特許第6899810号(P6899810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6899810-車両用電源回路 図000002
  • 特許6899810-車両用電源回路 図000003
  • 特許6899810-車両用電源回路 図000004
  • 特許6899810-車両用電源回路 図000005
  • 特許6899810-車両用電源回路 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899810
(24)【登録日】2021年6月17日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】車両用電源回路
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20210628BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20210628BHJP
   H01H 47/22 20060101ALN20210628BHJP
【FI】
   B60R16/02 645D
   B60Q1/00 C
   !H01H47/22 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-199367(P2018-199367)
(22)【出願日】2018年10月23日
(65)【公開番号】特開2020-66302(P2020-66302A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亨
【審査官】 佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−189818(JP,A)
【文献】 実開平04−061804(JP,U)
【文献】 特開2005−302330(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101138971(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60Q 1/00
H01H 47/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に接続し、一端が電源にそれぞれ接続して開放又は短絡にそれぞれ切り替え動作する複数のスイッチ回路と、
励磁コイルと、一端が前記電源に接続し、前記電源から電流が前記励磁コイルに流れることで開放から短絡に切り替わるスイッチ部と、を有するリレー回路と、
一端が前記スイッチ部の他端に接続すると共に他端が接地されて、前記電源から電力供給される負荷と、
前記励磁コイルに並列に配置され、前記複数のスイッチ回路に直列に接続する抵抗器と、
を備え、
前記励磁コイルは、一端が前記複数のスイッチ回路の他端にそれぞれ接続すると共に、他端が接地されて、前記複数のスイッチ回路を通じて前記電源から電流が流れ、
前記抵抗器は、一端が前記複数のスイッチ回路の他端にそれぞれ接続すると共に他端が接地され、
前記複数のスイッチ回路のうち少なくとも1つは、前記電源から自身に流れる電流の定格値が設定されており、
前記定格値に応じて前記抵抗器の抵抗値が設定可能とされる
ことを特徴とする車両用電源回路。
【請求項2】
互いに並列に接続し、一端が電源にそれぞれ接続して開放又は短絡にそれぞれ切り替え動作する複数のスイッチ回路と、
励磁コイルと、一端が前記電源に接続し、前記電源から電流が前記励磁コイルに流れることで開放から短絡に切り替わるスイッチ部と、を有するリレー回路と、
一端が前記スイッチ部の他端に接続すると共に他端が接地されて、前記電源から電力供給される負荷と、
前記励磁コイルに並列に配置され、前記複数のスイッチ回路に直列に接続する抵抗器と、
を備え、
前記励磁コイルは、一端が前記電源に接続すると共に、他端が前記複数のスイッチ回路の一端に接続し、
前記抵抗器は、一端が前記電源に接続すると共に、他端が前記複数のスイッチ回路の一端に接続し、
前記複数のスイッチ回路は、前記一端が前記励磁コイル及び前記抵抗器を介して前記電源にそれぞれ接続すると共に、他端がそれぞれ接地され、
前記複数のスイッチ回路のうち少なくとも1つは、前記電源から自身に流れる電流の定格値が設定されており、
前記定格値に応じて前記抵抗器の抵抗値が設定可能とされる
ことを特徴とする車両用電源回路。
【請求項3】
