(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6900252
(24)【登録日】2021年6月18日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】パターン検査装置の検査結果の度数分布形状に関する情報を活用する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20210628BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20210628BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N23/2251
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-122860(P2017-122860)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2018-6746(P2018-6746A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2020年6月2日
(31)【優先権主張番号】15/196,218
(32)【優先日】2016年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】TASMIT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 善茂
【審査官】
小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−054859(JP,A)
【文献】
特開2010−133929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 23/2251
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象パターンを含む検査エリアの画像を生成し、
前記画像から、前記検査対象パターンの2次元形状情報を表す測定値を取得し、
前記測定値の度数分布を生成し、
前記測定値の統計量を算出し、
前記画像の生成から前記統計量の算出までの工程を繰り返す検査動作を実行しながら、前記統計量の変化量を算出し、
前記統計量の変化量が閾値よりも小さい場合は、前記検査動作を終了し、
前記検査対象パターンの2次元形状情報は、前記検査対象パターンのCritical Dimension値、または2次元パターン形状情報の代表値であることを特徴とするパターン検査方法。
【請求項2】
前記度数分布のピークが複数個存在するか、または前記度数分布に跳び値が存在する場合は、設計データを用いて前記測定値をパターン情報に従って分類することを特徴とする請求項1に記載のパターン検査方法。
【請求項3】
前記設計データは、前記検査対象パターンの線幅、前記検査対象パターンの方向、前記検査対象パターンの長さ、前記検査対象パターンに近接するパターンとのスペース幅、設計座標のうちの少なくとも1つのパターン情報を含むことを特徴とする請求項2に記載のパターン検査方法。
【請求項4】
複数のデータ傾向調査エリアを複数の検査エリアから選択し、
前記複数のデータ傾向調査エリアのそれぞれにおいて、各データ傾向調査エリアの画像を生成し、
前記画像から、検査対象パターンの2次元形状情報を表す測定値を取得し、
前記測定値の特徴を表す特徴指標値を算出し、
前記複数のデータ傾向調査エリア間における前記特徴指標値の差が閾値を超えた場合は、前記複数のデータ傾向調査エリアの間に位置する検査エリアを検査し、前記特徴指標値の差が閾値を超えない場合は、前記複数の検査エリアの中から予め指定された検査エリアを検査することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項5】
前記特徴指標値は、前記測定値の統計量、または前記検査対象パターンの欠陥発生率であることを特徴とする請求項4に記載のパターン検査方法。
【請求項6】
