特許第6899998号(P6899998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6899998タイヤ成形用の押圧ローラーと押圧装置およびタイヤ成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6899998
(24)【登録日】2021年6月18日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】タイヤ成形用の押圧ローラーと押圧装置およびタイヤ成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20210628BHJP
【FI】
   B29D30/30
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-209954(P2017-209954)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-81300(P2019-81300A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(72)【発明者】
【氏名】明▲瀬▼ 智
(72)【発明者】
【氏名】豊福 喜広
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−320627(JP,A)
【文献】 特開2014−205265(JP,A)
【文献】 特開平2−175234(JP,A)
【文献】 特開2014−94474(JP,A)
【文献】 特開2003−145642(JP,A)
【文献】 特開2011−37113(JP,A)
【文献】 米国特許第5059268(US,A)
【文献】 米国特許第4729521(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーマーに巻き付けられたゴム部材の両端部が重ね合わされて形成されたジョイント部を前記フォーマーの幅方向に横行することにより、前記ジョイント部を押圧して圧着するタイヤ成形用の押圧ローラーであって、
前記ゴム部材と接触する部分が、JIS−A硬度で40〜80度のスポンジによって形成されていることを特徴とするタイヤ成形用の押圧ローラー。
【請求項2】
前記スポンジの硬度が、JIS−A硬度で65〜80度であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形用の押圧ローラー。
【請求項3】
前記スポンジが、ウレタン製、クロロプレンゴム製、EPDM製、NBR製、シリコン製、フッ素ゴム製のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ成形用の押圧ローラー。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ成形用の押圧ローラーが設けられて、
前記押圧ローラーが、フォーマー上を軸方向に横行して、前記ジョイント部を押圧して圧着するように構成されていることを特徴とするタイヤ成形用の押圧装置。
【請求項5】
さらに、前記押圧ローラーが前記フォーマーの幅方向に横行した範囲を判別可能とするマーキングを行うマーキング機構が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ成形用の押圧装置。
【請求項6】
前記マーキング機構が、前記押圧ローラーのローラー支持体に取付けられて、前記ゴム部材上に前記押圧ローラーの通過跡を付ける跡付け冶具であることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ成形用の押圧装置。
【請求項7】
前記跡付け冶具が棒状に形成されており、上端部が前記ローラー支持体に回転可能に取付けられていることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ成形用の押圧装置。
【請求項8】
棒状の前記跡付け冶具の下端部の前記ゴム部材と接する箇所が、R形状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のタイヤ成形用の押圧装置。
【請求項9】
前記跡付け冶具に、前記ゴム部材上での跡付けの程度を調整する重りが設けられていることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載のタイヤ成形用の押圧装置。
【請求項10】
インナーライナーのジョイント圧着に使用されることを特徴とする請求項4ないし請求項9のいずれか1項に記載のタイヤ成形用の押圧装置。
【請求項11】
