特許第6899992号(P6899992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 舛田 高吉の特許一覧

<>
  • 特許6899992-ワイヤーホイールブラシ 図000002
  • 特許6899992-ワイヤーホイールブラシ 図000003
  • 特許6899992-ワイヤーホイールブラシ 図000004
  • 特許6899992-ワイヤーホイールブラシ 図000005
  • 特許6899992-ワイヤーホイールブラシ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899992
(24)【登録日】2021年6月18日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ワイヤーホイールブラシ
(51)【国際特許分類】
   B24D 13/10 20060101AFI20210628BHJP
   B24D 13/04 20060101ALI20210628BHJP
   B24B 29/00 20060101ALI20210628BHJP
   B08B 1/04 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   B24D13/10
   B24D13/04
   B24B29/00 D
   B08B1/04
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-132287(P2019-132287)
(22)【出願日】2019年6月28日
(65)【公開番号】特開2021-8023(P2021-8023A)
(43)【公開日】2021年1月28日
【審査請求日】2019年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】509339429
【氏名又は名称】舛田 高吉
(74)【代理人】
【識別番号】100071892
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆一
(72)【発明者】
【氏名】舛田 高吉
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2019/0015945(US,A1)
【文献】 特開2013−052360(JP,A)
【文献】 特許第3206443(JP,B2)
【文献】 特開2017−136678(JP,A)
【文献】 特開2004−358581(JP,A)
【文献】 特公平03−004353(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 13/10
B08B 1/04
B24B 29/00
B24D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転スピンドル装着孔を中央に有する金属製円板と、
剛性ワイヤーよりなりダイヤモンド粒を具備しないワイヤー毛束と、
硬質性金属板の外端面、左右側面、及び回転方向の前側面にダイヤモンド粒が設けられたダイヤモンドヤスリとよりなり、
ワイヤー毛束は金属製円板の外周縁より回転スピンドル装着孔中心を中心とし周方向に所定離隔角度を有し放射状に突出して配設され、
ダイヤモンドヤスリは、後側面をワイヤー毛束の回転方向の前側に沿わせて金属製円板の外周縁に配設され、
金属表面に被着する旧塗膜屑をダイヤモンドヤスリの先端で剥離後にワイヤー毛束の毛先で剥離可能に、ダイヤモンドヤスリの外端面の位置はワイヤー毛束の外端位置よりも僅かばかり内側に位置し、ダイヤモンドヤスリの横幅はワイヤー毛束の直径と略等しい長さに設定されていることを特徴とするワイヤーホイールブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電動工具やグラインダー等の回転スピンドルに装着して周回させ、主としてL型鋼の内角隅部、溝、リベット頭部間やナット頭部間の隙間等に被着する旧塗膜を完全に除去可能なワイヤーホイールブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の鋼構造物表面に被着された塗装塗膜には、経時劣化としてヒビ割れや金属表面からの剥離等が発生する。補修塗装の際には、予め旧塗膜層を金属表面から除去した後に新たに下地処理を施すことが行われている。
