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特許6899990入力デバイス特定方法、入力デバイス特定プログラム及び入力デバイス特定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899990
(24)【登録日】2021年6月18日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】入力デバイス特定方法、入力デバイス特定プログラム及び入力デバイス特定システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20210628BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   G06F3/041 560
   G06F3/041 590
   G06F3/03 400Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-141332(P2017-141332)
(22)【出願日】2017年7月3日
(65)【公開番号】特開2019-16329(P2019-16329A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】597010226
【氏名又は名称】株式会社コト
(72)【発明者】
【氏名】窪田 和弘
【審査官】 田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−35051(JP,A)
【文献】 特表2016−502215(JP,A)
【文献】 特開2008−226243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/03
G06F 3/01
G06F 3/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えた入力デバイスをタッチパネルに近接又は接触させて各接触子に設定された認識範囲に存在する入力点により該入力デバイスを特定する入力デバイス特定方法であって、
前記接触子による前記タッチパネルへの入力点を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出した各入力点の座標情報を前記所定の位置関係からなる接触子の配置情報に基づき正規化する正規化ステップと、
前記正規化ステップによる正規化後の座標情報に対応する各入力点情報と前記接触子の配置情報とを比較して前記接触子に適合する入力点を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにより特定された入力点が前記接触子の前記認識範囲に位置しているか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップによる判断結果に基づいて前記接触子の前記認識範囲を変更する認識範囲変更ステップとを備えることを特徴とする入力デバイス特定方法。
【請求項2】
前記入力デバイスの面を所望区画に分割して該区画に接触子を設ける事により該接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えてなり、前記認識範囲は前記接触子を中心としてタッチパネルに設定されており、変更される認識範囲は前記区画を超えない範囲で拡大される範囲である請求項1記載の入力デバイス特定方法。
【請求項3】
前記入力デバイスの面を所望区画に分割して該区画に接触子を設ける事により該接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えてなり、前記認識範囲は前記接触子を中心として認識範囲数とともにタッチパネルに設定されており、変更される認識範囲は前記区画を超えて拡大される範囲である請求項1記載の入力デバイス特定方法。
【請求項4】
コンピュータを、
接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えた入力デバイスの該接触子によるタッチパネルへの近接又は接触に基づく入力点を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した各入力点の座標情報を前記所定の位置関係からなる接触子の配置情報に基づき正規化する正規化手段と、
前記正規化手段による正規化後の座標情報に対応する各入力点情報と前記接触子の配置情報とを比較して前記接触子に適合する入力点を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された入力点が前記接触子に設定されている認識範囲に位置しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段による判断結果に基づいて前記接触子の前記認識範囲を変更する認識範囲変更手段として機能させるための入力デバイス特定プログラム。
【請求項5】
接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えた入力デバイスと、
前記入力デバイスの接触子によるタッチパネルへの近接又は接触に基づく入力点を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した各入力点の座標情報を前記所定の位置関係からなる接触子の配置情報に基づき正規化する正規化手段と、
