(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記点灯回路は、前記スキャン光学系の動作開始直後において、走査周波数が所定の周波数に達するまでは、前記第1光源部を消灯し、前記第2光源部を点灯させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態に係る車両用灯具の概要を説明する。一実施の形態において、車両用灯具は、第1光源部と、第2光源部と、周期運動を繰り返すことにより第1光源部の出射ビームを走査するスキャン光学系と、第1光源部および第2光源部を独立に駆動する点灯回路と、を備え、スキャン光学系により走査された走査ビームを投影して第1パターンを形成するとともに、第2光源部の出射ビームを投影して第2パターンを形成する。
【0013】
走査による配光パターンと、非走査による配光パターンを組み合わせることにより、配光制御の柔軟性を提供でき、あるいは、配光を生成する際の制約(電源電圧、温度など)を少なくできる。
【0014】
第2パターンは少なくとも一部が第1パターンとオーバーラップし、かつ第2パターンはハイビームの領域の少なくとも一部に形成されてもよい。
これにより第1パターンを消灯しても、第2パターンによって必要最低限の照度を確保できる。
【0015】
車両用灯具の電源電圧には、バッテリ電圧が利用される場合が多い。車載バッテリは定格12Vに対して、クランキングにより6V程度まで低下する場合があり、これが電源電圧低下の要因となりうる。電源電圧の低下により第1光源部の出射光を走査するモータやアクチュエータの動作は不安定になり、走査周波数が変動しうる。電源電圧の低下にかかわらず走査周波数を安定化しようとすると、電圧レギュレータや昇圧回路を追加し、モータやアクチュエータドライバへの供給電圧を、バッテリ電圧の低下にかかわらず維持するなどの対策が必要となる。そこである態様において点灯回路は、車両用灯具に供給される電源電圧が所定のしきい値を下回ると、第1光源部を消灯してもよい。
電源電圧の低下時に第1光源部を消灯し、第2光源部のみ点灯させることでちらつきや配光精度の低下を抑制できる。モータやアクチュエータドライバへの供給電圧を安定化するための対策回路を簡素化できるため、車両用灯具の低コスト化に資することにもなる。
【0016】
点灯回路は、スキャン光学系において走査周波数が規定範囲から逸脱したとき、第1光源部を消灯してもよい。たとえば走査周波数が規定範囲を下回ると、ちらつきが発生しうる。反対に走査周波数が規定範囲を上回る暴走状態では、走査と同期した第1光源部のタイミング制御が困難になり、ちらつきが発生したり、配光の精度が低下するおそれがある。配光精度の低下は、遮光すべき領域を照射したり、照度を高めるべき領域で十分な照度が得られないようなケースを含みうる。そのような状況では、第1光源部を消灯して第2光源部のみを点灯させることで、ちらつきを抑制し、あるいは精度の低い配光パターンの照射を防止できる。
【0017】
スキャン光学系は、モータと、モータの回転軸に取り付けられた反射体と、を含んでもよい。点灯回路は、第1光源部および第2光源部が消灯しており、かつモータの回転数が所定値より低い状態において、パッシングの指示が入力されると、第1光源部の消灯を維持し、第2光源部を瞬時点灯させてもよい。
パッシング用のビームは、前照灯の消灯中においても照射可能でなければならない。もしパッシング用のビームに第1パターンを使用する場合、消灯状態においても、モータやアクチュエータを稼働させ続けなければならない。そこで点灯回路は、パッシング時に、第2光源部を瞬時的に点灯(点滅)させてもよい。これにより前照灯の消灯中に、モータやアクチュエータを必ずしも稼働させる必要はなくなる。
【0018】
スキャン光学系の動作開始直後において、点灯回路は、走査周波数が所定の周波数に達するまでは、第1光源部を消灯し、第2光源部を点灯させてもよい。
【0019】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0021】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0023】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具100のブロック図である。車両用灯具100は、スキャン式のADBヘッドランプであり、スキャンによる配光と、非スキャンによる配光の重ね合わせにより、配光パターンを形成する。車両用灯具100は、第1光源部110A、第2光源部110B、スキャン光学系120、投影光学系130および点灯回路200を備える。第1光源部110Aはスキャン用の光源であり、少なくともひとつの発光ユニット112を含む。第2光源部110Bは非走査で自車前方を広く照射するための光源であり、少なくともひとつの発光ユニット113を含む。
【0024】
スキャン光学系120は、周期運動を繰り返すことにより第1光源部110Aの出射ビームBM
1を走査する。スキャン光学系120の出射ビームを、走査ビームBM
SCANと称する。ちらつきを防止するために、スキャン光学系120の走査周波数は60Hz以上、たとえば200Hz程度に設定される。
【0025】
投影光学系130は、スキャン光学系120により走査された走査ビームBM