前記検査対象パターンの2次元形状情報は、前記検査対象パターンのCritical Dimension値、または2次元パターン形状情報の代表値であることを特徴とする請求項4に記載のパターン検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査装置および方法に関し、より具体的には、例えば、設計データに基づき製造された、半導体集積回路(LSI)や液晶パネルおよびそれらのホトマスク(レチクル)などの微細パターンを検査するためのパターン検査装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造工程におけるウェーハのパターン検査、あるいはそのパターン形成用のホトマスクのパターン検査には、ダイ・ツー・ダイ(die to die)比較方法を用いた光学式パターン検査装置が使われている。このダイ・ツー・ダイ比較方法は、検査対象のダイと呼ばれる半導体デバイスとその近接ダイの同じ位置から得られる画像どうしを比較することで欠陥を検出する方法である。
【0003】
一方、近接ダイの存在しないレチクルと呼ばれるホトマスクの検査には、ダイ・ツー・データベース(die to database)比較と呼ばれる方法が使用されている。この方法は、マスクデータを画像に変換してダイ・ツー・ダイ比較方法で用いた近接ダイの画像の代わりとし、前述同様の検査をする方法である。マスクデータとは設計データにホトマスク用の補正を施して得られるデータである。当該技術は、たとえば米国特許第5563702号公報(特許文献1)“Automated photomask inspection apparatus and method”に記載されている。
【0004】
しかし、ダイ・ツー・データベース比較方法をウェーハ検査に使用すると、実際にウェーハに形成されたパターンのコーナーラウンドが欠陥として検出される。ホトマスクの検査では、マスクデータから変換された画像にスムージングフィルタでコーナーラウンドをもたせる前処理を行うことで、コーナーラウンドを欠陥として検出しないようにしている。しかしながら、ウェーハ検査では、この前処理によるコーナーラウンドは、ウェーハに形成されたそれぞれのパターンのコーナーラウンドに等しくないので、コーナーラウンドを欠陥として検出しないようにできないことがある。そこで、この違いを無視するように許容パターン変形量を設定すると、コーナー以外に存在する微少欠陥を検出できないという問題が発生している。
【0005】
半導体集積回路生産での問題に注目すると、ゴミなどに起因するランダム欠陥よりも繰り返し発生する欠陥が重要視されている。繰り返し発生する欠陥(システマティック欠陥)とは、ホトマスク不良などを原因としてウェーハ上の全ダイにおいて繰り返し発生する欠陥と定義される。繰り返し発生する欠陥は検査対象のダイおよびその比較対象の近接ダイの両方に発生しているため、ダイ・ツー・ダイ比較では検出できない。ゆえに、ダイ・ツー・データベース比較方式でのウェーハ検査が必要とされている。
【0006】
システマティック欠陥を対象としたダイ・ツー・データベース比較方式とランダム欠陥を対象としたダイ・ツー・ダイ方式に必要なデータ点数に関しては、半導体プロセスの出来栄えを統計的に表現する為に、数千点から数百
万点以上のデータを取得する検査・計測が行われている。
【0007】
しかしながら、CD(Critical Dimension)値、2次元パターン形状情報の代表値、欠陥検出個数の度数分布形状等を統計的に求める際、または、欠陥の発生率を算出する際に必要とされる数千点から数百
万点以上のデータ点数を検査・計測前に正確に知る事は困難なので、必要以上と思われるデータ点数を取得し、パターン検査を実施している。たとえば文献1”Guidelines for measurement sampling properly to maintain and to manage process of semiconductor wafer fabrication processes”では、工程能力の安定性が未知の場合は、データ点数を増加させる必要性に関して言及しているが、検査・計測前に工程能力を知る事は困難である。
【0008】
OPCパターンがウェーハのパターンに補正として有効に作用しているかどうかは、従来のダイ・ツー・ダイ比較では検査できない。したがって、その解決方法、たとえばウェーハのパターンと設計データとの比較検証を、許容パターン変形量を考慮して行える手法が求められている。
【0009】
また、例えばシステムオンチップ(SOC)で見られる多品種少量生産では、短納期が求められている。このような場合に、最終検査である電気的検査でシステマティック欠陥を発見しても、短納期に応えられない場合がある。この対策として、露光プロセスの各段階で設計データとの差異をモニタする要求が発生している。そこで、電気特性に影響しないパターン変形を許容パターン変形量として設定しておき、許容パターン変形量以内の変形を考慮しながら設計データとウェーハのパターンの比較検証を行えるような検査方法が求められる。
【0010】
