(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記両親媒性物質が、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤およびアミン塩型カチオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤である、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。なお、本明細書において、数値範囲を表す「A〜B」等の記載は、「A以上、B以下」と同義であり、AおよびBをその数値範囲内に含む。
また、本明細書において、「〜(メタ)アクリレート」とは、「〜アクリレート」および「〜メタクリレート」の双方を包括する概念である。同様の記載は、同様の意味を有する。
【0018】
≪プローブ結合担体の製造方法およびプローブ結合担体≫
本発明に係るプローブ結合担体の製造方法(以下「本方法」ともいう。)は、プローブと官能基を有する担体とを両親媒性物質の存在下で混合し、担体表面にプローブを結合する工程(以下「結合工程」ともいう。)を含む。
【0019】
また、本発明に係るプローブ結合担体は、プローブと両親媒性物質との複合体が化学結合された表面を有する。
本発明に係るプローブ結合担体は、このように、前記複合体が表面に化学結合しているため、該担体を用いた診断や検出等を正確に行うことができ、かつシグナル/ノイズ(S/N)比が高い結果を得ることができる。
該本発明に係るプローブ結合担体の製造方法は特に制限されず、従来公知の方法であってもよいが、本方法によれば、プローブと両親媒性物質との複合体が化学結合された表面を有するプローブ結合担体が容易に得られると考えられるため、本方法であることが好ましい。
【0020】
<結合工程>
本方法は、プローブと官能基を有する担体とを両親媒性物質の存在下で混合することを特徴とする。前記担体とプローブとを結合させる際の系中に両親媒性物質が存在していることで、プローブの凝集が起こりにくく、難溶性プローブを用いた場合でも該プローブの凝集が起こりにくく、また、得られるプローブ結合担体も凝集が起こりにくく、分散性に優れる。
従来の方法では、プローブ、特に難溶性プローブは、担体と結合する際に凝集した状態で結合しやすかった。このようにプローブが凝集した状態で担体に結合していると、プローブ中の反応部位等のプローブの活性部位が凝集体中に埋没し、プローブの有する特性が十分に発揮できず(プローブの活性が低下する)、更に、担体が粒子などの場合には、担体表面に凝集したプローブ存在していることにより、担体粒子自体が凝集する傾向にあった。凝集したプローブ結合担体を用いて診断や検出等を行うと、高ノイズや低シグナルといった問題が発生し、正確な測定を妨げる一因となっていた。
一方、本方法では、プローブの有する特性が十分に発揮される(プローブの活性が維持された)プローブ結合担体を容易に得ることができるため、該担体を用いた診断や検出等の際において、シグナル/ノイズ(S/N)比の高い結果を得ることができる。
【0021】
また、前記担体とプローブとを混合する際の系中に両親媒性物質が存在することで、前記担体へのプローブの結合量が増加し、特に、難溶性プローブを用いる場合には、担体とプローブとの結合量が低下しやすいが、両親媒性物質によるプローブ(例:タンパク質)の親水化により、このようなプローブを用いた場合でも、前記担体へのプローブ結合量が多いプローブ結合担体を容易に得ることができる。
【0022】
前記結合工程は、プローブと官能基を有する担体とを両親媒性物質の存在下で混合すれば特に制限されないが、まず、前記担体と両親媒性物質とを接触させ、担体表面を両親媒性物質に接触させてから、プローブを添加する工程であることが好ましい。斯かる工程によれば、プローブが局所的に高濃度の両親媒性物質に晒されることを抑制できるため、プローブがより沈殿や凝集し難く、より均一にプローブを担体に結合させることができるため、得られるプローブ結合担体を用いた診断や検出等の際により低ノイズ、高シグナルを発現できる。
【0023】
また、前記結合工程は、両親媒性物質を含む液体中で前記担体とプローブとを混合する工程であることが好ましい。この場合の該液体中の両親媒性物質の濃度は、プローブの難溶性の度合に応じて調整すればよく、特に限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは0.0001〜5質量%、特に好ましくは0.001〜2質量%である。
濃度が前記下限未満の場合、担体に十分な量のプローブを結合できない、または、プローブの活性が低下した状態でプローブが担体と結合する恐れがあり、このために、得られるプローブ結合担体を用いた診断や検出等の際のシグナルの低下を招く場合がある。濃度が前記上限を超える場合、前記液体の粘度の上昇によるプローブ結合量の低下や、プローブ結合後の両親媒性物質の除去が難しくなる場合がある。特に、プローブが25℃の水に難溶性の抗原(以下「難溶性抗原」ともいう。)である場合、両親媒性物質の濃度が前記下限未満の場合には、抗原の凝集が十分に解消されないまま担体に結合する可能性が高く、分析対象物以外の物質の非特異的結合によりS/N比の低下を引き起こしたり、2次プローブとの反応点が凝集塊中に埋没してしまうことに起因するシグナルの低下が起こる場合がある。
【0024】
プローブの結合を液体中で行う場合、該液体としては特に制限されず、用いる担体やプローブに応じて選択すればよいが、生化学用途等に好適に使用することができ、環境に対して悪影響を及ぼす程度が低くなり、取扱作業者に対する安全性も高くなる等の点から、通常、水系媒体が用いられる。より具体的には、各種緩衝液、水、水と任意の割合で混和するアルコール等の有機溶剤と水との混合溶媒等が用いられる。これらの中でも緩衝液が好ましい。
【0025】
一般的には緩衝液のpHは、4〜10が好ましい。
官能基がトシル基の場合には、緩衝液のpHとしては6〜10で緩衝能を有する緩衝液が好ましく、pH7〜9で緩衝能を有する緩衝液がより好ましい。
官能基がカルボキシ基の場合には、緩衝液pHとしては4〜8で緩衝能を有する緩衝液が好ましく、pH5〜7で緩衝能を有する緩衝液がより好ましい。
【0026】
このような緩衝液としては、前記担体が有する官能基と反応する、または、該官能基の反応を妨害する成分を含まないことが好ましく、このような緩衝液の例としてはMES緩衝液やHEPES緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸ナトリウム緩衝液等が挙げられる。
【0027】
前記水系媒体としては、水を含有すれば特に制限されず、1種または2種以上の水以外の非水媒体を含んでいてもよい。
また、前記液体には、前記担体、プローブおよび水系媒体の他に、従来公知の添加剤が含まれていてもよく、このような添加剤としては、例えば、pH調整剤、塩類、高分子ポリマーなどが挙げられる。
【0028】
前記結合工程で用いるプローブの使用量は、得られるプローブ結合担体を用いた診断や検出等を高感度化できる等の点から、プローブを結合する前の担体表面のトシル基1個あたりが占める面積S1Aに対する、該結合工程で得られた担体表面のトシル基1個あたりが占める面積S1Bの割合(S1B/S1A×100%)が下記範囲となる量で使用することが好ましい。
【0029】
また、担体として磁性粒子を用いる態様では、得られるプローブ結合担体を用いた診断や検出等を高感度化できる等の点から、前記結合工程で用いるプローブの使用量は、磁性粒子100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また上限は、200質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
前記結合工程における混合の方法としては特に制限されず、液体中で前記担体とプローブとを混合する場合には、静置するだけでもよく、撹拌等してもよい。
【0031】
前記混合の時間は、用いる担体やプローブの種類、量等により変化するが、プローブが十分に結合したプローブ結合担体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは30分以上、より好ましくは60分〜24時間である。
【0032】
前記結合工程は、室温で行ってもよく、加熱等の下で行ってもよい。
該加熱の際の温度としては、用いる担体やプローブの種類等により適宜選択すればよいが、プローブ活性を保ちつつ、効率よくプローブ結合担体を作製できる等の点から、好ましくは4〜50℃、より好ましくは10〜45℃、特に好ましくは15〜40℃である。
【0033】
前記結合工程は、通常大気中で行われるが、用いる担体やプローブ等に応じて、不活性ガス雰囲気などの特定のガス雰囲気下や、グローボックス等の特定の容器や装置内で行ってもよい。
【0034】
前記結合工程で得られた担体表面の官能基1個あたりが占める面積S1Bは、好ましくは10Å
2/官能基以上、より好ましくは25Å
2/官能基以上、特に好ましくは40Å
2/官能基以上である。
面積S1Bが前記範囲にあると、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる。
【0035】
前記プローブ結合前の担体表面の官能基1個あたりが占める面積S1Aに対する、結合工程で得られた担体表面の官能基1個あたりが占める面積S1Bの割合(S1B/S1A×100%)は、好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、特に好ましくは130%以上である。
面積の割合が斯かる範囲にあると、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる。
【0036】
本発明者が鋭意検討した結果、担体が官能基としてトシル基を有し、かつ、有機ポリマーを含む粒子である場合、有機溶媒中でトシル基量を測定すると、該担体の膨潤によって担体表面だけでなく、内部に存在するトシル基量も併せて測定され、担体の表面物性を評価する方法として適さないことが分かった。このため、詳細は後述するが、担体表面のトシル基量を水系媒体中で測定することで、担体表面のみのトシル基を定量することに成功した。これによりプローブの結合に関与するトシル基量や、非特異吸着の一因となり得るトシル基量を評価することが可能となった。
本発明におけるトシル基1個あたりが占める面積は、詳細は後述するが、水系媒体中で測定した値である。
【0037】
[官能基を有する担体]
