特許第6899714号(P6899714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IHI運搬機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6899714-エレベータ式駐車装置とその制御方法 図000002
  • 特許6899714-エレベータ式駐車装置とその制御方法 図000003
  • 特許6899714-エレベータ式駐車装置とその制御方法 図000004
  • 特許6899714-エレベータ式駐車装置とその制御方法 図000005
  • 特許6899714-エレベータ式駐車装置とその制御方法 図000006
  • 特許6899714-エレベータ式駐車装置とその制御方法 図000007
  • 特許6899714-エレベータ式駐車装置とその制御方法 図000008
  • 特許6899714-エレベータ式駐車装置とその制御方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899714
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】エレベータ式駐車装置とその制御方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   E04H6/18 601D
   E04H6/18 606A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-125624(P2017-125624)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-7284(P2019-7284A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小野 右季
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
【審査官】 齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−082428(JP,A)
【文献】 特開平05−202632(JP,A)
【文献】 特開平05−306578(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/067401(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路に沿って設けられた複数の格納棚と、複数の吊ロープに四隅がそれぞれ吊下げられ前記昇降路を昇降するケージと、を備え、車両を載せるパレットを前記ケージと前記格納棚との間で横行させるエレベータ式駐車装置であって、
前記パレットは、横行方向に延び前記ケージで横行可能に支持される水平支持面を有し、
さらに前記ケージの幅方向端部に設けられ、前記水平支持面の高さを検出する距離センサと、
前記ケージの昇降を制御する昇降制御装置と、を備え、該昇降制御装置により、
(A)前記ケージを昇降し、前記格納棚の横行高さと、前記ケージの横行高さとを比較し、前記パレットが載る移動元の前記横行高さが移動先の前記横行高さより高くなるように前記ケージの昇降を停止し、
(B)次いで、前記パレットを横行させ、前記パレットの重心が前記移動先に位置するときに、前記パレットの下方に位置する前記距離センサにより検出された検出高さと基準高さとを比較し、前記検出高さが前記基準高さと一致するように前記ケージを下方又は上方に昇降させる、エレベータ式駐車装置。
【請求項2】
前記昇降路の外側に上下方向に間隔を隔てて固定された複数の位置決め部材と、
前記ケージに設けられ前記位置決め部材を検出する位置検出センサと、を備え、
前記位置検出センサにより、前記移動元の前記横行高さが前記移動先の前記横行高さより高くなる位置を検出する、請求項1に記載のエレベータ式駐車装置。
【請求項3】
昇降路に沿って設けられた複数の格納棚と、複数の吊ロープに四隅がそれぞれ吊下げられ前記昇降路を昇降するケージと、を備え、車両を載せるパレットを前記ケージと前記格納棚との間で横行させるエレベータ式駐車装置の制御方法であって、
前記パレットに、横行方向に延び前記ケージで横行可能に支持される水平支持面を設け、
さらに、前記水平支持面の高さを検出する距離センサを前記ケージの幅方向端部に設け、
