(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機器を一意に識別する機器識別情報と、当該機器に関する複数の属性情報とが対応付けられたレコードを、複数記憶する記憶部を有するシステムを用いて、利用者から入力される機器に関する問合せ内容から、対象となる問合せ機器を特定する問合せ機器特定方法であって、
前記システムは、
利用者から入力された機器に関する問合せ内容から、キーワードを抽出し、
抽出したキーワードを属性情報の値に含んでいるレコードを、前記記憶部から検索し、
複数のレコードが検索される場合、当該複数のレコードを処理対象にして、前記キーワードを値に含まなかった1つまたは複数の属性情報を特定し、特定した前記属性情報ごとに、当該属性情報の列に含まれる各値の散らばり度合いを示す多様度を算出し、
各多様度の大小関係に基づいて、追加質問項目となる属性情報を決定し、
決定した属性情報を追加質問項目として表示するとともに、前記属性情報の列内に含まれる値の一覧を、利用者が選択することができる形式で表示する追加質問入力画面を作成し、
作成した追加質問入力画面を表示する、
ことを特徴とする問合せ機器特定方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態では、顧客に納入された多種の機器について、顧客から問い合わせがあった場合、当該機器を迅速に特定するためのシステム構成および方法を説明する。また本実施形態では、顧客に納入したエレベーターやスカレーターなどの昇降機を検索対象機器として説明する。
【0013】
本実施形態のシステムは、顧客から問合せのあった機器を特定するために、入力された情報を解析し、絞り込みを行うための追加質問を顧客に表示する。そして本実施形態のシステムは、これらの追加質問に対する回答を顧客から受け付けることで、該当機器をさらに絞り込み、対象機器を特定する。
【0014】
これにより、顧客先に納められた機器が多数かつ多岐にわたる状況となった場合においても、迅速に問合せ機器を特定することができる。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のシステム構成例を示すブロック図である。問合せ機器特定システム1000は、利用者端末1、問合せ機器特定装置3、管制用端末4を有する。
【0016】
利用者端末1は、顧客が使用する一般的なスマートフォンやタブレット端末、パーソナルコンピュータなどであり、ネットワークに接続され、ウェブアクセスが可能な端末である。利用者端末1のHMI(ヒューマンマシンインターフェース)11は、顧客からの入力を受け付けるための画面を表示したり、検索結果を表示したりする表示部(ウェブブラウザ)とする。尚、これと同じ機能を提供する専用のクライアントアプリケーションであってもよい。処理制御部12は、利用者端末1の全体の制御を行うとともに、各種アプリケーション間でのデータの受け渡しや各種アプリケーションと各種ハードウェアとの間でのデータの受け渡しを担う。
【0017】
位置情報取得部13は、利用者端末1の現在の位置を取得する機能部であり、例えばGPS(グローバル・ポジショニング・システム)や無線アクセスポイントからの電波を用いて位置計測を行う機能部である。また位置情報取得部13は、利用者端末1に付与されたIPアドレスにより、おおまかな位置を特定することも可能である。位置情報取得部13は、これらのような実装により、利用者が入力した際のその位置を取得する。
【0018】
通信部14は、ネットワーク2aに接続され、問合せ機器特定装置3との間の通信を制御する。またネットワーク2aは、本実施形態では通信事業者が提供している公衆IPネットワークである。
【0019】
問合せ機器特定装置3は、利用者端末1から機器(エレベーター、エスカレーターなど)の問い合わせを受け付け、顧客に納入された多種の機器の中から該当機器を特定する装置である。本実施形態では、問合せ機器特定装置3は、顧客に納入された機器を遠隔で監視する管制システムに組み込まれている。
【0020】
問合せ機器特定装置3の通信部31は、ネットワーク2aに接続され、利用者端末1などとの間の通信を制御する。画面生成部37は、ウェブサーバの機能を担っており、利用者端末1のHMI11にて表示するための画面を生成する。画面生成部37は、たとえはHTML形式で記される画面や利用者端末1側で実行されるスクリプトを生成する。画面生成部37が作成する画面の具体例については後述する。
【0021】