前記正規化手段による正規化後の座標情報に対応する各入力点情報と前記接触子の配置情報とを比較して前記接触子に適合する入力点を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された入力点が前記接触子に設定されている認識範囲に位置しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段による判断結果に基づいて前記接触子の前記認識範囲を変更する認識範囲変更手段とを備えてなる入力デバイスを特定する入力デバイス特定システム。
【請求項6】
接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えた入力デバイスと、
前記入力デバイスの接触子を近接又は接触させるタッチパネルと、
前記接触子によるタッチパネルへの近接又は接触に基づき入力点を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した各入力点の座標情報を前記所定の位置関係からなる接触子の配置情報に基づき正規化する正規化手段と、
前記正規化手段による正規化後の座標情報に対応する各入力点情報と前記接触子の配置情報とを比較して前記接触子に適合する入力点を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された入力点が前記接触子に設定されている認識範囲に位置しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段による判断結果に基づいて前記接触子の前記認識範囲を変更する認識範囲変更手段とを備えてなる入力デバイスを特定する入力デバイス特定システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに情報を入力する入力デバイスの特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の入力点を識別できる、いわゆるマルチタッチに対応したタッチパネルを搭載するデバイスが広く知られている。通常は1本の指による入力で様々な処理を行うが、多点入力による特殊な制御入力や、セキュリティ認証を行う事例も増えつつある。当該多点入力は、各入力点の相対的な位置関係を固定するために手指による入力でなく、導電物質等で構成されたスタンプ等の入力デバイスを使用する事が通例である。
【0003】
前記入力デバイスを使用する場合、入力時に静電気等の偶発的なノイズやタッチパネル性能のばらつき等により、検出された座標にずれが発生し、本来の識別情報とは異なる情報が認識される、いわゆる誤認識が発生する事がある。また認識の際の条件に合致しない等によりそもそもデバイスが認識されない、いわゆる不認識が発生する事も知られている。セキュリティ的な観点において誤認識は到底容認されるものではなく、不認識もユーザビリティを著しく低下させるため、出来る限り発生率を抑える事が望まれている。
【0004】
特許文献1には、操作者が手指でタッチパネルに入力する際の誤操作を防止する方法が開示されている。該文献においては特定のパターンでのタッチ入力があった際に、タッチ点付近のアイコンに対応する反応領域を拡大する事で認識精度を高める方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−182463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記方法では操作者が特定の操作方法を把握していなければならず、不特定多数の操作者が入力操作をするような状況には向いていない。また複数点を入力するためのスタンプ等の入力デバイスでは複雑な入力操作パターンをとる事が難しく、そのまま応用できる方法とはならない。
【0007】
本発明は、スタンプ等の入力デバイスを使用する際に複雑な操作方法を必要とせずに、誤認識や不認識の発生率を抑制する方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の入力デバイス特定方法は、接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えた入力デバイスをタッチパネルに近接又は接触させて各接触子に設定された認識範囲に存在する入力点により該入力デバイスを特定する入力デバイス特定方法であって、前記接触子による前記タッチパネルへの入力点を検出する検出ステップと、前記検出ステップにより検出した各入力点の座標情報を前記所定の位置関係からなる接触子の配置情報に基づき正規化する正規化ステップと、前記正規化ステップによる正規化後の座標情報に対応する各入力点情報と前記接触子の配置情報とを比較して前記接触子に適合する入力点を特定する特定ステップと、前記特定ステップにより特定された入力点が前記接触子の前記認識範囲に位置しているか否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップによる判断結果に基づいて前記接触子の前記認識範囲を変更する認識範囲変更ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、前記入力デバイス特定方法において、前記入力デバイスの面を所望区画に分割して該区画に接触子を設けることにより該接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えてなり、前記認識範囲は前記接触子を中心としてタッチパネルに設定されており、変更される認識範囲は前記区画を超えない範囲で変更される範囲としたものであってもよい。
【0010】
また本発明は、前記入力デバイス特定方法において、前記入力デバイスの面を所望区画に分割して該区画に接触子を設けることにより該接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えてなり、前記認識範囲は前記接触子を中心として認識範囲数とともにタッチパネルに設定されており、変更される認識範囲は前記区画を超えて変更される範囲としたものであってもよい。