前記担体はその表面に官能基を有すれば特に制限されない。前記担体は2種以上を用いてもよいが、通常は1種である。
【0038】
前記官能基はプローブを化学的に結合させることができる基であることが好ましく、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシ基、トシル基、メルカプト基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびN−ヒドロキシスクシミジル基等が挙げられ、中でもトシル基およびカルボキシ基が好ましく、トシル基がより好ましい。なお、本発明においてトシル基とは、p−トルエンスルホニル基のことをいう。
担体に含まれる官能基は2種以上であってもよい。
【0039】
該トシル基は、通常、プローブと混合または接触させるだけで、プローブを担体の表面に化学的に結合させることができるため、トシル基を有する担体が好適に用いられる。また、担体がトシル基を有することで、縮合剤等を用いなくても、該担体とプローブとを結合させることができるため、該担体を用いることで、簡便に診断や検出等を行うためのプローブ結合担体を得ることができる。
【0040】
なお、表面にトシル基を有する担体は疎水的な担体であり、該担体と、プローブ、特に25℃の水に難溶のプローブ等の疎水的なプローブとを結合させる際には、疎水性親和作用により、一般的に担体とプローブとは結合しやすいと考えられ、この結合の際に界面活性剤等の添加剤は必要ないと考えられる。しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、このように担体とプローブとが結合しやすい場合であっても、該結合の際に両親媒性物質を用いた場合に初めて、前記効果を奏することが分かった。
【0041】
〈担体〉
前記担体の形状は特に限定されず、粒子状、プレート状、フィルター状、シート状等のいずれでも構わないが、粒子状が好ましい。粒子状の担体としては、有機ポリマーから構成される粒子、無機材料から構成される粒子、または、その両方を含む粒子が挙げられる。これらの中でも、軽量であり、所望の粒子を容易に形成できる等の点から、有機ポリマーを含む有機ポリマー粒子が好ましい。
【0042】
前記有機ポリマー粒子は、架橋重合体であっても非架橋重合体であってもよいが、架橋重合体を少なくとも表面に有する粒子が好ましい。この架橋重合体による架橋構造によって、液体中で本方法を行う場合の、液体への粒子の溶解、または、該液体による粒子表面の膨潤を抑制することができる。有機ポリマー粒子において、架橋重合体を少なくともその表面に有さない場合であって、液体中で本方法を行う場合、該液体に粒子表面が溶解し、結合したプローブが脱離して感度低下を招く場合があり、または、該液体により粒子表面が膨潤して生体関連物質の非特異吸着を増加させる場合がある。
【0043】
前記担体は、官能基を少なくとも粒子表面に有するものであれば特に制限されない。なお、該「少なくとも粒子表面に有する」とは、粒子表面を構成する成分を指し、有機ポリマー粒子が必ずしもコアシェル構造を有することを要件とするわけではない。従って、前記担体は、全体が架橋重合体である有機ポリマー粒子であってもよい。
【0044】
前記担体としては、磁性体を有する磁性粒子が好ましい。前記担体として磁性粒子を用いることで、該担体に結合した成分とそれ以外の成分とを除去等することが容易となるため、診断、検出、分離等の操作を大幅に簡略化できる。
【0045】
前記磁性粒子としては、具体的には、以下の(i)〜(iv)のいずれかの粒子が挙げられる。これらの中でも、粒径や磁性体含量を容易に調整できる等の点から、コアシェル構造を有する下記(ii)または(iii)の粒子が好ましく、(iii)の粒子がより好ましい。
(i)有機ポリマーを含む連続相やシリカ等の無機材料中に磁性体粒子が分散している粒子
(ii)磁性体粒子または磁性体粒子の2次凝集体をコアとし、有機ポリマーやシリカ等の無機材料をシェルとする粒子
(iii)有機ポリマーやシリカ等の無機材料からなる核粒子と、該核粒子の表面に設けられた磁性体粒子を含む磁性体層(2次凝集体層)とを有する母粒子をコアとし、有機ポリマーを含む層をシェルとする粒子
(iv)粒子の最外層に有機ポリマーを含む層がシェルとして設けられていてもよい、有機ポリマーや無機材料からなる多孔質粒子の孔内に磁性体粒子が分散している粒子
【0046】
前記有機ポリマーとしては特に限定されず、アガロース、デキストラン、セルロース等の天然高分子でもよく、合成高分子でもよい。前記有機ポリマーとしては、単官能性モノマーおよび架橋性モノマーから選ばれる1種または2種以上に由来するポリマーが挙げられる。
【0047】
単官能性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の単官能性芳香族ビニル系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等の単官能性(メタ)アクリレート系モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有モノマーが挙げられる。
【0048】
架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン等の多官能性芳香族ビニル系モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)メタクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート系モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンが挙げられる。
【0049】
前記有機ポリマーとしては、担体表面に容易にカルボキシ基やトシル基を導入できる等の点から、グリシジル基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーから選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。また、担体表面への官能基の導入を容易に行うことができる等の点から、グリシジル基含有モノマーおよび水酸基含有モノマーの使用量は、担体表面を形成するモノマー全量に対し、5質量%以上であることが好ましい。
【0050】
以下、(iii)の粒子について具体的に説明する。
【0051】
前記核粒子は、基本的に非磁性物質であり、有機物質および無機物質のいずれも使用可能であり、プローブ結合担体の使用目的等によって適宜選択することができるが、複合化の際の加工性、軽量性等の点から有機ポリマーからなる粒子が好ましい。
前記核粒子を構成する有機ポリマーとしては、ビニル系ポリマーが好ましく、より好ましくは、架橋ポリスチレン、架橋アクリレート、架橋ポリメチルメタクリレートである。これらポリマーは、カルボキシル基などの官能基が導入されていてもよい。
このような核粒子は、従来公知の方法、例えば、特公昭57−24369号公報、特開昭61−215602号公報、特開昭61−215603号公報、特開昭61−215604号公報に記載の方法によって製造することができる。
【0052】
前記核粒子の体積平均粒子径(以下、単に「粒径」ともいう。)は、実施例に記載の方法により測定できる。粒径は、磁気分離性に優れ、重力沈降が起こりにくく、反応場を均一にできる等の点から、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜5μm、特に好ましくは0.3〜2μmである。
【0053】
前記磁性体しては、例えば、四三酸化鉄(Fe
3O
4)、三二酸化鉄(γ−Fe
2O
3)、各種フェライト、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属や、コバルト、ニッケル、マンガンなどの合金が挙げられる。
これらの中でも、粒径が50nm以下、好ましくは5〜30nmの酸化鉄系の超常磁性微粒子が好ましく、AFe
2O
4(Aは、Mn、Co、Ni、Mg、Cu、ZnまたはLi
0.5Fe
0.5等)で表されるフェライト、マグネタイト(Fe
3O
4)またはγ−Fe
2O
3を含む超常磁性微粒子がより好ましく、飽和磁化が強く、かつ残留磁化が少ない等の点から、γ−Fe
2O
3およびFe
3O
4からなる超常磁性微粒子が特に好ましい。なお、磁性体の粒子径は、電子顕微鏡写真中の無作意に選択した100個の粒子の粒子径の平均値である。
【0054】
前記磁性体粒子の表面は、親水性、疎水性のどちらでも構わないが、粒子の作製が簡便であることから、疎水化処理された粒子であることが好ましい。磁性体粒子表面の疎水化処理方法は特に限定されないが、例えば、磁性体粒子と親和性の高い部分と疎水性の部分とを分子内に有する疎水性物質を、磁性体粒子に接触させて結合させる方法が挙げられる。該方法としては、より具体的には、市販の油性磁性流体から粒子を得、該粒子を乾燥させる方法等が挙げられる。また、磁性体粒子表面を親水化処理する場合には、磁性体粒子表面にグリシジル基などの加水分解され得る基を有する層を導入しておき、該基を加水分解することによって表面を親水化処理することが好ましい。
【0055】
前記磁性体粒子の使用量は、母粒子や磁性体粒子の粒径等により適宜変化させればよく、特に制限されないが、複数の磁性体粒子が核粒子表面の全体を被覆するような量で使用することが好ましく、核粒子と磁性体粒子の質量比が10:1〜1:3となるような量で使用することがより好ましい。
【0056】
核粒子の表面に前記磁性体層が形成された母粒子の製造方法としては特に制限されないが、例えば、非磁性体である有機ポリマー粒子などの核粒子と磁性体粒子とをドライブレンドして、物理的な力を外部から加えることにより双方の粒子を複合化させる方法が挙げられる。
物理的な力をかける方法としては、例えば、乳鉢、自動乳鉢、ボールミル、ブレード加圧式粉体圧縮法、メカノフュージョン法のようなメカノケミカル効果を利用する方法や、ジェットミル、ハイブリダイザーなどの高速気流中での衝撃を利用する方法が挙げられる。効率よくかつ強固に複合化を実施するには、物理吸着力が強いことが望ましい。その方法としては、例えば、撹拌翼付き容器中で撹拌翼の周速度が、好ましくは15m/秒以上、より好ましくは30m/秒以上、さらに好ましくは40〜150m/秒で撹拌することが挙げられる。撹拌翼の周速度が15m/秒より低いと、核粒子の表面に磁性体粒子を十分に吸着させることができない場合がある。なお、撹拌翼の周速度の上限については、特に制限はないが、使用する装置、エネルギー効率等の点から決定すればよい。
