【実施例】
【0023】
図1は本発明に係るワイヤハーネスの一実施形態を示す図であって、(a)はワイヤハーネスの配索状態を示す模式図、(b)はワイヤハーネスの斜視図、
図2は
図1(b)に図示するワイヤハーネスのA−A間の断面図である。
なお、図中の矢印は、前後方向を示している(矢印の各方向は一例であるものとする)。
【0024】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車や一般的な自動車であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスに対し本発明を採用するものとする。
【0025】
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0026】
モータユニット3とインバータユニット4は、本実施例に係る高圧のワイヤハーネス8により接続されている。ワイヤハーネス8は、所謂モータケーブルと呼ばれるものである。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両床下11に配索されている。また、車両床下11に沿って略平行に配索されている。車両床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が挿通されている。
【0027】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13が公知の方法で電気的に接続されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4に対し公知の方法で電気的に接続されている。
【0028】
なお、本発明は、上記ワイヤハーネス9にも適用することができるものとする。
【0029】
ここで本実施例での補足説明をすると、モータユニット3は、モータ及びジェネレータを構成に含むものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含むものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。なお、例えば、キャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0030】
図1(a)に図示するモータユニット3とインバータユニット4とを繋ぐ本実施例に係るワイヤハーネス8は、
図1(b)に図示するように、電線部15と、シールド部材16と、外装部材17とを備えている。以下、ワイヤハーネス8の各構成について説明する。
【0031】
まず、電線部15について説明する。
図1(b)に図示するように、電線部15は、三本の電線18〜20を同一方向(
図1(b)においては、前後方向)に纏めて構成されている。このような構成を備える電線部15は、
図2に図示するように、電線部15を、この長手方向に直交するように切断し電線部15の中心軸X1方向から視たとき、電線18〜20が俵積み状に配置されている。本実施例においては、電線18〜20は、公知の高圧電線であって、導体21と、この導体21を被覆する絶縁被覆22とを備えている。
【0032】
図2に図示する電線部15における隣り合う各電線18〜20は、この電線間(
図2においては、電線18と電線19との間、電線18と電線20との間、及び電線19と電線20との間)に、後述するシールド部材16が進入することができるような間隔を有している。
【0033】
図2に図示する各電線18〜20の電線間には、後述するようにシールド部材16が介在するように配置されることから、各電線18〜20は、電線間の静電容量が所定の静電容量となるように互いに所定の間隔をあけて整列されている。
【0034】
なお、上記電線部15を構成する電線の本数は、上記に限定されるものではない。その他、例えば、電線の本数を二本としてもよいものとする(後述する変形例2,3参照)。
【0035】
つぎに、シールド部材16について説明する。
図2に図示するように、シールド部材16は、電線部15の外周を一括して包囲することができるように形成された電磁シールド用の部材(電磁波対策用のシールド部材)である。本実施例においては、シールド部材16は、多数の素線を筒状に編んでなる編組が採用されている。シールド部材16は、電線部15の全長と略同等の長さに形成されている。シールド部材16は、この内径が電線部15の外周よりも大きくなるように形成されている。すなわち、シールド部材16は、電線部15に対して、多少ぶかぶかとなるように形成されている。
【0036】
シールド部材16は、電線部15の外周を一括して包囲することができる他、
図2に図示するように、電線部15における隣り合う各電線18〜20の電線間に、略U字状に屈曲した、このシールド部材16の一部が介在するように配置されている。
【0037】
各電線18〜20の電線間に介在するシールド部材16は、このシールド部材16の上記略U字状に屈曲した部分が元に戻ろうとする力によって、隣り合う各電線18〜20の電線間に所定の間隔をあけることができる。この「所定の間隔」は、隣り合う各電線18〜20の電線間の静電容量を所望の静電容量に低減することができるような間隔であるものとする。また、各電線18〜20の電線間に介在するシールド部材16は、隣り合う各電線18〜20の電線間を遮蔽するような構成及び構造であることから、隣り合う各電線18〜20の電線間による静電容量を遮断するようになっている。
【0038】
図2に図示するように、隣り合う各電線18〜20の電線間に介在するシールド部材16は、この先端部が電線部15の中心軸X1の位置まで進入するように配置されている。シールド部材16は、電線部15の中心軸X1の位置まで進入すると、
図2に図示するように、各電線18〜20それぞれの略全周を包囲するように配置されるようになる。すなわち、シールド部材16は、各電線18〜20それぞれの略全周を遮蔽するようになっている。