請求項4ないし請求項10のいずれか1項に記載のタイヤ成形用の押圧装置が組み込まれていることを特徴とするタイヤ成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のフォーマーに巻き付けられたタイヤ用のゴム部材のジョイント部を押圧するタイヤ成形用の押圧ローラーと、前記押圧ローラーが設けられたタイヤ成形用の押圧装置、および、前記押圧装置が組み込まれたタイヤ成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ローカバー(生タイヤ)の成形に際しては、インナーライナーなどのゴム部材を円筒状のフォーマーに巻き付け、巻き付けられたゴム部材の始端部と終端部とを重ね合わせてジョイント部を形成し、形成されたジョイント部を押圧装置により押圧することが行われている(特許文献1)。
【0003】
図3は、従来の押圧装置を説明する図である。図3に示すように、従来の押圧装置10は、表面にアヤメローレット加工が施された鉄などの金属製の押圧ローラー100が設けられている。
【0004】
このような構成の押圧装置10を用いて、押圧ローラー100を、フォーマーF上に巻き付けられたゴム部材Wのジョイント部Jに沿って、所定の押圧力で押圧しながら走行させることによって、ジョイント部Jを圧着することができる。このとき、押圧ローラー100のアヤメローレット加工の山部がゴム部材Wに食い込むことにより、ジョイント部Jを十分に圧着すると共に、押圧ローラー100の通過を目視で確認することができる。
【0005】
しかしながら、タイヤには様々なサイズがあり、それに合わせてフォーマーの幅を変更する必要がある。そこで、図4(a)に示すような茶筒形状のフォーマー、即ち、径が異なる複数の筒体F1、F2が組み合わされたフォーマーを用いて、タイヤサイズに合わせて、適宜、筒体F2を繰り出してフォーマーの幅を変更している。この場合、図4(b)に示すように、筒体F1とF2の境界には、段差部F3ができることが避けられず、ジョイント不良の発生を招く恐れがある。なお、図4は、茶筒形状のフォーマーを示す図であって、(a)は正面図、(b)は段差部の断面図である。
【0006】
図5は、従来のタイヤ成形用の押圧ローラーのフォーマーの段差部での圧着状態を示す図である。図5に示すように、段差部F3においては、押圧ローラー100とフォーマー面とが接しなくなるため、この箇所での押圧力が不足して、圧着が弱くなる。その結果、この箇所に、ジョイント開きやエア入りが散発して、ローカバースクラップの発生を招いてしまう。また、加硫時、ジョイント部Jに包み込まれたエアの破裂、ジョイント開き部のゴム流れ不良が発生することにより、加硫後のタイヤのスクラップの発生を招いてしまう。
【0007】
また、押圧ローラー100に施されたアヤメローレット加工により、押圧ローラー100の横行時にゴムが寄せられるが、段差部F3を押圧ローラー100が乗り越える際、押圧されたゴム部材に皺が入り密着するというトラブルが発生する恐れがある。また、段差部F3でゴムが寄せられることによりゴム部材のセット位置のズレが発生し、このズレの発生に伴ってタイヤビード部での仕上りばらつきや、外観不良等を招く恐れがある。そこで、押圧力の設定を低くしてゴム寄せの問題の発生を抑制しようとすると、今度は、押圧力の不足によりジョイント開き等の不具合の発生を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−91194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した種々の問題点に鑑み、フォーマーに段差部がある場合でも、ジョイント開きやエア入り、加硫時におけるエアの破裂やゴム流れ不良、ゴム部材のセット位置のズレなどの不具合の発生を防止して、十分な押圧が可能なタイヤ成形用の押圧技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
請求項1に記載の発明は、
フォーマーに巻き付けられたゴム部材の両端部が重ね合わされて形成されたジョイント部を前記フォーマーの幅方向に横行することにより、前記ジョイント部を押圧して圧着するタイヤ成形用の押圧ローラーであって、
前記ゴム部材と接触する部分が、JIS−A硬度で40〜80度のスポンジによって形成されていることを特徴とするタイヤ成形用の押圧ローラーである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
前記スポンジの硬度が、JIS−A硬度で65〜80度であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形用の押圧ローラーである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、