テキスト解析部32は、利用者端末1より入力された問い合わせ文章(テキスト)を、形態素解析(文章の単語を品詞により分類)する機能を持つ形態素解析部32aを含んでいる。またテキスト解析部32は、形態素解析された後の文章から、キーワード辞書35を用いてキーワードを抽出するキーワード抽出部32bを含んでいる。キーワード辞書35の具体例については後述する。
【0022】
処理制御部30は、問合せ機器特定装置3の全体の制御を行うとともに、各種アプリケーション間でのデータの受け渡しや各種アプリケーションと各種ハードウェアとの間でのデータの受け渡しを担う。
【0023】
一時記憶部36は、以降で詳説する各動作を遂行するにあたり、一時的にデータを記憶するための機能部である。
【0024】
データ検索部33は、物件情報テーブル34aや機器テーブル34bなどのテーブルが構築されている管制DB(データベース)34に対して検索を行う機能部である。またデータ検索部33は、追加質問入力画面が生成される際に動作する多様度算出部331を含んでいる。多様度算出部331の具体的な動作については後述する。また物件情報テーブル34a、機器テーブル34bの具体例についても後述する。
【0025】
管制用端末4は、通信部43やローカルネットワーク2bを介して、問合せ機器特定装置3と接続される端末(パーソナルコンピュータ)である。管制用端末4は、主として問合せ機器特定装置3の物件情報テーブル34a、機器テーブル34b、キーワード辞書35に対し、データの登録や削除、更新などの保守を行うための端末である。尚、管制用端末4に導入されているHMI41、処理制御部42、通信部43については、上記利用者端末1に導入されているHMI11、処理制御部12、通信部14と同等の機能を提供するものであるため、ここでの説明を割愛する。
【0026】
図2は、問合せ機器特定装置3のハードウェア構成例を示す図であるとともに、コンピュータの構成を例示した図である。よって、利用者端末1や管制用端末4も、同様のハードウェア構成を有するものとする。
【0027】
問合せ機器特定装置3は、コントローラ101、入力デバイス110、出力デバイス111を有する。コントローラ101は、問合せ機器特定装置3の内部で動作する各ハードウェアを制御する。コントローラ101は、以下の構成を有する。
【0028】
CPU102(CPU:Central Processing Unit)は、ROM104(ROM:Read only memory)やストレージ105に記憶されているプログラムを、RAM103(RAM:Random access memory)に展開し、演算実行する処理装置である。CPU102は、プログラムを演算実行することで、コントローラ101内部の各ハードウェアを統括的に制御する。RAM103は、揮発性メモリであり、CPU102が処理する際のワークメモリである。RAM103は、CPU102がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。
【0029】
ROM104は、不揮発性メモリであり、問合せ機器特定装置3の起動の際にCPU102で実行されるBIOS(Basic Input/Output System)や、ファームウェアを記憶している。
【0030】
ストレージ105は、データを不揮発的に記憶する補助記憶装置であり、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)、大容量のフラッシュメモリなどである。ストレージ105は、CPU102が演算実行するプログラムや、制御データを記憶する。本実施形態では、
図1に示す各機能部を構成するプログラムやデータベースが、ストレージ105に事前に導入、構築されている。
【0031】
ネットワークI/F106は、外部機器との間で行われるデータ通信の制御を担うインターフェイスボードである。
【0032】
入力I/F107は、入力デバイス110との間で信号の入出力を制御するインターフェイスである。出力I/F108は、CPU102から指示を受けて、出力デバイス111に表示用画像や映像を描画させる。
【0033】
入力デバイス110は、例えばキーボードやマウスなどであり、出力デバイス111は、平面モニターやディスプレイである。尚、
図2に示す構成を利用者端末1や管制用端末4に適用させる場合、入力デバイス110、出力デバイス111は、タッチパネルディスプレイに置き替わってもよい。また利用者端末1については、
図2の構成に加えて、GPS受信ユニットなど位置情報を取得可能な装置や機器が組み込まれていてもよい。
