(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施例によるシフト装置100(操作装置の一例)の外観斜視図である。
図1には、直交する3軸X,Y,Zが定義されている。Z方向は、正側が"上側"に対応する。
図2は、シフト装置100の支持体110の単品状態の斜視図であり、
図3は、ヨーク60の斜視図である。
図4は、ヨーク60と操作レバー2との関係を示す斜視図である。
図4では、操作レバー2の一部(シフトノブ2a)の図示が省略されている。
図5は、永久磁石50を通るXY平面で切断した際のシフト装置100の断面図である。
図5では、永久磁石50の極性"S"及び"N"が示されるともに、ヨーク60のX方向及びY方向の中心線C1,C2が示されている。
【0011】
シフト装置100は、車両に設けられるのが好適である。但し、シフト装置100は、航空機や鉄道等に設けられてもよいし、ゲーム機に適用されてもよい。
【0012】
シフト装置100は、操作レバー2が変速機に直接接続されている機械制御方式ではなく、シフトバイワイヤ方式である。シフトバイワイヤ方式のシフト装置100は、リンク機構等の機械的な構成が不要になるため、小型化が図れる。従って、車両内におけるシフト装置100のレイアウトに自由度を持たせることができる。また、操作レバー2を比較的小さな力で操作できるので、シフトチェンジの操作が簡単になる。
【0013】
シフト装置100は、傾倒操作可能な操作レバー2と、操作レバー2を傾動可能に支持する支持体110とを含む。
【0014】
操作レバー2には、上端にシフトノブ2aが取り付けられる。シフトノブ2aは、ユーザにより把持される操作部である。操作レバー2には、傾倒軸16が一体的に取付けられている。傾倒軸16の両端は、支持体110側の軸受け部110aに回転可能に支持される。これにより、操作レバー2は、支持体110に対して、第1傾倒方向(D1方向)又は第2傾倒方向(D2方向)へ傾倒操作が可能に支持される。但し、変形例では、操作レバー2は、傾倒軸16に回転可能に支持されてもよい。この場合、傾倒軸16は、支持体110側に固定される。
【0015】
支持体110は、操作レバー2(操作部材の一例)を、X方向(第1方向の一例)の傾動中心軸を中心にして傾動可能に支持する。傾動中心軸は、傾倒軸16により画成される。
【0016】
支持体110は、枠体112と、傾倒軸16用の取り付け部114とを含む。尚、変形例では、枠体112と取り付け部114とは、別々の部材により形成されてもよい。
【0017】
枠体112は、矩形状の枠形態であり、枠内の空間112aに、操作レバー2の下端22が配置される。枠体112は、操作レバー2の下端22とヨーク60との間に設けられる。枠体112は、空間112a側の表面は平面状である。他方、枠体112は、空間112a側とは反対側の表面は、後述の凸部62に対応した凹凸状になる。枠体112は、後述するように、永久磁石50とヨーク60の間の吸引力によって操作レバー2にX方向で当接する摺動部材の一例を形成する。枠体112は、後述するヨーク60に囲繞される態様で、ヨーク60に接合される。
【0018】
枠体112は、X方向の負側(第1側の一例)に第1部位112−1と、X方向の正側(第1側とは逆側の一例)に第2部位112−2とを含む。また、枠体112は、更に、Y方向の正側に第3部位112−3と、Y方向の負側に第4部位112−4とを含む。第1部位112−1乃至第4部位112−4は、連続することで矩形状の枠形態となる。
【0019】
X方向で第1部位112−1及び第2部位112−2の間の距離d1は、
図5に示すように、操作レバー2の下端22のX方向の幅d2よりも大きい。従って、操作レバー2は、枠体112(及びそれに伴いヨーク60)に対して、X方向で距離d1と幅d2の差分の距離Δ1(=d2−d1)(以下、「第1距離Δ1」と称する)だけ変位可能となる。これにより、操作レバー2の下端22は、第1部位112−1及び第2部位112−2のうちの一方だけに当接可能となる。
【0020】