【0039】
シールド部材16は、隣り合う各電線18〜20の電線間に対して挿抜自在であるものとする。このようなシールド部材16は、回路に発生したサージ電圧に応じて、このシールド部材16を各電線18〜20の電線間に対して挿抜することで、電線間の静電容量の低減量を調整することができる。
【0040】
シールド部材16は、この長手方向の一端がモータユニット側接続部(図示せず)を介してモータユニット3のシールドケース等に接続されている。また、シールド部材16は、この長手方向の他端がインバータユニット側接続部(図示せず)を介してインバータユニット4のシールドケース等に接続されている。
【0041】
なお、シールド部材16は、電磁波対策をすることができるものであれば、編組に限定されるものではない。この他、例えば、導電性を有する金属箔や、この金属箔を含む部材、又は、導電性を有する布等を採用してもよいものとする。
【0042】
つぎに、外装部材17について説明する。
図1(b)及び
図2に図示する外装部材17は、絶縁性を有する樹脂材料にて成形され、シールド部材16に包囲された電線部15の外周に配置される部材である。外装部材17は、電線部15を構成する電線の本数と同じ数(本実施例においては、三つ)備えている。外装部材17は、筒状に形成され、且つ、切り欠き部23を有する形状に形成されている。切り欠き部23は、外装部材17の長手方向に沿って、この外装部材17の長手方向の一端から他端まで延びて形成されている。このような外装部材17は、外装部材17を、この長手方向に直交するように切断し電線部15の中心軸X1方向から視たとき、略C字状となるように形成されている。
【0043】
本実施例においては、外装部材17は、コルゲートチューブが採用されている。このような外装部材22は、
図1(b)に図示するように、蛇腹管形状に形成されている。外装部材17は、電線部15(電線18〜20)の全長と略同等の長さに形成されている。外装部材17は、ワイヤハーネス8の梱包状態や輸送時、車両への経路配索時に、それぞれ所望の角度で撓ませることができるように形成されている。すなわち、外装部材17は、撓ませて曲げ形状にすることができるとともに、
図1(b)に図示するような真っ直ぐな元の状態に戻すことも当然にできるように形成されている。
【0044】
図2に図示するように、各外装部材17は、シールド部材16に包囲された電線部15の外周に配置されたとき、この各外装部材17それぞれの内面24と電線18〜20の絶縁被覆22の外面25との間に介在するシールド部材16を外側から押さえ付けることができるように形成されている。
【0045】
各外装部材17は、シールド部材16に包囲された電線部15の外周に配置されたとき、互いに固定されている。各外装部材17同士は、特に図示しないが、公知のテープ巻きにより固定されているものとする。
【0046】
つぎに、上記構成及び構造に基づきながら、ワイヤハーネス8の製造工程(作業)について説明する。
【0047】
第一工程では、あらかじめ、所定長さに、電線部15(電線18〜20)、シールド部材16、及び外装部材17を、それぞれ製造しておき、しかる後、電線部15をシールド部材16にて一括して包囲する。
【0048】
第二工程では、隣り合う各電線18〜20の電線間に、シールド部材16を進入させる。シールド部材16は、治具(図示せず)を用いて、このシールド部材16が略U字状になるように進入させる(
図2参照)。
【0049】
ここで、隣り合う各電線18〜20の電線間に進入させたシールド部材16は、この先端部を電線部15の中心軸X1の位置まで進入させる。
【0050】
第三工程では、シールド部材16に包囲された電線部15の外周に、外装部材17を配置する(
図2参照)。ここで、外装部材17は、この内面24と電線18〜20の絶縁被覆22の外面25との間に介在するシールド部材16を、外装部材17の内面24にて外側から押さえ付けるように配置する。
【0051】
第四工程では、特に図示しないが、各外装部材17の外面26にテープを巻き付け、各外装部材17同士を固定する。
【0052】
以上により、ワイヤハーネス8の製造作業が完了し、ワイヤハーネス8が完成する。なお、ワイヤハーネス8の長手方向の両端部の処理については、詳細な説明を省略する。
【0053】
このようなワイヤハーネス8によれば、シールド部材16が隣り合う各電線18〜20の電線間に介在するように配置されることから、各電線18〜20を、電線間の静電容量が所定の静電容量となるように互いに所定の間隔をあけて整列させることができる。これにより、各電線18〜20の電線間の静電容量を所望の静電容量に調整することができ、ワイヤハーネス8のインピーダンスを増加させることができる。ワイヤハーネス8のインピーダンスを増加させることにより、回路(モータユニット3、ワイヤハーネス8及びインバータユニット4)全体のインピーダンスの整合を図り、反射を抑制することができる。
【0054】
また、ワイヤハーネス8によれば、シールド部材16が隣り合う各電線18〜20の電線間に介在するように配置されることから、隣り合う各電線18〜20の電線間による静電容量を遮断することができる。これにより、各電線18〜20の電線間の静電容量を、より効率的に減少させ所望の静電容量に調整することができる。
【0055】
また、ワイヤハーネス8によれば、シールド部材16は、隣り合う各電線18〜20の電線間に対して挿抜することも可能であることから、回路に発生したサージ電圧に応じて、シールド部材16を隣り合う各電線18〜20の電線間に対して挿抜することで、電線間の静電容量の低減量を調整することができる。
【0056】