昇降制御装置により前記ケージの昇降を制御し、
(A)前記ケージを昇降し、前記格納棚の横行高さと、前記ケージの横行高さとを比較し、前記パレットが載る移動元の前記横行高さが移動先の前記横行高さより高くなるように前記ケージの昇降を停止し、
(B)次いで、前記パレットを横行させ、前記パレットの重心が前記移動先に位置するときに、前記パレットの下方に位置する前記距離センサにより検出された検出高さと基準高さとを比較し、前記検出高さが前記基準高さと一致するように前記ケージを下方又は上方に昇降させる、エレベータ式駐車装置の制御方法。
【請求項4】
前記ケージから前記格納棚へ前記パレットを横行させる車両格納時において、
前記ケージの前記横行高さを、前記格納棚の前記横行高さより所定高さΔH1だけ高く設定し、
前記横行の後半において、前記パレットの下方に位置する前記距離センサによる前記検出高さと前記基準高さとを比較し、前記検出高さが前記基準高さより大きいときに、前記ケージを下方に下降させる、請求項3に記載のエレベータ式駐車装置の制御方法。
【請求項5】
前記格納棚から前記ケージへ前記パレットを横行させる車両取出時において、
前記ケージの前記横行高さを、前記格納棚の前記横行高さより所定高さΔH2だけ低く設定し、
前記横行の後半において、前記パレットの下方に位置する前記距離センサによる前記検出高さを前記基準高さと比較し、前記検出高さが前記基準高さより大きいときに、前記ケージを上方に上昇させる、請求項3に記載のエレベータ式駐車装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊ロープに四隅が吊り下げられ鉛直な昇降路を昇降するケージを備えたエレベータ式駐車装置とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、エレベータ式駐車装置1を示す概略図である。
このエレベータ式駐車装置1は、吊ロープ2(例えば、ワイヤロープ)に四隅が吊り下げられ鉛直な昇降路を昇降するケージ3と、ケージ3を昇降させる昇降機構4と、を備える。
【0003】
昇降機構4は、シーブ駆動装置5、従動滑車6、駆動シーブ7、およびカウンタウェイト8を備える。シーブ駆動装置5は、駆動シーブ7を回転する。駆動シーブ7には、吊ロープ2の中間部が掛け渡されており、吊ロープ2の一端は、ケージ3に固定されており、吊ロープ2の他端は、カウンタウェイト8に固定されている。
【0004】
従って、駆動シーブ7が回転すると、駆動シーブ7に掛けられた吊ロープ2が、その回転方向により、ケージ3に向けて繰り出され、または、ケージ側から引き上げられてカウンタウェイト8に向けて繰り出され、これにより、ケージ3が昇降する。図1の例では、このような吊ロープ2が、4本設けられている。これら4本の吊ロープ2は、それぞれ、ケージ3の四隅から延びて、従動滑車6、駆動シーブ7、従動滑車6にこの順で掛けられ、カウンタウェイト8まで延びている。
【0005】
上述した昇降機構4は、駆動シーブ7と吊ロープ2との摩擦力によりケージ3を昇降させるため、トラクション式(摩擦式)と呼ばれる。トラクション式の昇降機構4は、低層から高層までの多くの駐車装置に適している。
なお、昇降機構4の駆動シーブ7の直径を小さくするために、ケージ3の四隅を複数(例えば2本)の吊ロープ2で吊り下げることがある。
【0006】
一方、昇降機構4には、他にドラム式が知られている。ドラム式の昇降機構は、円筒形のドラムに吊ロープ2を巻き付けて、吊ロープ2を巻き上げ、巻き戻しするものである。ドラム式の昇降機構は、低層から中層の駐車装置に適している。
【0007】
上述したエレベータ式駐車装置は、例えば特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−125730号公報
【特許文献2】実開平7−40930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のエレベータ式駐車装置では、ケージ3を予め設定された停止階に停止させる際に、ケージ3に設けた位置決めストッパ(図示せず)を退避位置に保持したままで、ケージ3を上昇又は下降させ、予め設定された停止高さよりも少し上の高さで一旦停止させる。次いで、位置決めストッパを支持位置に移動した後、ケージ3を下降させて、停止階に設けたストッパ受け(図示せず)の上に、位置決めストッパを介してケージ3を停止させる。
