特許第6899746号(P6899746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899746
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】全固体電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20210628BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20210628BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20210628BHJP
【FI】
   H01M10/0585
   H01M10/0562
   H01M50/477
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-181495(P2017-181495)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2019-57436(P2019-57436A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】西村 剛
【審査官】 藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−251465(JP,A)
【文献】 特開2014−203740(JP,A)
【文献】 特開2000−182579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 50/477
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の電極と、その間に配置された固体電解質を有する少なくとも1つの電池セルと、
前記電池セルを狭持する第1および第2の筐体部と、
前記第1および第2の筐体部を収納する可撓性外装体と、を備え、
前記第1および第2の筐体部はそれぞれ、板状部品と、前記板状部品から電極厚さ方向に互いに延びる側壁とを有し、
前記第1の筐体部の前記側壁は、対向する前記第2の筐体部の前記側壁の少なくとも一部を覆うことを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
前記全固体電池は、複数の前記電池セルを含むセル積層体を備え、
前記セル積層体の積層高さは、前記側壁より大きいことを特徴とする請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記全固体電池は、複数の前記電池セルを含むセル積層体を備え、
前記第1の筐体部または前記第2の筐体部は、位置合わせする係止部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の全固体電池。
【請求項4】
第1および第2の電極の間に配置された固体電解質を有する少なくとも1つの電池セルを準備する工程と、
板状部品と、前記板状部品から電極厚さ方向に互いに延びる側壁とを有する第1および第2の筐体部を準備する工程と、
前記第1および第2の筐体部の間に前記電池セルを挿入する工程と、
前記第1の筐体部の前記側壁が対向する前記第2の筐体部の前記側壁の少なくとも一部を覆うように、前記第1および第2の筐体部を配置する工程と、
前記第1および第2の筐体部を可撓性外装体内に収納する工程と、
前記可撓性外装体内を減圧封止する工程と、を有することを特徴とする全固体電池の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池およびその製造方法に関し、とりわけラミネートフィルム内に収容された全固体電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池に比較して、エネルギー密度が高く、高電圧での動作が可能であるため、小型軽量化が可能であり、自動車および携帯電話等の電源として広く利用されることが期待されている。一方、こうした電池の用途拡大に伴い、自動車用電池および据え置き型電池などの大型電池(大容量電池)が注目されている。大型電池では、小型電池に比べて安全性の確保がさらに重要になる。
【0003】
しかし、一般的なリチウムイオン二次電池は、正極および負極と、これらの間のエチレンカーボネート等の液体の電解質(電解液)とを有するが、こうした電解液は、一般的に、液漏れ、発火や爆発の危険性がある。そこで、固体電解質を用いた全固体電池が将来の二次電池として有望視されている。
【0004】
これらの電池は、さらなる軽量化および小型化を目的として、電極体(複数の正極および負極がセパレータまたは固体電解質を介して積層されたセル積層体)を収容する外装体を、従来の金属製外装缶からフィルム材料に変更することが検討されている。
【0005】