【0057】
前記シェルは、例えば前述の方法で調製される母粒子の存在下で、主原料(前記単官能性モノマーおよび架橋性モノマーから選ばれる1種または2種以上)と、必要に応じて副原料(重合開始剤、乳化剤、分散剤、界面活性剤、電解質、架橋剤、分子量調節剤など)とが添加された液体中で重合を行なうことにより形成することができる。
【0058】
前記有機ポリマー粒子や磁性粒子は、例えば、その表面にトシル基を有することが好ましい。表面にトシル基を有する粒子の製造方法は、トシル基を有するモノマーを用いて粒子を作製する方法や、シェル等を形成する際の反応等によってトシル基を生じさせる方法等であってもよいが、所望の担体を容易に得ることができる等の点から、水酸基を表面に有する粒子を作製した後、該水酸基に対し、アミン等の存在下で塩化p−トルエンスルホニルなどのトシル基含有化合物を反応させるなどによりトシル基を導入する方法が好ましい。
【0059】
前記有機ポリマー粒子や磁性粒子は、例えば、その表面にカルボキシ基を有することも好ましい。表面にカルボキシ基を有する粒子の製造方法は、カルボキシ基を有するモノマーを用いて粒子を作製する方法や、シェル等を形成する際の反応等によってカルボキシ基を生じさせる方法等であってもよいが、所望の担体を容易に得ることができる等の点から、水酸基を表面に有する粒子を作製した後、該水酸基に対し、トリエチルアミン等の塩基存在下で無水コハク酸、無水マレイン酸、無水アジピン酸などの酸無水物を反応させるなどによりカルボキシ基を導入する方法が好ましい。
【0060】
前記水酸基を表面に有する粒子の製造方法は特に制限されず、従来公知の方法で行えばよいが、例えば、前記シェルを形成する際の有機ポリマーとして、前記水酸基含有モノマーを用いる方法や、前記シェルを形成する際の有機ポリマーとして、グリシジル基含有モノマーを用い、該グリシジル基を酸などにより開環する方法が好ましい。
前記水酸基としては、担体表面に容易に、効率的にカルボキシ基、トシル基を導入できる等の点から、2,3−ジヒドロキシプロピル基(−CH
2CH(OH)CH
2(OH))が好ましい。
【0061】
官能基導入前の担体表面は、診断薬などで使用することを考慮する場合には、標的物質以外の物質が担体表面に吸着するのを抑制できる等の点から、親水性が高いことが好ましく、水(25℃)との接触角が、好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下、特に好ましくは10°〜25°である。
接触角が前記範囲にあると、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる。接触角が前記範囲の上限を超えると、プローブ結合担体への生体関連物質の非特異吸着が増加する場合がある。
【0062】
なお、本発明において、担体が粒子状である場合には、接触角は、担体からなる乾燥塗膜を用いて測定する。
該乾燥塗膜は、50mgの担体粒子を含む0.2mlの水分散液を、アプリケーターを用いてスライドガラス等の平滑な基材に塗布し、湿度40%、気温25℃で24時間乾燥することにより得られる塗膜である。
該乾燥塗膜と水との接触角は、約1μLの水滴(25℃)を乾燥塗膜に滴下し、直ちに該塗膜の水平方向からの画像をカメラで撮影し、水滴の輪郭を円周の一部と仮定して塗膜の水平線との角度から求めることができる。
【0063】
接触角が前記範囲にある官能基を導入する前の担体は、粒子(表面)を形成する際に用いるモノマーの量および種類等により調整することができる。
【0064】
・粒径
前記担体が粒子である場合、好ましくは磁性粒子である場合、担体の粒径は、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.2〜15μm、特に好ましくは0.3〜10μmである。
粒径が前記範囲にあると、単位体積当たりのプローブの結合量が多い担体を容易に得ることができ、該担体を用いることで、診断や検出等の際における感度が良好になる。粒径が前記範囲の下限を下回る場合、遠心分離などを用いた分離に長時間を要しやすく、水などの洗浄溶媒と粒子との分離が不十分になる傾向にあるため、目的外の分子(例えば、タンパク質や核酸等の生体関連物質)の除去が不十分になり、充分な精製ができない場合がある。一方、粒径が前記範囲の上限を上回ると、比表面積が小さくなり、プローブの結合量が少なくなる結果、感度が低くなる場合がある。
粒径は、詳細は後述するが、細孔電気抵抗法(電気的検知帯法)により求められる。
【0065】
・担体表面の官能基1個あたりが占める面積
前記担体表面の官能基1個あたりが占める面積S1A(プローブ結合前の担体表面のトシル基1個あたりが占める面積)は、好ましくは5Å
2/官能基以上、より好ましくは10Å
2/官能基以上、特に好ましくは20Å
2/官能基以上であり、好ましくは80Å
2/官能基以下、より好ましくは60Å
2/官能基以下、特に好ましくは40Å
2/官能基以下である。
また、前記官能基がトシル基である場合、面積S1Aは、好ましくは5Å
2/官能基以上、より好ましくは10Å
2/官能基以上、特に好ましくは20Å
2/官能基以上であり、上限は、前記上限と同程度であり、前記官能基がカルボキシ基である場合、面積S1Aは、好ましくは10Å
2/官能基以上、より好ましくは15Å
2/官能基以上、特に好ましくは20Å
2/官能基以上であり、上限は、前記上限と同程度である。
【0066】
面積S1Aが前記範囲にあると、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる。
面積S1Aが前記範囲の下限を下回る場合、担体表面の官能基密度が高いためにプローブが担体表面に多点で結合しやすい傾向にあり、プローブが変性することによるシグナルの低下を招く場合があり、また、プローブ結合担体に過剰な官能基が残存しやすくなり、担体表面がより疎水的になる傾向にあるため、該担体を用いた診断や検出等の際のノイズの増大を招く場合がある。一方、面積S1Aが前記範囲の上限を上回る場合、担体に十分な量のプローブを結合できない傾向にあり、このために、該担体を用いた診断や検出等の際のシグナルの低下を招く場合がある。
【0067】
・接触角
官能基を有する担体表面の水(25℃)との接触角は50°以上であることが好ましい。該担体が粒子状である場合には、該担体からなる乾燥塗膜と水(25℃)との接触角が、好ましくは70°以上、より好ましくは90°以上、特に好ましくは105°〜120°である。
接触角が前記範囲にあると、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる。接触角が前記範囲の下限未満であると、得られるプローブ結合担体を用いた診断や検出等の際の感度が低下する場合がある。
また、トシル基を導入する前の担体の接触角が前記範囲にあり、かつ、トシル基を導入した後の担体の接触角がこの範囲にある担体を用いることで、プローブ結合担体への生体関連物質の非特異吸着を抑制することができ、プローブ結合担体を用いた診断や検出等を高感度化することができる。
【0068】
[プローブ]
前記プローブとしては特に制限されず、診断や検出等に用いる物質であればよいが、特異結合性物質であることが好ましく、具体的には、タンパク質または核酸が好ましく、抗原、抗体がより好ましい。
本方法に使用するプローブは、1種類であることが多いが2種以上であってもよく、特に制限されない。
【0069】
本方法によれば、前記プローブが25℃の水に難溶であり、従来の方法で担体に結合させた場合には失活しやすいプローブを用いても活性を保った状態で担体に結合させることができる。なお、ここで「難溶性」とは、疎水性だが水に溶ける性質をいい、より具体的には一般的に血漿分画法として用いられているコーン分画法の各工程において分画沈殿として生成するタンパク質や、33質量%の硫酸アンモニウム水溶液(25℃)において塩析による沈殿を生じるものをいう。プローブが難溶性の場合、従来の方法では、粒子に結合させた際にプローブの活性が低下したり、粒子が凝集して再分散性が悪化したが、本方法における、両親媒性物質、好ましくは界面活性剤、特に好ましくはカチオン性界面活性剤の存在下でプローブを担体に結合させることにより、プローブの担体への結合効率や活性の維持率が高まり、担体の凝集、再分散性も改善する。
【0070】
前記抗原または抗体としては、被検体中に一般に含まれている成分に反応するものであることが好ましく、例えば、アンチプラスミン検査用抗アンチプラスミン抗体、Dダイマー検査用抗Dダイマー抗体、FDP検査用抗FDP抗体、tPA検査用抗tPA抗体、TAT検査用抗TAT抗体、FPA検査用抗FPA抗体等の凝固線溶関連検査用抗原または抗体;BFP検査用抗BFP抗体、CEA検査用抗CEA抗体、AFP検査用抗AFP抗体、フェリチン検査用抗フェリチン抗体、CA19−9検査用抗CA19−9抗体等の腫瘍関連検査用抗原または抗体;アポリポタンパク検査用抗アポリポタンパク抗体、β2−ミクログロブリン検査用抗β2−ミクログロブリン抗体、α1−ミクログロブリン検査用抗α1−ミクログロブリン抗体、免疫グロブリン検査用抗免疫グロブリン抗体、CRP検査用抗CRP抗体等の血清蛋白関連検査用抗原または抗体;HCG検査用抗HCG抗体等の内分泌機能検査用抗原または抗体;HBs抗原検査用抗HBs抗体、HBs抗体検査用HBs抗原、HCV抗体検査用HCV抗原、HIV−1抗体用HIV−1抗原、HIV−2抗体検査用HIV−2抗原、HTLV−1検査用HTLV−1抗原、マイコプラズマ症検査用マイコプラズマ抗原、トキソプラズマ検査用トキソプラズマ抗原、ASO検査用ストレプトリジンO抗原等の感染症関連検査用抗原または抗体;抗DNA抗体検査用DNA抗原、RF検査用熱変成ヒトIgG等の自己免疫関連検査用抗原または抗体;ジゴキシン検査用抗ジゴキシン抗体、リドカイン検査用抗リドカイン抗体等の薬物分析用抗原または抗体が挙げられる。
前記抗体としては、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらを用いてもかまわない。
【0071】
[両親媒性物質]
前記両親媒性物質としては、1分子中に親水性基と疎水性基とを有する化合物が挙げられ、より具体的には、界面活性剤;一般的にNDSBと呼ばれる非界面活性剤型スルホベタインなどの両イオン性有機低分子;ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール;エタノール、イソプロパノールなどの脂肪族一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの脂肪族多価アルコール;炭酸エチレンなどのアルキレンカーボネート等の有機溶剤等が挙げられる。これらの中でも、容易にプローブの凝集を抑制でき、水系媒体中で結合工程を行うことができ、担体とプローブとの結合量が多く、より分散性に優れるプローブ結合担体を得ることができる等の点から、界面活性剤が好ましい。