また、逆に、この状態から、ケージ3を上昇又は下降させる際には、その停止高さから少し上の高さまで一旦ケージ3を上昇させる。次いで、位置決めストッパを退避位置に復帰させた後、ケージ3を上昇又は下降させる。
【0010】
以下、上述したケージ3の停止時及び昇降開始時の動作を、「ソフトランディング動作」と呼ぶ。また、ソフトランディング動作に必要な機構(例えば、上述した位置決めストッパとストッパ受け)を「ソフトランディング機構」と呼ぶ。
【0011】
上述したソフトランディングの動作と機構は、停止階において、ケージ3の位置決めストッパをストッパ受けに載せるので、ケージと格納棚のレール高さを正確に合わせることができる利点を有する。
しかし、ソフトランディングの動作と機構には、以下の課題があった。
【0012】
ケージ3を停止階に停止させる前に、「その停止高さよりも少し上の高さでの停止」、「位置決めストッパの退避位置から支持位置への移動」、などの余分な動作を必要とする。また、逆に、停止階に停止した状態から、ケージ3を次の停止階に上昇又は下降させる前に、「停止高さから少し上の高さまでの上昇と停止」、「位置決めストッパの支持位置から退避位置へ移動」、などの余分な動作を必要とする。
そのため、ソフトランディング動作のために、車両の入出庫時間が長くなり、円滑性が低下する。
【0013】
そこで、上述したソフトランディングの動作と機構を用いず、ケージを吊ったままで、ケージと格納棚の間でパレットを横行させることが要望されている。
しかし、この場合、ケージから格納棚へのパレットの横行時(以下、車両格納時)には、吊ロープ2の伸び量が減ってケージが上にシフトし、格納棚からケージへのパレットの横行時(以下、車両取出時)には、吊ロープ2の伸び量が増えてケージが下にシフトする。
そのため、パレットの横行時に、ケージのレールと格納棚のレールの間に段差が生じ、その段差によりパレットの円滑な横行ができなかった。
【0014】
特許文献2の「エレベータ式パーキング」は、上述したソフトランディングの動作と機構を用いず、ケージをチェーンで吊った状態で、パレットの横行時に、制御装置により記憶しておいた巻上データを基に巻上装置を制御してケージの位置ずれを修正するものである。
【0015】
しかし、図1のように、ケージ3を吊ロープ2(例えば、ワイヤロープ)で吊る場合に、吊ロープ2の伸び量が、ケージの高さ、車両の有無、及び横行時のパレットの位置により大きく変化する。そのため、特許文献2の場合、必要な巻上データが膨大となり、かつその制御が複雑となる。
【0016】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、ソフトランディングの動作と機構を省略することができ、かつ膨大なデータと複雑な制御を必要とすることなく、パレットの横行を円滑に実施できるエレベータ式駐車装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、昇降路に沿って設けられた複数の格納棚と、複数の吊ロープに四隅がそれぞれ吊下げられ前記昇降路を昇降するケージと、を備え、車両を載せるパレットを前記ケージと前記格納棚との間で横行させるエレベータ式駐車装置であって、
前記パレットは、横行方向に延び前記ケージで横行可能に支持される水平支持面を有し、
さらに前記ケージの幅方向端部に設けられ、前記水平支持面の高さを検出する距離センサと、
前記ケージの昇降を制御する昇降制御装置と、を備え、該昇降制御装置により、
(A)前記ケージを昇降し、前記格納棚の横行高さと、前記ケージの横行高さとを比較し、前記パレットが載る移動元の前記横行高さが移動先の前記横行高さより高くなるように前記ケージの昇降を停止し、
(B)次いで、前記パレットを横行させ、前記パレットの重心が前記移動先に位置するときに、前記パレットの下方に位置する前記距離センサにより検出された検出高さと基準高さとを比較し、前記検出高さが前記基準高さと一致するように前記ケージを下方又は上方に昇降させる、エレベータ式駐車装置が提供される。
【0018】
また本発明によれば、昇降路に沿って設けられた複数の格納棚と、複数の吊ロープに四隅がそれぞれ吊下げられ前記昇降路を昇降するケージと、を備え、車両を載せるパレットを前記ケージと前記格納棚との間で横行させるエレベータ式駐車装置の制御方法であって、