ここで、操作レバー2の下端22が第1部位112−1及び第2部位112−2の双方にX方向で当接する場合は、摺動抵抗が過大となるおそれがある。この点、0より大きい第1距離Δ1を設計値として設けることで、操作レバー2の下端22が第1部位112−1及び第2部位112−2のうちの一方のみにX方向で当接できるので、摺動抵抗が過大となる不都合を防止できる。第1距離Δ1は、例えば、関連する部品の製造公差や組み付け公差等を吸収できる態様で設定される。これにより、部品の製造公差等が生じた場合でも、摺動抵抗が過大となる不都合を防止できる。
【0021】
取り付け部114は、枠体112のX方向の両側に設けられ、対をなす。取り付け部114には、上述のように、X方向の傾倒軸16が回転可能に支持される。
【0022】
シフト装置100は、更に、永久磁石50と、ヨーク60とを含む。
【0023】
永久磁石50は、操作レバー2に設けられる。本実施例では、一例として、永久磁石50は、操作レバー2の下端22に設けられる。即ち、
図5に示すように、操作レバー2の下端22の中空部に永久磁石50が嵌め込まれる。永久磁石50と操作レバー2との間の結合方法は任意である。例えば永久磁石50と操作レバー2は、接着や圧入、一体成形等により一体化されてもよい。
【0024】
永久磁石50は、操作レバー2の下端22に設けられることで、傾倒操作の際の操作レバー2の動きに伴って移動する。以下、傾倒操作の際の操作レバー2の動きに伴う永久磁石50の移動軌跡を、単に「永久磁石50の移動軌跡」又は「移動軌跡」とも称する。永久磁石50の移動軌跡は、X方向に視て、傾倒軸16まわりの円弧状となる。また、永久磁石50の移動軌跡は、Z方向に視て、Y方向に平行である。また、永久磁石50の移動軌跡は、Z方向に視て、X方向でヨーク60の中心付近を通る。
【0025】
永久磁石50は、X方向で隣合う異なる磁極を有する。
図5では、永久磁石50は、X方向の中心位置でS極とN極とが分離し、N極がX方向の負側に位置する。尚、変形例では、N極がX方向の正側に位置してもよい。
【0026】
ヨーク60は、永久磁石50の移動軌跡を取り囲む態様で延在する。換言すると、ヨーク60は、矩形状の枠形態であり、枠内の空間61に、永久磁石50の移動軌跡が規定される。
【0027】
ヨーク60は、例えば鉄等の軟質磁性体により形成される。ヨーク60は、枠体112と一体に形成されてもよい。例えばヨーク60は、樹脂のインサート成形により、支持体110と一体に形成されてもよい。尚、上述したように枠体112と取り付け部114とが別々の部材により形成される場合は、ヨーク60は、樹脂のインサート成形により、枠体112と一体に形成されてもよい。インサート成形の場合、部品(ヨーク60と枠体112との一体品)を精度よく製作することができ、かつ部品点数が増えないので組立て性が良好となる。尚、変形例では、ヨーク60は、別に形成された枠体112に接着等により一体化されてもよい。
【0028】
ヨーク60は、X方向で永久磁石50の移動軌跡に近づく方向に突出する凸部62を有する。即ちヨーク60は、Z方向に視て、X方向でヨーク60の中心側に向けて突出する凸部62を有する。
【0029】
ヨーク60は、凸部62を有することで、永久磁石50と協動してクリック感を創出できる(
図6A及び
図6B参照)。即ち、永久磁石50とヨーク60との間の吸引力は、永久磁石50が凸部62にX方向で対向する位置と、永久磁石50が凸部62にX方向で対向しない位置とで異なる。このような吸引力の変化によってクリック感を創出できる。
【0030】
凸部62は、好ましくは、X方向で互い対向し合う態様で対で設けられる。この場合、一方側だけに凸部62が設けられる場合に比べて、永久磁石50の移動軌跡に沿った、吸引力の変化を大きくできる(
図6B参照)。
【0031】
本実施例では、一例として、凸部62は、3対設けられる。即ち、ヨーク60は、
図3に示すように、Y方向の中心付近の第1の対62−1と、Y方向の両側に第2及び第3の対62−2,62−3を有する。尚、第2及び第3の対62−2,62−3に係る凸部62は、