また現在では、パターン変形の評価として、リソシミュレータなどによりデザインチェックが行われている。このシミュレーションの正当性を検証するために、リソシミュレータが出力したパターン(シミュレーションパターン)と実パターンとの比較検討手段が必要とされている。
【0011】
また、設計データに対するパターン変形量を求めることにより、回路設計上の技術を向上させることがますます重要になっている。
【0012】
ところで、現在、半導体集積回路の製造工程におけるウェーハのパターン線幅管理用に、CD−SEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope)が用いられている。このCD−SEMは、ショットと呼ばれるステッパの一転写単位ごとに、指定された位置にある直線パターンの線幅をラインプロファイルを使って自動的に測長するものである。この測長を、1ロットあたり数枚のウェーハにおける数ショットに対して数ヶ所実施し、ステッパの転写機能が正常かどうか、nm単位で管理することができる。
【0013】
回路パターンの管理としては線幅以外にも、配線終端の縮み、孤立パターンの位置なども重要であるが、CD−SEMの自動測長機能は1次元対応で線幅など長さしか測定できない。したがって、これら2次元形状の測定は、CD−SEMや他の顕微鏡から得られた画像を操作者が目視することにより実施されている。
【0014】
光近接効果補正(OPC)は、直線パターンの線幅を確保するのはもとより、コーナーや孤立パターンの形状形成にも重要な役目を担っている。またさらに、動作周波数の向上により現在では、ゲート線幅に加えて、エンドキャップやフィールドエクステンションと呼ばれるゲート配線パターンの先端や付け根の形状管理も重要になってきている。
【0015】
このような2次元パターンの形状測定は、製造工程での抜き取り検査でも、試作段階でも重要であり、特に試作段階では、ウェーハ全面についてパターン形成の検査が必要とされる。
【0016】
また、CD−SEMの自動測長機能はウェーハ面内の僅かな測定点数でのみ実施され、2次元パターンの形状測定の代表値には成り得ない。
【0017】
そこで、数千点から数百万点以上を計測する大規模なCD(Critical Dimension)計測が必要とされている。
【0018】
また、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の度数分布形状は、必ずしも正規分布では無く、そのままでは統計量を扱う事が困難である。たとえば文献2”Hot spot management through design based metrology: measurement and filtering”では、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の度数分布形状がパターンデザインの影響により正規分布とは異なる事例を紹介している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第5563702号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】「Guidelines for measurement sampling properly to maintain and to manage process of semiconductor wafer fabrication processes」
【非特許文献2】「Hot spot management through design based metrology: measurement and filtering」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の一実施形態の目的は、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果に関して、統計量を扱う為に、同一パターン毎、検査エリア毎、任意の設計サイズ毎などあらゆる設計情報、検査情報を用いて、データを分割することである。
本発明の一実施形態の目的は、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の度数分布形状のピーク個数を求めることである。
本発明の一実施形態の目的は、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の度数分布形状で裾引き型と定義される歪度を求めることである。
本発明の一実施形態の目的は、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の度数分布形状で離れ小島型と定義される跳び値の存在有無を検出することである。