本方法に使用する両親媒性物質は、1種類であることが多いが2種以上であってもよく、特に制限されない。
【0072】
前記界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤および両性界面活性剤が好ましく、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる等の点から、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤がより好ましく、カチオン性界面活性剤が特に好ましい。
前記担体がトシル基を有する場合には、前記と同様の理由から、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤がより好ましく、カチオン性界面活性剤が特に好ましく、前記担体がカルボキシ基を有する場合には、前記と同様の理由から、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤がより好ましく、カチオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤が特に好ましい。
【0073】
〈カチオン性界面活性剤〉
前記カチオン性界面活性剤としては特に制限されないが、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる等の点から、第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤、アミン塩型カチオン性界面活性剤等が好ましい。該アミン塩型カチオン性界面活性剤は、第1級〜第3級アミン塩型のいずれでもよいが、前記と同様の理由から第3級アミン塩型であることが好ましい。
また、前記カチオン性界面活性剤としては、前記と同様の理由から、炭素数5以上の有機基を有する界面活性剤が好ましく、炭素数5以上の炭化水素基を有する界面活性剤がより好ましく、炭素数8以上の炭化水素基を有する界面活性剤がより好ましく、炭素数5以上の直鎖アルキル基を有する界面活性剤がさらに好ましく、炭素数8以上の直鎖アルキル基を有する界面活性剤が特に好ましく、芳香環(芳香族ヘテロ環を除く)を有さない界面活性剤が好ましい。
【0074】
前記カチオン性界面活性剤としては、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性、プローブ結合担体の分散性維持性に優れる等の点から、炭素数5以上の有機基を有する第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤および炭素数5以上の有機基を有する第3級アミン塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、下記式(1)で表される界面活性剤(以下「カチオン性界面活性剤(1)」ともいう。)および下記式(2)で表される界面活性剤がより好ましい。
【0076】
〔式(1)中、
R
1は、炭素数5以上の有機基を示し、
R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立して有機基を示し、
nは1以上の整数を示し、
Z
n-はn価のアニオンを示す。〕
【0077】
式(1)中、R
1は、炭素数5以上の有機基を示す。ここで、R
1で示される有機基が、2種以上の炭素数の有機基である場合、その炭素数は平均炭素数を意味とするものとする。平均炭素数は、カチオン性界面活性剤(1)に該当する全分子のR
1の炭素数の総和を求めて、炭素数を1分子あたりに換算することで算出できる(全分子のR
1の炭素数の総和/分子の数)。
【0078】
前記R
1で示される有機基としては、炭素数5〜30の炭化水素基、炭素数5〜30のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基の水素原子の一部が炭化水素基で置換された総炭素数5〜30の基、炭素数が5以上であり、−(RO)
n−Hで表されるポリオキシアルキレン基(R:アルキル基、n:10以下の整数)、該ポリオキシアルキレン基の水素原子の一部が炭化水素基で置換された総炭素数5〜30の基が好ましい。
【0079】
R
1における炭素数5〜30の炭化水素基の炭素数としては、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性に優れる等の点から、好ましくは6〜24、より好ましくは8〜22、さらに好ましくは9〜20、特に好ましくは10〜18である。
【0080】
前記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。
前記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、1−メチルデシル基、ドデシル基、1−メチルウンデシル基、1−エチルデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
前記アルケニル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。例えば、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基が挙げられる。
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0081】
R
1におけるヒドロキシアルキル基の炭素数は5〜30であるが、好ましくは6〜24、より好ましくは8〜22、さらに好ましくは9〜20、より好ましくは10〜18、特に好ましくは10〜16である。ヒドロキシアルキル基に含まれるアルキル基としては、前記アルキル基と同様の基が挙げられる。
【0082】
前記ポリオキシアルキレン基としては、−(CH
2CH
2O)
pH(pは3〜10の整数を示すが、好ましくは5〜8の整数である)で表されるポリオキシエチレン基が好ましい。
【0083】
R
1におけるヒドロキシアルキル基の水素原子の一部が炭化水素基で置換された基、および、前記ポリオキシアルキレン基の水素原子の一部が炭化水素基で置換された基の総炭素数は、5〜30であるが、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性に優れる等の点から、好ましくは8〜26、より好ましくは9〜25、さらに好ましくは12〜24、より好ましくは14〜22、特に好ましくは16〜20である。また、ポリオキシアルキレン基の水素原子の一部が炭化水素基で置換された基におけるポリオキシアルキレン基としては、−(CH
2CH
2O)
qH(qは1〜10の整数を示すが、好ましくは1〜7の整数、より好ましくは1〜4の整数、特に好ましくは1または2である)で表されるポリオキシエチレン基が好ましい。
【0084】
また、ヒドロキシアルキル基またはポリオキシアルキレン基を置換する炭化水素基の置換位置としては、ヒドロキシアルキル基またはポリオキシアルキレン基に含まれる水酸基中の水素原子が好ましい。
該置換基における炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、、炭素数7〜20のアルキルアリール基が好ましい。
【0085】
R
2、R
3およびR
4における有機基としては、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基の水素原子の一部が炭化水素基で置換された総炭素数2以上の基、−(RO)
n−Hで表されるポリオキシアルキレン基(R:アルキル基、n:10以下の整数)、該ポリオキシアルキレン基の水素原子の一部が炭化水素基で置換された総炭素数2以上の基が好ましい。
【0086】
R
2における炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基が挙げられる。
【0087】
R
2におけるアルキル基の炭素数としては、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性に優れる等の点から、1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。また、前記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。該アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0088】
R
2におけるアルケニル基の炭素数としては、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性に優れる等の点から、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2または3が特に好ましい。また、前記アルケニル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。該アルケニル基としては、具体的には、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
【0089】
R
2におけるアラルキル基の炭素数としては、7〜20が好ましく、7〜10がより好ましく、7または8が特に好ましい。該アラルキル基としては、具体的には、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0090】
R
2におけるヒドロキシアルキル基の炭素数は、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性に優れる等の点から、1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。ヒドロキシアルキル基に含まれるアルキル基としては、前記R
2におけるアルキル基と同様の基等が挙げられる。
また、ヒドロキシアルキル基の水素原子の一部が炭化水素基で置換された基に含まれるヒドロキシアルキル基としては、該ヒドロキシアルキル基と同様の基等が挙げられる。
【0091】
R
2におけるポリオキシアルキレン基としては、−(CH
2CH
2O)