SCANを投影して第1パターンPTN
1を形成するとともに、第2光源部110Bの出射ビームBM
2を投影して少なくとも一部が第1パターンPTN
1とオーバーラップする第2パターンPTN
2を形成する。
図1の符号1は仮想鉛直スクリーンを表す。ある時刻において走査ビームBM
SCANが照射する領域を照射領域2と称する。照射領域2が仮想鉛直スクリーン1上を移動することにより、第1パターンPTN
1が形成される。
【0026】
投影光学系130は反射光学系、透過光学系、それらの組み合わせで構成することができる。なお、第1光源部110A、第2光源部110Bの出射ビームの拡散角、出射角などを適切に設計することにより、投影光学系130を省略することも可能である。
【0027】
点灯回路200は、第1光源部110Aおよび第2光源部110Bを独立に駆動する。点灯回路200は、スキャン光学系120の走査運動と同期して、照射領域2の照度を時間に応じて変化させることが可能である。たとえば1走査期間中のある時間区間において第1光源部110Aの輝度をゼロとすると、その時間区間に対応する領域を遮光することができる。反対に1走査期間中のある時間区間において第1光源部110Aの輝度を高めることにより、その時間区間に対応する領域をスポット的に照射することができる。第1光源部110Aの輝度は、発光ユニット112に供給する駆動電流量に応じて制御してもよいし、点灯している発光ユニット112の個数に応じて制御してもよいし、それらの組み合わせによって制御してもよい。
【0028】
また点灯回路200は、スキャン光学系120の走査運動とは無関係に、第2光源部110Bに一定の駆動電流を供給し、その輝度を一定に保つ。
【0029】
以上が車両用灯具100の構成である。続いて車両用灯具100の動作を説明する。
図2(a)、(b)は、
図1の車両用灯具100による配光パターンの形成を説明する図である。
【0030】
図2(a)には、上から見た仮想鉛直スクリーン1が示される。なお
図2(a)には説明の簡潔化のために、右灯具による配光パターンのみが示される。実際には仮想鉛直スクリーン1には、
図2の配光パターンと、それをH−H線に対して実質的に鏡像関係にある左灯具の配光パターンの重ね合わせが照射される。
【0031】
仮想鉛直スクリーン1上には、走査ビームBM
SCANにより形成される第1パターンPTN
1と、第2ビームBM2により形成される第2パターンPTN
2が投影される。たとえば第1パターンPTN
1は、運転者がより注視すべき領域であって、状況に応じて配光を適応的に制御すべき領域(以下、集光領域5と称する)に照射される。一方、第2パターンPTN
2は、集光領域5よりも重要度が低く、状況によらずに規定の配光を照射すべき領域(以下、拡散領域4と称する)に照射される。
【0032】
図2(b)には、照度分布の一例が示される。この例では、照射領域2がH−H線を通過する時間区間において、第1光源部110Aの輝度を高める制御が行われている。以上が車両用灯具100の動作である。
【0033】
この車両用灯具100によれば、走査による配光パターンPTN
1と、非走査による配光パターンPTN
2を組み合わせることにより、配光制御の柔軟性を提供でき、あるいは、配光を生成する際の制約(電源電圧、温度など)を少なくできる。
【0034】
もし
図2に示す配光パターンを、スキャンのみで形成しようとすれば、照射領域2のH方向の走査範囲を拡散領域4をカバーするように広げなければならない。同じ光源を用いて同じ走査周波数で配光パターンPTN
1を形成する場合、H方向の走査範囲が狭い方が、照度が高くなる。もし広い走査範囲で同じ照度を得ようとすれば、光源の輝度を高めなければならず、光源のコストもさることながら、付随する放熱対策のコストも増加するため、第1光源部110Aのコストが上がってしまう。
【0035】
この点において、
図1の車両用灯具100によれば、走査による配光と、非走査の配光を組み合わせることにより、第1光源部110Aの設計の自由度を高めることができる。場合によってはトータルのコストを下げることができる。
【0036】
(光源部の制御)
続いて、第1光源部110Aの制御について説明する。スキャン光学系120の動作開始直後は、走査周波数が規定範囲より低い。そこで点灯回路200は、スキャン光学系120の動作開始後、走査周波数が規定範囲に達するまでの起動期間は、第1光源部110Aを消灯しておき、ちらつきを抑制する。この起動期間中、第2光源部110Bのみを先行して点灯してもよい。
【0037】
この起動期間の完了後、走査周波数が一旦規定範囲に含まれた後においては、以下の制御の少なくともひとつが実行される。
【0038】
スキャン光学系120の走査動作と第1光源部110Aの輝度制御は同期していなければならず、したがって点灯回路200による第1光源部110Aの輝度制御には、時間軸上で高い精度が要求される。一方、車両用灯具100は、バッテリ電圧V
BATを電源電圧V
DDとして動作する。車載バッテリは定格12Vに対して、クランキングにより6V程度まで低下する場合があり、これが車両用灯具100の電源電圧V
DD低下の要因となりうる。
【0039】
電源電圧V
DDの低下により、スキャン光学系120のモータ(アクチュエータ)の動作は不安定になり、電源電圧V