本発明の一実施形態の目的は、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の度数分布形状でばらつき型と定義される形状に関して尖度を用いて定義することである。
本発明の一実施形態の目的は、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の個別データ、平均値、メディアン値、分散値のそれぞれに下方限界値、上方限界値を定義し、計測結果が規格内かどうかを判定することである。
本発明の一実施形態の目的は、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の度数分布形状が正規分布または、裾引き型または、ばらつき型の場合、検査エリア毎に分布形状の点数付けを実施し、分布形状が正規分布から乖離しているエリアを集中的に計測することで、計測時間を短縮することである。
本発明の一実施形態の目的は、大規模なCD(Critical Dimension)計測結果の度数分布形状が正規分布または、裾引き型または、ばらつき型の場合、計測中に分布形状の安定度を点数付けする事で、必要以上の計測を実施せず、最適な計測点数を算出することである。
本発明の一実施形態の目的は、ショット、ダイ、セルなど予め設定した領域で欠陥発生率が高い領域を集中的に検査する事で検査時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一実施形態では、検査対象パターンを含む検査エリアの画像を生成し、前記画像から、前記検査対象パターンの2次元形状情報を表す測定値を取得し、前記測定値の度数分布を生成し、前記測定値の統計量を算出し、前記画像の生成から前記統計量の算出までの工程を繰り返す検査動作を実行しながら、前記統計量の変化量を算出し、前記統計量の変化量が閾値よりも小さい場合は、前記検査動作を終了
し、前記検査対象パターンの2次元形状情報は、前記検査対象パターンのCritical Dimension値、または2次元パターン形状情報の代表値であることを特徴とするパターン検査方法が提供される。
一実施形態では、前記度数分布のピークが複数個存在するか、または前記度数分布に跳び値が存在する場合は、設計データを用いて前記測定値をパターン情報に従って分類することを特徴とする
。
一実施形態では、前記設計データは、前記検査対象パターンの線幅、前記検査対象パターンの方向、前記検査対象パターンの長さ、前記検査対象パターンに近接するパターンとのスペース幅、設計座標のうちの少なくとも1つのパターン情報を含むことを特徴とする。
【0023】
一実施形態では、複数のデータ傾向調査エリアを複数の検査エリアから選択し、前記複数のデータ傾向調査エリアのそれぞれにおいて、各データ傾向調査エリアの画像を生成し、前記画像から、検査対象パターンの2次元形状情報を表す測定値を取得し、前記測定値の特徴を表す特徴指標値を算出し、前記複数のデータ傾向調査エリア間における前記特徴指標値の差が閾値を超えた場合は、前記複数のデータ傾向調査エリアの間に位置する検査エリアを検査し、前記特徴指標値の差が閾値を超えない場合は、前記複数の検査エリアの中から予め指定された検査エリアを検査することを特徴とするパターン検査方法が提供される。
一実施形態では、前記特徴指標値は、前記測定値の統計量、または前記検査対象パターンの欠陥発生率であることを特徴とする。
一実施形態では、前記検査対象パターンの2次元形状情報は、前記検査対象パターンのCritical Dimension値、または2次元パターン形状情報の代表値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記実施形態によれば、CD(Critical Dimension)値、2次元パターン形状情報、欠陥検出個数の度数分布形状等を定量評価する事により検査結果のデータ点数が統計的に十分かどうかを自動判定出来、検査時間の最適化が可能である。また、欠陥の多発領域を選択的に検査する事で、検査時間の最適化が可能である。本発明の上記実施形態は全ての検査手法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、パターン検査装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】
図2は、パターン検査装置の画像生成装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図4】
図4は、データ点数の最適化の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、複数ピーク型の度数分布形状を決定する方法を示す図である。