【0011】
また、本発明の入力デバイス特定プログラムは、コンピュータを、接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えた入力デバイスの該接触子によるタッチパネルへの近接又は接触に基づく入力点を検出する検出手段と、前記検出手段により検出した各入力点の座標情報を前記所定の位置関係からなる接触子の配置情報に基づき正規化する正規化手段と、前記正規化手段による正規化後の座標情報に対応する各入力点情報と前記接触子の配置情報とを比較して前記接触子に適合する入力点を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された入力点が前記接触子に設定されている認識範囲に位置しているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段による判断結果に基づいて前記接触子の前記認識範囲を変更する認識範囲変更手段として機能させるためのプログラムである。
【0012】
また、本発明の入力デバイス特定システムは、接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えた入力デバイスと、前記入力デバイスの接触子によるタッチパネルへの近接又は接触に基づく入力点を検出する検出手段と、前記検出手段により検出した各入力点の座標情報を前記所定の位置関係からなる接触子の配置情報に基づき正規化する正規化手段と、前記正規化手段による正規化後の座標情報に対応する各入力点情報と前記接触子の配置情報とを比較して前記接触子に適合する入力点を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された入力点が前記接触子に設定されている認識範囲に位置しているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段による判断結果に基づいて前記接触子の前記認識範囲を変更する認識範囲変更手段とを備えてなる入力デバイスを特定するシステムである。
【0013】
また、本発明の入力デバイス特定システムは、接触子を所定の位置関係を保持して複数個備えた入力デバイスと、前記入力デバイスの接触子を近接又は接触させるタッチパネルと、前記接触子によるタッチパネルへの近接又は接触に基づき入力点を検出する検出手段と、前記検出手段により検出した各入力点の座標情報を前記所定の位置関係からなる接触子の配置情報に基づき正規化する正規化手段と、前記正規化手段による正規化後の座標情報に対応する各入力点情報と前記接触子の配置情報とを比較して前記接触子に適合する入力点を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された入力点が前記接触子に設定されている認識範囲に位置しているか否かを判断する判断手段と、前記判断手段による判断結果に基づいて前記接触子の前記認識範囲を変更する認識範囲変更手段とを備えてなる入力デバイスを特定するシステムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数回タッチ入力を行うだけで入力デバイスの認識精度を高める事ができ、実施者は追加費用をかけずにソフトウェアの変更のみで高精度の認識システムを得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1に係る入力デバイス特定システムの構成例を示す図である。
図2図1に示す入力デバイス特定プログラムの構成の一例を示す図である。
図3図1に示す入力デバイスの外観例を示す図である。
図4】接触子の配置関係の一例を示す図である。
図5】接触子座標情報の一例を示す図である。
図6】入力デバイス特定プログラムの動作を説明するフローチャートである。
図7】初回入力時の各タッチ点と有効認識範囲の位置関係を示す図である。
図8】再入力時の各タッチ点と有効認識範囲の位置関係を示す図である。
図9】接触子の配置関係の変形例を示す図である。
図10】接触子の配置関係の変形例を示す図である。
図11】タッチ点と有効認識範囲の位置関係の変形例を示す図である。
図12】実施の形態2に係る入力デバイス特定システムの構成例を示す図である。
図13】複数のタッチ点と有効認識範囲の位置関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては静電容量方式のタッチパネルを用いたシステムについて説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態となるタッチ認証システム1の構成例を示した図である。図1に示す通り、入力デバイス特定システム1は、タッチパネル搭載デバイス2と、入力デバイス3と、入力デバイス特定プログラム4からなる。
【0019】
タッチパネル搭載デバイス2は、様々な処理を実行する中枢となるCPU5と、情報やプログラム等を保存するメモリ6と、種々の周辺機器との接続を担うI/O部7と、指などでタッチする事で座標情報の入力を行うタッチパネル8と、を最低限備える。また入力デバイス特定プログラム4はメモリ6内に保存されている。
【0020】
図2に示す通り、メモリ6上に保存された入力デバイス特定プログラム4は、CPU5が読み込む事で実行するタッチ点検出手段(検出手段)10と、座標正規化手段(正規化手段)11と、接触子特定手段(特定手段)12と、接触子範囲判定手段(判断手段)13と、有効認識範囲更新手段(認識範囲変更手段)14とに加え、CPU5が前記各手段を実行する際に利用するデータとしての接触子座標情報15と、有効認識範囲情報16とからなる。
【0021】