DDが極端に低下すると、スキャン光学系120は走査周波数を規定範囲に維持できなくなる。もし電源電圧V
DDの低下にかかわらず走査周波数を維持可能としたい場合、電圧レギュレータや昇圧回路を追加し、モータやアクチュエータドライバへの供給電圧を、バッテリ電圧V
BATの低下にかかわらず維持するなどの対策が必要となり、車両用灯具100のコストが上昇する。
【0040】
この点において、実施の形態に係る車両用灯具100では、走査周波数が変動するような状況では、第1光源部110Aを消灯する制御が可能となるため、ちらつきを抑制することができる。第1光源部110Aを消灯したとしても、照度は低下するが、第2光源部110Bによる第2パターンPTN
2によって、必要最低限の照度が保証される。
【0041】
一実施例において点灯回路200は、車両用灯具100に供給される電源電圧V
DDが所定のしきい値V
THLを下回ると、第1光源部110Aを消灯してもよい。しきい値V
THLは、スキャン光学系120が走査周波数を目標範囲内に維持できなくなる電圧値であってもよい。電源電圧V
DDにもとづいて第1光源部110Aの点消灯を制御することにより、ちらつきを好適に防止できる。
図3は、一実施例に係る車両用灯具100の動作波形図である。電源電圧V
DDがしきい値V
THLを下回ると、第2光源部110Bの点灯を維持しつつ、第1光源部110Aを消灯する。これにより走査周波数が目標範囲f
REFから逸脱した場合でも、ちらつきを防止できる。
【0042】
一旦、走査周波数が低下した後、電源電圧V
DDが復帰した後、走査周波数が目標範囲f
REFに復帰するまでにある程度の遅延が発生する場合もある(一点鎖線)。その場合には、しきい値V
THLにヒステリシスを設定し、復帰時のしきい値を一点鎖線V
THL’のように高くすることにより、より確実にちらつきを防止できる。
【0043】
別の観点から見ると、点灯回路200は、スキャン光学系120において走査周波数が規定範囲(目標範囲)から逸脱すると、第1光源部110Aを消灯していると言える。この観点において点灯回路200は、電源電圧V
DDに加えて、あるいはそれに代えて、走査周波数を監視してもよい。
【0044】
後述するようにスキャン光学系120は、モータと、モータの回転軸に取り付けられた反射体と、を含んでもよい。この場合、モータの回転数は、走査周波数に対応するため、点灯回路200は、モータの回転数にもとづいて第1光源部110Aの点消灯を制御してもよい。具体的にはモータの回転数が所定の範囲から逸脱すると、第1光源部110Aを消灯してもよい。モータの回転数が所定の下限値を下回った場合に第1光源部110Aを消灯することにより、ちらつきを防止できる。
【0045】
それに加えて、モータの回転数が所定の上限値を上回った場合に、第1光源部110Aを消灯してもよい。モータが暴走して速度超過となると、走査と同期した第1光源部110Aの輝度のタイミング制御が困難になり、ちらつきが発生したり、配光の精度が低下するおそれがある。なお配光精度の低下には、遮光すべき領域を照射したり、照度を高めるべき領域で十分な照度が得られないようなケースなどが含まれる。速度超過の状況において第1光源部110Aを消灯して第2光源部110Bのみを点灯させることで、ちらつきを抑制し、あるいは精度の低い配光パターンの照射を防止できる。
【0046】
(パッシングについて)
パッシング用ビームは、前照灯の消灯中においても照射可能でなければならない。もしパッシング用のビームに第1パターンPTN
1を使用する場合、パッシングの指示がスキャン光学系120の停止中に発生した場合に、走査周波数が規定外であるため、パッシング用ビームにちらつきが生じてしまう。これを回避するためには、前照灯の消灯状態においても、モータやアクチュエータを稼働させて走査周波数を規定範囲内に維持し続けなければならない。また、走査により形成する第1パターンPTN
1を、パッシングのために点滅させることは、制御を複雑化させる要因ともなりうる。
【0047】
そこで一実施例において点灯回路200には、車両側からパッシングの指示を受けると、第2光源部110Bを点滅させてもよい。パッシングを第2光源部110Bの点滅により実現することにより、前照灯の消灯中に、モータやアクチュエータを必ずしも稼働させる必要はなくなる。また非走査の第2光源部110Bを点滅させる処理は簡単であるため、制御システムを簡素化できる。
【0048】
図4(a)、(b)は、
図1の車両用灯具100のパッシング動作を説明する波形図である。
図4(a)は車両用灯具100の消灯状態のパッシング動作を示す。スキャン光学系120は停止しており、走査周波数はゼロ(0Hz)であり、第1光源部110A、第2光源部110Bはともに消灯している。この状態でパッシングの指示が入力されると、点灯回路200は、第1光源部110Aの消灯を維持した状態で、第2光源部110Bを瞬時的に点灯(点滅)させる。
【0049】
後半は車両用灯具100の点灯状態のパッシング動作を示す。走査周波数は目標範囲f
REFに安定化されており、第1光源部110Aおよび第2光源部110Bは点灯している。この状態でパッシングの指示が入力されると、点灯回路200は、第2光源部110Bを短時間を消灯して、第2光源部110Bを点滅させる。
【0050】