【
図6】
図6は、離れ小島型の度数分布形状を決定する方法を示す図である。
【
図7】
図7は、測長データ点数の最適化の一実施形態を示す図である。
【
図8】
図8は、検査エリア最適化の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8に示すフローチャートを用いた検査エリアの最適化の一実施形態を示す図である。
【
図10】
図10は、検査エリア最適化の他の実施形態を示す図である。
【
図11】
図11は、パターン欠陥検査における検査エリア最適化の例を示す図である。
【
図12】
図12は、大規模なCD(Critical Dimension)における個別データに関して上方限界値、下方限界値を設定した実施形態を示す図である。
【
図13】
図13は、大規模なCD(Critical Dimension)データを用い、平均値±σ、2σ、3σの範囲に存在するデータ点数と全データ点数の比率によって大規模なCD(Critical Dimension)の度数分布形状を表現した実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ実施形態について詳しく説明する。
図1は、パターン検査装置の一実施形態を示す模式図である。本実施形態におけるパターン検査装置は、主制御部1、記憶装置2、入出力制御部3、入力装置4、表示装置5、印刷装置6、および画像生成装置7を備える。
【0027】
主制御部1はCPU(Central Processing Unit)等により構成され、装置全体を統括的に制御する。主制御部1には記憶装置2が接続されている。記憶装置2は、ハードディスク、フレキシブルディスク、光ディスク等の形態をとることができる。また、主制御部1には、入出力制御部3を介して、キーボード、マウス等の入力装置4、入力データ、計算結果等を表示するディスプレイ等の表示装置5、および検査結果等を印刷するプリンタ等の印刷装置6が接続されている。
【0028】
主制御部1は、OS(Operating System)等の制御プログラム、パターン検査のためのプログラム、および所要データ等を格納するための内部メモリ(内部記憶装置)を有し、これらプログラム等によりパターン検査を実現している。これらのプログラムは、フレキシブルディスク、光ディスク等に記憶しておき、実行前にメモリ、ハードディスク等に読み込ませて実行されるようにすることができる。
【0029】
図2は、パターン検査装置の画像生成装置7の一実施形態を示す模式図である。
図2に示すように、画像生成装置7は、照射系装置10と試料室20と2次電子検出器30とから構成されている。本実施形態では、画像生成装置7は、走査型電子顕微鏡である。
【0030】
照射系装置10は、電子銃11と、電子銃11から放出された1次電子を集束する集束レンズ12と、電子線(荷電粒子線)を,X方向,Y方向に偏向するX偏向器13およびY偏向器14と、対物レンズ15とから構成されている。試料室20はX方向,Y方向に可動のXYステージ21を備えている。試料室20にはウェーハ搬送装置40によって試料であるウェーハWが搬出入されるようになっている。
【0031】
照射系装置10においては、電子銃11から放出された1次電子は集束レンズ12で集束された後に、X偏向器13およびY偏向器14で偏向されつつ対物レンズ15により集束されて試料であるウェーハWの表面に照射される。
【0032】
ウェーハWに1次電子が照射されるとウェーハWからは2次電子が放出され、2次電子は2次電子検出器30により検出される。集束レンズ12および対物レンズ15はレンズ制御装置16に接続され、このレンズ制御装置16は制御コンピュータ50に接続されている。2次電子検出器30は画像取得装置17に接続され、この画像取得装置17も同様に制御コンピュータ50に接続されている。2次電子検出器30で検出された2次電子強度が画像取得装置17によって検査対象パターン画像に変換される。歪みの無い最大の検査対象パターン画像を取得できる1次電子の照射領域を視野と定義する。
【0033】
前記X偏向器13およびY偏向器14は、偏向制御装置18に接続され、この偏向制御装置18も同様に制御コンピュータ50に接続されている。XYステージ21は、XYステージ制御装置22に接続され、このXYステージ制御装置22も同様に制御コンピュータ50に接続されている。またウェーハ搬送装置40も同様に制御コンピュータ50に接続されている。制御コンピュータ50は、操作コンピュータ60に接続されている。
【0034】
図3A乃至
図3Eは、本発明の一実施形態で対象とする度数分布形状の定義を示すヒストグラムである。