前記パレットに、横行方向に延び前記ケージで横行可能に支持される水平支持面を設け、
さらに、前記水平支持面の高さを検出する距離センサを前記ケージの幅方向端部に設け、
昇降制御装置により前記ケージの昇降を制御し、
(A)前記ケージを昇降し、前記格納棚の横行高さと、前記ケージの横行高さとを比較し、前記パレットが載る移動元の前記横行高さが移動先の前記横行高さより高くなるように前記ケージの昇降を停止し、
(B)次いで、前記パレットを横行させ、前記パレットの重心が前記移動先に位置するときに、前記パレットの下方に位置する前記距離センサにより検出された検出高さと基準高さとを比較し、前記検出高さが前記基準高さと一致するように前記ケージを下方又は上方に昇降させる、エレベータ式駐車装置の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
上記本発明によれば、ケージを昇降し、格納棚の横行高さと、ケージの横行高さとを比較し、パレットが載る移動元の横行高さが移動先の横行高さより高くなるようにケージの昇降を停止する。これにより、パレットの横行開始時において、移動元の横行高さが移動先の横行高さより高いため、パレットと移動先との干渉を回避し、パレットの横行を円滑に開始できる。
【0020】
また、本発明によれば、パレットを横行させ、パレットの重心が移動先に位置するときに、距離センサにより検出された検出高さと基準高さとを比較し、検出高さが基準高さと一致するようにケージを下方又は上方に昇降させる。これにより、パレットの重心が移動先まで横行した後に、検出高さが基準高さと一致するので、パレットの横行終了時において、移動元と移動先の横行高さが一致し、パレットと移動先との干渉を回避し、パレットの横行を円滑に終了できる。
【0021】
従って、本発明によれば、ソフトランディングの動作と機構を省略することができ、かつ膨大なデータと複雑な制御を必要とすることなく、パレットの横行を円滑に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】エレベータ式駐車装置を示す概略図である。
図2】本発明によるエレベータ式駐車装置の第1実施形態を示す斜視図である。
図3図3のA−A矢視図である。
図4】昇降制御装置によるエレベータ式駐車装置の制御方法を示すフロー図である。
図5】ケージから格納棚へパレットを横行させる車両格納時の説明図である。
図6】格納棚からケージへパレットを横行させる車両取出時の説明図である。
図7】従来例の車両格納時の第1説明図である。
図8】従来例の車両格納時の第2説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0024】
図2は、本発明によるエレベータ式駐車装置100の実施形態を示す斜視図である。
【0025】
この図において、2は吊ロープ、3はケージ、4は昇降機構、5はシーブ駆動装置、6は従動滑車、7は駆動シーブ、8はカウンタウェイトであり、これらの構成は図1と同様である。
【0026】
複数の吊ロープ2は、車両を載せるケージ3の四隅を吊下げて鉛直上方に延び、昇降路9の上部から互いに同期して昇降される。
昇降機構4は、昇降路9の上部に設置され、複数の吊ロープ2を同期して昇降させる。この例において、昇降機構4は、シーブ駆動装置5と駆動シーブ7を有する。
【0027】
この例で、4組の吊ロープ2は、一端2aが車両を載せるケージ3の四隅に固定され、ケージ3を吊下げて鉛直上方に延び、昇降路9の上部で複数の従動滑車6により反転して下方に延びる。吊ロープ2は、好ましくはワイヤロープである。
各組の吊ロープ2は、この図ではそれぞれ1本であるが、2本以上であるのがよい。2本以上で各組の吊ロープ2を構成することにより、複数の従動滑車6の直径を小さくすることができる。
【0028】
図2において、カウンタウェイト8は、4組の吊ロープ2の他端2bに吊下げられ、上下に昇降する。カウンタウェイト8は、好ましくはケージ3の重量に車両の有無時の重量配分(例えばパレット10の重量)を加味し、駆動負荷が小さくなる重量に設定されている。
【0029】
図3は、図2のA−A矢視図である。この図において、10はパレット、12は格納棚、14は距離センサ、20は昇降制御装置である。なお、この図において、上部の昇降機構4は、模式的に示している。
【0030】
ケージ3は、ケージ本体3aと4つのケージ吊部3bを有する。