【0034】
図2に示すハードウェア構成と、ストレージ105に導入されているプログラムとが協働して動作することで、
図1に示す各機能部が実現される。尚、本実施形態においては、このようにソフトウェア制御により動作するものとして説明するが、一部の機能の提供を、集積回路を用いて行う実装でも構わない。このように集積回路を含む構成であっても、コンピュータの一つの態様と扱うことができる。
【0035】
次に、本実施形態の問合わせ機器の特定動作について、
図3のフローチャートを使用して説明する。ここで、
図3のフローチャートは、利用者端末1における動作と問合せ機器特定装置3における動作のそれぞれについて説明している。また利用者端末1と問合せ機器特定装置3との間に発生する通信については、各フローチャート間の破線矢印によって示されている。
【0036】
まず、顧客は例えば昇降機の不具合などについて問い合わせを行う場合、利用者端末1でHMI11を起動し、問合せ機器特定装置3にアクセスする。そしてHMI11は、画面生成部37にて生成された問合せ入力画面を表示する(S001)。この問合せ入力画面の一例を
図4(A)に示す。問合せ入力画面400は、入力例を表示した例示欄401、顧客から問合せ内容の入力を受け付ける、編集可能な入力欄402、送信ボタン403を含んでいる。
【0037】
また、HMI11により問合せ入力画面400が表示された際に、位置情報取得部13は、利用者端末1の現在位置の取得処理を行う(S002)。位置情報取得部13は、GPSなどによる測位値(緯度、経度)を取得できるかを試み、位置情報が取得できた場合(S003:Yes)、処理はS005に進む。一方、位置情報が取得できない場合(S003:No)、HMI11は、住所入力欄やマップ上での位置を特定するための画面を表示し、顧客に位置情報の入力を依頼する(S004)。尚、このS004の処理は、他の地図情報システムと連携したり、従前の技術が用いられたりすることで、実現されてもよい。
【0038】
通信部14は、位置情報取得部13により得られた位置情報やHMI11により得られた位置情報を、処理制御部12を介して取得し、問合せ機器特定装置3に送信する(S005)。尚、位置情報の取得については、顧客の同意を得ることが望ましい。よって本実施形態では、位置情報の送信に当たって、HMI11が
図4(B)に示す確認画面410を表示する。ここで同意ボタン411が押下された場合、通信部14は位置情報を送信し、非同意ボタン412が押下された場合、位置情報の送信はキャンセルされる。
【0039】
顧客は、HMI11により表示される問合せ入力画面400を用いて、例示欄401内に示される例を参考にしながら、問合せ機器(昇降機)の状態や問合せ内容を入力欄402に入力する。HMI11は、この入力を受け付ける(S006)。
【0040】
入力後、問合せ入力画面400内の送信ボタン403が顧客により押下されると、HMI11は、入力欄402内のテキストデータ(問合せテキストと称する)を、処理制御部12を介して通信部14に引き渡す。そして通信部14は、この問合せテキストを問合せ機器特定装置3に向けて送信する(S007)。
【0041】
引き続き、問合せ機器特定装置3の動作について説明する。問合せ機器特定装置3の通信部31は、利用者端末1からの位置情報の受信と問合わせテキストの受信を常時待機している。通信部31は、利用者端末1から位置情報を受信すると(S101)、処理制御部30を介して当該位置情報をデータ検索部33に引き渡す。
【0042】
データ検索部33は、取得した位置情報を用いて物件情報テーブル34aを参照し、当該位置情報の近隣に位置する、機器を納めた対象物件(ビルやマンションなどの施設)を絞り込む(S102)。この動作により、問合せ機器特定装置3は、利用者端末1を使用している顧客の周辺にある対象物件をおおよその範囲で絞り込むことができる。
【0043】
図5(A)は、物件情報テーブル34aのデータ構成例を示す図である。物件情報テーブル34aには、物件を一意に示すビルコードごとに、当該物件を管轄している事業所や営業所、管理番号、ビル名、ビル住所、位置情報(緯度、経度)が対応付けられて登録されている。尚、物件情報テーブル34aに登録されている位置情報は、納入した機器が設置されている施設の位置を示す情報となっている。データ検索部33は、S101により得られた位置情報(緯度、経度)に数値上最も近い位置情報(緯度、経度)を含んだレコードを、物件情報テーブル34aから検索し、そのビルコードを得る。もしくは、データ検索部33は、S101により得られた位置情報から近い順となるように、物件情報テーブル34a内の各レコードに対し順位付けを行い、上位数件を候補として選定し、これらのビルコードを得る。データ検索部33は、このようにして周辺対象物件の絞り込みを行う。