図3A乃至
図3Eに示すように、5種類の度数分布形状が定義される。
図3Bは、裾引き型と定義される度数分布形状を示す。この裾引き型は、予め設定された歪度の上下限値より大きい歪度を有する度数分布形状である。
図3Cは、ばらつき型と定義される度数分布形状を示す。このばらつき型は、予め設定した尖度の上下限値より大きい尖度を有する度数分布形状である。
図3Dは、複数ピーク型と定義される度数分布形状を示す。この複数ピーク型は、2個以上のピークが存在する度数分布形状である。
図3Eは、離れ小島型と定義される度数分布形状を示す。この離れ小島型は、跳び値を含む度数分布形状である。これら
図3B乃至
図3Eに示す4つのタイプに該当しない度数分布形状は、
図3Aに示す正規分布と定義される。
【0035】
図4は、データ点数の最適化の一実施形態を示すフローチャートである。予め設定したデータ点数に達するまで、指定した検査エリア(例えば、ショット、ダイ、セルなど)で従来通り検査・計測を実施する。具体的には、統計処理に必要な最低データ点数が設定される(ステップ1)。次に、各種判定基準となる閾値が設定される(ステップ2)。閾値は、例えば、後述する統計量の変化を判断するための閾値である。
【0036】
続いて、検査エリアの検査が開始される(ステップ3)。具体的には、主制御部1は、画像生成装置7を動作させ、画像生成装置7により検査エリアの画像を生成する(ステップ4)。本実施形態では、画像生成装置7は、走査型電子顕微鏡である。主制御部1は、画像生成装置7が生成した画像を取得し、この画像から、検査エリア内に存在する検査対象パターンの2次元形状情報を表す測定値を取得する(ステップ5)。検査対象パターンの2次元形状情報の例としては、検査対象パターンのCritical Dimension (CD)、またはパターンの重心などの2次元パターン形状情報の代表値が挙げられる。測定値の数が上記最低データ点数に到達するまで、ステップ4の画像の生成とステップ5の測定値の取得が繰り返される(ステップ6)。
【0037】
主制御部1は、設計データを使用して測定値をパターン情報に従って分類する(ステップ7)。設計データとしては、たとえばGDSII(Graphic Design System II)データストリ−ム形式のレイアウトデータに、レイアの融合やフラクチャリングを行ったものが使える。設計データは、検査対象パターンの線幅、検査対象パターンの方向、検査対象パターンの長さ、検査対象パターンに近接するパターンとのスペース幅、設計座標のうちの少なくとも1つのパターン情報を含む。測定値をパターン情報に従って分類する理由は、測定値のばらつきを小さくして、次のステップ8で生成される測定値の度数分布をできるだけ正規分布に近づけるためである。
【0038】
主制御部1は、分類された測定値の度数分布を生成し、さらに分類された測定値の統計量を算出する(ステップ8)。統計量は、平均値、分散、最大値、最小値、歪度、および尖度のうちの少なくとも1つを含む。
歪度は以下の公知の式にて算出される。
【数1】
尖度は以下の公知の式にて算出される。
【数2】
【0039】
主制御部1は、度数分布の形状、すなわちヒストグラムの形状を評価する(ステップ9)。具体的には、度数分布の形状が、
図3A乃至
図3Cに示す正規分布、裾引き型、およびばらつき型からなる第1グループか、または
図3D及び
図3Eに示す複数ピーク型および離れ小島型からなる第2グループのどちらに属するかを決定する。度数分布の形状が複数ピーク型または離れ小島型の場合(ステップ9のNOの場合)は、主制御部1は、ステップ7で既に分類された測定値のデータを、設計データを用いてパターン情報に従ってさらに分類し、度数分布の形状を再度評価する(ステップ10)。設計データを用いても度数分布形状が2つ以上のピークを持つ場合や、離れ小島型の場合は、検査・計測数の削減は実施しない。
【0040】
度数分布の形状が正規分布、裾引き型、またはばらつき型の場合(ステップ9のYESの場合)は、主制御部1は、歪度または尖度などの度数分布の統計量の変化量を、ステップ2で設定された閾値と比較する(ステップ11)。統計量の変化量が閾値よりも大きい場合は、ステップ4からステップ11までの工程を繰り返す。ステップ8において統計量が計算されるたびに、統計量は更新される。統計量の変化量が閾値よりも小さい場合は、主制御部1は、レシピにより予め登録された全ての検査エリアが検査されたか否かを判断する(ステップ12)。全ての検査エリアが検査されていない場合には、他の検査エリアが同様の工程で検査される。全ての検査エリアが検査されている場合には、検査が終了される(ステップ13)。
【0041】