例えば特許文献1には、ラミネートフィルムの外装体内に電極体(セル積層体)を収容した全固体電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5648747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フィルム材料の外装体を使用した場合、外装体内の電極体の保護が不十分なため、衝撃や振動といった外力により、電極体が損傷もしくは、剥離してしまうといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の態様は、全固体電池に関し、この全固体電池は、第1および第2の電極と、その間に配置された固体電解質を有する少なくとも1つの電池セルと、前記電池セルを狭持する第1および第2の筐体部と、前記第1および第2の筐体部を収納する可撓性外装体と、を備え、前記第1および第2の筐体部はそれぞれ、板状部品と、前記板状部品から電極厚さ方向に互いに延びる側壁とを有し、前記第1の筐体部の前記側壁は、対向する前記第2の筐体部の前記側壁の少なくとも一部を覆うものである。
【0009】
本発明に係る第2の態様は、全固体電池の製造方法に関し、この製造方法は、第1および第2の電極の間に配置された固体電解質を有する少なくとも1つの電池セルを準備する工程と、板状部品と、前記板状部品から電極厚さ方向に互いに延びる側壁とを有する第1および第2の筐体部を準備する工程と、前記第1および第2の筐体部の間に前記電池セルを挿入する工程と、前記第1の筐体部の前記側壁が対向する前記第2の筐体部の前記側壁の少なくとも一部を覆うように、前記第1および第2の筐体部を配置する工程と、前記第1および第2の筐体部を可撓性外装体内に収納する工程と、前記可撓性外装体内を減圧封止する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る態様によれば、電池セルを大気から遮断しながら、電池セルまたはセル積層体を外力から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の比較例1に係る全固体電池を示す断面図である。
図2】本発明の比較例2に係る全固体電池を示す断面図である。
図3】減圧封止した後の比較例2に係る全固体電池を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る全固体電池の断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る全固体電池の製造方法を概略的に示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る全固体電池の製造方法を概略的に示す斜視図である。
図7】実施形態の変形例に係る全固体電池の製造方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して本発明に係る全固体電池およびその製造方法の実施形態を以下説明する。各実施形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(たとえば「上側」および「下側」等)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものでない。なお各図面において、全固体電池の各構成部品の形状または特徴を明確にするため、これらの寸法を相対的なものとして図示し、必ずしも同一の縮尺比で表したものではない。
【0013】
図1は、本発明の比較例1に係る全固体電池101を示す断面図である。比較例に係る全固体電池101は、概略、複数の全固体電池セル10(本願では、単に「電池セル10」ともいう。)を含むセル積層体20と、セル積層体20の上面および下面に配置される板状部品130,140と、セル積層体20および板状部品130,140を包囲する外装体50と、を備える。また全固体電池101は、セル積層体20と板状部品130,140との間に衝撃を吸収する緩衝材(図示せず)を備えていてもよい。またセル積層体20は、単一の電池セル10を含むものであってもよい。
【0014】
各電池セル10は、詳細図示しないが、正極集電体、正極(第1電極または第2電極)、固体電解質層、負極(第2電極または第1電極)、および負極集電体を積層して形成される。またセル積層体6は、単一の電池セル7を含むものであってもよい。
【0015】
固体電解質には、イオン伝導性の無機固体電解質が使用できる。無機固体電解質としては、硫化物(硫化物系固体電解質)、水素化物(水素化物系固体電解質)が好ましい。水素化物には、一般に、錯体水素化物と呼ばれる固体電解質も含まれる。固体電解質の結晶状態は、特に制限されず、結晶性および非晶質のいずれであってもよい。
【0016】
硫化物としては、例えば、LiSと、周期表第13族元素、第14族元素、および第15族元素からなる群より選択された少なくとも一種の元素を含む一種または二種以上の硫化物とを含むものが好ましい。硫化物の具体例としては、LiS−SiS、LiS−P、LiS−GeS、LiS−B、LiS−Ga、LiS−Al、LiS−GeS−P、LiS−Al−P、LiS−P、LiS−P−P、LiX−LiS−P、LiX−LiS−SiS、LiX−LiS−B(X:I、Br、Cl、またはI)などが挙げられる。