タッチパネル8はマトリックス状に配置された各電極間の静電容量の変化を検出する事で、タッチ点の位置を特定する。また、同時に複数の入力を検出可能ないわゆるマルチタッチに対応したものとなっており、入力デバイス3による多点入力を可能としている。
【0022】
図3はタッチパネル8に近接又は接触させる事で複数点のタッチ情報を一定の位置関係で入力する入力デバイス3の外観の一例を示す図である。該入力デバイス3は導電性の樹脂、ラバー、金属若しくはそれらの組み合わせで作成されたスタンプ状のデバイスであり、側面等を手で把持して使用する事で、指でタッチパネル8を操作する時と同等の容量変化をタッチパネル8上に発現させる事が出来る構成となっている。図において直方体状の入力デバイス3本体の一表面3aに円柱状に突出する形で設けられた突起部(以下、「接触子20」と呼ぶ)が複数個あり、この接触子20が設けられた前記一表面3aをタッチパネル8の表面に近接又は接触させる事で接触子20それぞれが指でタッチ入力をした時と同等の振る舞いをし、複数個ある接触子20の相対的な位置関係をタッチパネル搭載デバイス2に入力出来るものとなっている。
【0023】
図4は前記入力デバイス3の接触子20の配置関係の一例を示す図である。本例では前記一表面内の正方形領域を5×5の正方形区画に均等に分割し、各単位区画(以下、「セル21」と呼ぶ)の中央に接触子20を配置可能な設計としている。また本例では説明の簡単化のため、配置され得る接触子20の大きさは各セル21の大きさを超えないものとしている。これにより、接触子20を連続するセルに隣接させて配置する事が可能となっている。また、2つのセル21の組み合わせの内、該2つのセル21の中心点が成す線分が最長となるセル21上には必ず接触子20を配置するものとし(以下、当該必ず配置される接触子20を基準接触子22と呼ぶ)、この2点が成す線分を基準線分とする事で残りのセル21の中心点の相対的な位置を規定している。本例においてはA5とE1に位置するセル21上に基準接触子22を配置するものとしている。基準接触子22を除く残りの接触子20(以下、識別接触子23と呼ぶ)は前記A5とE1に位置するセル21に加え、接触子配置禁止領域24に相当するE5に位置するセル21を除く任意のセル21上に配置するものとする。これは2つの基準接触子22の組み合わせ以外の接触子20の組み合わせによって基準線分と同一の長さを持つ線分を形成しないためである。この識別接触子23が配置されるパターンによって入力デバイス3が持つ固有情報を特定する事が可能となる。即ち、取り得る識別接触子23の配置パターンの数が入力デバイス3の実現可能な種類となる。
【0024】
本実施形態では線分を基準として接触子20の座標を規定するようにしたため、180度回転した際に重なる配置パターンが存在する事がある。そのような配置については区別がないため、同一の配置パターン(同一のデバイス)として扱えばよい。
【0025】
タッチ点検出手段10は同時に入力された複数のタッチ点を検出し、各タッチ点の座標やタッチ点の個数を判別する。具体的には、タッチ点の個数が予め定められた所定の個数であるかを判断し、合致した場合に、各タッチ点の座標情報を有効なものとして保持する。合致しない場合は、その入力は無効なものとして各タッチ点の座標情報を破棄し、新たな入力に備える。
【0026】
座標正規化手段11は、入力されたタッチ点が、どの接触子20の近接又は接触によるものかを、メモリ6上に保存された接触子座標情報15と比較して特定するために正規化する。ここでいう正規化とは、各タッチ点の位置関係を保ったまま、換言すれば各タッチ点を直線で結んで出来る多角形が正規化前と正規化後で相似形となるように、各タッチ点の座標を所定の条件に合致するように変換する処理である。一般的にタッチパネル搭載デバイス2は機種によってパネルの解像度や座標体系が異なる事があり、様々なデバイス上でタッチ点の座標情報を共通に処理するためにこの正規化が重要な処理となる。
【0027】
接触子特定手段12は正規化後のタッチ点の座標情報に対して、メモリ6上に保存された接触子座標情報15と比較照合し、対応するセル21及び接触子20を特定する。図5は前記接触子座標情報15の一例であり、前述した接触子20の配置に関するセル21の相対位置座標や、セル21上に配置できる接触子20の種別といった情報が記録されている。図においては基準接触子22が配置されるA5とE1のセル21の中心を結ぶ基準線分の中点(セルC3の中心に等しい)を原点とし、A1のセル中心が(−100,−100)、E5のセル中心が(100,100)となるように座標体系を定めた時の、各セル21の中心座標値を規定している。前述した座標正規化手段11は当該座標体系に合致するように各タッチ点の座標を変換している。これにより、正規化後のタッチ点座標に対して、最も近いセル21及び接触子20を特定したり、セル21及び接触子20の中心からの距離を求める等の処理が可能となる。
【0028】
接触子範囲判定手段13は、正規化後の各タッチ点に対して、接触子特定手段12によって求められた対応する接触子20の有効認識範囲内であるかどうかをそれぞれ判定し、範囲内であれば当該タッチ点は対応する接触子20のタッチ入力によるものとして特定する。有効認識範囲とはセル21毎に設けられた属性情報であり、その範囲内に正規化後のタッチ点座標が存在すれば該当するセル21上の接触子20がタッチ入力されたと判定する境界条件となる領域の事である。メモリ6上には当該領域の大きさを規定する有効認識範囲情報16が保存されており、CPU5が入力デバイス特定プログラム4を実行する処理の中で適宜読み出され、タッチ入力が正当な入力デバイス3によるものかどうかを判定する条件として使用される。
【0029】