図5は複数ピーク型の度数分布形状を決定する方法を示す図である。
図5に示す例では、CD(Critical Dimension)の測定値の度数分布(ヒストグラム)が示されている。予め指定したBin Size毎に度数をCD(Critical Dimension)が小さい方から数えた場合、i番目の度数をiCountとする。iCountがiCount-1より大きく、iCount+1より小さい場合、主制御部1は、iCountを上方向に突出するピークと認識する。iCountがiCount-1より小さく、iCount+1より大きい場合、主制御部1は、iCountを下方向に突出するピークと認識する。度数の大小は予め設定した最少変化量以上か以下かで判定する。
図5のピーク間の差ΔP1、ΔP2が予め設定した最少変化量より大きい場合、
図5の度数分布は複数ピーク型と判定される。予め設定した最少変化量がΔP2より大きい場合、その度数分布は複数ピーク型と判定されない。
【0042】
図6は離れ小島型の度数分布形状を決定する方法を示す図である。予め指定したBin Size毎に度数をCD(Critical Dimension)が小さい方から数えた場合、i番目の度数をiCountとする。iCountが0個であり、iCount-1、iCount+1が設定個数以上である場合、
図6の度数分布は離れ小島型と認識される。
【0043】
図7は、測長データ点数の最適化の一例を示す図である。例としてデータ点数と歪度の関係を示した。この例では、1万点と5万点の2つのデータ群より算出した歪度に予め設定した閾値を超えた違いが無い。一方で、5千点と1万点のデータ群から算出した歪度には予め設定した閾値を超えた違いがある。上述した実施形態によれば、主制御部1は、測長する毎に統計量を更新し、統計量の変化量が閾値よりも小さくなった時点、すなわち度数分布形状情報が実質的に変化しなくなった時点で、最適なデータ点数に達したと判断し、その検査エリアの検査を中止する。
【0044】
図7で、測長結果が最適なデータ点数に達したと判断された場合、ショット、ダイ、セルなどの次の検査エリアがレシピで登録されている場合は、次の検査エリアの検査を行う。次の検査エリアがレシピで登録されていない場合は、検査を終了する。複数の検査エリアが登録されている場合、最初の検査エリアで得られた最適データ点数を次の検査エリアで使用してもよいし、または検査エリアを検査するたびに毎回最適データ点数を算出してもよい。
【0045】
図8は、検査エリア最適化の一実施形態を示すフローチャートである。ステップ1では、検査対象パターンをそれぞれ含む複数の検査エリアが設定される。ステップ2では、検査対象パターンの2次元形状情報の測定値からなるデータの傾向を調べるための複数のデータ傾向調査エリアが上記複数の検査エリアから選択される。ステップ3では、ステップ1で設定された複数の検査エリアの中から選択されるべき追加検査エリアの数が設定される。ステップ4では、ステップ1で設定された複数の検査エリアのうちの少なくとも1つが、追加検査エリア候補として指定される。
【0046】
ステップ5では、データの傾向判断に使用される閾値が設定される。ステップ6では、複数のデータ傾向調査エリアのそれぞれにおいて、各データ傾向調査エリアの画像が画像生成装置7により生成される。ステップ7では、主制御部1は、画像生成装置7が生成した画像を取得し、この画像から、検査対象パターンの2次元形状情報を表す測定値を取得する。ステップ6の画像の生成と、ステップ7の測定値の取得は、各データ傾向調査エリアにおいて複数回行われる。検査対象パターンの2次元形状情報の例としては、検査対象パターンのCritical Dimension(CD)、またはパターンの重心などの2次元パターン形状情報の代表値が挙げられる。主制御部1は、設計データを使用して、各データ傾向調査エリアで得られた測定値をパターン情報に従って分類し(ステップ8)、さらに、前記分類された測定値の特徴を表す特徴指標値を算出する(ステップ9)。特徴指標値の例としては、パターンの欠陥発生率、または測定値の統計量(例えば、平均値、分散、最大値、最小値、歪度、尖度)が挙げられる。
【0047】
主制御部1は、複数のデータ傾向調査エリア間における特徴指標値の差を、ステップ5で設定された閾値と比較する(ステップ10)。特徴指標値の差が閾値を超えた場合は、複数のデータ傾向調査エリアの間に位置する検査エリアが検査される(ステップ11)。具体的には、複数のデータ傾向調査エリアの間に位置する検査エリアの画像を画像生成装置7にて生成し、主制御部1は、画像生成装置7が生成した画像を取得し、この画像から、検査対象パターンの2次元形状情報を表す測定値を取得する。この画像の生成と測定値の取得は複数回繰り返される。特徴指標値の差が閾値を超えない場合は、ステップ4で追加検査エリア候補として指定された検査エリアが検査される(ステップ12)。