図3等に示すように、ヨーク60のY方向の端部に連続する態様で形成されている。凸部62が複数の対で設けられる場合は、永久磁石50の移動軌跡に沿った複数の位置でクリック感を創出できる(
図6A及び
図6B参照)。
【0032】
以下では、永久磁石50が第1の対62−1に係る凸部62にX方向で対向するときの操作レバー2の操作位置を、「第1操作位置」と称し、永久磁石50が第2の対62−2に係る凸部62にX方向で対向するときの操作レバー2の操作位置を、「第2操作位置」と称し、永久磁石50が第3の対62−3に係る凸部62にX方向で対向するときの操作レバー2の操作位置を、「第3操作位置」と称する。
【0033】
次に、
図6A及び
図6Bを参照して、本実施例による吸引力発生(クリック感創出)の原理について説明する。
【0034】
図6Aは、本実施例による吸引力発生(クリック感創出)の原理の説明図であり、ヨーク60と永久磁石50との関係を示す平面図である。
図6Aには、矢印R1で磁束の流れが模式的に示されている。
図6Aでは、第1操作位置での磁束の流れが示されている。
図6Bは、操作レバー2の各操作位置を横軸とし、操作レバー2に作用するY方向の磁力を縦軸として、本実施例の特性を示す図である。
図6Bでは、磁力は、吸引方向(Y軸の負方向)を"正"としている。
図6Bでは、第1操作位置、第2操作位置、及び第3操作位置が、それぞれ、P11、P12、及びP13で示されている。P14及びP15は、永久磁石50が凸部62間の凹部63にX方向で対向するときの操作レバー2の操作位置に対応する。
【0035】
第1操作位置では、
図6Aに矢印R1で示すように、磁束の流れが生じ、
図6Aで示すように、ヨーク60と永久磁石50との間に吸引力が生じる。ヨーク60と永久磁石50との間の吸引力は、ヨーク60における凸部62に起因して、永久磁石50の移動軌跡に沿って変化する。これにより、
図6Bに示すように、操作レバー2の各操作位置で、操作レバー2に作用するY方向の磁力が変化することで、操作レバー2を傾倒操作した際にユーザに伝わるクリック感が創出される。
【0036】
次に、
図7A及び
図7Bを参照して、本実施例による効果(位置整定性を高める効果)の原理について説明する。
【0037】
図7A及び
図7Bは、本実施例による効果(位置整定性を高める効果)の原理の説明図であり、ヨーク60と永久磁石50との関係を示す平面図である。
図7A及び
図7Bには、永久磁石50に作用するX方向の吸引力(反力)がF1,F2で示されている。
図7A及び
図7Bでは、第1操作位置での吸引力の状態が示されている。
【0038】
ここで、X方向で同一の対の凸部62間の中心P1と、X方向で永久磁石50の中心P2が一致する場合は、
図7Aに示すように、永久磁石50に作用するX方向の吸引力F1,F2は同一となり、相殺される。これに対して、X方向で同一の対の凸部62間の中心P1と、X方向で永久磁石50の中心P2が一致しない場合は、対の凸部62のうちの近づいたほうの吸引力が強くなる。即ち、
図7Bに示す例では、吸引力F1が吸引力F2よりも大きくなる。これにより、第1操作位置で対の凸部62のうちの近づいたほうの凸部62に永久磁石50を吸引することが可能となる。この結果、第1操作位置で操作レバー2の下端22が枠体112にX方向で当接できる(
図5参照)。操作レバー2の下端22が枠体112にX方向で当接すると、移動軌跡に沿った動きに対して摺動抵抗が生じるため、第1操作位置での位置整定性を高めることができる。
【0039】
尚、ここでは、第1操作位置での位置整定性について説明したが、永久磁石50が凸部62間の凹部63にX方向で対向するときの操作レバー2の操作位置での位置整定性についても、同様に高めることができる。
【0040】
枠体112側の摺動面(第1部位112−1の空間112a側の表面)は、好ましくは、適切な摺動抵抗が生じるような摺動特性(静摩擦係数や動摩擦係数)を有する。例えば、枠体112は、アセタール樹脂あるいはポリアセタール樹脂のような合成樹脂により形成されてもよい。
【0041】