【0044】
尚、非同意ボタン412が押下されたなどの理由から、位置情報が送信されなかった場合、S102の処理は行われず、以降で説明する問合せテキストのみによる絞り込みとなる。
【0045】
次に、通信部31が利用者端末1から問合せテキストを受信すると、これが処理制御部30を介してテキスト解析部32に引き渡される。テキスト解析部32は、引き渡された問合せテキストからキーワードを生成する(S103)。
【0046】
テキスト解析部32の形態素解析部32aは、S103において、問合せテキストに対して形態素解析を行うことで、問合せテキストを単語単位に分解する。そしてキーワード抽出部32bは、形態素解析後のテキストデータ、およびキーワード辞書35を用いて、問合せテキスト内からキーワードを抽出する。
【0047】
S103の動作について、具体例を提示しながら説明する。問合わせテキストが例えば「今日の朝、コンビニの前のマンションのEVから異音がした」である場合、形態素解析部32aは、形態素解析の結果として、例えば「今日|の|朝|、|コンビニ|の|前|の|マンション|の|EV|から|異音|が|した」を導出する(「|」はセパレータを意味し、ここでは「名詞」「動詞」などの品詞情報を省略している)。
【0048】
次にキーワード抽出部32bは、形態素解析部32aの解析結果から、適切なキーワードを作成する。適切なキーワードであるかの判定には、キーワード辞書35に登録されているか否かにより判定される。
【0049】
図5(B)は、キーワード辞書35の一部を例示した図である。キーワード辞書35は、入力情報とキーワードとを対応付けて1つのレコードとした構成となっており、各レコードが事前に登録されている。上記のように、問合わせテキスト内に「EV」とある場合、キーワード抽出部32bは、この「EV」を入力情報に含んだレコードをキーワード辞書35内から検索する。そしてキーワード抽出部32bは、この「EV」に対応付けられた「エレベーター」を、読み替え後のキーワードとして抽出する。また他の例として、キーワード抽出部32bは、「エレベータ」を入力情報に含むレコードを検索することで、読み替え後のキーワードである「エレベーター」を得ることができる。キーワード抽出部32bは、これらのように、略称を正規名称に変換してキーワードを作成したり、表記ゆれが解消されたキーワードを作成したりすることも可能となる。
【0050】
キーワード抽出部32bは、形態素解析部32aにより得られた単語の全てについて、総当たりで検索し、それぞれのキーワードを作成する。検索結果が得られない単語については、適切なキーワードとは成り得ない単語であり、後段処理で用いることができないため、以降の処理では考慮されない。尚、検索の質を向上させることを目的として、適切なキーワード以外の単語が検索されたことを示した履歴データを残してもよい。このようなキーワード抽出部32bの処理により、後段処理に適した、適切なキーワード(略称表記や表記ゆれが解消されたキーワード)を得ることができる。
【0051】
テキスト解析部32は、得られたキーワードをデータ検索部33に引き渡す。またテキスト解析部32は、得られたキーワードおよび問合せテキストを、一時記憶部36に記憶させる。
【0052】
次にデータ検索部33は、S102で抽出されたビルコード、およびテキスト解析部32から取得したキーワードを使用して、機器テーブル34bを検索し、対象機器を絞り込む(S104)。ここで複数のキーワードがテキスト解析部32から得られている場合、全てのキーワードについて検索を行う。
【0053】
図5(C)は、機器テーブル34bの一例を示した図である。機器テーブル34bは、機器を一意に識別するための機器番号(機器識別情報)と、当該機器に関する属性情報とが対応付けられたレコードを複数記憶したデータ構成となっている。本実施形態では、ビルコード、機器の種類や区分を示す機器種別(「エレベーター」、「エスカレーター」)、当該機器の用途(「乗用」、「非常用」、「荷物運搬用」)、1号機や2号機など施設内で付された昇降機の管理番号である号機、および特記事項を、属性情報とする。尚、特記事項の内容は、保守者や顧客などから得た情報とする。
【0054】