有効認識範囲更新手段14はメモリ6上に保存された有効認識範囲情報16を必要に応じて動的に更新する。前述のように有効認識範囲情報16はセル21毎に設けられ、更新される前の初期状態が存在する。該初期状態はセル21毎で異なってもよいし、全てのセル21について同じであってもよい。また、基準接触子22等、有効認識範囲が必要のないセル21があってもよい。本実施の形態では座標正規化手段11によって基準接触子22に相当するタッチ点の座標を設計上の座標に一致させるため、この2点については有効認識範囲を設けなくてもよい。有効認識範囲は過去のタッチ入力の情報に関連して適宜変更され、タッチ入力毎に異なる条件で入力デバイス3を特定する事が可能となる。
【0030】
以下、図6に示すフローチャートを参照しながら本発明の入力デバイス特定方法を説明する。
【0031】
まずCPU5がタッチ点検出手段10を実行する事により、タッチ入力が行われたかどうかを検出し(ステップS101)、タッチ点の入力数が所定の数、即ち入力デバイス3が持つ接触子20の数であるかどうかを判定する(ステップS102)。所定の数と一致した場合はタッチ点の座標を保持し、所定の数でない場合は当該タッチ入力は入力デバイス3の押印によるものでないと判断し、冒頭に戻って新たなタッチ入力を待ち受ける。
【0032】
続いてCPU5が座標正規化手段11を実行する事により、保持されたタッチ点の座標の内、最長の距離を取る2点を抽出する(ステップS103)。当該2点が成す最長の線分を基準線分と定め、入力されたタッチ点の座標を正規化する(ステップS104)。ここでは、タッチ点それぞれの相互位置関係を保ったまま、基準線分を成す2点の座標を接触子座標情報15内の対応する2点(基準接触子22)の座標と一致するように全てのタッチ点について座標変換を行っている。この際、基準線分の長さに範囲条件を設け、範囲外の長さである場合は入力デバイス3の押印によるものでないと判断して処理を中断してもよい。
【0033】
続いてCPU5が接触子特定手段12を実行する事により、正規化されたタッチ点の座標情報とメモリ6上に記録された接触子座標情報15を比較照合し、基準線分をなす2点を除くタッチ点全てについて対応する位置のセル21及び接触子20を特定する(ステップS105)。具体的には、正規化後のタッチ点の座標について、接触子座標情報15内に記録されたセル21の中心座標の内、どのセル21に最も近いかを判定する最近傍探索を行う。最近傍探索については例えばkd木など既知のアルゴリズムが種々存在するので、利用環境に応じて計算負荷の少ないものを選択すればよい。もちろん、2点間の距離を全て計算して求めてもよい。本実施の形態においては同一形状のセル21を隙間なく配置しているので、正規化後のタッチ点の座標が存在するセル21がそのまま求めるセル21となり、該セル21上に配置される接触子20が求まる。
【0034】
続いてCPU5が接触子範囲判定手段13を実行する事により、正規化後の各タッチ点の座標についてステップS105で求められた最も近い接触子20を中心とする所定の座標範囲内にあるかどうかの判定を行い(ステップS106)、全て範囲内であると判定された場合に正式な入力デバイス3の入力によるものとして特定し、入力デバイス3の種類に応じた各種処理を行う(ステップS107)。
【0035】
本発明の肝要な部分は、この範囲判定の処理をどう行うかにある。以下、図7及び図8を参照しながら説明する。図7において各セル21内に点線で示されている円形の領域は有効認識範囲の初期状態である。該初期状態の大きさは有効認識範囲情報16内に保存されており、アプリケーション毎に個別の値を取る事ができる。ステップS106では、正規化後のタッチ点それぞれについて、最も近いセル32に対応する有効認識範囲内であるかどうかを判定し、範囲内であれば当該セル上に配置された接触子のタッチ入力によるものとして特定する。その結果、全てのタッチ点について有効認識範囲内であると判定された場合、対応するセル21上に接触子20を持つ入力デバイス3が押されたものとして特定する。
【0036】
ステップS106において有効認識範囲に入らないタッチ点が存在する場合、CPU5が有効認識範囲更新手段14を実行する事によって、該当するタッチ点に対応するセル21の有効認識範囲を初期状態より拡大する形で有効認識範囲情報16を更新し(ステップS108)、再度の入力を操作者に促す。これは表示機器にスタンプ認識に失敗した旨の表示をしたり、音声でその旨の通知をしたりする手段を取ればよい。改めてタッチ点座標が取得できれば、再度座標の正規化を行い、対応するセル21について範囲判定を行う。その結果全てのタッチ点について、有効認識範囲内であれば、対応するセル21上に識別接触子23を持つ入力デバイス3が入力されたものとして特定する。図8に更新された有効認識範囲と再度取得されたタッチ点との位置関係を示す。ここでは前回に有効認識範囲外であったタッチ点(セルC4、D5に相当)についてもステップS108によって有効認識範囲が拡大された事で範囲内となり、基準線分を成すタッチ点以外の全てのタッチ点について範囲内となっている。この結果、セルB2、C4、D5のセル21上に識別接触子23を持つ入力デバイス3が入力されたものとして特定される。
【0037】
前記ステップS108では、前記ステップS106において有効認識範囲外であったタッチ点が存在するセル21の有効認識範囲を拡大し、タッチ点が存在しないセル21については初期状態にリセットする。また、既に有効認識範囲が拡大されているセル21上に再びタッチ点が検出された場合は、拡大された状態を保持する。即ち、連続でタッチ点が同じセル21内に検出された場合にのみ有効認識範囲の拡大によって認識条件が緩和され、一度でもタッチ点が前回と異なったセル21に検出された場合は初回の入力時と同様に評価される。
【0038】