このように本実施例によれば、磁力によるクリック感を創出することで、クリック感を創出するためにカム機構を用いる構成に比べて、小型化かつ耐久性の向上を図ることが容易である。また、本実施例によれば、磁力によるクリック感を創出しつつ、操作レバー2の傾倒操作の際に枠体112上に当接して操作レバー2の下端22を摺動させることで、所望の操作位置での位置整定性を高めることができる。
【0042】
次に、
図5を再度参照して、本実施例における更に好ましい構成について説明する。
【0043】
操作レバー2の下端22が第1部位112−1にX方向で当接した状態において、X方向で同一の対の凸部62間の中心P1と、X方向で永久磁石50の中心P2との間の距離Δ2は、好ましくは、第1距離Δ1よりも大きい。この場合、仮に操作レバー2の下端22が第2部位112−2にX方向で当接した場合でも、X方向で永久磁石50の中心P2は、対の凸部62間の中心P1よりも第1部位112−1側にオフセットする。従って、操作レバー2の下端22が第1部位112−1に吸引されることになる。この結果、操作レバー2の下端22が第1部位112−1にX方向で当接した状態を安定的に維持できる。尚、操作レバー2の下端22が第1部位112−1に当接した状態と、操作レバー2の下端22が第2部位112−2に当接した状態とが、操作レバー2の傾倒操作中に変化すると、違和感(操作感触のバラつき感やX方向でのガタツキ感)をユーザに与えうる。操作レバー2の下端22が第1部位112−1にX方向で当接した状態を安定的に維持できる場合は、かかる違和感を低減できる。以下、このような距離Δ2と第1距離Δ1との関係を、「磁石吸引力のバイアス関係」とも称する。
【0044】
尚、本実施例では、X方向で対の凸部62間の中心P1は、X方向のヨーク60の中心と一致する。即ち、ヨーク60は、X方向のヨーク60の中心を通るYZ平面に関して対称である。
【0045】
ここで、距離Δ2が第1距離Δ1よりも大きくなるほど、永久磁石50に作用するX方向の吸引力の差が、対の凸部62間で大きくなるため、摺動抵抗も大きくなる。従って、距離Δ2と第1距離Δ1との差を適切に調整することで、所望の摺動特性を実現することとしてよい。
【0046】
第1部位112−1は、好ましくは、上記の磁石吸引力のバイアス関係を実現するために、第2部位112−2よりもX方向の厚さが小さい。この厚さの関係は、好ましくは、Y方向の各位置で比較した場合の関係である。これにより、ヨーク60をX方向のヨーク60の中心を通るYZ平面に関して対称に構成しつつ、上記の磁石吸引力のバイアス関係が実現される。従って、この場合、第1部位112−1及び第2部位112−2の厚みを調整することで、上記の磁石吸引力のバイアス関係を実現できる。尚、変形例では、第1部位112−1及び第2部位112−2の厚みを調整することに代えて、又は加えて、下端22のX方向の厚みを、X方向の正側と負側で異ならせることで、上記の磁石吸引力のバイアス関係を実現してもよい。
【0047】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0048】
例えば、上述した実施例では、操作レバー2の下端22が枠体112上を摺動するが、これに限られない。例えば、永久磁石50自体が枠体112上を摺動する構成であってもよい。この場合、例えば、永久磁石50が操作レバー2の下端を形成する態様で、操作レバー2に永久磁石50が露出した態様で取り付けられてよい。
【0049】
また、上述した実施例では、永久磁石50の移動軌跡は、X方向に視て円弧状であるが、これに限られない。例えば、永久磁石50の移動軌跡は、操作レバー2と永久磁石50とを相対変位可能に接続することで、X方向に視て直線状(Y方向に平行)とされてもよい。
【0050】
また、上述した実施例では、枠体112は、第1部位112−1乃至第4部位112−4を有しているが、第2部位112−2乃至第4部位112−4の1つ又は2つ若しくは全ては省略されてもよい。
【0051】
また、上述した実施例では、好ましい例として、凸部62は、X方向で対向し合う対で設けられるが、一方のみが設けられてもよい。
【0052】
また、上述した実施例では、凸部62は、3対設けられるが、対の数は任意である。