また、ワイヤハーネス8によれば、シールド部材16が隣り合う各電線18〜20の電線間にて、電線部15の中心軸X1の位置まで進入するように配置されることにより、各電線18〜20それぞれの略全周を、シールド部材16によって包囲された状態にすることができる。これにより、隣り合う各電線18〜20の電線間による静電容量を、より確実に遮断することができることから、電線間の静電容量を、より効率的に減少させ所望の静電容量に調整することができる。
【0057】
さらに、ワイヤハーネス8によれば、各外装部材17がシールド部材16を外側から押さえ付けるように配置されることから、シールド部材16が、隣り合う各電線18〜20の電線間に介在するように配置された状態を保持することができる。これにより、シールド部材16が隣り合う各電線18〜20の電線間から抜けることがないため、各電線18〜20は、電線間の静電容量が所定の静電容量となるように互いに所定の間隔をあけて整列した状態を保持することができる。また、シールド部材16が隣り合う各電線18〜20の電線間から抜けることがないため、各電線18〜20の電線間による静電容量を、より良好に遮断することができる。
【0058】
以上のワイヤハーネス8は、
図3に図示する変形例1、
図4に図示する変形例2、又は、
図5に図示する変形例3に置き換えてもよいものとする。以下、
図3−
図5を参照しながら、ワイヤハーネスの変形例1−3について説明する。
【0059】
図3はワイヤハーネスの変形例1を示す断面図、
図4はワイヤハーネスの変形例2を示す断面図、
図5はワイヤハーネスの変形例3を示す断面図である。
【0060】
まず、変形例1について説明する。
図3に図示するワイヤハーネス30は、外装部材31を備えている点において上記実施例と異なっている。外装部材31は、切り欠き部32を有している。切り欠き部32は、外装部材31の周方向の幅が、実施例における外装部材17の切り欠き部23(
図2参照)に比べて小さくなるように形成されている。
【0061】
このような外装部材31は、
図3に図示するように、この外装部材の周方向の一端33及び他端34が隣り合う各電線18〜20の電線間に進入し、電線間に介在するように配置されたシールド部材16を電線間に保持することができるように形成されている。外装部材の周方向の一端33及び他端34は、特許請求の範囲における「外装部材の周方向の両端部」に相当するものである。
【0062】
このようなワイヤハーネス30によれば、実施例と同じ作用が生じる他、つぎのような作用が生じる。すなわち、外装部材31の周方向の一端33及び他端34が隣り合う各電線18〜20の電線間に進入し、電線間に介在するように配置されたシールド部材16を電線間に保持することができる。これにより、シールド部材16が隣り合う各電線18〜20の電線間から抜けることが、より確実に防止されるため、各電線18〜20は、電線間の静電容量が所定の静電容量となるように互いに所定の間隔をあけて整列した状態を保持することができる。
【0063】
また、ワイヤハーネス30によれば、隣り合う各電線18〜20の電線間に進入した外装部材31の周方向の一端33及び他端34は、隣り合う各電線18〜20の電線間に介在することから、外装部材31の厚み分、隣り合う各電線18〜20の電線間の距離を大きくすることができる。これにより、電線間の静電容量を、より効率的に減少させ所望の静電容量に調整することができる。
【0064】
つぎに、変形例2について説明する。
図4に図示するワイヤハーネス40は、電線部41を備えている点において実施例と異なっている。電線部41は、二本の電線44,45を同一方向に纏めて構成されている。電線44,45は、導体46と、この導体46を被覆する絶縁被覆47とを備えている。
【0065】
図4に図示するように、電線部41の中心軸X3は、電線44の導体46の中心軸Y1と電線45の導体46の中心軸Y2とを結んだ線分A1を二等分する点に相当する。シールド部材42は、電線44,45間にて、電線部41の中心軸X3の位置まで進入するように配置されている。
【0066】
このようなワイヤハーネス40によれば、実施例と同じ作用が生じる。
【0067】
つぎに、変形例3について説明する。
図5に図示するワイヤハーネス50は、電線部51と、外装部材53とを備えている点において実施例と異なっている。
【0068】
電線部51は、二本の電線54,55を同一方向に纏めて構成されている。電線52,53は、導体56と、この導体56を被覆する絶縁被覆57とを備えている。
【0069】
図5に図示するように、電線部51の中心軸X4は、電線54の導体56の中心軸Z1と電線55の導体56の中心軸Z2とを結んだ線分A2を二等分する点に相当する。シールド部材52は、電線54,55間にて、電線部51の中心軸X4の位置まで進入するように配置されている。
【0070】
外装部材53は、切り欠き部58を有している。切り欠き部58は、外装部材53の周方向の幅が、実施例における外装部材17の切り欠き部23(
図2参照)に比べて小さくなるように形成されている。
【0071】
このような外装部材53は、
図5に図示するように、この外装部材53の周方向の一端59及び他端60が電線54,55間に進入し、この電線54,55間に介在するように配置されたシールド部材52を電線54,55間に保持することができるように形成されている。
【0072】
このようなワイヤハーネス50によれば、実施例及び変形例1と同じ作用が生じる。
【0073】
つぎに、ワイヤハーネス8,30,40,50の効果について説明する。
以上、
図1−
図5を参照しながら説明してきたように、ワイヤハーネス8,30,40,50によれば、電線間の静電容量を所望の静電容量に調整し、ワイヤハーネス8,30,40,50のインピーダンスを増加させることにより、回路全体のインピーダンスの整合を図り反射を抑制することができることから、サージ電圧を好適に抑制することができるという効果を奏する。
【0074】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。