もし、パッシングの指示を受けたときに第2光源部110Bが消灯していれば、第2光源部110Bを短時間、点灯させて、第2光源部110Bを点滅させてもよい。
【0051】
続いて車両用灯具100のさらに具体的な構成例を説明する。
図5は、実施の形態に係る車両用灯具100の斜視図である。
図5の車両用灯具100は走行シーンに応じて、複数の配光モードが選択可能である。
【0052】
図5には、第1光源部110A、スキャン光学系120および投影光学系130が示される。上述のように第1光源部110Aは複数の発光ユニット112を含む。複数の発光ユニット112は、コネクタ114を介して図示しない点灯回路200と接続される。発光ユニット112は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。ひとつの発光ユニット112は、輝度および点消灯の制御の最小単位を構成している。ひとつの発光ユニット112は、ひとつのLEDチップ(LDチップ)であってもよいし、直列および/または並列に接続された複数のLEDチップ(LDチップ)を含んでもよい。
【0053】
スキャン光学系120は第1光源部110Aの出射光L
1を受け、周期運動を繰り返すことによりその反射光L
2を車両前方で横方向(図中、H方向)に走査する。投影光学系130は、スキャン光学系120の反射光L
2を車両前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影光学系130は反射光学系、透過光学系、それらの組み合わせで構成することができる。
【0054】
具体的にはスキャン光学系120は、リフレクタ122およびモータ124を備える。リフレクタ122は、モータ124のロータに取り付けられており、回転運動を行なう。本実施の形態においてリフレクタ122は2枚設けられており、モータ124の1回転で、出射光L
2は2回、走査される。したがって走査周波数は、モータの回転数の2倍となる。なおリフレクタ122の枚数は特に限定されない。
【0055】
ある時刻t
0において第1光源部110Aの出射光L
1は、リフレクタ122の位置(ロータの回転角)に応じた角度で反射され、そのときの反射光L
2は、車両前方の仮想鉛直スクリーン1上に、ひとつの照射領域2を形成する。
図5では説明の簡素化のため、照射領域2を矩形で示すが、後述のように照射領域2は矩形とは限らない。
【0056】
別の時刻t
1においてリフレクタ122の位置が変化すると、反射角が変化し、そのときの反射光L
2’は、照射領域2’を形成する。さらに別の時刻t
2においてリフレクタ122の位置が変化すると反射角が変化し、そのときの反射光L
2”は、照射領域2”を形成する。
【0057】
スキャン光学系120を高速に回転させることにより、照射領域2が仮想鉛直スクリーン1上を走査し、これにより車両前方に配光パターン3が形成される。
【0058】
図6(a)〜(d)は、配光パターン3の形成を説明する図である。
図6(a)には、第1光源部110Aにおける複数の発光ユニット112のレイアウトが示される。本実施の形態において複数の発光ユニット112の個数は9である。
【0059】
複数の発光ユニット112は高さ方向に2段以上で、この例では3段で配置され、最下段の発光ユニット112の個数が最も多くなっている。これにより、仮想鉛直スクリーン上のH線の近傍に、照度の高い領域を形成できる。
【0060】
本実施の形態に係る車両用灯具100は、スキャンによる配光と、非スキャンによる配光の重ね合わせにより、配光パターンを形成する。上述した第1光源部110Aおよび第2光源部110Bは、ひとつの光源部110を構成することができ、光源部110は、スキャン用の複数の発光ユニット112_1〜112_9に加えて、非走査で車両前方を広く照射するための少なくともひとつの発光ユニット113_1,113_2を備える。発光ユニット113_1,113_2の出射光は、スキャン光学系120とは異なる光学系(不図示)を経由して、仮想鉛直スクリーン1に照射される。
【0061】
図6(b)は、リフレクタ122が所定の位置にあるときに、各発光ユニット112、113の出射光が仮想鉛直スクリーン1上に形成する照射スポットを示す図である。
【0062】
スキャン用の発光ユニット112が形成する照射スポットを集光スポットScと称する。Sc
iは、i番目(1≦i≦9)の発光ユニット112_iが形成する集光スポットを表す。
図6(b)の複数の集光スポットSc
1〜Sc
9の集合が、
図5の照射領域2に相当する。
【0063】
また、拡散用の発光ユニット113が仮想鉛直スクリーン1上に形成する照射スポットを、拡散スポットSdと称する。Sd
iは、i番目の発光ユニット113_iが形成する集光スポットを表す。拡散スポットSdはリフレクタ122の回転とは無関係である。拡散スポットSd
1,Sd
2の集合を、拡散領域4と称する。
【0064】
図6(b)には右側灯具による照射スポットSc,Sdのみが示される。右側灯具と左側灯具を左右対称に構成した場合、
図6(b)の照射スポットをV線で左右反転したものが、左側灯具によって形成される。
【0065】
図6(c)には、リフレクタ122を回転させたときに、各集光スポットScが通過する領域(スキャン領域と称する)SRが示される。SR