【0017】
水素化物としては、例えば、水素化ホウ素リチウムの錯体水素化物などが挙げられる。錯体水素化物としては、例えば、LiBH−LiI系錯体水素化物およびLiBH−LiNH系錯体水素化物、LiBH−P、LiBH−Pなどが挙げられる。固体電解質は、一種を単独で用いてもよく、必要に応じて、二種以上を併用してもよい。
【0018】
正極は、特に限定されることなく、全固体電池の正極活物質として使用される任意のものを用いることができる。正極活物質は、例えば、コバルト、ニッケル、および/またはマンガン等を含むリチウム含有酸化物を含んでもよい。より具体的には、全固体電池の正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(スピネル型マンガン酸リチウム(LiMnなど)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNi1/3Co1/3Mn1/3など)、Li過剰の複合酸化物(LiMnO−LiMO)などの酸化物の他、酸化物以外の化合物を含んでもよい。酸化物以外の化合物としては、例えば、オリビン系化合物(LiMPO)、イオウ含有化合物(LiSなど)などが挙げられる。なお、上記式中、Mは遷移金属を示す。
【0019】
負極は、電荷のキャリアとなるイオンを挿入および脱離することができるものならば、特に限定されることなく、全固体電池で使用される公知の負極活物質を用いることができる。より具体的には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛など)、ハードカーボン、非晶質炭素などの炭素質材料の他、リチウムイオンを合金化、脱合金化が可能なリチウム金属または合金、Si単体等を含むものであってもよい。
【0020】
また各電池セル10は、正極集電体および負極集電体から電気を取り出す正極タブおよび負極タブ(ここでは図示せず)を有する。各電池セル10の正極タブ同士および負極タブ同士を接続して、各電池セル10を並列に接続してもよいし、隣接する電池セル10の正極タブと負極タブとを接続して、各電池セル10を直列に接続してもよい。またセル積層体20は、複数の電池セル10を積層して形成されるものとして上記説明したが、単一の電池セル10を有するものであってもよい。
【0021】
また板状部品130,140は、所与の剛性を有する材料であれば任意の材料で形成され、例えばステンレスもしくはアルミニウム合金等の金属、またはフッ素樹脂等のプラスチックで形成される。
【0022】
こうして構成されたセル積層体20および板状部品130,140を、ラミネートフィルムで覆い(パウチし)、ラミネート外装体50で封止された全固体電池101を形成する。その後、ラミネート外装体50内に画定された封止空間を減圧(真空引き)する。このとき大気圧に相当する圧力が、ラミネート外装体50および板状部品130,140を介してセル積層体20を積層方向に均一に加圧する。その結果、図1に示す全固体電池101は、各電池セル10を大気から遮断し、セル積層体の主面および側面に加わる外力からセル積層体20を保護することができる。ただし、比較例1に係る全固体電池101は、ラミネート外装体50の封止空間を減圧(真空引き)したとき、セル積層体20の側面がラミネートフィルムに密着するため、セル積層体20の側面に加わる外力には十分に対抗することができない。
【0023】
図2は、本発明の比較例2に係る全固体電池102を示す断面図である。比較例2に係る全固体電池102は、セル積層体20の上面および下面に配置される板状部品130,140がセル積層体20より幅広である(面積がより大きい)点を除いて同様の構成を有するものである。しかしながら、セル積層体20および板状部品130,140を収容したラミネート外装体50の封止空間を減圧(真空引き)したとき、図3に示すように、比較例1と同様、セル積層体20の側面がラミネートフィルムに密着し、比較例2に係る全固体電池102は、セル積層体20の側面に加わる外力には十分に対抗できない虞がある。
【0024】
(本発明の実施形態)
本発明の実施形態に係る全固体電池1は、比較例1および2で上記説明したように、板状部品130,140(図1および図2)で狭持されたセル積層体20がラミネート外装体50内に収容されるものでもない。図4は、本発明の実施形態に係る全固体電池1の断面図であって、図1および図2と同様のものである。また図5および図6は、本発明の実施形態に係る全固体電池1の製造方法を概略的に示す斜視図である。
【0025】
(全固体電池の全体的構成)
本発明の実施形態に係る全固体電池1は、概略、図4図6に示すように、固体電解質を含む複数の電池セル10で構成されたセル積層体20と、セル積層体20を狭持する上側筐体部30および下側筐体部40(本願では、「第1の筐体部30」および「第2の筐体部40」ともいう。)と、これらを減圧封止する可撓性外装体50とを備える。可撓性外装体50は、ラミネートフィルムからなる外装体50であってもよい。
【0026】