旧塗膜層を平坦な金属表面から剥離除去するには、予め旧塗膜を焼却処理或は軟化処理等の前処理を行った後に、前処理により生じた塗膜屑等を物理的作用で除去する後処理を行うことが一般的である。前処理には、塗膜が被着された金属を自己発熱させ、その熱で金属表面に被着された旧塗膜を焼却する高周波誘導加熱式の前処理方法や、薬剤を旧塗膜に塗着し旧塗膜を粘土状に軟化する薬剤塗布による前処理方法がある。
後処理には、カップ型回転砥石(特許文献1〜3参照)を回転させカップ型回転砥石底面に設けた研削チップで焼却塗膜屑等を剥離する方法や、カップ型ワイヤーブラシ(例えば、特許文献4〜6又は非特許文献1参照)を回転させワイヤー毛の毛先でバリや錆を除去する方法が存在する。
特許文献1〜3に開示のカップ型回転砥石の研削チップの物理的作用で旧塗膜を剥ぎ取る方法であると、研削チップが金属表面を擦る金属音が発生し、騒音基準が厳格な都市部では近隣住民から苦情が出るおそれがあり、都市部での使用は現実的には困難である。又、カップ型回転砥石は平坦面に被着する旧塗膜の剥離には適用可能であるが、凹凸面に被着する旧塗膜剥離には適しない。理由は、凸部に研削チップが衝突し凸部と砥石の双方が損傷するおそれが生じ、凹部には研削チップが入り込むことができず凹部表面に被着する旧塗膜は剥離不可能であるからである。つまり、凹凸表面に被着されている旧塗膜の剥離には使用できないという欠点があった。
特許文献4〜6又は非特許文献1に開示のカップ型ワイヤーブラシのワイヤー毛の毛先で旧塗膜を剥離する方法も、ワイヤー毛の毛先が真下を向いているので平坦な一面状の金属表面に被着された旧塗膜の剥離には適している。しかし、L型鋼等の2平面が交差する内角隅部や、隣り合うナット間の狭い離間部分、或はリベット頭部と隣り合うリベット頭部との狭い離間部分、若しくはナットやリベット等の締着具が被着された金属板表面との狭小な隙間部分等に被着する旧塗膜の剥離には、隙間にワイヤー毛の毛先を差し込むように斜めに当てなければならず、カップ型ワイヤーブラシのワイヤー毛による旧塗膜剥離は極めて困難であるという欠点があった。
L型鋼等の2平面が交差する内角隅部、ナットと隣り合うナットとの狭い離間部分、或は金属表面に近接して締着されているリベット頭部と隣り合うリベット頭部との狭い離間部分、若しくはナット頭部下端周縁やリベット頭部下端周縁と被締着面である金属表面との境の微小な隙間部分等に被着されている旧塗膜を剥離するための工具として、金属製円板の外周縁から外方にワイヤー毛を突出させ毛先を金属製円板の半径外向に向けて植毛したホイールブラシ(例えば、特許文献7、8又は非特許文献2若しくは3参照)や、ワイヤーホイールブラシの毛先の研磨力及び研削力を高めるために毛先にダイヤモンド砥粒を付着させたものが提案されている(例えば、特許文献9参照)。
ところで、橋梁等の鋼構造物の補修塗装の際には、予め旧塗膜層を金属表面から完全に除去することが必要不可欠である。特に、交通量の多い首都高速道路や、河川や島間に架け渡されている橋梁は風雨や車輌走行により揺れ、この揺れにより塗装塗膜が歪み金属表面から剥離しやすい。塗装塗膜の剥離部分から水等が浸入しベースとなる金属が腐食すると鋼構造物の強度が著しく低下し、重大事故を引き起こす要因の一つとなる。そのため、特に首都高速道路や橋梁補修塗装の際には、旧塗膜を100%剥離し僅かな旧塗膜も取り残してはならない。ベースとなる金属表面を完全に露出する必要性がある。僅かに取り残された旧塗膜上に新たに補修塗装をすることは、重大事故を起すことになりかねないため、完全な旧塗膜の剥離除去が必要である。つまり、金属表面からペンキ塗膜、錆止め下塗り、中塗り、上塗りの全てを完全に剥離除去する必要性がある。