前記スポンジが、ウレタン製、クロロプレンゴム製、EPDM製、NBR製、シリコン製、フッ素ゴム製のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ成形用の押圧ローラーである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ成形用の押圧ローラーが設けられて、
前記押圧ローラーが、フォーマー上を軸方向に横行して、前記ジョイント部を押圧して圧着するように構成されていることを特徴とするタイヤ成形用の押圧装置である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
さらに、前記押圧ローラーが前記フォーマーの幅方向に横行した範囲を判別可能とするマーキングを行うマーキング機構が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ成形用の押圧装置である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、
前記マーキング機構が、前記押圧ローラーのローラー支持体に取付けられて、前記ゴム部材上に前記押圧ローラーの通過跡を付ける跡付け冶具であることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ成形用の押圧装置である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、
前記跡付け冶具が棒状に形成されており、上端部が前記ローラー支持体に回転可能に取付けられていることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ成形用の押圧装置である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、
棒状の前記跡付け冶具の下端部の前記ゴム部材と接する箇所が、R形状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のタイヤ成形用の押圧装置である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、
前記跡付け冶具に、前記ゴム部材上での跡付けの程度を調整する重りが設けられていることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載のタイヤ成形用の押圧装置である。
【0020】
請求項10に記載の発明は、
インナーライナーのジョイント圧着に使用されることを特徴とする請求項4ないし請求項9のいずれか1項に記載のタイヤ成形用の押圧装置である。
【0021】
請求項11に記載の発明は、
請求項4ないし請求項10のいずれか1項に記載のタイヤ成形用の押圧装置が組み込まれていることを特徴とするタイヤ成形装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フォーマーに段差部がある場合でも、ジョイント開きやエア入り、加硫時におけるエアの破裂やゴム流れ不良、ゴム部材のセット位置のズレなどの不具合の発生を防止して、十分な押圧が可能なタイヤ成形用の押圧技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係るタイヤ成形用の押圧装置の正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るタイヤ成形用の押圧ローラーの説明図である。
図3】従来のタイヤ成形用の押圧ローラーを示す正面図である。
図4】茶筒形状のフォーマーを示す図であって、(a)は正面図、(b)は段差部の断面図である。
図5】従来のタイヤ成形用の押圧ローラーのフォーマーの段差部における圧着状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態に基づき、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
【0025】
1.タイヤ成形用の押圧装置
図1は、本実施の形態に係るタイヤ成形用の押圧装置の正面図である。そして、図2は、本実施の形態に係るタイヤ成形用の押圧ローラーを説明する図である。なお、図1図2において、1は押圧装置、1Aは押圧ローラー、1Bはローラー支持体であり、Fはフォーマー、Wはゴム部材、JはフォーマーF上に巻き付けられたゴム部材Wのジョイント部である。
【0026】
(1)押圧ローラー
図1に示すように、本実施の形態に係る押圧装置1は、押圧ローラー1Aを、フォーマーF上に巻き付けられたゴム部材Wのジョイント部Jに沿って、所定の押圧力で押圧しながらフォーマーFの幅方向に横行させることによって、ジョイント部Jを圧着する点においては、従来の押圧装置と同様である。
【0027】
しかし、本実施の形態に係る押圧装置1は、円柱形状に成形された押圧ローラー1Aのゴム部材Wと接触する部分が、JIS−A硬度で40〜80度のスポンジによって形成されている点において、従来の押圧装置と異なっている。