車両に実装される際に、前記車両の仕様に対応する、前記複数のスイッチ回路のうち1つのみが開放又は短絡に切り替え動作可能に設定され、前記複数のスイッチ回路のうち残りは常時開放に設定される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用電源回路。
【請求項4】
前記負荷は、複数設けられて互いに並列に接続する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に搭載され、電源に接続して開放又は短絡に切り替え動作するスイッチ回路を備える車両用電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用電源回路は、例えば電気的負荷であるランプ装置に対し所定の電源から電力供給するために自動車などの車両に搭載される(例えば、特許文献1参照)。例えば、車両を後進させるために車両の変速機がバックギアに切り替わる場合、この切り替えに伴って車両用電源回路のスイッチ回路が短絡して、ランプ装置のうちバック用ランプが点灯される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−029020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の変速機の種類によってスイッチ回路の電流仕様が異なっており、その種類に応じて車両用電源回路は種々に用意される。すなわち、車両用電源回路は、スイッチ回路の電流仕様の相違によって回路構造や構成要素が様々に異なって設けられる。
【0005】
ここで、図4及び図5を参照して、その従来例について、互いに仕様の異なるスイッチ回路31,41を備える車両用電源回路30,40について2種類挙げてそれぞれ説明する。図4は、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)の場合の車両用電源回路30を説明する回路概略図である。図5は、手動変速機(MT:Manual Transmission)の場合の車両用電源回路40を説明する回路概略図である。
なお、ここで説明する第1及び第2の従来例の車両用電源回路30,40は、変速機の種類の相違によって互いに異なる仕様で設けられる。また、これら車両用電源回路30,40は、変速機がバックギアに切り替わる際にバック用ランプL1,L2を点灯するために用いられる。具体的には、第1の従来例に係る車両用電源回路30は、無段変速機の場合のバック用ランプL1,L2を点灯するための回路である。第2の従来例に係る車両用電源回路40は、手動変速機の場合のバック用ランプL1,L2を点灯するための回路である。
【0006】
まず、図4を参照して、第1の従来例に係る車両用電源回路30について説明する。図4に示すように、第1の従来例に係る、バック用ランプL1,L2を点灯させるための車両用電源回路30は、接地して設けられる電源Bと、開放又は短絡に切り替え動作するスイッチ回路31と、励磁コイル33及びスイッチ部34を有するリレー回路32と、電気的負荷として電源から電力供給されるバック用ランプ(ランプ装置)L1,L2と、を有する。電源Bには、過電流から回路を保護するヒューズ回路Fが接続される。また、バック用ランプL1,L2は一対設けられて互いに並列に接続し、負極側で接地される。
【0007】
スイッチ回路31は、例えば車両前方のエンジンルーム内に配置されており、正極側がヒューズ回路Fを介して電源Bに接続する。また、スイッチ回路31の初期状態は開放に設定される。また、本従来例のスイッチ回路31では、電源Bからスイッチ回路31自身に流れる電流の定格値は特に制限はなく、幅広い電流値に適用可能に構成される。
【0008】
そして、リレー回路32の励磁コイル33は、正極側でスイッチ回路31の負極側に接続すると共に、負極側で接地される。リレー回路32のスイッチ部34は、正極側でヒューズ回路Fを介して電源Bに接続すると共に、負極側で並列接続された一対のバック用ランプL1,L2に接続する。また、車種間の部品共有化のために、リレー回路32及びヒューズ回路Fは1つのユニットに設けられ、リレー駆動回路Uとして1つの部品で構成される。
【0009】
このように構成されることにより、変速機がバックギアに切り替わる際、スイッチ回路31が開放から短絡に切り替え動作してONにされ、通電する。この通電により、リレー回路32の励磁コイル33に電流が流れて磁界が発生する。この磁界発生に従って、リレー回路32のスイッチ部34が開放から短絡に切り替わり電源Bとバック用ランプL1,L2との間で回路がつながる。これにより、電源Bから一対のバック用ランプL1,L2に電気が供給され、その結果、バック用ランプL1,L2が点灯する。
