力を利用したレールクランプ装置とは異なり、前記シュー25による挟み付けが流体圧シリンダ22の伸長駆動により均一に行われることから、締付力が大きく低下してしまうことがなく、充分な保持力が得られる。
【0044】
又、前記シュー25による挟み付けが流体圧シリンダ22の伸長駆動により均一に行われるため、レール4の側面並びにシュー25の偏摩耗が発生しにくくなり、レールクランプ機構20の寿命を延長することが可能となる。
【0045】
こうして、
図4に示す変形例においても、安定した保持力を得ることができ且つ接触面の偏摩耗を抑えて寿命延長を図ることができ、電源遮断される非常停止時及び停電時にもレール4の両側面を確実に挟持し得る。
【0046】
しかも、
図4に示す変形例では、引張バネ70の付勢力をクランプアーム21によるレール4両側面の挟持の開放に利用しているため、コンテナクレーン1の走行時に流体圧シリンダ22が誤作動してクランプアーム21がレール4両側面を挟持してしまうようなことを回避でき、コンテナクレーン1を安定して走行させることができる。
【0047】
尚、本発明の軌道走行式機械のレールクランプ装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 コンテナクレーン(軌道走行式機械)
4 レール
7 走行車輪
8 走行装置
21 クランプアーム
22 流体圧シリンダ
22a キャップ側室
22b ロッド側室
25 シュー
50 流体圧ユニット
51 タンク
57 ポンプ
59 ソレノイドバルブ
59A ブレーキ作動ポジション
59B ブレーキ解除ポジション
61 アキュムレータ
70 引張バネ