データ検索部33は、S102で抽出されたビルコードの値が機器テーブル34bのビルコードカラムに含まれているレコードを検索し、またS103で生成されたキーワードを各属性情報のカラム内に含んでいるレコードを抽出する。本実施形態における問合せ機器を特定する動作は、このような抽出処理などを行うことで、最終的には機器テーブル34bから1つのレコードを特定し、機器番号を得る動作となる。
【0055】
データ検索部33は、S104の操作により機器が特定されたか、すなわち、機器テーブル34bから1つのレコードのみが抽出されたかを判定する(S105)。
【0056】
1つのレコードのみが抽出された場合(S105:Yes)、データ検索部33は、機器テーブル34bから1つに特定されたレコード内のデータ、およびS102にて物件情報テーブル34aから絞り込まれたレコード内のデータを、対応付けて一時記憶部36に記憶させる。
【0057】
画面生成部37は、一時記憶部36に記憶されている、特定された各種データを組み入れて、HTML形式の表示用画面を生成する。通信部31は、この表示用画面を特定結果として利用者端末1に向けて送信する(S109)。利用者端末1の通信部14は、この表示用画面を受信し、HMI11はこの表示用画面を表示する(S010)。
【0058】
尚、特定された機器番号などのデータを、連携している監視システムに向けて送信してもよい。この場合、監視システムは、受信した機器番号と対応付けられている機器に対して、稼働データを取得する動作などを行い、この稼働データに基づき、不具合の状態などを解析する。
【0059】
一方、S104において検索を行った結果、1つに絞り込めずに複数のレコードが検索された場合(S105:No)、データ検索部33は、さらに機器を絞り込むための追加質問を生成する(S106)。
【0060】
以下、追加質問の生成方法について説明する。またここでは、S102にて「1234−A567」のビルコードが得られ、S104にて「エレベーター」のキーワードが得られた場合を一例にして説明する。
【0061】
データ検索部33は、まずはビルコードが「1234−A567」となっているレコードを、
図5(C)に示す機器テーブル34bから抽出する。この操作により、
図5(C)に示される一番上のレコードから7段目のレコードまでの計7つのレコードが抽出される。そしてデータ検索部33は、この7つのレコードから、「エレベーター」のキーワードをカラム内に含んでいるレコードを抽出する。尚、機器種別、用途、号機、特記事項の各カラム名は一意に決まっているため、データ検索部33は、where句で各カラム名を指定し、like句でキーワードを指定したSQL文を作成し、このSQL文を用いてレコードを抽出する。ここでは、
図5(C)の一番上のレコードから6段目のレコードまでの機器種別カラム内に、「エレベーター」の文字列が含まれているため、これら6つのレコードが、さらに絞り込まれて抽出される。すなわちデータ検索部33は、この段階で、問合せ機器の候補として計6つのレコードを得ることができる。
【0062】
図6は、上記手順により絞り込まれた6つのレコードを示した図であり、また本実施形態の多様度を例示した図である。
【0063】
データ検索部33の多様度算出部331は、ここまでで検索に使用されなかった列(カラム)、すなわち、ここまでの処理でキーワードを含まなかった列(カラム)を取り出す。
図6の例では、用途、号機、特記事項の各カラムが取り出される。次に多様度算出部331は、取り出したカラムごとに、それぞれ多様度を算出する。
【0064】
ここで多様度とは、当該の列のデータの重複を取り除いた後の件数である。
図6の例において、用途カラムのデータは、「乗用」、「非常用」、「荷物運搬用」の3つに分類することができるが、この数値3がデータの重複を取り除いた後の件数であり、多様度となる。同様に、号機カラムのデータについては、「1」「2」「3」「4」「5」「6」のそれぞれ異なる6つのデータとなっていることから、多様度は6となる。特記事項カラムについても、各データはそれぞれで異なっているため、多様度は6となる。多様度算出部331は、COUNT句やDISTINCTを組み入れたSQL文を使用することで、カラムごとに多様度をそれぞれ算出する。
【0065】
多様度算出部331は、算出した各列の多様度の大小を比較し、最も多様度の大きい列を特定する。ここでは号機カラムおよび特記事項カラムが該当する。データ検索部33は、多様度算出部331により特定された各カラム(号機カラムおよび特記事項カラム)について、値の重複をそれぞれ取り除くことで各カラムのリストを作成する。尚、このリストが後述のドロップダウンリストの表示項目となる。データ検索部33は、作成したリストと、一時記憶部36に記憶された各データとを、画面生成部37に引き渡す。