パレット10は、横行方向(図で左右)に延びケージ3で横行可能に支持される水平支持面11を有する。水平支持面11は、パレット10が水平なときにその横行方向にわたり凹凸なく水平に延びる支持面である。
複数の格納棚12は、昇降路9に沿って上下に間隔を隔てて設けられ、支持金具12aにより定位置に固定されている。
ケージ3と格納棚12は、複数の支持ローラ3c、12bをそれぞれ有する。複数の支持ローラ3c、12bは、それぞれ水平な軸心を中心に自由回転可能であり、パレット10の横行方向(図で左右)に間隔を隔てて位置しパレット10の水平支持面11を横行可能に支持する。
【0031】
距離センサ14は、ケージ3の幅方向端部(この例で両端部)に設けられ、水平支持面11の高さを検出する。距離センサ14は、この例では、複数の支持ローラ3cの間に上向きに固定されたレーザセンサであり、距離センサ14から水平支持面11までの鉛直距離をリアルタイムに検出する。
なお、距離センサ14は、レーザセンサに限定されず、その他の距離センサであってもよい。
【0032】
図3において、本発明のエレベータ式駐車装置100は、さらに、複数の位置決め部材16、及び位置検出センサ18を備える。
【0033】
複数の位置決め部材16は、昇降路9の外側に上下方向に間隔を隔てて固定されている。位置決め部材16の固定箇所は、この例では、棚柱Cであるが、昇降路9に近接する固定箇所であればよい。
位置決め部材16を固定する高さは、ケージ3が停止高さに位置するときに、位置検出センサ18により検出されるように設定する。「停止高さ」は、入出庫部及び昇降路9の各段(格納棚毎)にそれぞれ予め設定されている。
【0034】
位置検出センサ18は、ケージ3に固定され位置決め部材16を検出する。
位置検出センサ18は、ケージ3の横行方向両端部にそれぞれ設けることが好ましい。
【0035】
位置検出センサ18は、例えば上下方向に一定間隔Lを隔てた1対の検出センサを有する。検出センサは、好ましくは、透過式の光電センサであるが、反射式の光電センサでも、磁気センサ又は静電センサでもよい。一定間隔Lは、例えば100mmであるが、検出センサの検出精度に応じて、100mm未満でも、100mm以上でもよい。
【0036】
位置決め部材16は、ケージ3が停止高さに位置するときにのみ、1対の検出センサの両方で検出される。位置決め部材16の全高は、位置検出センサ18の一定間隔Lと同一又はそれより大きいことが好ましい。
【0037】
上述した位置決め部材16と位置検出センサ18の構成により、1対の検出センサの両方が位置決め部材16を検出する「定位置」、下側の検出センサのみが位置決め部材16を検出する「上位置」、上側の検出センサのみが位置決め部材16を検出する「下位置」の3位置を検出することができる。
従って、位置検出センサ18により、移動元(例えばケージ3)の横行高さが移動先(例えば格納棚12)の横行高さより高くなる位置を検出することができる。
【0038】
なお、「ケージの横行高さ」とは、支持ローラ3cがパレット10を支持する時の水平支持面11の高さであり、「格納棚の横行高さ」とは、支持ローラ12bがパレット10を支持する時の水平支持面11の高さである。
【0039】
従って、格納棚とケージの横行高さが一致する場合を「定位置」に設定することにより、ケージの横行高さが格納棚より高い「上位置」と、ケージの横行高さが格納棚より低い「下位置」の3位置を検出することができる。
上述した「定位置」に対する「上位置」と「下位置」の差は、例えば、3〜10mmである。
【0040】
昇降制御装置20は、ケージ3の昇降を制御し、エレベータ式駐車装置100を制御する。
【0041】
図4は、昇降制御装置20によるエレベータ式駐車装置100の制御方法を示すフロー図である。
この制御方法を実施するために、予め、パレット10に、横行方向に延びケージ3で横行可能に支持される水平支持面11を設ける。さらに、水平支持面11の高さを検出する距離センサ14をケージ3の幅方向端部に設ける。
【0042】
図4において、エレベータ式駐車装置100の制御方法は、ケージ3を昇降し停止する昇降ステップS1と、次いで、パレット10を横行させ、並行してケージ3を下方又は上方に昇降させる横行ステップS2とを有する。
【0043】
昇降ステップS1は、ステップS11,S12,S13からなる。
ステップS11において、ケージ3を昇降する。ステップS11はステップS13まで継続する。