有効認識範囲の初期状態はなるべく小さい範囲を取るのが効果的である。これは、初回の入力時に接触子特定の際の許容範囲を小さく取る事で、異なる接触子情報を持つ別の入力デバイスとして認識されてしまう誤認識の確率を小さくできるからである。すなわち、何らかの要因で本来検出されるべき位置からずれが発生したとしても、有効認識範囲を小さくとっているので別のセル21の有効認識範囲に入ってしまう確率を小さく抑える事が出来る。そして、再度の入力時に許容範囲を大きくとる事で、前回の入力時に入力デバイス3として特定出来なかったとしても高い確率で特定する事が出来る。また、再度の入力時にタッチ点が存在するセル21の位置が異なり再び入力デバイス3として特定出来なかった場合においても、最も有害となる誤認識は避けられており、更に連続で入力を促す事により最終的な認識率を上げる事が可能である。これは想定外の要因によって検出位置がずれる現象が連続で発生する確率は指数関数的に減少する事による。
【0039】
本発明によれば、入力デバイス3を複数回入力し、入力毎に認識条件を適切に調整する事で、単一の入力で入力デバイス3を認識させる場合に比べて誤認識並びに不認識の発生率を下げる事が可能である。単一の入力で認識を行う場合、有効認識範囲を大きくすれば誤認識の発生率が上がり、反対に有効認識範囲を小さくすれば不認識の発生率が上がる問題があったが、本発明によれば初回入力時に有効認識範囲を小さく取る事で誤認識を抑制し、再度の入力時に有効認識範囲を拡大する事で初回入力時に不認識となった場合でも高確率で認識させる事が可能である。また入力デバイス3を複数回入力する事は同じ操作の連続であるに過ぎず、操作者は容易に行う事ができる。
【0040】
本実施の形態において、入力デバイス3の1回の入力は、当該デバイスをタッチパネル8に近接又は接触させる動作と対応付けて説明していたが、これに限定されるものではなく、入力点の座標情報の1セット分を1回の入力としてもよい。通常タッチパネル8で座標情報を取得する場合、単位時間あたり例えば30回連続で座標の検出処理を行う事によってドラッグ操作等の入力点の移動に対応している。入力デバイス3を入力する場合においても取得できる座標情報は1セットではなく、デバイスをパネルから離すまで連続で座標情報が出力される事があり、この時に各座標情報のセットを1回の入力として処理する事でも本発明は適用可能である。当該処理によれば、例えば入力デバイス3をタッチパネル8に接触させ、その状態でデバイスを移動させる事によって本実施の形態において説明した認識処理を行う事ができる。
【0041】
また本実施の形態において入力デバイス3の接触子20やセル21は正方形格子状に配置しているがこれに限定されるものではなく、任意の配置パターンを取る事ができる。例えば平行四辺形状であってもよい。また、接触子20の形状や有効認識範囲は円形状としているがこれに限定されるものではなく、例えば方形状であってもよい。
【0042】
また本実施の形態では接触子20を隣接させて配置する事が出来るようにセル21の大きさを規定したが、現実的にはタッチパネル8に近接又は接触させて使用する入力デバイス3の大きさには制限があり、出来るだけ多くの接触子20の配置パターンを得ようとすると、セル21の大きさは出来るだけ小さく取る必要がある。接触子20をタッチパネル8に近接又は接触させた際、実際に検出される入力点の位置は一般的に接触子20の容量重心を中心として一定の範囲で分布する事が知られている。接触子20が均質に成形されておれば容量重心は幾何的な重心と等しく、円形の接触子20の場合円の中心となる。接触子20の大きさが前述の分布範囲より大きい場合は、接触子20の大きさでなく前記分布範囲を基準にセル21の大きさを決める事で、限られた領域で多くの接触子20の配置パターンを実現する事が出来る。しかしながら、静電気などの偶発的なノイズやタッチパネル8の性能のばらつき等によって想定される分布範囲を超えた位置にタッチ点が検出され、誤認識及び不認識を引き起こす可能性はセル21の大きさを小さく取る事に反して上昇してしまう。本発明はこのような問題に鑑みて成されたものであり、接触子20の配置パターン数と認識精度を両立させ得るものである。
【0043】
また本実施の形態において図6のフローチャートでは基準線分を成す2点以外の全てのタッチ点に対して有効認識範囲内となるまで循環して処理を続ける事になっているが、タッチ入力の最大回数を定め、該回数のタッチ入力を行っても入力デバイス3を特定出来ない場合は認識失敗として処理を終了してもよい。
【0044】
また本実施の形態においてはタッチ入力毎に各タッチ点に適合する接触子20を特定し範囲判定処理を行っていたが、予期せぬ入力座標のずれに対応するため、予め複数回のタッチ入力をまとめて行うと規定しておき、特定された接触子20の配置パターンに対して多数決を取る事で当該パターンを決定してもよい。この際、多数決によって外れたタッチ入力に関しては無効として扱う事で、精度良く入力デバイス3の特定を行う事が可能となる。
【0045】
変形例1.
【0046】
図9は実施の形態1における接触子の配置関係の変形例として、単位区画であるセル21を六角形としたものの一例である。接触子20が円形の場合、実際に検出される入力点の位置は接触子20の容量重心を中心とした一定の円形範囲内で分布する事が知られている。この円形範囲を基準にセル21の配列を決める場合、セル形状を六角形とする事で最密充填構造を取る事が出来、限られた面積でより多くの接触子20の配置パターンを取る事が可能になる。基準接触子22については実施形態1と同じく、最長の距離を成す対角のセル21上に配置される。また本例では前記円形範囲を基準にセル21の大きさを規定しており、接触子20の大きさはセル21よりも大きくなっている。この結果、接触子20は隣り合うセル21に連続して配置する事は出来ないが、この制約を利用して隣合うセル21内にタッチ点が連続して検出された時に入力デバイス3の入力によるものではないとして却下する等の処理が可能となる。
【0047】
変形例2.