具体的には、L型鋼等の内角隅部、締着具間の狭い離間部分、或は、締着具頭部周縁と被締着面との隙間等の細部に亘り旧塗膜を剥離する必要があり、これら細かい部分の旧塗膜の剥離除去には、毛先にダイヤモンドを設けたワイヤーホイールブラシを用いることが好ましい。しかし、後処理作業にダイヤモンドを設けたワイヤーホイールブラシを用いると、ダイヤモンド粒が短時間でワイヤー毛から落下し、ワイヤー毛が折損し、ばらけ、ワイヤー毛の強度が著しく低下する。また、本来金属製円板の半径外方を向いていなければならないワイヤー毛の毛先が、ワイヤー毛が彎曲変形してワイヤーホイールブラシの回転方向と反対方向に向き、毛先が被研磨部に当接せず、研磨及び研削能力が低下するという問題点があった。ダイヤモンドは高価であり、ワイヤー毛の研削力増強のためにダイヤモンドをワイヤー毛に付着しても短時間でワイヤー毛から落下するので、使用者はダイヤモンドの有効性を殆ど享受できず、経済面でも無駄であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1416758号の意匠公報
【特許文献2】意匠登録第1425143号の意匠公報
【特許文献3】意匠登録第1425533号の意匠公報
【特許文献4】特開平5−212676号公報
【特許文献5】特開平10−264045号公報
【特許文献6】特開2000−152823号公報
【特許文献7】実開昭57−43969号公報
【特許文献8】特開昭59−101110号公報
【特許文献9】特開2014−113404号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ヒネリカップブラシ モノタロウ カップブラシのインターネット上のホームページ
【非特許文献2】ヒネリ型ホイールブラシ シングルタイプ ダブルタイプ 昭和工業株式会社のインターネット上のホームページ
【非特許文献3】オリジナル・スチールワイヤー オズボーンブラシ 株式会社ムラキのインターネット上のホームページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、毛先にダイヤモンド粒を付着させたワイヤー毛を具備するワイヤーホイールブラシを用いて、L型鋼等の内角隅部、隣り合う締着具間等の狭い離間部分、或は、締着具頭部周縁と被締着面との隙間等に被着する旧塗膜剥離作業をすると、短時間の使用でワイヤー毛からダイヤモンド粒が落下し、ワイヤー毛が折損し、ワイヤー毛の強度が低下してワイヤー毛の毛先が回転方向に対して反対方向に向いて彎曲変形し、研削機能が著しく低下する点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本願発明のうち請求項1に記載の発明は、回転スピンドル装着孔を中央に有する金属製円板と、剛性ワイヤーよりなりダイヤモンド粒を具備しないワイヤー毛束と、硬質性金属板の外端面、左右側面、及び回転方向の前側面にダイヤモンド粒が設けられたダイヤモンドヤスリとよりなり、ワイヤー毛束は金属製円板の外周縁より回転スピンドル装着孔中心を中心とし周方向に所定離隔角度を有し放射状に突出して配設され、ダイヤモンドヤスリは、後側面をワイヤー毛束の回転方向の前側に沿わせて金属製円板の外周縁に配設され、金属表面に被着する旧塗膜屑をダイヤモンドヤスリの先端で剥離後にワイヤー毛束の毛先で剥離可能に、ダイヤモンドヤスリの外端面の位置はワイヤー毛束の外端位置よりも僅かばかり内側に位置し、ダイヤモンドヤスリの横幅はワイヤー毛束の直径と略等しい長さに設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
ワイヤー毛束の回転方向前側にダイヤモンドヤスリをワイヤー毛束に沿わせて配設しているので、ダイヤモンドヤスリでワイヤー毛束の折損や撓みを防止し、長時間の使用によってもワイヤー毛束が変形することがなく、ワイヤー毛の先端が円板状カシメプレート半径外方向を向きワイヤーホイールブラシのワイヤー毛の耐久性が向上するという効果がある。