rH(rは1〜10の整数を示すが、好ましくは1〜7の整数、より好ましくは1〜4の整数、特に好ましくは1または2である)で表されるポリオキシエチレン基が好ましい。
【0092】
R
2において、ヒドロキシアルキル基またはポリオキシアルキレン基を置換する炭化水素基の置換位置としては、ヒドロキシアルキル基またはポリオキシアルキレン基に含まれる水酸基中の水素原子が好ましい。
該置換基における炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基が好ましい。
【0093】
前記R
2の中でも、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性に優れる等の点から、炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のヒドロキシアルキル基、前記ポリオキシアルキレン基が好ましく、炭素数1〜30の炭化水素基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
【0094】
R
3およびR
4における有機基としては、炭素数1〜30の炭化水素基が好ましい。R
3およびR
4における炭化水素基の炭素数としては、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性に優れる等の点から、1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3がより好ましく、1または2が特に好ましい。
R
3およびR
4における炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。該アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。該アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0095】
式(1)中のnは、対アニオンとなる原子または原子団の価数を意味し、1以上の整数を示す。nは好ましくは1である。
【0096】
式(1)中のZ(原子又は原子団)としては、具体的には、ハロゲン原子、CH
3SO
4、CH
3CH
2SO
4、OHの他、アミノ酸に由来する原子団、脂肪酸に由来する原子団、炭素数1〜30の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有するリン酸エステルに由来する原子団、ホスホン酸エステルに由来する原子団、スルホン酸エステルに由来する原子団、硫酸エステルに由来する原子団、重合度3以上のスチレンスルホン酸を有するもしくは置換基として炭化水素基を有していてもよい多環式芳香族化合物のスルホン化物のホルマリン縮合物を含有するアニオン性オリゴマーまたはポリマーに由来する原子団が挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン原子が好ましく、塩素原子、臭素原子がより好ましく、前記担体がトシル基を有する場合には塩素原子が特に好ましく、前記担体がカルボキシ基を有する場合には臭素原子が特に好ましい。
【0097】
【化2】
〔式(2)中、
R
1、nおよびZは、前記R
1、nおよびZと同義であり、
式(2)における窒素原子は、R
1と該窒素原子を含む環を有することを意味する。〕
【0098】
前記窒素原子を含む環としては、窒素原子を含み、該窒素原子に結合する2つの結合手のうちの一方が二重結合であり、もう一方が単結合である環であれば、特に制限されないが、例えば、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等が挙げられ、これらの中でもピリジン環が好ましい。
【0099】
前記カチオン性界面活性剤の具体例としては、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
これら中でも、難溶性プローブの可溶化、プローブの活性維持性、プローブ結合担体の分散維持性に優れる等の点から、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウムが好ましい。この中でも、プローブ結合担体の分散性とプローブの活性維持性にバランスよく優れる等の点から、前記担体がトシル基を有する場合には臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムが特に好ましく、前記担体がカルボキシ基を有する場合には、塩化セチルピリジニウムが特に好ましい。
【0100】
前記カチオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0101】
〈アニオン性界面活性剤〉
前記アニオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる等の点から、炭素数5以上の有機基を有する界面活性剤が好ましく、炭素数5以上の炭化水素基を有する界面活性剤がより好ましく、炭素数8以上の炭化水素基を有する界面活性剤がより好ましく、炭素数5以上の直鎖アルキル基を有する界面活性剤がさらに好ましく、炭素数8以上の直鎖アルキル基を有する界面活性剤が特に好ましく、硫酸塩である界面活性剤が特に好ましい。
アニオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0102】
前記アニオン性界面活性剤としては、具体的には、スルホサクシネート型アニオン性界面活性剤、アルキルエーテルサルフェート型アニオン性界面活性剤、アルカンスルホネート型アニオン性界面活性剤およびその他のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0103】
(1)スルホサクシネート型アニオン性界面活性剤
スルホサクシネート型アニオン性界面活性剤としては、モノもしくはジアルキル(ラウリル、オクチル、2−エチルヘキシル、ミリスチル、ステアリルなど)スルホコハク酸エステルジもしくはモノナトリウム、および、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)モノもしくはジアルキル(ラウリルオクチル、2−エチルヘキシル、ミリスチル、ステアリルなど)スルホコハク酸エステルジもしくはモノナトリウムなどの炭素数8〜24の炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。
【0104】
(2)アルキルエーテルサルフェート型アニオン性界面活性剤
アルキルエーテルサルフェート型アニオン性界面活性剤としては、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、および、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜50)テトラデシルエーテルサルフェートナトリウム塩などの炭素数8〜24のアルキル基を有するエーテルサルフェート等が挙げられる。
【0105】
(3)アルカンスルホネート型アニオン性界面活性剤
アルカンスルホネート型アニオン性界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどの炭素数8〜24のアルキル基を有するスルホン酸塩等が挙げられる。
【0106】
(4)その他のアニオン性界面活性剤
その他のアニオン性界面活性剤としては、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムなどの炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸またはその塩;(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム;アルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどの炭素数8〜24の炭化水素基を有するリン酸エステル塩;ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミンなどの脂肪酸塩;ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウムなどのアシル化アミノ酸塩等が挙げられる。
【0107】
これらのうち好ましいのは、アルカンスルホネート型アニオン性界面活性剤、アルキルエーテルサルフェート型アニオン性界面活性剤のうちの1種以上である。
【0108】
〈ノニオン性界面活性剤〉
ノニオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、診断や検出等の際に高いS/N比を発現可能なプローブ結合担体を容易に得ることができる等の点から、糖由来の構造を有する界面活性剤が好ましく、炭素数5以上の炭化水素基を有する界面活性剤がより好ましく、炭素数5以上の直鎖アルキル基を有する界面活性剤がさらに好ましく、ポリオールであることが好ましく、糖由来の構造を有する界面活性剤が好ましく、チオグリコシド構造を有する界面活性剤がより好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0109】
ノニオン性界面活性剤としては、アルキルグルコシド、n−アルカノイル−N−メチルグルカンアミド、シユクロースモノアルキレート、アルキルフェノールアルコキシレート、Tween−20、Tween−80等が挙げられる。これらの界面活性剤中のアルキル基部分の炭素数は5〜13程度が好ましい。
このようなノニオン性界面活性剤の具体例としては、n−ドデシル−β−D−マルトシド、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコシド、n−オクチル−β−D−チオグルコシドなどのアルキルグルコシド;n−オクタノイル−N−メチルグルカンアミド、n−メナノイル−N−メチルグルカンアミド、n−デカノイル−N−メチルグルカンアミドなどのn−アルカノイル−N−メチルグルカンアミド;β−D−フルクトピラノシル−α−D−グルコピラノシドモノデカノエート、β−D−フルクトピラノシル−α−D−グルコピラノシドモノドデカノエートなどのシュクロースモノアルキレートが挙られる。
【0110】
〈両性界面活性剤〉