【0048】
実施の形態1においては、座標正規化の際に2点の基準接触子22からなる線分を基準としていたが、これに限定されるものではなく、座標変換が可能であれば基準は何であってもよい。実施の形態1の変形例として必ず配置される基準接触子22を3点とし、基準接触子22の中心点を結んだ三角形が直角二等辺三角形となるように配置した場合の例を図10に示す。この場合、座標正規化手段において各タッチ点の中から前記直角二等辺三角形を形成し得る3点を抽出し、当該3点の座標情報を基にして座標正規化を行う。その後、実施の形態1と同様に残りの識別接触子23の位置を判別し、入力デバイス3の特定を行う。
【0049】
変形例3.
【0050】
実施の形態1においては、様々な接触子の配置パターンを持つ入力デバイス3を区別して特定するため、拡大された有効認識範囲は対応するセル21の大きさを超えないようにする必要があったが、限られた特定の種類の入力デバイス3のみを認識させる場合はこの限りではなく、隣接するセル21に及ぶまで有効認識範囲を拡大してもよい。
【0051】
図11に有効認識範囲を対応するセルを超えて拡大した場合の一例を示す。本例ではA3、C1、C3、C5及びE3に位置するセル上にのみ識別接触子23を持つ事が可能な入力デバイス3を識別するものとしている。よって有効認識範囲も当該セル21に対してのみ設定されている。図は初回入力時にデバイスを特定できずに再度入力した時の各タッチ点と更新後の有効認識範囲の位置関係を示しており、C5に位置するセル21の有効認識範囲が隣接するセル21に及んで拡大されている。入力デバイス3はB5、C4及びD5に位置するセル21上に識別接触子23を持つ事がないため、このような処理が可能となる。
【0052】
変形例4.
【0053】
実施の形態1においてはタッチ入力毎に範囲判定処理を行い、有効認識範囲を変更する場合は当該範囲を拡大して入力デバイス3の認識処理を行っていたが、本発明の核心は入力された座標情報に応じて認識条件を最適に調整する事にあり、これに限定されるものではない。例えば予め2回まとめてタッチ入力を行うと規定しておき、当該2回のタッチ入力に対して異なる有効認識範囲の条件で範囲判定処理を行い、双方ともに有効認識範囲内であった場合に入力デバイス3を特定するものとしてもよい。以下、変形例としての当該処理を説明する。
【0054】
まずタッチ点検出手段10及び座標正規化手段11によって2回分のタッチ入力を検出して座標正規化を行う。続いて接触子特定手段12により、1回目の入力について各タッチ点に適合する接触子20を特定するとともに当該接触子20までの距離情報を保持し、接触子範囲判定手段13によって有効認識範囲内であるかどうかの判定を行う。この際、有効認識範囲の初期状態はセル21の大きさと同等となる程度に大きくとっておく。即ち1回目の入力については高確率で全タッチ点が有効認識範囲内となる。そして、前記距離情報を基にして各タッチ点に適合する接触子20の有効認識範囲を縮小する形で有効認識範囲情報16を更新し、2回目の入力について範囲判定を行う。該2回目の入力については1回目の入力と同一の接触子20の配置パターンである事を必要条件とし、有効認識範囲は1回目の入力における各タッチ点が範囲外とならないように縮小するものとする。その結果2回の入力ともに有効認識範囲内であると判断されれば、正規の入力デバイス3による入力であるものとして特定する。即ち、2回の入力ともに同じセル21上に各タッチ点が存在し、2回の入力について入力点座標のばらつきが特定の範囲内である場合に入力デバイス3が特定される。
【0055】
スタンプ形状等の入力デバイス3を使用するシステムの場合、手指による模倣入力が問題になる事がある。例えば5点までの接触子20を持つ入力デバイス3の場合、片手で当該デバイスの入力を模倣出来る場合が存在する。アプリケーション側においてはタッチ入力の位置関係が所定の条件を満たしている場合に正しい入力デバイス3の入力によるものか模倣入力によるものか判断する術がなく、対策が難しい事があった。
【0056】
本例によれば、まとめて複数回の入力を要求する事で、前記模倣入力の判定を容易にする事ができる。これは固定された形状の入力デバイス3を使用する場合に比して手指を使用する場合は連続して同じ位置関係で多点のタッチ入力をする事が困難なためであり、複数回のタッチ入力における座標のばらつき度合に制限を設ける事で判定が可能になる。
【0057】
実施の形態2.