【0066】
画面生成部37は、データ検索部33から取得した各種データを組み入れて、HTML形式の追加質問入力画面を生成する。ここまでがS106の動作となる。
【0067】
図7は、上記S106の動作をフローチャートにした図である。データ検索部33は、ここまで絞り込まれた検索結果(レコード)を機器テーブル34bから抽出する(S201)。多様度算出部331は、S201で抽出された複数のレコードを処理対象にして、以下のS202、S203の処理を行う。すなわち、多様度算出部331は、キーワードを値に含まなかった1つまたは複数のカラムを特定し(S202)、特定されたカラムごとに多様度を算出する(S203)。
【0068】
そしてデータ検索部33は、多様度の大小関係に基づき追加質問項目となるカラムを決定する(S204)。本実施形態では、データ検索部33は、最も値が大きい多様度となったカラムを追加質問項目として決定し、リストを作成する。画面生成部37は、データ検索部33によって決定されたカラムの列内の各値(すなわちS203で作成されるリスト)を、利用者である顧客が選択することができる形式で表示する追加質問入力画面を作成する(S205)。
【0069】
図7に示す処理が行われた後、通信部31は、追加質問入力画面を利用者端末1に向けて送信する(
図3のS107)。利用者端末1の通信部14は、追加質問入力画面を受信し、HMI11がこれを表示する(S008)。
【0070】
図8(A)は、HMI11にて表示される、追加質問入力画面の一例を示す図である。追加質問入力画面500には、顧客からの問合せ機器を特定するための各項目502が含まれている。ここでは、ビル名、住所、機器種別については特定されているため、黒色網掛け表示となり、号機、特記事項の未確定項目(追加質問項目)については白抜き表示となっている。白抜き表示となっている欄については、ボタン502a、502bが操作されることで、それぞれドロップダウンリストが表示される。
【0071】
図8(B)は、ボタン502aが操作されることで表示される号機用ドロップダウンリスト510を示しており、
図8(C)は、ボタン502bが操作されることで表示される特記事項用ドロップダウンリスト520を示している。これらのドロップダウンリストは、それぞれ、データ検索部33により特定された追加質問用の各データを列挙したものである(
図6の号機カラム、特記事項カラムを参照)。
【0072】
HMI11は、ドロップダウンリストの中から選択される追加質問に対する回答を受け付ける(S009)。そして
図8(A)に示す送信ボタン503が押下されると、通信部14は、処理制御部12を介して、回答データを問合せ機器特定装置3に送信する。回答データは、例えばリスト内から選択された回答項目のテキスト自体(「正面入口から見て右奥」など)や、回答項目を一意に識別する情報である。
【0073】
問合せ機器特定装置3の通信部31は、回答データを受信し、データ検索部33に引き渡す。データ検索部33は、この回答データを取得すると、処理をS105(
図3参照)に戻して当該回答を含めてさらに絞り込みを行うことで、問合せ対象機器の特定を改めて行う(S105)。ここで一つに特定することができた場合(S105:Yes)、処理はS109に進む。一方、未だ一つに特定できない場合(S105:No)、追加質問の生成処理を改めて行う(S106)。
【0074】
ここまでで説明した例の場合、この段階でのS105において、機器テーブル34bから1つのレコードが特定されることとなる。尚、仮に特定されなかった場合、S106において、ここまでで使用されなかったカラムである用途カラム内の各データ(「乗用」「非常用」「荷物運搬用」)を問い合わせる追加質問入力画面が生成される。尚、ここまでで使用されなかったカラムがこの段階においても複数ある場合、上記同様、使用されなかった各カラムの多様度をそれぞれ算出し、多様度を大小比較することで追加質問用のカラムを特定する動作などが行われる。
【0075】
尚、データ検索部33は、最も値が大きい多様度となった属性情報が少なくとも含まれるように、追加質問項目となる属性情報を決定してもよい。この例としては、最も多様度の大きいカラムのみ追加質問項目とする上記実装例以外にも、規定の閾値以上の多様度を有するカラムを追加質問項目とする実装例などがある。
【0076】