iは、i番目の集光スポットSc
iが通過する領域を示す。スキャン領域SR
1〜SR
9の集合、言い換えれば照射領域2が走査される領域を集光領域5と称する。集光領域5は拡散領域4とオーバーラップしている。
【0066】
図6(d)には、最下段の発光ユニット112_1〜112_5が形成するH線近傍の配光パターンの水平方向の照度分布が示される。
【0067】
実際に形成される配光パターンは、右側灯具の配光パターンと左側灯具の配光パターンの重ね合わせとなる。この例では、右側灯具の集光領域5と、左側灯具の集光領域5は実質的にオーバーラップしている。また右側灯具の拡散領域4は主としてV線より右側を照射し、左側灯具の拡散領域4(不図示)が主としてV線より左を照射することとなる。
【0068】
このように、スキャン用の複数の発光ユニット112_1〜112_9は、それぞれの出射光が仮想鉛直スクリーン上で異なる箇所を照射するように配置される。
図6(a)に示すように、複数の発光ユニット112をU字型に配置するとよい。U字型(あるいは
図13(b)のE字型)に配置することにより、1段目、2段目、3段目の集光領域の右端および左端を揃えることができる。
【0069】
複数の発光ユニット112とチャンネルの対応関係はたとえば以下の通りである。
第1チャンネルCH
1=発光ユニット112_1,112_2
第2チャンネルCH
2=発光ユニット112_3
第3チャンネルCH
3=発光ユニット112_4,112_5
第4チャンネルCH
4=発光ユニット112_6,112_7
第5チャンネルCH
5=発光ユニット112_8,112_9
【0070】
複数の発光ユニット112は高さ方向に3段に配置されており、同じ高さを照射する発光ユニット112は、同一量の駆動電流が供給されるように、同一チャンネルに分類される。
【0071】
拡散領域用の発光ユニット113_1、113_2は、第6チャンネルCH
6となる。
【0072】
以上が車両用灯具100の基本構成である。続いて動作を説明する。
図7(a)〜(c)は、車両用灯具100によって実現可能な複数の配光モードの具体例を説明する図である。たとえば複数の配光モードのひとつは
図7(a)に示すノーマルモードであり、複数の配光モードの別のひとつは
図7(b)に示すモータウェイモードであり、複数の配光モードのさらに別のひとつは
図7(c)に示すタウンモードである。
図7(a)〜(c)には、各配光モードにおける仮想鉛直スクリーン1上の配光パターンが示されており、左右の両方の灯具の重ね合わせが示される。
図7(a)〜(c)には、各チャンネルの発光ユニット112に供給すべき駆動電流I
DRVの電流量が示される。
【0073】
図7(a)を参照すると、ノーマルモードでは、最下段の3チャンネルCH
1、CH
2,CH
3の駆動電流の設定値は1.0A、下から2段目のチャンネルCH
4の駆動電流の設定値は0.7A、最上段のチャンネルCH
1の駆動電流の設定値は0.5Aである。また拡散用のチャンネルCH
6の駆動電流の設定値は1.0Aである。すべての発光ユニット112は走査期間中、点灯状態を維持する。
【0074】
モータウェイモードは、高速道路や有料道路において選択される。
図7(b)を参照すると、モータウェイモードでは、最下段の3チャンネルCH
1、CH
2,CH
3の駆動電流の設定値は1.2A、下から2段目のチャンネルCH
4の駆動電流の設定値は1.0A、最上段のチャンネルCH
5の駆動電流の設定値は0.7Aである。また拡散用のチャンネルCH
6の駆動電流の設定値は0.8Aであり、拡散領域4はノーマルモードのそれより暗く設定される。
【0075】
モータウェイモードでは、集光領域5の幅が、ノーマルモードの幅より狭くなるように、発光ユニット112のスキャン領域SRの幅が
図7(a)のノーマルモードよりも狭められており、発光ユニット112の輝度を高めることにより中央の照度が集中的に高められている。
【0076】
タウンモードは、街灯が多いような市街地において選択される。
図7(c)を参照すると、タウンモードでは、すべてのチャンネルCH
1〜CH
5の駆動電流の設定値は0.2Aである。また拡散用のチャンネルCH
6の駆動電流の設定値は0.8Aであり、拡散領域4はノーマルモードのそれより暗く設定される。
【0077】
モータウェイモードでは、集光領域5の幅が、ノーマルモードの幅と実質的に同等であるが、発光ユニット112の輝度を大幅に低下させることにより、照度が低く設定される。すべての発光ユニット112は、走査期間中、点灯状態を維持するように、バイパススイッチが制御される。
【0078】
以上が車両用灯具100の動作である。
この車両用灯具100によれば、複数の発光ユニット112にチャンネルごとに規定された一定の駆動電流I
DRVを供給しながら、各発光ユニット112を適切なタイミングで点消灯することにより、所望の配光パターンを形成できる。
【0079】
そして、駆動電流I
DRVの電流量と、発光ユニット112の点消灯のタイミングを変化させることにより配光パターンを変化させることができ、複数の配光モードを実現できる。
【0080】
配光モードは、走行シーンに応じて適応的に切りかえてもよいし、ユーザからの指示に応じて切りかえてもよい。発光ユニットの1走査期間内の点灯期間中において、駆動電流を高速に変化させる必要がないため、駆動電流を生成する定電流ドライバの設計を容易化できるという利点もある。