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、具体的には、アミドアルキルベタイン系、スルホベタイン系、カルボキシベタイン系、イミダゾリニウムベタイン系などのベタイン型;アルキルアミノ酢酸系、アルキルアミノプロピオン酸系、アルキル・ジメチルアミノ酢酸系、アルキルアミノジプロピオン酸系などのアミノ酸型やアミノ脂肪酸型;コール酸アミドアルキル・ジメチルアンモニオプロパンスルホン酸型;アルキルアミドタウリン塩型;アルキルアミドプロピルアミンオキシド型;レシチン型などの界面活性剤が挙げられる。
両性界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0111】
このような両性界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン(LSB)、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(LPB)、コカミドプロピルベタイン(CPB:ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン)、カプリン酸プロピルベタイン(CAPB)、n−ドデシル−N,N−ジメチルグリシン(DDGly)、ラウリルアミノプロピオン酸(LAPA)、n−ドデシル−N,N−(ジメチルアンモニオ)ブチル酸(DDMAB)、n−ドデシル−N,N−(ジメチルアンモニオ)ウンデカン酸(DDMAU)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸(CHAPS)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO)が挙げられる。
なお、以上の両性界面活性剤は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、塩酸塩、酢酸塩などの塩であってもよい。
【0112】
<ブロッキング工程>
本方法は、さらにブロッキング工程を有していてもよい。ブロッキング工程は、前記結合工程後の担体表面に疎水性の高い官能基、例えば、トシル基が残存する場合に、該基の担体表面の残存量を減少させる工程(例:トシル基の遊離)であることが好ましい。該ブロッキング工程は、通常、前記結合工程の後に行う。
例えば前記結合工程の後に残存するトシル基は、疎水性が高いために、生体関連物質の非特異吸着の要因となる傾向にあり、トシル基が残存したプローブ結合担体を診断や検出等の際に用いると、ノイズの増大を招く傾向にあるため、前記結合工程において、トシル基を有する担体を用いる場合には、結合工程で得られた担体表面のトシル基を遊離すること、特に化学的にトシル基を遊離することが好ましい。
【0113】
前記ブロッキング工程は、具体的には、酸またはアルカリによってトシル基などの官能基を加水分解により遊離する方法、ブロッキング剤をトシル基などの官能基と反応させ、該官能基を遊離する方法などが挙げられる。前記ブロッキング工程は、これらの方法のうちどちらか一方を行ってもよく、2つ以上の方法を行ってもよい。
前記ブロッキング工程としては、得られるプローブ結合担体の非特異吸着性をより抑制できる等の点から、ブロッキング剤をトシル基などの官能基と反応させる方法が好ましい。
【0114】
前記ブロッキング剤をトシル基などの官能基と反応させる際には、担体とブロッキング剤とを混合すれば特に制限されないが、担体とブロッキング剤とが容易に接触して、所望のプローブ結合担体を容易に得ることができる等の点から、液体中で担体とブロッキング剤とを混合する方法であることが好ましい。この方法における液体は、前記結合工程で挙げた液体と同様の液体が挙げられ、結合工程を液体中で行う場合には、結合工程で得られた液体をそのままブロッキング工程に用いてもよい。
【0115】
前記混合の方法としては特に制限されず、液体中で前記担体とブロッキング剤とを混合する場合には、静置するだけでもよく、撹拌等してもよい。
【0116】
前記混合の際の混合時間は、用いる担体やブロッキング剤の種類、量等により変化するが、ブロッキングが十分に行われ、ブロッキング工程で得られた担体表面の官能基1個あたりが占める面積S2が下記範囲にあるプローブ結合担体を容易に得ることができる等の点から、好ましくは2時間以上、より好ましくは6時間以上、特に好ましくは8時間以上である。また、効率よくプローブ結合担体を作製できる等の点から、好ましくは48時間以下、より好ましくは36時間以下、特に好ましくは24時間以下である。
【0117】
前記ブロッキング工程は、室温で行ってもよく、加熱等の下で行ってもよい。
該加熱の際の温度としては、用いる担体やブロッキング剤等の種類などにより適宜選択すればよいが、効率よく所望のプローブ結合担体を作製できる等の点から、好ましくは4〜50℃、より好ましくは20〜45℃、特に好ましくは35〜40℃である。
【0118】
前記ブロッキング工程は、通常大気中で行われるが、用いる担体やブロッキング剤等に応じて、不活性ガス雰囲気などの特定のガス雰囲気下や、グローボックス等の特定の容器や装置内で行ってもよい。
【0119】
前記ブロッキング剤としては、トシル基などの官能基に対し反応性の官能基を有する物質であれば特に制限されないが、被検体中のタンパク質や脂質、核酸等の生体分子や細胞、測定試薬中のタンパク質や発光基質、吸光物質等の担体表面への非特異吸着を抑制できる親水性官能基を有する物質であることが好ましい。
【0120】
前記トシル基に対し反応性の官能基としては、アミノ基やメルカプト基等の求核性基が挙げられる。
前記親水性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、糖を含む基、双性イオンを含む基、ポリエチレングリコールを含む基等が挙げられる。
【0121】
前記ブロッキング剤は、プローブ結合担体への非特異吸着をより抑制できる等の点から、水溶性であることが好ましい。ここで水溶性とは、水と任意の割合で混和するか、25℃の水1gに対し、10mg以上溶解する性質のことをいう。
【0122】
前記ブロッキング剤としては、低分子化合物、ペプチドやタンパク質等の生体高分子、合成高分子のいずれであってもよいが、立体障害による非特異吸着抑制効果が高い点で生体高分子または合成高分子が好ましく、測定系に生体由来物質を持ち込こまない等の点で合成高分子がより好ましい。
【0123】
ブロッキング剤として機能する低分子化合物としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、エタノールアミン等が挙げられ、非特異吸着を特に抑制できる等の点からトリスヒドロキシメチルアミノメタンが好ましい。
ブロッキング剤として機能する生体高分子としては、BSA(ウシ血清アルブミン)、カゼイン、ゼラチンが挙げられ、非特異吸着を特に抑制できる等の点からBSAが好ましい。
ブロッキング剤として機能する合成ポリマーとしては、ポリオキシエチレン等の親水ポリマーを側鎖に有するビニルモノマーの共重合体、ポリオキシエチレン等の親水性ポリマーと他ポリマーのブロック共重合体、末端に官能基を有するポリオキシエチレン等の親水性ポリマーなどが公知である。特に、特開2008−170417号公報に示されるポリオキシエチレンの片末端にポリアミンを有する構造の合成ポリマーは、担体表面への非特異吸着抑制のみならず、抗体等プローブの配向を整列させ反応性を向上させる効果も見られることから、本発明の目的に好適に使用できる。このようなブロッキング剤としてJSRライフサイエンス(株)製ブロックマスターCE510やCE210が挙げられる。
【0124】
前記ブロッキング剤を用いる場合の該ブロッキング剤の使用量は、得られるプローブ結合担体を用いた診断や検出等を高感度化することができる等の点から、前記結合工程で得られた担体表面のトシル基1個あたりが占める面積S1Bに対する、前記ブロッキング工程で得られた担体表面のトシル基1個あたりが占める面積S2の割合(S2/S1B×100%)が下記の範囲となる量で使用することが好ましい。
【0125】
また、担体として磁性粒子を用いる態様では、前記結合工程で用いるブロッキング剤の使用量は、得られるプローブ結合担体を用いた診断や検出等を高感度化できる等の点から、磁性粒子100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。また上限は、200質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましい。
【0126】
・ブロッキング工程で得られた担体表面の官能基1個あたりが占める面積
前記ブロッキング工程で得られた担体表面の官能基1個あたりが占める面積S2は、好ましくは15Å
2/官能基以上である。
このような面積を有するプローブ結合担体は、プローブ活性が高く、該担体を用いる診断や検出等の際において、非特異吸着をより低減できる。
また、面積S2は、非特異吸着を少なくし、プローブ活性を高める等の点で、好ましくは30Å
2/官能基以上、より好ましくは40Å
2/官能基以上、特に好ましくは45Å
2/官能基以上である。
なお、トシル基などの官能基は、プローブ結合担体表面に存在していなくてもよい。
【0127】
また、前記結合工程で得られた担体表面のトシル基1個あたりが占める面積S1Bに対する、前記工程2で得られた担体表面のトシル基1個あたりが占める面積S2の割合(S2/S1B×100%)は、好ましくは110%以上、より好ましくは115〜160%、さらに好ましくは120〜150%、特に好ましくは125〜140%である。
面積の割合が斯かる範囲にあるプローブ結合担体は、タンパク質や核酸等の生体関連物質などの非特異吸着を十分に抑制できるだけトシル基が低減されており、該担体を用いることで、診断や検出の際に、特にCLIA、CLEIA等のイムノアッセイにおいて優れた低ノイズ、高いS/N比を達成できる。
面積の割合が前記範囲の下限未満の場合、生体関連物質の非特異吸着が増大する傾向にあり、面積の割合が前記範囲の上限を超える場合、十分な量のプローブが結合したプローブ結合担体が得られない傾向にあり、該担体を用いた診断や検出等において高いシグナルが得られない場合がある。
【0128】
<用途>
前記本方法で得られるプローブ結合担体および本発明に係るプローブ結合担体は、被検体の診断や検出に、特にCLIA、CLEIA等のイムノアッセイに好適に用いることができる。具体的には、生化学分野での化合物担体用粒子および診断薬用の化学結合担体用粒子等のアフィニティー担体として用いることができ、好ましくは免疫診断や核酸検出に用いられ、特に、抗原または抗体等のプローブを結合させた免疫検査用のプローブ結合粒子として用いることができる。
【0129】
前記被検体としては特に制限されないが、前記プローブと特異的に結合する物質であることが好ましく、具体的には、免疫検査用試薬および被検査試料等に含まれる生体関連物質および化学物質などが挙げられる。