ステップS12において、格納棚12とケージ3の横行高さとを比較する。ステップS13において、パレット10が載る移動元の横行高さが移動先の横行高さより高くなるようにケージ3の昇降を停止する。
【0044】
横行ステップS2は、ステップS21,S22,S23からなる。
ステップS21において、パレット10を横行させる。ステップS21は横行が完了するまで継続する。
【0045】
ステップS22において、パレット10の重心Gが移動先に位置するときに、パレット10の下方に位置する距離センサ14により検出された検出高さと基準高さとを比較する。
「パレット10の重心G」の幅方向位置は、パレット10の幅方向中点とほぼ一致する。また、パレット10の幅方向位置は、パレット10の横行装置により容易に検出できる。パレット10の横行装置は、従来の装置をそのまま用いることができる。
【0046】
ステップS23において、検出高さが基準高さと一致するようにケージ3を下方又は上方に昇降させる。「検出高さ」は、距離センサ14から実際の水平支持面11までの鉛直距離である。また、「基準高さ」は、複数の支持ローラ3c、12bが、パレット10の水平支持面11を支持するときの距離センサ14から水平支持面11までの鉛直距離である。
【0047】
図5は、ケージ3から格納棚12へパレット10を横行させる「車両格納時」の説明図である。
この図において、ケージ3から格納棚12へのパレット10の横行は、(A)〜(E)の順で実施される。
【0048】
図5(A)では、ケージ3の横行高さを、格納棚12の横行高さより所定高さΔH1だけ高く設定し、昇降ステップS1において、ケージ3を昇降し停止する。
【0049】
図5(A)の状態から、横行ステップS2において、(B)〜(E)の順でケージ3から格納棚12へパレット10を横行させる。パレット10の横行開始時(図5(B))、すなわち横行の前半において、パレット10がケージ上で格納棚側に移動すると、ケージ3の格納棚側が重くなって下がり、逆側が軽くなって上がる。
【0050】
しかし、本発明の実施形態では、移動元(ケージ3)の横行高さが移動先(格納棚12)の横行高さより高いため、パレット10と移動先(格納棚12)との干渉を回避し、パレット10の横行を円滑に開始できる。
「所定高さΔH1」は、パレット10の横行開始時(図5(B))において、パレット10の横行を円滑に開始できるように設定する。所定高さΔH1は、例えば、3〜10mmである。
【0051】
図5(C)において、パレット10の重心Gがケージ上から格納棚上に移動すると、ケージ3が軽くなって最初の停止高さより上にシフトする。このシフト量は、ケージの高さ、車両の有無により大きく変化する。
このシフトにより、ケージ3の横行高さが格納棚12の横行高さより高くなると、パレット10の水平支持面11が傾いた状態となる。
【0052】
本発明の実施形態では、図5(C)に示す横行の後半において、パレット10の下方に位置する距離センサ14により図のY部の検出高さと基準高さとを比較する。次いで、検出高さが基準高さより大きいときに、ケージ3を下方に下降させる。この下降は、距離センサ14によるリアルタイムの検出データを基に、図5(E)の状態まで継続して実施することが好ましい。
【0053】
その結果、図5(D)(E)に示すように、パレット10の横行終了時において、移動元(ケージ3)の横行高さと移動先(格納棚12)の横行高さが一致し、パレット10と格納棚12との干渉を回避し、パレット10の横行を円滑に終了できる。
【0054】
図6は、格納棚12からケージ3へパレット10を横行させる「車両取出時」の説明図である。
図6(A)では、ケージ3の横行高さを、格納棚12の横行高さより所定高さΔH2だけ低く設定し、昇降ステップS1において、ケージ3を昇降し停止する。
【0055】
図6(A)の状態から、横行ステップS2において、(B)〜(E)の順で格納棚12からケージ3へパレット10を横行させる。パレット10の横行開始時(図6(B))、すなわち横行の前半において、パレット10が格納棚上でケージ側に移動しても、格納棚12は固定されているので、パレット10の横行高さは変化しない。
【0056】
したがって、本発明の実施形態では、移動元(格納棚12)の横行高さが移動先(ケージ3)の横行高さより高いため、パレット10と移動先(ケージ3)との干渉を回避し、パレット10の横行を円滑に開始できる。