【0010】
次に、図5を参照して、第2の従来例に係る車両用電源回路40について説明する。なお、上記第1の従来例と同一又は同等部分については、図面に同一あるいは同等符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0011】
図5に示すように、第2の従来例に係る車両用電源回路40は、電源Bと、スイッチ回路41と、リレー回路32と、一対のバック用ランプL1,L2と、を有する。本従来例のリレー回路32は、第1の従来例と同じ仕様であり、部品の標準化のために共通部品として回路に組み込まれる。しかし、リレー回路32の励磁コイル33は回路には接続されず、励磁コイル33の両端は常時開放に設定される。すなわち、本従来例のリレー回路32は構造としては同一であるものの回路として機能せず通電させることはない。
【0012】
そして、手動変速機の場合、スイッチ回路41は電源Bからスイッチ回路41自身に流れる電流の定格値が設定されている。具体的には、1[A]以上の電流がスイッチ回路41に流れることが仕様として要求される。手動変速機の場合、スイッチ回路41の接点(不図示)で生成する酸化皮膜を除去する必要があるためである。
【0013】
このように構成されることにより、変速機がバックギアに切り替わる際、スイッチ回路41がONにされ通電する。この通電によって、一対のバック用ランプL1,L2に電源Bからそのまま電力供給される。これにより、一対のバック用ランプL1,L2が点灯する。
【0014】
以上説明したように、車両の変速機の種類によってスイッチ回路の電流仕様も互いに異なっている。その一方、スイッチ回路の電流仕様の相違に関わらず、車両用電源回路は標準化され汎用性が高まることが期待されている。スイッチ回路の仕様が異なる場合でも車両用電源回路が標準化できれば、製造コストを低減すると共に車両搭載時の作業効率を向上させることができる。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スイッチ回路の仕様が異なる場合でも回路を標準化して汎用性を高めることができる車両用電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用電源回路は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1)互いに並列に接続し、一端が電源にそれぞれ接続して開放又は短絡にそれぞれ切り替え動作する複数のスイッチ回路と、
励磁コイルと、一端が前記電源に接続し、前記電源から電流が前記励磁コイルに流れることで開放から短絡に切り替わるスイッチ部と、を有するリレー回路と、
一端が前記スイッチ部の他端に接続すると共に他端が接地されて、前記電源から電力供給される負荷と、
前記励磁コイルに並列に配置され、前記複数のスイッチ回路に直列に接続する抵抗器と、
を備え、
前記励磁コイルは、一端が前記複数のスイッチ回路の他端にそれぞれ接続すると共に、他端が接地されて、前記複数のスイッチ回路を通じて前記電源から電流が流れ、
前記抵抗器は、一端が前記複数のスイッチ回路の他端にそれぞれ接続すると共に他端が接地され、
前記複数のスイッチ回路のうち少なくとも1つは、前記電源から自身に流れる電流の定格値が設定されており、
前記定格値に応じて前記抵抗器の抵抗値が設定可能とされる
ことを特徴とする車両用電源回路。
(2)互いに並列に接続し、一端が電源にそれぞれ接続して開放又は短絡にそれぞれ切り替え動作する複数のスイッチ回路と、
励磁コイルと、一端が前記電源に接続し、前記電源から電流が前記励磁コイルに流れることで開放から短絡に切り替わるスイッチ部と、を有するリレー回路と、
一端が前記スイッチ部の他端に接続すると共に他端が接地されて、前記電源から電力供給される負荷と、
前記励磁コイルに並列に配置され、前記複数のスイッチ回路に直列に接続する抵抗器と、
を備え、
前記励磁コイルは、一端が前記電源に接続すると共に、他端が前記複数のスイッチ回路の一端に接続し、
前記抵抗器は、一端が前記電源に接続すると共に、他端が前記複数のスイッチ回路の一端に接続し、
前記複数のスイッチ回路は、前記一端が前記励磁コイル及び前記抵抗器を介して前記電源にそれぞれ接続すると共に、他端がそれぞれ接地され、