【0081】
本発明は、上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法、システムに及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0082】
続いて車両用灯具100のさらに具体的な構成例を説明する。
図8は、車両用灯具100の電気系統を示すブロック図である。車両用灯具100は、光源部110および点灯回路200を備える。上述のように光源部110は、スキャン用の複数の発光ユニット112と、拡散用の複数の発光ユニット113を含む。
【0083】
上述のようにスキャン用の複数の発光ユニット112_1〜112_9は、複数のチャンネルCH
1〜CH
5に分割されている。同一のチャンネルに含まれる複数の発光ユニット112は、仮想鉛直スクリーン上の同一の高さを照射するように配置される。逆に言えば、仮想鉛直スクリーン上の同一の高さを照射するよう配置される複数の発光ユニット112は、同一のチャンネルに含まれる。
【0084】
具体的には
図6に示すように仮想鉛直スクリーン1上の最下段を照射する複数の発光ユニット112_1,112_2が第1チャンネルCH
1、発光ユニット112_3が第2チャンネルCH
2、発光ユニット112_4,112_5が第3チャンネルCH
3を形成する。また、下から2段目を照射する複数の発光ユニット112_6,112_7が第4チャンネルCH
4を形成する。また下から3段目を照射する複数の発光ユニット112_8,112_9が第5チャンネルCH
5を形成している。同一のチャンネルに含まれる複数の発光ユニットは直列に接続されている。また拡散用の発光ユニット113_1,113_2は、別のチャンネルCH
6を形成する。
【0085】
点灯回路200は、ハーネス202を介して光源部110と接続されており、バッテリ10からの直流電圧(バッテリ電圧)V
BATを受け、複数の発光ユニット112を駆動する。具体的には点灯回路200は、発光ユニット112の輝度を、チャンネル単位で制御可能であり、また発光ユニット112ごとに点消灯を制御可能である。
【0086】
点灯回路200は、複数のチャンネルCH
1〜CH
5(およびCH
6)に対応する複数の点灯ユニット210_1〜210_5(および210_6)、灯具ECU(Electronic Control Unit)250、モータドライバ260を備える。灯具ECUは単にコントローラとも称される。
【0087】
灯具ECU250は、複数の点灯ユニット210_1〜210_6を制御する。灯具ECU250は、たとえば入力段252と、マイコン254を含む。入力段252は、バッテリ電圧V
BATの供給経路に設けられた半導体スイッチ253や、ノイズ除去用のフィルタ(不図示)を含む。マイコン254は、LIN(Local Interconnect Network)やCAN(Controller Area Network)などの車載ネットワーク用のバス14を介して、車両ECU12と接続される。車両ECU12からマイコン254には、(i)走行シーンあるいは配光モードを示す情報、(ii)遮光すべき領域を指示する情報などが送信される。マイコン254は、車両ECU12からの情報にもとづいて、配光モードを選択し、また遮光領域を形成する。
【0088】
モータドライバ260は、スキャン光学系120のモータ124を駆動し、その回転数を目標値に安定化する。モータ124はたとえばブラシレスDCモータであってもよい。モータドライバ260の回路構成は特に限定されず、公知のモータドライバを利用すればよい。スキャン光学系120は、リフレクタ122の回転と同期した周期的な回転信号FGを出力する。FG信号はホール素子126が生成するホール信号にもとづいて生成してもよい。
【0089】
たとえば
図5に示すように、2枚のリフレクタ122が設けられる場合、2枚のリフレクタ122の隙間(スリット)が基準位置を通過するたびに、回転信号FGがハイレベルに遷移するように、ホール素子を位置決めしてもよい。
【0090】
FG信号はコントローラ250に入力される。コントローラ250は、FG信号と同期して、点灯ユニット210_1〜210_5を制御する。点灯ユニット210_6については、FG信号との同期は不要である。
【0091】
図9は、車両用灯具100の1チャンネル分の構成を示すブロック図である。各チャンネルは、複数の発光ユニット112と、点灯ユニット210と、灯具ECU250のマイコン254の一部を含む。ここでは第1チャンネルCH
1を例とする。
【0092】
点灯ユニット210は、定電流ドライバ212およびバイパス回路220を含む。点灯ユニット210のVIN(入力電圧)ピンには、入力段252を介してバッテリ電圧(入力電圧V
IN)が供給される。またGND(グランド)ピンには、接地電圧V
GNDが供給される。EN(イネーブル)ピンには、定電流ドライバ212の動作、停止を指示するイネーブル信号S
ENが入力され、DC調光(ADIM)ピンには、定電流ドライバ212が生成する駆動電流I
DRVの目標値を指示するDC調光信号S
ADIMが入力される。
【0093】
定電流ドライバ212は、対応するチャンネルCH