前記生体関連物質とは、生体に関するすべての物質をいうが、例えば、生体に含まれる物質、生体に含まれる物質から誘導された物質、生体内で利用可能な物質が挙げられる。前記生体関連物質としては特に限定されないが、例えば、タンパク質(例:酵素、抗体、アプタマー、受容体)、ペプチド(例:グルタチオン)、核酸(例:DNA、RNA)、糖質、脂質、およびその他の細胞または物質(例:血小板、赤血球、白血球等の各種血球細胞を含む各種血液由来物質、各種浮遊細胞)が挙げられる。
【0130】
≪標的物質を検出または分離する方法≫
本発明における、標的物質を検出または分離する方法は、前記プローブ結合担体を用いる。
該方法では、前記プローブ結合担体を用いるため、特出する高感度で被検出物質を検出することができる。
【0131】
検出方法の一例としては、前記プローブ結合担体と、被検体中の標的物質とを接触させることで、標的物質をプローブ結合担体に含まれるプローブを介して該担体上に捕捉した後、二次プローブと反応させる。この際に、二次プローブとして、蛍光物質や放射性同位体、酵素等で標識されたプローブを用い、必要に応じさらに発光試薬等を用いることで、蛍光や酵素反応等によって標的物質の検出を行うことができる。
【0132】
分離方法の一例としては、前記プローブ結合担体と標的物質とを反応させた後、集磁し、洗浄することで、標的物質以外を除去分離する方法が挙げられる。
【0133】
≪安定化剤≫
前記両親媒性物質は、本方法において、前記効果を奏するだけではなく、プローブ、特にタンパク質や核酸の水系媒体中での凝集や沈殿を抑制し、活性を維持し、分散性を安定化させる役割を果たす。
従って、該両親媒性物質は、プローブ、特にタンパク質または核酸の安定化剤、特に、水系媒体中でのタンパク質または核酸の安定化剤であるともいえる。
【0134】
該安定化剤は、両親媒性物質を含めば特に制限されず、前記結合工程の欄に記載の液体や添加剤等を含んでいてもよい。
また、該安定化剤中の両親媒性物質の量は、該安定化剤が、前記水系媒体中に溶解または分散している場合、前記結合工程の欄に記載の濃度と同様の濃度が挙げられる。
該安定化剤中に含まれる両親媒性物質は、1種でもよく2種以上でもよい。
【実施例】
【0135】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0136】
[粒径の測定]
各粒子の粒径は、Multisizer4e(Beckman Coulter社製)で測定した。電解液(Beckman Coulter社製ISOTON II)100mLに、0.1質量%Tween 20水溶液に分散させた1質量%の磁性粒子を、濃度センサが4〜10%の値を示すまで投入し、粒子50,000個の粒子の粒径を測定し、その平均値を算出することで、体積平均粒子径を測定した。
【0137】
[トシル基の定量]
水1mLに分散させた磁性粒子(A)100mgをマイクロチューブに採取し、エチレンジアミンを100μL加え、40℃で15時間反応した。反応後、マイクロチューブを磁気スタンドに立て上清を回収した。上清20μLをイオンクロマトグラフィー(装置:DIONEX社製ICS2000、カラム:AS18、検出:電気伝導度、流速:1.0mL/分、測定時間:30分、溶離液:50mM 水酸化カリウム水溶液)で分析し、保持時間23分程度に現れるピークの面積を求めた。別途、p−トルエンスルホン酸ナトリウムをイオンクロマトグラフィーで分析することで得られた検量線から、磁性粒子(A)100mgあたりの表面トシル基量を算出した。
【0138】
[カルボキシ基の定量]
カルボキシ基の定量は、「表面荷電量」として電導度滴定法により、磁性粒子の表面に存在する酸を測定することで行った。測定法が記載された文献「J.Electroanal.Chem.,Vol.37,P.161,(1972)」を参照し、Metrohm社製の794 Basic Titrinoを用いて定量した。
【0139】
[磁性粒子表面の官能基1個あたりが占める面積の算出]
磁性粒子表面の官能基1個あたりが占める面積は、以下の式で求められる。
磁性粒子表面の官能基1個あたりが占める面積=磁性粒子の表面積/表面官能基の個数
具体的には以下の式で求められる。
磁性粒子表面の官能基1個あたりが占める面積[Å
2/官能基]=1/(1.004×磁性粒子比重[g/cm
3]×粒径[μm]×官能基量[mmol/g])
【0140】
実施例で用いた磁性粒子の比重は、以下の方法で求めた。
磁性粒子粉末30mgを、示差熱熱重量同時測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製STA7300)に入れ、昇温速度:10℃/分、リミット温度:500℃、ホールド時間:20分、サンプリング時間:1.0秒、ガス種:窒素、ガス流量:200mL/分の条件で測定し、磁性粒子に含まれる酸化鉄と樹脂の質量%をそれぞれ求めた。酸化鉄比重を5.2[g/cm
3]、樹脂比重を1.1[g/cm
3]とし、前記得られたそれぞれの質量%の値から、磁性粒子の比重を算出した。
【0141】
[磁気分離時間]
0.1質量%Tween20水溶液を用い、磁性粒子を0.01質量%含む試験液を調製した。この試験液よく分散させた後、光路長1cmの角型光学セルに入れ、分光光度計(日本分光(株)製、V−750型)にセットし、セルホルダー横であって、分光光度計が発する光の光路から外れる位置に磁性粒子を引きつけることが可能な位置に表面磁束密度2900ガウスのネオジム磁石を置いた時を0秒として、550nmにおける吸光度が初期の10%に減衰するまでの時間(秒)を測定し、この時間を磁気分離時間とした。
【0142】
磁気分離時間は、粒子の分散度合の尺度を示す数値として用いることができる。一般的には、プローブ結合前の粒子(ベース粒子)が最も分散した状態であり(分散性が良く)、従って磁気分離時間は遅くなる。ベース粒子にプローブを結合した際に、プローブが良く分散した状態で粒子に結合している場合には、プローブ結合粒子の分散性も良く磁気分離時間も遅いままであるが、プローブが凝集状態で結合した場合には、プローブ結合粒子でも凝集が起こり、従って磁気分離時間は早くなる。分散性の良いプローブ結合粒子においては磁気分離時間がベース粒子と比較して80%以上を維持しているが、軽度の凝集がある場合にはベース粒子の磁気分離時間の50〜80%となり、極度に凝集が起こると、磁気分離時間はベース粒子の磁気分離時間の50%未満となる。
【0143】
[粒子の分散度合いの測定]
リコンビナントHIV抗原結合磁性粒子の分散度合いを、以下の基準に基づき判断した。
○:ベース粒子の磁気分離時間と比較して、80%以上の磁気分離時間である
△:ベース粒子の磁気分離時間と比較して、50%以上80%未満の磁気分離時間である
×:ベース粒子の磁気分離時間と比較して、50%未満の磁気分離時間である
【0144】
[抗原結合量の定量]
BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を用い、磁性粒子に結合した抗原の定量を行った。まず、リコンビナントHIV抗原0μg、5μg、10μgまたは15μgが溶解したMES緩衝液((2−(4−モルホリノ)エタンスルホン酸:(株)同仁化学研究所製)、0.1mol/L、pH5.0)50μLをそれぞれマイクロチューブに分注し、前記キット中の試薬Aと試薬Bとを50/1(v/v)で混合して作製したworking reagent 0.5mLを各マイクロチューブに添加した。37℃で60分インキュベートした後、マイクロチューブを磁気スタンドに立て上清を回収し、OD562の測定を行い、検量線を作成した。
続いて、リコンビナントHIV抗原結合磁性粒子1mgをマイクロチューブに採取し、50μLのMES緩衝液(0.1mol/L、pH5.0)に分散させた。そこに、Working reagent 0.5mLを添加し、37℃で60分インキュベートした後、マイクロチューブを磁気スタンドに立て上清を回収し、OD562の測定を行った。検量線から抗体結合量を算出した。
【0145】
[化学発光酵素免疫測定(CLEIA)]
白色96ウェルプレート(corning社製)のウェル1およびウェル2に、TBS−T緩衝液(137mmol/L塩化ナトリウム、2.7mmol/L塩化カリウム、25mmol/Lトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩(以下「Tris−HCl」ともいう。)、0.1質量%Tween20、pH7.4)50μLに分散したリコンビナントHIV抗原結合磁性粒子15μgをそれぞれ添加した。
次に、ノイズ測定用として、BSA/TBS緩衝液(1質量%BSA、137mmol/L塩化ナトリウム、2.7mmol/L塩化カリウム、25mmol/L Tris−HCl、pH7.4)10μLをウェル1に添加した。
また、シグナル測定用として、BSA/TBS緩衝液(1質量%のBSAを含む)10μLに溶解した抗リコンビナントHIV抗体10μgをウェル2に添加し、37℃で10分間反応させた。その後、粒子を磁石で集磁し上清除去を行い、96wellプレート用ウォッシャー(テカンジャパン(株)製、Hydro Flex)を用い、TBS−T緩衝液で粒子を洗浄した。この集磁−洗浄操作を計5回行った。次に、アルカリフォスファターゼを標識したリコンビナントHIV抗原を50μL添加し、37℃で10分間反応させた。反応後、前記と同様に96wellプレート用ウォッシャーを用いて集磁−洗浄操作を計5回行った。
その後、ウェル1およびウェル2それぞれに、発光基質(富士レビオ(株)製クラスIIIシリーズ ルミパルス基質液)を50μL添加した。発光基質添加から5分間、25℃で反応させた後に、発光強度を化学発光測定機(ARVO X5、PerkinElmer社製)を用いてノイズおよびシグナルの発光強度を測定した。
【0146】
[合成例1]トシル基含有磁性粒子の作製
1.1 核粒子の作製