前記複数のスイッチ回路のうち少なくとも1つは、前記電源から自身に流れる電流の定格値が設定されており、
前記定格値に応じて前記抵抗器の抵抗値が設定可能とされる
ことを特徴とする車両用電源回路。
(3)車両に実装される際に、前記車両の仕様に対応する、前記複数のスイッチ回路のうち1つのみが開放又は短絡に切り替え動作可能に設定され、前記複数のスイッチ回路のうち残りは常時開放に設定される
ことを特徴とする(1)又は(2)に記載の車両用電源回路。
(4)前記負荷は、複数設けられて互いに並列に接続する
ことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の車両用電源回路。
【0017】
上記(1)及び(2)の構成の車両用電源回路によれば、リレー回路の励磁コイルに並列に配置され、複数のスイッチ回路に直列に接続する抵抗器を有する。このため、複数のスイッチ回路のうち少なくとも1つに電源からスイッチ回路自身に流れる電流の定格値が設定され、残りのスイッチ回路との間で仕様が異なる場合でも、簡素な回路素子である抵抗器を用いることで、その定格値が設定されたスイッチ回路に所望の電流を流すことができる。これにより、スイッチ回路の仕様が異なる場合でも簡素な構成で回路を標準化して汎用性を高めることができる。したがって、車両用電源回路の製造コストを低減すると共に車両搭載時の作業効率を向上させることができる。
上記(1)の構成の車両用電源回路によれば、励磁コイルは、一端が複数のスイッチ回路の他端にそれぞれ接続すると共に、他端が接地されて、複数のスイッチ回路を通じて電源から電流が流れ、抵抗器は、一端が複数のスイッチ回路の他端にそれぞれ接続すると共に、他端が接地される。この場合も同様に、スイッチ回路の仕様が異なる場合でも回路を標準化して汎用性を高めることができる。
上記(2)の構成の車両用電源回路によれば、励磁コイルは、一端が電源に接続すると共に、他端が複数のスイッチ回路の一端に接続し、抵抗器は、一端が電源に接続すると共に、他端が複数のスイッチ回路の一端に接続し、複数のスイッチ回路は、一端が励磁コイル及び抵抗器を介して電源にそれぞれ接続すると共に、他端がそれぞれ接地される。この場合も同様に、スイッチ回路の仕様が異なる場合でも回路を標準化して汎用性を高めることができる。また、複数のスイッチ回路は、通常、車両のエンジンルーム内に設置されることが多いが、当該構成によってスイッチ回路から車両本体に戻る電線を削減することができる。これにより、車両用電源回路の製造コストを低減することができる。
上記(1)及び(2)の構成の車両用電源回路によれば、定格値に応じて抵抗器の抵抗値が設定可能とされるとよい。この場合、抵抗器については様々な抵抗値のものを容易且つ低コストで入手できるので、回路の標準化を容易に実現することができ、製造コストの増加を抑制することができる。
上記(3)の構成の車両用電源回路によれば、車両に実装される際に、車両の仕様に対応する、複数のスイッチ回路のうち1つのみが開放又は短絡に切り替え動作可能に設定され、複数のスイッチ回路のうち残りは常時開放に設定されるとよい。この場合、車両の仕様に応じて、複数のスイッチ回路のうち1つが選択されるので、様々な車種に適用でき、回路の汎用性を高めることができる。
上記(4)の構成の車両用電源回路によれば、負荷は複数設けられて互いに並列に接続するとよい。この場合、スイッチ回路を通じて複数の負荷に対し同時に電源から電力供給することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用電源回路の構成によれば、リレー回路の励磁コイルに並列に配置され、複数のスイッチ回路に直列に接続する抵抗器を有する。このため、複数のスイッチ回路のうち少なくとも1つに電源からスイッチ回路自身に流れる電流の定格値が設定され、残りのスイッチ回路との間で仕様が異なる場合でも、簡素な回路素子である抵抗器を用いることで、その定格値が設定されたスイッチ回路に所望の電流を流すことができる。これにより、スイッチ回路の仕様が異なる場合でも簡素な構成で回路を標準化して汎用性を高めることができる。したがって、車両用電源回路の製造コストを低減すると共に車両搭載時の作業効率を向上させることができる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用電源回路を説明する概略回路構成図である。
図2図2は、図1に示す車両用電源回路が通電された状態を示す概略回路構成図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態に係る車両用電源回路を説明する概略回路構成図である。