上記実施形態の態様によって、顧客に納められた機器について顧客から問い合わせがあった場合、顧客から提示された情報のみでは問合せ機器を特定することができなくとも、適切な追加質問を提示することができる。よって、問合せ機器を迅速に特定することが可能となる。
【0077】
(第2実施形態)
第2実施形態では、追加質問の作成について別の態様例を説明する。
【0078】
図9は、第2実施形態のシステム構成例を示すブロック図である。第2実施形態のデータ検索部33は、さらに重複度算出部332を含んでいる。これ以外のシステム構成や装置構成、動作例、多様度を用いた追加質問の作成については、第1実施形態の
図1〜
図7で説明したものと同様であるため、ここでの説明を割愛する。
【0079】
また第2実施形態では、
図5(A)に示す物件情報テーブル34a、
図5(B)に示すキーワード辞書35については第1実施形態と同じものを用いるが、機器テーブル34bについては、説明の都合上、号機の番号付けを異ならせたものを用いる。
【0080】
図10(A)は、第2実施形態における機器テーブル34bの抜粋であり、第1実施形態の
図6に対応させたものである。第2実施形態では、主に人を運搬するための乗用エレベーターおよび非常用エレベーターと、主に荷物を運搬するための荷物運搬用エレベーターとで、号機の番号をそれぞれ別個にナンバリングして管理しているものとする(
図10(A)の号機カラム参照)。
【0081】
上記第1実施形態では、最も多様度が大きいカラムのみが追加質問となるように、追加質問入力画面を生成しているが、第2実施形態では、全てのカラムについて質問するような画面を生成する。また画面生成部37は、追加質問入力画面を生成する際、多様度の大きい順で各追加項目欄を配置するように、入力画面を生成する。
【0082】
図10(A)の例では、用途カラムの多様度、特記事項カラムの多様度は、第1実施形態と同様にそれぞれ多様度:3、多様度:6となる。号機カラムについては、「1」「2」「3」「4」の4つのデータに分類することができるため、多様度:4となる。よって本例の場合、画面生成部37は、多様度の大小順に従い、上から特記事項、号機、用途の順序の追加質問入力画面を作成する(後述の
図11(A)参照)。
【0083】
これに加え、第2実施形態では、ドロップダウンリストの一覧を、件数の多いものから順に上から表示する。このような表示順となるように、データごとに重複度を算出する。
図10(B)を用いて重複度について説明する。
図10(B)は、
図10(A)で示すテーブルからデータそれぞれの各重複度を求めたものである。重複度は、本実施形態では列(カラム)内での各データの登録件数を示した値である。例えば
図10(A)の用途カラムを注目列とすると、用途カラムには、「乗用」のデータが3件、「非常用」のデータが1件、「荷物運搬用」のデータが2件登録されている。よって、「乗用」の重複度は3、「非常用」の重複度は1、「荷物運搬用」の重複度は2となる。同じように号機カラムを注目列とすると、「1」号機が重複度:2、「2」号機が重複度:2、「3」号機が重複度:1、「4」号機が重複度:1となる。特記事項カラムは、全て異なるデータとなっているため、各データの重複度はそれぞれ1となる。
【0084】
データ検索部33の重複度算出部332は、COUNTやGROUP BYを組み入れたSQL文を使用することで、注目カラム内のデータごとに重複度を算出し、この重複度順となるように注目カラム内の各データをソートして一次元配列データを作成する。例えば用途カラムの場合、重複度算出部332は、[乗用,荷物運搬用,非常用]の順でソートした一次元配列データを生成する。重複度算出部332は、この処理をカラムごとに行って、その後にカラムと一次元配列データとを紐付ける。重複度算出部332は、例えば[乗用,荷物運搬用,非常用]にカラム名を追加して[用途,乗用,荷物運搬用,非常用]などの配列データ(ここではカラム配列データと称する)を生成することで、カラム名と一次元配列データとの紐づけを行う。重複度算出部332は、号機カラムについても[号機,1,2,3,4]などのカラム配列データを生成し、特記事項カラムについても同様にカラム配列データを生成する。
【0085】
そしてデータ検索部33は、重複度算出部332により得られるカラム配列データを、さらに多様度順に並べ、これを画面生成部37に引き渡す。画面生成部37は、取得した配列データを組み入れて、追加質問入力画面を作成し、利用者端末1に送信する。利用者端末1の通信部14は、この追加質問入力画面を受信し、HMI11がこれを表示する。
【0086】