75質量%ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド溶液((株)日油製、「パーロイル355−75(S)」、以下「パーロイル」という。)2質量部を1質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液20質量部と混合し、超音波分散機にて微細乳化した。これを粒径0.77μmのポリスチレン粒子13質量部および水41質量部の入ったリアクターに入れ、25℃で12時間撹拌した。別の容器でメチルメタクリレート(以下「MMA」という。)95質量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート(以下「TMP」という。)5質量部を0.1質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液400質量部中で乳化させた後、得られた乳化液を前記リアクターに入れ、40℃で2時間撹拌した後、75℃に昇温して8時間重合した。室温まで冷却後、遠心分離により粒子のみを取り出して水洗し、乾燥、粉砕し、核粒子を得た。得られた核粒子の粒径は1.5μmであった。
【0147】
1.2 母粒子の作製(磁性体層の形成)
油性磁性流体(商品名:「EXPシリーズ」、(株)フェローテック製)にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の超常磁性微粒子を得た。超常磁性微粒子の平均一次粒子径は、0.02μmであった。
【0148】
次いで、前記核粒子(15質量部)および前記疎水化された表面を有する超常磁性微粒子20質量部をミキサーでよく混合し、この混合物をハイブリダイゼーションシステムNHS−0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16200rpm)で5分間処理し、超常磁性微粒子からなる磁性体層を表面に有する母粒子を得た。母粒子の粒径は、2.0μmであった。
【0149】
1.3 母粒子への第1、第2ポリマー層の形成
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量%水溶液333質量部を1Lセパラブルフラスコに投入し、次いで、前記母粒子(13.3質量部)を投入し、ホモジナイザーで分散した後、60℃に加熱した。別の容器に入れたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量%水溶液100質量部に、MMA18質量部、TMP2質量部およびパーロイル0.4質量部を分散させたプレエマルションを、60℃にコントロールした前記1Lセパラブルフラスコに2時間かけて滴下し、60℃に保持したまま更に1時間撹拌することで、母粒子表面に第1ポリマー層を形成した。
【0150】
次いで、別の容器に入れたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量%水溶液50質量部に、グリシジルメタクリレート8.75質量部、TMP1.25質量部およびパーロイル0.2質量部を分散させたプレエマルションを、60℃にコントロールした1時間撹拌後の前記1Lセパラブルフラスコに1時間20分かけて滴下した。その後75℃に昇温し、さらに2時間重合を続けて、反応を完了させることで、第1ポリマー層上に第2ポリマー層を形成した。
【0151】
次いで、磁気により前記セパラブルフラスコ中の粒子を分離し、該粒子を蒸留水を用いて洗浄した。以上の工程により、グリシジル基を有する第2ポリマー層が形成された磁性粒子を得た。この粒子の粒径は3.0μmであった。
【0152】
1.4 グリシジル基の加水分解
得られたグリシジル基を有する磁性粒子(1.0質量部)に、1質量%硫酸水溶液10質量部を加え、超音波を5分間照射して粒子を分散させ、次いで、60℃で5時間撹拌した。続いて、得られた液から磁性粒子を磁気分離により単離し、純水に分散させ磁気分離して洗浄する操作を5回繰り返すことによりOH基含有磁性粒子を得た。
【0153】
1.5 トシル基含有磁性粒子の作製
前記OH含有磁性粒子(1.0質量部)をアセトニトリルで3回洗浄した後、10質量部のアセトニトリルに分散させ、そこに、0.02質量部のパラトルエンスルホニルクロライド(和光純薬工業(株)製)と0.03質量部のトリブチルアミンとを加え、25℃で4時間撹拌した(トシル基の導入)。反応終了後、磁気により得られた粒子を分離し、アセトニトリルで3回、続いて蒸留水で4回洗浄した。以上により、トシル基含有磁性粒子(磁性粒子(A))を調製した。この粒子の粒径は3.0μm、表面トシル基量は76μmol/g、磁性粒子表面のトシル基1個あたりが占める面積は、32(Å
2/トシル基)であった。また、プローブ結合前のベース粒子としての磁気分離時間は58秒であった。
【0154】
[合成例2]カルボキシ基含有磁性粒子の作製
前記OH含有磁性粒子(1.0質量部)を1,3−ジオキソランで3回洗浄した後、10質量部の1,3−ジオキソランに分散させ、そこに、1質量部の無水コハク酸と0.15質量部のトリエチルアミンとを溶解した溶液を加え、25℃で4時間撹拌した(カルボキシ基の導入)。反応終了後、磁気により得られた粒子を分離し、1,3−ジオキソランで3回、続いて蒸留水で4回洗浄した。以上により、カルボキシ基含有磁性粒子(磁性粒子(B))を調製した。この粒子の粒径は3.0μm、カルボキシ基量は10μmol/g、磁性粒子表面のカルボキシ基1個あたりが占める面積は、25(Å
2/カルボキシ基)であった。また、プローブ結合前のベース粒子としての磁気分離時間は58秒であった。
【0155】
[実施例1]
合成例1で得られた磁性粒子(A)5mgを、2mLマイクロチューブに採取し、磁気スタンドを用いて上清を除去した。そこに、0.1質量%テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含有したHEPES緩衝液(100mmol/L 2−[4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid((株)同仁化学研究所製)、pH7.5)を0.5mL加えて分散させ、磁気スタンドを用いて上清を除去した(洗浄工程)。再度、0.5mLの該緩衝液を加えて粒子を洗浄した後に、0.488mLの該緩衝液を加えて粒子を分散させた。続いて、リコンビナントHIV抗原(Fapon社製)を50μg(12μL)添加した後に、室温で18時間反応させた。反応終了後、磁気スタンドを用いて上清を回収し、粒子ペレットをTBS−T緩衝液0.5mLに分散させ、超音波照射機(シャープ(株)製:UT−206S)を用いて5分間処理した。その後、TBS−T緩衝液0.5mLを用いて粒子を3回洗浄した。以上により、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(A−1)を作製した。
【0156】
[実施例2〜10]
使用する界面活性剤の種類を表1に記載の界面活性剤に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(A−2〜A−10)を作製した。
なお、表中の「CHAPSO」は、(株)同仁化学研究所製の3−[(3−Cholamidopropyl)dimethylammonio]−2−hydroxypropanesulfonateである。
【0157】
[実施例11]
合成例2で得られた磁性粒子(B)5mgを、2mLマイクロチューブに採取し、磁気スタンドを用いて上清を除去した。そこに、0.1質量%テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含有したMES緩衝液(100mmol/L、pH5.0)を0.5mL加えて分散させ、磁気スタンドを用いて上清を除去した(洗浄工程)。再度、0.5mLの該緩衝液を加えて粒子を洗浄した後に、0.483mLの該緩衝液を加えて粒子を分散させた。続いて、リコンビナントHIV抗原(Fapon社製)を50μg(12μL)添加した後に、0.1質量%EDC(N−ジメチルアミノプロピル−N'−エチルカルボジイミド塩酸塩:(株)同仁化学研究所製)水溶液を5μL添加し、室温で1時間反応させた。反応終了後、磁気スタンドを用いて上清を回収し、粒子ペレットをTBS−T緩衝液0.5mLに分散させ、超音波照射機(シャープ(株)製:UT−206S)を用いて5分間処理した。その後、TBS−T緩衝液0.5mLを用いて粒子を3回洗浄した。以上により、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(B−1)を作製した。
【0158】
[実施例12〜20]
使用する界面活性剤の種類を表1に記載の界面活性剤に変更した以外は、実施例11と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(B−2〜B−10)を作製した。
【0159】
[比較例1]
界面活性剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(A−11)を作製した。
【0160】
[比較例2]
界面活性剤の代わりに0.5mol/L硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(A−12)を作製した。
【0161】
[比較例3]
界面活性剤の代わりに1.0mol/L硫酸アンモニウムを使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(A−13)を作製した。
【0162】
[比較例4]
界面活性剤の代わりに1.0mol/L尿素(和光純薬工業(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(A−14)を作製した。
【0163】
[比較例5]
界面活性剤の代わりに2.0mol/L尿素を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(A−15)を作製した。
【0164】
[比較例6]
反応時に界面活性剤を使用せず、0.1質量%EDC水溶液の添加量を25μLに変更した以外は、実施例11と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(B−11)を作製した。
【0165】
[比較例7]
界面活性剤を使用せず、EDC水溶液の濃度を1質量%に変更し、EDC水溶液の添加量を25μLに変更した以外は、実施例11と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(B−12)を作製した。
【0166】
[比較例8]
界面活性剤の代わりに1.0mol/L尿素を使用した以外は、実施例11と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(B−13)を作製した。
【0167】
[比較例9]
界面活性剤の代わりに4.0mol/L尿素を使用した以外は、実施例11と同様の手法にて、リコンビナントHIV抗原を結合させた磁性粒子(B−14)を作製した。
【0168】
【表1】