図4図4は、第1の従来例に係る車両用電源回路を説明する概略回路構成図である。
図5図5は、第2の従来例に係る車両用電源回路を説明する概略回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を参照して、本発明に係る第1実施形態の車両用電源回路10について説明する。
【0023】
<車両用電源回路の回路構成について>
図1を参照して、本実施形態の車両用電源回路10の回路構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両用電源回路10を説明する概略回路構成図である。
【0024】
本実施形態の車両用電源回路10は、車両の変速機が無段変速機及び手動変速機のうちいずれの場合でも適応可能な電源回路として構成される。また、車両用電源回路10は、変速機がバックギアに切り替わる際、後述する電気的負荷としてのバック用ランプL1,L2を点灯するために車両に実装される。
【0025】
図1に示すように、車両用電源回路10は、接地されて設けられる電源Bと、複数(本実施形態では2つ)のスイッチ回路11A,11Bと、励磁コイル13及びスイッチ部14を有するリレー回路12と、電気的負荷として電源Bから電力供給されるバック用ランプ(ランプ装置)L1,L2と、抵抗器15と、を有する。
なお、車両用電源回路10は、例えば車両の前後に亘って配索されるものであり、車両用電源回路10の各構成要素間は所定の規格及び長さの電線で接続される。
【0026】
電源Bは、オルタネータ又は鉛バッテリなどの電源であり、負極側(他端)が接地されており、正極側(一端)が過電流から回路を保護するヒューズ回路Fに接続される。電源Bは、ヒューズ回路Fを介して車両用電源回路10に電力供給する。また、バック用ランプL1,L2は、一対設けられており互いに系列に接続される。一対のバック用ランプL1,L2は、正極側(一端)が後述するリレー回路12のスイッチ部14の負極側(他端)に接続し、負極側(他端)が接地されて、電源Bから電力供給される。バック用ランプL1,L2は、車両の後部の左右両端部にそれぞれ配置される。バック用ランプL1,L2は、車両の変速機がバックギアに切り替わる際に点灯して、自車両の後方に対し自車両が後進状態にあることを報知する。
なお、本実施形態では、バック用ランプL1,L2に印加される電圧値は、11.7[V]程度とされる。また、本実施形態では電源Bはオルタネータ又は鉛バッテリとされるがこれに限定されず、電力供給可能なものであれば適宜様々なものが適用できる。なお、電気的負荷としてバック用ランプL1,L2を挙げたがこれに限らない。所定値以上の電圧を要する電気的負荷であれば、モータなど様々なものが適用できる。また、負荷の数は限定されず、複数の負荷が直列に接続されていてもよい。
【0027】
第1及び第2のスイッチ回路11A,11Bは、例えば車両前方のエンジンルーム内に配置されており、互いに並列に接続され、正極側(一端)が電源Bにそれぞれ接続して開放又は短絡にそれぞれ切り替え動作する。第1及び第2のスイッチ回路11A,11Bは、互いに異なる仕様である。すなわち、第1のスイッチ回路11Aは手動変速機のための回路であり、電源Bからスイッチ回路11A自身に流れる電流の定格値が設定される。本実施形態の場合、第1のスイッチ回路11Aの電流値の定格値は1[A]に設定される。第1のスイッチ回路11Aに1[A]以上の電流が流れることにより、第1のスイッチ回路11Aの接点(不図示)で生成される酸化皮膜が除去される。第2のスイッチ回路11Bは無段変速機のための回路である。第2のスイッチ回路11Bにはスイッチ回路11B自身に流れる電流の定格値は設定されておらず、幅広い電流値に適応可能な回路である。また、第1及び第2のスイッチ回路11A,11Bの初期状態は開放に設定される。
【0028】
本実施形態では、前述のように車両用電源回路10は、第1及び第2の、複数のスイッチ回路11A,11Bを含んで構成される。ここで、車両用電源回路10が車両に実装される際において、車両の変速機が手動変速機の場合、手動変速機のバックギア(当該車両の仕様)に対応する第1のスイッチ回路11Aのみが開放又は短絡に切り替え動作可能に設定される。このとき、第2のスイッチ回路11Bは常時開放に設定され、スイッチ回路11Bとして機能しないように搭載される。その一方、車両の変速機が無段変速機の場合、無段変速機のバックギアに対応する第2のスイッチ回路11Bのみが開放又は短絡に切り替え動作可能に設定される。このとき、同様に第1のスイッチ回路11Aはスイッチ回路11Aとして機能しないように搭載される。