上側筐体部30は、図5に示すように、天板32(本願では、「第1の板状部品32」ともいう。)と、天板32から下方に延びる一組の上側側壁34a〜34d(図4では2つのみの上側側壁34を示す。)とを有する。同様に、下側筐体部40は、底板42(本願では、「第2の板状部品42」ともいう。)と、底板42から上方に延びる一組の下側側壁44a〜44d(図4では2つのみの下側側壁44を示す。)とを有する。すなわち上側筐体部30の上側側壁34a〜34dおよび下側筐体部40の下側側壁44a〜44dは、電極厚さ方向に互いに延びるように構成されている。なお、以下の説明において、セル積層体20は、複数の電池セル10を積層して形成されるものとして説明するが、単一の電池セル10を有するものであってもよい。
【0027】
さらに上側筐体部30および下側筐体部40は、可撓性外装体50内の封止空間が減圧されたとき、大気圧により均一に加圧されて、上側側壁34a〜34dが下側側壁44a〜44dの少なくとも一部を覆うように構成されている。ただし、上側側壁34a〜34dおよび下側側壁44a〜44dの積層方向の高さ(厚み)は、セル積層体20の積層方向の高さ(厚み)より小さく、すなわちセル積層体20の高さ(厚み)は、上側側壁34a〜34dおよび下側側壁44a〜44dより大きくなるように設計されている。これは、可撓性外装体50内の封止空間が減圧されたとき、大気圧に相当する圧力が上側筐体部30および下側筐体部40を介してセル積層体20に加わるためである。
【0028】
全固体電池では、充放電反応が、全て固体と固体との界面(例えば活物質と固体電解質との界面)で生じる。そのため、全固体電池では、電解液を用いる電池とは異なり、固体と固体との界面(例えば活物質と固体電解質との界面)における界面抵抗が電池の性能を大きく左右する。本発明に係る実施形態によれば、セル積層体20が大気圧で加圧されることで、固体と固体との界面における界面抵抗を低減できる。
【0029】
(全固体電池の製造方法)
ここで図5図7を参照して、全固体電池の製造方法について以下詳細に説明する。
まず、複数の電池セル10を準備する。電池セル10は、比較例1で説明したように、正極集電体、正極(第1電極または第2電極)、固体電解質層、負極(第2電極または第1電極)、および負極集電体を備える。固体電解質層は、例えば硫化物系の固体電解質(例えばLiS−P系固体電解質)または水素化物系(例えばLiBH水素化ホウ素リチウム固体電解質)の固体電解質であってもよく、本発明は、これらの固体電解質に限定されるものではない。また、電池セル10は、正極集電体および負極集電体に電気的に接続された正極タブ16aおよび負極タブ16bを有する。
【0030】
次に、上側筐体部30および下側筐体部40を準備する。上側筐体部30は、矩形形状を有する天板32と、天板32の4辺から下方に延びる上側側壁34a〜34dとを有する。下側筐体部40は、同様の矩形形状を有する底板42と、底板42の4辺から上方に延びる下側側壁44a〜44dとを有する。上側筐体部30が下側筐体部40に嵌め合わされるとき、上側側壁34a〜34dおよび下側側壁44a〜44dが実質的に当接するように(すなわち実質的な間隙を設けて、不要なデッドスペースが形成されないように)、天板32は、下側側壁44a〜44dの厚みに相当する分だけ底板42より大きく形成する。また後述のように、上側筐体部30が下側筐体部40に嵌め合わされることで、正極タブ16aおよび負極タブ16bが突出する開口部64a,64b(図6)を形成するように、1つの上側側壁34aおよび下側側壁44aは、その他のものより幅狭に形成する。
【0031】
上側筐体部30および下側筐体部40は、例えばステンレスもしくはアルミニウム合金等の平坦な金属板をプレス加工し、折曲加工することにより形成することができる。また、フッ素樹脂等のプラスチックを用いてモールド成形することにより上側筐体部30および下側筐体部40を形成してもよい。
【0032】
図4には図示されていないが、全固体電池1は、下側筐体部40の底板42上に配置される緩衝材(クッション材)60を有していてもよい。緩衝材60は、衝撃を吸収し、絶縁性を有する弾性体であれば、任意の構成材料を用いて形成することができ、例えば絶縁フィルムが被膜された板ばねや、ゴム製または樹脂製の板状部材で形成してもよい。
【0033】
そして緩衝材60(または下側筐体部40の底板42)の上に複数(図5では5つ)の電池セル10を順次配置し、セル積層体20を構成する。セル積層体20は、下側側壁44a〜44dに対向する側部12a,12bおよび端部14a,14bを有する。複数の電池セル10を位置合わせして配置することを容易にするために、下側筐体部40は、セル積層体20の側部12a,12bおよび一方の端部14bに当接するように配置されたスペーサ46(係止部、図5では一方のスペーサ46のみを図示)を有していてもよい。スペーサ46は、複数の電池セル10の位置合わせを行うものであれば、任意の形態を有し、図示のように角部に限定して配置されるものでなく、2つまたはそれ以上のものを設けてもよい。
【0034】