【0028】
このように、ゴム部材と接触する部分がJIS−A硬度で40〜80度のスポンジによって形成されている押圧ローラー1Aを用いることにより、従来、十分な圧着を得ることが難しかった段差部の押圧に際して、図2に示すように、押圧時、押圧ローラー1Aのスポンジが圧縮変形することによって段差部に十分にフィットさせることができ、ジョイント部Jを十分に押圧して圧着することができる。
【0029】
この結果、ジョイント開きやエア入りの発生を十分に防止することができ、さらに、加硫時、ジョイント部Jに包まれたエアの破裂、ジョイント開き部のゴム流れ不良が発生することも十分に防止できるため、ローカバースクラップや加硫後のタイヤのスクラップの発生を低減させることができる。
【0030】
このとき、スポンジの硬度が高すぎると、従来の押圧ローラーと同様に段差部における押圧力が不足する。一方、スポンジの硬度が低すぎると、押圧時における変形代が大きいため、押圧時、金属製のローラー支持体1Bがゴム部材Wと接触してしまい、ゴム部材Wに傷が入って不良となる。好ましい硬度は、JIS−A硬度で40〜80度であり、65〜80度であるとより好ましい。
【0031】
スポンジとしては、ウレタン製スポンジが耐摩耗性の観点から好ましいが、これに限定されず、クロロプレンゴム製、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)製、NBR(ニトリルゴム)製、シリコン製、フッ素ゴム製のスポンジなどを使用することができる。このようなスポンジを、表面のゴム部材と接触する部分に、2層ないし3層巻き付けることにより、本実施の形態に係る押圧ローラー1Aを形成することができる。
【0032】
なお、スポンジに替えて、同じ硬度にウレタン成形された押圧ローラーについても検討したが、段差部での変形がたわみによる変形であり、段差部に十分にフィットさせることができず、十分な押圧ができなかった。
【0033】
(2)跡付け冶具(マーキング機構)
上記したように、本実施の形態においては、押圧ローラーをスポンジにより形成することにより、段差部であっても、十分に押圧して、圧着することができる。
【0034】
しかし、本実施の形態に係る押圧ローラーにおいては、上記したように、表面のゴム部材と接触する部分にスポンジを2層ないし3層巻き付けて形成させているため、従来のアヤメローレットが設けられた鉄製の押圧ローラーを用いたときと異なり、押圧ローラーの通過を目視で確認するということができなくなる。
【0035】
そこで、本実施の形態においては、押圧ローラーの通過を目視で確認するためのマーキング機構として、例えば、以下に説明する跡付け冶具を設ける。
【0036】
図1において、1Cが跡付け冶具であり、棒状に形成されて、上端部が水平軸1Eに軸支されて押圧装置1のローラー支持体1Bに取付けられて、水平軸1Eを中心として回転可能に設けられている。
【0037】
そして、フォーマーF上のゴム部材Wと接する下端部には、R形状に形成されたアール部1Dが設けられている。これにより、押圧ローラー1Aの後について横行する跡付け冶具1Cがゴム部材Wの上を引きずってもゴム部材をえぐるような深い傷が入らないように、ゴム部材Wの上に、押圧ローラー1Aの通過跡を付けることができるため、押圧ローラーの通過を目視で確認することができる。なお、アール部1DにおけるR形状としては、径0.5〜5mmのR加工が好ましく、1〜3mmであるとより好ましい。
【0038】
このとき、跡付け冶具1Cが、一定の角度を超えて下がらないように、ボルトなどをストッパー1Fとして設けて、跡付け冶具1Cの下方への回転移動を適切に制御することが好ましい。なお、跡付け冶具1Cの上方への回転移動は制限を設ける必要がないため、フリーの状態とする。
【0039】
さらに、跡付け冶具1Cの下端近くには、跡付け冶具1Cのゴム部材W上での跡付けの程度を調整するために、重り1Gを設けることが好ましい。これにより、ゴム部材Wの厚みや硬さに対応した適切な深さの跡付けを行うことができる。
【0040】
なお、本実施の形態に係る押圧装置は、インナーライナーのジョイント部の圧着に使用した場合、特に顕著な効果を発揮する。
【0041】
2.タイヤ成形装置
上記した押圧装置が組み込まれたタイヤ成形装置は、押圧ローラー1AをフォーマーFに巻き付けられたゴム部材Wのジョイント部Jに対して所定の押圧力で押圧しながらジョイント部Jに沿って軸方向に横行させることにより、押圧ローラー1Aを段差部にフィットさせて、ジョイント部Jを十分に押圧して圧着することができる。
【0042】
これにより、ジョイント開きやエア入り、加硫時におけるエアの破裂やゴム流れ不良、ゴム部材のセット位置のズレなどの不具合が発生したローカバーの成形が防止され、スクラップの発生を低減させることができる。
【実施例】
【0043】