なお、スイッチ回路11A,11Bは一般的に低コストの部品であるため、このように複数のスイッチ回路11A,11Bのうち一部が機能しないように設けても製造コスト全体へは影響は小さい。
【0029】
リレー回路12の励磁コイル13は、正極側(一端)が第1及び第2のスイッチ回路11A,11Bにそれぞれ接続すると共に、負極側(他端)が接地される。リレー回路12のスイッチ部14は、正極側(一端)がヒューズ回路Fを介して電源Bに接続する。リレー回路12のスイッチ部14は、第1又は第2のスイッチ回路11A,11Bを通じて電源Bから電流がリレー回路12の励磁コイル13に流れることで開放から短絡に切り替わる。
なお、本実施形態では、リレー回路12の励磁コイル13には0.12[A]程度の電流が流れる。また、複数のスイッチ回路11A,11Bが車両のエンジンルーム内に設置されため、電源Bの電力をエンジンルーム内まで電線(導線)を用いて引き回す必要があり、この導体の抵抗に従う電圧降下によってバック用ランプL1,L2に規定以上の電力が供給されない可能性がある。この電圧降下を防ぐために、リレー回路12が用いられる。
【0030】
抵抗器15は、リレー回路12の励磁コイル13に並列に配置される。すなわち、抵抗器15は、正極側(一端)が第1及び第2のスイッチ回路11A,11Bの負極側にそれぞれ接続すると共に負極側(他端)が接地される。また、抵抗器15の抵抗値は、前述した第1のスイッチ回路11Aの定格値に基づいて設定される。
【0031】
<車両用電源回路の通電時の電気の経路について>
次に、図2を参照して、車両用電源回路10の通電時の電気の経路について説明する。図2は、図1に示す車両用電源回路10が通電された状態を示す概略回路構成図である。
なお、図2中の矢印は、車両用電源回路10の通電時における電源Bからの電気の経路(流れ)を表している。また、図2を用いた説明では、本実施形態の車両用電源回路10を車両に実装する際、第1のスイッチ回路11Aのみが開放又は短絡に切り替え動作可能に設定される。
【0032】
図2に示すように、車両の変速機がバックギアに切り替わると、まず第1のスイッチ回路11Aが開放から短絡に切り替え動作する。この切り替えにより第1のスイッチ回路11Aが通電して、電源Bからの電流がリレー回路12の励磁コイル13及び抵抗器15の手前で分流する。一方の電流がリレー回路12の励磁コイル13に流れて励磁コイル13に磁界が発生する。この磁界の発生に従って、リレー回路12のスイッチ部14は、磁力により引き寄せられて開放から短絡に切り替える。他方の電流は、抵抗器15を通過して接地に流れる。また、リレー回路12の励磁コイル13を通過した電流も、抵抗器15を通過した電流と合流して接地にそのまま流れる。
【0033】
次に、リレー回路12のスイッチ部14が短絡に切り替わると、リレー回路12のスイッチ部14が通電して電気的負荷である一対のバック用ランプL1,L2は電源Bからそれぞれ電力供給される。その結果、一対のバック用ランプL1,L2には電気が流れて、一対のバック用ランプL1,L2は点灯する。ここで、抵抗器15は正極側が第1及び第2のスイッチ回路11A,11Bの負極側にそれぞれ接続すると共に負極側が接地されており、且つ抵抗器15の抵抗値が、第1のスイッチ回路11Aの定格値に基づいて設定されているので、第1のスイッチ回路11Aには所望の値の電流が流れる。これにより、第1のスイッチ回路11Aの仕様(定格)通りの電流が流れ、結果的に、第1のスイッチ回路11Aの接点に生成する酸化皮膜が除去可能な状況とされる。
なお、第2のスイッチ回路11Bについても同様に電源Bから電流が流れるが、第2のスイッチ回路11Bは電流の仕様に関する制限はなく、そのまま通電される。
【0034】
<第1実施形態の車両用電源回路の利点について>