さらに、セル積層体20の上には、別の緩衝材62を配置してもよい。この緩衝材62(またはセル積層体20)の上に上側筐体部30を配置する。上側筐体部30および下側筐体部40は、前者が後者に嵌め合わされるような相補的な形状および寸法を有するとともに、正極タブ16aおよび負極タブ16bが突出する開口部64a,64bが形成されるように1つの上側側壁34aおよび下側側壁44aが他のものより幅狭に構成されている。
【0035】
次に、セル積層体20が挿入された上側筐体部30および下側筐体部40をラミネートフィルム等の可撓性外装体50で覆い(パウチし)、封止して、図4に示すように、可撓性外装体50の内部に画定された封止空間を減圧する。封止空間の減圧は、封止空間を真空引きするか、または図示しない真空チャンバ(減圧チャンバ)内において、可撓性外装体50の封止に至る上記一連の工程を行った後に、真空チャンバから取り出して大気圧を加えることにより実施してもよい。
【0036】
このように本発明の実施形態に係る全固体電池1は、個別に加圧装置等を必要とせず、大気圧に相当する圧力が天板32ならびに底板42を介してセル積層体20を積層方向に均一に加圧するように構成される。この構成により、電池セル10およびセル積層体20の側部12a,12bおよび端部14a,14bを外力から保護することができる。
【0037】
また上側筐体部30の上側側壁34a〜34dおよび下側筐体部40の下側側壁44a〜44dの積層方向の高さは、セル積層体20の積層方向の高さ(厚み)より小さくなるように設計されているので、可撓性外装体50内の封止空間が減圧されたとき、大気圧に相当する圧力が、確実にセル積層体20の上面および下面に加えられ、上側筐体部30および下側筐体部40にのみ加えられることを防止することができる。
【0038】
さらに下側筐体部40は、セル積層体20の側部12a,12bまたは端部14a,14bに当接するように配置されたスペーサ46を有するので、複数の電池セル10(ひいては各電池セル10から延びる複数の正極タブ16aおよび負極タブ16b)を容易に位置合わせして下側筐体部40上に順次配置することができる。したがって、この実施形態に係る製造方法によれば、複数の電池セル10を簡便な手法で位置合わせすることができるので、全固体電池1の製造コストを実質的に削減することができる。
【0039】
(変形例)
上記実施形態において、複数の電池セル10を位置合わせするために、下側筐体部40の角部に配置されたスペーサ46について説明した。図7は、実施形態の変形例に係る全固体電池1の製造方法を示す斜視図であって、図5と同様のものである。変形例に係る上側筐体部30および下側筐体部40は、セル積層体20の側部12a,12bおよび端部14bを位置合わせするためのロッド(細棒)70a〜70gを挿通させる複数の貫通孔68を有する。図7の上側筐体部30および下側筐体部40には、セル積層体20の両方の側部12a,12bに対向して2つ、図中手前側の端部14aに対向して1つ、そして図中奥手側の端部14bに対向して2つの貫通孔68を設ける。
【0040】
この変形例に係る製造方法において、複数の電池セル10を下側筐体部40の底板42の上方に順次配置する前に、セル積層体20の両方の側部12a,12bおよび図中奥手側の端部14bに対向して2本ずつ(合計6本)のロッド70a〜70fを上側筐体部30および下側筐体部40に設けた貫通孔68に挿通させる。そして上記実施形態と同様、複数の電池セル10を下側筐体部40の底板42の上方に順次配置し、上側筐体部30を下側筐体部40に嵌め合わせる。このとき、各電池セル10は、その両方の側部12a,12bにおいて位置合わせされている。さらに電池セル10を端部14a,14bにおいても確実に位置合わせするために、図中手前側の端部14aに対向して設けた貫通孔68にもロッド70gを挿通させる。
【0041】
そして、各ロッド70a〜70gを貫通孔68から引き抜いた後に、上側筐体部30および下側筐体部40を可撓性外装体50を用いて封止し、可撓性外装体50の内部に画定された封止空間を減圧することにより、上記実施形態と同様の全固体電池1を製造する。変形例に係る製造方法によれば、貫通孔68に挿通される各ロッド70a〜70gを用いることにより、各電池セル10の位置合わせをより確実に、かつ高い信頼性で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、全固体電池セルを大気から遮断する筐体を有する全固体電池に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10…全固体電池(電池セル)、16a…正極タブ、16b…負極タブ、
20…セル積層体、
30…上側筐体部(第1の筐体部)、32…天板(第1の板状部品)、34…上側側壁、
40…下側筐体部(第2の筐体部)、42…底板(第2の板状部品)、44…下側側壁、
46…スペーサ、
50…外装体、
60,62…緩衝材、64a,64b…開口部、68…貫通孔、
70…ロッド(細棒)、
101…比較例1に係る全固体電池、
102…比較例2に係る全固体電池、
130,140…板状部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7