1.評価用タイヤの製造
以下においては、種々の押圧ローラーが設けられた押圧装置を組み込んだタイヤ成形装置を用いたこと以外は、同一の条件で、ローカバーの成形、加硫を行い、385/65R22セクションサイズのタイヤを製造した。なお、385/65R22セクションサイズのタイヤを選択した理由は、大きなセクションサイズ、厚みがあるインナーライナーを使用する必要があり、ジョイント作業において不利な状況が考えられ、効果の検証に十分と考えたことによる。
【0044】
具体的には、実験例1として表面のゴム部材と接触する部分が鉄の押圧ローラー(従来品:鉄製の押圧ローラー)、実験例2〜5として表面のゴム部材と接触する部分がJIS−A硬度20度、40度、60度、80度の各硬度に成形されたウレタンの押圧ローラー(ウレタン製の押圧ローラー)、実験例6〜11として表面のゴム部材と接触する部分がJIS−A硬度11度、30度、40度、65度、80度、90度の各硬度のウレタンスポンジの押圧ローラー(スポンジ製の押圧ローラー)を用いて、段差部を有するフォーマー上を幅方向の一端から他端へと横行させてゴム部材のジョイントを行ってローカバーを成形し、その後成形されたローカバーを加硫することによりタイヤを製造した。
【0045】
2.評価
評価は、各押圧ローラーを用いてジョイントされたローカバーについて以下の評価を行った。
・段差乗り越え(段差部における乗り越え)ができたか否か
・段差部におけるインナージョイント割れの有無(段差部圧着)
・段差部以外におけるインナージョイント割れの有無(段差以外圧着)
・ジョイントして1週間放置後におけるインナージョイント割れの有無(放置後)
・ジョイント時におけるゴム部材のセットずれ、皺入りの発生の有無
【0046】
そして、加硫後のタイヤにおいて、以下の点について評価した。
・ディフェクトの有無
・サイドウォールにおけるジョイント割れの有無(SWジョイント)
・インナーゲージ
【0047】
評価は、「段差乗り越え」については、できた場合を「可」、できなかった場合を「不可」とした。
【0048】
その他の項目については、基本的に目視にて行い、状態に応じてそれぞれ、「優」、「良」、「可」、「不可」の4段階で評価した。評価結果を表1と表2に示す。なお、「段差乗り越え」が「不可」と判定された実験例についてはその他の項目についての評価は行わなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1に示す結果より、鉄製の押圧ローラーを用いた実験例1では、「段差乗り越え」は可能であるものの、「段差以外圧着」以外の項目では「不可」の評価が多く、鉄製の押圧ローラーの使用が好ましくないことが分かった。なお、実験例1において、加硫後のタイヤでのインナーライナージョイント部の不良発生率を求めたところ、38.5%(n=13)であった。
【0052】
そして、ウレタン製の押圧ローラーを用いた実験例2〜5でも、同様に、「段差乗り越え」は可能であるものの、それ以外の項目では「不可」の評価が多く、ウレタン製の押圧ローラーの使用が好ましくないことが分かった。
【0053】
これに対して、表2に示す結果より、スポンジ製の押圧ローラーを用いた実験例6〜11では、硬度を適切に選択することにより、「不可」の評価がなくなり、改善できることが分かった。
【0054】
具体的には、硬度が40度未満の実験例6、7では、段差乗り越えに際してスポンジの圧縮変形が大きく、ローラー支持体がゴム部材と接触し、「段差乗り越え」自体ができなかった。一方、硬度が80度を超える実験例11では、実験例1と同じように、「段差乗り越え」は可能であるものの、「段差以外圧着」以外の項目では「不可」の評価が多かった。
【0055】
これに対して、硬度が40〜80度の実験例8〜10では、「段差乗り越え」ができ「段差部圧着」も改善されており、段差部におけるジョイントを行う押圧ローラーとして好ましいことが分かった。
【0056】
そして、この内でも、硬度が65〜80度の実験例9、10では、「段差乗り越え」、「段差部圧着」以外の項目においても改善されており、押圧ローラーとしてより好ましいことが分かった。なお、実験例10において、加硫後のタイヤでのインナーライナージョイント部の不良発生率を求めたところ、0.00%(n=17)であった。そして、この結果に基づいて、サイズ、タイヤ成形機を特に選定しない拡大テストを行ったところ、約2500本ものタイヤ製造においても不良の発生がないことが確認された。
【0057】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0058】
1、10 押圧装置
1A、100 押圧ローラー
1B ローラー支持体
1C 跡付け冶具
1D アール部
1E 水平軸
1F ストッパー
1G 重り
F フォーマー
F1、F2 筒体
F3 段差部
J ジョイント部
W ゴム部材
図1
図2
図3
図4
図5