以上説明したように本実施形態の車両用電源回路10によれば、複数のスイッチ回路11A,11Bのうち第1のスイッチ回路11Aに電源Bからスイッチ回路11A自身に流れる電流の定格値が設定され、第2のスイッチ回路11Bとの間で仕様が異なる場合でも、簡素な回路素子である抵抗器15を用いることで、その定格値が設定されたスイッチ回路11Aに所望の電流を流すことができる。これにより、スイッチ回路11A,11Bの仕様が異なる場合でも簡素な構成で回路を標準化して汎用性を高めることができる。したがって、車両用電源回路10の製造コストを低減すると共に車両搭載時の作業効率を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態の車両用電源回路10によれば、定格値に基づいて抵抗器15の抵抗値が設定される。抵抗器15については様々な抵抗値のものを容易且つ低コストで入手できるので、回路の標準化を容易に実現することができ、製造コストの増加を抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態の車両用電源回路10によれば、車両に実装される際に、車両の仕様に対応する、複数のスイッチ回路11A,11Bのうち1つのみが開放又は短絡に切り替え動作可能に設定され、複数のスイッチ回路11A,11Bのうち残りは常時開放に設定される。車両の仕様に応じて、複数のスイッチ回路11A,11Bのうち1つが選択されるので、様々な車種に適用でき、回路の汎用性を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態の車両用電源回路10によれば、バック用ランプ(負荷)L1,L2は複数設けられて互いに並列に接続する。スイッチ回路11A,11Bを通じて一対のバック用ランプ(複数の負荷)L1,L2に対し同時に電源Bから電力供給することができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、本発明に係る第2実施形態の車両用電源回路20について説明する。
【0039】
<車両用電源回路の回路構成について>
図3を参照して、本実施形態の車両用電源回路20の回路構成について説明する。図3は、本実施形態に係る車両用電源回路20を説明する概略回路構成図である。
【0040】
図3に示すように、本実施形態の車両用電源回路20は、電源Bと、第1及び第2のスイッチ回路21A,21Bと、リレー回路22と、バック用ランプ(ランプ装置)L1,L2と、抵抗器25と、を有する。
【0041】
本実施形態では、リレー回路22の励磁コイル23は、正極側(一端)がヒューズ回路Fを介して電源Bに接続すると共に、負極側(他端)が第1及び第2のスイッチ回路21A,21Bの正極側(一端)に接続する。同様に、抵抗器25は、正極側(一端)が電源Bに接続すると共に、負極側(他端)が第1及び第2のスイッチ回路21A,21Bの正極側(一端)に接続する。そして、第1及び第2のスイッチ回路21A,21Bは、正極側(一端)が励磁コイル23及び抵抗器25を介して電源Bにそれぞれ接続すると共に、負極側(他端)がそれぞれ接地される。
【0042】
このようにして構成されることにより、車両の変速機がバックギアに切り替わると、第1のスイッチ回路21Aが開放から短絡に切り替え動作する。この切り替えにより第1のスイッチ回路11Aが通電して、リレー回路22の励磁コイル23及び抵抗器25の両方に電源Bから電流が流れる。そして、リレー回路22の励磁コイル23によって、リレー回路12のスイッチ部14は開放から短絡に切り替える。リレー回路12のスイッチ部14が短絡に切り替わると、リレー回路12のスイッチ部14が通電して一対のバック用ランプL1,L2は電源Bからそれぞれ電力供給される。
なお、第2のスイッチ回路21Bについても同様に電源Bから電流が流れるが、第2のスイッチ回路21Bは電流の仕様に関する制限はなく、そのまま通電される。
【0043】
<第2実施形態の車両用電源回路の利点について>
以上説明したように本実施形態の車両用電源回路20によれば、スイッチ回路21A,21Bの仕様が異なる場合でも回路を標準化して汎用性を高めることができる。また、複数のスイッチ回路21A,21Bは、通常、車両のエンジンルーム内に設置されることが多いが、本実施形態によってスイッチ回路21A,21Bから車両本体に戻る電線を削減することができる。これにより、車両用電源回路20の製造コストを低減することができる。
【0044】
また、本実施形態の車両用電源回路20によれば、上記第1実施形態と比べて、リレー回路12の励磁コイル13に対するスイッチ回路21A,21Bの位置が上下流で逆になっており、電気的な経時変化においてサージ特性が異なる(位相が逆になる)。第1又は第2実施形態のいずれを採用するべきかは、負荷L1,L2の特性に基づいて選択される。
その他の作用効果については上記第1実施形態と同様である。
【0045】