1に含まれる複数の発光ユニット112_1,112_2に駆動電流I
DRVを供給する。たとえば定電流ドライバ212は、スイッチングコンバータ214およびコンバータコントローラ216を含む。スイッチングコンバータ214は、降圧、昇圧、あるいは昇降圧コンバータであり、VINピンに供給される入力電圧V
IN(バッテリ電圧V
BAT)を受ける。スイッチングコンバータ214の形式は、駆動対象の発光ユニット112の個数に応じて決定される。
【0094】
本実施の形態のように、ひとつのチャンネルに最大で2個の発光ユニット112を割り当てるようにするとスイッチングコンバータ214を降圧コンバータに統一することができる。
【0095】
コンバータコントローラ216は、スイッチングコンバータ214のスイッチング素子を駆動するための制御パルスS
CNTを生成する。コンバータコントローラ216は、駆動電流I
DRVの検出値(フィードバック信号S
FB)が、マイコン254からのDC調光信号S
ADIMが指示する目標値に近づくように、制御パルスS
CNTのデューティ比、周波数、密度の少なくともひとつを制御する。
【0096】
コンバータコントローラ216の制御方式は特に限定されず、公知の回路を用いればよい。たとえばコンバータコントローラ216は、リップル制御のコントローラであってもよく、ヒステリシス制御、ピーク検出オフ時間固定方式、ボトム検出オン時間固定方式などを採用しうる。あるいはコンバータコントローラ216は、エラーアンプを用いたPWM(Pulse Width Modulation)コントローラであってもよいし、PI制御やPID制御を利用したデジタルのコントローラであってもよい。
【0097】
バイパス回路220は、複数のバイパススイッチSW
1,SW
2を含む。各バイパススイッチSWは、対応するチャンネルCH
1に含まれる発光ユニット112_1,112_2の対応するひとつと並列なバイパス経路を形成可能である。バイパススイッチSWは、FET(Field Effect Transistor)などで構成することができる。バイパススイッチSW
1、SW
2のオン、オフは、マイコン254からのバイパス制御信号SB
1,SB
2に応じて制御される。フェイル検出回路222は、発光ユニット112のオープンあるいはショート異常を検出し、フェイル信号を生成する。
【0098】
以上が第1チャンネルCH
1の構成である。第2チャンネルCH
2〜第6チャンネルCH
6についても同様に構成される。バイパススイッチSW
j(1≦j≦9)がオフのとき、対応する発光ユニット112_jに駆動電流I
DRVが流れるため、発光ユニット112_jは発光する。バイパススイッチSW
jがオンのとき、駆動電流I
DRVは発光ユニット112_jではなくバイパススイッチSW
j側に流れるため、対応する発光ユニット112_jは消灯する。
【0099】
灯具ECU250(マイコン254)は、複数の配光モードが切替え可能に構成される。マイコン254は、複数の点灯ユニット210_1〜210_5それぞれについて配光モードごとに、(i)定電流ドライバ212それぞれが生成すべき駆動電流I
DRVと、(ii)1走査期間において複数のバイパススイッチSWそれぞれがオンすべき期間(オフすべき期間)と、が規定されている。
【0100】
図10(a)、(b)は、モータウェイモードにおける配光パターンの形成を説明する図である。
図10(a)は、見やすいように、複数のスキャン領域SR
1〜SR
5をずらして並べた図である。スキャン領域SRのうち、ハッチングを付した範囲が実際に光の照射される照射領域(B)を示し、一点鎖線は、光が照射されない非照射領域(A,C)を示す。Sc
1〜Sc
5は同時刻における集光スポットの位置を示す。集光スポットScは図中、左から右に走査するものとし、集光スポットScの右端をリーディングエッジLE、左端をトレイリングエッジTEとする。ある時刻t
0に、集光スポットSc
iのトレイリングエッジTEが、照射領域SR
iの左端に位置しているものとする。
【0101】
図10(b)は、複数のバイパススイッチSW
1〜SW
6の状態を示すタイムチャートである。水平方向が同じ位置のバイパススイッチ(SW
1,SW
6,SW
8のセット、もしくはSW
5,SW
7,SW
9のセット)は、同じタイミングで制御すればよいから、ここではバイパススイッチSW
1〜SW
5の制御のみを示す。i番目のバイパススイッチSWiは、対応する集光スポットSc
iが照射領域Bを通過する期間、オフとなり、非照射領域(A,C)を通過する期間、オンとなる。Tsは走査周期を表す。
【0102】
バイパススイッチSWのターンオフ(発光ユニット112の点灯)のタイミングt
Aは、集光スポットScのトレイリングエッジ(左端)TEが、照射領域の左端を通過したタイミングとしてもよい。一方、バイパススイッチSWのターンオン(発光ユニット112の消灯)のタイミングt
Bは、集光スポットScのリーディングエッジ(右端)LEが、照射領域の右端に到達したタイミングとしてもよい。この制御により、非照射領域の照度をゼロとすることができる。
【0103】
バイパススイッチSWの遷移タイミングt
A,t
Bは、とある基準時刻t
0からの経過時間を、走査周期Tsで正規化した値として規定しておいてもよい。これにより、モータの回転数が変化して走査周期Tsが変動しても、適切なタイミングでバイパススイッチSWを制御できる。なお基準時刻t