図11(A)は、第2実施形態のHMI11にて表示される追加質問入力画面の一例を示す図である。第2実施形態の追加質問入力画面500では、各項目502の白抜き欄の表示が、上から順に特記事項(多様度:6)、号機(多様度:4)、用途(多様度:3)となっており、多様度順で配置されている。
【0087】
図11(B)は、第2実施形態におけるボタン502aが操作された際に表示される号機用ドロップダウンリスト510であり、
図11(C)は、ボタン502cが操作された際に表示される用途用ドロップダウンリスト530である。いずれも、重複度が大きいもの順でリスト表示されている。尚、特記事項のドロップダウンリストについては、第1実施形態と同様の表示内容となる(
図8(C)参照)。
【0088】
ここで第1、第2実施形態で説明した多様度について、さらに追記する。多様度は、上記のとおり、当該の列のデータの重複を取り除いた後の件数であり、多様度が大きいほど、多種多様のデータが混在していることを示し、逆に多様度が小さいほど、同種のデータが纏まっていることを示している。このような特性を有する多様度は、データの散らばり度合いを示す指標値と扱うことができる。第1、第2実施形態では、上記のように、当該の列のデータの重複を取り除いた後の件数を多様度として扱ったが、どの程度データが散らばっているかの度合いを示す他の指標、例えば分散や標準偏差などを多様度として用いてもよい。尚、当該の列のデータの重複を取り除いた後の件数を多様度として採用することで、分散や標準偏差などのような複雑な演算処理を行うことなく、各値の散らばり度合いを求めることができる。
【0089】
また、上記第1、第2実施形態のように、多様度の大きい項目を追加質問として提示することで、顧客は多種多様のデータの中から1つを選択することとなる。このように、顧客から多種多様のデータの中から1つを選択してもらうことで、より問合せ機器を相当絞り込むことができる。よって、多様度の大きい項目を追加質問とすることで、問い合わせ機器を特定するまでのステップ数を低減させることができる。
【0090】
また、各種検索サイトなどの表示順でもわかるように、上位に表示した項目の方が下位に表示した項目よりも注視される確率が高くなる。第2実施形態のように、画面上位から順に多様度の大きい項目を表示することで、当該多様度の大きい項目が注視されて選択される確率が高くなる。このような表示順とすることも、ステップ数を低減させることに役立っている。
【0091】
また第2実施形態では、重複度の大きい項目順、すなわち登録件数の多い順にドロップダウンリストの一覧を表示する態様について説明した。登録件数が多いデータは、利用者により選択されることの多いデータであるため、これをリスト上位に表示することで、回答項目を探す手間を軽減することができ、利便性を向上させることができる。
【0092】
必要に応じて、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。
【0093】
上記第1、第2実施形態では、利用者端末のブラウザやアプリケーションによる、問合わせの受け付けや検索結果の表示、追加質問の表示/選択などを行っている。態様はこの方式に限らず、通話解析や音声解析の技術を用いて、電話の音声による入力や出力を行ってもよい。
【0094】
上記第1、第2実施形態では、問合せ機器特定装置3をサーバとし、利用者端末1をクライアントとしたシステム構成について説明したが、HMI11相当の機能部を問合せ機器特定装置3に組み込むことで、問合せ機器特定装置3のみのシステム構成としてもよい。この場合、システムを利用し、操作する利用者は、顧客ではなくオペレーターとなり、顧客からの電話などによる問合せ内容を、オペレーターが入力する運用となる。またこの場合、位置情報については、電話などを介して顧客から住所を得る運用としてもよい。
【0095】
また、本実施形態では、回答用の値を一覧表示する形式として、ドロップダウンリストを採用したが、例えば回答用のリストをポップアップ表示する形式などであってもよい。すなわち回答用のリスト表示については、利用者が選択可能な形式であれば、他の表示形式でも構わない。
【0096】
尚、本発明は上記各実施形態の態様に限らず、事務機器や家電機器など、どのような機器、設備、製品に関する問い合わせについても適用可能である。
【0097】
以上に詳説したように、本実施形態によって、問い合わせの対象となっている機器を迅速に特定することができる。
【0098】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。