板状のダイヤモンドヤスリをワイヤー毛束に沿わせて配設することで、ワイヤー毛束にへのダイヤモンドの付着を必要とせず、又、ダイヤモンドヤスリ及びワイヤー毛の毛先の両方で旧塗膜を剥離するので、研削力が増大し作業性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ワイヤーホイールブラシの平面図である。(実施例1)
図2図1のA−A線断面図である。(実施例1)
図3】ダイヤモンドヤスリの拡大斜視図である。(実施例1)
図4】ワイヤーホイールブラシを回転電動工具の回転スピンドルに取り付けた状態を示す説明図である。(実施例1)
図5】リベット頭部と金属表面との境周辺にワイヤー毛束とダイヤモンドヤスリを当接して旧塗膜を剥離している使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ダイヤモンドヤスリをワイヤー毛束の回転方向前側に沿わせて配設することで、ワイヤー毛束の折損や変形を防止し、ワイヤー毛束の毛先とダイヤモンドヤスリの外端部の両方で平坦ではない金属表面の細部に於いて付着する旧塗膜屑を物理的に剥離除去することを実現した。
【実施例1】
【0010】
図1図5に示される実施例1について説明する。金属製円板1、2は中央に開口を有し、該開口に同心円状に沿わせて金属製円板1、2間に金属製リング3を内装している。金属製リング3には、束状のワイヤー毛の長さ方向中央部、つまり束状のワイヤー毛の長さを2分する位置が折り曲げられて引っ掛けられ、ワイヤー毛の両端毛先を外方向に向けて揃えて金属製円板1、2の外側へ引き出し、しめ縄状に撚られて一つのワイヤー毛束4を形成している。撚られた各ワイヤー毛束4は、金属製円板1、2の外周縁より周方向に所定離隔角度を有し、平面から視て放射状に配設されている。ワイヤー毛束4を構成するワイヤー毛は、鋼線以外の真鍮線やステンレス線等であってもよい。
【0011】
金属製円板1、2はカシメ加工されている。金属製円板1、2の中央開口部は連通し、回転電動工具5の回転スピンドルが装着されるための回転スピンドル装着孔6を形成している。ワイヤー毛束4の回転方向前側には、ダイヤモンドヤスリ7の後側面がワイヤー毛束4に沿うと共に、ダイヤモンドヤスリ7の外端縁がワイヤー毛束4の外端より僅かばか内側に位置するように配設されている。ダイヤモンドヤスリ7は、厚みが2.0〜3.5mm程度で、横幅がワイヤー毛束4の直径と略同一で、内外方向長さが長い硬質性金属板、例えば鋼板を用い、鋼板の表面にダイヤモンド粒8を付着してなる。ダイヤモンド粒8の粒度は問わないが、直径が0.28mm程度の粒度#60であることが好適である。ダイヤモンドヤスリ7は、全てのワイヤー毛束4の回転方向前側にワイヤー毛束に沿わせて設ける必要性はない。金属製円板1、2の中心を中心とし、周方向に等分される位置にてワイヤー毛束4の回転方向前側に沿わせて配設すると、ワイヤーホイールブラシがバランスよく回転するので好適である。
【0012】
次に作用について説明する。ダイヤモンドヤスリ7が、ダイヤモンドヤスリ7が沿うワイヤー毛束4の回転方向前側になるように、回転電動工具5の回転スピンドルに回転スピンドル装着孔6を嵌着して回転電動工具5にワイヤーホイールブラシを取り付ける。9は回転電動工具5のカバー体、10はカバー体9の内側に開口連通した粉塵吸引パイプである。図5は金属表面11にリベットが取り付けられた部分に被着する旧塗膜を剥離している状態を示す説明図である。図5において、リベット頭部12の周面と金属表面11との境の剥離予定面に対してワイヤー毛束4の軸心と略90度の角度を保持状態で、ワイヤー毛束4の毛先を当接しワイヤーホイールブラシを高速周回させて使用する。先ずは、ダイヤモンドヤスリ7の先端で旧塗膜を剥離し、次にワイヤー毛束4の毛先で旧塗膜を剥離する。ダイヤモンドヤスリ7の剥離の際に受ける衝撃をワイヤー毛束4が吸収し、ダイヤモンドヤスリ7及びワイヤー毛束4が損傷することがない。
【符号の説明】
【0013】
1、2 金属製円板
4 ワイヤー毛束
5 回転電動工具
6 回転スピンドル装着孔
7 ダイヤモンドヤスリ
8 ダイヤモンド粒
図1
図2
図3
図4
図5