【0048】
図9は、
図8に示すフローチャートを用いた検査エリアの最適化の一実施形態を示す図である。
図9に示す実施形態では、15個の検査エリア101〜115が設定されている。これら検査エリア101〜115のうち、データ傾向を調べるためのデータ傾向調査エリアは、5つの検査エリア101〜105である。追加検査エリアの数は4に設定されている。本実施形態では、各エリアに属する測定値の特徴を表す特徴指標値として、分散が用いられている。
【0049】
図9の実施形態では、第1検査エリア101と第2検査エリア102との間における分散、および第1検査エリア101と第3検査エリア103との間における分散の差は、予め設定された閾値よりも大きい。さらに、第1検査エリア101での分散が最も大きく、第3検査エリア103での分散が2番目に大きく、第2検査エリア102での分散が3番目に大きい。この場合、第1検査エリア101と第3検査エリア103との間に位置する3つの検査エリア112,108,114と、第1検査エリア101と第2検査エリア102との間に位置する検査エリア106において、追加検査が実施される。これら4つの検査エリア112,108,114,106は、上述した追加検査エリアである。
【0050】
本実施形態では、検査エリア107,109,110,111,113,115の検査・計測は実施されない。従って、全ての検査エリア101〜115を検査・計測する場合に比べて、検査・計測に要する時間を40%削減可能である。
【0051】
図10は、検査エリア最適化の他の実施形態を示す図である。検査エリアの総数、データ傾向調査エリア、追加検査エリアの数は
図9の実施形態と同じである。本実施形態では、検査エリア101〜105間での分散の差が閾値よりも小さい。この場合、予め指定された追加検査エリア候補である検査エリア106,107,108,109が追加的に検査される。本実施形態では、検査エリア110〜115の検査・計測は実施されない。
【0052】
図11は、パターン欠陥検査における検査エリア最適化の例を示す図である。検査エリアの総数、データ傾向調査エリア、追加検査エリアの数は
図9の実施形態と同じである。
図11の実施形態では、第2検査エリア102と第4検査エリア104との間における分散の差、および第3検査エリア103と第4検査エリア104との間における分散の差は、予め設定された閾値よりも大きい。さらに、第2検査エリア102でのパターンの欠陥検出率は最も大きく、第4検査エリア104でのパターンの欠陥検出率が2番目に大きく、第3検査エリア103でのパターンの欠陥検出率が3番目に大きい。この場合、第2検査エリア102と第4検査エリア104との間に位置する3つの検査エリア113,109,115と、第3検査エリア103と第4検査エリア104との間に位置する検査エリア107において、追加検査が実施される。これら4つの検査エリア113,107,109,115は、上述した追加検査エリアである。
【0053】
図12は、大規模なCD(Critical Dimension)における個別データに関して上方限界値L1、下方限界値L2を設定した一実施形態を示す図である。本実施形態では測長値の最小値が下方限界値L2よりも小さい。
図12のデータを用い、下方限界値L2よりも小さいデータ点数が全体の何割かを算出する事が可能である。例えば、データ点数が100万であり、下方限界値L2よりも小さいデータ点数が150であり、上方限界値L1を超えるデータ点数が0の場合、各限界値L1,L2を超えたデータと全データ数の比率によって、大規模なCD(Critical Dimension)の傾向を確認可能である。
【0054】
図13は、大規模なCD(Critical Dimension)データを用い、平均値±σ、2σ、3σの範囲に存在するデータ点数と全データ点数の比率によって大規模なCD(Critical Dimension)の度数分布形状を表現した一実施形態を示す図である。この実施形態では平均値+3σ以上のデータが存在している一方で、平均値−3σ以下のデータは存在していない。各データ区間の存在比率を用いる事で、大規模なCD(Critical Dimension)データの対称性を確認可能である。
図1に示す主制御部1は、各CD範囲の代表的なSEM画像を表示装置5に表示させる機能と、選定されたSEM画像の付随情報として計測位置情報を表示装置5に表示させる機能を有する。
【0055】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。