0は、FG信号の変化点と一致させてもよい。
【0104】
続いて、遮光領域の形成を説明する。
図11(a)、(b)は、遮光領域の形成を説明する図である。
図11(a)は、見やすいように、複数のスキャン領域SR
1〜SR
5をずらして並べた図である。
図11(b)は、複数のバイパススイッチSW
1〜SW
6の状態を示すタイムチャートである。ここでもモータウェイモードを例とする。遮光領域をDで示す。i番目のバイパススイッチSWiは、対応する集光スポットSc
iが遮光領域Dを通過する期間、オンとなるように制御される。
【0105】
遮光領域Dに対応して、バイパススイッチSWがターンオン(発光ユニット112の消灯)するタイミングt
Cは、集光スポットScのリーディングエッジ(右端)LEが、遮光領域Dの左端に到達するタイミングとしてもよい。一方、バイパススイッチSWのターンオフ(発光ユニット112の点灯)のタイミングt
Dは、集光スポットScのトレイリングエッジ(左端)TEが、遮光領域Dの右端に達するタイミングとしてもよい。
【0106】
図6(c)に示したように、最下段の5個の発光ユニット112_1〜112_5は、3チャンネルCH
1〜CH
3に分割することとした。これにより以下で説明するように、電子スイブルが可能となる。
図12(a)〜(c)は、電子スイブルを説明する図である。
図12(a)〜(c)はそれぞれ、最下段の発光ユニット112が形成する仮想鉛直スクリーン上のH線近傍の配光パターン(照度分布)を示す。
図12(a)〜(c)はそれぞれ直進時、左カーブ、右カーブに対応する。
【0107】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0108】
(変形例1)
バイパススイッチSWの制御に関して、非照射領域に光が照射されることを許容する場合、バイパススイッチSWのターンオフ(発光ユニット112の点灯)のタイミングt
Aを、集光スポットScのリーディングエッジ(右端)LEが、照射領域の左端を通過したタイミングとしてもよい。
【0109】
反対に、バイパススイッチSWのターンオン(発光ユニット112の消灯)のタイミングt
Bを、集光スポットScのトレイリングエッジ(左端)TEが、照射領域の右端に到達したタイミングとしてもよい。
【0110】
(変形例2)
実施の形態では、
図6(a)に示すようにU字型に複数の発光ユニット112を配置したがその限りでない。
図13(a)〜(c)は、発光ユニット112のレイアウトの変形例を示す図である。
図13(a)では、逆さのT字型に配置される。
図13(b)では、倒れたE字型に配置される。
図13(c)では、倒れたL字型に配置される。いずれの配置を選択すべきかは、投影光学系130からの出射光の拡散角に応じて規定すればよい。
【0111】
また実施の形態では、右側灯具と左側灯具それぞれが形成する集光領域5が実質的に同一範囲で重なったがその限りでなく、中央の一部において重なるようにしてもよい。
【0112】
(変形例3)
図7(a)〜(c)の配光モードでは、同じ高さを照射する3つのチャンネルCH
1〜CH
3の駆動電流が等しいが、その限りではない。たとえばモータウェイモードにおいて、3つのチャンネルCH
1〜CH
3の駆動電流が異なっていてもよい。
【0113】
(変形例4)
実施の形態では、1チャンネル当たりの発光ユニット112の個数を1または2としたがその限りではなく、3個以上の発光ユニット112を1チャンネルに割り当てて、ひとつの定電流ドライバで駆動してもよい。
【0114】
(変形例5)
スキャン光学系120の構成は、
図5のそれには限定されない。たとえばポリゴンミラーやガルバノミラーによって、照射スポットを走査する構成としてもよい。あるいは複数の発光ユニット112の出射角をアクチュエータで制御する構造としてもよい。
【0115】
(変形例6)
実施の形態では、複数の発光ユニット112を、
図6(b)に示すようにそれらが形成する複数の集光スポットScが仮想鉛直スクリーン1上でオーバーラップしないように配置したがその限りでない。2個以上の発光ユニット112に対応する集光スポットを仮想鉛直スクリーン1上でオーバーラップさせてもよい。
【0116】
(変形例7)
実施の形態では、発光ユニット113を含む第2光源部110Bは、広い範囲を実質的に均一に明るくする拡散領域を形成したがその限りでない。非走査の第2光源部110Bは、ハイビーム用の光源であってもよいし、通常のハイビームよりも遠方を照射する遠方照射ハイビームであってもよい。
【0117】
(変形例8)
実施の形態では、主として電源電圧の変動にともなう走査周波数の変動に着目したがその限りではない。たとえば温度異常が発生すると、保護機能が働いてモータの回転数が低下したり、半導体光源の輝度が低下する場合がある。この場合にも、第1光源部を消灯することにより、ちらつきを抑制し、配光精度の低下を抑制できる。あるいは温度異常や電源電圧の変動に起因して第1光源部110Aが点滅する場合には、走査周波数が正常であっても、第1光源部110Aを消灯してもよい。
【0118】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。