また、上記第1及び第2実施形態の車両用電源回路10,20での回路構成を車両用に限らず、様々な分野で使用される電源回路に広く適用することができる。この場合でも上述した車両用電源回路10,20と同様な作用効果を得ることができる。
【0046】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
【0047】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車両用電源回路10の特徴をそれぞれ以下[1]〜[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1]互いに並列に接続し、一端(正極側)が電源(B)にそれぞれ接続して開放又は短絡にそれぞれ切り替え動作する複数のスイッチ回路(11A,11B,21A,21B)と、
励磁コイル(13,23)と、一端(正極側)が前記電源(B)に接続し、前記電源(B)から電流が前記励磁コイル(13,23)に流れることで開放から短絡に切り替わるスイッチ部(14,24)と、を有するリレー回路(12,22)と、
一端(正極側)が前記スイッチ部(14,24)の他端(負極側)に接続すると共に他端(負極側)が接地されて、前記電源(B)から電力供給される負荷(L1,L2)と、
前記励磁コイル(13,23)に並列に配置され、前記複数のスイッチ回路(11A,11B,21A,21B)に直列に接続する抵抗器(15,25)と、
を備えることを特徴とする車両用電源回路(10,20)。
[2]前記励磁コイル(13)は、一端(正極側)が前記複数のスイッチ回路(11A,11B)の他端(負極側)にそれぞれ接続すると共に、他端(負極側)が接地されて、前記複数のスイッチ回路(11A,11B)を通じて前記電源(B)から電流が流れ、
前記抵抗器(15)は、一端(正極側)が前記複数のスイッチ回路(11A,11B)の他端(負極側)にそれぞれ接続すると共に、他端(負極側)が接地される
ことを特徴とする[1]に記載の車両用電源回路(10)。
[3]前記励磁コイル(23)は、一端(正極側)が前記電源(B)に接続すると共に、他端(負極側)が前記複数のスイッチ回路(21A,21B)の一端(正極側)に接続し、
前記抵抗器(25)は、一端(正極側)が前記電源(B)に接続すると共に、他端(負極側)が前記複数のスイッチ回路(21A,21B)の一端(正極側)に接続し、
前記複数のスイッチ回路(21A,21B)は、前記一端(正極側)が前記励磁コイル(23)及び前記抵抗器(25)を介して前記電源(B)にそれぞれ接続すると共に、他端(負極側)がそれぞれ接地される
ことを特徴とする[1]に記載の車両用電源回路(20)。
[4]前記複数のスイッチ回路(11A,11B,21A,21B)のうち少なくとも1つは、前記電源(B)から自身に流れる電流の定格値が設定されており、
前記定格値に基づいて前記抵抗器(15,25)の抵抗値が設定される
ことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の車両用電源回路(10,20)。
[5]車両に実装される際に、前記車両の仕様に対応する、前記複数のスイッチ回路(11A,11B,21A,21B)のうち1つのみが開放又は短絡に切り替え動作可能に設定され、前記複数のスイッチ回路(11A,11B,21A,21B)のうち残りは常時開放に設定される
ことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の車両用電源回路(10,20)。
[6]前記負荷(バック用ランプ、L1,L2)は、複数設けられて互いに並列に接続する
ことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の車両用電源回路(10,20)。
【符号の説明】
【0048】
10 車両用電源回路
11A 第1のスイッチ回路(スイッチ回路)
11B 第2のスイッチ回路(スイッチ回路)
12 リレー回路
13 励磁コイル
14 スイッチ部
15 抵抗器
20 車両用電源回路
21A 第1のスイッチ回路(スイッチ回路)
21B 第2のスイッチ回路(スイッチ回路)
22 リレー回路
23 励磁コイル
24 スイッチ部
25 抵抗器
30 車両用電源回路
31 スイッチ回路
32 リレー回路
33 励磁コイル
34 スイッチ部
40 車両用電源回路
41 スイッチ回路
B 電源
F ヒューズ回路
L1,L2 バック用ランプ(負荷)
U リレー駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5