【0058】
実施の形態1においてはタッチ点の座標を照合して入力デバイス3を特定する処理はタッチパネル搭載デバイス2が行っているが、この部分を他の機器が行ってもよい。図12は、主要な処理を遠隔地にあるサーバーが行う際のタッチ認証システムの構成例を示した図である。同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0059】
図12に示す通り、タッチパネル搭載デバイス2は図1に示した構成に加え、通信ネットワークとのデータ授受を行うネットワーク通信部30を最低限備えている。実施の形態1に示した他の主要な処理は、別に設けたサーバー装置40が行う。前記サーバー装置40もタッチパネル搭載デバイス2と同様にCPU41やメモリ42、ネットワーク通信部43を備えており、図2に示した認証プログラム4の構成の内、タッチ点検出手段10以外の要素である座標正規化手段11、接触子特定手段12、入力デバイス特定手段13、有効認識範囲更新手段14、接触子座標情報15及び有効認識範囲情報16は前記サーバー装置40のメモリ42上に保存されている。
【0060】
本実施の形態において、タッチパネル搭載デバイス2は所定の点数のタッチ入力が検出された場合に、取得されたタッチ点の座標情報をネットワーク通信部30を介して外部のサーバー装置40へと送信する。サーバー装置40は前記座標情報を受信すると、実施の形態1において説明した基準線分を成す2点の抽出や座標の正規化、各タッチ点に対応する接触子20の特定、有効認識範囲の判定を行い、入力デバイス3の特定を試みる。そして認識に成功したか否かの結果情報をタッチパネル搭載デバイス2へ送信する。
【0061】
タッチパネル搭載デバイス2は受信した認識結果に応じて各種処理を行う。デバイス認識に失敗した際は再度タッチ点の座標情報を取得し、サーバー装置40に送信する。この際、再度の入力である旨のステート情報はタッチパネル搭載デバイス2のみが保持しても良いし、サーバー装置40とタッチパネル搭載デバイス2双方において保持しても構わない。前者の場合は複数回の入力である事を示すために複数回分の座標情報をまとめて送信する事になる。サーバー装置40は受信したタッチ点の座標情報が何セットあるかで何回分の入力であるかを判断し、有効認識範囲を適宜更新して認識処理を行う。
【0062】
前記複数回分の座標情報を処理する際、実施の形態1と同様に各座標情報を順次処理してもよいし、順番は考慮せずに座標情報の集合として処理してもよい。以下、座標情報の集合として処理する場合の処理例を示す。
【0063】
図13はタッチ点が存在するセル21の一部を拡大した図であり、複数回分のタッチ点(図においては3点)がまとめて表示されている。円形の点線で示された領域は有効認識範囲であり、図では3段階の範囲が設定されている。サーバー装置40は複数回分の座標情報を受信した後に各タッチ点について適合する接触子20を特定し、有効認識範囲を変更しながら複数の条件(図では3種類の条件)で範囲判定を行う。この際、判定を行ったタッチ点について、当該タッチ点の入力が正規の入力デバイス3によるものかどうかを評価するための指標として点数による重み付けを行う。具体的には、図において最も小さい有効認識範囲に当該タッチ点が存在する場合は80点、中間の有効認識範囲に存在する場合は60点、最も大きい有効認識範囲に存在する場合は40点、どの有効認識範囲にも存在しない場合は20点となるように各タッチ点について点数をつける。全タッチ点について存在するセル21の位置と点数が明らかになった後に、各セル21について平均の点数を算出する。例えば3セット分の座標情報に対し、あるセル21について3点のタッチ点が存在し、点数がそれぞれ60点、40点、80点であった場合、平均点は(60+40+80)÷3=60点となる。この際、平均点が60点以上となるセル21について当該セル21上に接触子20を持つものとして特定されるように規定しておけば、入力座標のばらつきを評価しつつ入力デバイス3の特定を行う事ができる。仮に予期せぬ原因でタッチ点が本来とは異なるセル21上に検出されたとしても、平均の点数で評価する事により高確率で誤認識となる事象を避ける事が可能である。これは手指による模倣入力を防ぐ効果も併せ持つ。
【0064】
本実施の形態では図12のような構成をとったがこれに限定されるものではなく、例えば座標の正規化までをタッチパネル搭載デバイス2で行い、接触子20および入力デバイス3の特定部分をサーバー装置40で行ってもよい。処理負荷をどう配分するかは実施する環境によって調整すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、タッチパネルに情報を入力する入力デバイスを識別する認識方法において適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 入力デバイス特定システム
2 タッチパネル搭載デバイス
3 入力デバイス
4 入力デバイス特定プログラム
5 CPU
6 メモリ
7 I/O部
8 タッチパネル
10 タッチ点検出手段
11 座標正規化手段
12 接触子特定手段
13 接触子範囲判定手段
14 有効認識範囲更新手段
15 接触子座標情報
16 有効認識範囲情報
20 接触子
21 セル
22 基準接触子
23 識別接触子
24 接触子配置禁止領域
30 ネットワーク通信部
40 サーバー装置
41 CPU
42 メモリ
43 ネットワーク通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図13
図12