「所定高さΔH2」は、パレット10の横行開始時(図6(B))において、パレット10の横行を円滑に開始できるように設定する。所定高さΔH2は、例えば、3〜10mmである。
【0057】
図6(C)において、パレット10の重心Gが格納棚上からケージ上に移動すると、ケージ3が重くなって最初の停止高さより下にシフトする。このシフト量は、ケージの高さ、車両の有無により大きく変化する。
このシフトにより、ケージ3の横行高さが格納棚12の横行高さよりさらに低くなり、パレット10の水平支持面11が傾いた状態となる。
【0058】
本発明の実施形態では、図6(C)に示す横行の後半において、パレット10の下方に位置する距離センサ14により図のY部の検出高さと基準高さと比較する。次いで、検出高さが基準高さより大きいときに、ケージ3を上方に上昇させる。この上昇は、距離センサ14によるリアルタイムの検出データを基に、図6(E)の状態まで継続して実施することが好ましい。
【0059】
その結果、図6(D)(E)に示すように、パレット10の横行終了時において、移動元(格納棚12)の横行高さと移動先(ケージ3)の横行高さが一致し、パレット10と移動先(ケージ3)との干渉を回避し、パレット10の横行を円滑に終了できる。
【0060】
図7図8は、従来例の車両格納時の説明図である。
【0061】
図7では、パレット10が横行用の車輪を有し、ケージ3と格納棚12が、車輪を支持するレールを有する。図7の(A)〜(E)は、図5の(A)〜(E)と同じ状態を示している。
図7(A)では、ケージ3と格納棚12のレールを同一高さに設定している。その結果、図7(B)と図7(D)のX部に段差が生じ、その段差によりパレット10の円滑な横行ができなかった。
格納棚12からケージ3へパレット10を横行させる車両取出時も同様である。
【0062】
図8では、図5と同様に、ケージ3と格納棚12が、横行方向に間隔を隔てて位置し水平支持面11を支持する複数の支持ローラ3c,12bを有する。図7の(A)〜(E)は、図5の(A)〜(E)と同じ状態を示している。
図8(A)では、図5と相違し、ケージ3と格納棚12のレールを同一高さに設定し、距離センサ14と昇降制御装置20がない場合を想定している。
その結果、図8(B)と図8(D)のX部に段差が生じ、その段差によりパレット10の円滑な横行ができなかった。
格納棚12からケージ3へパレット10を横行させる車両取出時も同様である。
【0063】
上述した本発明の実施形態によれば、ケージ3を昇降し、格納棚12の横行高さと、ケージ3の横行高さとを比較し、パレット10が載る移動元の横行高さが移動先の横行高さより高くなるようにケージ3の昇降を停止する。これにより、パレット10の横行開始時において、移動元の横行高さが移動先の横行高さより高いため、パレット10と移動先との干渉を回避し、パレット10の横行を円滑に開始できる。
【0064】
また、本発明の実施形態によれば、パレット10を横行させ、パレット10の重心Gが移動先に位置するときに、距離センサ14により検出された検出高さと基準高さとを比較し、検出高さが基準高さと一致するようにケージ3を下方又は上方に昇降させる。これにより、パレット10の重心Gが移動先まで横行した後に、検出高さが基準高さと一致するので、パレット10の横行終了時において、移動元と移動先の横行高さが一致し、パレット10と移動先との干渉を回避し、パレット10の横行を円滑に終了できる。
【0065】
従って、本発明の実施形態によれば、ソフトランディングの動作と機構を省略することができ、かつ膨大なデータと複雑な制御を必要とすることなく、パレット10の横行を円滑に実施できる。
【0066】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
C 棚柱、1 エレベータ式駐車装置、2 吊ロープ、2a 一端、2b 他端、
3 ケージ、3a ケージ本体、3b ケージ吊部、3c 支持ローラ、
4 昇降機構、5 シーブ駆動装置、6 従動滑車、7 駆動シーブ、
8 カウンタウェイト、9 昇降路、10 パレット、11 水平支持面、
12 格納棚、12a 支持金具、12b 支持ローラ、14 距離センサ、
16 位置決め部材、18 位置検出センサ、20 昇降制御装置、
100 エレベータ式駐車装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8